説明

脚補助装置

【課題】 簡単な構造で実用的に使用できる脚補助装置を提供する。
【解決手段】 脚補助装置1は、装着者Pに装着する装着部2と、装着者Pの左右の足をそれぞれ支持する左右の足部3と、装着部2と左右の足部3とをそれぞれ連結する左右のエアシリンダ5と、左右のエアシリンダ5内の圧力をそれぞれ調節する左右の圧力調節部7と、左右の圧力調節部7を作動させる左右のスイッチ8と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚歩行時や重量物運搬時に、脚関節まわりにかかる筋負担を軽減する脚補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護福祉支援、家庭での筋力弱体者の自立運動の支援、並びに工場ラインでの重量物運搬支援及び長時間の立ち仕事の支援等に用いられるアシスト装置がある。例えば、特許文献1には、利用者の両足平の荷重割合によって算出したアシスト力に応じて駆動源を駆動し、歩行をアシストする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2006/126711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアシスト装置は、人が行うことが困難なので機械が担う作業又は輸送機器を利用して行うような重労働を、人が単独で楽に行う場合又は筋力が弱体化して自立運動できないような患者向けに設計されることが一般的であった。そのため、効果が高ければ費用や機構の構成方法については度外視されており、電動(空気圧)などのアクチュエータやセンサを多用しているため、連続運転時間が短かったり、維持費が高くなる傾向があり、現場での実用性は低いと考えられる。さらに、アクチュエータを使用者の運動に連動させるためのセンシングの誤作動などにより使用者を危険にさらす可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、簡単な構造で実用的に使用できる脚補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、脚補助装置は、装着者に装着する装着部と、前記装着者の左右の足をそれぞれ支持する左右の足部と、前記装着部と前記左右の足部とをそれぞれ連結する左右のエアシリンダと、前記左右のエアシリンダ内の圧力をそれぞれ調節する左右の圧力調節部と、前記左右の圧力調節部を作動させる左右のスイッチと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記圧力調節部は、空気を貯蔵するサージタンクと、前記サージタンク内の圧力を調整する圧力調整弁と、前記サージタンクと前記エアシリンダ内とを接続する第1の状態と前記エアシリンダ内を大気と接続する第2の状態を切り替える三叉弁と、前記エアシリンダ内が大気圧よりも低くなった場合に大気を吸引するための逆止弁と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記スイッチは、地面に当接した場合に前記三叉弁を第1の状態とし、地面と離間した場合に前記三叉弁を第2の状態とすることを特徴とする。
【0009】
また、前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、前記脚部は、前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、前記第1脚部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、前記第2脚部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、前記脚部は、前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、前記第2脚部材と所定の角度を保持して前記関節部材に接続されるオフセット部材と、前記第1脚部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、前記オフセット部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、前記脚部は、前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、前記装着部に接続されるオフセット部材と、前記オフセット部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、前記第2脚部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脚補助装置では、センサ等の電子部品の使用を低減することで低コストを実現でき、簡単な構造であり、歩く動作で補償力を得ることができる実用的な脚補助装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の脚補助装置を示す図である。
【図2】第1実施形態の脚補助装置の装着部付近を拡大した図である。
【図3】第1実施形態の脚補助装置のスイッチ付近を拡大した図である。
【図4】装着者が第1実施形態の脚補助装置を装着した状態を示す図である。
【図5】第1の状態の脚補助装置を図4の破線の位置及び矢印C方向から見た図である。
【図6】図5の状態での圧力調節部を示す図である。
【図7】第2の状態の脚補助装置を図4の破線の位置及び矢印C方向から見た図である。
【図8】図7の状態での圧力調節部7を示す図である。
【図9】歩行時の装着者の両足及び脚補助装置の状態を示す図である。
【図10】シリンダ部のパラメータを示す図である。
【図11】他の実施形態の脚補助装置の概念を示す図である。
【図12】他の実施形態の脚補助装置の概念を示す図である。
【図13】第2実施形態の脚補助装置を示す図である。
【図14】第3実施形態の脚補助装置を示す図である。
【図15】腰部高さに対するレバー比を示すグラフである。
【図16】腰部高さに対する補償力を示すグラフである。
【図17】第4実施形態の脚補助装置を示す図である。
【図18】第5実施形態の脚補助装置を示す図である。
【図19】第5実施形態の圧力調節部の回路図を示す図である。
【図20】第6実施形態の圧力調節部の回路図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は第1実施形態の脚補助装置を示す図、図2は第1実施形態の脚補助装置の装着部付近を拡大した図、図3は第1実施形態の脚補助装置のスイッチ付近を拡大した図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の脚補助装置1は、装着部2と、装着部2を支持する支持部3と、装着者の足を支持する足部4と、装着部2と足部4とを連結するエアシリンダ5と、足部4とエアシリンダ5とを連結する連結部6と、エアシリンダ5の圧力を調節する圧力調節部7と、圧力調節部7を作動させるスイッチ8とを有する。
【0017】
装着部2は、図2に示すように、装着者が腰かけるサドル2aと、支持部3に回動可能に支持されている第1軸部2bとを有する。
【0018】
支持部3は、図2に示すように、サドル2aの第1軸部2bを矢印Aの方向に回動可能に支持する第1支持部材3aと、エアシリンダ5に接続されると共に、圧力調節部7を支持する第2支持部材3bと、第1支持部材3aと第2支持部材3bとを第1軸部2bと直交する矢印Bの方向に回動可能とする第2軸部3cとを有する。
【0019】
なお、装着部2の第1軸部2bを別部材としてもよい。また、支持部3は、ボールジョイント等で構成してもよい。
【0020】
足部4は、図3に示すように、右足部4R及び左足部4Lからなる。右足部4a及び左足部4bは、それぞれ装着者の足を載置する足載せ部4aR,4aLと、装着者の踵を保持する踵部4bR,4bLと、連結部6に連結されると共に、スイッチ8を支持する連結支持部4cR,4cLと、を有する。なお、足載せ部4aR,4aLには、図3の4aR1,4aL1に示す位置に図示しないヒンジ機構が設けられている。このヒンジ機構は、歩行時の足の変形によって折り曲げられる。したがって、歩行時に足載せ部4aR,4aLと足とが自然にフィットすることとなる。
【0021】
エアシリンダ5は、図3に示すように、右エアシリンダ5R及び左エアシリンダ5Lからなる。右エアシリンダ5R及び左エアシリンダ5Lは、それぞれ第2支持部材3bに接続されるシリンダチューブ5aR,5aLと、シリンダチューブ5aR,5aL内を摺動可能なピストン5bR,5bLと、ピストン5bR,5bLに接続されるロッド5cR,5cLと、を有する。なお、本明細書内の実施形態では、長さ約350mm、受圧部の直径約23mmのエアシリンダ5を用いた。
【0022】
連結部6は、図3に示すように、右連結部6R及び左連結部6Lからなる。右連結部6R及び左連結部6Lは、それぞれロッド5cR,5cLを支持する連結本体部6aL,6aRと、連結支持部4cR,4cLに連結されると共に、連結本体部6aL,6aRに自由な角度に連結される連結軸部6bL,6bRとを有する。連結部6は、ボールジョイント等で構成してもよい。
【0023】
圧力調節部7は、図2に示すように、サージタンク7aと、サージタンク7a内の圧力を調整する圧力調整弁7bと、サージタンク7aとシリンダチューブ5aとの接続、又はシリンダチューブ5aと大気圧との接続を切り替える三叉弁7cと、シリンダチューブ5aが大気圧よりも低くなった場合に大気を吸引するための逆止弁7dと、を有する。
【0024】
スイッチ8は、図3に示すように、連結支持部4cR,4cLに回動可能に支持されている。また、スイッチ8は、図示しないケーブルやワイヤで圧力調節部7の三叉弁7cに連結されて、三叉弁7cの切り替えを行う。なお、三叉弁7cの開度とスイッチ8の角度との関係は線形であれば構造が簡単にできる。しかしながら、必ずしも線形である必要はなく、非線形としたり、ケーブル等を引く場合と戻る場合でスイッチ8の角度と三叉弁7cの開度の関係が変化するヒステリシスな特性をもたせることも可能である。
【0025】
さらに、スイッチ8と三叉弁7cとは、電気的な信号によって切り替えてもよい。例えば、スイッチ8の角度を検知する角度センサを設け、角度センサから出力された角度に基づき三叉弁7cの開度を制御してもよい。
【0026】
次に、第1実施形態の脚補助装置1の作動について説明する。
【0027】
図4は装着者Pが第1実施形態の脚補助装置1を装着した状態を示す図、図5は、第1の状態の脚補助装置1を図4の破線の位置及び矢印C方向から見た図、図6は、図5の状態での圧力調節部7を示す図、図7は、第2の状態の脚補助装置1を図4の破線の位置及び矢印C方向から見た図、図8は、図7の状態での圧力調節部7を示す図である。
【0028】
装着者Pは、足部4に足を載置して装着部2を跨ぎ、腹部と腰部とを密着させるようにして脚補助装置1を装着する。支持部3、エアシリンダ5、連結部6、圧力調節部7及びスイッチ8は、両脚の内側に配置される。なお、支持部3、エアシリンダ5、連結部6、圧力調節部7及びスイッチ8は、両脚の外側、前方、もしくは後方に配置してもよい。
【0029】
図5に示す第1の状態では、装着者Pは足を脚補助装置1の足部4に載せてスイッチ8を地面に押し付け当接させている。スイッチ8が地面に当接していると、三叉弁7cは、図6に示すようにシリンダチューブ5aとサージタンク7aが連結される第1の状態となる。最初に第1の状態にした時には、エアシリンダ5は圧縮されていないので、シリンダチューブ5a及びサージタンク7a内はほぼ大気圧である。第1の状態で膝を曲げて腰の高さを降ろすと、エアシリンダ5は圧縮されて、シリンダチューブ5a及びサージタンク7a内の圧力は上昇する。
【0030】
図7に示す第2の状態では、装着者Pは足を脚補助装置1の足部4に載せてスイッチ8を地面から離間させている。スイッチ8が地面から離間すると、三叉弁7cは、図8に示すようにシリンダチューブ5aが大気開放される第2の状態となる。
【0031】
第2の状態では、シリンダチューブ5aが大気開放されているので、容易に膝を曲げることが可能となる。
【0032】
次に、脚補助装置1の装着方法について説明する。
【0033】
まず、最初に、装着者Pは、図3に示した足部4の踵部4bを持ち上げて、スイッチ8を地面から離間させる。すると、脚補助装置1は、図8に示したシリンダチューブ5aが大気開放される第2の状態となる。
【0034】
続いて、装着者Pが、図3に示した足部4の足載せ部4aに足を載せる。この時、スイッチ8を地面に当接させて、脚補助装置1を図6に示した第1の状態としてもよい。続いて、図2に示したサドル2aを持ち上げて、装着する。
【0035】
この後、歩行を始めると、エアシリンダ5に自動的に空気が充填されて、徐々に補償力が生じることとなる。なお、この装着方法では、最初に第1の状態にした時に、エアシリンダ5が圧縮されていないため、エアシリンダ5及びサージタンク7a内はほぼ大気圧となっている。
【0036】
また、1歩目から脚補助装置1による補償力を生じさせるには、次のような動作を行う。
【0037】
装着者Pは、装着後、片足ずつ足を伸ばし、伸ばした状態でスイッチ8を地面に当接させて、脚補助装置1を図6に示した第1の状態とする。そして、第1の状態を維持したまま、すなわちスイッチ8を地面に当接させたまま、直立姿勢に戻る。この動作を両足で最低1回ずつ行う。
【0038】
または、第1の状態を維持したまま、すなわちスイッチ8を地面に当接させたまま、装着者Pは膝を可動限界まで屈折する。この動作により、エアシリンダ5は圧縮されて、エアシリンダ5及びサージタンク7a内の圧力が上昇し、空気が充填される。この時、エアシリンダ5は可動限界まで圧縮されているため、エアシリンダ5内にあった空気は、殆どがサージタンク7aに流れており、サージタンク7a内の空気は高圧な状態となる。
【0039】
その後、装着者Pは膝を伸張して、脚補助装置1を図8に示したエアシリンダ5が大気開放される第2の状態とする。最後に、脚補助装置1の第2の状態を維持したまま、つま先立ちで直立姿勢に戻り、スイッチ8を地面に当接させて、脚補助装置1を第1の状態とする。この一連の動作により、エアシリンダ5に空気が充填されて、1歩目から脚補助装置1による補償力を発生させることが可能となる。なお、装着者Pが膝をまげても、体重と補助力が釣り合ってしまい、それ以上エアシリンダを圧縮できなくなってしまう内圧をPMAXとして、圧力調整弁7bの作動圧力とする。
【0040】
次に、脚補助装置1の歩行時の状態について説明する。
【0041】
図9は歩行時の装着者の両足及び脚補助装置の状態を示す図、図10はシリンダ部のパラメータを示す図である。
【0042】
図9(a)は脚補助装置1による補償力を示すグラフ、図9(b)はエアシリンダ5の圧縮長を示すグラフ、図9(c)は両足の状態、図9(d)はエアシリンダ5の状態を示す図である。
【0043】
装着者が図9(c)に示すように歩行すると、右足、両足、左足、両足の順に接地する。この接地にあわせて、図9(d)に示すように、脚補助装置1は、右足と左足において、それぞれ第1の状態と第2の状態を交互に繰り返す。
【0044】
まず、図9(c)に示すように、両足が接地している状態から、装着者の右足のみが接地し、左足が離地した場合、右足の脚補助装置1は第1の状態となり、左足の脚補助装置1は第2の状態となる。
【0045】
接地直前、右足を前方に振り出した時に、右足は、直立状態よりも股関節とつま先の間の距離が伸びる。したがって、エアシリンダ5の長さも、接地直前、直立状態よりも伸びる。そのため、右足が接地して、脚補助装置1が第1の状態となった場合、接地直前と直立状態でのエアシリンダ5の長さの差分だけ、エアシリンダ5内の空気は圧縮される。そして、エアシリンダ5の補償力は、図9(a)に示すように、直立状態の時よりも大きくなる。
【0046】
左足の脚補助装置1は、スイッチ8が地面から離間すると、第2の状態となり、エアシリンダ5が大気開放される。そのため、左足は自由に動くこととなり、膝の屈折を容易に行い、前に踏み出す動作も容易に行うことができる。
【0047】
その後、両足が接地している状態から、装着者の左足のみが接地し、右足が離地した場合、左足の脚補助装置1は第1の状態となり、右足の脚補助装置1は第2の状態となる。
【0048】
このように、一般的な歩行動作を繰り返すだけで、電子的なセンシング等を必要とせずに、補償力を付与することが可能となる。
【0049】
なお、一定の歩行を続けると、サージタンク7a内の圧力は、大気圧よりも十分に高い圧力に収束して、離地、接地、又は腰部が最下点にある最大発揮時に以下の式(1)〜(3)のような補償力を発生する。なお、エアシリンダ5の補償力とは、エアシリンダ5の両端間が伸展する軸方向力をいう。
【数1】


ただし、
A(m2)はシリンダチューブ5aの断面積、
n(m)は離地時の残りシリンダストローク、
C(m)は接地時と離地時のシリンダ長さの差、
0(Pa)は大気圧、
Va(m3)はサージタンク体積、
である。
【0050】
このように、センサ等の電子部品の使用を低減することで低コストを実現でき、簡単な構造であり、歩く動作で補償力を得ることができる実用的な脚補助装置を提供することが可能となる。
【0051】
次に、他の実施形態について説明する。
【0052】
図11及び図12は、他の実施形態の概念を示す図である。
【0053】
第1実施形態では、エアシリンダ5を直接動作させて補助力を得ていたが、図11に示すように、エアシリンダ5をリンク機構に用いて揺動角度の変化量を利用して動作させて補助力を得てもよい。
【0054】
回動機構10は、固定部としての基台11と、基台11から鉛直方向上方に延びる鉛直支持部材12と、鉛直支持部材12に設けた軸部材13と、軸部材13に回動可能に支持される作動リンク14と、鉛直支持部材12と作動リンク14とを連結する連結部15と、を有する。
【0055】
連結部15は、鉛直支持部材12に支持される基点を含む基部51と、作動リンク14に支持される作用点を含む取付部52と、基部51に回動可能に支持される連結部材としてのエアシリンダ5と、を有し、エアシリンダ5は、基部51に回動可能に支持されるシリンダチューブ5a、シリンダチューブ5a内にスライド自在に嵌挿されるピストン5b、及び一方にピストン5bを有し、他方で取付部52に支持される連結部材としてのロッド5cと、を含む。なお、Gは重心位置である。
【0056】
図11に示すように、エアシリンダ5のシリンダチューブ5aには、作動ロッド5cの一端に設けられたピストン5bがスライド自在に嵌挿されている。また、シリンダチューブ5a周壁のロッド5c側の端部付近には、シリンダ室5a内を外部と流通するためのポートPが設けられている。ポートPは、管路16によって圧力調節部7に連結されている。
【0057】
図5に示したような第1の状態では、三叉弁7cは、図11に示すように、シリンダチューブ5aとサージタンク7aが連結される第1の状態となる。最初に第1の状態にした時には、エアシリンダ5は圧縮されていないので、シリンダチューブ5a及びサージタンク7a内はほぼ大気圧である。第1の状態では、エアシリンダ5は圧縮されて、シリンダチューブ5a及びサージタンク7a内の圧力は上昇する。
【0058】
図7に示したような第2の状態では、三叉弁7cは、図12に示すように、シリンダチューブ5aが大気開放される第2の状態となる。第2の状態では、シリンダチューブ5aが大気開放されているので、容易に膝を曲げることが可能となる。
【0059】
次に、エアシリンダ5をリンク機構に用いた実施形態について説明する。
【0060】
次に、第2実施形態について説明する。
【0061】
図13は、第2実施形態の脚補助装置1を示す図である。
【0062】
第2実施形態の脚補助装置1は、支持部3と連結部6とを脚部9で接続する。脚部9は、支持部3に自由な角度で回動自在に接続された第1脚部材9aと、連結部6に自由な角度で回動自在に接続された第2脚部材9bと、第1脚部材9aと第2脚部材9bとを回動可能に接続する関節部材9cと、第1脚部材9aとエアシリンダ5とを接続する第1シリンダ接続部9dと、第2脚部材9bとエアシリンダ5とを接続する第2シリンダ接続部9eと、を有する。なお、図示していないが、第1実施形態と同様に、圧力調節部7及びスイッチ8も有する。
【0063】
第2実施形態の脚補助装置1では、第1脚部材9aと第2脚部材9bとの間にエアシリンダ5を介在させることで、エアシリンダ5の長さを短くすることが可能となる。
【0064】
例えば、第1シリンダ接続部9dの位置を第1脚部材9aの長さLの1/2の位置に設定し、第2シリンダ接続部9eの位置を第2脚部材9bの長さLの1/2の位置に設定した場合、腰部高さの変化:エアシリンダ5の圧縮長さの変化=2:1となる。
【0065】
このように、エアシリンダ5の長さを短くすることができ、設計の自由度が増加すると共に、装着者も容易に使用することが可能となる。
【0066】
次に、第3実施形態について説明する。
【0067】
図14は、第3実施形態の脚補助装置1を示す図である。
【0068】
第3実施形態の脚補助装置1は、支持部3と連結部6とを脚部9で接続する点では第2実施形態と同様であるが、オフセット部材9fを設けて、エアシリンダ5を支持する位置をオフセットさせる点で異なる。図14に示すように、第3実施形態では、第1シリンダ接続部9dを第1脚部材9aの関節部材9cから距離aの位置に設定し、第2シリンダ接続部9eを、第2脚部材9bから角度φだけ内側にオフセットさせたオフセット部材9f上の関節部材9cから距離bの位置に設定する。そして、オフセット部材9fは、第2脚部材9bとオフセット角度φを保持したままで移動する。
【0069】
第2実施形態の脚補助装置1では、式(1)からわかるように、離地時の残りシリンダストロークnを短くすると、離地時と接地時との補償力が大きくなる。そのため、補償力を大きくするためには、nを小さくすればよい。しかしながら、単純にnを小さく設定すると、シリンダチューブ5aの可動範囲が小さくなってしまい、装着者の直立状態から腰を落とせる範囲も小さくなってしまう。
【0070】
そこで、第3実施形態のように、エアシリンダ5を接続する第2シリンダ接続部9eを第2脚部材9bから角度φだけ内側にオフセットさせると、
【0071】
装着者の腰部高さの変化とシリンダ圧縮長さの変化の比が、腰部高さHの関数となり、腰部高さの変化に対するシリンダ圧縮長さの比を変化させることが可能となる。
【0072】
このオフセット各φを利用して、装着者の腰部が高い位置にあるとき、すなわち歩行時は腰部高さに対してより多くシリンダを変化させ、装着者の腰部が低い位置にあるとき、すなわち膝の屈折時はシリンダの変化を小さくすることで、歩行時の補償力と可動範囲の確保を両立できる。
【0073】
図15は腰部高さに対するレバー比を示すグラフ、図16は腰部高さに対する補償力を示すグラフである。図15及び図16の計算には、以下のパラメータを用いた。なお、単位はa,b,Lは(mm)、φは(rad)である。
第2実施形態(図13) 第3実施形態(図14)
a 340 420
b 340 250
L 600 600
φ 0 0.331613
【0074】
図15及び図16では、横軸のH=700mmの位置が、装着者が膝を完全に伸ばした時の腰部の高さを示している。図13に示した第2実施形態では、可動範囲が260mmであり、H=440mmまで腰部を下方に移動させることができる。また、図14に示した第3実施形態では、可動範囲が420mmであり、H=280mmまで腰部を下方に移動させることができる。図15及び図16に示すように、第2実施形態と第3実施形態がc+n=250mmの同じエアシリンダ5を用いても、第3実施形態の方が可動範囲は大きい。
【0075】
さらに、オフセット角度φ、シリンダ取付位置a,b及びシリンダ断面積A等の各種パラメータを調整することで、最大補償力と可動範囲が両方とも高い最適化例を実現することが可能となる。
【0076】
次に、第4実施形態について説明する。
【0077】
図17は、第4実施形態の脚補助装置1を示す図である。
【0078】
第4実施形態の脚補助装置1は、支持部3と連結部6とを脚部9で接続する点では第2実施形態と同様であるが、オフセット部材9fをサドル2aに連結して、エアシリンダ5を支持する位置をオフセットさせる点で異なる。図17に示すように、第4実施形態では、第1シリンダ接続部9dをサドル2aに回動可能に接続したオフセット部材9fに接続し、第2シリンダ接続部9eを、第2脚部材9b上に設定する。
【0079】
このように、オフセット部材9fをサドル2aに接続して、オフセット部材9fとエアシリンダ5を接続するので、股関節とオフセットすることができ、股関節まわりにモーメントを発生させることが可能となる。そして、股関節まわりにモーメントを発生させることができるので、離地時と接地時にかかる股関節まわりのトルクも補償可能となる。
【0080】
なお、図示しないが、オフセット部材を足部4に接続すると、足首の関節に対するモーメントを発生させることも可能である。
【0081】
次に、第5実施形態について説明する。
【0082】
図18は第5実施形態の脚補助装置1を示す図、図19は第5実施形態の圧力調節部の回路図を示す図である。
【0083】
第5実施形態の脚補助装置1は、図14に示した第3実施形態におけるエアシリンダ5、第1シリンダ接続部9d、第2シリンダ接続部9e及びオフセット部材9fを、図18に示すように、第1脚部材9aに対して装着者の前方側に配置したものである。
【0084】
したがって、第5実施形態では、エアシリンダ5が伸びる動作で第1脚部材9aと第2脚部材9bとが屈折し、エアシリンダ5が縮む動作で第1脚部材9aと第2脚部材9bとが伸びる。
【0085】
そのため、図19に示すように、エアシリンダ5との接続部7eがピストン5bに対して逆に配置されている。そして、スイッチ8が地面に接地すると、脚補助装置1の三叉弁7cは第1の状態となり、スイッチ8が地面から離間すると、三叉弁7cは第2の状態となる。
【0086】
次に、第6実施形態について説明する。
【0087】
図20は第6実施形態の圧力調節部の回路図を示す図である。
【0088】
第6実施形態の脚補助装置1は、図19に示した第5実施形態の圧力調節部7の回路を変更したものである。第6実施形態の圧力調節部7は、第1三叉弁7cと第2三叉弁7fを有する。そして、第1三叉弁7cと第2三叉弁7fを図20に示す状態とすることで、第1シリンダ室5a1内に充填されていた大気圧よりも気圧の高い空気を、第2シリンダ室5a2内に開放する。
【0089】
したがって、第1シリンダ室5a1と第2シリンダ室5a2との面積の差を利用して、エアシリンダ5が伸びる方向に動く力で、装着者の足が離地している状態で膝が屈折する方向の補償力を発生させることが可能となる。
【0090】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…脚補助装置
2…装着部
3…支持部
4…足部
5…エアシリンダ
5a…シリンダチューブ
5b…ピストン
5c…ロッド
6…連結部
7…圧力調節部
7a…サージタンク
7b…圧力調整弁
7c…三叉弁(第1三叉弁)
7d…逆止弁
7e…接続部
7f…第2三叉弁
8…スイッチ
9…脚部
9a…第1脚部材
9b…第2脚部材
9c…関節部材
9d…第1シリンダ接続部
9e…第2シリンダ接続部
9f…オフセット部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者に装着する装着部と、
前記装着者の左右の足をそれぞれ支持する左右の足部と、
前記装着部と前記左右の足部とをそれぞれ連結する左右のエアシリンダと、
前記左右のエアシリンダ内の圧力をそれぞれ調節する左右の圧力調節部と、
前記左右の圧力調節部を作動させる左右のスイッチと、
を有することを特徴とする脚補助装置。
【請求項2】
前記圧力調節部は、
空気を貯蔵するサージタンクと、
前記サージタンク内の圧力を調整する圧力調整弁と、
前記サージタンクと前記エアシリンダ内とを接続する第1の状態と前記エアシリンダ内を大気と接続する第2の状態を切り替える三叉弁と、
前記エアシリンダ内が大気圧よりも低くなった場合に大気を吸引するための逆止弁と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の脚補助装置。
【請求項3】
前記スイッチは、地面に当接した場合に前記三叉弁を第1の状態とし、地面と離間した場合に前記三叉弁を第2の状態とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脚補助装置。
【請求項4】
前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、
前記脚部は、
前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、
前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、
前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、
前記第1脚部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、
前記第2脚部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の脚補助装置。
【請求項5】
前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、
前記脚部は、
前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、
前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、
前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、
前記第2脚部材と所定の角度を保持して前記関節部材に接続されるオフセット部材と、
前記第1脚部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、
前記オフセット部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の脚補助装置。
【請求項6】
前記装着部と前記足部とを接続する脚部を有し、
前記脚部は、
前記装着部に回動可能に接続される第1脚部材と、
前記足部に回動可能に接続される第2脚部材と、
前記第1脚部材と前記第2脚部材とを回動可能に接続する関節部材と、
前記装着部に接続されるオフセット部材と、
前記オフセット部材と前記エアシリンダとを接続する第1シリンダ接続部と、
前記第2脚部材と前記エアシリンダとを接続する第2シリンダ接続部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の脚補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−196431(P2012−196431A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32865(P2012−32865)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】