説明

脱穀装置

【課題】受網から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が、グレンパン上に堆積する単粒中に混入して十分に篩選別がなされない状態でグレンパン後方のチャフシーブまで揺動移送されることによって、該チャフシーブによる脱穀処理物の層状選別(比重選別)性能が低下するといった問題点を解消する。
【解決手段】扱室5の下部に備える受網4と、該受網4の前側下方に設けたグレンパン9との側面視における上下空間Sに、多数の漏下孔31aを有する後下がり傾斜の多孔板31を受網4の前端部Fからグレンパン9の中間部Mに亘って延設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等に搭載される脱穀装置では、扱室内に供給された穀稈を扱胴で脱穀すると共に、扱室の下部に備える受網から漏下する脱穀処理物を、グレンパン(波板状の無孔移送板)と、該グレンパンの後方に設けた開度調節自在なチャフシーブで揺動移送しながら選別処理を行なう揺動選別体を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−246783号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、上述した従来の脱穀装置では、扱室内に供給される穀稈の大半が扱室の前半部分において脱穀されるので、必然的に扱室の入口付近において枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多く発生し、このように発生した枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁と、脱穀された単粒(枝梗と籾が分離した状態)とを含む脱穀処理物は、扱室下方に備える受網から扱室の内向きに突出して脱穀処理物の扱室後方向きの流動に抵抗を与える複数の仕切り板を設けることによって、前記脱穀処理物の扱室後方向きの流動を一時的に規制しながら適正な量の単粒を受網から漏下させることができるようしている。
【0005】
しかしながら、扱室の入口付近においては、受網の前端部に最も近い位置に設けた仕切り板に規制されて受網から漏下する単粒の量が多くなり、受網(扱室)の前側下方に設けたグレンパン上に堆積する単粒の層厚が厚くなると共に、受網から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁の量も多くなるので、これらの枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、グレンパン上に堆積する単粒中に混入してしまう。そして、このようにグレンパン上に堆積した単粒中に枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多く混入してしまうと、グレンパンによる篩選別が十分になされない状態でグレンパンの後方に設けたチャフシーブまで脱穀処理物が揺動移送されることになり、開度調節自在なチャフシーブによる脱穀処理物の所望の層状選別(比重選別)効果を得ることができないといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として創案したものであって、扱室の下部に備える受網から漏下する脱穀処理物を、前記受網の前側下方に設けたグレンパンと、該グレンパンの後方に設けたチャフシーブで揺動移送しながら選別処理を行なう揺動選別体を備えた脱穀装置において、前記受網とグレンパンの側面視における上下空間に、多数の漏下孔を有する後下がり傾斜の多孔板を受網の前端部からグレンパンの中間部に亘って延設したことを第1の特徴としている。
そして、前記多孔板を、受網の前端部から、該前端部に最も近い位置に突出して受網上の脱穀処理物の流動に抵抗を与える仕切り板の近傍まで延設したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、扱室の下部に備える受網と、該受網の前側下方に設けたグレンパンの側面視における上下空間に、多数の漏下孔を有する後下がり傾斜の多孔板を受網の前端部からグレンパンの中間部に亘って延設したので、扱室内に供給される穀稈の大半が脱穀される扱室の前半部分、即ち扱室の入口付近において受網から漏下する脱穀処理物のうち、単粒のみが前記多孔板の漏下孔から漏下してグレンパン上に層厚の厚い単粒の堆積層が形成される。一方、扱室の入口付近において受網から漏下する量の多い枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、後下がり傾斜の多孔板上を徐々に滑り落ちながら該多孔板の終端に達すると層厚の厚い単粒の堆積層上に落下するようになる。つまり、グレンパン上に堆積した層厚の厚い単粒の堆積層上に枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が落下して両者が層状に分離した状態で、グレンパンによる後方への揺動移送が行われてチャフシーブに引き継がれるようになり、それによって該チャフシーブによる脱穀処理物の層状選別(比重選別)性能を向上させることができる。
そして、請求項2の発明によれば、前記多孔板を、受網の前端部から、該前端部に最も近い位置に突出して受網上の脱穀処理物の流動に抵抗を与える仕切り板の近傍まで延設したことで、扱室の入口付近において多く発生する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁と、脱穀された単粒とを含む脱穀処理物の扱室後方向きの流動が前記仕切り板の部分で最初に規制され、それに伴って受網から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多くなったとしても、これらの枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、受網の前端部から前記仕切り板の近傍まで延設した後下がり傾斜の多孔板上を徐々に滑り落ちながら、グレンパン上に堆積した層厚の厚い単粒の堆積層上に落下して両者が層状に分離した状態で、グレンパンによる後方への揺動移送が行なわれてチャフシーブに引き継がれるようになり、それによって該チャフシーブによる脱穀処理物の層状選別(比重選別)性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一部を省略した脱穀装置の側面図。
【図2】一部を省略した脱穀装置の正面図。
【図3】受網の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1及び図2は、コンバイン等に搭載される脱穀装置1の一部を省略した側面図と正面図であり、脱穀装置1は、箱枠状に形成された脱穀機枠2の上部に複数の扱歯3aを外周に突設した扱胴3、及び該扱胴3の下側に図3に示す如く多数の漏下孔4aを穿設してなる円弧状の受網4を備えた扱室5と、該扱室5の終端部奥側(扱室5で脱穀される穀稈の穂先側)に処理胴6及び処理網7を備えた処理室8を設けている。
【0011】
更に詳しく説明すると、上述した受網4の前側下方には、該受網4から漏下する脱穀処理物(扱室5で脱穀された単粒と、同時に発生する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁を含む)を後方へ揺動移送するためのグレンパン(波板状の無孔移送板)9を設けると共に、該グレンパン9の後方から側面視で処理室8の略中間部に亘って開度調節自在なチャフシーブ11を設けている。そして、グレンパン9の終端部下方に設けた無孔移送板12の終端から後方に向けて選別網13を張設し、この選別網13の下方に一番樋14に一番物を流下させる一番流板15を斜設すると共に、該一番流板15の後端部から後方に向けて後上がり傾斜のストローラック17を設け、更に該ストローラック17の下方には、二番樋18に二番物を流下させる二番流板19を斜設して、これらを一体的に枠組みした揺動選別体21を構成している。尚、揺動選別体21は、その前後を図示しない支持リンクと駆動リンク等で構成される揺動支持機構を備えると共に、脱穀機枠2を構成する左右の側壁2a,2b(図2参照)に着脱自在に支持されている。
【0012】
また、揺動選別体21の下方には、送風(唐箕)ファン22、一番流板15等からなる選別風路23を形成しており、揺動駆動する揺動選別体21に向く下方からの選別風Aにより一番物(脱穀処理物)を風選し、且つ選別風路23の後方に配設した補助送風ファン24から送風される選別風Bにより、ストローラック17上の二番物を風選し、更に選別分離された後にストローラック17から排出される切れ藁等の夾雑物と、処理室8から排出される切れ藁等の夾雑物とを、横断流(吸引排塵)ファン25を介して機体後方の排塵口26から機外へ放出できるようになっている。尚、一番樋14に落下した穀粒は、図示しない揚穀筒により穀粒タンクに揚上搬送されると共に、二番樋18に落下した二番物は、図示しない二番還元筒を介して揺動選別体21上に還元されるようになっている。
【0013】
ところで、扱室5内に供給される穀稈の大半は、扱室5の前半部分において脱穀されるので、必然的に扱室5の入口付近において枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多く発生する。そこで、扱室5の入口付近で多く発生する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が受網4の前側部分で落下することを防止すべく、受網4に穿設する漏下孔4aを、図3に示すように、前側の目合いe1を中間部の目合いe2、及び後側の目合いe3に比べて小さく(e1<e2<e3)なるように構成している。
【0014】
更に、扱室5の下部に備える受網4には、該受網4から扱室5の内向きに突出して脱穀処理物の扱室5後方向きの流動に抵抗を与える複数の仕切り板C1,C2,C3を所定の前後間隔で設けてあり、これらの仕切り板C1,C2,C3によって、扱室5後方向きの脱穀処理物の流動を一時的に規制しながら適正な量の単粒を受網から漏下させることができるようしている。
【0015】
しかしながら、扱室5の入口付近においては、受網4の前端部に最も近い位置に設けた仕切り板C1に規制されて受網4から漏下する単粒が多くなり、受網4(扱室5)の前側下方に設けたグレンパン9上に堆積する単粒の層厚が厚くなると共に、受網4から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁の量も多くなるので、これらの枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、グレンパン9上に堆積する単粒中に混入してしまう。そして、このようにグレンパン9上に堆積した層厚な単粒中に枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多く混入してしまうと、グレンパン9による篩選別が十分になされない状態でグレンパン9の後方に設けたチャフシーブ11まで脱穀処理物が揺動移送されることになり、開度調節自在なチャフシーブ11による脱穀処理物の所望の層状選別(比重選別)効果を得ることができないといった問題点を有していた。
【0016】
そこで本発明では、上述した問題点を解決するために、図1及び図2に示すように、扱室5の下部に備える受網4とグレンパン9の側面視における上下空間Sに、単粒(穀粒)の漏下は許容して枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が漏下しない程度の多数の漏下孔31a,32aを穿設した後下がり傾斜の2枚の多孔板31,32を、揺動選別体21を構成する左右の側壁21a,21bに設置(固設)することによって、受網4から漏下する脱穀処理物のうち、単粒のみを多孔板31,32の漏下孔31a,32aから漏下させてグレンパン9上に層厚の厚い単粒の堆積層を形成する一方、扱室5の入口付近において受網4から漏下する量の多い枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が、後下がり傾斜の多孔板31,32上を徐々に滑り落ちながら該多孔板31,32の終端に達すると層厚の厚い単粒の堆積層上に落下するように構成している。
【0017】
更に詳しく説明すると、上述の如く受網4とグレンパン9の側面視における上下空間Sに設置した2枚の多孔板31,32のうち、前側の多孔板31は、受網4の前端部Fからグレンパン9の中間部Mに亘って延設してあるので、扱室5内に供給される穀稈の大半が脱穀される扱室5の前半部分、即ち扱室5の入口付近において受網4から漏下する脱穀処理物のうち、単粒のみが前記多孔板31の漏下孔31aから漏下してグレンパン9上に層厚の厚い単粒の堆積層が形成される。一方、扱室5の入口付近において受網から漏下する量の多い枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、後下がり傾斜の多孔板上31を徐々に滑り落ちながら該多孔板31の終端に達すると層厚の厚い単粒の堆積層上に落下するようになる。つまり、グレンパン9上に堆積した層厚の厚い単粒の堆積層上に枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が落下して両者が層状に分離した状態で、グレンパン9による後方への揺動移送が行われて開度調節自在なチャフシーブ11に引き継がれるようになり、それによって該チャフシーブ11による脱穀処理物の層状選別(比重選別)性能を向上させることができる。
【0018】
更に、前側の多孔板31は、受網4の前端部Fから、該前端部Fに最も近い位置に突出して受網4上の脱穀処理物の流動に抵抗を与える仕切り板C1の近傍まで延設してあるので、扱室5の入口付近において多く発生する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁と、脱穀された単粒とを含む脱穀処理物の扱室5後方向きの流動が前記仕切り板C1の部分で最初に規制され、それに伴って受網4から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多くなったとしても、これらの枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、受網4の前端部Fから前記仕切り板C1の近傍まで延設した後下がり傾斜の多孔板31上を徐々に滑り落ちながら、グレンパン9上に堆積した層厚の厚い単粒の堆積層上に落下して両者が上下に層状に分離した状態で、グレンパン9による後方への揺動移送が行なわれて開度調節自在なチャフシーブ11に引き継がれるようになり、それによって該チャフシーブ11による脱穀処理物の層状選別(比重選別)性能が向上させることができる。
【0019】
そして、後側の多孔板32は、前側の多孔板31の終端部、即ち前記仕切り板C1の近傍から、該仕切り板C1の後方に設けた切り板C2の近傍まで延設してあり、それによって扱室5の中間部付近に存在する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁と、脱穀された単粒とを含む脱穀処理物の扱室5後方向きの流動が前記仕切り板C2の部分で規制され、それに伴って受網4から漏下する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁が多くなったとしても、これらの枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、後側の多孔板32上を徐々に滑り落ちながらグレンパン9上に堆積した層厚の厚い単粒の堆積層上に落下し、開度調節自在なチャフシーブ11による脱穀処理物の層状選別性能を更に向上させることができるが、扱室の入口付近において多く発生する枝梗粒や穂切れ粒及び切れ藁は、前側の多孔板31で単粒との層状分離が殆んどなされるので、後側の多孔板32を必ずしも設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0020】
4 受網
5 扱室
9 グレンパン
11 チャフシーブ
21 揺動選別体
31 多孔板
31a 漏下孔
M 中間部
F 前端部
S 上下空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(5)の下部に備える受網(4)から漏下する脱穀処理物を、前記受網(4)の前側下方に設けたグレンパン(9)と、該グレンパン(9)の後方に設けたチャフシーブ(11)で揺動移送しながら選別処理を行なう揺動選別体(21)を備えた脱穀装置において、前記受網(4)とグレンパン(9)の側面視における上下空間(S)に、多数の漏下孔(31a)を有する後下がり傾斜の多孔板(31)を受網(4)の前端部(F)からグレンパン(9)の中間部(M)に亘って延設したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記多孔板(31)を、受網(4)の前端部(F)から、該前端部(F)に最も近い位置に突出して受網(4)上の脱穀処理物の流動に抵抗を与える仕切り板(C1)の近傍まで延設したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−279288(P2010−279288A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134749(P2009−134749)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】