脱穀装置
【課題】揺動選別棚上の被処理物の偏りによる穀粒回収の被処理物の処理時間の長期化。揺動選別棚の長さが長くなるという課題がある。
【解決手段】揺動選別棚20には穀粒と藁屑等とを選別するフィン37を揺動方向に複数並設したシーブ23を設け、該シーブ23は前側シーブ26と、該前側シーブ26の後側の後側シーブ27とにより構成する。少なくとも前側シーブ26には、左右往復移動する前側拡散用移動部材40を設け、該前側拡散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に正面視において前記摺接部41側が最も高く左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45とを設ける。
【解決手段】揺動選別棚20には穀粒と藁屑等とを選別するフィン37を揺動方向に複数並設したシーブ23を設け、該シーブ23は前側シーブ26と、該前側シーブ26の後側の後側シーブ27とにより構成する。少なくとも前側シーブ26には、左右往復移動する前側拡散用移動部材40を設け、該前側拡散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に正面視において前記摺接部41側が最も高く左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀室の下方に揺動選別装置を設け、揺動選別棚には、脱穀室からの落下物から穀粒を選別するシーブを設け、シーブに付着した藁屑を除去する清掃手段を設けた構成は、公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、単に、シーブに左右往復移動する摺接部材を設けた構成のため、シーブの付着物の除去はできるが、揺動選別棚上の被処理物の均分化は期待できず、穀粒回収に被処理物の移送時間(処理時間)を要し、揺動選別棚の長さが長くなるという課題がある。
本願は、シーブの移動部材の構成を工夫して、穀粒回収効率を向上させ、機体の小型化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、扱胴10を軸装した脱穀室11の下方に唐箕16からの送風により風選する風選室18を設け、該風選室18に前後方向に往復揺動する揺動選別棚20を設け、該揺動選別棚20には、穀粒と藁屑等とを選別するフィン37を揺動方向に複数並設したシーブ23を設け、該シーブ23は前側シーブ26と、該前側シーブ26の後側の後側シーブ27とにより構成し、前記前側シーブ26と後側シーブ27のうちの少なくとも前側シーブ26には、左右往復移動する前側拡散用移動部材40を設け、該前側拡散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に、正面視において前記摺接部41側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を備えたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、前側拡散用移動部材40は前側シーブ26上を左右往復移動して、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌しながら、前側シーブ26上の被処理物を拡散させる。
このとき、揺動選別棚20の前後往復揺動によって、前側シーブ26から後側シーブ27に移送される過程で、前側拡散用移動部材40の左右往復移動により後側シーブ27へ引き継ぐ被処理物を拡散させ、選別処理する。
請求項2の発明は、前記前側拡散用移動部材40を左右方向に複数並設し、各前側拡散用移動部材40を、前記フィン37よりも下側の部位で連結部材47により一体的に連結したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40は一体的に左右往復移動して、揺動選別棚20上の被処理物を拡散および蛇行させながら後側に向けて移送して、選別処理する。
請求項3の発明は、前記前側拡散用移動部材40を備えた前側シーブ26を、揺動選別棚20における前記唐箕16の選別風の作用域より始端側の部位に設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、脱穀室11で脱穀された被処理物は、揺動選別棚20の始端部のシーブ23のうちの前側シーブ26に移送され、前側シーブ26上を左右往復移動する前側拡散用移動部材40により、唐箕16からの送風を受ける前から前側シーブ26上で蛇行しながら選別回収処理される。
請求項4の発明は、前記後側シーブ27に左右往復移動する後側拡散用移動部材61を左右方向に複数並設し、前記側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とを単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成としたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40と後側シーブ27の後側拡散用移動部材61とが、単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動するので、前側シーブ26上で蛇行した被処理物を後側シーブ27上で後側拡散用移動部材61により更に拡散させながら選別処理する。
請求項5の発明は、前記揺動選別棚20の後部の左右何れか一側に、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59を開口させ、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部には、平面視で後方に至るに従い吸引口59側に位置するように傾斜させたガイド体60を設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、複数並設した各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61により前側シーブ26と後側シーブ27上の被処理物を、左右方向に蛇行させながら、比重が小さいために被処理物の上に偏った藁屑は、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部のガイド体60により吸引口59に向けて寄せられ、吸引排塵ファン33により藁屑を吸引して穀粒と分離処理する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、前側シーブ26上を前側拡散用移動部材40が左右往復移動して、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌しながら、前側シーブ26上の被処理物を左右方向に移動させるので、後側シーブ27上に引き継ぐ被処理物を均分化することができ、穀粒回収効率を向上させることができ、また、後側シーブ27の全域を有効利用できるので、処理時間を短くせずに揺動選別棚20の全長を短くでき、脱穀装置3の小型化ができる。
請求項2記載の発明では、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40を一体的に往復移動させることで、前側シーブ26上の被処理物を、前側拡散用移動部材40の間で蛇行させながら後方に移送するので、処理時間を短くせずに揺動選別棚20の全長を短くできる。また、各前側拡散用移動部材40を一体的に往復移動させるにあたり、連結部材47をフィン37よりも下方に設けたので、前側シーブ26上の被処理物の移送を妨げず、前側シーブ26の全面有効利用して選別処理でき、穀粒回収効率を向上させることができる。
請求項3記載の発明では、唐箕16からの送風作用を受けない部分の前側シーブ26の部分でも穀粒選別を行うことができ、穀粒の選別回収処理効率を向上させると共に、脱穀装置3内の空間を有効利用できて、脱穀装置3の小型化ができる。
請求項4記載の発明では、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40と後側シーブ27の後側拡散用移動部材61とを互いに反対方向に往復移動させるので、被処理物の拡散効果を向上させ、穀粒回収効率を向上させることができ、また、単一の駆動手段により往復移動させるので、構成を簡素にでき、安価に提供できる。
請求項5記載の発明では、前側シーブ26及び後側シーブ27上の被処理物を、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61により蛇行させながら選別し、比重が小さいために被処理物の上に偏った藁屑は、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部のガイド体60により吸引口59に向けて寄せられるので、吸引排塵ファン33により吸引しやすくなり、揺動選別棚20の選別性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の縦断側面図。
【図3】脱穀装置の横断平面図。
【図4】(イ)拡散用移動部材の斜視図。 (ロ)拡散用移動部材の側面図。
【図5】脱穀装置の一部縦断側面図。
【図6】シーブの平面図。
【図7】シーブの背面図。
【図8】揺動選別装置の他の実施例の横断平面図。
【図9】揺動選別装置の他の実施例の背面図。
【図10】シーブの着脱状態側面図。
【図11】シーブの背面図。
【図12】シーブの背面図。
【図13】シーブと拡散用移動部材の他の実施例の平面図。
【図14】同側面図。
【図15】穀粒貯留ホッパの実施例の側面図。
【図16】同背面図。
【図17】同平面図。
【図18】同平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、圃場の穀稈を分草する分草装置7と、穀稈を引き起こす引起装置8と、引き起こした穀稈を切断する刈刃9等を備えている。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設け、脱穀室11の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の穀稈を挾持搬送する挾扼杆13Aと供給搬送チエン13Bを設けている。14は穀稈供給搬送装置12から引き継いだ脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置である。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0009】
扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置21の移送方向下手側のシーブ(グレンシーブ)23に向けて扱網15からの落下物を移送できればよい。
24は被処理物を穀稈供給搬送装置12に誘導する移送棚部22の上面に設けた寄せ板である。
【0010】
前記シーブ23は脱穀室11の排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27を有している。
30は後側シーブ27の下手側に設けたストローラック、31は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア、32は一番コンベア31の後側に設けた二番コンベア、33は吸引排塵ファン、34は吸引排塵ファン33のケーシング、35は排塵処理装置、35Aは脱穀室11と排塵処理装置35とを連通する連通口、36は二番処理装置である。
しかして、前側シーブ26および後側シーブ27は、薄い縦方向の平板形状のフィン37を、枠体38に前後に所定間隔をおいて揺動方向に夫々複数並設し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設けて構成する。
【0011】
しかして、前記前側シーブ26および後側シーブ27のうち、少なくとも、前側シーブ26には、前側拡散用移動部材40を設ける。前側拡散用移動部材40は前側シーブ26と共に、枠体38に取付け、枠体38を揺動選別棚20に対して着脱自在に取付ける。枠体38ごと前側拡散用移動部材40と前側シーブ26とは、揺動選別棚20に対して着脱自在に構成する。
前記前側拡散用移動部材40は、その後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置すると、前側シーブ26から後側シーブ27への被処理物の受け渡しが良好になって、好適である。
前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に平行な摺接部41を有して構成する。
【0012】
各摺接部41には前記フィン37の断面形状に合わせた透孔42を複数形成し、各透孔42に各フィン37を挿通して取付ける。
即ち、摺接部41の縦板部41Aは、縦向きの平板状を呈し該縦向きの平板面に前記フィン37の断面形状に合わせた透孔42を複数形成し、各透孔42に各フィン37を挿通して取付ける(図4)。
そのため、摺接部41は移動する際にフィン37の上面の被処理物を拡散させるだけでなく、フィン37の下面の付着物の除去作用も期待する。
前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動する構成とし、揺動選別棚20の揺動と相俟って前側拡散用移動部材40は揺動選別棚20上を被処理物が終端に向かって蛇行しながら移送させられ、移送距離が長くなって、穀粒の回収効率を向上させられ、穀粒損失の低減が図れる。
【0013】
また、前記前側拡散用移動部材40の摺接部41には、フィン37の上面を摺接する掻き板部43を設けると、前側拡散用移動部材40の往復揺動によって、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌して、前側シーブ26上の被処理物を拡散させ、一層、拡散性能を向上させられる。
掻き板部43の形状の構成は任意であるが、フィン37上の被処理物に対して斜めに当接するように構成する。
即ち、散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に、正面視において前記摺接部41側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を備えるとよい。
【0014】
実施例では、掻き板部43は、平面視および正面視において略三角形状を呈し、正面視において左右中央位置が最も高く、左右側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を有して形成している。
そのため、摺接部41によりフィン37上の被処理物を拡散させる際に、摺接部41の掻き板部43の正面視の上側傾斜面44と平面視の側部傾斜縁45がフィン37の被処理物に斜めに当たり、飛散角度を上向きにする作用を期待している。
前記前側拡散用移動部材40の、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動させる構成は、任意であるが、一例を示すと、前記フィン37よりも下側の前記各摺接部41の下部に取付部46を設け、各摺接部41の取付部46を連結部材47により一体的に連結して、各摺接部41が互いに所定間隔を保持したまま、左右方向に往復移動させる。
【0015】
前側拡散用移動部材40の互いに連結した複数の摺接部41のうちの何れかには縦方向の取付軸48を取付け、取付軸48は前後方向の前後アーム49の先端の長孔により形成した係合孔50に係合させる。前後アーム49の基部には左右方向の左右アーム51の左右中間部を固定し、前後アーム49と左右アーム51により摺接部41を駆動させる駆動リンク部材52を構成する。駆動リンク部材52は左右アーム51の左右中間部を取付軸53により枠体38側の所定部分に回動自在に取付ける。
前記左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結し、一対の駆動伝達手段55のうちの一方をモータ等の駆動手段(図示省略)により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛むように、駆動手段に連結する。
【0016】
即ち、駆動手段は、所定量駆動すると正逆転する構成とし、一対の駆動伝達手段55を交互に牽引し、これにより前側拡散用移動部材40を左右往復移動させる。
前記前側拡散用移動部材40を設けた前側シーブ26は、前記唐箕ケーシング17の送風口58より始端側の揺動選別棚20に設ける。
そのため、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域に前側シーブ26を設けても、前側拡散用移動部材40により被処理物を拡散させて選別することで、選別効率を十分確保でき、その結果、唐箕ケーシング17の送風口送風口58より始端側の揺動選別棚20に前側シーブ26を配置させて、前側シーブ26の作用面積を拡大して全体の選別効率を向上させられる。
しかして、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59は、揺動選別棚20の前後揺動方向に対して後部左側に設けており、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40の上部には吸引口59に被処理物をガイド体60を設ける。
【0017】
ガイド体60は縦板部材により形成し、平面視、後方に至るに従い左側に位置するように傾斜させて設ける。
そのため、前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を拡散させつつ、ガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を誘導するので、前側拡散用移動部材40の拡散による穀粒の回収効率の向上と、ガイド体60による吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率の向上とを図れる。
前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、後側シーブ27は、背面視において、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59側を低くなるように傾斜させて揺動選別棚20に取付ける(図9)。
そのため、吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率を向上させ、全体の選別効率を向上させられる。
【0018】
即ち、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により蛇行させられて、後側シーブ27に至った被処理物には排塵処理装置35により処理された被処理物が加わって、排塵処理装置35側の揺動選別棚20の被処理物量が多くなるが、後側シーブ27を、吸引排塵ファン33の吸引口59側を低く傾斜させているので、前側拡散用移動部材40と相俟って、全体の選別効率を向上させられる。
図2,図5,図10ではシーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、前側シーブ26に前側拡散用移動部材40を設け、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節自在に構成している。
そのため、シーブ23の前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度を調節することによって、被処理物の藁屑の混入率等の性状の相違に対して最適状態で揺動選別棚20による選別を行うことができ、全体の選別効率を向上させられる。
【0019】
後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の構成は任意であるが、フィン37の基部を軸63により枠体38に回動自在に軸着し、フィン37の回動端に作動軸64を設け、揺動選別棚20の側板69より外側に突出させた作動軸64に作動アーム65を取付ける。66は操作伝達部材(ワイヤー)、67はバネである。
また、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々は枠体38に設け、枠体38ごと揺動選別棚20に対して着脱自在に構成している。
したがって、後側シーブ27は傾斜角度調節機構と共に着脱自在となる。
この場合、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の作動アーム65は、フィン37の軸63同軸状に配置した取付軸63Aに取付け、作動アーム65とフィン37の回動中心を同心構成とする。
【0020】
そのため、後側シーブ27の傾斜角度調節機構の構成を簡素にする。
また、後側シーブ27の傾斜角度調節機構ごと枠体38の着脱を容易にする。
この場合、揺動選別棚20の左右の側板69の上部は上方に至るに従い外側に開く傾斜面70に形成し、前記前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の左右両側の枠体38には前記傾斜面70に上方から重なる傾斜案内部71を設ける。
そのため、フィン37および枠体38の左右幅は揺動選別棚20の側板69の左右幅より若干狭くして、揺動選別棚20への取付けを容易にし、しかも、揺動選別棚20の傾斜面70と枠体38の傾斜案内部71により穀粒の漏れを防止して回収効率を低下させない。
図13,図14は、シーブ23の他の実施例を示し、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々に前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とを夫々設け、前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とは単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成とする。
【0021】
そのため、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とにより揺動選別棚20上の被処理物を互いに反対方向に蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させられ、揺動選別棚20による全体の選別効率を向上させられる。
後側拡散用移動部材61は、前側拡散用移動部材40と同一構成とし、前後アーム49と左右アーム51等を有し、左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結し、一対の駆動伝達手段55のうちの一方をモータ等の駆動手段により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛むように、駆動手段に連結する。
この場合、前側拡散用移動部材40の左右アーム51と後側拡散用移動部材61の左右アーム51との間は一対の後側駆動伝達手段55Aにより接続する。
この後側駆動伝達手段55Aは互いに交差させて設け、互いに反対方向に左右往復移動させる。
【0022】
したがって、一つの駆動手段により前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61は同一速度で反対方向に左右往復移動して、被処理物を拡散させる。
また、各前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61の上部にはガイド体60を設ける。
そのため、前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送して、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40上のガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を寄せられて、吸引排塵ファン33による吸引で藁屑と穀粒の分離を促進させられ、全体の選別効率を向上させられる。
【0023】
図15〜図19は、グレンタンク5に変えて、穀粒貯留ホッパ73を設けた実施例であり、穀粒貯留ホッパ73は上部に脱穀装置3の揚穀装置74の上部を接続し、穀粒貯留ホッパ73の下部には袋詰め用の漏斗排出口75を設ける。
漏斗排出口75は穀粒袋(図示省略)を装着するため、機体フレーム1より所定間隔を置いた上方に設け、穀粒貯留ホッパ73の漏斗排出口75の下方には所定空間を形成するように、穀粒貯留ホッパ73は脱穀装置3の右側に設けたホッパフレーム76の上部に設置し、ホッパフレーム76には穀粒貯留ホッパ73と脱穀装置3とを仕切る仕切り板77を設ける。仕切り板77はその上部を側面視エンジン78の上面より上方位置させると共に、上方に至るに従い脱穀装置3側に近づくように傾斜させる。
【0024】
そのため、穀粒貯留ホッパ73の下方空間から脱穀装置3側への塵埃の進入遮断効果を向上させ、また、穀粒貯留ホッパ73における袋詰め作業中にエンジン78および排気熱風の進入遮断効果を向上させられる。
穀粒貯留ホッパ73と脱穀装置3の間の後部に燃料タンク79を設置し、燃料タンク79と前記エンジン78の間の燃料ホース(図示省略)にフィルタ80を設置し、このフィルタ80の側方の仕切り板77にメンテナンス用の窓孔81を設ける。
窓孔81の大きさは任意であり、フィルタ80の外形を露出させるほど大きく形成してもよい。
なお、図示は省略するが、窓孔81には透明部材により形成した蓋を着脱自在に取り付けてもよい。
【0025】
前記燃料タンク79の給油口82は、脱穀装置3の後部に設けたカッタ装置83とアタッチメントフレーム84の間に設ける。
そのため、穀粒貯留ホッパ73の袋取り作業の邪魔にならずに給油作業を行える。
前記穀粒貯留ホッパ73の後部には、起立するプレエアクリーナー85を設ける。プレエアクリーナー85の塵埃排出口86は脱穀装置3側に開口させる。
そのため、操縦部6より離れた箇所にプレエアクリーナー85を設けているので、塵埃および騒音被害を軽減して、快適な操作環境とし、また、プレエアクリーナー85から排出される塵埃が穀粒貯留ホッパ73の袋取り作業者に与える影響を軽減させられる。
87はエアクリーナー、88はラジエーターカバー、89はステップである。
【0026】
(実施例の作用)
刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して揺動選別棚20の始端部の移送棚部22に落下し、移送棚部22からシーブ23の前側シーブ26に移送されて選別され、更に、唐箕16からの送風と、風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20の後側シーブ27とにより選別される。
しかして、揺動選別棚20では、シーブ23の各フィン37の間から穀粒を落下させて回収するため、前側シーブ26上をの被処理物の移送時間を長くすると、穀粒回収効率を向上させられる。
【0027】
本願では、前側シーブ26および後側シーブ27のうち、少なくとも、前側シーブ26には、前側拡散用移動部材40を設けているので、前側シーブ26上の被処理物の移送時間を長くでき、穀粒回収効率を向上させられる。
即ち、前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動するので、揺動選別棚20の揺動と相俟って前側拡散用移動部材40は揺動選別棚20上を被処理物が終端に向かって蛇行しながら移送させられ、移送距離が長くなって、穀粒の回収効率を向上させられ、穀粒損失の低減が図れる。
前側拡散用移動部材40の各摺接部41の下部の取付部46を連結部材47により連結し、複数の摺接部41のうちの何れかの取付軸48には前後アーム49の係合孔50に係合させ、前後アーム49の基部には左右アーム51の左右中間部を固定し、左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結しているので、一対の駆動伝達手段55のうちの一方を駆動手段により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛み、この駆動手段を所定量駆動すると正逆転させて、一対の駆動伝達手段55を交互に牽引し、これにより前側拡散用移動部材40を左右往復移動させる。
【0028】
前側拡散用移動部材40を設けた前側シーブ26は、唐箕ケーシング17の送風口送風口58より始端側の揺動選別棚20に設けているので、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域に前側シーブ26を設けても、前側拡散用移動部材40により被処理物を拡散させて選別することで、選別効率を十分確保でき、その結果、唐箕ケーシング17の送風口58より始端側の揺動選別棚20に前側シーブ26を配置させて、前側シーブ26の作用面積を拡大して全体の選別効率を向上させられる。
吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59は、揺動選別棚20の前後揺動方向に対して後部左側に設け、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40の上部には吸引口59に被処理物をガイド体60を設け、ガイド体60は後方に至るに従い左側に位置するように傾斜させて設けているので、揺動選別棚20が揺動すると、前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を拡散させつつ、ガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を誘導し、前側拡散用移動部材40の拡散による穀粒の回収効率の向上と、ガイド体60による吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率の向上とを図れる。
【0029】
前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、後側シーブ27は、背面視において、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59側を低くなるように傾斜させて揺動選別棚20に取付けているので、吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率を向上させ、全体の選別効率を向上させられる。
即ち、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により蛇行させられて、後側シーブ27に至った被処理物には排塵処理装置35により処理された被処理物が加わって、排塵処理装置35側の揺動選別棚20の被処理物量が多くなるが、後側シーブ27を、吸引排塵ファン33の吸引口59側を低く傾斜させているので、前側拡散用移動部材40と相俟って、全体の選別効率を向上させられる。
【0030】
図10のシーブ23の他の実施例では、前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、前側シーブ26に前側拡散用移動部材40を設け、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節自在に構成しているので、シーブ23の前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度を調節することによって、被処理物の藁屑の混入率等の性状の相違に対して最適状態で揺動選別棚20による選別を行うことができ、全体の選別効率を向上させられる。
後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の作動アーム65は、フィン37の軸63に取付け、作動アーム65とフィン37の回動中心を同心構成としてうるので、後側シーブ27の傾斜角度調節機構の構成を簡素にする。
【0031】
また、後側シーブ27の傾斜角度調節機構ごと枠体38を揺動選別棚20から着脱自在にしているので、着脱を容易にし、メンテナンス作業を容易にする。
図13のシーブ23の他の実施例では、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々に前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61を設け、各前側拡散用移動部材40上にガイド体60を設けているので、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40とと後側拡散用移動部材61上のガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を寄せられて、吸引排塵ファン33による吸引で藁屑と穀粒の分離を促進させられ、全体の選別効率を向上させられる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0032】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13A…挾扼杆、13B…供給搬送チエン、15…扱網、16…唐箕、17…唐箕ケーシング、18…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…シーブ、25…排出口、26…前側シーブ、27…後側シーブ、30…ストローラック、31…一番コンベア、32…二番コンベア、33…吸引排塵ファン、34…ケーシング、37…フィン、38…枠体、40…前側拡散用移動部材、41…摺接部41、42…透孔、43…掻き板部、44…上側傾斜面、45…側部傾斜縁、46…取付部、47…連結部材、48…取付軸、49…前後アーム、50…係合孔、51…左右アーム、52…駆動リンク部材、53…取付軸、55…駆動伝達手段、58…送風口、59…吸引口、60…ガイド体、61…後側拡散用移動部材、63…軸、64…作動軸、65…作動アーム、66…操作伝達部材、69…側板、70…傾斜面、71…傾斜案内部、73…穀粒貯留ホッパ、74…揚穀装置、75…漏斗排出口、76…ホッパフレーム、77…仕切り板、78…エンジン、79…燃料タンク、80…フィルタ、81…窓孔、82…給油口、83…カッタ装置、84…アタッチメントフレーム、85…プレエアクリーナー、86…塵埃排出口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀室の下方に揺動選別装置を設け、揺動選別棚には、脱穀室からの落下物から穀粒を選別するシーブを設け、シーブに付着した藁屑を除去する清掃手段を設けた構成は、公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、単に、シーブに左右往復移動する摺接部材を設けた構成のため、シーブの付着物の除去はできるが、揺動選別棚上の被処理物の均分化は期待できず、穀粒回収に被処理物の移送時間(処理時間)を要し、揺動選別棚の長さが長くなるという課題がある。
本願は、シーブの移動部材の構成を工夫して、穀粒回収効率を向上させ、機体の小型化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、扱胴10を軸装した脱穀室11の下方に唐箕16からの送風により風選する風選室18を設け、該風選室18に前後方向に往復揺動する揺動選別棚20を設け、該揺動選別棚20には、穀粒と藁屑等とを選別するフィン37を揺動方向に複数並設したシーブ23を設け、該シーブ23は前側シーブ26と、該前側シーブ26の後側の後側シーブ27とにより構成し、前記前側シーブ26と後側シーブ27のうちの少なくとも前側シーブ26には、左右往復移動する前側拡散用移動部材40を設け、該前側拡散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に、正面視において前記摺接部41側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を備えたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、前側拡散用移動部材40は前側シーブ26上を左右往復移動して、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌しながら、前側シーブ26上の被処理物を拡散させる。
このとき、揺動選別棚20の前後往復揺動によって、前側シーブ26から後側シーブ27に移送される過程で、前側拡散用移動部材40の左右往復移動により後側シーブ27へ引き継ぐ被処理物を拡散させ、選別処理する。
請求項2の発明は、前記前側拡散用移動部材40を左右方向に複数並設し、各前側拡散用移動部材40を、前記フィン37よりも下側の部位で連結部材47により一体的に連結したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40は一体的に左右往復移動して、揺動選別棚20上の被処理物を拡散および蛇行させながら後側に向けて移送して、選別処理する。
請求項3の発明は、前記前側拡散用移動部材40を備えた前側シーブ26を、揺動選別棚20における前記唐箕16の選別風の作用域より始端側の部位に設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、脱穀室11で脱穀された被処理物は、揺動選別棚20の始端部のシーブ23のうちの前側シーブ26に移送され、前側シーブ26上を左右往復移動する前側拡散用移動部材40により、唐箕16からの送風を受ける前から前側シーブ26上で蛇行しながら選別回収処理される。
請求項4の発明は、前記後側シーブ27に左右往復移動する後側拡散用移動部材61を左右方向に複数並設し、前記側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とを単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成としたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40と後側シーブ27の後側拡散用移動部材61とが、単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動するので、前側シーブ26上で蛇行した被処理物を後側シーブ27上で後側拡散用移動部材61により更に拡散させながら選別処理する。
請求項5の発明は、前記揺動選別棚20の後部の左右何れか一側に、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59を開口させ、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部には、平面視で後方に至るに従い吸引口59側に位置するように傾斜させたガイド体60を設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、複数並設した各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61により前側シーブ26と後側シーブ27上の被処理物を、左右方向に蛇行させながら、比重が小さいために被処理物の上に偏った藁屑は、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部のガイド体60により吸引口59に向けて寄せられ、吸引排塵ファン33により藁屑を吸引して穀粒と分離処理する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、前側シーブ26上を前側拡散用移動部材40が左右往復移動して、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌しながら、前側シーブ26上の被処理物を左右方向に移動させるので、後側シーブ27上に引き継ぐ被処理物を均分化することができ、穀粒回収効率を向上させることができ、また、後側シーブ27の全域を有効利用できるので、処理時間を短くせずに揺動選別棚20の全長を短くでき、脱穀装置3の小型化ができる。
請求項2記載の発明では、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40を一体的に往復移動させることで、前側シーブ26上の被処理物を、前側拡散用移動部材40の間で蛇行させながら後方に移送するので、処理時間を短くせずに揺動選別棚20の全長を短くできる。また、各前側拡散用移動部材40を一体的に往復移動させるにあたり、連結部材47をフィン37よりも下方に設けたので、前側シーブ26上の被処理物の移送を妨げず、前側シーブ26の全面有効利用して選別処理でき、穀粒回収効率を向上させることができる。
請求項3記載の発明では、唐箕16からの送風作用を受けない部分の前側シーブ26の部分でも穀粒選別を行うことができ、穀粒の選別回収処理効率を向上させると共に、脱穀装置3内の空間を有効利用できて、脱穀装置3の小型化ができる。
請求項4記載の発明では、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40と後側シーブ27の後側拡散用移動部材61とを互いに反対方向に往復移動させるので、被処理物の拡散効果を向上させ、穀粒回収効率を向上させることができ、また、単一の駆動手段により往復移動させるので、構成を簡素にでき、安価に提供できる。
請求項5記載の発明では、前側シーブ26及び後側シーブ27上の被処理物を、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61により蛇行させながら選別し、比重が小さいために被処理物の上に偏った藁屑は、各前側拡散用移動部材40と各後側拡散用移動部材61の上部のガイド体60により吸引口59に向けて寄せられるので、吸引排塵ファン33により吸引しやすくなり、揺動選別棚20の選別性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の縦断側面図。
【図3】脱穀装置の横断平面図。
【図4】(イ)拡散用移動部材の斜視図。 (ロ)拡散用移動部材の側面図。
【図5】脱穀装置の一部縦断側面図。
【図6】シーブの平面図。
【図7】シーブの背面図。
【図8】揺動選別装置の他の実施例の横断平面図。
【図9】揺動選別装置の他の実施例の背面図。
【図10】シーブの着脱状態側面図。
【図11】シーブの背面図。
【図12】シーブの背面図。
【図13】シーブと拡散用移動部材の他の実施例の平面図。
【図14】同側面図。
【図15】穀粒貯留ホッパの実施例の側面図。
【図16】同背面図。
【図17】同平面図。
【図18】同平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、圃場の穀稈を分草する分草装置7と、穀稈を引き起こす引起装置8と、引き起こした穀稈を切断する刈刃9等を備えている。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設け、脱穀室11の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の穀稈を挾持搬送する挾扼杆13Aと供給搬送チエン13Bを設けている。14は穀稈供給搬送装置12から引き継いだ脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置である。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0009】
扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置21の移送方向下手側のシーブ(グレンシーブ)23に向けて扱網15からの落下物を移送できればよい。
24は被処理物を穀稈供給搬送装置12に誘導する移送棚部22の上面に設けた寄せ板である。
【0010】
前記シーブ23は脱穀室11の排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27を有している。
30は後側シーブ27の下手側に設けたストローラック、31は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア、32は一番コンベア31の後側に設けた二番コンベア、33は吸引排塵ファン、34は吸引排塵ファン33のケーシング、35は排塵処理装置、35Aは脱穀室11と排塵処理装置35とを連通する連通口、36は二番処理装置である。
しかして、前側シーブ26および後側シーブ27は、薄い縦方向の平板形状のフィン37を、枠体38に前後に所定間隔をおいて揺動方向に夫々複数並設し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設けて構成する。
【0011】
しかして、前記前側シーブ26および後側シーブ27のうち、少なくとも、前側シーブ26には、前側拡散用移動部材40を設ける。前側拡散用移動部材40は前側シーブ26と共に、枠体38に取付け、枠体38を揺動選別棚20に対して着脱自在に取付ける。枠体38ごと前側拡散用移動部材40と前側シーブ26とは、揺動選別棚20に対して着脱自在に構成する。
前記前側拡散用移動部材40は、その後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置すると、前側シーブ26から後側シーブ27への被処理物の受け渡しが良好になって、好適である。
前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に平行な摺接部41を有して構成する。
【0012】
各摺接部41には前記フィン37の断面形状に合わせた透孔42を複数形成し、各透孔42に各フィン37を挿通して取付ける。
即ち、摺接部41の縦板部41Aは、縦向きの平板状を呈し該縦向きの平板面に前記フィン37の断面形状に合わせた透孔42を複数形成し、各透孔42に各フィン37を挿通して取付ける(図4)。
そのため、摺接部41は移動する際にフィン37の上面の被処理物を拡散させるだけでなく、フィン37の下面の付着物の除去作用も期待する。
前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動する構成とし、揺動選別棚20の揺動と相俟って前側拡散用移動部材40は揺動選別棚20上を被処理物が終端に向かって蛇行しながら移送させられ、移送距離が長くなって、穀粒の回収効率を向上させられ、穀粒損失の低減が図れる。
【0013】
また、前記前側拡散用移動部材40の摺接部41には、フィン37の上面を摺接する掻き板部43を設けると、前側拡散用移動部材40の往復揺動によって、前側シーブ26のフィン37に付着した被処理物を、掻き板部43で浮かせて攪拌して、前側シーブ26上の被処理物を拡散させ、一層、拡散性能を向上させられる。
掻き板部43の形状の構成は任意であるが、フィン37上の被処理物に対して斜めに当接するように構成する。
即ち、散用移動部材40の後端部を後側シーブ27の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材40の前記フィン37との摺接部41の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部43を設け、該掻き板部43に、正面視において前記摺接部41側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を備えるとよい。
【0014】
実施例では、掻き板部43は、平面視および正面視において略三角形状を呈し、正面視において左右中央位置が最も高く、左右側方に至るに従い低くなる上側傾斜面44と、平面視において前側が最も最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁45を有して形成している。
そのため、摺接部41によりフィン37上の被処理物を拡散させる際に、摺接部41の掻き板部43の正面視の上側傾斜面44と平面視の側部傾斜縁45がフィン37の被処理物に斜めに当たり、飛散角度を上向きにする作用を期待している。
前記前側拡散用移動部材40の、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動させる構成は、任意であるが、一例を示すと、前記フィン37よりも下側の前記各摺接部41の下部に取付部46を設け、各摺接部41の取付部46を連結部材47により一体的に連結して、各摺接部41が互いに所定間隔を保持したまま、左右方向に往復移動させる。
【0015】
前側拡散用移動部材40の互いに連結した複数の摺接部41のうちの何れかには縦方向の取付軸48を取付け、取付軸48は前後方向の前後アーム49の先端の長孔により形成した係合孔50に係合させる。前後アーム49の基部には左右方向の左右アーム51の左右中間部を固定し、前後アーム49と左右アーム51により摺接部41を駆動させる駆動リンク部材52を構成する。駆動リンク部材52は左右アーム51の左右中間部を取付軸53により枠体38側の所定部分に回動自在に取付ける。
前記左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結し、一対の駆動伝達手段55のうちの一方をモータ等の駆動手段(図示省略)により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛むように、駆動手段に連結する。
【0016】
即ち、駆動手段は、所定量駆動すると正逆転する構成とし、一対の駆動伝達手段55を交互に牽引し、これにより前側拡散用移動部材40を左右往復移動させる。
前記前側拡散用移動部材40を設けた前側シーブ26は、前記唐箕ケーシング17の送風口58より始端側の揺動選別棚20に設ける。
そのため、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域に前側シーブ26を設けても、前側拡散用移動部材40により被処理物を拡散させて選別することで、選別効率を十分確保でき、その結果、唐箕ケーシング17の送風口送風口58より始端側の揺動選別棚20に前側シーブ26を配置させて、前側シーブ26の作用面積を拡大して全体の選別効率を向上させられる。
しかして、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59は、揺動選別棚20の前後揺動方向に対して後部左側に設けており、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40の上部には吸引口59に被処理物をガイド体60を設ける。
【0017】
ガイド体60は縦板部材により形成し、平面視、後方に至るに従い左側に位置するように傾斜させて設ける。
そのため、前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を拡散させつつ、ガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を誘導するので、前側拡散用移動部材40の拡散による穀粒の回収効率の向上と、ガイド体60による吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率の向上とを図れる。
前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、後側シーブ27は、背面視において、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59側を低くなるように傾斜させて揺動選別棚20に取付ける(図9)。
そのため、吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率を向上させ、全体の選別効率を向上させられる。
【0018】
即ち、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により蛇行させられて、後側シーブ27に至った被処理物には排塵処理装置35により処理された被処理物が加わって、排塵処理装置35側の揺動選別棚20の被処理物量が多くなるが、後側シーブ27を、吸引排塵ファン33の吸引口59側を低く傾斜させているので、前側拡散用移動部材40と相俟って、全体の選別効率を向上させられる。
図2,図5,図10ではシーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、前側シーブ26に前側拡散用移動部材40を設け、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節自在に構成している。
そのため、シーブ23の前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度を調節することによって、被処理物の藁屑の混入率等の性状の相違に対して最適状態で揺動選別棚20による選別を行うことができ、全体の選別効率を向上させられる。
【0019】
後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の構成は任意であるが、フィン37の基部を軸63により枠体38に回動自在に軸着し、フィン37の回動端に作動軸64を設け、揺動選別棚20の側板69より外側に突出させた作動軸64に作動アーム65を取付ける。66は操作伝達部材(ワイヤー)、67はバネである。
また、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々は枠体38に設け、枠体38ごと揺動選別棚20に対して着脱自在に構成している。
したがって、後側シーブ27は傾斜角度調節機構と共に着脱自在となる。
この場合、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の作動アーム65は、フィン37の軸63同軸状に配置した取付軸63Aに取付け、作動アーム65とフィン37の回動中心を同心構成とする。
【0020】
そのため、後側シーブ27の傾斜角度調節機構の構成を簡素にする。
また、後側シーブ27の傾斜角度調節機構ごと枠体38の着脱を容易にする。
この場合、揺動選別棚20の左右の側板69の上部は上方に至るに従い外側に開く傾斜面70に形成し、前記前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の左右両側の枠体38には前記傾斜面70に上方から重なる傾斜案内部71を設ける。
そのため、フィン37および枠体38の左右幅は揺動選別棚20の側板69の左右幅より若干狭くして、揺動選別棚20への取付けを容易にし、しかも、揺動選別棚20の傾斜面70と枠体38の傾斜案内部71により穀粒の漏れを防止して回収効率を低下させない。
図13,図14は、シーブ23の他の実施例を示し、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々に前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とを夫々設け、前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とは単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成とする。
【0021】
そのため、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61とにより揺動選別棚20上の被処理物を互いに反対方向に蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させられ、揺動選別棚20による全体の選別効率を向上させられる。
後側拡散用移動部材61は、前側拡散用移動部材40と同一構成とし、前後アーム49と左右アーム51等を有し、左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結し、一対の駆動伝達手段55のうちの一方をモータ等の駆動手段により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛むように、駆動手段に連結する。
この場合、前側拡散用移動部材40の左右アーム51と後側拡散用移動部材61の左右アーム51との間は一対の後側駆動伝達手段55Aにより接続する。
この後側駆動伝達手段55Aは互いに交差させて設け、互いに反対方向に左右往復移動させる。
【0022】
したがって、一つの駆動手段により前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61は同一速度で反対方向に左右往復移動して、被処理物を拡散させる。
また、各前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61の上部にはガイド体60を設ける。
そのため、前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送して、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40上のガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を寄せられて、吸引排塵ファン33による吸引で藁屑と穀粒の分離を促進させられ、全体の選別効率を向上させられる。
【0023】
図15〜図19は、グレンタンク5に変えて、穀粒貯留ホッパ73を設けた実施例であり、穀粒貯留ホッパ73は上部に脱穀装置3の揚穀装置74の上部を接続し、穀粒貯留ホッパ73の下部には袋詰め用の漏斗排出口75を設ける。
漏斗排出口75は穀粒袋(図示省略)を装着するため、機体フレーム1より所定間隔を置いた上方に設け、穀粒貯留ホッパ73の漏斗排出口75の下方には所定空間を形成するように、穀粒貯留ホッパ73は脱穀装置3の右側に設けたホッパフレーム76の上部に設置し、ホッパフレーム76には穀粒貯留ホッパ73と脱穀装置3とを仕切る仕切り板77を設ける。仕切り板77はその上部を側面視エンジン78の上面より上方位置させると共に、上方に至るに従い脱穀装置3側に近づくように傾斜させる。
【0024】
そのため、穀粒貯留ホッパ73の下方空間から脱穀装置3側への塵埃の進入遮断効果を向上させ、また、穀粒貯留ホッパ73における袋詰め作業中にエンジン78および排気熱風の進入遮断効果を向上させられる。
穀粒貯留ホッパ73と脱穀装置3の間の後部に燃料タンク79を設置し、燃料タンク79と前記エンジン78の間の燃料ホース(図示省略)にフィルタ80を設置し、このフィルタ80の側方の仕切り板77にメンテナンス用の窓孔81を設ける。
窓孔81の大きさは任意であり、フィルタ80の外形を露出させるほど大きく形成してもよい。
なお、図示は省略するが、窓孔81には透明部材により形成した蓋を着脱自在に取り付けてもよい。
【0025】
前記燃料タンク79の給油口82は、脱穀装置3の後部に設けたカッタ装置83とアタッチメントフレーム84の間に設ける。
そのため、穀粒貯留ホッパ73の袋取り作業の邪魔にならずに給油作業を行える。
前記穀粒貯留ホッパ73の後部には、起立するプレエアクリーナー85を設ける。プレエアクリーナー85の塵埃排出口86は脱穀装置3側に開口させる。
そのため、操縦部6より離れた箇所にプレエアクリーナー85を設けているので、塵埃および騒音被害を軽減して、快適な操作環境とし、また、プレエアクリーナー85から排出される塵埃が穀粒貯留ホッパ73の袋取り作業者に与える影響を軽減させられる。
87はエアクリーナー、88はラジエーターカバー、89はステップである。
【0026】
(実施例の作用)
刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して揺動選別棚20の始端部の移送棚部22に落下し、移送棚部22からシーブ23の前側シーブ26に移送されて選別され、更に、唐箕16からの送風と、風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20の後側シーブ27とにより選別される。
しかして、揺動選別棚20では、シーブ23の各フィン37の間から穀粒を落下させて回収するため、前側シーブ26上をの被処理物の移送時間を長くすると、穀粒回収効率を向上させられる。
【0027】
本願では、前側シーブ26および後側シーブ27のうち、少なくとも、前側シーブ26には、前側拡散用移動部材40を設けているので、前側シーブ26上の被処理物の移送時間を長くでき、穀粒回収効率を向上させられる。
即ち、前側拡散用移動部材40は、揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動するので、揺動選別棚20の揺動と相俟って前側拡散用移動部材40は揺動選別棚20上を被処理物が終端に向かって蛇行しながら移送させられ、移送距離が長くなって、穀粒の回収効率を向上させられ、穀粒損失の低減が図れる。
前側拡散用移動部材40の各摺接部41の下部の取付部46を連結部材47により連結し、複数の摺接部41のうちの何れかの取付軸48には前後アーム49の係合孔50に係合させ、前後アーム49の基部には左右アーム51の左右中間部を固定し、左右アーム51の左右両端にはワイヤー等の一対の駆動伝達手段55を夫々連結しているので、一対の駆動伝達手段55のうちの一方を駆動手段により牽引すると、一対の駆動伝達手段55のうちの他方の駆動伝達手段55は弛み、この駆動手段を所定量駆動すると正逆転させて、一対の駆動伝達手段55を交互に牽引し、これにより前側拡散用移動部材40を左右往復移動させる。
【0028】
前側拡散用移動部材40を設けた前側シーブ26は、唐箕ケーシング17の送風口送風口58より始端側の揺動選別棚20に設けているので、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域に前側シーブ26を設けても、前側拡散用移動部材40により被処理物を拡散させて選別することで、選別効率を十分確保でき、その結果、唐箕ケーシング17の送風口58より始端側の揺動選別棚20に前側シーブ26を配置させて、前側シーブ26の作用面積を拡大して全体の選別効率を向上させられる。
吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59は、揺動選別棚20の前後揺動方向に対して後部左側に設け、左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材40の上部には吸引口59に被処理物をガイド体60を設け、ガイド体60は後方に至るに従い左側に位置するように傾斜させて設けているので、揺動選別棚20が揺動すると、前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を拡散させつつ、ガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を誘導し、前側拡散用移動部材40の拡散による穀粒の回収効率の向上と、ガイド体60による吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率の向上とを図れる。
【0029】
前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、後側シーブ27は、背面視において、前記吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口59側を低くなるように傾斜させて揺動選別棚20に取付けているので、吸引排塵ファン33の藁屑の吸引効率を向上させ、全体の選別効率を向上させられる。
即ち、前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により蛇行させられて、後側シーブ27に至った被処理物には排塵処理装置35により処理された被処理物が加わって、排塵処理装置35側の揺動選別棚20の被処理物量が多くなるが、後側シーブ27を、吸引排塵ファン33の吸引口59側を低く傾斜させているので、前側拡散用移動部材40と相俟って、全体の選別効率を向上させられる。
【0030】
図10のシーブ23の他の実施例では、前記シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、前側シーブ26に前側拡散用移動部材40を設け、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節自在に構成しているので、シーブ23の前側シーブ26の前側拡散用移動部材40により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、後側シーブ27のフィン37の傾斜角度を調節することによって、被処理物の藁屑の混入率等の性状の相違に対して最適状態で揺動選別棚20による選別を行うことができ、全体の選別効率を向上させられる。
後側シーブ27のフィン37の傾斜角度調節機構の作動アーム65は、フィン37の軸63に取付け、作動アーム65とフィン37の回動中心を同心構成としてうるので、後側シーブ27の傾斜角度調節機構の構成を簡素にする。
【0031】
また、後側シーブ27の傾斜角度調節機構ごと枠体38を揺動選別棚20から着脱自在にしているので、着脱を容易にし、メンテナンス作業を容易にする。
図13のシーブ23の他の実施例では、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々に前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61を設け、各前側拡散用移動部材40上にガイド体60を設けているので、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40と後側拡散用移動部材61により揺動選別棚20上の被処理物を蛇行させて後方移送し、選別時間を長くして穀粒の回収効率を向上させると共に、前側シーブ26と後側シーブ27の夫々の前側拡散用移動部材40とと後側拡散用移動部材61上のガイド体60により吸引排塵ファン33側に被処理物を寄せられて、吸引排塵ファン33による吸引で藁屑と穀粒の分離を促進させられ、全体の選別効率を向上させられる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0032】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13A…挾扼杆、13B…供給搬送チエン、15…扱網、16…唐箕、17…唐箕ケーシング、18…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…シーブ、25…排出口、26…前側シーブ、27…後側シーブ、30…ストローラック、31…一番コンベア、32…二番コンベア、33…吸引排塵ファン、34…ケーシング、37…フィン、38…枠体、40…前側拡散用移動部材、41…摺接部41、42…透孔、43…掻き板部、44…上側傾斜面、45…側部傾斜縁、46…取付部、47…連結部材、48…取付軸、49…前後アーム、50…係合孔、51…左右アーム、52…駆動リンク部材、53…取付軸、55…駆動伝達手段、58…送風口、59…吸引口、60…ガイド体、61…後側拡散用移動部材、63…軸、64…作動軸、65…作動アーム、66…操作伝達部材、69…側板、70…傾斜面、71…傾斜案内部、73…穀粒貯留ホッパ、74…揚穀装置、75…漏斗排出口、76…ホッパフレーム、77…仕切り板、78…エンジン、79…燃料タンク、80…フィルタ、81…窓孔、82…給油口、83…カッタ装置、84…アタッチメントフレーム、85…プレエアクリーナー、86…塵埃排出口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(10)を軸装した脱穀室(11)の下方に唐箕(16)からの送風により風選する風選室(18)を設け、該風選室(18)に前後方向に往復揺動する揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)には、穀粒と藁屑等とを選別するフィン(37)を揺動方向に複数並設したシーブ(23)を設け、該シーブ(23)は前側シーブ(26)と、該前側シーブ(26)の後側の後側シーブ(27)とにより構成し、前記前側シーブ(26)と後側シーブ(27)のうちの少なくとも前側シーブ(26)には、左右往復移動する前側拡散用移動部材(40)を設け、該前側拡散用移動部材(40)の後端部を後側シーブ(27)の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材(40)の前記フィン(37)との摺接部(41)の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部(43)を設け、該掻き板部(43)に、正面視において前記摺接部(41)側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面(44)と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁(45)を備えたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記前側拡散用移動部材(40)を左右方向に複数並設し、各前側拡散用移動部材(40)を、前記フィン(37)よりも下側の部位で連結部材(47)により一体的に連結したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記前側拡散用移動部材(40)を備えた前側シーブ(26)を、揺動選別棚20における前記唐箕(16)の選別風の作用域より始端側の部位に設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、前記後側シーブ((27))に左右往復移動する後側拡散用移動部材(61)を左右方向に複数並設し、前記側拡散用移動部材(40)と後側拡散用移動部材(61)とを単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項5】
請求項4において、前記揺動選別棚(20)の後部の左右何れか一側に、吸引排塵ファン(33)のケーシング(34)の吸引口(59)を開口させ、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材(40)と各後側拡散用移動部材(61)の上部には、平面視で後方に至るに従い吸引口(59)側に位置するように傾斜させたガイド体(60)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項1】
扱胴(10)を軸装した脱穀室(11)の下方に唐箕(16)からの送風により風選する風選室(18)を設け、該風選室(18)に前後方向に往復揺動する揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)には、穀粒と藁屑等とを選別するフィン(37)を揺動方向に複数並設したシーブ(23)を設け、該シーブ(23)は前側シーブ(26)と、該前側シーブ(26)の後側の後側シーブ(27)とにより構成し、前記前側シーブ(26)と後側シーブ(27)のうちの少なくとも前側シーブ(26)には、左右往復移動する前側拡散用移動部材(40)を設け、該前側拡散用移動部材(40)の後端部を後側シーブ(27)の前端部に臨ませて配置し、前側拡散用移動部材(40)の前記フィン(37)との摺接部(41)の少なくとも左側側面には、側方に突出する掻き板部(43)を設け、該掻き板部(43)に、正面視において前記摺接部(41)側が最も高く、左側方に至るに従い低くなる上側傾斜面(44)と、平面視において前側が最も幅広く後側に至るに従い狭くなる側部傾斜縁(45)を備えたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記前側拡散用移動部材(40)を左右方向に複数並設し、各前側拡散用移動部材(40)を、前記フィン(37)よりも下側の部位で連結部材(47)により一体的に連結したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記前側拡散用移動部材(40)を備えた前側シーブ(26)を、揺動選別棚20における前記唐箕(16)の選別風の作用域より始端側の部位に設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、前記後側シーブ((27))に左右往復移動する後側拡散用移動部材(61)を左右方向に複数並設し、前記側拡散用移動部材(40)と後側拡散用移動部材(61)とを単一の駆動手段により互いに反対方向に往復移動させる構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項5】
請求項4において、前記揺動選別棚(20)の後部の左右何れか一側に、吸引排塵ファン(33)のケーシング(34)の吸引口(59)を開口させ、前記左右方向に複数並設した各前側拡散用移動部材(40)と各後側拡散用移動部材(61)の上部には、平面視で後方に至るに従い吸引口(59)側に位置するように傾斜させたガイド体(60)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−152136(P2012−152136A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13954(P2011−13954)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]