説明

脱臭剤の製造方法及び脱臭剤

【課題】脱臭効果が高くしかも破損しにくい脱臭剤を提供する。
【解決手段】脱臭用主剤2と固化剤3とを混合して造粒した多孔質な脱臭剤1であって、脱臭用主剤2の原料と固化剤3の原料がそれぞれ粉末2A,3Aであり、これらそれぞれの粉末2A,3Aを、ドラム8を回転させて造粒する。粉末2A,3A間に孔4が形成されることで、孔4により脱臭物質を吸着でき、しかも固化剤3によって脱臭用主剤2を確実に結合することで、脱臭物質のある環境が例えば高圧ガスや水流のような場合であっても、脱臭剤1が分解してしまって孔4が破損されるようなことはなく、脱臭用主剤2による脱臭効果の他に孔4による脱臭効果を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気物質を除去する脱臭剤の製造方法及び脱臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、採掘された黒ぼく土を水洗して比較的大きな不純物を除去し、且スラリー状にして有機物を除去し、沈殿・精製・乾燥した90%以上の無機高分子化合物原料と、腐植土壌から精製した有機物の粉末原料の混合物とからなり、前記黒ぼく土から精製された無機高分子化合物原料は30%以上のケイ素、アルミニウム並びに鉄を含む粉末であって、原料粉末を小粒径の火山磔、活性炭、坑火石等の多孔質物質に固着して顆粒状に成形した脱臭剤が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3533056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術においては、原料粉末を小粒径の火山磔、活性炭、坑火石等の多孔質物質に固着して顆粒状に成形したものであるが、原料粉末相互の連結力を大きくすることができないおそれがあり。例えば水路などに設置した場合には破損するおそれがある。
【0004】
解決しようとする問題点は、脱臭効果が高くしかも破損しにくい脱臭剤を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、少なくとも脱臭用主剤と固化剤とを混合して造粒した多孔質な脱臭剤の製造方法であって、前記脱臭用主剤原料と前記固化剤原料がそれぞれ粉末であり、これらそれぞれの粉末を造粒することを特徴とする脱臭剤の製造方法である。
【0006】
請求項2の発明は、前記造粒は、ドラム型造粒機のドラムに前記それぞれ粉末を収容して前記ドラムを回転させて前記粉末を表面に順次コーティングして造粒することを特徴とする請求項1記載の脱臭剤の製造方法である。
【0007】
請求項3の発明は、前記脱臭用主剤原料が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であり、前記固化剤原料がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭剤の製造方法である。
【0008】
請求項4の発明は、少なくとも脱臭用主剤と固化剤とを混合したものを造粒した多孔質な脱臭剤であって、前記脱臭用主剤が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であり、前記固化剤がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であることを特徴とする脱臭剤である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、脱臭剤が分解して破損するようなことはなく、さらに孔による脱臭効果を維持することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、結合される粉末間に孔を確実に形成することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、脱臭用主剤の原料により脱臭効果を高め、さらに固化剤の原料により確実に結合することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、脱臭用主剤による脱臭の他に、造粒に伴う孔によっても脱臭効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1を示しており、脱臭剤1は粒径Aが1〜20mm程度の粒状であって、脱臭用主剤2が固化剤3をバインダーとして結合されて造粒されたものであり、表面にあらわれる微細な孔4が多数形成された多孔質に形成されている。脱臭用主剤2は遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末2Aである。また固化剤3はセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末3Aである。尚、粉末2A、粉末3Aには、顆粒状態のものを含む。
【0015】
次に前記脱臭剤1の製造方法について説明する。粉末状態の脱臭用主剤2の第1のタンク4の第1の出口4Aと、粉末状態の固化剤3の第2のタンク5の第2の出口5Aと、水を収容した第3のタンク6の第3の出口6A(水供給路)は、造粒装置7にそれぞれ接続されている。造粒装置7はバッチ式のもの或いは連続式のものなど各種のものが知られている。実施例のものはドラム型のものであって、ドラム8は回転中心軸8Aが水平或いは傾斜して設けられたものであって、ドラム8の開口部にそれぞれの第1の出口4A、第2の出口5A、第3の出口6Aが臨んでおり、ドラム8は自転できるようになっている。
【0016】
したがって、回転しているドラム8内に、粉末状態の脱臭用主剤2と粉末状態の固化剤3と水をそれぞれ収容する。そしてドラム8の回転により粉末状態の脱臭用主剤2は粉末状態の固化剤3と水を介して粉同士が結合して粒が形成される。この造粒の工程途中においては、造粒工程の途中の粒の表面は脱臭用主剤2の第1の粉体2A、固化剤3の第2の粉体3Aによって凹凸が形成されており、この凹凸表面に新たに脱臭用主剤2の第1の粉体2A、固化剤3の第2の粉体3Aが結合することにより、これら第1の粉体2A、第2の粉体3A間には奥深く連通するような孔4が多数形成されることとなる。そして造粒が所定の径Aに達すると、第1の粉体2A、第2の粉体3A、水の供給は停止され、ドラム8内にあるか或いはドラム8から取り出された粒は乾燥手段(図示せず)によって、乾燥されて水分が除去されて固化剤3により固形化する。この固化した状態では、粒の表面にあらわれた開口に孔4が連通した多孔質となる。
【0017】
したがって、上述の脱臭剤を例えば図示しない排水路等の廃液路や廃棄空気路等の廃棄気体路或いは地表或いは地中に設置することで、臭気物質や有害物質をイオン吸着等により孔に取り入れて吸着して除去することができる。また、例えば硫化水素や塩化水素等の水中や空中における有害化合物の分解除去材としての利用もできる。
【0018】
さらに、(1)脱臭用主剤を遠赤外線放射材料とすることで、遠赤外線を臭気物質に照射することで臭気物質を分解できる。(2)脱臭用主剤をフライアッシュ(石炭灰の主成分はシリカとアルミナであり、この2つの無機質で全体の70〜80%を占めており、その他少量の酸化第二鉄,酸化マグネシウム、酸化カルシウムなど)とすることで、良好な脱臭作用をなす。(3)脱臭用主剤を麦飯石(無数の微細な孔があいている岩石)とすることで、前記孔以外に麦飯石自体の孔によっても臭気物質を吸着することができる。(4)脱臭用主剤を磁鉄鉱((マグネタイト)鉱物の一種で、鉄分を含むため黒色をしており、金属光沢がある。)とすることで、高い遠赤外線効果を奏することができる。(5)脱臭用主剤をアルミナ(酸化アルミニウムはアルミニウムの酸化物で、白色の粉末である。)とすることで、高い遠赤外線効果を奏することができる。
【0019】
また、(1)固化剤をセメント(ポルトランドセメントを構成する主な物質は、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライトおよび硫酸カルシウムである。)とすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。(2)固化剤を石灰(生石灰又は消石灰)とすることで、コストを低減できる。(3)固化剤を酸化マグネシウム(マグネシウムの酸化物で、白色または灰色の固体。)とすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。(4)固化剤を軽焼マグネサイトとすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。(5) 固化剤を軽焼ドロマイト(50mm〜90mm程度に破砕されたドロマイト原石を重油を用いて焼成したもので、これを加工し肥料用、建築用、土質安定処理などに利用されている)とすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。(6)固化剤をカンラン岩(火成岩(深成岩)の一種で、SiO2成分に乏しい超塩基性岩に分類され、主にカンラン石からなる)とすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。(7)固化剤を熔リン(熔成リン肥とも称せられ、これは純物質ではなく、溶性リン酸、アルカリ分(石灰、苦土)などの混合物である。)とすることで、粉状の脱臭用主剤を確実に結合することができる。
【0020】
尚、前述の造粒工程で得られた造粒品に補助剤を加えて整粒する整粒工程を追加することで、造粒工程で得られた造粒品は不定形粒子は丸くなり、その自重により自然乾燥中或いは保管中に粒子同士の固結が発生することはなくなる。補助剤としては例えばタルク(水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物)が滑石と呼ばれる通り滑りがよいので好ましい。
【0021】
また、前記遠赤外線材料としては、麦飯石1〜50wt%とSiO2を主成分とするガラス組成物50〜99wt%とを含有する第1のガラスボールや、マグネタイト1〜50wt%とSiO2を主成分とするガラス組成物50〜99wt%とを含有する第2のガラスボールでもよい。さらに、造粒したまま、或いは整粒工程したものの表面にゆ薬を設けた後に焼成して表面を陶器或いは磁器のようなセラミックによる表面処理を設けておいてもよい。
【0022】
以上のように、前記実施例では脱臭用主剤2と固化剤3とを混合して造粒した多孔質な脱臭剤1であって、脱臭用主剤2の原料と固化剤3の原料がそれぞれ粉末2A,3Aであり、これらそれぞれの粉末2A,3Aを造粒するで、粉末2A,3A間に孔4が形成されることで、孔4により脱臭物質を吸着でき、しかも固化剤3によって脱臭用主剤2を確実に結合することで、脱臭物質のある環境が例えば高圧ガスや水流のような場合であっても、脱臭剤1が分解してしまって孔4が破損されるようなことはなく、脱臭用主剤2による脱臭効果の他に孔4による脱臭効果を維持することができる。
【0023】
さらに、前記造粒は、ドラム型造粒機のドラム8にそれぞれ粉末2A,3Aを収容してドラム8を回転させて粉末2A,3Aを表面に順次コーティングして造粒することで、結合される粉末2A,3A間に孔4を確実に形成することができる。
【0024】
しかも、脱臭用主剤2の原料が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末2Aであることにより、脱臭効果を高め、また固化剤3の原料がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末3Aであることによって、粉末2Aを確実に結合することができる。
【0025】
また、脱臭用主剤2が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末2Aであり、固化剤3がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末3Aであり、脱臭用主剤1と固化剤2とを混合したものを造粒した多孔質な脱臭剤1とすることで、脱臭用主剤2による脱臭の他に、造粒に伴う孔4によっても脱臭効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明に係る脱臭剤の製造方法及び脱臭剤は、各種の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1を示す脱臭剤の一部を拡大断面した正面図である。
【図2】同製造工程の概略説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 脱臭剤
2 脱臭用主剤
2A 粉末
3 固化剤
3A 粉末
4 孔
7 造粒機
8 ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脱臭用主剤と固化剤とを混合して造粒した多孔質な脱臭剤の製造方法であって、前記脱臭用主剤原料と前記固化剤原料がそれぞれ粉末であり、これらそれぞれの粉末を造粒することを特徴とする脱臭剤の製造方法。
【請求項2】
前記造粒は、ドラム型造粒機のドラムに前記それぞれ粉末を収容して前記ドラムを回転させて前記粉末を表面に順次コーティングして造粒することを特徴とする請求項1記載の脱臭剤の製造方法。
【請求項3】
前記脱臭用主剤原料が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であり、前記固化剤原料がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であることを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭剤の製造方法。
【請求項4】
少なくとも脱臭用主剤と固化剤とを混合したものを造粒した多孔質な脱臭剤であって、前記脱臭用主剤が遠赤外線放射材料、フライアッシュ、麦飯石、磁鉄鉱、アルミナのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であり、前記固化剤がセメント、石灰、酸化マグネシウム、軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、カンラン岩、熔リンのうち少なくとも1種類を含んだ粉末であることを特徴とする脱臭剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−165605(P2009−165605A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6236(P2008−6236)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(392004646)
【出願人】(504101175)有限会社渡良エンジニアリング (9)
【出願人】(506262494)株式会社アムス (10)
【Fターム(参考)】