説明

脱穀装置

【課題】扱室から排塵処理室への引継部での詰り防止。
【解決手段】扱室内に複数の扱歯を有する扱胴を軸架して設け、該扱胴の一側には二番物を処理する二番処理胴を軸架した二番処理室及び前記扱室終端部の引継部からの被処理物を取り入れて処理する排塵処理胴を軸架した排塵処理室設け、前記扱室下側の扱網と二番処理室と排塵処理室下側の排塵処理網から漏下する被処理物を受けて揺動移送しながら選別する揺動選別棚を設け、該揺動選別棚の下方には選別風送り方向上手側から、唐箕、一番ラセン、二番ラセンを設けた脱穀装置において、前記複数の扱歯は、唐箕の選別風送り方向下手側方向に所定角度傾斜させる構成とし、前記引継部下方の引継部受網の目合いは、前記扱網の目合いよりも大きく構成したことを特徴とする脱穀装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に複数の扱歯を有する扱胴を軸架して設け、扱胴の一側には二番物を処理する二番処理胴を軸架した二番処理室及び扱室終端部の引継部からの被処理物を取り入れて処理する排塵処理胴を軸架した排塵処理室設け、扱室下側の扱網と二番処理室と排塵処理室下側の排塵処理網から漏下する被処理物を受けて揺動移送しながら選別する揺動選別棚を設け、揺動選別棚の下方には選別風送り方向上手側から、唐箕、一番ラセン、二番ラセンを設けた脱穀装置において、複数の扱歯は、唐箕の選別風送り方向下手側方向に所定角度傾斜させる構成とし、引継部下方の受網の目合いと扱網の目合いの大きさは同じ構成である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−271308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、藁屑発生の多い品種を脱穀すると、扱室終端部における排塵処理室への引継部や排塵処理室内において、詰り状態が発生しやすくなり、詰りが発生すると馬力も損失してしまうという不具合があった。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消する脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、扱室33内に複数の扱歯59を有する扱胴31を軸架して設け、該扱胴31の一側には二番物を処理する二番処理胴39を軸架した二番処理室41及び前記扱室33終端部の引継部55からの被処理物を取り入れて処理する排塵処理胴35を軸架した排塵処理室37設け、前記扱室33下側の扱網30と二番処理室41と排塵処理室37下側の排塵処理網34から漏下する被処理物を受けて揺動移送しながら選別する揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から、唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設けた脱穀装置において、前記複数の扱歯59は、唐箕43の選別風送り方向下手側方向に所定角度C傾斜させる構成とし、前記引継部55下方の引継部受網60の目合いは、前記扱網30の目合いよりも大きく構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、扱室33内の扱胴31で脱穀された被処理物は、扱網30より下方の揺動選別棚38上に落下するが、落下しない被処理物は、選別風送り方向下手側方向に所定角度C傾斜している複数の扱歯59の作用により、選別風送り方向下手側方向に向けて搬送作用を受ける。扱室33終端部まで搬送されてきた被処理物は、引継部55下方の引継部受網60から下方の揺動選別棚38上に落下するが、落下しなかった被処理物は、排塵処理室37に取り込まれて排塵処理胴35で処理され、排塵処理網34から下方の揺動選別棚38上に落下する。
【0007】
揺動選別棚38下方の二番ラセン47に取り込まれた二番物は、二番処理室41に搬送されて二番処理胴39で処理され、再び下方の揺動選別棚38上に落下する。前記扱網30の目合いに対して、引継部受網60の目合いを大きく構成しているので、被処理物は引継部受網60からの方が落下しやすい。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記引継部受網60の目合いよりも、前記排塵処理網34の目合いを大きく構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、引継部受網60の目合いに対して、排塵処理網34の目合いを大きく構成しているので、被処理物は排塵処理網34からの方が落下しやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、引継部55での詰まり状態の発生を防止できるようになる。特に、藁屑発生が多い品種において詰り状態発生を抑制できるようになるので、馬力損失を低減されることができるようになる。また、詰り状態を防止できるので、被処理物の中に存在する穀粒の脱っぷ(籾殻が取れてしまう現象)を防げるようになる。
【0010】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、排塵処理網34を有する排塵処理室37内での詰り状態の発生を防止できるようになる。特に、藁屑発生が多い品種において詰り状態発生を抑制できるようになる。また、詰り状態を防止できるので、被処理物の中に存在する穀粒の脱っぷを防げるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0012】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0013】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0014】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0015】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0016】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0017】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0018】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0019】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0020】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図である。
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。33aは扱室33終端部に設けられている排出口である。59は、扱胴31の表面に複数植設されている扱歯である。フィードチェン15で搬送される穀稈は、扱歯59と扱網30との相互作用で脱穀される構成である。
【0021】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0022】
さらに、図5は図4にて示すA−A断面図であるが、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34(格子状や受樋でもよい)は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0023】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0024】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a,二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン51は、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35と対向する位置に設けられている。52は揺動選別棚38を揺動駆動させるクランク軸である。
【0025】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0026】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。
【0027】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0028】
前記排塵処理胴35の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状であり、連続ラセンとなっている。そして、該排塵処理歯35aの後側は、複数の処理歯35cで構成されている。
【0029】
しかし、本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに、二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0030】
前述のように、扱室33内の脱穀物で揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送されていく。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、引継部55から排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向下手側に搬送されていく。また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
【0031】
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分においても、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けていて、該排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないようにしている。
【0032】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0033】
図6の脱穀装置の構成について説明する。
前述のごとく、55は扱室33の終端部から排塵処理室37への引継部であるが、この引継部55の部分においては、排塵処理胴35に設ける処理歯は、不連続ラセン56で構成する。そして、この不連続ラセン56の後側は、連続ラセン57で構成する。前記不連続ラセン56と連続ラセン57については、被処理物を送る作用と共に、被処理物を処理する作用も有している。また、二番処理胴39には、連続ラセン58を構成する。この連続ラセン58は二番物を送る作用と共に、二番物を処理する作用も有している。
【0034】
また、60は引継部55に設けている引継部受網である。そして、中側板61の前側は扱網30であり、該扱網30と引継部受網60は別部材の独立した構成としている。34は前述したように排塵処理網であり、本実施例の場合は、網形状としている。63は仕切金であり、64は中側板である。
【0035】
図7は扱胴31の扱歯59の植設状況を、ラインL1を中心に展開した図である。ラインL1は、扱胴軸32の軸芯の仮想線である。矢印B方向は、扱胴31の回転方向を示している。複数の扱歯59は、フィードチェン15の穀稈搬送方向下手側、即ち送り方向に所定の傾斜角度Cで傾斜させる構成としている。これにより、扱室33内の被処理物の送り作用が促進されて、詰り等が防止できるようになる。
【0036】
Fは前側、即ちフィードチェン15による穀稈搬送方向上手側であり、Rは後側、即ちフィードチェン15による穀稈搬送方向下手側である。区間Dは、前記引継部55の部分である。扱歯59は、大扱歯59aと中扱歯59bと小扱歯59cとから構成されている。大扱歯59aは、扱胴31の始端部のK1列に設ける構成としている。K1列の後側のK2列とK3列には、中扱歯59bを設けている。K4列からK15列は、小扱歯59cを設けている。
【0037】
前記中扱歯59bは、区間Eまでとしている。この区間Eは、扱胴の全長L2の約1/5の長さである。このように、扱胴31の最初の部分には、大扱歯59aと中扱歯59bを設けているので、フィードチェン15により搬送されてきた穀稈は一気に脱粒されて、効率良く脱穀選別が行われるようになる。
【0038】
前述のごとく、中扱歯59bの後側は、全て小扱歯59cを配置している。これにより、小扱歯59cが搬送される穀稈に与える衝撃を少なくすることができるので、藁屑の発生を抑制することができるようになる。
【0039】
また、大扱歯59aと中扱歯59bと小扱歯59cの関係は、ラインL3のように斜めのラインを形成している。扱胴31が矢印B方向に回転すると、扱室33内の被処理物は、順次大扱歯59a、中扱歯59b、小扱歯59に当接することで、被処理物は後側に向かって送り作用を受ける。これにより、扱室33内の被処理物は停滞することなくスムーズに後側に向かって移動搬送していくようになる。扱胴31に植設されている全ての扱歯59については、基本的に前述のようなラインL3上に配置する構成としている。
【0040】
扱歯の一部に示されている点線はプレート62であり、扱歯の内側に固定して設けられているものである。このプレート62は、中扱歯59bと小扱歯59cの前側の一部に設けられている構成である。即ち、K2列とK3列の中扱歯59bと、K4列からK8列の小扱歯59cに設ける構成としている。これにより、藁屑の絡みつきが抑制され、また、扱室33内の被処理物の送り作用がより顕著に増大するようになる。
【0041】
65は扱胴31の表面に形成されている蓋である。この蓋65を外すと扱胴31の内部が開放され、複数の扱歯59の着脱を行って点検保守を行う構成である。
前記小扱歯59cについては、ラインL3の直ぐ後側のラインL4上に小扱歯59cを配置するように構成している。これにより、前記引継部55からの排塵処理室37内への被処理物の移動がスムーズに行われるようになる。また、引継部55から排塵処理室37内へ取り込まれなかった被処理物は、引継部受網60から揺動選別棚38上に落下するが、この落下も促進されるようになる。
【0042】
このような脱穀装置の構成において、前記引継部受網60の目合は、前記扱網30の目合よりも大きくする構成としている。さらに、該引継部受網60の目合よりも前記排塵処理網34の目合の方を大きくする構成としている。
【0043】
脱粒性の良い穀稈の場合は藁屑の発生量が多くなる欠点があるが、上記図6及び図7のような脱穀装置の構成、即ち、引継部受網60の目合を扱網30の目合よりも大きくすることで、引継部55の詰りを防止できるようになる。そして、引継部受網60の目合よりも排塵処理網34の目合の方を大きくすることで、被処理物の揺動選別棚38上への落下が促進され、その結果、馬力損失も少なくなり穀粒ロスも少なくすることができるようになる。
【0044】
図7においては、全ての扱歯59について、送り方向に所定の傾斜角度Cで傾斜させる構成としていたが、図8の実施例においては、引継部55の区間Dのみの扱歯59について、送り方向に所定の傾斜角度Cを設ける構成とする。その他の脱穀装置の構成は、図6及び図7の構成と同じ構成である。この場合の効果については、図6及び図7の構成と略同じであるが、区間D以外の扱歯については、傾斜角度を有していないので、送り作用が少し劣るものとなる。これにより、穀粒のこなし作用が向上するようになるので、枝梗粒の発生を抑制できるようになる。
【0045】
また、区間D以外の扱歯については、傾斜角度を有していないので、送り作用が少し劣るものとなるが、しかしながら、前述したラインL3を形成しており、また、フィードチェン15によって搬送される穀稈に連れ動くので、被処理物が停滞することはない。
【0046】
図9の実施例については、引継部55の区間Dのみの扱歯59について、戻し方向(フィードチェン15による穀稈搬送上手側)に所定の傾斜角度Gを設ける構成とする。その他の脱穀装置の構成は、図6及び図7の構成と同じ構成であり、効果については、図6及び図7の構成と略同じである。
【0047】
前記戻し方向に傾斜角度Gを形成することにより、引継部55の区間Dに存在する扱室33内の被処理物は、戻し作用を受ける。これにより、被処理物内に存在する穀粒は、より長い時間こなし作用を受けるので、枝梗粒を処理できるようになる。
【0048】
図10に示す63は図6で説明した仕切金であり、64は図6で説明した中側板であり、それぞれ扱胴31との位置関係を示している。この図10の実施例については、中側板64より前と後で扱歯59cの送り方向の傾斜角度を変える構成とする。具体的には、前側の扱歯59cの送り方向の傾斜角度Hよりも、後側の扱歯59cの送り方向の傾斜角度Jを大きくするように構成する。
【0049】
これにより、引継部55よりも前側においては、扱室33内での被処理物のこなし作用が大きくなり、枝梗粒の発生を減少させることができるようになる。また、引継部55から被処理物の排塵処理室37内への取り込み作用と揺動選別棚38上への落下作用が向上するようになり、詰り等の発生を防止できるようになる。
【0050】
また、前述のように、中側板64より前と後で扱歯59cの送り方向の傾斜角度を変える構成にするにあたり、前側の扱歯59cの送り方向の傾斜角度Hよりも、後側の扱歯59cの送り方向の傾斜角度Jを小さくしてもよい。この場合は、扱室33内での送り作用は増大し、引継部55からの排塵処理室37内への取り込み作用と揺動選別棚38上への落下作用は少し低下するようになるので、比較的藁屑が発生しやすく、枝梗粒については発生しにくい品種に適している。
【0051】
図11の実施例について説明する。
前述した仕切金63の位置は、K4列とK5列の間に配置する構成としている。また、中側板64の位置は、K11列とK12列の間に配置する構成としている。
そして、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度をMとし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとし、中側板64の後側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をPとする。これらの複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度M、N、Pの関係は、
(M<N<P)となるように構成する。
これにより、引継部55での引継がスムーズに行われるようになり、詰りの発生を防止できるようになる。
【0052】
前記図11の構成において、複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度M、N、Pの関係について、仕切金63の前側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度Mは0度とし、仕切金の後側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度NとPについては、(N=P)の関係とする。
【0053】
そして、傾斜角度NとPについては、僅かな傾斜角度(5度前後)にする構成としてもよい。
また、図12に示すように、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度Mは0度とし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとし、中側板64の後側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度Pは0度としてもよい。
【0054】
また、図13に示すように、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度Mは0度とし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとし、中側板64の後側の複数の扱歯59の戻し方向の傾斜角度をPとする。これにより、特に引継部55での戻し作用により、枝梗粒の発生を防止できるようになる。
【0055】
また、図14に示すように、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度Mと、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNについては、(M=N)とし、中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pは0度としてもよい。
【0056】
また、図15に示すように、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度をMとし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとする。そして、(M<N)の関係とする。中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pについては、戻し方向の角度とする。そして、(N<P)の関係とする。また、(M<P)の関係とする。
【0057】
このような構成において、前記引継部受網60の目合は、前記扱網30の目合よりも大きくする構成としている。さらに、該引継部受網60の目合よりも前記排塵処理網34の目合の方を大きくする構成としている。
【0058】
これにより、引継部55での詰り状態を防止できると共に、馬力損失も防止できるようになる。また、濾過率も向上するようになり、穀粒ロスを低減させることができるようになる。
【0059】
前記図15の構成において、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとし、中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pについては、戻し方向の角度とする。そして、(N>P)の関係としてもよい。また、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度をMとし、中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pについては、戻し方向の角度とする。そして、(M>P)の関係としてもよい。
【0060】
また、図16の構成に示すように、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度をMとし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとする。そして、(M=N)の関係にするとともに、MとNの角度は僅かな角度(5度前後又は5度未満程度)とする。中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pについては、戻し方向の角度とする。この戻し方向の角度についても、僅かな角度(5度前後又は5度未満程度)とする。このような構成において、前記引継部受網60の目合は、前記扱網30の目合よりも大きくする構成としている。さらに、該引継部受網60の目合よりも前記排塵処理網34の目合の方を大きくする構成としている。
【0061】
これにより、引継部55での詰り状態を防止できると共に、馬力損失も防止できるようになる。また、濾過率も向上するようになり、穀粒ロスを低減させることができるようになる。
【0062】
前記図16の構成において、仕切金63の前側の複数の扱歯59(K1列からK4列)の送り方向の傾斜角度をMとし、仕切金63と中側板64との間の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をNとする。そして、(M=N)の関係にするとともに、MとNの角度は僅かな角度(5度前後又は5度未満程度)とする。中側板64の後側の複数の扱歯59の傾斜角度Pについては、戻し方向の角度とする。この戻し方向の角度についても、僅かな角度(5度前後又は5度未満程度)とする。そして、((M=N)<P)の関係としてもよい。また、逆に((M=N)>P)の関係としてもよい。
【0063】
図17の脱穀装置においては、図6の脱穀装置に対して二番処理胴39が異なる構成である。図6の二番処理胴39においては、処理歯は連続ラセン58で構成しているが、図17の脱穀装置の二番処理胴39においては、不連続の処理歯39aを設ける構成としている。そして、処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着している。
【0064】
そして、処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0065】
また、引継部受網60の目合は、前記扱網30の目合よりも大きくする構成としている。さらに、該引継部受網60の目合よりも前記排塵処理網34の目合の方を大きくする構成としている。
【0066】
このような脱穀装置において、扱胴31の複数の扱歯59の配列は、図18で示すような構成となっている。即ち、引継部55部分の複数の扱歯59については、戻し方向の傾斜角度P1がつけられている。その他の複数の扱歯59については、傾斜角度は有していない構成である。又は、その他の複数の扱歯59については、送り方向に少しの傾斜角度P2(5度前後又は5度未満)を有している構成である。そして、(P1<P2)となるように構成してもよいし、(P1>P2)となるように構成してもよい。
【0067】
また、仕切金63よりも前側の複数の扱歯59については、傾斜角度はP3を有するように構成してもよい。この場合、(P2>P3)となるように構成するか、又は、(P2<P3)となるように構成してもよい。また、(P1>P3)となるように構成してもよいし、(P1<P3)となるように構成してもよい。
【0068】
また、仕切金63よりも前側の複数の扱歯59については、傾斜角度は0度にする構成としてもよい。これにより、引継部55での詰りを防止でき、馬力損失を低下させることができる。また、引継部55では、少しの戻し作用を受けるので、こなし作用の時間が長くなることで、枝梗粒の処理が促進されるようになる。
【0069】
また、図19に示すように、扱胴31の複数の扱歯59の全てについて、送り方向の傾斜角度Qを設けるように構成してもよい。この場合は、湿材や藁屑の多い品種に有効であり、扱室33内での詰りが防止できるようになる。また、図20に示すように、引継部55部分の複数の扱歯59についてのみ、送り方向の傾斜角度Qを設けるように構成してもよい。また、仕切金63の後側の複数の扱歯59の全てについて、送り方向の傾斜角度Qを設ける構成にしてもよい。この場合、中側板64より前側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をSとし、中側板64より後側、即ち、引継部55部分の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をTとすると、(S<T)の関係となるように構成する。これにより、藁屑が多く発生する品種等の脱穀時において、詰り等が発生するのを防止できるようになる。特に、引継部55での詰りの発生を防止できるようになる。
【0070】
前記中側板64より前側の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をSとし、中側板64より後側、即ち、引継部55部分の複数の扱歯59の送り方向の傾斜角度をTとした場合において、(S>T)となるように構成してもよい。この場合においても、送り作用が増加されるので、藁屑が多く発生する品種等の脱穀時において、詰り等が発生するのを防止できるようになる。特に、引継部55での詰りの発生を防止できるようになる。
【0071】
図22に示すように、中側板64よりも前側の複数の扱歯59については、送り方向の傾斜角度Uを有している。また、中側板64よりも後側、即ち、引継部55部分の複数の扱歯59については、送り方向の傾斜角度は0度(中側板64と平行)となるように構成してもよい。また、この場合、仕切金63よりも前側(選別風送り方向上手側)の複数の扱歯59については、送り方向の傾斜角度は0度(仕切金63と平行)となるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置正面の断面図
【図6】脱穀装置の側断面図
【図7】扱胴の展開図
【図8】扱胴の展開図
【図9】扱胴の展開図
【図10】扱胴の展開図
【図11】扱胴の展開図
【図12】扱胴の展開図
【図13】扱胴の展開図
【図14】扱胴の展開図
【図15】扱胴の展開図
【図16】扱胴の展開図
【図17】脱穀装置の側断面図
【図18】扱胴の展開図
【図19】扱胴の展開図
【図20】扱胴の展開図
【図21】扱胴の展開図
【図22】扱胴の展開図
【符号の説明】
【0073】
C 傾斜角度
30 扱網
31 扱胴
33 扱室
34 排塵処理網
35 排塵処理胴
37 排塵処理室
38 揺動選別棚
39 二番処理胴
41 二番処理室
43 唐箕
46 一番ラセン
47 二番ラセン
55 引継部
59 扱歯
60 引継部受網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(33)内に複数の扱歯(59)を有する扱胴(31)を軸架して設け、該扱胴(31)の一側には二番物を処理する二番処理胴(39)を軸架した二番処理室(41)及び前記扱室(33)終端部の引継部(55)からの被処理物を取り入れて処理する排塵処理胴(35)を軸架した排塵処理室(37)設け、前記扱室(33)下側の扱網(30)と二番処理室(41)と排塵処理室(37)下側の排塵処理網(34)から漏下する被処理物を受けて揺動移送しながら選別する揺動選別棚(38)を設け、該揺動選別棚(38)の下方には選別風送り方向上手側から、唐箕(43)、一番ラセン(46)、二番ラセン(47)を設けた脱穀装置において、前記複数の扱歯(59)は、唐箕(43)の選別風送り方向下手側方向に所定角度(C)傾斜させる構成とし、前記引継部(55)下方の引継部受網(60)の目合いは、前記扱網(30)の目合いよりも大きく構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記引継部受網(60)の目合いよりも、前記排塵処理網(34)の目合いを大きく構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−136399(P2008−136399A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324826(P2006−324826)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】