説明

脱穀装置

【課題】複数の扱歯を外周に突設した扱胴を扱室内に回転自在に支承し、扱胴の下側に多数の漏下孔を備える受網としての円弧状の多孔板を設けた脱穀装置において、扱室内で発生する枝梗付着粒や穂切れ粒の脱粒処理が十分に行われようにする。
【解決手段】多孔板7の上面に扱胴6の回転軸36と略並行な複数の棒状の突起体39,・・を付設することによって、これらの突起体39,・・による扱室6の入口から出口までの略全域にわたる扱ぎ機会を増加させて、扱室6内で発生する枝梗付着粒や穂切れ粒を可吸的に減少させると共に穀稈の扱ぎ残し等を起こり難くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハーベスタ等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀装置では、複数の扱歯を外周に突設した扱胴を扱室内に回転自在に支承し、且つ扱胴の下側外周面に沿って設けられる円弧状の受網を多数の漏下孔が形成された多孔板で構成すると共に、前記漏下孔を扱胴終端側ほど扱胴の回転方向に偏倚する傾斜状の長孔に形成し、それにより扱下し物を漏下孔の傾斜で誘導しつつ該漏下孔からの漏下を促して、濡れ材等の脱穀時でも目詰りの発生を可及的に防止できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−333525号公報(第2−3頁、図2−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1の受網は、線材を格子状に編んで形成した凹凸のあるクリンプ網ではなく、多数の漏下孔を打ち抜き加工した表面が滑らかな多孔板であることから、扱室内で発生する枝梗付着粒や穂切れ粒の脱粒処理が十分に行われないといった不具合を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、複数の扱歯を外周に突設した扱胴を扱室内に回転自在に支承すると共に、扱胴の下側に多数の漏下孔を備える円弧状の多孔板を設けた脱穀装置において、前記多孔板の上面に扱胴の回転軸と略並行な複数の突起体を付設したことを第1の特徴としている。
そして、多孔板の前後方向中途部に扱胴の回転軸と略直交する抵抗板を設けると共に、該抵抗板の前側よりも後側に突起体を多く付設したことを第2の特徴としている。
そして、前後に隣接する扱歯の回転軌跡の間に突起体を付設したことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、多孔板の上面に扱胴の回転軸と略並行な複数の突起体を付設したことによって、これらの突起体により扱ぎ機会が増加するので、扱室内で発生する枝梗付着粒や穂切れ粒を可吸的に減少させることができる。
そして、請求項2の発明によれば、多孔板の前後方向中途部に扱胴の回転軸と略直交する抵抗板を設けると共に、該抵抗板の前側よりも後側に突起体を多く付設したことによって、扱室内における脱穀処理前半の穀粒と突起体の衝突による当該穀粒の損傷を軽減させつつ、脱穀処理前半で多孔板から漏下しなかった枝梗付着粒や穂切れ粒の扱ぎ機会を脱穀処理後半で増加させて、これら枝梗付着粒や穂切れ粒を可吸的に減少させることができる。
そして、請求項3の発明によれば、前後に隣接する扱歯の回転軌跡の間に突起体を付設したことによって、扱歯先端の回転軌跡を正面視で突起体と重合させた状態、即ち扱歯と突起体が干渉することなく扱歯先端の回転軌跡と多孔板の必要間隔を保つことができるので、穀稈の扱ぎ残し等が起こり難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、図示しないコンバインに搭載される脱穀装置1の側断面図であって、この脱穀装置1に構成される扱室2の前後方向に沿ってフィードチェン3を張架すると共に、該フィードチェン3の終端部に排藁搬送装置4を連設して、扱室2で脱穀した後の排藁を機体の後部に配設した排藁処理部(カッター)5へ搬送できるようになっている。
【0007】
そして、脱穀装置1は、扱室2を構成する複数の扱歯6a,・・を外周に突設した扱胴6と、この扱胴6の下側には、多数の漏下孔7a,・・(図3参照)を備える受網としての円弧状の多孔板7を設けると共に、扱胴6及び多孔板7の終端部穂先側には、処理胴8及び処理網9を内装した処理室11を併設している。
【0008】
また、扱室2の下方には、波板状の無孔移送板12a及び開度可変なチャフシーブ13を備えており、このチャフシーブ13の下方に無孔移送板12bを配設し、該無孔移送板12bの終端部から後方に向けて濾過体14を張設すると共に、その下方に一番樋15に一番物を流下させる一番流板16を斜設し、該一番流板16の後端部から後方に向けてストローラック17を設け、更にその下方に二番樋18に二番物を流下させる二番流板19を斜設して、これらを一体的に枠組みした揺動選別体21を構成している。尚、揺動選別体21は、その前後を支持リンク22と駆動リンク23等で構成する揺動支持機構を備えると共に、脱穀装置1の側壁1a,1a(図2参照)に着脱自在に支持されている。
【0009】
そして、揺動選別体21の下方には、送風ファン24、一番流板16等からなる選別風路25を形成しており、揺動する揺動選別体21に向く下方からの選別風Aにより一番物を風選し、且つ選別風路25の後方に配設した補助送風ファン26から送風される選別風Bにより、ストローラック17上の二番物を風選し、更に選別分離された後ストローラック17から排出される夾雑物と処理室11から排出される夾雑物とを、横断流ファン27を介して機体後方の排塵口28から機外へ放出できるようになっている。尚、一番樋15に落下した穀粒は、揚穀筒29により穀粒タンク31に揚上搬送されると共に、二番樋18に落下した二番物は、二番還元筒32を介して揺動選別体21上に還元されるようになっている。
【0010】
また、扱室2の上方は、図2に示すように、開閉自在な上部枠体33によって覆われている。この上部枠体33は、扱室2の処理室11側上部の機体前後方向に配設した回動支点軸34に開閉自在に支持してあり、扱室2内の清掃や点検等を行う際は、二点鎖線で示す如く開放できるようになっている。
【0011】
そして、上部枠体33は、その側方にフィードチェン3の上側に沿って配置される挟扼レール35を支持すると共に、上部枠体33の前側板33aと後側板33bに扱胴6の回転軸36を軸支して当該扱胴6を回転自在に支承している。更に、上部枠体33は、排藁搬送装置4を構成する排藁搬送チェン37及び排藁カバー38と連結してあり、上部枠体33の開き操作によって、扱胴6、挟扼レール35、排藁搬送チェン37及び排藁カバー38を一体に上昇回動させることができるようになっている。
【0012】
ところで、図3は、扱胴6の下側に設けられる円弧状の多孔板7の第一実施例を示す斜視図であって、この多孔板7は、線材を格子状に編んだクリンプ網ではなく、多数の漏下孔7a,・・を打ち抜き加工している。そして、これらの漏下孔7a,・・は、扱胴6の終端側ほど該扱胴6の回転方向に偏倚する傾斜状の長孔に形成している。つまり、多孔板7の漏下孔7a,・・を、扱胴6の回転方向と穀稈の搬送速度により決定される略45度程度のベクトル方向に傾斜状に形成することによって、扱胴6による扱下し物を漏下孔7a,・・の傾斜に沿わせて誘導しつつ、該漏下孔7a,・・からの漏下を促すことができるようにしている。
【0013】
そして、多孔板7の上面には、扱胴6の回転軸36と略並行な複数の丸棒状の突起体39,・・を付設してあり、これらの突起体39,・・による扱室2の入口から出口までの略全域にわたる扱ぎ機会が増加するので、扱室2内での脱穀初期に大量に発生する枝梗付着粒や穂切れ粒を可吸的に減少させることができる。尚、多孔板7の前後方向中途部と後端部には、扱胴6の回転軸36と略直交する抵抗板41,・,42,・が設けてあり、これらの抵抗板41,・,42,・によって、扱室2内で脱穀される穀稈に対して解し作用が加えられる。
【0014】
更に、多孔板7の後方には、角形の大きな開口部43a,・・を所定の間隔で複数形成した円弧状の板材43を設けている。この板材43は、扱室2内での脱穀終期における穀稈への刺さり粒が、当該穀稈と共に排藁処理部5を経由して機外へ排出されることを防止するために設けられている。
【0015】
また、図4は、多孔板7の第二実施例を示す斜視図であって、このものでは、多孔板7の前後方向中途部に設けた抵抗板41,・の前側よりも後側に突起体39を多く付設することによって、扱室2内における脱穀処理前半の穀粒と突起体9の衝突による当該穀粒の損傷を軽減させつつ、抵抗板41,・により穀粒が堰き止められて該抵抗板41,・前方での穀粒の漏下が促進される。そして、脱穀処理前半で多孔板7から漏下しなかった枝梗付着粒や穂切れ粒の扱ぎ機会を脱穀処理後半で増加させて、これら枝梗付着粒や穂切れ粒を可吸的に減少させることができるようにしている。
【0016】
尚、第二実施例では、多孔板7の前後方向中途部に設けた抵抗板41,・を境にして、後側の漏下孔7a,・・よりも前側の漏下孔7b,・・が小さくなるように打ち抜き加工してあり、それによって扱室2内における脱穀処理前半で脱粒された穀粒のみの漏下を促進させると共に、脱穀処理前半で脱粒されなかった枝梗付着粒や穂切れ粒を脱穀処理後半において脱粒処理できるようにしてある。そして、第二実施例では、抵抗板41,・の前側に突起体39を付設していないが、該突起体39を抵抗板41,・の前側にも適宜設けてもよい。
【0017】
また、図5は、多孔板7の第三実施例を示す斜視図であって、このものでは、長さの短い複数の突起体39,・・を多孔板7の前後方向、即ち扱胴6の回転軸36の軸方向に対して螺旋状に付設することによって、扱室2内での脱穀初期に大量に発生する枝梗付着粒や穂切れ粒の移送性能を高めている。そして、この第三実施例では、図6に示すように、隣接する扱歯6a,・・の回転軌跡の間に、これら扱歯6a,・・の前後植設ピッチより短い突起体を39,・・を付設することによって、図7に二点鎖線で示す如く扱歯6a,・・先端の回転軌跡Tを突起体39,・・と重合させることができ、それにより扱歯6a,・・先端と突起体39,・・が干渉することなく、扱歯6a,・・先端の回転軌跡Tと多孔板7の必要間隔を保つことができるので、穀稈の扱ぎ残し等が起こり難くなる。
【0018】
また、図8は、多孔板7の第四実施例を示す斜視図であって、このものでは、長さの長い複数の突起体39,・・を多孔板7の前後方向、即ち扱胴6の回転軸36の軸方向に対して螺旋状に連続して付設することによって、漏下面積を減少することなく(漏下孔7a,・・を塞ぐことなく)当該突起体39,・・配設できる。
【0019】
ところで、上述したように多孔板7に設ける多数の漏下孔7a,・・は、扱胴6の終端側ほど該扱胴6の回転方向に偏倚する傾斜状の長孔に形成することによって、扱胴6による扱下し物を漏下孔7a,・・の傾斜に沿わせて誘導しつつ、該漏下孔7a,・・からの漏下を促しているが、これらの漏下孔7a,・・の向き、即ち扱胴6の回転方向と穀稈の搬送速度により決定される略45度程度のベクトル方向と交差する方向に、当該漏下孔7a,・・を打ち抜き加工すれば、扱室2内での脱穀初期に大量に発生する枝梗付着粒や穂切れ粒を滞留させながら脱粒処理の促進を図ることが可能である。また、多孔板7の上面に付設する丸棒状の突起体39,・・を四角断面の棒状体で構成すれば、更なる脱粒性能の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】脱穀装置の側断面図。
【図2】脱穀装置の正断面図。
【図3】多孔板の第一実施例を示す斜視図。
【図4】多孔板の第二実施例を示す斜視図。
【図5】多孔板の第三実施例を示す斜視図。
【図6】脱穀装置の一部省略側断面図(第三実施例)。
【図7】脱穀装置の一部省略正断面図(第三実施例)。
【図8】多孔板の第四実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0021】
2 扱室
6 扱胴
6a 扱歯
7 多孔板
7a 漏下孔
36 回転軸
39 突起体
41 抵抗板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扱歯(6a,・・)を外周に突設した扱胴(6)を扱室(2)内に回転自在に支承すると共に、扱胴(6)の下側に多数の漏下孔(7a,・・)を備える円弧状の多孔板(7)を設けた脱穀装置において、前記多孔板(7)の上面に扱胴(6)の回転軸(36)と略並行な複数の突起体(39,・・)を付設したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
多孔板(7)の前後方向中途部に扱胴(6)の回転軸(36)と略直交する抵抗板(41,・)を設けると共に、該抵抗板(41,・)の前側よりも後側に突起体(39)を多く付設した請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前後に隣接する扱歯(6a,・・)の回転軌跡の間に突起体(39)を付設した請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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