説明

脱穀装置の選別構造

【課題】 処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などのいずれにおいても、選別性能及び選別効率の向上を図れるようにしながら、低速作業時や旋回走行時などにおける穀粒回収効率の低下を回避できるようにする。
【解決手段】 脱穀部Aからの処理物を揺動選別する揺動選別手段5と、処理物を風力選別する選別風Fを生起する起風手段6とを備え、揺動選別手段5における、脱穀部Aの受網3から漏下した処理物を比重差選別する前部グレンパン13の下方に、前部グレンパン13からの処理物を篩い選別するチャフシーブ19を、前部グレンパン13との間に選別風Fを通す落差28を有するように配備し、揺動選別手段5における前部グレンパン13とチャフシーブ19との間の落差形成箇所に、前部グレンパン13からチャフシーブ19に移送される処理物を中継する補助グレンパン15を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀部による脱穀処理後の処理物を揺動選別する揺動選別手段と、前記処理物を風力選別する選別風を生起する起風手段とを装備し、前記揺動選別手段に、前記脱穀部の受網から漏下した処理物を比重差選別する前部グレンパンと、この前部グレンパンからの処理物を篩い選別するチャフシーブとを備えた脱穀装置の選別構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の選別構造においては、チャフシーブ又はチャフシーブの前端に連設した後フィードパンを、前部グレンパン(前フィードパン)との間に選別風を通す落差を有するように前部グレンパン(前フィードパン)の下方に配備したものがある(例えば特許文献1又は2参照)。
【特許文献1】特開2000−166369号公報
【特許文献2】特許第3118685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成は、刈取搬送部から多くの刈取穀稈が連続供給されることで処理物量が多くなる通常の刈り取り作業においては、前部グレンパン(前フィードパン)からチャフシーブ又は後フィードパンに落下供給される大量の処理物に対して、前部グレンパン(前フィードパン)とチャフシーブ又は後フィードパンとの落差を通る選別風が効果的に作用して、処理物を比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに適切に吹き分けることから、処理物の良好な選別を効率良く行えるのであるが、刈取穀稈の倒伏に起因した作業速度の低下で刈取搬送部からの刈取穀稈が減少して処理物量が少なくなる低速作業時や、刈取搬送部からの刈取穀稈の供給が一時的に停止されることで処理物量が少なくなる畦際での旋回走行時などにおいては、処理物量の減少に起因して、前部グレンパン(前フィードパン)からチャフシーブ又は後フィードパンに落下供給される処理物のうちの穀粒が、揺動選別手段の作用を受けて跳ね上がり易くなる上に、その跳ね上がった穀粒に対して、前部グレンパン(前フィードパン)とチャフシーブ又は後フィードパンとの落差を通る選別風が効果的に作用することから、処理物中の穀粒が、より後方に吹き飛ばされてチャフシーブの後部側(選別方向下手側)などに到達し易くなり、結果、1番物である単粒化穀粒が、チャフシーブの後下方に位置する2番回収部に供給されて2番物として揺動選別手段に還元されることに起因した選別効率の低下や、穀粒がワラ屑などの塵埃とともに機外に排出されることに起因した3番ロスの増大による穀粒回収効率の低下を招き易くなっていた。
【0004】
本発明の目的は、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などのいずれにおいても、選別性能及び選別効率の向上を図れるようにしながら、低速作業時や旋回走行時などにおける穀粒回収効率の低下を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、脱穀部による脱穀処理後の処理物を揺動選別する揺動選別手段と、前記処理物を風力選別する選別風を生起する起風手段とを装備し、前記揺動選別手段に、前記脱穀部の受網から漏下した処理物を比重差選別する前部グレンパンと、この前部グレンパンからの処理物を篩い選別するチャフシーブとを備えた脱穀装置の選別構造において、前記チャフシーブを、前記前部グレンパンとの間に前記選別風を通す落差を有するように前記前部グレンパンの下方に配備するとともに、前記揺動選別手段における前記前部グレンパンと前記チャフシーブとの間の落差形成箇所に、前記前部グレンパンから前記チャフシーブに移送される処理物を中継する補助グレンパンを設けてある。
【0006】
この構成によると、前部グレンパンに漏下した処理物は、揺動選別手段の作用で、前部グレンパンにおいて比重差選別されながら、前部グレンパンから補助グレンパンに向けて落下供給されるとともに、その落下供給の際に、前部グレンパンと補助グレンパンとの間を通る選別風によって、比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに吹き分けられる。そして、その吹き分け後に補助グレンパンに落下供給された処理物は、補助グレンパンにおいて比重差選別されながら、補助グレンパンからチャフシーブに向けて落下供給されるとともに、その落下供給の際に、補助グレンパンとチャフシーブとの間を通る選別風によって、比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに吹き分けられる。
【0007】
つまり、前部グレンパンとチャフシーブとの間に形成される落差を、補助グレンパンによって上下方向に分割した状態となり、これによって、落差の全体としては大きい落差を確保しながらも、実際に処理物が落下供給される前部グレンパンと補助グレンパンとの間、及び、補助グレンパンとチャフシーブとの間に形成されるそれぞれの落差としては、揺動選別手段の作用による処理物中の穀粒の跳ね上がりを抑制できる比較的小さいものにすることができる一方で、処理物が前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される際には、前部グレンパンと補助グレンパンとの間を通る選別風が作用し、又、処理物が補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される際には、補助グレンパンとチャフシーブとの間を通る選別風が作用することから、処理物に対しては、前部グレンパンとチャフシーブとの間に大きい落差を形成した場合と同様に、落差を通る選別風を効果的に作用させることができる。
【0008】
従って、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにかかわらず、処理物が、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される際や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される際には、対応する落差を通る選別風が効果的に作用して、処理物を比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに適切に吹き分けることから、選別性能及び選別効率の向上を図れるようになり、又、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにおいては、揺動選別手段の作用による穀粒の跳ね上がりが抑制されて、跳ね上がる穀粒に落差を通る選別風が効果的に作用する虞を軽減でき、これによって、跳ね上がる穀粒に選別風が作用することに起因したチャフシーブの後部側(選別方向下手側)への穀粒の吹き飛ばしを効果的に防止でき、1番物である単粒化穀粒が、チャフシーブの後下方に位置する2番回収部に供給されて2番物として揺動選別手段に還元されることに起因した選別効率の低下や、穀粒がワラ屑などの塵埃とともに機外に排出される3番ロスの発生を招き難くすることができ、結果、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などのいずれにおいても、選別性能及び選別効率の向上を図れるとともに、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにおける3番ロスに起因した穀粒回収効率の低下を回避できる。
【0009】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記起風手段に、精選別用の主唐箕と粗選別用の副唐箕とを備え、前記落差に、前記副唐箕からの選別風を通すように構成してある。
【0010】
この構成によると、起風手段として備えた単一の唐箕からの選別風を分流して落差に通す場合に比較して、落差に通す選別風の確保や案内が行い易くなり、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物に対して、適正量の選別風を効果的に作用させることができ、又、主唐箕からの選別風で精選別される処理物に対しても、適正量の選別風を効果的に作用させることができる。
【0011】
従って、主唐箕からの選別風による処理物の精選別と、副唐箕からの選別風による処理物の粗選別とにかかわらず、処理物を、比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに、より精度良く吹き分けることができ、結果、選別能力や選別効率とともに穀粒回収効率の向上を更に図ることができる。
【0012】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記補助グレンパンを、その後端部が前記ストローラックの前端部よりも低くなるように配備してある。
【0013】
この構成によると、補助グレンパンにおける後端部の位置がストローラックの前端部よりも低くなり、又、補助グレンパンの下方に位置するチャフシーブの位置がストローラックの前端部よりも更に低くなり、これによって、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物中の穀粒が、揺動選別手段の作用で跳ね上がったとしても、ストローラックに乗り上がる虞を大幅に軽減できる。
【0014】
従って、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物中の穀粒が、ストローラックに乗り上がって、送塵口から流下した処理物中の切れワラなどとともに機外に排出される3番ロスの発生を効果的に抑制でき、結果、穀粒回収効率の向上を更に図ることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記揺動選別手段の後部上方に、前記選別風で吹き分けられた塵埃を吸引して機外に排出する排塵ファンを配備し、前記ストローラックの姿勢を、前記落差を通る選別風を前記排塵ファンの吸入口に向けて案内する後上がり姿勢に設定してある。
【0016】
この構成によると、前部グレンパンと補助グレンパンとの間の落差を通る選別風は、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、ストローラックの上部側に沿って排塵ファンの吸入口に向けて流動し、又、補助グレンパンとチャフシーブとの間の落差を通る選別風は、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、ストローラックの下部側に沿って排塵ファンの吸入口に向けて流動し、更に、それらの選別風は、ストローラックに沿って流動する際に、送塵口からストローラックに向けて流下する処理物に作用して、その処理物を比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに吹き分けて、そのワラ屑などの塵埃を排塵ファンの吸入口に向けて搬送し、それらのワラ屑などの塵埃とともに排塵ファンの排出口から機外に排出される。
【0017】
従って、落差を通る選別風によって、脱穀処理で発生したワラ屑などの塵埃を効率良く機外に排出することができ、処理物におけるワラ屑などの削減を迅速かつ良好に行えることから、選別性能及び選別効率の向上を更に図ることができる。
【0018】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記補助グレンパンを、その後端部が前記ストローラックの前端部よりも低くなるように配備し、前記揺動選別手段の後部上方に、前記選別風で吹き分けられた塵埃を吸引して機外に排出する排塵ファンを配備し、前記ストローラックの姿勢を、前記落差を通る選別風を前記排塵ファンの吸入口に向けて案内する後上がり姿勢に設定してある。
【0019】
この構成によると、補助グレンパンにおける後端部の位置がストローラックの前端部よりも低くなり、又、補助グレンパンの下方に位置するチャフシーブの位置がストローラックの前端部よりも更に低くなり、これによって、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物中の穀粒が、揺動選別手段の作用で跳ね上がったとしても、ストローラックに乗り上がる虞を大幅に軽減できる。
【0020】
又、前部グレンパンと補助グレンパンとの間の落差を通る選別風は、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、ストローラックの上部側に沿って排塵ファンの吸入口に向けて流動し、又、補助グレンパンとチャフシーブとの間の落差を通る選別風は、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、ストローラックの下部側に沿って排塵ファンの吸入口に向けて流動し、更に、それらの選別風は、ストローラックに沿って流動する際に、送塵口からストローラックに向けて流下する処理物に作用して、その処理物を比重の大きい穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに吹き分けて、そのワラ屑などの塵埃を排塵ファンの吸入口に向けて搬送し、それらのワラ屑などの塵埃とともに排塵ファンの排出口から機外に排出される。
【0021】
従って、前部グレンパンから補助グレンパンに落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパンからチャフシーブに落下供給される処理物中の穀粒が、ストローラックに乗り上がって、送塵口から流下した処理物中の切れワラなどとともに機外に排出される3番ロスの発生を効果的に抑制でき、又、落差を通る選別風によって、脱穀処理で発生したワラ屑などの塵埃を効率良く機外に排出することができて、処理物におけるワラ屑などの削減を迅速かつ良好に行えることになり、結果、穀粒回収効率とともに選別性能及び選別効率の向上を更に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1にはコンバインに搭載される脱穀装置の縦断側面が示されており、この脱穀装置は、刈取穀稈を後方に向けて搬送しながらその穂先側に対して脱穀処理を施す脱穀部A、その脱穀処理で得た処理物に対して選別処理を施す選別部B、及び、その選別処理で得た1番物と2番物とを回収する回収部C、などを備えて構成されている。
【0023】
図1〜3に示すように、脱穀部Aは、刈取穀稈を横向き姿勢で挾持搬送するフィードチェーン1、前後向きの軸芯P周りに回転駆動される扱胴2、扱胴2の下部側に配備された受網3、及び、受網3の後方に形成された送塵口4、などによって構成され、フィードチェーン1による挾持搬送で、扱胴2と受網3との間を通るように供給搬送される刈取穀稈の穂先側に対して、前後向きの軸芯Pを中心にして正面視右回りに回転駆動される扱胴2が脱穀処理を施して、刈取穀稈の穂先側から穀粒を分離するとともに単粒化を促し、その脱穀処理で単粒化した穀粒や、枝梗付きの穀粒、及び、脱穀処理で発生したワラ屑などを、処理物として受網3から選別部Bの前部側(選別方向上手側)に向けて漏下させ、又、切れワラなどとともに受網3から漏下しなかった単粒化穀粒や枝梗付きの穀粒などを、処理物として送塵口4から選別部Bの後部側(選別方向下手側)に向けて流下させる。
【0024】
選別部Bは、脱穀部Aからの処理物を揺動選別する揺動選別手段5、及び、脱穀部Aからの処理物を風力選別する選別風Fを生起する起風手段6、などを備えて構成され、処理物に対する揺動選別及び風力選別によって、脱穀部Aからの処理物を、1番物としての単粒化穀粒と、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物と、3番物としての切れワラなどとに選別する。
【0025】
回収部Cは、揺動選別手段5の選別方向上手側の下方に形成した1番回収部7、及び、揺動選別手段5の選別方向下手側の下方に形成した2番回収部8、などによって構成され、1番回収部7は、選別部Bで選別された1番物を回収するとともに、回収した1番物を、その底部に左右向きに配備した1番スクリュー9によって、その右端に連通接続した図外の揚送スクリューに向けて搬送するように、又、2番回収部8は、選別部Bで選別された2番物を回収するとともに、回収した2番物を、その底部に左右向きに配備した2番スクリュー10によって、その右端に連通接続した図外の2番還元スクリューに向けて搬送するように構成されている。
【0026】
ちなみに、揚送スクリューは、1番スクリュー9によって搬送された1番物を揚送し、脱穀装置の右側方に並設された図外の穀粒タンクに上方から供給する。2番還元スクリューは、2番スクリュー10によって搬送された2番物を揚送して揺動選別手段5に還元する。
【0027】
揺動選別手段5は、前後揺動可能に支持された枠状のシーブケース11、シーブケース11を前後方向(選別方向)に揺動駆動する駆動機構12、シーブケース11の上部前端に配備した前部グレンパン13、左右方向に所定間隔を隔てて整列する状態で前部グレンパン13の後端部から後方に向けて延設した複数の篩線14、前部グレンパン13の後下方に位置するようにシーブケース11の前上部に配備した補助グレンパン15、左右方向に所定間隔を隔てて整列する状態で補助グレンパン15の後端部から後方に向けて延設した複数の補助篩線16、前部グレンパン13の後方に位置するようにシーブケース11の前後中間上部に配備した後部グレンパン17、左右方向に所定間隔を隔てて整列する状態で後部グレンパン17から後上方に向けて延設された複数の第1ストローラック18、補助グレンパン15の後下方に位置するようにシーブケース11の中央部に配備したチャフシーブ19、左右方向に所定間隔を隔てて整列する状態でチャフシーブ19の後端に連なるようにシーブケース11の後部に配備した複数の第2ストローラック20、チャフシーブ19の前部下方に位置するようにシーブケース11の下部に配備した下部グレンパン21、及び、下部グレンパン21の後端に連なるようにシーブケース11の下部に配備した網状のグレンシーブ22、などによって構成されている。
【0028】
前部グレンパン13は、受網3の前部側から漏下した処理物を受け止めるとともに、シーブケース11の前後揺動に伴って、その受け止めた処理物を、そのうちの比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが沈下し、比重の小さい切れワラやワラ屑などが浮上するように比重差選別しながら後方に向けて移送する。
【0029】
複数の篩線14は、前部グレンパン13で移送された処理物を受け取るとともに受網3の前後中間部から漏下した処理物を受け止め、シーブケース11の前後揺動に伴って、それらの処理物を篩い選別して、大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを漏下させるようにしながら、大きさの大きい(長い)切れワラなどを後方に向けて移送する。
【0030】
補助グレンパン15は、その前部側(選別方向上手側)において、複数の篩線14の間から漏下した単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止め、かつ、その後部側(選別方向下手側)において、複数の篩線14で移送された切れワラなどを受け取るとともに、受網3の前後中間部から漏下した処理物を受け止め、シーブケース11の前後揺動に伴って、それらの処理物を、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが沈下し、比重の小さい切れワラやワラ屑などが浮上するように比重差選別しながら後方に向けて移送する。
【0031】
複数の補助篩線16は、補助グレンパン15で移送された処理物を受け取るとともに、受網3の前後中間部から漏下した処理物を受け止め、シーブケース11の前後揺動に伴って、それらの処理物を篩い選別して、大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを漏下させるようにしながら、大きさの大きい(長い)切れワラなどを後方に向けて移送する。
【0032】
後部グレンパン17は、送塵口4から流下した処理物のうち、複数の第1ストローラック18における前部側の間から漏下した大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止めるとともに、シーブケース11の前後揺動に伴って、受け止めた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが沈下し、比重の小さいワラ屑などが浮上するように比重差選別しながら後方に向けて移送する。
【0033】
複数の第1ストローラック18は、送塵口4から流下した処理物を受け止めるとともに、シーブケース11の前後揺動に伴って、受け止めた処理物を篩い選別して、大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを漏下させるようにしながら、大きさの大きい(長い)切れワラなどを後方に向けて移送する。
【0034】
チャフシーブ19は、その後端部が開度調節不能な固定式に構成され、又、その後端部以外が開度調節可能な可動式に構成され、その前端部(選別方向上手側端部)において、複数の補助篩線16の間から漏下した単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止め、又、その前部側(選別方向上手側)において、複数の補助篩線16で移送された切れワラなどを受け取るとともに、受網3の後部側から漏下した処理物を受け止め、更に、その後部側(選別方向下手側)において、後部グレンパン17で移送された単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などとともに、複数の第1ストローラック18における後部側の間から漏下した大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止め、シーブケース11の前後揺動に伴って、それらの処理物を篩い選別して、大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを漏下させるようにしながら、大きさの大きい(長い)切れワラなどを後方に向けて移送する。
【0035】
複数の第2ストローラック20は、チャフシーブ19で移送された切れワラなどを受け取るとともに、シーブケース11の前後揺動に伴って、受け取った切れワラなどを篩い選別して、切れワラに混入した大きさの小さい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを下方の2番回収部8に漏下させながら、大きさの大きい(長い)切れワラなどを後方に向けて移送し、選別部Bの後端部に形成した排塵口23から機外に排出する。
【0036】
下部グレンパン21は、チャフシーブ19の前部側(選別方向上手側)から漏下した単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止めるとともに、シーブケース11の前後揺動に伴って、受け止めた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが沈下し、比重の小さいワラ屑などが浮上するように比重差選別しながら後方に向けて移送する。
【0037】
グレンシーブ22は、下部グレンパン21で移送された単粒化穀粒や枝梗付き穀粒など受け取るとともに、チャフシーブ19の後部側(選別方向下手側)から漏下した単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを受け止め、シーブケース11の前後揺動に伴って、それらの単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などを篩い選別して、その目合いより小さい単粒化穀粒を下方の1番回収部7の漏下させながら、その目合いより大きい枝梗付き穀粒などを後方に向けて移送し、後下方の2番回収部8に向けて流下させる。
【0038】
つまり、揺動選別手段5は、その揺動運動で、脱穀部Aからの処理物を拡散させながら単粒化穀粒や枝梗付き穀粒あるいは切れワラなどに篩い分けるとともに、その篩い分けた単粒化穀粒を1番回収部7に供給し、枝梗付き穀粒などを2番回収部8に供給し、切れワラなどを排塵口23に移送して機外に排出するように構成されている。
【0039】
尚、図示は省略するが、チャフシーブ19の開度は、マイクロコンピュータからなる制御装置が、刈取穀稈の搬送量などを選別部Bでの処理物量として検出するセンサからの検出値に基づいて、そのセンサの検出値が大きい(刈取穀稈の搬送量が多い)ほど、選別部Bでの処理物量が多いと判断するとともに、その判断に応じて、選別部Bでの処理物量が多いほどチャフシーブ19の開度が大きくなるようにチャフ開度調節用の電動モータの作動を制御することで、選別部Bでの処理物量に応じた適正な開度に調節されるようになっており、もって、選別部Bでの処理物量が多い場合には、チャフシーブ19からの単粒化穀粒や枝梗付き穀粒。
【0040】
図1〜4に示すように、起風手段6は、揺動選別手段5の前下方に配備した精選別用の主唐箕24と、揺動選別手段5の上部前方に配備した粗選別用の副唐箕25とを備えて構成され、主唐箕24に伝達された作業用動力が、ベルト式伝動機構26を介して副唐箕25に伝達されている。
【0041】
図1〜3に示すように、主唐箕24で生起した精選別用の選別風Fは、風向板27Aによって上下に二分された精選別用の風路27における上側の第1風路部27aを通ってグレンシーブ22やチャフシーブ19などに向けて吹き上げる第1精選別風f1と、下側の第2風路部27bからグレンシーブ22の下方を通って第2ストローラック20などに向けて吹き上げる第2精選別風f2とに分流され、第1精選別風f1によって、グレンシーブ22で移送される処理物や、チャフシーブ19からグレンシーブ22に向けて漏下する処理物などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに吹き分け、又、第2精選別風f2によって、グレンシーブ22から1番回収部7に向けて漏下する処理物や、第2ストローラック20から2番回収部8に向けて漏下する処理物、及び、第2ストローラック20で移送される処理物などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに吹き分け、切れワラやワラ屑などの1番回収部7や2番回収部8への流下を防止するとともに排塵口23などから機外への排出を促進させる。
【0042】
副唐箕25で生起した粗選別用の選別風Fは、補助グレンパン15によって上下に二分された前部グレンパン13とチャフシーブ19との間の落差28における、前部グレンパン13と補助グレンパン15との間の第1落差部28aを通って受網3と後部グレンパン17との間に向けて吹き抜ける第1粗選別風f3と、補助グレンパン15とチャフシーブ19との間の第2落差部28bを通って後部グレンパン17とチャフシーブ19との間に向けて吹き抜ける第2粗選別風f4とに分流され、第1粗選別風f3によって、前部グレンパン13から補助グレンパン15に向けて落下する処理物や、受網3から補助グレンパン15やチャフシーブ19に向けて漏下する処理物、及び、送塵口4から複数の第1ストローラック18に向けて流下する処理物などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに吹き分け、又、第2粗選別風f4によって、補助グレンパン15からチャフシーブ19に向けて落下する処理物や、受網3からチャフシーブ19に向けて漏下する処理物、及び、複数の第1ストローラック18の間からチャフシーブ19に向けて流下する処理物などを、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに吹き分け、切れワラやワラ屑などの補助グレンパン15やチャフシーブ19などへの流下を防止するとともに排塵口23などから機外への排出を促進させる。
【0043】
つまり、起風手段6に、精選別用の主唐箕24と粗選別用の副唐箕25とを備えたことで、揺動選別手段5の上部側を流動する粗選別風f3,f4と、揺動選別手段5の下部側を流動する粗選別風f3,f4の適確保が行い易くなり、これによって、前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される処理物や、補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される処理物、などに対しては、適正量の粗選別風f3,f4を効果的に作用させることができ、又、グレンシーブ22から1番回収部7に向けて漏下する処理物や、第2ストローラック20から2番回収部8に向けて漏下する処理物、などに対しては、適正量の精選別風f3,f4を効果的に作用させることができ、結果、主唐箕24からの精選別風f1,f2による処理物の精選別と、副唐箕25からの粗選別風f3,f4による処理物の粗選別とのいずれにおいても、処理物を、比重の大きい単粒化穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに精度良く吹き分けることができ、結果、切れワラやワラ屑などの揺動選別手段5や各回収部7,8への流下を効果的に抑制できるとともに排塵口23などからの機外への排出を効果的に促進できる。
【0044】
又、以上の構成から、前部グレンパン13とチャフシーブ19との間に形成される落差28が、補助グレンパン15によって上下に分割された状態となり、これによって、落差28の全体としては大きい落差を確保しながらも、実際に処理物が落下供給される前部グレンパン13と補助グレンパン15との間、及び、補助グレンパン15とチャフシーブ19との間に形成されるそれぞれの落差(第1落差部28aと第2落差部28b)としては、揺動選別手段5の作用による処理物中の穀粒の跳ね上がりを抑制できる比較的小さいものにすることができる一方で、処理物が前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される際には、前部グレンパン13と補助グレンパン15との間を通る第1粗選別風f3が作用し、又、処理物が補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される際には、補助グレンパン15とチャフシーブ19との間を通る第2粗選別風f4が作用することから、処理物に対しては、前部グレンパン13とチャフシーブ19との間に大きい落差を形成した場合と同様に、落差28を通る粗選別風f3,f4を効果的に作用させることができる。
【0045】
その結果、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにかかわらず、処理物が、前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される際や、補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される際には、対応する落差(第1落差部28a又は第2落差部28b)を通る粗選別風(第1粗選別風f3又は第2粗選別風f4)が効果的に作用して、処理物を比重の大きい単粒化穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに適切に吹き分けることから、選別性能及び選別効率の向上を図れるようになり、又、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにおいては、揺動選別手段5の作用による穀粒の跳ね上がりが抑制されて、跳ね上がる穀粒に落差28を通る粗選別風f3,f4が効果的に作用する虞を軽減でき、これによって、跳ね上がる穀粒に粗選別風f3,f4が作用することに起因したチャフシーブ19の後部側(選別方向下手側)への穀粒の吹き飛ばしを効果的に防止できることから、1番物である単粒化穀粒が、チャフシーブ19の後下方に位置する2番回収部8に供給されて、2番物として揺動選別手段5に還元されることに起因した選別効率の低下や、穀粒がワラ屑などの塵埃とともに機外に排出される3番ロスの発生を招き難くすることができ、もって、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などのいずれにおいても、選別性能及び選別効率の向上を図れるとともに、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにおける3番ロスに起因した穀粒回収効率の低下を回避できる。
【0046】
尚、図1に示す符号29は、揺動選別手段5における第1ストローラック18の後部上方に、選別風Fで吹き分けられた切れワラやワラ屑などの塵埃を、前方の吸入口29Aから吸引して後方の排出口29Bから機外に排出するように配備された排塵ファンである。
【0047】
補助グレンパン15は、その高さ位置が第1ストローラック18よりも低くなるように配置設定されており、又、これによって、補助グレンパン15の後下方に位置するチャフシーブ19の位置が第1ストローラック18に対して更に低くなることから、前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される処理物中の穀粒が、揺動選別手段5の作用で跳ね上がったとしても、第1ストローラック18に乗り上がる虞を大幅に軽減でき、結果、前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される処理物中の穀粒や、補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される処理物中の穀粒が、第1ストローラック18に乗り上がって、送塵口4から流下した処理物中の切れワラなどとともに排塵口23などから機外に排出される3番ロスの発生を更に抑制でき、3番ロスに起因した穀粒回収効率の低下をより効果的に回避できる。
【0048】
複数の第1ストローラック18は、落差28を通る粗選別風f3,f4を排塵ファン29の吸入口29Aに向けて案内する後上がり姿勢に設定されており、これによって、前部グレンパン13と補助グレンパン15との間の第1落差部28aを通る粗選別風f3は、前部グレンパン13から補助グレンパン15に落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、各第1ストローラック18の上部側に沿って排塵ファン29の吸入口29Aに向けて流動し、又、補助グレンパン15とチャフシーブ19との間の第2落差部28bを通る粗選別風f4は、補助グレンパン15からチャフシーブ19に落下供給される処理物から吹き分けた比重の小さいワラ屑などの塵埃とともに、各第1ストローラック18の下部側に沿って排塵ファン29の吸入口29Aに向けて流動し、更に、それらの粗選別風f3,f4は、各第1ストローラック18に沿って流動する際に、送塵口4から第1ストローラック18に向けて流下する処理物に作用して、その処理物を比重の大きい単粒化穀粒などと比重の小さいワラ屑などとに吹き分けて、そのワラ屑などの塵埃を排塵ファン29の吸入口29Aに向けて搬送し、それらのワラ屑などの塵埃とともに排塵ファン29の排出口29Bから機外に排出される。
【0049】
つまり、複数の第1ストローラック18を、落差28を通る粗選別風f3,f4を排塵ファン29の吸入口29Aに向けて案内する風向板として有効利用することで、落差28を通る粗選別風f3,f4によって、脱穀処理で発生したワラ屑などの塵埃を効率良く機外に排出することができ、処理物におけるワラ屑などの削減を迅速かつ良好に行えることから、選別部Bでの選別性能及び選別効率の向上を更に図ることができる。
【0050】
図1〜4に示すように、主唐箕24は、そのケーシング24Aの前下部に形成した開口24aを開閉する蓋体24Bを備え、この蓋体24Bの操作アーム24bが、第1操作ロッド30及びセクタギヤ31を介して電動モータ32の出力ギヤ32Aに操作連係され、この電動モータ32は、前述した図外の制御装置によって作動制御される。
【0051】
制御装置は、前述した図外のセンサからの検出値に基づいて、そのセンサの検出値が大きい(刈取穀稈の搬送量が多い)ほど、選別部Bでの処理物量が多いと判断するとともに、その判断に応じて、選別部Bでの処理物量が多いほど主唐箕24からの選別風量が多くなるように電動モータ32の作動を制御することで、選別部Bでの処理物量に応じた適正な精選別風f1,f2を主唐箕24にて生起させるように構成されている。
【0052】
尚、主唐箕24からの精選別風f1,f2は、蓋体24Bが開き操作されて開口24aの開度が大きくなるほど減少し、蓋体24Bが閉じ操作されて開口24aの開度が小さくなるほど増大する。
【0053】
副唐箕25は、その排気口25Aから排出した粗選別風f3,f4の全てを第1風路33を介して落差28に供給する姿勢と、その排気口25Aから排出した粗選別風f3,f4を第1風路33と第2風路34とに略均等に二分する姿勢とにわたって、その駆動軸25Bを支点にした姿勢変更が可能となるように構成され、又、そのケーシング25Cが、第2操作ロッド35及びセクタギヤ31を介して電動モータ32の出力ギヤ32Aに操作連係され、この操作連係によって、制御装置の制御作動による主唐箕24からの精選別風f1,f2の増減に比例して、落差28に供給する粗選別風f3,f4が増減されるように構成されている。
【0054】
この構成から、選別部Bでの処理物量に応じて、適正量の精選別風f1,f2及び粗選別風f3,f4を選別部Bに供給することができ、これによって、選別部Bでの処理物量が多い場合には、その処理物量に比例して増大する精選別風f1,f2及び粗選別風f3,f4によって、多量の処理物を、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに、より確実に吹き分けることができて、増大した切れワラやワラ屑などの揺動選別手段5や各回収部7,8への流下をより効果的に抑制できるとともに、排塵口23などからの機外への排出をより効果的に促進させることができ、逆に、選別部Bでの処理物量が少ない場合には、その処理物量に比例して減少する精選別風f1,f2及び粗選別風f3,f4によって、少量の処理物を、比重の大きい単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などと、比重の小さい切れワラやワラ屑などとに、穀粒の後方(選別方向下手側)への吹き飛ばしをより確実に抑制した状態で吹き分けることができることから、1番物である単粒化穀粒が、チャフシーブ19の後下方に位置する2番回収部8に供給されて、2番物として揺動選別手段5に還元されることに起因した選別効率の低下や、穀粒がワラ屑などの塵埃とともに機外に排出される3番ロスの発生をより効果的に招き難くすることができ、結果、処理物量が増大する通常作業時、及び、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などのいずれにおいても、より一層の選別性能及び選別効率の向上を図れるとともに、処理物量が減少する低速作業時や旋回走行時などにおける3番ロスに起因した穀粒回収効率の低下をより確実に回避できる。
【0055】
図1〜3及び図5に示すように、受網3は、打ち抜き加工が施された板金製で、その前端部が、扱胴2を支持する前側板36に設けた円弧状の受網ガイド37によって受け止め支持されており、これによって、例えば、前側板36と受網ガイド37との間に、扱胴前端の円錐台部2Aに沿って傾斜する案内面を備えた中継部材を介装する場合に比較して、部品点数やコストの削減を図れるようになり、又、前側板36の近傍からの穀粒などの漏下を促進させることができ、前側板36と受網3との間における穀粒や切れワラなどの残留を効果的に低減できる。
【0056】
又、受網3の前端部には、扱胴2の回転に伴って、受網3の前端部で滞留する穀粒や切れワラなどを後方側(脱穀方向下手側)に向けて流動案内する三角状の凸部3Aが備えられており、これによって、受網3の前端部での穀粒や切れワラなどの残留を抑制できる。
【0057】
図1〜3に示すように、処理物量の減少時に第2風路34に分流される粗選別風f3,f4は、前側板36に形成した穂先受入口36Aに供給されるようになっており、これによって、扱胴2の円錐台部2Aに設けた整梳歯2aが扱胴2の回転に伴って生起する吸引風が、穂先受入口36Aのフィードチェーン1側において吐出風となることに起因した穀粒の穂先受入口36Aからの漏れ出しを防止でき、殊に、穀粒の穂先受入口36Aからの漏れ出し量が、穂先受入口36Aに対する刈取穀稈の供給量が減少するほど多くなるのに対し、第2風路34に分流される粗選別風f3,f4は、選別部Bでの処理物量が減少するほど配分量が多くなることから、穀稈供給量の減少に伴って増大する穂先受入口36Aからの穀粒の漏れ出しを、第2風路34を介して供給される粗選別風f3,f4によって効果的に抑制でき、結果、穀粒回収効率の向上を更に図ることができる。
【0058】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
〔1〕起風手段6としては、副唐箕25を備えずに、主唐箕24で生起した選別風Fを、精選別用と粗選別用とに分流し、その粗選別用の選別風を、前部グレンパン13と補助グレンパン15との間の第1落差部28aを通る第1粗選別風f3と、補助グレンパン15とチャフシーブ19との間の第2落差部28bを通る第2粗選別風f4とに分流するように構成したものであってもよい。
【0059】
〔2〕落差28の大きさとしては種々の変更が可能であり、又、前部グレンパン13とチャフシーブ19との間に、複数の補助グレンパン15を、前部グレンパン13とチャフシーブ19との間の落差28を上下方向に複数に分けるとともに、上側の補助グレンパン15から下側の補助グレンパン15に処理物が順に受け継がれる状態に配備してもよい。
【0060】
〔3〕チャフシーブ19としては、その全体を開度調節可能な可動式に構成したものや、その全体を開度調節不能な固定式に構成したものであってもよく、又、チャフシーブ19の可動式部分を、その可動式部分を閉じ付勢するバネの作用と、可動式部分上の処理物の重量とに基づいて、可動式部分上の処理物の重量に応じて可動式部分が自動的に開度調節される重量感知式に構成したものであってもよい。
【0061】
〔4〕主唐箕24及び副唐箕25としては、変速操作で風量調節されるように構成したものであってもよく、又、副唐箕25としては姿勢変更不能に構成したものであってもよい。
【0062】
〔5〕補助グレンパン15としては、その後端部の位置のみが、その後方に位置する第1ストローラック18の少なくとも前端部よりも低くなるように配置設定したものであってもよい。
【0063】
〔6〕複数の第1ストローラック18のうち、所定間隔ごとに位置するものを後上がり姿勢に設定して、落差28を通る粗選別風f3,f4を排塵ファン29の吸入口29Aに向けて案内する風向板として有効利用するように構成してもよい。
【0064】
〔7〕後部グレンパン17としては、落差28を通る粗選別風f3,f4を排塵ファン29の吸入口29Aに向けて案内する風向板として有効利用できるように、後上がり姿勢に設定したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】処理物増大状態での選別部の構成を示す要部の縦断側面図
【図3】処理物減少状態での選別部の構成を示す要部の縦断側面図
【図4】起風手段の選別風調節構造を示す要部の縦断側面図
【図5】受網の前部及びその周辺の構成を示す腰部の斜視図
【符号の説明】
【0066】
3 受網
4 送塵口
5 揺動選別手段
6 起風手段
13 前部グレンパン
15 補助グレンパン
18 ストローラック
19 チャフシーブ
24 主唐箕
25 副唐箕
28 落差
29 排塵ファン
29A 吸入口
A 脱穀部
F 選別風
f3 選別風
f4 選別風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部による脱穀処理後の処理物を揺動選別する揺動選別手段と、前記処理物を風力選別する選別風を生起する起風手段とを装備し、前記揺動選別手段に、前記脱穀部の受網から漏下した処理物を比重差選別する前部グレンパンと、この前部グレンパンからの処理物を篩い選別するチャフシーブとを備えた脱穀装置の選別構造であって、
前記チャフシーブを、前記前部グレンパンとの間に前記選別風を通す落差を有するように前記前部グレンパンの下方に配備するとともに、前記揺動選別手段における前記前部グレンパンと前記チャフシーブとの間の落差形成箇所に、前記前部グレンパンから前記チャフシーブに移送される処理物を中継する補助グレンパンを設けてある脱穀装置の選別構造。
【請求項2】
前記起風手段に、精選別用の主唐箕と粗選別用の副唐箕とを備え、前記落差に、前記副唐箕からの選別風を通すように構成してある請求項1に記載の脱穀装置の選別構造。
【請求項3】
前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記補助グレンパンを、その後端部が前記ストローラックの前端部よりも低くなるように配備してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の選別構造。
【請求項4】
前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記揺動選別手段の後部上方に、前記選別風で吹き分けられた塵埃を吸引して機外に排出する排塵ファンを配備し、前記ストローラックの姿勢を、前記落差を通る選別風を前記排塵ファンの吸入口に向けて案内する後上がり姿勢に設定してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の選別構造。
【請求項5】
前記揺動選別手段における前記前部グレンパンの後方箇所に、前記脱穀部の送塵口から流下した処理物を篩い選別するストローラックを配備し、前記補助グレンパンを、その後端部が前記ストローラックの前端部よりも低くなるように配備し、前記揺動選別手段の後部上方に、前記選別風で吹き分けられた塵埃を吸引して機外に排出する排塵ファンを配備し、前記ストローラックの姿勢を、前記落差を通る選別風を前記排塵ファンの吸入口に向けて案内する後上がり姿勢に設定してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の選別構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−20419(P2007−20419A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203256(P2005−203256)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】