説明

能動把持装具

【課題】手指麻痺者が装着する把持装具において、軽量でコンパクトな能動把持装具を提供する。
【解決手段】親指が固定される第1部材と、親指以外の他の指が固定される第2部材と、第1部材と前記第2部材を連結して互いに相対的に回動させる軸17と、第1部材又は第2部材のいずれか一方を掌部に固定される固定部6とし、いずれか他方を可動部5として可動部5を固定部6に対して開く方向に偏倚させる第1の弾性部材7と、第1の弾性部材7の偏倚力に抗して可動部5を固定部6に対して閉じる方向に可動させる、第1の弾性部材7の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材8が接続された操作部材9とを有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指麻痺者の機能代替手段として使用される能動把持装具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指麻痺者の機能代替手段として、エンゲン型把持装具が広く使用されている。このエンゲン型把持装具を手指麻痺者が手に装着することで、手指麻痺者は、指の屈曲を実現することができ、これにより、対象物を把持することができるようになる。そして、このエンゲン型把持装具は、使用者の手首関節の背屈に連動した指の屈曲を実現するものであり、その把持力は手首背屈のための力の加減で調節可能である。
このように、エンゲン型把持装具は、手指麻痺者の把持行為を補助し、手指麻痺者の機能代替手段となる。
【0003】
しかしながら、このエンゲン型把持装具は、動力を持たず、軽量で手軽に使用できる反面、指の動作に必ず手首の屈伸運動が求められ、腕の姿勢により把持動作の制限があった。すなわち、対象物を把持する際に、手首の自由度が制限されてしまう。これを解決すべく、小型電気モータ等を搭載した能動把持装具の開発が試みられている。しかし、重量の増加など、使い勝手の面で十分ではなく、未だ、広く実用される技術は実現されていない。
【非特許文献1】社団法人 日本義肢協会、[online]、[平成19年7月12日検索]、インターネット <URL:http://www.j-opa.or.jp/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の点に鑑み、軽量でコンパクトな能動把持装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の能動把持装具は、親指が固定される第1部材と、親指以外の他の指が固定される第2部材と、第1部材と第2部材を連結して互いに相対的に回動させる軸と、第1部材又は第2部材のいずれか一方を掌部に固定される固定部とし、いずれか他方を可動部として、可動部を固定部に対して開く方向に偏倚させる第1の弾性部材と、第1の弾性部材の偏倚力に抗して可動部を固定部に対して閉じる方向に可動させる、第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続された操作部材とを有してなることを特徴とする。
【0006】
本発明の能動把持装具では、操作部材を操作することにより、可動部が固定部に対して回動されるので、使用者は対象物を把持することができる。そして、操作部材に、第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続されているので、第2の弾性部材に弾性力が発生し、それに伴い対象物を把持するための握力を調整することができる。
【0007】
また、本発明の能動把持装具は、親指が固定される第1部材と、親指意外の他の指が固定され、軸を介して第1部材に対して回動自在に連結された第2部材と、第2部材を第1部材に対して開く方向に偏倚させる第1の弾性部材と、第1の弾性部材の偏倚力に抗して第2部材を第1部材に対して閉じる方向に回動させる、一部に第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続された操作部材とを有してなることを特徴とする。
【0008】
本発明の能動把持装具では、操作部材を操作することにより、親指側の第1部材に対して回動自在に連結された親指以外の指側の第2部材が、閉じる方向に回動されるので、使用者は対象物を把持することができる。そして、操作部材に第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続されているので、第2の弾性部材に弾性力が発生し、それに伴い対象物を把持するための握力を調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の能動把持装具によれば、軽量コンパクト及び簡素な構成で、指の開閉動作と握力の調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1A,Bに本発明の第1の実施形態に係る能動把持装具の概略構成を示す。本実施形態の能動把持装具1は、指の第三関節による開閉動作を補助することにより、使用者が対象物を安定して把持することができるようにするものである。
図1Aは、能動把持装具1を使用者の手に装着したときの概略構成であり、図1Bは、能動把持装具1を装着面側から見たときの概略構成である。
【0012】
本実施形態の能動把持装具1は、使用者の手に装着される把持装具部分2と、把持装具部分2を、張力伝達機構3を介して駆動操作する駆動装置4から構成される。
【0013】
まず、把持装具部分2は、親指と掌部に装着される第1部材である固定部6と、親指以外の指、例えば人差指及び中指に装着される第2部材である可動部5が、人差指における第三関節の、親指側の側面位置の軸17において連結されてなる。固定部6には、親指を固定するためのベルト11及び、手首を固定するためのベルト16が備えられており、親指の第一関節付近及び手首がそれぞれベルト11,16により固定される。固定部6におけるベルト11の内側には、固定部6と一体に形成された補助支持部21が形成されており、親指を下側から支持する。また、固定部6には、親指と人差指の指間から掌に沿って掌側へ伸びる補助支持部14と、手の甲に沿って、手の甲側へ伸びる補助支持部13が固定部6に一体に形成されている。親指及び手首が固定部6の補助支持部21及びベルト11、16により固定され、さらに、掌側の補助支持部14と手の甲側の補助支持部13により手が両面から挟まれるので、使用者の手が固定部6に安定に固定される。
【0014】
また、可動部5は、人差指の親指側側面に沿うような形状とされ、人差指及び中指を第一関節付近で可動部5に固定するためのベルト12を備えている。可動部5において、ベルト12の内側には可動部5と一体に形成された補助支持部20が形成されており、人差指と中指を安定に支持している。また、人差指及び中指の背側を支持する補助支持部15が、可動部5と一体に形成されている。人差指と中指が補助支持部20及びベルト12により固定され、補助支持部15により支持されるので、使用者の手が可動部5に安定に固定される。
【0015】
そして、固定部6と可動部5は、人差指の第三関節の親指側側面における軸17により連結され、連結部分の軸17を支点に、可動部5は固定部6に対して回動自在になるように構成される。このとき、可動部5の回動平面は、人差指及び中指の開閉において、指の第三関節を軸に開閉する平面とされ、後述するように、この可動部5の回動が人差指及び中指の開閉動作を補助する。
【0016】
また、可動部5の軸17よりも手の甲側には、第1の弾性部材7の一方の端部7aが取り付けられ、第1の弾性部材7の他方の端部7bは固定部6の甲側に取り付けられる。この第1の弾性部材7は、人差指と中指を、親指に対して定常的に開いている状態で保持されるように構成される。すなわち、第1の弾性部材7の弾性力により、手が開いた状態を保つことのできるような弾性定数を有する弾性部材を選択的に利用する。本実施形態において、第1の弾性部材7の弾性定数をkとする。本実施形態では、手が開いた状態を初期状態とする。
【0017】
そして、可動部5の軸17よりも掌側には、第2の弾性部材8の一方の端部8aが取り付けられており、第2の弾性部材8の他方の端部8bには、操作部材9が接続されている。操作部材9としては、例えばワイヤ等の張力に強い部材が用いられる。本実施形態において、第2の弾性部材8の弾性定数kは、第1の弾性部材7の弾性定数kよりも大きく、k>kである。
また、第2の弾性部材8に接続される操作部材9は手首方向に沿って、チューブからなる案内管10の中を通り駆動装置4に案内接続されている。本実施形態においては、案内管10となるチューブは、固定部6に固定され、固定部6のベルト16近辺及び駆動装置4間に渡り構成されている。
本実施形態において、第2の弾性部材8及び、第2の弾性部材8に接続される操作部材9及び案内管10により張力伝達機構3が構成される。そして、この張力伝達機構3を介して、駆動装置4からの駆動力が可動部5に伝達され、可動部5の回動が操作される。
【0018】
本実施形態に用いられる駆動装置4は、使用者の把持操作意思を検出する操作部19と、操作部19からの操作信号に応じて駆動制御されるモータ18から構成される。本実施形態においては、操作部19は、例えばペダル式の操作部19とし、使用者が足でペダルを踏むことにより、モータ18の駆動を制御できるものとする。このモータ18の駆動力により、把持装具部品2が操作されることとなる。
【0019】
本実施形態においては、軸17と、第1の弾性部材7の一方の端部7aと、第2の弾性部材8の一方の端部8aは、可動部5上に一直線上になるように構成されている。また、力のモーメントの関係により、初期状態において、軸17と、第1の弾性部材7の一方の端部7aと、第2の弾性部材8の一方の端部8aとを結ぶ直線と、操作部材9の伸びる方向とのなす角度が90°に近い角度となるように構成されていることが好ましい。
【0020】
以上のように構成された能動把持装具1を手指麻痺者などが装着して操作することにより、指に適当な握力を生じさせて対象物を把持することができる。
次に、使用者の把持行為に照らし合わせながら、能動把持装具の操作方法について詳述する。
【0021】
図2Aに、能動把持装具1を装着し、何も操作していない状態、即ち、初期状態を示す。初期状態においては、駆動装置が駆動されていないため、操作部材9に張力は発生していないが、可動部5に固定された人差指及び中指は、第1の弾性部材7の弾性力Fにより、親指に対して十分開いた状態に保持されている。すなわち、本実施形態における第1の弾性部材7は、定常的に指を開いた状態である初期状態を保持できるような弾性定数kを有する弾性部材が用いられる。
【0022】
次に、操作部19を操作して、駆動装置4を駆動させることにより、操作部材9を引いて、操作部材9に張力Fを発生させる。そうすると、第1の弾性部材7の弾性定数kが、第2の弾性部材8の弾性定数kよりも小さい為、図2Bに示すように、第1の弾性部材7が矢印aで示すように伸び、可動部5が第1の弾性部材7の弾性偏倚力に抗して、軸17を中心に矢印b方向に回動する。これに伴い可動部5に固定された人差指及び中指が親指側に閉じる。このとき、第1の弾性部材7は可動部の回動に応じて延ばされているのに対し、第2の弾性部材8は、第1の弾性部材7よりも弾性定数kが充分大きい為、依然としてほぼ自然長を維持した状態である。
【0023】
次に、図3Cに示すように、更に操作部材9に接続された駆動装置4を駆動させ、操作部材9を引くことにより、第1の弾性部材7を矢印a’方向に伸ばし、可動部5に固定された人差指、中指そして固定部6に固定された親指が対象物20に接触するまで操作する。人差指及び中指、親指が対象物20に接触した後は、可動部5がこれ以上親指方向に回動することは無く、第1の弾性部材7はこれ以上伸びることはない。ここで、指が対象物20に接触したときの操作部材9を引く力、即ち操作部材9にかかる張力をFとする。
【0024】
次に、図3Dに示すように、指が対象物20に接触して以降、更に駆動装置4を駆動させると、前述したように第1の弾性部材7はこれ以上伸びることが無いため、第2の弾性部材8のみが伸びる。第2の弾性部材8が自然長からxだけ矢印c方向に伸びたときに、操作部材に係る張力Fは、第2の弾性部材8にかかる弾性力と釣り合う為、kxで表される。このとき、kxは、指が対象物20に接触する位置を保持する為に用いられていた力Fよりも大きくなり、kxとFの差が、指が対象物20を把持するための握力gが発生する。すなわち、握力gは、指先が対象物20に接触して以降の第2の弾性部材8による弾性力kxの増加量に比例して発生する。そして、弾性力kxはxの関数である為、第2の弾性部材8の自然長からの伸びxに比例する。この関係により、握力gは、指先が対象物に接触して以降の第2の弾性部材の伸びΔxに比例して大きくなる。
【0025】
ところで、第2の弾性部材8を用いずに操作部材9を引いて握力gを発生させようとすると、握力gの発生は、駆動装置4による操作部材9を引っ張る力に直接依存してしまう為、対象物に対して急激な握力が発生してしまう。また、急激な握力の発生を回避し、微妙な握力を調整する為には、駆動装置4に別途、握力検出機構や操作部材9の張力調整機構等を設ける必要があり、装置が大掛かりである。
【0026】
本実施形態によれば、第2の弾性部材8を設けることにより、操作部材9に係る張力Fが、前述の第2の弾性部材8の伸びΔxに比例する弾性力kΔxとされるので、駆動装置4からの駆動力によって操作部材9への急激な張力発生を防ぎ、それに伴う急激な握力gの発生を回避することができる。さらに、第2の弾性部材8を用いることにより、駆動装置4には特別な機構を設ける必要がない。このため、握力gの微妙な調整も簡単に行うことができ、壊れ易いものを把持する場合でも、握力gを微妙に調整しながら繊細に扱うことが可能となる。
また、本実施形態では、把持動作は、操作部材9を駆動装置4により引くことで操作されるので、従来のエンゲン型把持装具のような手首の自由度の制限が無く、対象物20を把持しながら手首も自由に動かすことができる。従って、対象物を手で把持できる状況が増え、使用者の活動範囲の拡大が図られる。
【0027】
そして、本実施形態において、把持したものを離す際は、駆動装置4により、引いていた操作部材9を戻すようにすることで、操作部材9に係る張力が無くなり、第1の弾性部材7の弾性力Fにより、手の状態が図2Aで示した初期状態に戻される。
【0028】
ところで、力のモーメントの関係により、軸17と、第1及び第2の弾性部材7,8の一方の端部7a,8aとのそれぞれの距離が大きいほうがよく、さらには、軸17と第2の弾性部材8の一方の端部8aを結ぶ線と操作部材9を引く方向、すなわち作用線の発生する方向が90°の関係にあることが好ましい。軸17と第1及び第2の弾性部材7,8の一方の端部7a,8aとのそれぞれの距離が大きいほうが操作部材9を引っ張ったときに軸17に対する力のモーメントを大きくすることができる。また、軸17と第2の弾性部材8の一方の端部8aを結ぶ線と操作部材9を引く方向が90°の関係にあるときに、操作部材9を引く力の軸17に対する力のモーメントを大きくすることができる。しかしながら、手のスペースには限界があり、また、軸17は指の第三関節に位置するような構成としなければならないので、可能な構成には制限がある。
さらに、操作部材9を引く方向、すなわち作用線と、軸17と第2の弾性部材8の端部8aを結ぶ方向とが一致すると、回転モーメントが0となり、可動部5が回転しない。使用者の利便性に合わせて、操作部材9を引く方向が手首に沿うようにして駆動装置4に接続されるのが好ましいが、回転モーメントが0となるような特異点を避けなければならないという要求もある。
以上を踏まえて、次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0029】
図4に、本発明の第2の実施形態に係る能動把持装具の概略構成を示す。図4において、図1に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
本実施形態の能動把持装具35において、可動部34が、固定部6との連結する軸17側の、甲側に位置する部分を突出させて形成した突出部31を設け、その突出部31に第1の弾性部材7の一方の端部7aを取り付ける構成とする。また、第2の弾性部材8の一方の端部8aは、可動部34の軸17よりも人差指側の位置に取り付ける。このような構成とすることにより、軸17から第1、及び第2の弾性部材7,8の一方の端部7a,8aの距離が第1の実施形態よりも大きくすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、固定部6に第1のプーリ32及び第2のプーリ33が配設されている。第1のプーリ32は、固定部6上において、軸17と第2の弾性部材8の一方の端部8aを結ぶ線lと、第2の弾性部材8の一方の端部8aと第1のプーリ32とを結ぶ直線lとのなす角度が、把持装具部品30のスペース内でできるだけ90°に近くなるように設けられている。また、第2のプーリ33は、固定部6上で、手首方向の延長線に設けられている。張力伝達機構3を構成する第2の弾性部材8に接続された操作部材9は、第1のプーリ32を通り、その後、第2のプーリ33によって、操作部材9を引っ張る方向が、手首方向に沿うように補正される。
【0031】
以上の構成により、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に操作部材を操作することにより、人差指及び中指に固定された可動部を親指に固定された固定部側に回動させることにより、対象物を把持することができ、それと共に、握力の微妙な調整をすることが可能となる。
【0032】
本実施形態では、軸17と第1、及び第2の弾性部材7,8の一方の端部7a,8aとの距離がそれぞれ大きくなるので、可動部34の回転モーメントが大きくなり、操作部材9を引く力、すなわち駆動力を低減することができる。また、突出部31が設けられることにより、第1の弾性部材7の一方の端部7aが軸から離れて設けられるので、第1の弾性部材7の弾性力が回転力を生じさせやすい状態である。このため、引いていた操作部材9を戻すようにして操作部材9に係る張力を無くした場合、第1の弾性部材7の弾性力により、手が初期状態、即ち、図2Aのような状態に戻りやすい。
【0033】
また、本実施形態では、第1のプーリ32を設けることにより、第2の弾性部材8に接続された操作部材9を、軸17と第2の弾性部材8の一方の端部を結ぶ直線から外れた方向に引くことができる。さらに、第2のプーリ33により、操作部材9は手首方向に沿うように案内されるので、操作部材9が使用者の邪魔になるのを防ぐ。このような第1及び第2のプーリ32,33を用いて、操作部材9を引く角度を調整することができるので、可動部34の回転モーメントが0となるような特異点を避けて操作部材9を引くことができる。
【0034】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、可動部に突出部を設け、第1のプーリ及び第2のプーリを設けることにより、コンパクトな能動把持装具であっても十分に把持機能を発揮することが可能となる。
【0035】
第1及び第2の実施形態において、駆動装置4を操作する操作部19は、たとえば、センサにより腕等の筋肉の動きを検出し、その検出信号を利用する構成や、センサにより首の動きを検出し、その検出信号を利用する構成とすることもできる。すなわち、使用者の残存した機能を用いて駆動装置4を操作することができればよく、様々な構成が可能である。
【0036】
また、第1及び第2の実施形態においては、親指が固定される第1部材を固定部6とし、親指以外の指が固定される第2部材を可動部5(34)とする構成としたが、逆の構成であってもよい。すなわち、親指が固定される第1部材を可動部とし、親指以外の指が固定される第2部材を固定部とし、親指が固定された可動部を固定部側に可動させて、対象物を把持するような構成とすることもできる。さらに、第2の弾性部材は操作部材に接続されていれば良く、操作部材中に介挿された構成あるいは駆動装置4の内部に設置する構成とすることも可能である。
【0037】
以上のように、本発明では、操作部材に張力を発生させることにより、第1の弾性部材の弾性力に逆らって、指の屈曲が行われる。そして、指が対象物に接触した位置において、さらに操作部材に張力を発生させることにより、今度は第2の弾性部材の弾性力に逆らって握力が生じる。そして、操作部材の押し引きにより、第2の弾性部材の弾性力が調整され、それにより、対象物を把持するための握力が微細に調整される。すなわち、本発明によれば、操作部材の押し引きにより、使用者の指の開閉動作と握力の調整の両方が可能となる。本発明の能動把持装具を使用することにより、手指麻痺者が腕の姿勢と関係なく自由に対象物の把持することができ、また、壊れ易いものでも力を調整しながら繊細に扱うことができるようになるなど、障害者の生活支援や社会復帰に貢献が期待される。
【0038】
そして、本発明によれば、第1の弾性部材及び第2の弾性部材を設けるとういう能動把持装置により、使用者の指の開閉動作と握力の調整が行われるので、特別な駆動装置を設けるなどの必要がなく、軽量コンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】A,B本発明の第1の実施形態に係る能動把持装具の概略構成図および、装着面側から見た概略構成図である。
【図2】A,B本発明の第1の実施形態に係る能動把持装具を用いて対象物を把持する際の操作工程(その1)を示す。
【図3】C,D本発明の第1の実施形態に係る能動把持装具を用いて対象物を把持する際の操作工程(その2)を示す。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る能動把持装具の概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1,35・・能動把持装具、2・・把持装具部品、3・・張力伝達機構、4・・駆動装置、5・・可動部、6・・固定部、7・・第1の弾性部材、8・・第2の弾性部材、9・・操作部材、10・・案内管、11,12,16・・ベルト、13,14,15,20,21・・補助支持部、18・・モータ、19・・操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指が固定される第1部材と、
前記親指以外の他の指が固定される第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材を連結して互いに相対的に回動させる軸と、
前記第1部材又は前記第2部材のいずれか一方を掌部に固定される固定部とし、いずれか他方を可動部として、前記可動部を前記固定部に対して開く方向に偏倚させる第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の偏倚力に抗して前記可動部を前記固定部に対して閉じる方向に可動させる、前記第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続された操作部材とを有してなる
ことを特徴とする能動把持装具。
【請求項2】
親指に固定される第1部材と、
前記親指意外の他の指が固定され、軸を介して前記第1部材に対して回動自在に連結された第2部材と、
前記第2部材を前記第1部材に対して開く方向に偏倚させる第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の偏倚力に抗して前記第2部材を前記第1部材に対して閉じる方向に回動させる、前記第1の弾性部材の弾性定数よりも大きな弾性定数を有する第2の弾性部材が接続された操作部材とを有してなる
ことを特徴とする能動把持装具。
【請求項3】
前記操作部材は、操作部を有する駆動装置に接続されてなることを特徴とする請求項2記載の能動把持装具。
【請求項4】
前記第2の弾性部材が接続された前記操作部材に働く作用線が
前記操作部材の取付け部と、前記軸とを結ぶ直線上から外れるように前記操作部材が配置されることを特徴とする請求項2記載の能動把持装具。
【請求項5】
前記操作部材は、案内管を通って前記駆動装置に案内接続されることを特徴とする請求項3記載の能動把持装具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−22577(P2009−22577A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189712(P2007−189712)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】