説明

脱穀装置

【課題】脱穀負荷の増加、扱室の詰まり発生。
【解決手段】前後方向の回転軸8により扱胴4を扱室6内に軸架し、扱胴4の下側には扱網5を設け、扱室6の前方から供給される穀稈を脱穀する脱穀装置において、前記扱胴4は回転軸8の前部の前側取付部材10と、回転軸8の後部の後側取付部材11と、当該前側取付部材10の外周部と後側取付部材11の外周部とに掛け渡して外周面に複数の扱歯3を設けた扱歯取付プレート12を備え、該扱歯取付プレート12は、扱胴4の回転方向に所定の間隙13を置いて複数設け、かつ、前記前側取付部材10を後側取付部材11よりも小径として扱胴4を終端部に至るに従い大径となるテーパー状に形成した脱穀装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外周に扱歯を設けた扱胴の主として下面側を扱網により包囲し、扱胴の上方を上部カバーにより包囲して扱室を構成し、扱胴を終端部に至るに従い大径となる側面視でテーパー状に形成した構成は、公知である(特許文献1)。
また、従来、扱胴の扱歯を扱胴の回転方向に所定幅を有する扱歯取付プレートの外面に所定間隔を置いて複数設け、この扱歯取付プレートを、扱胴の回転方向に所定間隔を置いて複数設けて各扱歯取付プレートの間に間隙を設けた構成は公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−168959号公報
【特許文献2】特開平2010−200762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例のうち、前者のものは、扱胴をテーパー形状に形成してるが、扱室の処理量を超えた被処理物量が供給されると、扱室内の全体の負荷が大きくなって、被処理物の十分な処理ができず、脱穀効率が低下するという課題がある。
前記公知例のうち、後者のものは、所定幅の扱歯取付プレートに扱歯を取付けて、扱胴に間隙を設けて扱室内の負荷を下げる構成であるが、この公知例は、全穀稈投入型であり、扱胴内に入った被処理物の一部が扱胴による脱穀作業と扱室の下方の選別装置による選別処理されずに排出されて脱穀ロスになるという課題がある。
本願は、扱胴の構成を工夫し、脱穀負荷の軽減および脱穀ロスの抑制効率を向上させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、前後方向の回転軸8まわりに回転する扱胴4を扱室6内に軸架し、扱胴4の下側には扱網5を設け、扱室6の前方から供給される穀稈を脱穀する脱穀装置において、前記扱胴4は回転軸8の前部の前側取付部材10と、回転軸8の後部の後側取付部材11と、当該前側取付部材10の外周部と後側取付部材11の外周部とに掛け渡して外周面に複数の扱歯3を設けた扱歯取付プレート12を備え、該扱歯取付プレート12は、扱胴4の回転方向に所定の間隙13を置いて複数設け、かつ、前記前側取付部材10を後側取付部材11よりも小径として扱胴4を終端部に至るに従い大径となるテーパー状に形成して構成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、穀稈は扱室6内に供給され、扱室6の前端部では扱胴4の外周と扱網5との間隔が大きく搬送穀稈の取込が円滑に行われ、扱室6の後端側では扱胴4の外周と扱網5との間隔が小さくなって脱粒性能が向上する。
扱室6内の被処理物の量が多くなって、負荷が大きくなると、扱室6内の被処理物が間隙13から扱胴4内に入り、扱室6内の負荷を下げて適正にし、円滑確実に脱穀処理する。扱室6内の負荷が下がると、間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物は間隙13から扱胴4の外の扱室6内に戻り、脱穀処理される。
請求項2記載の発明は、前記扱歯取付プレート12は後端側に至るに従い扱胴4の回転方向の幅を広く形成し、該扱歯取付プレート12に設けた扱歯3の数を後端側に至るに従い増加させたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、扱室6内の被処理物は回転する扱胴4の扱歯3により脱穀処理され、扱歯取付プレート12に設けた後端側に至るに従い数が増加した扱歯3が、扱室6内の被処理物を脱穀処理する。
また、扱胴4の後部ほど扱胴4の周方向での扱歯取付プレート12の占める割合が大きくなり、扱歯3を確実に被処理物に作用させる。
請求項3記載の発明は、前記扱網5は扱胴4の回転軸8の軸心方向と略平行に設け、回転軸8の軸心方向に並設した複数の扱歯3のうち前端側の扱歯3は短く形成し、後端側に向けて徐々に長く形成して扱歯3の先端と扱網5との間に、始端側は広く終端側に向けて次第に狭くなる前側の隙間Sを形成し、所定位置より後側の各扱歯3と扱網5との間には間隔が略一定となる後側の隙間Tを形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、始端側の扱室6では扱歯3の先端と扱網5との間の間隔が大きくなり、被処理物を円滑に脱穀処理し、終端側では扱歯3の先端と扱網5との間の間隔が小さくなって脱穀処理する。
請求項4記載の発明は、前記扱歯取付プレート12の回転方向下手側の部位を扱胴4の回転軸8側に屈曲させて内側屈曲部45を形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、回転方向前側(上手側)の内側に屈曲した扱歯取付プレート12の内側屈曲部45が穀稈に接触するので、穀稈が切れる稈切れを抑制して脱穀処理を行う。
請求項5記載の発明は、前記扱歯3は各扱歯取付プレート12に扱胴4の軸心方向に略等間隔で並設し、かつ、前記間隙13を隔てて隣り合う扱歯取付プレート12の扱歯3の位置が前記回転軸8の軸心方向に互いにずれた千鳥状に配列したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、互いにずれて千鳥状に配置構成した扱歯3が穀稈に当たって脱穀処理するので、扱歯3の同じ場所に扱歯3が当たるのを防止して脱穀処理を行う。
請求項6記載の発明は、前記扱室6の一側で該扱室6と一部連通し扱胴4と軸心方向が平行な排塵処理胴23を有する排塵処理装置22を並設し、前記扱室6と排塵処理装置22の下方には唐箕15の送風と送風方向への往復揺動により選別する揺動選別装置18を設け、該揺動選別装置18の下方所定位置に設けた一番コンベア24および二番コンベア25のうち、二番コンベア25から前記扱室6または二番処理装置27に被処理物を還元する二番戻し装置26を設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物のうち扱網5から落下した被処理物は揺動選別装置18により選別処理される。間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物のうち扱室6の排出口21から排出された被処理物は揺動選別装置18により選別処理される。間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物のうち扱網5から落下しない被処理物の一部は排塵処理装置22で処理されて揺動選別装置18上に落下して選別処理される。間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物のうち扱網5から落下した被処理物の一部は扱室6または二番処理装置27に戻されて再処理される。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、テーパー状の扱胴4により扱室6内の詰まり発生を防止すると共に脱粒性能を向上させることができ、間隙13により扱室6内の負荷を最適状態に維持して脱穀性能を向上させることができ、
扱胴4の扱歯取付プレート12よりも内側の空間が後側ほど広いため、扱室6の前側で多く発生する被処理物が間隙13から扱胴4の内部に入り込み、速やかに後方に拡散することで、扱室6内の被処理物を均分化することができる。
請求項2記載の発明では、扱室6の始端側では適正な数の扱歯3により稈切れを防止しつつ円滑に脱穀処理でき、扱室6の終端側では増加させた扱歯3により効率よく脱穀処理し、扱ぎ残りを防止できる。
請求項3記載の発明では、始端側の扱室6の扱歯3の先端と扱網5との間の間隔が大きい部分では詰まり発生を防止でき、終端側の扱歯3の先端と扱網5との間の間隔が小さくなった扱室6では効率よく脱穀処理できる。
請求項4記載の発明では、板状の扱歯取付プレート12に扱歯3を取付けるので、扱歯3の取付を容易にでき、この場合でも、内側に屈曲した扱歯取付プレート12の内側屈曲部45により、板状の扱歯取付プレート12に扱歯3を取付けても、扱歯取付プレート12の端縁が穀稈に接触しにくく、稈切れを抑制できる。
請求項5記載の発明では、互いにずれた千鳥状の扱歯3が脱穀処理するので、稈切れを抑制できる。
請求項6記載の発明では、扱室6内の負荷を軽減させながら、間隙13により扱胴4内に一旦取り込まれて扱室6内に戻った被処理物の処理を適切に行うことができ、扱胴4内に一旦取り込まれた被処理物が処理されずに、機外に排出されるのを防止でき、脱穀ロスの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】脱穀装置の扱室の側面図。
【図2】同背面図。
【図3】脱穀装置の側面図。
【図4】扱胴の他の実施例の側面図および扱歯取付プレートの取付部分の拡大図。
【図5】同背面図。
【図6】扱胴の他の実施例の側面図。
【図7】扱胴の他の実施例の背面図。
【図8】同側面図。
【図9】扱胴の他の実施例の側面図。
【図10】扱胴の他の実施例の背面図。
【図11】同側面図。
【図12】扱胴の他の実施例の背面図。
【図13】扱胴の他の実施例の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1は穀稈供給搬送装置2が搬送する穀稈を脱穀する脱穀装置であり、脱穀装置1は外周に扱歯3を設けた扱胴4の主として下面側を扱網5により包囲した扱室6を有して構成する。7は扱室6の上方を包囲する上部カバー7であり、上部カバー7と前記扱網5とは扱胴4の軸心と略平行に設ける。
扱胴4は、前後方向の回転軸8により扱室6内に軸架する。前記扱胴4は回転軸8の前部の前側取付部材10と、回転軸8の後部の後側取付部材11と、当該前側取付部材10の外周部と後側取付部材11の外周部とに掛け渡して外周面に複数の扱歯3を設けて構成する。
なお、理解を容易にするために、前後左右等の方向を示して説明しているが、これにより構成は限定されない。
【0009】
前記扱歯3は扱歯取付プレート12に所定間隔置いて複数設ける。扱歯取付プレート12は回転方向(円周方向)に所定間隔を置いて複数設ける。13は各扱歯取付プレート12の間に形成した間隙であり、回転方向(円周方向)に所定幅を有して形成する。
前記前側取付部材10は後側取付部材11より小径に形成し、扱胴4は始端部(前側)に至るに従い小径となる側面視でテーパー状に形成する。
そのため、扱室6の始端部(後側)では扱胴4の外周と扱網5との間隔を大きくして穀稈供給搬送装置2による搬送穀稈の取込を円滑にし、扱室6の終端側では扱胴4の外周と扱網5との間隔を小さくして脱粒性能を向上させ、しかも、扱網5の外面側と内面側とを間隙13で連通する中空として、処理物を間隙13から扱胴4に取り込んで、扱室6内の脱穀負荷の軽減も可能となる。
【0010】
即ち、扱歯取付プレート12は始端側から終端側にかけて終始同一幅に形成し、これにより、間隙13は始端側から終端側にかけて幅広になって、処理物を間隙13から扱胴4内に取り込んで、扱室6内の脱穀負荷の軽減も可能にする(図1)。
扱室6の下方には、唐箕15の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室16を形成し、風選室16内には唐箕15の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚17により構成した揺動選別装置18を設ける(図3)。
揺動選別装置18は、穀粒と藁屑を分離させるシーブ20を有して構成し、揺動選別装置18のシーブ20は扱室6の下方および扱室6の排出口21の下方から後側にかけて設ける。
前記扱室6の後部側方には排塵処理装置22の始端部を設ける。排塵処理装置22は扱室6と連通し、扱網5より落下しない被処理物を処理するよう構成する。排塵処理装置22は扱胴4と略平行な排塵処理胴23の下方に処理網(図示省略)を設けている。
【0011】
揺動選別棚17の下方所定位置には一番コンベア24を設け、一番コンベア24の後側には二番コンベア25を設ける。二番コンベア25には二番戻し装置26の基部を接続し、二番戻し装置26の先端は前記扱室6または二番処理装置27に接続する。実施例では二番戻し装置26は二番処理装置27に接続している。また、二番処理装置27は二番処理胴28の下方に処理網(図示省略)を設けて構成し、二番処理胴28は前記排塵処理胴23と同心上に配置し、扱室6の終端側から始端側に向けて二番物移送して処理し、処理物は前記揺動選別装置18の始端側に落下させて再選別する。
30はシーブ20の下手側に設けたストローラック、31は吸引排塵ファンである。
【0012】
図4、図5の実施例の扱胴4では、前記前側取付部材10と後側取付部材11との夫々の一部を円筒形状に形成している。更に、前記扱歯取付プレート12は終端側に至るに従い幅広に形成する。
そのため、扱歯取付プレート12の面積が終端側に至るに従い広くなるので、扱歯3の数を終端側に至るに従い増加させられ、脱穀性能を向上させられる。
この場合、扱網5は扱胴4のテーパーに合わせてテーパー形状に形成してよい。
図6の扱胴4は、他の実施例を示し、前記扱歯3は扱胴4の軸心方向に複数並設し、複数の扱歯3は始端側の扱歯3は短く形成し、終端側に向けて徐々に長く形成して扱歯3の先端と扱網5との間に始端側は広く終端側に向けて次第に狭くなる隙間Sを形成し、所定位置より終端側の各扱歯3は扱網5との隙間Tが同じにする構成とする。
そのため、始端側の広い隙間Sにより穀稈の取込を容易にし、終端側の一定の隙間Tにより脱粒性能を確保する。
【0013】
図7、図8の扱胴4は、他の実施例を示し、前記扱歯取付プレート12は断面L型形状とし、扱歯取付プレート12の頂部35を外側に位置させる。
そのため、扱歯取付プレート12の端縁(エッジ)に穀稈が接触するのを抑制し、稈切れ発生を防止する。
また、扱歯取付プレート12は断面L型形状としているので、扱胴4の剛性を向上させられる。
前記扱歯3は、ワイヤー部材により略逆V形状に形成し、扱歯3の基部36を扱歯取付プレート12の頂部35を跨るようにして取付ける。
したがって、断面L型形状とした扱歯取付プレート12への、ワイヤー部材により略逆V形状に形成した扱歯3の取付を可能になる。
また、扱歯3の基部36をナット37により取付固定しているが、このナット37を扱歯取付プレート12の裏側に配置させられ、ナット37の摩耗を防止する。
また、扱歯3の基部36は扱歯取付プレート12の斜面38に対して略直角に交差するように取付ける。
そのため、ナット37の弛みを防止する。
【0014】
この場合、図4,図7のように、前側取付部材10と後側取付部材11と扱歯取付プレート12とを互いに重ね、この重ねた部分に扱歯3の基部36をナット37により取付固定する。
そのため、扱歯3を前側取付部材10と後側取付部材11と扱歯取付プレート12との固定部材として兼用でき、合理的構成となる。
即ち、前側取付部材10と後側取付部材11とは、筒部40と縦板部41とにより構成し、筒部40に扱歯取付プレート12を重ね、この重ねた部分に扱歯3の基部36をナット37により取付固定している(図4)。
また、扱歯3の一対の基部36は、回転方向の後側の基部36が扱胴4の軸心方向の終端側に位置するように取付ける(図8)。
そのため、扱歯3を送り方向に傾けられ、藁屑の送り作用を向上させる。
【0015】
また、扱胴4の円周方向に配置された複数の各扱歯3は、各扱歯3が螺旋状に位置するように配置する(図9)。
そのため、単独の扱歯3の藁屑の送り作用を向上させたうえで、全体の各扱歯3が連係して藁屑の送り作用を向上させられ、扱室6の負荷を軽減する。
図10,図11の扱胴4は、他の実施例を示し、前記扱歯取付プレート12の回転方向前側の部位を扱胴4の軸心方向に向けて屈曲させて内側屈曲部45を形成する。
そのため、扱歯取付プレート12の内側屈曲部45の曲面が穀稈に接触するので、穀稈の損傷および稈切れ発生を防止する。
図12の扱胴4は、他の実施例を示し、前記扱歯取付プレート12の回転方向後側の部位を扱胴4の軸心方向に向けて屈曲させて外側屈曲部47を形成する。
そのため、扱歯取付プレート12の外側屈曲部47が穀稈に接触して、穀稈へのしごき作用を奏し、脱粒性能を向上させられる。
【0016】
図13の扱胴4は、他の実施例を示し、前記各扱歯取付プレート12には略同じ間隔で扱歯3を並設し、かつ、各扱歯取付プレート12は各扱歯取付プレート12の扱歯3の位置が千鳥状にずれて配置するように構成する。
そのため、扱歯3を軸心方向にずらして千鳥状に配置しているので、扱歯取付プレート12に過剰な負荷を掛けることなく、まんべんなく脱粒することができる。
【0017】
(実施例の作用)
走行装置により走行して刈取装置により圃場の穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を穀稈供給搬送装置により脱穀装置1の脱穀室6に供給して脱穀する。
扱胴4の前側取付部材10と後側取付部材11とに、外面に複数の扱歯3を設けた扱歯取付プレート扱歯取付プレート12の前後両端を、扱胴4の回転方向(円周方向)に所定間隔を置いて複数設け、前記前側取付部材10は後側取付部材11より小径に形成し、扱胴4は始端部に至るに従い小径となる側面視でテーパー状に形成し、前記各扱歯取付プレート12の間に間隙13を設けて構成しているので、扱室6の始端部では扱胴4の外周と扱網5との間隔を大きくして穀稈供給搬送装置2による搬送穀稈の取込を円滑にし、扱室6の終端側では扱胴4の外周と扱網5との間隔を小さくして脱粒性能を向上させ、しかも、扱胴4の外面側と内面側とを間隙13で連通する中空として、処理物を間隙13から扱胴4内に取り込んで、扱室6内の脱穀負荷を軽減する。
【0018】
即ち、扱胴4を単にテーパー形状に形成しても、略適正な被処理物量であれば、扱室6の始端部の詰まり発生を防止できるが、扱室6の処理量を超えた被処理物量の場合では、例え、扱室6の始端部で詰まらなくても、他の部分の扱室6内の負荷が大きくなって、被処理物の十分な処理ができず、脱穀効率が低下することになり、また、扱胴4の扱歯3を扱歯取付プレート12に取付けて扱胴4に間隙13を設けても、扱室6内の被処理物の量が増加したときに、被処理物を扱胴4内に取り込んで扱室6内の負荷をある程度下げることはできるが、扱室6の始端部の詰まりは防止できない。
本願では、扱胴4は、外面に複数の扱歯3を設けた扱歯取付プレート12を、扱胴4の回転方向に所定間隔を置いて複数設けて各扱歯取付プレート12の間に間隙13を設け、かつ、扱歯取付プレート12を取付ける前側取付部材10と後側取付部材11とを前記前側取付部材10は後側取付部材11より小径に形成して扱胴4を終端部に至るに従い大径となる側面視でテーパー状に形成して構成しているので、扱室6の始端部では扱胴4の外周と扱網5との間隔を大きくして穀稈供給搬送装置2による搬送穀稈の取込を円滑にし、扱室6の終端側では扱胴4の外周と扱網5との間隔を小さくして脱粒性能を向上させ、しかも、扱胴4の外面側と内面側とを間隙13で連通する中空として、処理物を間隙13から扱胴4内に取り込んで、扱室6内の脱穀負荷を軽減する。
【0019】
図4の扱胴4の実施例では、前側取付部材10と後側取付部材11の一部を円筒形状に形成し、更に、前記扱歯取付プレート12は終端側に至るに従い幅広に形成しているので、扱歯取付プレート12の面積が終端側に至るに従い広くできて扱歯3の数を終端側に至るに従い増加させられ、脱穀性能を向上させられる。
図6の扱胴4の他の実施例では、扱歯3は扱胴4の軸心方向に複数並設し、複数の扱歯3のうち始端側の扱歯3は短く形成し、終端側に向けて徐々に長く形成して扱歯3の先端と扱網5との間に始端側は広く終端側に向けて次第に狭くなる隙間Sを形成し、所定位置より終端側の各扱歯3は扱網5との隙間Tが同じにする構成としているので、始端側の広い隙間Sにより穀稈の取込を容易にし、終端側の一定の隙間Tにより脱粒性能を確保する。
図7の扱胴4の他の実施例では、扱歯取付プレート12は断面L型形状とし、扱歯取付プレート12の頂部頂部35を外側に位置させているので、扱歯取付プレート12の端縁(エッジ)に穀稈が接触するのを抑制し、稈切れ発生を防止する。
また、扱歯取付プレート12は断面L型形状としているので、扱胴4の剛性を向上させられる。
【0020】
扱歯3は、ワイヤー部材により略逆V形状に形成し、扱歯3の基部基部36を扱歯取付プレート12の頂部35を跨るようにして取付けているので、断面L型形状とした扱歯取付プレート12への、ワイヤー部材により略逆V形状に形成した扱歯3の取付を容易にする。
この場合、扱歯3は、扱歯取付プレート12にナット37により取付固定するが、扱歯3の基部36を扱歯取付プレート12の裏側に突出させてナット37を螺合させて固定するので、ナット37の摩耗を防止する。
また、扱歯3の基部36は扱歯取付プレート12の斜面斜面38に対して略直角に交差するように取付けているので、ナット37の弛みを防止する。
この場合、図4,図7のように、前側取付部材10と後側取付部材11と扱歯取付プレート12とを互いに重ね、この重ねた部分に扱歯3の基部36をナット37により取付固定するので、扱歯3を前側取付部材10と後側取付部材11と扱歯取付プレート12との固定部材として兼用でき、合理的構成となる。
【0021】
即ち、前側取付部材10と後側取付部材11とは、筒部筒部40と縦板部縦板部41とにより構成し、筒部40に扱歯取付プレート12を重ね、この重ねた部分に扱歯3の基部36をナット37により取付固定すればよく、取付を容易にする。
また、扱歯3の一対の基部36は、回転方向の後側の基部36が扱胴4の軸心方向の終端側に位置するように取付けているので、扱歯3を送り方向に傾けられ、藁屑の送り作用を向上させる。
また、扱胴4の円周方向に配置された複数の各扱歯3は、各扱歯3が螺旋状に位置するように配置しているので、単独の扱歯3の藁屑の送り作用を向上させたうえで、全体の各扱歯3が連係して藁屑の送り作用を向上させられ、扱室6の負荷を軽減する。
【0022】
図10,図11の扱胴4の他の実施例では、扱歯取付プレート12の回転方向前側の部位を扱胴4の軸心方向に向けて屈曲させて内側屈曲部45を形成しているので、扱歯取付プレート12の内側屈曲部45の曲面に穀稈を接触させられ、穀稈の損傷および稈切れ発生を防止する。
図12の扱胴4の他の実施例では、扱歯取付プレート12の回転方向後側の部位を扱胴4の軸心方向に向けて屈曲させて外側屈曲部47を形成しているので、扱歯取付プレート12の外側屈曲部47が穀稈に接触して、穀稈へのしごき作用を促進させ、脱粒性能を向上させられる。
図13の扱胴4の他の実施例では、各扱歯取付プレート12には略同じ間隔で扱歯3を並設し、かつ、各扱歯取付プレート12は各扱歯取付プレート12の扱歯3の位置が千鳥状にずれて配置するように構成しているので、扱歯取付プレート12に過剰な負荷を掛けることなく、まんべんなく脱粒することができる。
【0023】
しかして、扱室6内に大量の穀稈が供給されて、扱室6内の脱穀負荷が大きくなると、被処理物を間隙13から扱胴4内に取り込んで、扱室6内の脱穀負荷を軽減し、扱室6内の脱穀負荷が軽減されると、扱胴4内に取り込まれた被処理物は間隙13から扱室6内に戻って処理される。
このとき、扱室6の後部側方には扱室6と一部連通する排塵処理装置22を設けているので、扱室6内の被処理物を排塵処理装置22により処理でき、扱室6の負荷軽減を迅速に効率よく行える。
このことは、扱胴4内に一旦取り込まれて間隙13から扱室6内に戻った被処理物が多いときにも、間隙13から扱室6内に戻った被処理物を排塵処理装置22により処理でき、扱室6の負荷軽減と脱穀ロスの抑制との両立を図れる。
同様に、扱室6の下方には風選室16を形成し、風選室16内には唐箕15の送風と揺動により選別する揺動選別装置18を設け、揺動選別装置18は扱室6の下方および扱室6の排出口21の下方から後側にかけて設けているから、排塵処理装置22の下方に揺動選別装置18が位置し、扱室6の排出口21から落下する被処理物(間隙13から扱室6内に戻った被処理物)と排塵処理装置22から落下する被処理物を、揺動選別装置18により選別処理でき、この点でも、扱室6の負荷軽減と脱穀ロスの抑制との両立を図れる。
【0024】
また、揺動選別装置18の下方所定位置には一番コンベア24および二番コンベア25を設け、二番コンベア25には扱室6または二番処理装置27に接続した二番戻し装置26を設けているので、扱胴4内に一旦取り込まれて間隙13から扱室6内に戻った被処理物は、二番コンベア25により二番物として回収されて、扱室6または二番処理装置27により再処理することができ、この点でも、扱室6の負荷軽減と脱穀ロスの抑制との両立を図れる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、例えば、前記扱歯取付プレート12を終端側に至るに従い幅広に形成する構成と、扱歯取付プレート12の断面L型形状とした構成とを組合せる等の図示は省略されているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、図示されていないことや、表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0025】
1…脱穀装置 、2…穀稈供給搬送装置 、3…扱歯 、4…扱胴 、5…扱網 、6…扱室 、7…上部カバー、8…回転軸、10…前側取付部材、11…後側取付部材、12…扱歯取付プレート、13…間隙、15…唐箕、16…風選室、17…揺動選別棚、18…揺動選別装置、20…シーブ、21…排出口、22…排塵処理装置、23…排塵処理胴、24…一番コンベア、25…二番コンベア、26…二番戻し装置、27…二番処理装置、28…二番処理胴、35…頂部、36…基部、37…ナット、38…斜面、40…筒部、41…縦板部、45…内側屈曲部、47…外側屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の回転軸(8)まわりに回転する扱胴(4)を扱室(6)内に軸架し、扱胴(4)の下側には扱網(5)を設け、扱室(6)の前方から供給される穀稈を脱穀する脱穀装置において、前記扱胴(4)は回転軸(8)の前部の前側取付部材(10)と、回転軸(8)の後部の後側取付部材(11)と、当該前側取付部材(10)の外周部と後側取付部材(11)の外周部とに掛け渡して外周面に複数の扱歯(3)を設けた扱歯取付プレート(12)を備え、該扱歯取付プレート(12)は、扱胴(4)の回転方向に所定の間隙(13)を置いて複数設け、かつ、前記前側取付部材(10)を後側取付部材(11)よりも小径として扱胴(4)を終端部に至るに従い大径となるテーパー状に形成して構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1記載の脱穀装置において、前記扱歯取付プレート(12)は後端側に至るに従い扱胴(4)の回転方向の幅を広く形成し、該扱歯取付プレート(12)に設けた扱歯(3)の数を後端側に至るに従い増加させたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の脱穀装置において、前記扱網(5)は扱胴(4)の回転軸(8)の軸心方向と略平行に設け、回転軸(8)の軸心方向に並設した複数の扱歯(3)のうち前端側の扱歯(3)は短く形成し、後端側に向けて徐々に長く形成して扱歯(3)の先端と扱網(5)との間に、始端側は広く終端側に向けて次第に狭くなる前側の隙間(S)を形成し、所定位置より後側の各扱歯(3)と扱網(5)との間には間隔が略一定となる後側の隙間(T)を形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置において、前記扱歯取付プレート(12)の回転方向下手側の部位を扱胴(4)の回転軸(8)側に屈曲させて内側屈曲部(45)を形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載の脱穀装置において、前記扱歯(3)は各扱歯取付プレート(12)に扱胴(4)の軸心方向に略等間隔で並設し、かつ、前記間隙(13)を隔てて隣り合う扱歯取付プレート(12)の扱歯(3)の位置が前記回転軸(8)の軸心方向に互いにずれた千鳥状に配列したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5記載の脱穀装置において、前記扱室(6)の一側で該扱室(6)と一部連通し扱胴(4)と軸心方向が平行な排塵処理胴(23)を有する排塵処理装置(22)を並設し、前記扱室(6)と排塵処理装置(22)の下方には唐箕(15)の送風と送風方向への往復揺動により選別する揺動選別装置(18)を設け、該揺動選別装置(18)の下方所定位置に設けた一番コンベア(24)および二番コンベア(25)のうち、二番コンベア(25)から前記扱室(6)または二番処理装置(27)に被処理物を還元する二番戻し装置(26)を設けたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−244973(P2012−244973A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121572(P2011−121572)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】