脱穀装置
【課題】扱胴を囲んで扱室内に配置された受網の特に上方部位における付着物の清掃機能を提供する。
【解決手段】扱室11に備えた扱胴10の外周に受網15を設け、受網15の外側面に接触しながら扱胴10の軸心方向に往復移動するスクレーパ120を設けて、受網15の付着物を除去し、受網15の目詰まりを防止することができる。また、受網15と接触する部位にはゴム材からなるスクレーパ片を設けて密着性を高めたりして清掃動作を円滑に行えるようにする。
【解決手段】扱室11に備えた扱胴10の外周に受網15を設け、受網15の外側面に接触しながら扱胴10の軸心方向に往復移動するスクレーパ120を設けて、受網15の付着物を除去し、受網15の目詰まりを防止することができる。また、受網15と接触する部位にはゴム材からなるスクレーパ片を設けて密着性を高めたりして清掃動作を円滑に行えるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受網と接触しつつ前後方向に沿って往復動するスクレーパを備えた脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扱胴を囲んで扱室内に配置された受網の目合いによりろ過されて穀粒が扱室側から排出されるが、水分を含んだ湿材の脱穀作業をする場合には、受網の目合いに藁屑が詰まりやすいため、穀粒のろ過が十分にできなかった。
【0003】
具体的には、湿材の作業時において揺動選別棚上の処理物が水分を多く含むため、唐箕の選別風により藁屑等の來雑物が機外に排出され難く、二番受樋に落下する処理物量が増大する。これに伴い、二番処理物還元口から二番処理室に向けて放出される二番物の量が増大し、扱室の受網における二番処理室側の面に多量に二番物が付着し、穀粒のろ過を阻害していた。これに対し、特許文献1及び2に示す従来技術は、受網の清掃装置を有するものの、二番処理室を備えておらず、特に湿材の作業に関する課題は存在していない。
【0004】
但し、受網の特に下方部位では、扱胴の回転により受網の内側面に穀稈が常に接触しながら移送されるため、この下方部位に付着した処理物は穀稈によって後方に掃き出され、受網の詰まりが生じ難い。この為、特に受網の上方部位に関して、受網の目合いに藁屑が詰まり易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−175341号公報
【特許文献2】実開昭60−55332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように扱室の二番処理室側の受網部分に二番物が多量に付着する結果として、穀粒が揺動選別棚の片側に片寄ったり、選別工程が短くなったりすることで、揺動選別棚で穀粒が回収しきれず、穀粒が機外に排出されて三番ロスが増加する原因になっていた。
そこで、本発明の主たる課題は、扱胴を囲んで扱室内に配置された受網の特に上方部位における付着物の清掃機能を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(11)内に備えた扱胴(10)の外周に受網(15)を設け、該受網(15)の外側面に接触しながら扱胴(10)の軸心方向に往復移動するスクレーパ(120)を設けたことを特徴とする脱穀装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記扱室(10)の左右一側に二番処理胴(41)を備えた二番処理室(40)を設け、
該二番処理室(40)の上部外側から内側に向けて選別後の二番物を還元する二番処理物還元口(43)を設け、
該二番処理物還元口(43)と扱胴(10)との間に受網(15)の一部を臨ませ、
該受網(15)における前記二番処理物還元口(43)と対向する部位に前記スクレーパ(120)を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記スクレーパ(120)を有する清掃装置(110)は、扱胴(10)の軸心方向に沿うリードカム軸(114)と、該リードカム軸(114)を回転駆動する駆動源(116)と、リードカム軸(114)に螺合した状態で前記スクレーパ(120)を支持するスライド部材(118)とを備え、
リードカム軸(114)が回転することで、スライド部材(118)とスクレーパ(120)とが一体で扱胴(10)の軸心方向に往復移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分を、ゴム等の弾性材により形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の脱穀装置である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分に複数のスリットを設けたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)よりも上方に配置したことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、スクレーパ(120)が前後に往復移動することで、受網(15)の付着物を除去することができるので、受網(15)の目詰まりを防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、受網(15)における目詰まりが発生しやすい二番処理室(40)側の部位をスクレーパ(120)により清掃するので、湿材の作業時においても、常に受網(15)の目合いが詰まる事が無くなって、三番ロスが低減される。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、駆動源(116)により回転されるリードカム軸(114)上で移動するスライド部材(118)でスクレーパ(120)を支持したことにより、簡易な構成で、スクレーパ(120)を前後に往復移動させて受網(15)を清掃することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項2または請求項3に記載の発明による効果に加えて、スクレーパ(120)の前記受網(15)と接触する部位に、ゴム材からなるスクレーパ片(120B)を設けたので、受網(15)との密着性が高まり確実に清掃できるだけでなく、スクレーパ(120)が受網(15)上を移動していく時に、受網(15)の目合いとスクレーパ(120)との間に処理物を挟み込んでも、ゴム材が変形して逃げて清掃動作が円滑に行える。また、スクレーパ(120)の組立上のばらつきを弾性変形して吸収することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明による効果に加えて、スクレーパ片(120B)に複数のスリットを設けたので、ゴム材が変形して逃げることにより清掃動作が円滑に行えるだけでなく、スクレーパ(120)の先端が細かく変形して、受網(15)の目合いの内側まで入り込むことで、詰まり除去作用を向上させる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項3〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)より上側に配置したことで、リードカム軸(114)に被処理物が付着し難く、清掃装置(110)を確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置の縦断面図である。
【図6】脱穀装置の他の位置における要部縦断面図である。
【図7】脱穀装置の水平断面図である。
【図8】コンバインの要部水平断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】扱室の正面図である。
【図11】図9の要部拡大断面図である。
【図12】図10の要部拡大図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】変形例における図9の要部拡大断面図である。
【図15】図8のB−B断面図である。
【図16】図7のC−C断面図である。
【図17】排塵処理室の拡大断面図である。
【図18】排塵処理室の外枠正面図である。
【図19】変形例1の排塵処理室の拡大断面図である。
【図20】変形例1の排塵処理室の外枠の正面図である。
【図21】変形例2の排塵処理室の拡大断面図である。
【図22】変形例2の排塵処理室の外枠の正面図である。
【図23】コンバインの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0021】
図1〜図4に、機体フレーム1、左右一対のクローラを有する走行装置2、機体フレーム1の上方に設けられた脱穀装置3、脱穀装置3の前側に設けられた、植立穀稈を刈り取る刈取装置4、脱穀装置3の側部に設けられたグレンタンク5、グレンタンク5の前方に設けた操縦部6、グレンタンクの貯留穀粒を排出するための排出管7、刈取装置4で刈り取った穀稈を脱穀装置3に向けて搬送する供給搬送装置8をそれぞれ有したコンバインを示している。
【0022】
走行装置2により機体を走行し、圃場に植立する穀稈を刈取装置4により刈り取ると、その穀稈は供給搬送装置8により揚上搬送され、その過程で株元側が側方に持ち上がるように姿勢変更され且つ脱穀装置3における扱ぎ深さが調整された後に脱穀部搬送装置12に受け渡される。脱穀部搬送装置12では、穀稈の株元側をフィードチェン13Bと挟持杆13Aとの間で挟持してその穂先側を脱穀装置3の扱室11内に通過させて脱穀を行いつつ後方に搬送する。脱穀済みの排藁は、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0023】
(扱室)
脱穀装置3は穀稈の脱穀を行う扱室11を上部に備えている。この扱室11内には扱歯10bを有する扱胴10が前後方向に沿う軸心を中心として回転するように軸支されており、この扱胴10の主として下方側を扱胴10外周に沿って包囲するように受網15が張設されている。扱室11に供給された穀稈は回転する扱胴10と受網15との間で脱穀され、脱穀された穀粒は受網15から漏下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。
【0024】
扱室11は、前後方向中間に設けられた中間隔壁11J,11Kよりも前側の部分で構成され、中間隔壁11J,11K間に排塵処理室30(後述する)への連通口35が形成されている。また、中間隔壁11Kとその下流側に設けられた後隔壁11Lとの間に刺さり粒回収室11Eが形成されるとともに、扱胴10の下流側(後側)端部が中間隔壁11Kを貫通して刺さり粒回収室11E内まで延在しており、この延在部分に、扱胴回転方向に対して所定角度に傾斜する傾斜扱歯10cが扱胴周方向に所定の間隔を空けて且つ交互に設けられている。扱室11の側面には、穀稈の穂先側を扱胴10の扱歯10bの作用域へ供給した状態で後送するための扱ぎ口11iが形成され、この扱ぎ口11iに沿って、フィードチェン13Bが配置される。扱室11で脱穀された処理物のうち受網15から漏下しない処理物は連通口35を介して排塵処理室30に供給される。一方、扱室11を通過した穀稈は刺さり粒回収室11Eに至り、傾斜扱歯10cにより搬送穀稈を開いて穀稈中にささり込んだ穀粒が取り除かれて落とされた後、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0025】
刺さり粒回収室11Eは穀稈に刺さり残った刺さり粒を落とすためのものであるため、刺さり粒回収室11Eの前後方向長さは扱室11の前後方向長さよりも短くするのが望ましい。
【0026】
扱室11の上方を覆う上部カバー11Uは、脱穀部搬送装置12と反対側に位置する前後方向に沿う支軸を支点として揺動開閉するように構成されており、この上部カバー11Uに挟持杆13Aが取り付けられ、挟持杆13Aも上部カバー11Uに伴って揺動開閉するように構成されている。
【0027】
(挟持杆、フィードチェン部)
図5、図9等に示すように、扱室11の一方側(機体走行方向の左側)に設けられる脱穀部搬送装置12は、下側に位置するフィードチェン13Bと、上側に位置し、且つスプリング等の付勢手段13cにより上部カバー11Uに対してフィードチェン13B側に付勢される挟持杆13Aとから主に構成されている。図8及び図23等に示すように、フィードチェン13Bは、前後に設けられた張設輪13d,13d及びこれらの間に設けられた伝動スプロケット13eに巻回されて駆動される無端のチェンであり、上方側を後方に向かって移動する過程で挟持杆13Aとの間に穀稈の株元側が挟持されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、これらのフィードチェン13B、張設輪13d、伝動スプロケット13e、これらを支持するフレーム9f、及びその外側のカバー9c等を含み、裏側に扱室11の側壁が位置する部分がフィードチェン部9を構成している。フィードチェン部9は、本実施形態では前端部に位置する上下方向に沿う支軸9xを中心として揺動開閉するようになっているが、フィードチェン13Bと挟持杆13Aとの間で穀稈を搬送する閉位置と、裏側に位置する扱室11の側壁が露出する開位置とに開閉変更自在であれば、支軸9xの位置が後端部であっても良く、また移動形態が開動ではなくスライド移動等であっても良い。
【0029】
(選別室)
扱室11の受網15の下方には、受網15から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の物とに選別するための選別室18が形成されており、選別室18の上部には前後方向に往復揺動する揺動選別棚20により構成された揺動選別装置21が設けられ、選別室18の下部には、唐箕16と、一番受樋19A、二番受樋19Bとが、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。
【0030】
揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕ケーシング16cの上方に位置する移送棚22として形成されている。移送棚22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側の第一シーブ(固定シーブ)23に向けて受網15からの漏下物を移送できればよい。
【0031】
第一シーブ23は、主に受網15から直接漏下する又は移送棚22を介して送り込まれる穀粒と異物とを選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなる固定シーブ部材23bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。この形態における第一シーブ23のシーブ部材(固定シーブ部材)23bの傾斜角度は固定とされた固定シーブである。
【0032】
第一シーブ23の移送方向下流側(後側)には、主に穀粒とチャフ(わら屑)とを選別する第二シーブ24が並設されている。第二シーブ24は、扱室11から排塵処理室30への連通口35より後側に配置され、第一シーブ23からの処理物及び刺さり粒回収室11Eからの処理物を受け入れて選別する箭であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材24bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものであり、第一シーブ23より選別行程が長く構成されている。
【0033】
第二シーブ24は、左右方向に延在するとともに前後方向に対する傾斜角度が調整自在の複数の第二シーブ部材24bが前後方向に平行に並設されてなるものである。より詳細には、図5及び図6等に示されるように、各第二シーブ部材24bには左右方向に延在する上部支軸24c及び下部支軸24dがそれぞれ設けられるとともに、その下方には各第二シーブ部材24bを連結する連結板24rが設けられており、この連結板24rには各第二シーブ部材24bに対応して前後方向に間隔を空けて長孔24hが設けられており、この長孔24hに対して各第二シーブ部材24bの下部支軸24dが長孔24hの長手方向に移動可能なように挿入されている。また、各第二シーブ部材24bの上部及び下部支軸24c,24dには、傾斜角度(間隙)調節用の操作アーム24mが取付けられ、この操作アーム24Mに操作用のケーブル24wと復帰用のバネ24sとが対向的に連結されている。操作用のケーブル24wの引き又は戻し操作により操作アーム24mが揺動し、これに伴い操作アーム24Mに取り付けられた第二シーブ部材24b、並びにこの第二シーブ部材24bに対して連結板24rにより一体化された他の第二シーブ部材24bが同時かつ一体的に上部支軸24cを中心として回動し、前後方向に対する傾斜角度が調節される。
【0034】
さらに、第二シーブ24の下流側には、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗付着粒等を篩い選別し、これらを後述する二番受樋19B上に漏下させるために、ストローラック25が設けられている。
【0035】
また、揺動選別棚20には、移送棚22の後端部から延出して第一シーブ23からの漏下物を受けるバケット状のグレンパン20Gが設けられるととともに、このグレンパン20Gにおける第二シーブ24の下方に、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下した粗選物を中選別する選別網28が設けられている。
【0036】
揺動選別棚20の下方における選別風送り方向上手側には、揺動選別棚20と一番受樋19Aとの間に臨む送風口65を備えた唐箕16が設けられており、この唐箕16の送風口65には、風割66によって上下に形成された上側風路74と下側風路75とが設けられており、この送風口65の下手側に一番受樋19Aが設けられ、さらにこの一番受樋19Aの下手側に二番受樋19Bが設けられている。一番受樋19A内には、グレンタンク5へ連通する螺旋コンベア式の一番コンベア26が配置され、二番受樋19B内には、二番処理室40へ連通する螺旋コンベア式の二番コンベア27が配置されている。一番受樋19Aは、その前側の部分が唐箕16のケーシング16cに一体的に繋がれるとともに、その後側の部分は一番棚先29まで延在されている。
【0037】
一番棚先29は、上側の揺動選別棚20の第二シーブ24終端に向けて斜め上方へ傾斜して設けられている。一番棚先29は揺動選別棚20と一体に組み付けて揺動するように構成されているので、図6に示すように、ナイロンシート或いはゴム板からなるシール部材S1,S2を設けて穀粒が交じり合ったり漏れ出たりすることを防いでいる。なお、図6のように、横断流ファンからなる第二唐箕17を一番棚先29の下側における一番コンベア26と二番コンベア27との間に設けても良い。
【0038】
二番受樋19Bの前端部は、一番棚先29と略平行に後斜め上向きに延在する部分を有しており、その上端は一番棚先29に対して基端寄りに配置され、これらの間に形成される送風口は一番棚先29の背面に沿って排塵口(三番口)56へ向かって吹き出すように構成されている。
【0039】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に揺動するので、被処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒は第一シーブ23及び第二シーブ24を漏下して選別網28上に供給され、選別網28上の被処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番受樋19Aにより回収され、一番コンベア26で搬送されてグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出筒7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番受樋19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0040】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後方から落下して二番受樋19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番受樋19Bに供給される被処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0041】
揺動選別棚20上の被処理物のうち軽量のものは、シーブ23,24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされてシーブ23,24の上を後方へ移動し、ストローラック25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番受樋19Bにより回収される。シーブ23,24の後部やストローラック25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に混在した穀粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、シーブ23,24及びストローラック25から漏下しない被処理物(主に藁屑)は、更に後方へ移送されて三番排塵口56から排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0042】
(点検口)
図8、図9、図15、図16及び図23に示すように、扱室11のフィードチェン部9側の側壁には、フィードチェン部9の裏側を含む範囲に、取り外した第一シーブ23が通過可能である点検口11Sが形成されるとともに、この点検口11Sを開閉する蓋体11Zが設けられており、この蓋体11Zはフィードチェン部9に連結一体化されている。フィードチェン部9をオープン(揺動開放)すると、図8に示すように蓋体11Zもフィードチェン部9に伴い移動して点検口11Sが開口し、点検口11Sから扱胴10の下端部及び扱胴10の下側空間が露出する。よって、点検口11S及び扱胴10の下側空間を介して後述の揺動選別棚20の上流側、具体的には移送棚22及び第一シーブ23の掃除やメンテナンスを行うことができる。
【0043】
また、扱室11の下側に張設される受網15のうちフィードチェン部9側の端部が、受網15の下側において前後方向に沿って架設された棒状等の受網固定部材15Uに係合および離脱自在な構成とされており、フィードチェン13Bのオープンした状態で受網固定部材15Uが点検口11Sを横切る場合、この受網固定部材15Uが第一シーブ23の着脱等の作業の邪魔になる。
【0044】
(受網清掃装置)
図9に示すように、二番コンベア27及び二番処理物還元口43(後述する)側と対向して扱室11の横側に張設される上部受網15Aと、扱室11の下側に張設される下部受網15Bとから、受網15が構成されている。図9〜図13に示すように、外枠111に取付けられた上部受網15Aの面に対して直角に立ち上がった外枠111の両側板111A上であって二番処理物還元口43より上部位置に、2つの軸受112が取付けられ、これら2つの軸受112に、螺旋状の溝を外周面に有するリードカム軸114の両端部が軸支されて、該リードカム軸114が両側板111A間に掛け渡されている。このリードカム軸114の上側の両側板111Aの部分には、金属製で丸棒状のガイド棒115の両端側が固定されて、リードカム軸114と平行にこのガイド棒115が配置されている。このため、これらリードカム軸114及びガイド棒115が清掃装置110の案内部分とされている。
【0045】
図10、図12におけるリードカム軸114の左端部には、このリードカム軸114を回転する為の駆動源とされる清掃用モータ116が設置されて、図示しない制御装置によりこの清掃用モータ116の駆動回転が制御される。但し、清掃用モータ116とリードカム軸114との間にギヤ等による減速機構が配置されて、清掃用モータ116の駆動回転が減速されてリードカム軸114に伝達されることが好ましい。
【0046】
図11に示すように、このリードカム軸114上に金属製のスライド部材118が嵌合していて、扱胴10側に突出したスライド部材118のブラケット118Aに、ガイド板120Aの上端部寄りの箇所から突出する下部取付部120Cがボルト121によって連結される。また、ガイド棒115とスライド可能に嵌合する上部取付部120Dが、ガイド板120Aの上部箇所から突出している。
【0047】
このことで、円弧状のガイド板120Aが、これと同一形状の押板120Eと共に、上部受網15Aの外周面に所定間隔を置いて対向しかつ、扱胴10の軸心方向に移動可能とされている。これに合わせて、ゴム材により円弧状に形成された弾性材であるスクレーパ片120Bが該ガイド板120Aと押板120Eと間に挟まれつつ3つのネジ123及びナット123Aの締結により、これらガイド板120Aと上部受網15Aとの間に位置している。
【0048】
以上より、清掃用のスクレーパ120が、ガイド板120A及び弾性変形可能なスクレーパ片120B等により一体的に構成され、上部取付部120D及び下部取付部120Cを介して該スクレーパ120がスライド部材118に支持されて、フィードチェン13Bと反対側部位とされる二番処理物還元口43に臨む位置に配置される。これに合わせて、本実施形態では、清掃装置110が、リードカム軸114、清掃用モータ116、スライド部材118及びスクレーパ120等により構成されている。
【0049】
扱室11に供給される穀稈から扱胴10により穀粒が脱粒されるのに伴い生じる藁屑等が、扱歯10bの矢印方向への回転作用によってフィードチェン13Bと反対側に放擲されるため、フィードチェン13Bと反対側に位置する上部受網15Aの領域まで飛んでこの部分で特に目詰まりが生じ易いものの、本実施形態のように、フィードチェン13Bと反対側に位置する上部受網15Aをスクレーパ120により清掃することで、目詰まりが容易に解消できる。
【0050】
また、リードカム軸114を二番処理物還元口43より上側に配置したことで、リードカム軸114に被処理物が付着し難く、清掃装置110を確実に作動させることができる。これに合わせて、二番処理物還元口43を臨む受網15の部位とされる二番処理室40側の上部受網15Aにスクレーパ120を設けたことで、二番還元物に含まれている藁屑等の量が増大しても、スクレーパ120により清掃されて受網15が詰まり難くなる。さらに、スクレーパ120により掻き取られて解砕された処理物の大半が二番処理室40内に落下した後に、揺動選別棚20上に送られる。このため、受網15に付着して塊状になった処理物がそのまま揺動選別棚20上に落下することによる選別性能の低下も防止できる。
【0051】
他方、スクレーパ120の上部受網15Aと接触する部位とされるスクレーパ片120Bをゴム製としたことで、ガイド板120Aとの間の組立上のばらつきを吸収しつつ、上部受網15Aに対するスクレーパ片120Bの密着性を上げる事ができるので、確実に上部受網15Aを清掃できる。但し、スクレーパ片120Bとしては、合成樹脂製や金属製のものを用いても良い。また、リードカム軸114に沿ってスクレーパ片120Bが上部受網15A上を往復移動していく際に、上部受網15Aの目合い15Cとスクレーパ片120Bとの間に処理物が挟み込まれた場合でも、ゴム製とされて弾性変形可能なスクレーパ片120Bが変形して逃げて、円滑に清掃を行える。
【0052】
さらに、上部受網15Aの網枠は、図11に示す外枠111のブラケット部材111Bに上部ピン124Aが係合されると共に下部ピン124Bが下部に係合して固定されているが、これらピン124A、124Bをはずして網枠と共に上部受網15Aを取り外す際にも、スクレーパ片120Bの長さ寸法を上部受網15Aの全長より短くして、上部受網15Aの網枠の取り外しを可能とすることで、扱室11に対して網枠を着脱する時には、スクレーパ片120Bが変形するので、扱室11内のメンテナンスが容易になる。
【0053】
なお、スクレーパ120は通常、目合い15C間の目合い15Cの無い図12における上部受網15Aの右端部分と対向した待機位置で停止しているものの、コンバインの搭乗者の操作或いは図示しないセンサからの検出信号に基づく制御装置の判断により上部受網15Aの清掃が開始されるが、清掃時には、清掃用モータ116が駆動回転してリードカム軸114が回転される。
【0054】
このことで、先端側のスクレーパ片120Bで上部受網15Aとの接触しつつ左側に移動して、同じく上部受網15Aの目合い15C間の目合い15Cの無い図12における左端部分と対向した待機位置において、制御装置の制御により清掃用モータ116の駆動回転が止まり、スクレーパ120が図12及び図13に二点差線で示す待機位置において一旦停止して待機する。
【0055】
この際の上部受網15Aの右端部分における目合い15Cとスクレーパ片120Bとの関係を図12の矢印R部分の円内に示し、また、上部受網15Aの左端部分における目合い15Cとスクレーパ片120Bとの関係を図12の矢印L部分の円内に示す。このように、スクレーパ120の当初待機位置及び折り返し待機位置を、目合い15Cの無い目合部分外の箇所とすることで、スクレーパ120自体が穀粒のろ過の妨げにならない。
【0056】
この後、制御装置の制御により清掃用モータ116が逆方向に駆動回転することで、リードカム軸114が逆回転するのに伴い、この待機位置から逆方向にスライド部材118が移動してスクレーパ片120Bの先端側で上部受網15Aとの接触しつつ右側に移動して、同じく上部受網15Aの目合い15Cの無い右端部分と対向した当初の待機位置で清掃用モータ116の駆動回転が止まることで、スクレーパ120が当初待機位置に停止して1回の清掃が終了する。
【0057】
この結果、リードカム軸114の回転に伴い、リードカム軸114上をスライド部材118が矢印Sのように扱胴10の軸心方向に沿って往復移動し、これとともに上部受網15Aと接触しつつ扱胴10の軸心方向に沿ってスクレーパ120のスクレーパ片120Bが往復移動して、上部受網15Aがスクレーパ120により清掃される。これに合わせて、受網15における目詰まりが特に発生しやすい二番処理室40側の上部受網15Aをスクレーパ120により清掃するので、湿材の作業時においても常に上部受網15Aの目合い15Cが詰まる事が無くなり、三番ロスが低減される。
また、清掃用モータ116により回転されるリードカム軸114上で移動するスライド部材118でスクレーパ120を支持することにより、簡易な構成でスクレーパ120を往復移動させて上部受網15Aを清掃できる。
【0058】
次に本実施形態の変形例を説明する。第1実施形態とほぼ同様の構造とされるが、本変形例では、図14に示すようにゴム材で形成されたスクレーパ片120Bの上部受網15Aとの接触部分となる先端部に、スクレーパ片120Bの全幅の例えば五分の一程度の深さで複数のスリット125が等間隔で設けられている。このようにゴム製のスクレーパ片120Bの先端部に複数のスリット125を設けたことで、スクレーパ片120Bの先端部がより変形し易くなって、上部受網15Aの目合い15Cの段部まで確実に清掃可能になる。
なお、スクレーパ片120Bにおけるスリット125の間隔は受網15Aの目合いよりも小さくすると、スクレーパ片120Bの先端が受網15Aの内側に入り込むことで、受網15Aの付着物をより効果的に除去することができる。
【0059】
(排塵処理室)
扱室11の後端部は連通口35を介して排塵処理室30に連通されている。排塵処理室30内には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理室30の周壁のうち揺動選別棚20側(正面に向かって左側)の下部は、後端部に処理物排出口33が形成されるとともに、この処理物排出口33と連通口35との間の部分が受網15により形成されている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の初端部(前端部)にはスクリュー羽根体37が設けられ、処理物の移送方向の終端部(後端部)には径方向に沿って外方に突出する羽根体34が設けられ、これらの間には排塵処理歯36が設けられている。
【0060】
排塵処理室30に供給された被処理物は、回転する排塵処理胴31により終端側に移動されつつ解砕処理される過程で、受網15から揺動選別棚20上に漏下されるか、又は排塵処理室30の終端閉塞部に至った後に、羽根体34により排出口33を介して揺動選別棚20のストローラック25上に排出される。これら排出処理物は、揺動選別棚20により選別されて穀粒は回収され、藁屑等は機外に排出される。排塵処理室30に供給される被処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑が受網15及び処理物排出口33から揺動選別棚20に落下する。
【0061】
この処理物排出口33は、図17、図18に示すように、排塵処理室30の枠体30Aに相互に同一の長方形形状とされる複数の開口部126が等間隔で並んで配置されたもの等により構成されている。但し、丸棒状に金属材により形成された2本の仕切体127が排塵処理胴31の軸方向に沿って伸びるようにそれぞれ配置され、これら2本の仕切体127が各開口部126をほぼ三等分に区画して、排塵処理室30のろ過孔である小開口126Aを構成している。尚、仕切体127は1本或いは3本以上の複数であっても良い。
【0062】
この開口部126を仕切るための仕切体として例えば板状のものを採用した場合、湿材や雑草の多い条件での作業を実施した際に、枝梗付着粒および小さな藁屑が仕切体間でブリッジし易く、ろ過孔の目詰まりの原因となる。これに対して、本実施形態のように構成が簡易で角のない丸棒状の仕切体127を採用したことで、製造コストを低減しつつ、枝梗付着粒および小さな藁屑が仕切体127間でブリッジが生じ難くなるので、目詰まりが生じないようになる。
【0063】
次に、本実施形態の変形例1を説明する。図19、図20に示すように、相互に同一形状とされる長方形の複数の開口部126が、排塵処理室30の枠体30Aに等間隔で並んで配置されたものにより、処理物排出口33を上記実施形態と同様に構成しているが、本変形例では、該開口部126が多数の小穴128Aを有した鉄製の目抜板128で覆われた構成とした。該目抜板128は、各開口部126当り例えば縦に2列に並んだ各4つの小穴128Aを格子状に打抜いた構成とされて、枠体30Aの内周面側に溶接等により該目抜板128の周囲部分を固定している。
【0064】
このように開口部126を目抜板128で覆い、この目抜板128を枠体30Aの内周面側に取付ける構成にしたことで、ろ過孔を形成する小穴128Aの大きさを相違させた複数種類の目抜板128を予め製造しておいて、何れかのものを選択することで、小穴128Aの大きさを容易に変更できる。また、湿材や雑草の多い条件での作業においても、格子状に配置された小穴128Aに枝梗付着粒および小さな藁屑が引っ掛かりにくいので、目詰まりが生じ難い。
【0065】
次に、本実施形態の変形例2を説明する。上記実施形態とほぼ同様な構成になっているが、本実施形態では、図21、図22に示すように排塵処理室30の枠体30Aを打ち抜いて枠体30A自体にろ過孔とされる開口部126Bを形成した構成とした。開口部に目抜板を取付けるような構造と比較して、開口部126Bが排塵処理室30に直接形成されることから、部品の同一化が図れ、部品点数が少なくなって製造コストを低減できる。
【0066】
この際、開口部126Bを矢印A方向とされる穀粒の搬送下流側ほど図22に示すように大きくすることにしても良い。このことで、排塵処理室30の前部ではろ過を制限して排塵処理室30でのこなし処理が促進され、排塵処理室30の後部では穀粒の排出を良好とすることで、処理効率が高められる。
【0067】
(二番処理室)
排塵処理室30の前側には、二番物を処理して還元するための二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理室40における二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて樋状の受板42により包囲されており、その側部上方は開口しており、その開口部は受網15の側部下方に位置し、受網15の側部から漏れ出る漏出物は二番物として二番処理室40に供給されるようになっている。また、二番処理室40における二番処理胴41の終端部(前端部)の下方は、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口としての二番処理物還元口43が開口している。
【0068】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43から揺動選別棚20に落下し、扱室11からの被処理物と合流して再選別される。
【0069】
(吸引排塵ファン)
揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン47の吸塵口47iが開口している。吸引排塵ファン47は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン47が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口47iが開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0070】
(排藁処理装置)
脱穀装置3の後側では、扱室11を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0071】
(三番排塵口)
脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、例えば圃場の一辺を刈り終えて次辺へ向けて旋回する際に、この三番排塵口シャッタ57を閉じれば、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20の第二シーブ24又はストローラック25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン47の吸塵口47iとは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン47の吸塵口47i側に向かって広範に拡散するため、カギ又などの回収効率が一層向上する。
【0072】
(シーブ清掃装置)
図7に示すように、本実施形態では、第二シーブ24上を往復移動することにより清掃を行う第二清掃体100が設けられている。図5〜図7に示すように、本実施形態では、第一シーブ(固定シーブ)23上を往復移動することにより清掃を行う第一清掃体(清掃体)80が設けられている。より詳細には、第一シーブ23は左右方向に所定の間隔を空けて配置された複数の第一清掃体80,80,80…を備えており、この第一清掃体80は、前後方向に沿うプレート部81と、第一シーブ23の各シーブ部材23bの上面に接触して付着物を除去するスクレーパ部とを有するものである。
【0073】
各第一清掃体80を駆動するための清掃体駆動装置は適宜設計することができるが、本実施形態では、図6及び図7に示すように、互い違いに引き操作される一対の操作ケーブル87b,87b、往復回動する天秤アーム87、天秤アーム軸87a、往復回動する揺動アーム88等の連動機構を介して左右横方向に往復動するように構成している。すなわち、一対の操作ケーブル87b,87bが互い違いに引き操作され、天秤アーム87の往復回動によって天秤アーム軸87aを回動中心として揺動アーム88が左右に往復揺動し、この揺動アーム88の長孔88hに対して移動自在に挿入された突出部89を有する第一清掃体80が左右横方向へ強制的に往復動されるようになっている。
【0074】
(処理量検出センサ)
風割66及び天面部67の傾斜角は処理物量に関係なく固定としても良いが、揺動選別棚20の棚上処理物の量を検出する処理量検出センサ95を設け、この処理量検出センサ95の検出結果に基づき、棚上処理物の量(層厚)が増加したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を減少させ、棚上処理物の量が減少したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を増加させる制御装置(図示略)を設けるのも好ましい。これにより、処理物量に増減があっても、揺動選別棚20上の処理物量検出結果に応じて、風割66及び天面部67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0075】
処理量検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、刺さり粒回収室11Eの中間隔壁11Kの下端部とがセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ95の検出軸96xにフロート97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚22上を移動する被処理物に接触して、被処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚22上を移動する被処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、コンバイン等の脱穀装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0077】
3…脱穀装置
10…扱胴
11…扱室
15…受網
15A…上部受網
15C…目合い
30…排塵処理室
31…排塵処理胴
40…二番処理室
43…二番処理物還元口
110…清掃装置
114…リードカム軸
116…清掃用モータ
118…スライド部材
120…スクレーパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、受網と接触しつつ前後方向に沿って往復動するスクレーパを備えた脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扱胴を囲んで扱室内に配置された受網の目合いによりろ過されて穀粒が扱室側から排出されるが、水分を含んだ湿材の脱穀作業をする場合には、受網の目合いに藁屑が詰まりやすいため、穀粒のろ過が十分にできなかった。
【0003】
具体的には、湿材の作業時において揺動選別棚上の処理物が水分を多く含むため、唐箕の選別風により藁屑等の來雑物が機外に排出され難く、二番受樋に落下する処理物量が増大する。これに伴い、二番処理物還元口から二番処理室に向けて放出される二番物の量が増大し、扱室の受網における二番処理室側の面に多量に二番物が付着し、穀粒のろ過を阻害していた。これに対し、特許文献1及び2に示す従来技術は、受網の清掃装置を有するものの、二番処理室を備えておらず、特に湿材の作業に関する課題は存在していない。
【0004】
但し、受網の特に下方部位では、扱胴の回転により受網の内側面に穀稈が常に接触しながら移送されるため、この下方部位に付着した処理物は穀稈によって後方に掃き出され、受網の詰まりが生じ難い。この為、特に受網の上方部位に関して、受網の目合いに藁屑が詰まり易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−175341号公報
【特許文献2】実開昭60−55332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように扱室の二番処理室側の受網部分に二番物が多量に付着する結果として、穀粒が揺動選別棚の片側に片寄ったり、選別工程が短くなったりすることで、揺動選別棚で穀粒が回収しきれず、穀粒が機外に排出されて三番ロスが増加する原因になっていた。
そこで、本発明の主たる課題は、扱胴を囲んで扱室内に配置された受網の特に上方部位における付着物の清掃機能を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(11)内に備えた扱胴(10)の外周に受網(15)を設け、該受網(15)の外側面に接触しながら扱胴(10)の軸心方向に往復移動するスクレーパ(120)を設けたことを特徴とする脱穀装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記扱室(10)の左右一側に二番処理胴(41)を備えた二番処理室(40)を設け、
該二番処理室(40)の上部外側から内側に向けて選別後の二番物を還元する二番処理物還元口(43)を設け、
該二番処理物還元口(43)と扱胴(10)との間に受網(15)の一部を臨ませ、
該受網(15)における前記二番処理物還元口(43)と対向する部位に前記スクレーパ(120)を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記スクレーパ(120)を有する清掃装置(110)は、扱胴(10)の軸心方向に沿うリードカム軸(114)と、該リードカム軸(114)を回転駆動する駆動源(116)と、リードカム軸(114)に螺合した状態で前記スクレーパ(120)を支持するスライド部材(118)とを備え、
リードカム軸(114)が回転することで、スライド部材(118)とスクレーパ(120)とが一体で扱胴(10)の軸心方向に往復移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分を、ゴム等の弾性材により形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の脱穀装置である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分に複数のスリットを設けたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)よりも上方に配置したことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、スクレーパ(120)が前後に往復移動することで、受網(15)の付着物を除去することができるので、受網(15)の目詰まりを防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、受網(15)における目詰まりが発生しやすい二番処理室(40)側の部位をスクレーパ(120)により清掃するので、湿材の作業時においても、常に受網(15)の目合いが詰まる事が無くなって、三番ロスが低減される。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、駆動源(116)により回転されるリードカム軸(114)上で移動するスライド部材(118)でスクレーパ(120)を支持したことにより、簡易な構成で、スクレーパ(120)を前後に往復移動させて受網(15)を清掃することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項2または請求項3に記載の発明による効果に加えて、スクレーパ(120)の前記受網(15)と接触する部位に、ゴム材からなるスクレーパ片(120B)を設けたので、受網(15)との密着性が高まり確実に清掃できるだけでなく、スクレーパ(120)が受網(15)上を移動していく時に、受網(15)の目合いとスクレーパ(120)との間に処理物を挟み込んでも、ゴム材が変形して逃げて清掃動作が円滑に行える。また、スクレーパ(120)の組立上のばらつきを弾性変形して吸収することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明による効果に加えて、スクレーパ片(120B)に複数のスリットを設けたので、ゴム材が変形して逃げることにより清掃動作が円滑に行えるだけでなく、スクレーパ(120)の先端が細かく変形して、受網(15)の目合いの内側まで入り込むことで、詰まり除去作用を向上させる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項3〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)より上側に配置したことで、リードカム軸(114)に被処理物が付着し難く、清掃装置(110)を確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置の縦断面図である。
【図6】脱穀装置の他の位置における要部縦断面図である。
【図7】脱穀装置の水平断面図である。
【図8】コンバインの要部水平断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】扱室の正面図である。
【図11】図9の要部拡大断面図である。
【図12】図10の要部拡大図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】変形例における図9の要部拡大断面図である。
【図15】図8のB−B断面図である。
【図16】図7のC−C断面図である。
【図17】排塵処理室の拡大断面図である。
【図18】排塵処理室の外枠正面図である。
【図19】変形例1の排塵処理室の拡大断面図である。
【図20】変形例1の排塵処理室の外枠の正面図である。
【図21】変形例2の排塵処理室の拡大断面図である。
【図22】変形例2の排塵処理室の外枠の正面図である。
【図23】コンバインの要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0021】
図1〜図4に、機体フレーム1、左右一対のクローラを有する走行装置2、機体フレーム1の上方に設けられた脱穀装置3、脱穀装置3の前側に設けられた、植立穀稈を刈り取る刈取装置4、脱穀装置3の側部に設けられたグレンタンク5、グレンタンク5の前方に設けた操縦部6、グレンタンクの貯留穀粒を排出するための排出管7、刈取装置4で刈り取った穀稈を脱穀装置3に向けて搬送する供給搬送装置8をそれぞれ有したコンバインを示している。
【0022】
走行装置2により機体を走行し、圃場に植立する穀稈を刈取装置4により刈り取ると、その穀稈は供給搬送装置8により揚上搬送され、その過程で株元側が側方に持ち上がるように姿勢変更され且つ脱穀装置3における扱ぎ深さが調整された後に脱穀部搬送装置12に受け渡される。脱穀部搬送装置12では、穀稈の株元側をフィードチェン13Bと挟持杆13Aとの間で挟持してその穂先側を脱穀装置3の扱室11内に通過させて脱穀を行いつつ後方に搬送する。脱穀済みの排藁は、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0023】
(扱室)
脱穀装置3は穀稈の脱穀を行う扱室11を上部に備えている。この扱室11内には扱歯10bを有する扱胴10が前後方向に沿う軸心を中心として回転するように軸支されており、この扱胴10の主として下方側を扱胴10外周に沿って包囲するように受網15が張設されている。扱室11に供給された穀稈は回転する扱胴10と受網15との間で脱穀され、脱穀された穀粒は受網15から漏下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。
【0024】
扱室11は、前後方向中間に設けられた中間隔壁11J,11Kよりも前側の部分で構成され、中間隔壁11J,11K間に排塵処理室30(後述する)への連通口35が形成されている。また、中間隔壁11Kとその下流側に設けられた後隔壁11Lとの間に刺さり粒回収室11Eが形成されるとともに、扱胴10の下流側(後側)端部が中間隔壁11Kを貫通して刺さり粒回収室11E内まで延在しており、この延在部分に、扱胴回転方向に対して所定角度に傾斜する傾斜扱歯10cが扱胴周方向に所定の間隔を空けて且つ交互に設けられている。扱室11の側面には、穀稈の穂先側を扱胴10の扱歯10bの作用域へ供給した状態で後送するための扱ぎ口11iが形成され、この扱ぎ口11iに沿って、フィードチェン13Bが配置される。扱室11で脱穀された処理物のうち受網15から漏下しない処理物は連通口35を介して排塵処理室30に供給される。一方、扱室11を通過した穀稈は刺さり粒回収室11Eに至り、傾斜扱歯10cにより搬送穀稈を開いて穀稈中にささり込んだ穀粒が取り除かれて落とされた後、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0025】
刺さり粒回収室11Eは穀稈に刺さり残った刺さり粒を落とすためのものであるため、刺さり粒回収室11Eの前後方向長さは扱室11の前後方向長さよりも短くするのが望ましい。
【0026】
扱室11の上方を覆う上部カバー11Uは、脱穀部搬送装置12と反対側に位置する前後方向に沿う支軸を支点として揺動開閉するように構成されており、この上部カバー11Uに挟持杆13Aが取り付けられ、挟持杆13Aも上部カバー11Uに伴って揺動開閉するように構成されている。
【0027】
(挟持杆、フィードチェン部)
図5、図9等に示すように、扱室11の一方側(機体走行方向の左側)に設けられる脱穀部搬送装置12は、下側に位置するフィードチェン13Bと、上側に位置し、且つスプリング等の付勢手段13cにより上部カバー11Uに対してフィードチェン13B側に付勢される挟持杆13Aとから主に構成されている。図8及び図23等に示すように、フィードチェン13Bは、前後に設けられた張設輪13d,13d及びこれらの間に設けられた伝動スプロケット13eに巻回されて駆動される無端のチェンであり、上方側を後方に向かって移動する過程で挟持杆13Aとの間に穀稈の株元側が挟持されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、これらのフィードチェン13B、張設輪13d、伝動スプロケット13e、これらを支持するフレーム9f、及びその外側のカバー9c等を含み、裏側に扱室11の側壁が位置する部分がフィードチェン部9を構成している。フィードチェン部9は、本実施形態では前端部に位置する上下方向に沿う支軸9xを中心として揺動開閉するようになっているが、フィードチェン13Bと挟持杆13Aとの間で穀稈を搬送する閉位置と、裏側に位置する扱室11の側壁が露出する開位置とに開閉変更自在であれば、支軸9xの位置が後端部であっても良く、また移動形態が開動ではなくスライド移動等であっても良い。
【0029】
(選別室)
扱室11の受網15の下方には、受網15から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の物とに選別するための選別室18が形成されており、選別室18の上部には前後方向に往復揺動する揺動選別棚20により構成された揺動選別装置21が設けられ、選別室18の下部には、唐箕16と、一番受樋19A、二番受樋19Bとが、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。
【0030】
揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕ケーシング16cの上方に位置する移送棚22として形成されている。移送棚22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側の第一シーブ(固定シーブ)23に向けて受網15からの漏下物を移送できればよい。
【0031】
第一シーブ23は、主に受網15から直接漏下する又は移送棚22を介して送り込まれる穀粒と異物とを選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなる固定シーブ部材23bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。この形態における第一シーブ23のシーブ部材(固定シーブ部材)23bの傾斜角度は固定とされた固定シーブである。
【0032】
第一シーブ23の移送方向下流側(後側)には、主に穀粒とチャフ(わら屑)とを選別する第二シーブ24が並設されている。第二シーブ24は、扱室11から排塵処理室30への連通口35より後側に配置され、第一シーブ23からの処理物及び刺さり粒回収室11Eからの処理物を受け入れて選別する箭であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材24bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものであり、第一シーブ23より選別行程が長く構成されている。
【0033】
第二シーブ24は、左右方向に延在するとともに前後方向に対する傾斜角度が調整自在の複数の第二シーブ部材24bが前後方向に平行に並設されてなるものである。より詳細には、図5及び図6等に示されるように、各第二シーブ部材24bには左右方向に延在する上部支軸24c及び下部支軸24dがそれぞれ設けられるとともに、その下方には各第二シーブ部材24bを連結する連結板24rが設けられており、この連結板24rには各第二シーブ部材24bに対応して前後方向に間隔を空けて長孔24hが設けられており、この長孔24hに対して各第二シーブ部材24bの下部支軸24dが長孔24hの長手方向に移動可能なように挿入されている。また、各第二シーブ部材24bの上部及び下部支軸24c,24dには、傾斜角度(間隙)調節用の操作アーム24mが取付けられ、この操作アーム24Mに操作用のケーブル24wと復帰用のバネ24sとが対向的に連結されている。操作用のケーブル24wの引き又は戻し操作により操作アーム24mが揺動し、これに伴い操作アーム24Mに取り付けられた第二シーブ部材24b、並びにこの第二シーブ部材24bに対して連結板24rにより一体化された他の第二シーブ部材24bが同時かつ一体的に上部支軸24cを中心として回動し、前後方向に対する傾斜角度が調節される。
【0034】
さらに、第二シーブ24の下流側には、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗付着粒等を篩い選別し、これらを後述する二番受樋19B上に漏下させるために、ストローラック25が設けられている。
【0035】
また、揺動選別棚20には、移送棚22の後端部から延出して第一シーブ23からの漏下物を受けるバケット状のグレンパン20Gが設けられるととともに、このグレンパン20Gにおける第二シーブ24の下方に、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下した粗選物を中選別する選別網28が設けられている。
【0036】
揺動選別棚20の下方における選別風送り方向上手側には、揺動選別棚20と一番受樋19Aとの間に臨む送風口65を備えた唐箕16が設けられており、この唐箕16の送風口65には、風割66によって上下に形成された上側風路74と下側風路75とが設けられており、この送風口65の下手側に一番受樋19Aが設けられ、さらにこの一番受樋19Aの下手側に二番受樋19Bが設けられている。一番受樋19A内には、グレンタンク5へ連通する螺旋コンベア式の一番コンベア26が配置され、二番受樋19B内には、二番処理室40へ連通する螺旋コンベア式の二番コンベア27が配置されている。一番受樋19Aは、その前側の部分が唐箕16のケーシング16cに一体的に繋がれるとともに、その後側の部分は一番棚先29まで延在されている。
【0037】
一番棚先29は、上側の揺動選別棚20の第二シーブ24終端に向けて斜め上方へ傾斜して設けられている。一番棚先29は揺動選別棚20と一体に組み付けて揺動するように構成されているので、図6に示すように、ナイロンシート或いはゴム板からなるシール部材S1,S2を設けて穀粒が交じり合ったり漏れ出たりすることを防いでいる。なお、図6のように、横断流ファンからなる第二唐箕17を一番棚先29の下側における一番コンベア26と二番コンベア27との間に設けても良い。
【0038】
二番受樋19Bの前端部は、一番棚先29と略平行に後斜め上向きに延在する部分を有しており、その上端は一番棚先29に対して基端寄りに配置され、これらの間に形成される送風口は一番棚先29の背面に沿って排塵口(三番口)56へ向かって吹き出すように構成されている。
【0039】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に揺動するので、被処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒は第一シーブ23及び第二シーブ24を漏下して選別網28上に供給され、選別網28上の被処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番受樋19Aにより回収され、一番コンベア26で搬送されてグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出筒7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番受樋19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0040】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後方から落下して二番受樋19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番受樋19Bに供給される被処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0041】
揺動選別棚20上の被処理物のうち軽量のものは、シーブ23,24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされてシーブ23,24の上を後方へ移動し、ストローラック25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番受樋19Bにより回収される。シーブ23,24の後部やストローラック25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に混在した穀粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、シーブ23,24及びストローラック25から漏下しない被処理物(主に藁屑)は、更に後方へ移送されて三番排塵口56から排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0042】
(点検口)
図8、図9、図15、図16及び図23に示すように、扱室11のフィードチェン部9側の側壁には、フィードチェン部9の裏側を含む範囲に、取り外した第一シーブ23が通過可能である点検口11Sが形成されるとともに、この点検口11Sを開閉する蓋体11Zが設けられており、この蓋体11Zはフィードチェン部9に連結一体化されている。フィードチェン部9をオープン(揺動開放)すると、図8に示すように蓋体11Zもフィードチェン部9に伴い移動して点検口11Sが開口し、点検口11Sから扱胴10の下端部及び扱胴10の下側空間が露出する。よって、点検口11S及び扱胴10の下側空間を介して後述の揺動選別棚20の上流側、具体的には移送棚22及び第一シーブ23の掃除やメンテナンスを行うことができる。
【0043】
また、扱室11の下側に張設される受網15のうちフィードチェン部9側の端部が、受網15の下側において前後方向に沿って架設された棒状等の受網固定部材15Uに係合および離脱自在な構成とされており、フィードチェン13Bのオープンした状態で受網固定部材15Uが点検口11Sを横切る場合、この受網固定部材15Uが第一シーブ23の着脱等の作業の邪魔になる。
【0044】
(受網清掃装置)
図9に示すように、二番コンベア27及び二番処理物還元口43(後述する)側と対向して扱室11の横側に張設される上部受網15Aと、扱室11の下側に張設される下部受網15Bとから、受網15が構成されている。図9〜図13に示すように、外枠111に取付けられた上部受網15Aの面に対して直角に立ち上がった外枠111の両側板111A上であって二番処理物還元口43より上部位置に、2つの軸受112が取付けられ、これら2つの軸受112に、螺旋状の溝を外周面に有するリードカム軸114の両端部が軸支されて、該リードカム軸114が両側板111A間に掛け渡されている。このリードカム軸114の上側の両側板111Aの部分には、金属製で丸棒状のガイド棒115の両端側が固定されて、リードカム軸114と平行にこのガイド棒115が配置されている。このため、これらリードカム軸114及びガイド棒115が清掃装置110の案内部分とされている。
【0045】
図10、図12におけるリードカム軸114の左端部には、このリードカム軸114を回転する為の駆動源とされる清掃用モータ116が設置されて、図示しない制御装置によりこの清掃用モータ116の駆動回転が制御される。但し、清掃用モータ116とリードカム軸114との間にギヤ等による減速機構が配置されて、清掃用モータ116の駆動回転が減速されてリードカム軸114に伝達されることが好ましい。
【0046】
図11に示すように、このリードカム軸114上に金属製のスライド部材118が嵌合していて、扱胴10側に突出したスライド部材118のブラケット118Aに、ガイド板120Aの上端部寄りの箇所から突出する下部取付部120Cがボルト121によって連結される。また、ガイド棒115とスライド可能に嵌合する上部取付部120Dが、ガイド板120Aの上部箇所から突出している。
【0047】
このことで、円弧状のガイド板120Aが、これと同一形状の押板120Eと共に、上部受網15Aの外周面に所定間隔を置いて対向しかつ、扱胴10の軸心方向に移動可能とされている。これに合わせて、ゴム材により円弧状に形成された弾性材であるスクレーパ片120Bが該ガイド板120Aと押板120Eと間に挟まれつつ3つのネジ123及びナット123Aの締結により、これらガイド板120Aと上部受網15Aとの間に位置している。
【0048】
以上より、清掃用のスクレーパ120が、ガイド板120A及び弾性変形可能なスクレーパ片120B等により一体的に構成され、上部取付部120D及び下部取付部120Cを介して該スクレーパ120がスライド部材118に支持されて、フィードチェン13Bと反対側部位とされる二番処理物還元口43に臨む位置に配置される。これに合わせて、本実施形態では、清掃装置110が、リードカム軸114、清掃用モータ116、スライド部材118及びスクレーパ120等により構成されている。
【0049】
扱室11に供給される穀稈から扱胴10により穀粒が脱粒されるのに伴い生じる藁屑等が、扱歯10bの矢印方向への回転作用によってフィードチェン13Bと反対側に放擲されるため、フィードチェン13Bと反対側に位置する上部受網15Aの領域まで飛んでこの部分で特に目詰まりが生じ易いものの、本実施形態のように、フィードチェン13Bと反対側に位置する上部受網15Aをスクレーパ120により清掃することで、目詰まりが容易に解消できる。
【0050】
また、リードカム軸114を二番処理物還元口43より上側に配置したことで、リードカム軸114に被処理物が付着し難く、清掃装置110を確実に作動させることができる。これに合わせて、二番処理物還元口43を臨む受網15の部位とされる二番処理室40側の上部受網15Aにスクレーパ120を設けたことで、二番還元物に含まれている藁屑等の量が増大しても、スクレーパ120により清掃されて受網15が詰まり難くなる。さらに、スクレーパ120により掻き取られて解砕された処理物の大半が二番処理室40内に落下した後に、揺動選別棚20上に送られる。このため、受網15に付着して塊状になった処理物がそのまま揺動選別棚20上に落下することによる選別性能の低下も防止できる。
【0051】
他方、スクレーパ120の上部受網15Aと接触する部位とされるスクレーパ片120Bをゴム製としたことで、ガイド板120Aとの間の組立上のばらつきを吸収しつつ、上部受網15Aに対するスクレーパ片120Bの密着性を上げる事ができるので、確実に上部受網15Aを清掃できる。但し、スクレーパ片120Bとしては、合成樹脂製や金属製のものを用いても良い。また、リードカム軸114に沿ってスクレーパ片120Bが上部受網15A上を往復移動していく際に、上部受網15Aの目合い15Cとスクレーパ片120Bとの間に処理物が挟み込まれた場合でも、ゴム製とされて弾性変形可能なスクレーパ片120Bが変形して逃げて、円滑に清掃を行える。
【0052】
さらに、上部受網15Aの網枠は、図11に示す外枠111のブラケット部材111Bに上部ピン124Aが係合されると共に下部ピン124Bが下部に係合して固定されているが、これらピン124A、124Bをはずして網枠と共に上部受網15Aを取り外す際にも、スクレーパ片120Bの長さ寸法を上部受網15Aの全長より短くして、上部受網15Aの網枠の取り外しを可能とすることで、扱室11に対して網枠を着脱する時には、スクレーパ片120Bが変形するので、扱室11内のメンテナンスが容易になる。
【0053】
なお、スクレーパ120は通常、目合い15C間の目合い15Cの無い図12における上部受網15Aの右端部分と対向した待機位置で停止しているものの、コンバインの搭乗者の操作或いは図示しないセンサからの検出信号に基づく制御装置の判断により上部受網15Aの清掃が開始されるが、清掃時には、清掃用モータ116が駆動回転してリードカム軸114が回転される。
【0054】
このことで、先端側のスクレーパ片120Bで上部受網15Aとの接触しつつ左側に移動して、同じく上部受網15Aの目合い15C間の目合い15Cの無い図12における左端部分と対向した待機位置において、制御装置の制御により清掃用モータ116の駆動回転が止まり、スクレーパ120が図12及び図13に二点差線で示す待機位置において一旦停止して待機する。
【0055】
この際の上部受網15Aの右端部分における目合い15Cとスクレーパ片120Bとの関係を図12の矢印R部分の円内に示し、また、上部受網15Aの左端部分における目合い15Cとスクレーパ片120Bとの関係を図12の矢印L部分の円内に示す。このように、スクレーパ120の当初待機位置及び折り返し待機位置を、目合い15Cの無い目合部分外の箇所とすることで、スクレーパ120自体が穀粒のろ過の妨げにならない。
【0056】
この後、制御装置の制御により清掃用モータ116が逆方向に駆動回転することで、リードカム軸114が逆回転するのに伴い、この待機位置から逆方向にスライド部材118が移動してスクレーパ片120Bの先端側で上部受網15Aとの接触しつつ右側に移動して、同じく上部受網15Aの目合い15Cの無い右端部分と対向した当初の待機位置で清掃用モータ116の駆動回転が止まることで、スクレーパ120が当初待機位置に停止して1回の清掃が終了する。
【0057】
この結果、リードカム軸114の回転に伴い、リードカム軸114上をスライド部材118が矢印Sのように扱胴10の軸心方向に沿って往復移動し、これとともに上部受網15Aと接触しつつ扱胴10の軸心方向に沿ってスクレーパ120のスクレーパ片120Bが往復移動して、上部受網15Aがスクレーパ120により清掃される。これに合わせて、受網15における目詰まりが特に発生しやすい二番処理室40側の上部受網15Aをスクレーパ120により清掃するので、湿材の作業時においても常に上部受網15Aの目合い15Cが詰まる事が無くなり、三番ロスが低減される。
また、清掃用モータ116により回転されるリードカム軸114上で移動するスライド部材118でスクレーパ120を支持することにより、簡易な構成でスクレーパ120を往復移動させて上部受網15Aを清掃できる。
【0058】
次に本実施形態の変形例を説明する。第1実施形態とほぼ同様の構造とされるが、本変形例では、図14に示すようにゴム材で形成されたスクレーパ片120Bの上部受網15Aとの接触部分となる先端部に、スクレーパ片120Bの全幅の例えば五分の一程度の深さで複数のスリット125が等間隔で設けられている。このようにゴム製のスクレーパ片120Bの先端部に複数のスリット125を設けたことで、スクレーパ片120Bの先端部がより変形し易くなって、上部受網15Aの目合い15Cの段部まで確実に清掃可能になる。
なお、スクレーパ片120Bにおけるスリット125の間隔は受網15Aの目合いよりも小さくすると、スクレーパ片120Bの先端が受網15Aの内側に入り込むことで、受網15Aの付着物をより効果的に除去することができる。
【0059】
(排塵処理室)
扱室11の後端部は連通口35を介して排塵処理室30に連通されている。排塵処理室30内には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理室30の周壁のうち揺動選別棚20側(正面に向かって左側)の下部は、後端部に処理物排出口33が形成されるとともに、この処理物排出口33と連通口35との間の部分が受網15により形成されている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の初端部(前端部)にはスクリュー羽根体37が設けられ、処理物の移送方向の終端部(後端部)には径方向に沿って外方に突出する羽根体34が設けられ、これらの間には排塵処理歯36が設けられている。
【0060】
排塵処理室30に供給された被処理物は、回転する排塵処理胴31により終端側に移動されつつ解砕処理される過程で、受網15から揺動選別棚20上に漏下されるか、又は排塵処理室30の終端閉塞部に至った後に、羽根体34により排出口33を介して揺動選別棚20のストローラック25上に排出される。これら排出処理物は、揺動選別棚20により選別されて穀粒は回収され、藁屑等は機外に排出される。排塵処理室30に供給される被処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑が受網15及び処理物排出口33から揺動選別棚20に落下する。
【0061】
この処理物排出口33は、図17、図18に示すように、排塵処理室30の枠体30Aに相互に同一の長方形形状とされる複数の開口部126が等間隔で並んで配置されたもの等により構成されている。但し、丸棒状に金属材により形成された2本の仕切体127が排塵処理胴31の軸方向に沿って伸びるようにそれぞれ配置され、これら2本の仕切体127が各開口部126をほぼ三等分に区画して、排塵処理室30のろ過孔である小開口126Aを構成している。尚、仕切体127は1本或いは3本以上の複数であっても良い。
【0062】
この開口部126を仕切るための仕切体として例えば板状のものを採用した場合、湿材や雑草の多い条件での作業を実施した際に、枝梗付着粒および小さな藁屑が仕切体間でブリッジし易く、ろ過孔の目詰まりの原因となる。これに対して、本実施形態のように構成が簡易で角のない丸棒状の仕切体127を採用したことで、製造コストを低減しつつ、枝梗付着粒および小さな藁屑が仕切体127間でブリッジが生じ難くなるので、目詰まりが生じないようになる。
【0063】
次に、本実施形態の変形例1を説明する。図19、図20に示すように、相互に同一形状とされる長方形の複数の開口部126が、排塵処理室30の枠体30Aに等間隔で並んで配置されたものにより、処理物排出口33を上記実施形態と同様に構成しているが、本変形例では、該開口部126が多数の小穴128Aを有した鉄製の目抜板128で覆われた構成とした。該目抜板128は、各開口部126当り例えば縦に2列に並んだ各4つの小穴128Aを格子状に打抜いた構成とされて、枠体30Aの内周面側に溶接等により該目抜板128の周囲部分を固定している。
【0064】
このように開口部126を目抜板128で覆い、この目抜板128を枠体30Aの内周面側に取付ける構成にしたことで、ろ過孔を形成する小穴128Aの大きさを相違させた複数種類の目抜板128を予め製造しておいて、何れかのものを選択することで、小穴128Aの大きさを容易に変更できる。また、湿材や雑草の多い条件での作業においても、格子状に配置された小穴128Aに枝梗付着粒および小さな藁屑が引っ掛かりにくいので、目詰まりが生じ難い。
【0065】
次に、本実施形態の変形例2を説明する。上記実施形態とほぼ同様な構成になっているが、本実施形態では、図21、図22に示すように排塵処理室30の枠体30Aを打ち抜いて枠体30A自体にろ過孔とされる開口部126Bを形成した構成とした。開口部に目抜板を取付けるような構造と比較して、開口部126Bが排塵処理室30に直接形成されることから、部品の同一化が図れ、部品点数が少なくなって製造コストを低減できる。
【0066】
この際、開口部126Bを矢印A方向とされる穀粒の搬送下流側ほど図22に示すように大きくすることにしても良い。このことで、排塵処理室30の前部ではろ過を制限して排塵処理室30でのこなし処理が促進され、排塵処理室30の後部では穀粒の排出を良好とすることで、処理効率が高められる。
【0067】
(二番処理室)
排塵処理室30の前側には、二番物を処理して還元するための二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理室40における二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて樋状の受板42により包囲されており、その側部上方は開口しており、その開口部は受網15の側部下方に位置し、受網15の側部から漏れ出る漏出物は二番物として二番処理室40に供給されるようになっている。また、二番処理室40における二番処理胴41の終端部(前端部)の下方は、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口としての二番処理物還元口43が開口している。
【0068】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43から揺動選別棚20に落下し、扱室11からの被処理物と合流して再選別される。
【0069】
(吸引排塵ファン)
揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン47の吸塵口47iが開口している。吸引排塵ファン47は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン47が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口47iが開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0070】
(排藁処理装置)
脱穀装置3の後側では、扱室11を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0071】
(三番排塵口)
脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、例えば圃場の一辺を刈り終えて次辺へ向けて旋回する際に、この三番排塵口シャッタ57を閉じれば、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20の第二シーブ24又はストローラック25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン47の吸塵口47iとは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン47の吸塵口47i側に向かって広範に拡散するため、カギ又などの回収効率が一層向上する。
【0072】
(シーブ清掃装置)
図7に示すように、本実施形態では、第二シーブ24上を往復移動することにより清掃を行う第二清掃体100が設けられている。図5〜図7に示すように、本実施形態では、第一シーブ(固定シーブ)23上を往復移動することにより清掃を行う第一清掃体(清掃体)80が設けられている。より詳細には、第一シーブ23は左右方向に所定の間隔を空けて配置された複数の第一清掃体80,80,80…を備えており、この第一清掃体80は、前後方向に沿うプレート部81と、第一シーブ23の各シーブ部材23bの上面に接触して付着物を除去するスクレーパ部とを有するものである。
【0073】
各第一清掃体80を駆動するための清掃体駆動装置は適宜設計することができるが、本実施形態では、図6及び図7に示すように、互い違いに引き操作される一対の操作ケーブル87b,87b、往復回動する天秤アーム87、天秤アーム軸87a、往復回動する揺動アーム88等の連動機構を介して左右横方向に往復動するように構成している。すなわち、一対の操作ケーブル87b,87bが互い違いに引き操作され、天秤アーム87の往復回動によって天秤アーム軸87aを回動中心として揺動アーム88が左右に往復揺動し、この揺動アーム88の長孔88hに対して移動自在に挿入された突出部89を有する第一清掃体80が左右横方向へ強制的に往復動されるようになっている。
【0074】
(処理量検出センサ)
風割66及び天面部67の傾斜角は処理物量に関係なく固定としても良いが、揺動選別棚20の棚上処理物の量を検出する処理量検出センサ95を設け、この処理量検出センサ95の検出結果に基づき、棚上処理物の量(層厚)が増加したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を減少させ、棚上処理物の量が減少したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を増加させる制御装置(図示略)を設けるのも好ましい。これにより、処理物量に増減があっても、揺動選別棚20上の処理物量検出結果に応じて、風割66及び天面部67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0075】
処理量検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、刺さり粒回収室11Eの中間隔壁11Kの下端部とがセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ95の検出軸96xにフロート97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚22上を移動する被処理物に接触して、被処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚22上を移動する被処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、コンバイン等の脱穀装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0077】
3…脱穀装置
10…扱胴
11…扱室
15…受網
15A…上部受網
15C…目合い
30…排塵処理室
31…排塵処理胴
40…二番処理室
43…二番処理物還元口
110…清掃装置
114…リードカム軸
116…清掃用モータ
118…スライド部材
120…スクレーパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(11)内に備えた扱胴(10)の外周に受網(15)を設け、該受網(15)の外側面に接触しながら扱胴(10)の軸心方向に往復移動するスクレーパ(120)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記扱室(10)の左右一側に二番処理胴(41)を備えた二番処理室(40)を設け、
該二番処理室(40)の上部外側から内側に向けて選別後の二番物を還元する二番処理物還元口(43)を設け、
該二番処理物還元口(43)と扱胴(10)との間に受網(15)の一部を臨ませ、
該受網(15)における前記二番処理物還元口(43)と対向する部位に前記スクレーパ(120)を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記スクレーパ(120)を有する清掃装置(110)は、扱胴(10)の軸心方向に沿うリードカム軸(114)と、該リードカム軸(114)を回転駆動する駆動源(116)と、リードカム軸(114)に螺合した状態で前記スクレーパ(120)を支持するスライド部材(118)とを備え、
リードカム軸(114)が回転することで、スライド部材(118)とスクレーパ(120)とが一体で扱胴(10)の軸心方向に往復移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分を、ゴム等の弾性材により形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分に複数のスリットを設けたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)よりも上方に配置したことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項1】
扱室(11)内に備えた扱胴(10)の外周に受網(15)を設け、該受網(15)の外側面に接触しながら扱胴(10)の軸心方向に往復移動するスクレーパ(120)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記扱室(10)の左右一側に二番処理胴(41)を備えた二番処理室(40)を設け、
該二番処理室(40)の上部外側から内側に向けて選別後の二番物を還元する二番処理物還元口(43)を設け、
該二番処理物還元口(43)と扱胴(10)との間に受網(15)の一部を臨ませ、
該受網(15)における前記二番処理物還元口(43)と対向する部位に前記スクレーパ(120)を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記スクレーパ(120)を有する清掃装置(110)は、扱胴(10)の軸心方向に沿うリードカム軸(114)と、該リードカム軸(114)を回転駆動する駆動源(116)と、リードカム軸(114)に螺合した状態で前記スクレーパ(120)を支持するスライド部材(118)とを備え、
リードカム軸(114)が回転することで、スライド部材(118)とスクレーパ(120)とが一体で扱胴(10)の軸心方向に往復移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分を、ゴム等の弾性材により形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記スクレーパ(120)における受網(15)との接触部分に複数のスリットを設けたことを特徴とする請求項4記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記リードカム軸(114)を二番処理物還元口(43)よりも上方に配置したことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図4】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−205535(P2012−205535A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73306(P2011−73306)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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