説明

脱穀装置

【課題】刈取穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置において、通常の薄片状の扱歯では、藁屑や切れ藁等のゴミ発生量が多くなると共に、穂切れ粒や枝梗付き穀粒が多くなりがちであるという問題を解消する。
【解決手段】扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体23を備えており、前記各脱穀歯体23は、その作用側に、刈取穀稈等の被処理物の搬送方向に沿う広幅面板40を有する。広幅面板40には、穀粒が通り抜け得る複数の貫通穴51を有する穴空き部50を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインに搭載された脱穀装置の扱室には、エンジンの動力にて回転駆動する扱胴が内装されている。扱胴の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根が半径方向外向きに突設されており、スクリュー羽根には、多数個の扱歯が、螺旋の方向に沿って飛び飛びの間隔にて取り付けられている。脱穀処理に際しては、扱室内に送り込まれた刈取穀稈に、スクリュー羽根や各扱歯を扱胴の回転にて接触させることにより、刈取穀稈を細かく切断して脱穀している。
【特許文献1】特開2006−254708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来技術の各扱歯は、扱胴の回転軸線方向に沿った方向(被処理物の搬送方向に沿った方向)の厚みが薄い薄片状に形成されており、かかる形状の各扱歯にて刈取穀稈を切断しつつ脱穀しているため、藁屑や切れ藁等のゴミ発生量が多くなると共に、穂切れ粒や枝梗付き穀粒が多くなりがちであり、脱穀性能の向上という観点に鑑みて未だ改善の余地があった。
【0004】
そこで、本願発明は、上記の問題点を解消して脱穀性能を向上させた脱穀装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る脱穀装置は、扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しており、前記広幅面には、穀粒が通り抜け得る複数の穴を有する格子状、多孔状又は網状の穴空き部が形成されているというものである。
【0006】
請求項2の発明に係る脱穀装置は、扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しており、前記広幅面には、断面凹凸状の凹凸部が形成されているというものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した脱穀装置において、前記各脱穀歯体は、その上端部から更に上向きに突出して前記扱胴の下方を囲うクリンプ網に近接する突状片部を備えているというものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した脱穀装置において、前記各脱穀歯体が、前記扱胴の外周面に、螺旋状に並ぶように適宜間隔にて設けられているというものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る脱穀装置によると、扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しているから、前記扱室内に送り込まれた刈取穀稈(被処理物)は、前記扱胴の回転に伴って、前記各脱穀歯体の広幅面に次々に接触することになる。この場合、前記従来技術の扱歯に比較して、刈取穀稈との接触面積が格段に大きくなるため、前記各脱穀歯体と前記被処理物との衝突確率は、前記従来技術の場合よりも格段に向上する。
【0010】
しかも、前記広幅面には、穀粒が通り抜け得る複数の穴を有する格子状、多孔状又は網状の穴空き部が形成されているから、刈取穀稈の穂先部が前記各脱穀歯体の前記広幅面に衝突するに際しては、穂先部に付いた穀粒を前記穴空き部に落ち込ませながら、刈取穀稈の枝梗のうち穀粒に近い部分を、前記穴空き部の周囲に衝突させ、刈取穀稈から穀粒を効率よく分断(切断)できる。また、前記広幅面にて、刈取穀稈から穀粒を叩き落とすことも可能である。従って、藁屑及び切れ藁等のゴミ発生や、穂切れ粒や枝梗付き穀粒の発生を抑制して、脱穀性能を向上できるという効果を奏する。
【0011】
ところで、請求項1の場合は、前記各脱穀歯体の前記広幅面に前記穴空き部を有しているから、場合によっては、前記穴空き部に排藁(脱穀後の刈取穀稈)が絡み付いて藁詰まりを引き起こすという可能性を否定できない。
【0012】
これに対して請求項2の発明に係る脱穀装置の構成を採用すると、扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しており、前記広幅面には、断面凹凸状の凹凸部が形成されているから、基本的に、請求項1の場合と同様の作用効果を奏する。そして、前記広幅面には、請求項1に記載したような前記穴空き部が空いていないので、前記各脱穀歯体に排藁が絡み付く懸念を著しく低減できる。
【0013】
すなわち、請求項2の発明によると、請求項1と同じような穀粒の分断作用を維持できるものでありながら、藁詰まりの懸念を解消でき、優れた脱穀性能を発揮できるという効果を奏するのである。
【0014】
請求項3の発明によると、前記各脱穀歯体は、その上端部から更に上向きに突出して前記扱胴の下方を囲うクリンプ網に近接する突状片部を備えているから、前記突状片部が前記従来技術の扱歯と同様の役割を果たすことになり、前記突状片部と前記クリンプ網との協働にて、刈取穀稈から穀粒を扱ぎ落とすことが可能になる。従って、前記広幅面の分断・叩き落としと前記突状片部の扱ぎ落としとの相乗作用によって、より一層の脱穀性能の向上を達成できるという効果を奏する。
【0015】
請求項4の発明によると、前記各脱穀歯体は、前記扱胴の外周面に、螺旋状に並ぶように適宜間隔にて設けられているため、前記従来技術におけるスクリュー羽根と同じ役割を果たすことになる。すなわち、前記扱胴を回転駆動させると、螺旋状に並ぶ前記各脱穀歯体の作用にて、前記扱室内に送り込まれた被処理物を螺旋の並び方向に搬送するという送り機能を発揮できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(図1〜図7)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3は脱穀装置の側面断面図、図4のうち(a)は脱穀歯体の第1実施形態を示す斜視図、(b)は脱穀歯体の側面断面図、図5は脱穀歯体による脱穀作用の説明図、図6のうち(a)は脱穀歯体の第2実施形態を示す斜視図、(b)は脱穀歯体の側面断面図、図7は脱穀歯体の第3実施形態を示す側面断面図である。
【0017】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1〜図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0018】
実施形態における普通型コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲、麦、大豆等の植立穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ(図示せず)にて昇降調節可能に装着されている。
【0019】
走行機体1の前部一側(実施形態では前部右側)には、キャビンタイプの操縦部5が搭載されている。操縦部5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6が配置されている。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン7(図1及び図2参照)が配置されている。走行機体1の後部のうちエンジン7の後方には、排出オーガ8が旋回可能に立設されている。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8の先端籾投げ口から例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取前処理装置3から送られてきた刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9が搭載されている。脱穀装置9の下方には、揺動選別及び風選別を行うための選別装置10が配置されている。
【0020】
刈取前処理装置3は、脱穀装置9の前部開口に連通した角筒状のフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状のプラットホーム12とを備えている。フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが、前述した単動式の油圧シリンダ(図示せず)を介して連結されている。プラットホーム12内には横送りオーガ13が回転可能に軸支されている。横送りオーガ13の前部上方にはタインバー付きの掻き込みリール14が配置されている。プラットホーム12の下面側には横長バリカン状の刈刃15が配置されている。プラットホーム12の前部には左右一対の分草体16が突設されている。
【0021】
掻き込みリール14にて後方に引き倒された植立穀稈は刈刃15にて刈り取られ、横送りオーガ13の回転駆動にてプラットホーム12の左右中央部付近に集められる。そして、集められた刈取穀稈は、フィーダハウス11内のチェンコンベヤ17を介して脱穀装置9に全量投入される。
【0022】
脱穀装置9に設けられた扱室20内には、エンジン7からの動力にて回転駆動する大径ロータ状の扱胴21が、その回転軸線Aを走行機体1の進行方向に沿って延出するようにして設けられている。実施形態における扱胴21の回転軸34(図3参照)は、扱室20の前後側板20a,20bに回転可能に軸支されている。図3に示すように、扱胴21の外周面には、半径方向外向きに突出する多数個の脱穀歯体23が、螺旋状に並ぶように飛び飛びの間隔で設けられている。脱穀歯体23群による螺旋の向きは、扱胴21を走行機体1の進行方向前側から回転軸線A方向に見たときに、脱穀歯体23を時計回りに辿ると扱胴21の前部側から後部側に向かうような「右ねじ」の状態に設定されている。扱胴21の下方には、円弧状のクリンプ網24が各脱穀歯体23の先端(実施形態では突状片部54の上端(図4参照))に近接するようにして配置されている。なお、脱穀歯体23の詳細構造は後述する。
【0023】
実施形態における脱穀歯体23の群は、扱胴21の外周面に対して螺旋状に並べられているため、前記従来技術におけるスクリュー羽根と同じ役割を果たすことになる。すなわち、扱胴21を矢印R方向(図3参照)に回転駆動させると、螺旋状に並ぶ各脱穀歯体23の作用にて、扱室20内に送り込まれた刈取穀稈等の被処理物を走行機体1の進行方向後方(螺旋の並び方向)に搬送するという送り機能を発揮できる。
【0024】
扱室20内に送り込まれた刈取穀稈は、扱胴21の矢印R方向(図3参照)の回転による各脱穀歯体23の作用にて、走行機体1の進行方向後方に向けて搬送されながら、各脱穀歯体23と扱胴21の下方にあるクリンプ網24とに接触する。その結果、刈取穀稈からその穂先部に付いた穀粒が叩き落とされ、脱穀される。クリンプ網24の網目よりも細かい穀粒等の脱穀物はクリンプ網24から漏下する。クリンプ網24から漏下しなかった排稈や藁屑は、扱胴21の回転による各脱穀歯体23の搬送作用にて、扱室20の後部に形成された排塵口20cから、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33の箇所に排出される。
【0025】
なお、扱室20の上部内周面には、刈取穀稈の搬送速度を調節する複数の送塵弁25が前後水平方向に適宜間隔を空けて回動可能に枢着されている。これら送塵弁25の前後回動角度を調整することにより、刈取穀稈が扱室20内を移動する時間(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や状態に応じて調節できる。
【0026】
脱穀装置9の下方に配置された選別装置10は、チャフシーブ28やグレンパン等を有する揺動選別機構26と、唐箕ファン29等を有する風選別機構27とを備えている。扱胴21にて脱穀されてクリンプ網24から漏下した脱穀物は、揺動選別機構26と風選別機構27との作用により、精粒等の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物、及び藁屑等に選別される。
【0027】
揺動選別機構26及び風選別機構27での選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ機構(図示せず)を介してグレンタンク6に集積される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び還元コンベヤ機構32等を介して扱室20に戻され、扱胴21にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置10にて再選別される。藁屑等は、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33にて細かく切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0028】
(2).脱穀歯体の第1実施形態
次に、図4及び図5を参照しながら、脱穀歯体23の第1実施形態について説明する。
【0029】
第1実施形態の脱穀歯体23は、扱胴21の外周面に半径外向きに突設された金属製のものであり、その外形形状は、扱胴21の回転方向R上流側に向けて開口した山形(三角柱形状)を呈している。第1実施形態の脱穀歯体23は、刈取穀稈や脱穀物といった被処理物の搬送方向(回転軸線A方向)に沿う傾斜状の広幅面板40と、当該広幅面板40のうち回転軸線A方向の両側端に一体的に形成された一対の側面板41,42とを有している。広幅面板40は、扱胴21の回転方向R下流側(脱穀歯体23の作用側)に位置しており、扱胴21の外周面から遠ざかるに従って扱胴21の回転方向R上流側に向かうように傾斜している。当該傾斜状の広幅面板40が、扱胴21の回転に伴って刈取穀稈等の被処理物に接触することになる。すなわち、広幅面板40の配置位置は、刈取穀稈等の被処理物に接触する作用を発揮する「作用側」になっている。
【0030】
広幅面板40の基端部(扱胴21の回転方向R下流側に位置する下端部)には、作用側脚部43が一体形成されている一方、両側面板41,42の基端部(扱胴21の回転方向R上流側に位置する下端部)の間には、扱胴21の外周面に当接可能な板状の非作用側脚部44が一体形成されている。作用側及び非作用側脚部43,44の裏面(下面)にはそれぞれ、一対の雄ねじ部45,46が突出形成されている(図4(b)には片側のみ示す)。これら各雄ねじ部45,46は、扱胴21における所定の取り付け箇所に形成された取り付け穴47を貫通しており、貫通状態の雄ねじ部45,46に扱胴21の内側からナット48をねじ込むことによって、脱穀歯体23は、扱胴21の外周面に半径外向きの突出姿勢で着脱可能に装着される。
【0031】
脱穀歯体23の広幅面板40には、その厚み方向に貫通する複数個の貫通穴51を格子状(縦横マトリクス状)に配置してなる穴空き部50が形成されている。第1実施形態の貫通穴51は矩形状に形成されているが、穀粒G(図5参照)が通り抜け可能な程度の大きさであれば、円形状や楕円形、その他の非円形状であっても構わない。その数も任意である。一方、脱穀歯体23の上端部(上稜線部)には、扱胴21の回転方向Rに沿って延びる複数の溝部53が切り欠き形成されている(実施形態では5本)。また、脱穀歯体23の上端部には、クリンプ網24の内周側に近接する突状片部54が上向きに突出するように一体形成されている(実施形態では3つ)。
【0032】
(3).作用効果
以上の構成において、扱室20内に送り込まれた刈取穀稈は、扱胴21の矢印R方向(図3参照)の回転に伴い、各脱穀歯体23の広幅面板40に次々に接触する(図5参照)。この場合、前記従来技術の扱歯に比較して、刈取穀稈Pとの接触面積が格段に大きくなっているため、脱穀歯体23と刈取穀稈Pとの衝突確率は、前記従来技術の場合よりも格段に向上する。
【0033】
しかも、広幅面板40には、穀粒Gが通り抜け得る複数の貫通穴51(穴空き部50)が形成されているため、刈取穀稈Pの穂先部が脱穀歯体23の広幅面板40に衝突するに際しては、穂先部に付いた穀粒Gを貫通穴51に落ち込ませながら、刈取穀稈Pの枝梗Bのうち穀粒Gに近い部分を、穴空き部50のうち貫通穴51を画成する格子枠52に衝突させ、刈取穀稈Pから穀粒Gを効率よく分断(切断)できる(図5参照)。また、広幅面板40にて、刈取穀稈Pから穀粒Gを叩き落とすことも可能である。従って、藁屑及び切れ藁等のゴミ発生や、穂切れ粒や枝梗付き穀粒の発生を抑制して、脱穀性能を向上できるのである。
【0034】
更に、第1実施形態では、脱穀歯体23の上端部に、クリンプ網24の内周側に近接する突状片部54が上向きに突出するように一体形成されているから、突状片部54が前記従来技術の扱歯と同様の役割を果たすことになり、突状片部54とクリンプ網24との協働にて、刈取穀稈Pから穀粒Gを扱ぎ落とすことが可能になる。従って、広幅面板40の分断・叩き落としと突状片部54の扱ぎ落としとの相乗作用によって、より一層の脱穀性能の向上を達成できるのである。
【0035】
(4).脱穀歯体の他の実施形態・その他
ところで、第1実施形態の脱穀歯体23においては、広幅面板40に、穀粒Gが通り抜け得る複数の貫通穴51(穴空き部50)が形成されているため、穴空き部50のうち貫通穴51を画成する格子枠52に、排藁(脱穀後の刈取穀稈)が絡み付いて藁詰まりを引き起こす可能性は否定できない。
【0036】
これに対して図6(a)(b)に示す第2実施形態では、脱穀歯体23の広幅面板40に、第1実施形態の穴空き部50に代えて、内向きに凹んだ凹み穴61を格子状(縦横マトリクス状)に配置してなる断面凹凸状の凹凸部60が形成されている。その他の構成は第1実施形態のものと同様なので、(第1実施形態のものと)同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0037】
このように構成すると、刈取穀稈Pの穂先部が広幅面板40に衝突するに際して、穂先部に付いた穀粒Gを、貫通穴51の代わりの凹み穴61に落ち込ませるから、第1実施形態のような穀粒Gの分断(切断)作用は維持できる。そして、広幅面板40には、第1実施形態のような貫通穴51が空いていないので、脱穀歯体23に排藁が絡み付く懸念を著しく低減できる。すなわち、第2実施形態の脱穀歯体23によると、第1実施形態のような穀粒Gの分断作用を維持できるものでありながら、藁詰まりの懸念を解消でき、優れた脱穀性能を発揮できるのである。
【0038】
なお、第2実施形態の凹み穴61は矩形状に形成されているが、穀粒Gが通り抜け可能な程度の大きさであれば、円形状や楕円形、その他の非円形状を採用できることはいうまでもない。その数も任意である。
【0039】
図7に示す第3実施形態では、広幅面板40に、厚み方向に貫通する大径の開口穴62を形成し、当該開口穴62を、穀粒Gが通り抜け得る網目を有する網状体63にて覆っている点において、第1実施形態と相違している。この場合は、網状体63の箇所が穴空き部に相当することになる。その他の構成は第1実施形態のものと同様であるので、この場合も(第1実施形態のものと)同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。第3実施形態のように構成した場合も、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0040】
(4).その他
本願発明は、前述のような普通型コンバインの脱穀装置に限らず、自走自脱型コンバインの脱穀装置や定置式の脱穀装置といった様々な脱穀装置に対して広く適用できる。また、脱穀歯体23の突状片部54は、一対の側面板41,42の上端から上向きに突出するように形成してもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】脱穀装置の側面断面図である。
【図4】(a)は脱穀歯体の第1実施形態を示す斜視図、(b)は脱穀歯体の側面断面図である。
【図5】脱穀歯体による脱穀作用の説明図である。
【図6】(a)は脱穀歯体の第2実施形態を示す斜視図、(b)は脱穀歯体の側面断面図である。
【図7】脱穀歯体の第3実施形態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 走行機体
9 脱穀装置
20 扱室
21 扱胴
23 脱穀歯体
40 広幅面板
50 穴空き部
51 貫通穴
52 突状片部
60 凹凸部
61 凹み穴
62 開口穴
63 網状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しており、前記広幅面には、穀粒が通り抜け得る複数の穴を有する格子状、多孔状又は網状の穴空き部が形成されている、
脱穀装置。
【請求項2】
扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される複数の脱穀歯体を備えており、前記各脱穀歯体は、その作用側に被処理物の搬送方向に沿う広幅面を有しており、前記広幅面には、断面凹凸状の凹凸部が形成されている、
脱穀装置。
【請求項3】
前記各脱穀歯体は、その上端部から更に上向きに突出して前記扱胴の下方を囲うクリンプ網に近接する突状片部を備えている、
請求項1又は2に記載した脱穀装置。
【請求項4】
前記各脱穀歯体が、前記扱胴の外周面に、螺旋状に並ぶように適宜間隔にて設けられている、
請求項1〜3のうちいずれかに記載した脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−60834(P2009−60834A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231015(P2007−231015)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】