説明

腕装着型電子歩数計

【課題】平面的なサイズが最小限に抑えられ得る腕装着型電子歩数計を提供すること
【解決手段】腕装着型電子歩数計1は、歩行を感知するための圧電式加速度センサ60と、該電子歩数計1の厚さ方向Tの中間部において該厚さ方向Tに対して垂直に拡がった回路基板10と、該回路基板10の一方の主面11側に配置された電池22と、回路基板10の他方の主面12側で且つ厚さ方向に見て電池22と少なくとも部分的に重なり合う領域において、該回路基板10に実装された前記圧電式加速度センサ60と、厚さ方向Tに見て、回路基板10の前記一方の主面側の表面11のうち圧電式加速度センサ60と重なり合う領域に形成された導電パターンPとを有する。回路基板10の前記他方の主面12側で且つ回路基板10から間隔をおいたところに表示パネル40が配置され、回路基板10と表示パネル40との間に板状導電体50が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電式加速度センサを備えた腕装着型電子歩数計に係る。
【背景技術】
【0002】
腕装着型歩数計は、腕時計のようにユーザの手首に装着されてユーザの歩行を感知するもので、典型的には、ユーザの歩数を計数する歩数計の形態を採る。勿論、歩数に関連した歩行関連情報の処理が行われるものも多い。歩行の際のユーザの手首の動きを感知して歩行を感知する場合、歩行は振子のような機械的センサによっても感知され得る(例えば、特許文献1)。しかしながら、例えば、携帯電話をかけながら歩行する場合のように手首の動きが実際上ない場合においても一歩ごとの歩行を確実に感知するためには、加速度センサが好ましく、1〜2Hz程度又はそれ以下の低周波数領域の加速度変動を検出するためには、実際上、圧電式の加速度センサが用いられる。この圧電式加速度センサを備えた腕装着型電子歩数計では、圧電式加速度センサは、その最大感度軸(加速度に対する感度が最大になる方向)が腕装着型電子歩数計のケースに対して所定の方向に向くように、配置される(特許文献2)。
【0003】
図5及び図6には、従来の腕装着型電子歩数計100のケース(図示せず)に配設される本体部102が示されている。
【0004】
図6に示したように、電子歩数計本体部102は、厚さ方向の中間部に回路基板110を備える。回路基板110の裏蓋(図示せず)側では、電池枠120の凹部122にボタン型電池124が収容される。一方、回路基板110のガラス(図示せず)側には、パネル枠130及びコネクタ132,132で支持された液晶パネル134が配置される。
【0005】
電池枠120のうち凹部122の周壁部126には、圧電式加速度センサ140を収容する開口128が形成され、回路基板110の電池側表面112のうち開口128内の領域に圧電式加速度センサ140が実装される。開口128及びその中にある圧電式加速度センサ140は、図5からわかるように、周壁部126の延在方向(周方向)にほぼ沿うように形成ないし配置される。但し、後で詳述するように、加速度センサ140の長手方向は、厳密には、該加速度センサ140の配設位置における周方向とは多少ズレている。
【0006】
図6でみて電池枠120の開口128の上を含む電池枠120の周壁部126の上面127には接点121(図5)で電池124の正極123に電気的に接続されるスイッチバネ125が配置されている。アース端子としても働くスイッチバネ125は、圧電式加速度センサ140の配置された開口128を覆うように配置されることにより、圧電式加速度センサ140の近傍の電位を安定化させ、圧電式加速度センサ140の出力端子への電気的ノイズの侵入を抑制する機能を有する。電池収容凹部122の底壁の開口129には回路基板110の裏蓋側主面ないし表面112上において電池124の負極111に接触する負極接点113が位置する。
【0007】
一方、回路基板110の液晶パネル側主面ないし表面114には、マイクロプロセッサ機能を含み歩行データ処理機能を備えた集積回路150を含む各種回路部品が実装されている。
【0008】
なお、図7の一部拡大断面説明図で示したように、この従来の電子歩数計100では、平面的なサイズが限られた状態で各種回路部品の実装領域を確保するために、回路基板110は、四層の導電パターンないし導体パターン115A,115B,115C,115D(総称するときは符号115で示す)を有する多層基板からなる。中間の導体パターン115B,115Cの一部又は大半の部分はスルーホール116等を介して相互に電気的に接続されてアース電位を与えるように構成される。図7からわかるように、この従来の電子歩数計100では、多層導体パターンないし多層配線パターン115を設けることにより、圧電式加速度センサ140の背面側への別の回路部品117の実装を可能にしている。
【0009】
しかしながら、この従来の腕装着型電子歩数計100では、電池124の外側(電池124の外周面124Aよりも外側)に加速度センサ140の配設領域を確保するために、回路基板110を電池124の外周面よりも外側に比較的大きく突出させる必要がある。しかも、腕装着型電子歩数計100では、加速度センサ140が弱い歩行信号でも確実に感知し得るように、加速度センサ140の最大感度軸A(該加速度センサ140の長手方向に直交する方向)が特定の方向(典型的には、手首の延在方向に対して12.5度傾斜した方向(左手首に装着する場合、アナログ時計の時針の位置で換算すると2時35分(又は8時35分)に時針がとる向きと平行な方向))になる状態で加速度センサ140を回路基板110に実装する必要がある。
【0010】
従って、腕装着型電子歩数計100において、電池枠120の周壁部126の径方向突出長(周壁部126の幅)を最小限にしつつ加速度センサ140を周壁部126の開口128内に納めようとすると、加速度センサ140の配設位置は、特定の角度範囲ないし特定の角度位置に限られる。しかしながら、例えば、径方向長さを最低限にする角度位置(例えば、図5において想像線140Aで示した位置(加速度センサの長手方向が当該位置の接線方向(周方向)に一致する位置)に加速度センサ140を配置しようとすると、該加速度センサ140Aが押しボタンスイッチの装着位置に過度に近接することから押しボタンスイッチの動作の妨げになったり該押しボタンスイッチの操作の際の衝撃を加速度センサ140Aが歩行信号として誤検出する虞れがある。従って、このような他の部品との相対配置を考慮して、従来の電子式歩数計では、例えば、図5に示したように、時計の8時35分の位置から多少ズレた時計の9時の位置に当該位置における周方向に対して傾斜した状態で加速度センサ140を配置している。加速度センサ140のこのような傾斜配置は、それだけで、回路基板110の径方向大きさの増大をまねく。また、加速度センサ140を回路基板110の外周縁に近づければ近づける程、前述のような押しボタンスイッチに瞬間的にかかる衝撃やケースの周壁にかかる衝撃が回路基板110の外周部を介して加速度センサ140に大きくかかり易くなり、外部からの機械的衝撃が加速度として加速度センサ140により誤検出される虞れも高くなることから、加速度センサ140が回路基板140の外周部から多少離れるようにするためには、回路基板110の径方向大きさを多少大きめにする必要がある。
【0011】
すなわち、従来の加速度センサを備えた電子式歩数計では、押しボタンスイッチやケース周壁部等に対する衝撃等の誤検出を避け得るように、加速度センサ140の実装される回路基板110を電池の外側にある程度突出させる必要があり、回路基板110の平面的なサイズがある程度大きくなるのを避け難い。また、回路基板110の大形化を多少なりとも避けようとする限り、加速度センサ140を配置し得る部位が限られ、回路設計や構造設計に際し平面的なレイアウトの選択の自由度が低くなるのを避け難い。回路基板110上への各種回路部品の実装配置の観点からすると、加速度センサ140が占有する位置及び領域が予め決まってしまっていると、他の回路部品の配置に支障が生じる虞れがあり、これを避けるために、回路基板110を多少大きめにする必要が生じる場合もあり得る。
【0012】
一方、腕振りが実際上ないような場合には歩行に伴う加速度センサ140の出力信号が微弱になることから加速度センサ140の出力はノイズの影響を受け易いので、該出力にノイズが入るのを避けるために、回路基板110に関して、加速度センサ140の一対の出力端子141,142のうち出力側端子141(アース側端子142とは異なる方の端子)の背面側には、アース形成用導電パターン領域の如き一定電位の導電パターンを形成しておく必要があり、電子歩数計100では、図7に示したように、加速度センサ140の背面側にアース形成層115Bが形成される。
【0013】
また、従来の電子式歩数計100において、仮に、回路基板110として表裏のみに配線パターンのある基板(単層基板)を用いようとする場合、(1)前述のように加速度センサ140の配設位置及び向きが限定されること及び(2)加速度センサ140の出力側端子141の背面側には広い一定電位パターン(例えばアースパターン)を確保する必要があることから、回路基板の表示パネル側表面114に広いアースパターン領域をセンサの向き及び位置に規制された形状で確保する必要がある。また、(3)加速度センサ140が他の回路部品とは反対側に実装されることから、スルーホール等を介して回路基板の反対側表面への配線を確保する必要がある。その結果、従来の電子式歩数計100において、仮に、回路基板110として表裏のみに配線パターンのある基板(単層基板)を用いようとすると、回路基板の表示パネル側表面114の相当大きな領域が他の回路部品の実装に利用できなくなる。しかも、この利用不可能領域は、その背面112側にある加速度センサの向き及び位置に束縛された形状で規定されるので、他の寸法が大きい回路部品の配置が制限されて回路部品の効率的なレイアウトが行われ難くなり、回路基板をより大きくすることなしには、所望の回路が形成できなくなる虞れがある。従って、この従来の電子式歩数計100では、図7に示したような回路部品117等の実装を可能にするように、基板110が多層基板になっている。換言すれば、圧電式加速度センサ140を電池の外周よりも外側において回路基板110の裏蓋側主面112に実装するようにした従来のような電子式歩数計100において、回路基板110として単層基板を用いるとすると、回路基板110の平面的なサイズを更に大きくする必要がある。
【特許文献1】特開2002−221434号公報
【特許文献2】特開2005−309693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、平面的なサイズが最小限に抑えられ得る腕装着型電子歩数計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の腕装着型電子歩数計は、前記目的を達成すべく、歩行を感知するための圧電式加速度センサを備えた腕装着型電子歩数計であって、該電子歩数計の厚さ方向の中間部において該厚さ方向に対して垂直に拡がった回路基板と、該回路基板の一方の主面側に配置された電池と、前記回路基板の他方の主面側で且つ厚さ方向に見て前記電池と少なくとも部分的に重なり合う領域において、該回路基板に実装された前記圧電式加速度センサと、前記厚さ方向に見て、前記回路基板の前記一方の主面側の表面のうち前記圧電式加速度センサと重なり合う領域に形成された導電パターンとを有する。
【0016】
本発明の腕装着型電子歩数計では、厚さ方向に見て電池と少なくとも部分的に重なり合う領域において回路基板に圧電式加速度センサが実装されるので、従来の電子歩数計と異なり、電子歩数計の拡がり方向(厚さ方向に垂直な面の延在方向)に関して電池の外側に圧電式加速度センサを実装するための広い領域を確保しなくてもよいから、回路基板の平面的な拡がりを抑制し得、平面的なサイズを最低限に抑え得る。また、本発明の腕装着型電子歩数計では、前記回路基板の前記一方の主面側の表面のうち前記圧電式加速度センサと厚さ方向に重なり合う領域に拡がった導電パターンを備えるので、比較的一定の安定な電位に保たれ易い該導電パターンにより、前記圧電式加速度センサへの背面側からの電気的なノイズの侵入を最低限に抑え得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。ここで、該導電パターンの領域では、回路基板には実際上他の回路部品が実装されないので、回路基板の有効利用が一見妨げられるかにみえるけれども、本発明の腕装着型電子歩数計では、この導電パターンに対面する位置に電池が配置されているので、該導電パターンの領域を元来回路部品の実装に適さない電池の背面側領域(電池に対面する領域)と一致させることにより、回路基板の非実装領域を最低限に抑えていることになる。換言すれば、本発明の腕装着型電子時計では、電池に対面するが故に非利用領域(回路部品が実装されない表面領域)となる回路基板の領域を圧電式加速度センサの背面側の導電パターン領域としたが故に、二種類の原因で回路部品の実装ができない領域を一箇所に集約したことになり、結果的に、全体として回路基板の利用効率を高めている。従って、本発明の腕装着型電子歩数計では、この回路基板の効率的利用と、平面的に見て電池の外側領域から電池に重なる内側領域への加速度センサの移動(配置換)との両方により、回路基板の平面的サイズの縮小が可能になり、回路基板の平面的サイズが最小限に抑えられ得、電子歩数計の平面的な小型化が可能になる。
【0017】
なお、前記導電パターンの領域は、前記厚さ方向に見て、加速度センサの全領域と重なり合っていても、加速度センサのうちの一部の領域と重なり合っていてもよい。該導電パターンの領域は、厚さ方向に見て、典型的には、加速度センサと重なり合う領域の外側にも拡がっている。
【0018】
また、本発明の腕装着型電子歩数計では、圧電式加速度センサが厚さ方向に見て電池と少なくとも部分的に重なり合う領域において回路基板に実装されるので、圧電式加速度センサが回路基板の外周縁から離れた所に位置し得る。従って、本発明の腕装着型電子歩数計では、圧電式加速度センサがその最大感度軸(感度が最大になる方向)に応じた特定の配向で基板に実装される際、従来の電子歩数計の場合と異なり、回路基板の外周縁の狭い領域に配置される必要がないので、圧電式加速度センサ及び他の回路部品を含めた回路設計の自由度や、圧電式加速度センサ及び他の回路部品の相互配置(平面的なレイアウト)の自由度が高い。ここで、圧電式加速度センサは、所望に応じて、厚さ方向に見て、その一部(但し、典型的には50%以上)が電池と重なり合っていてもその全領域が電池と重なり合っていてもよい。
【0019】
また、本発明の腕装着型電子歩数計では、前述のように、圧電式加速度センサが回路基板の外周縁から離れた所に位置し得るから、押しボタンスイッチの操作等に起因する機械的衝撃による加速度変動を誤検出する虞れも低減され得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。更に、本発明の腕装着型電子歩数計では、前述のように、圧電式加速度センサが回路基板の外周縁の狭い領域で且つ周方向の限られた箇所に配置される必要がないので、各種回路部品の如き電気的なノイズ発生源及び押しボタンスイッチの如き機械的なノイズ発生源の影響を極力避け得る所望位置への配置の自由度も高い。
【0020】
腕装着型電子歩数計の電池は、典型的には、ボタン型電池であり、典型的には、その厚さが数mm程度、外径が1〜2cm程度である。
【0021】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、圧電式加速度センサの一対の出力端子のうちの少なくとも基準電位側でない方の出力端子(出力側端子)を含む部分が、電池の厚さ方向に見て、電池と重なり合う位置に、圧電式加速度センサが配置される。圧電式加速度センサは一対の出力端子を有し、典型的には、一対の出力端子のうちの一方の出力端子が、実際上一定の電位に保たれる。この一定の電位に保たれる方の出力端子をこの明細書では、基準電位側の出力端子と呼ぶ。この一定の電位は、典型的には、比較的大きな導体部分を含む電池の正極又は負極に接続されることにより、確保される。但し、一定の電位を電池の正極や負極の電位に一致させる代わりに、該正極や負極に対して一定の電位差に保たれた部分の電位に一致させてもよい。例えば、回路基板上に配置された圧電式加速度センサの周囲に電池の正極や負極に対して一定の電位差を有する部分がある場合、当該部分の電位をそのまま圧電式加速度センサの一方の出力端子の電位(基準電位)として採用してもよい。
【0022】
この場合、電池の背後に位置し比較的一定の安定な電位に保たれ易い導電パターンが圧電式加速度センサのうちノイズの影響を受け易い出力端子の周囲の電位変動を安定化させ出力端子にノイズの影響が及ぶのを抑制する。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。
【0023】
勿論、圧電式加速度センサの基準電位側(例えば、アース(接地)側ないしグランド(GND)側)の出力端子の一部が厚さ方向に見て電池と重なる位置にあってもよく、更に、所望ならば、圧電式加速度センサの基準電位側(例えば、アース側)の出力端子の全体が電池と重なる位置にあってもよい。圧電式加速度センサに電池側から入るノイズに限れば、圧電式加速度センサのうちが電池の背後に位置する面積割合が高ければ高い程好ましいけれども、後述のように、圧電式加速度センサを迂回するように他の回路部品の入出力信号のための配線パターンを設けることが好ましいことから、圧電式加速度センサを過度に基板の中央部に配置することは回路基板の効率的な利用の観点からは必ずしも好ましくない場合もあり得る。従って、圧電式加速度センサの最終的な実装位置は、他の要因も考慮して決定される。
【0024】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、前記導電パターンが、電池の正極又は負極に(電気的に)つながるように構成される。この場合、導電パターンが安定的に一定の電位に保たれ得るので、ノイズの影響を受ける虞れを確実に低減し得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。なお、ここで、電池の正極又は負極は、典型的には、回路のアース側である。このアース側端子は、例えば、電池の正極側の端子である。但し、電池の負極側の端子であってもよい。
【0025】
本発明の腕装着型電子歩数計では、例えば、電池の負極が回路基板に対面する向きに電池が装着される。この場合、例えば、電池枠の電池収容凹部の底壁に開口が形成されて該開口に負極端子が臨む。回路基板の裏蓋側表面の前記導電パターンを例えば電池の正極と同電位にする場合、当然ながら、回路基板の裏蓋側表面(前記一方の主面)のうちこの負極端子のある開口に対面する領域には、前記導電パターンは形成されない。
【0026】
所望ならば、本発明の腕装着型電子歩数計において、電池の正極が回路基板の前記一方の主面側に形成された前記導電パターンに対面し当接するように上下(表裏)の反転した状態で前記電池が装着されるようになっていてもよい。回路基板の裏蓋側表面の導電パターンを電池の正極と同電位にする場合、例えば、電池の正極が前記導電パターンに直接接触されるように、電池収容凹部は底壁を実際上欠く開口ないし貫通孔の形態をとる。この場合、負極端子は電池の上側(裏蓋側)から電池の負極に接触する。
【0027】
前記導電パターンを電池の負極と同電位にする場合、上記二例において、正極を負極と読替え、負極を正極と読替えればよい。
【0028】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、圧電式加速度センサはその最大感度軸が所定の方向に一致するように且つ該加速度センサの長手方向が該加速度センサの配設位置における回路基板の周方向よりも径方向に近い方向に向いた状態で、回路基板に実装される。この場合、典型的には、加速度センサの一対の出力端子のうち(信号)出力側端子が該加速度センサの基準電位側端子(例えば、アース側端子)よりも内側に位置するような向きに加速度センサが配置される。但し、所望ならば、逆向きでもよい。また、この場合、加速度センサを回路基板の内側(外周縁部から離れたところ)に配置し得るだけでなく、所望ならば、回路基板の外周縁部近傍に他の回路部品を配設することも可能になり、各種回路部品相互の間隔を大きくとることも可能になる。
【0029】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、回路基板の前記他方の主面側で且つ該回路基板から間隔をおいたところに表示パネルが配置され、該回路基板と該表示パネルとの間に、板状導電体が配置される。
【0030】
この場合、板状導電体は一定の安定な電位に保たれ得るので、表示パネルに対する駆動信号その他の入出力信号が加速度センサに対するノイズになる虞れが最低限に抑えられ得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。ここで、板状導電体は、典型的には金属板からなるけれども、所望ならば、導電性膜ないし導電性層が形成された非導電性板などであってもよい。板状導電体が金属板等である場合、電子歩数計全体の厚さに殆ど影響を与えない程度の厚さでもよい。また、板状導電体は、典型的には、表示パネル及びこれに対する入出力信号ラインを含む領域と実際上同じ拡がり有するように形成されるけれども、所望ならば、加速度センサからみて表示パネルの全域を蔽い得る限り、表示パネルよりも多少小さくてもよい。なお、この板状導電体は、各種回路部品が光等に曝されるのを防ぐ役割も果たし得るから、回路部品の中に表示パネルから出る虞れのある光その他の放射に比較的弱い部品があっても、回路部品がその影響を受ける虞れを最低限に抑え得る。但し、例えば、背丈の高い集積回路等が電気的その他の点で十分に安定に形成されている場合には、該背丈の高い集積回路部分等に対面する領域に該集積回路部分等の頂部が遊嵌される開口が形成されていてもよい。その場合、板状導電体の配設による厚さの増加を最低限に抑え得る。板状導電体は、典型的には、平板状であるけれども、所望ならば、例えば加速度センサを取囲む壁部を備えたU字状等の形状の壁構造部であっても該壁構造部を一部に含んでいてもよい。
【0031】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、前記表示パネルが液晶表示パネルを含む。この場合、板状導電体の導電性表面ないし金属面が、反射面としても働き得る。液晶表示パネルは、反射式であっても、バックライトとして働くEL(エレクトロルミネセンス)パネルその他の光源を背後に備えたタイプであってもよい。
【0032】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、前記板状導電体を一定の電位に保つべく前記回路基板上の導電パターンのうち電池の正極又は負極に接続された導電パターンと該板状導電体との間に配置された弾性導電端子を備える。この場合、板状導電体が前記一定の電位に安定的に保たれ得るから、板状導電体によるノイズの侵入防止がより確実に行われ得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。なお、所望ならば、板状導電体が設定される前記一定の電位は、電池の正極や負極の電位に対して所定の一定の電位差に保たれる別の電位であってもよく、圧電式加速度センサの基準電位と一致していても一致していなくてもよい。
【0033】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、前記表示パネルがELパネルを含み、前記板状導電体が該ELパネルのアース電極になっている。この場合、板状導電体自体が、電極としても働き得る。
【0034】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、圧電式加速度センサと前記板状導電体との間隔を一定に保つスペーサを備える。この場合、板状導電体が加速度センサのノイズ源になる虞れをより確実に抑え得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。また、板状導電体が表示パネルを機械的に安定に保持するのに役立つ。なお、スペーサは、典型的には、板状導電体が加速度センサに近接するのを禁止する座部を備え、該座部と加速度センサとの間には通常な小さな間隙が残る。但し、所望ならば、座部が加速度センサの表面に実際上当接していてもよい。スペーサは、典型的には、表示パネルを支えるパネル枠の一部からなる。但し、別部品であってもよい。
【0035】
本発明の腕装着型電子歩数計では、典型的には、回路基板に実装された他の回路部品の入出力信号配線パターンが、前記圧電式加速度センサを迂回するように該回路基板に形成されている。
【0036】
この場合、他の回路部品に対する入出力信号が圧電式加速度センサへのノイズになる虞れを低減し得る。その結果、圧電式加速度センサの出力が比較的高いS/N比で歩行信号の処理回路に与えられ得る。
【0037】
圧電式加速度センサから出力される歩行信号は、典型的には、バンドパスフィルタのようなフィルタ手段を介して歩行信号に対応する周波数成分が選択的に通され、増幅手段で典型的には1mV程度の電圧信号が1V程度に増幅された後、A/D(アナログ−デジタル)変換されてデジタル歩行信号に変換されて、データ処理される。
【0038】
特に、圧電式加速度センサの出力信号は大きく増幅された後、データ処理されることから、前記他の回路部品が、加速度センサからの出力信号を増幅した後の信号を処理するものである場合、当該回路部品の信号がごく一部(部分的)であれ加速度センサに再度入力されることは、実際上発振を生起させる虞れがあるので、極力避ける必要がある。
【0039】
また、歩行信号が増幅後デジタル信号に変換されてなるデジタル歩行信号は、一方ではデジタル信号を構成するパルス信号であるが故に極めて高い周波数成分を有し、他方では、歩行信号と実際上同じ繰返し周波数で生起せしめられることから歩行信号と同様に1〜2Hz程度(典型的には、90〜120回/分)又はそれ以下の周波数成分を有する。すなわち、デジタル歩行信号は、その高い周波数成分を有するが故に、容量結合などを介して、隣接する回路部品や配線パターンにノイズとして入り易い。ところが、このデジタル歩行信号のノイズは、歩行信号に独特の繰返し周波数(1〜2Hz程度又はそれ以下)の周波数成分を顕著に有するから、デジタル歩行信号のノイズが、圧電式加速度センサ自体の出力にのると、そのノイズは大きく増幅されて新たな歩行信号として誤認されることになる。従って、歩行信号に対応するデジタル信号がごく一部(部分的)であれ加速度センサに再度入力されることも、実際上発振を生起させる虞れがあるので、極力避ける必要がある。なお、ここで、デジタル歩行信号は、単に、歩行信号に直接的に対応するデジタル信号に限られず、歩行信号が90〜120回/分程度の頻度で入力されるごとに当該頻度でデータ処理され出力されるデジタル信号であっても、結果的に例えば1〜2Hz程度の繰返し周波数を有する場合、圧電式加速度センサの出力側端子に対しては、歩行信号と誤認されるノイズになり得る。
【0040】
従って、回路基板に実装された他の回路部品の入出力信号配線パターンを、前記圧電式加速度センサを迂回するように該回路基板に形成することにより、他の回路部品に対する入出力信号が圧電式加速度センサへのノイズになる虞れを低減させることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に、本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0042】
図1及び図2は本発明の好ましい一実施例の腕装着型電子歩数計1のケース2内に配設される電子歩数計本体部3を縦断面及び平面断面(図1のII−II線断面)で示し、図3は本発明の好ましい一実施例の腕装着型電子歩数計1の外観を示し、図4は腕装着型電子歩数計1の関連回路部分の概略をブロック図で示している。
【0043】
腕装着型電子歩数計1は、図3に示したように、ケース2の両端部に手首への装着用の一組のバンド部B1,B2(総称するときや相互に区別しないときは符号Bで表す)を備え、例えば、六箇所に各種の処理機能の実行指示やモード変更の指示を与えるための押しボタンスイッチS1,S2,S3,S4,S5,S6(総称するときや相互に区別しないときは符号Sで表す)を備える。また、腕装着型電子歩数計1は、表示部Dを備え、該表示部Dには、歩数情報のような歩行関連情報D1や、時刻情報のような歩行関連情報以外の他の情報D2が表示される。勿論、押しボタンスイッチSの操作によって選択された特定の表示モードにおいて、図3において情報D2が表示されている領域にも消費カロリーその他の歩行関連情報が表示されても、表示領域Dの表示の全体が一時的に歩行関連情報以外の情報になるようにしても、表示領域Dのうち一箇所だけに大きく又は三箇所以上に小さく歩行関連情報その他の情報が表示されるようになっていてもよい。
【0044】
腕装着型電子歩数計1は、本体部3の一部として、図3において想像線で示したような圧電式加速度センサ60をケース2内に備える。加速度センサ60は、腕装着型電子歩数計1がユーザの手首(図示せず)に装着された状態で該ユーザが歩行の際に手を振っているか否かにかかわらず該ユーザの歩行を確実に検出し得るように、例えば特許文献2や特許文献1に記載されたような種々の状態を考慮して、所定の向きAに最大感度方向が一致するように配置されている。図3に例示した電子歩数計1は、左手首に電子歩数計1を装着するユーザのための圧電式加速度センサ60の配置になっている。方向Aは、典型的には、腕装着型電子歩数計1の表示領域Dの延在面に平行な面内で且つ図3の面で見て該表示領域Dの上下方向Xに対して77.5度(アナログ時計の3時の方向に対して12.5度傾斜)している。なお、電子歩数計1が右手首への装着用である場合、典型的には、アナログ時計の9時の方向に対して12.5度傾斜する向きになるように、圧電式加速度センサ60が配置される。但し、この最大感度方向Aは、所望ならば、各種利用の形態や状態を考慮して、12.5度とは異なる特定の方向になっていてもよい。
【0045】
加速度センサ60を備えた電子歩数計1は、おおまかには、図4のブロック図で示したような回路構成を有する。
【0046】
すなわち、圧電式加速度センサ60は、歩行に伴う加速度変動を該加速度変動に対応する応力変動に伴う圧電素子の分極状態の変動として感知し該分極変動に対応する表面電荷の変動をコンデンサ(静電容量)の電圧変動として出力する。圧電式加速度センサ60自体の静電容量は、例えば、1nF程度であり、その電圧変動は例えば1mV程度である。圧電式加速度センサ60の出力は、フィルタ手段CF及び増幅手段CAを介してデジタルデータ処理手段CPUに与えられる。フィルタ手段CFは、例えば、帯域フィルタ回路からなり、1〜2Hz程度以下の歩行信号のみを増幅手段CAに与える。帯域は、歩行信号の透過を確実に許容し且つ歩行信号以外のノイズの透過を極力抑制し得る限り、上限が2Hzよりも高くても低くてもよい。なお、歩行が継続的に行われる場合には、下限は1Hz程度の範囲に入るとしても、突然歩き出すことを考慮すると、最初の一歩の歩行信号を確実に捉えるためには、0.1Hz程度又はそれ以下の周波数領域の小さい信号を無視できない。また、一歩だけ歩くことまで考慮すると、低周波数側をカットし難い。増幅手段CAは、1mV程度の小さい電圧信号を、デジタル信号処理が可能な1V程度に増幅する増幅回路からなり、例えば、ある程度狭帯域の増幅回路からなる。勿論、フィルタ手段CFと増幅手段CAとは回路上は一つになっていてもよい。増幅手段CAで増幅された電圧信号は、A/D変換回路(図示せず)を介して、データ処理手段CPUに与えられて、歩数の計数処理その他の歩行関連情報のデータ処理が行われる。ここで、データ処理手段CPUは、プログラムの格納が可能な不揮発性メモリ部及び該プログラムの実行が可能な中央処理装置ないし演算処理装置を含む広い意味でのデータ処理装置であり、ユーザの歩行関連情報等を一時的に格納する消去可能なメモリを含んでいても、該メモリが別に設けられていてもよい。このCPUは、単なるマイクロプロセッサ機能だけでなく、歩行データ処理に関連してカスタマイズされた各種の演算処理機能や、時刻情報D2等の処理が可能ないわゆる時計用ICとしての機能も含み、更に、LCDのような表示手段CDの駆動回路も含み得る(勿論所望ならば、集積回路としては別体であってもよい)。データ処理手段CPUは、入力手段CIとしての押しボタンスイッチSからの入力信号を受取るだけでなく、処理された歩数データのような歩行情報D1や時刻データのような非歩行情報D2を表示手段CDに出力してその表示部Dで表示させる。
【0047】
この腕装着型電子歩数計1では、ケース2内の極めて狭い空間ないし(回路基板の)面積領域に各種の回路部品を組込む必要がある一方で、機械的及び電気的なノイズの影響を受け易い加速度センサ60の微弱な歩行信号を十分に増幅する必要があることから、加速度センサ60を外乱から十分に隔離される環境におくことが好ましい。特に、加速度センサ60自体の出力部分に増幅後の信号が入ると実際上発振して歩行信号を出し続ける虞れがあるので、加速度センサ60自体の出力部分に増幅後の信号が入るのは避ける必要がある。歩行信号は、典型的には1〜2Hz程度の繰返し周波数(必ずしも一定ではない)の信号であるけれども、例えば、歩行が検出される毎にCPUから1〜2Hz程度の繰返し周波数(必ずしも一定ではない)で出される歩行関連デジタル信号は、それ自体高い周波数成分を有するパルス信号の形態を取るので、その繰返し周波数に応じた低周波数成分と各パルス信号を構成する極めて高い周波数成分との両方を含むことになる。従って、CPUから出る歩行関連デジタル信号の高い周波数成分を加速度センサ60の出力部分で1〜2Hz程度の繰返し周波数でノイズとして拾うと、そのノイズが歩行信号と誤認される虞れがある。それ故、加速度センサ60の出力端子部分等が、増幅手段CAによる増幅後の歩行信号や歩行関連デジタル信号の処理部分や転送用ラインに近接して容量結合等によりノイズを拾う虞れも極力避けることが好ましい。
【0048】
電子歩数計本体部3は、図1及び図2からわかるように、厚さ方向Tの中間部に該厚さ方向Tに垂直に延在する回路基板10を備える。回路基板10は、単層基板であり、一方の主面としての裏蓋4側の表面11及び他方の主面としてのガラス5側の表面12に導体パターンP及びQを有する。なお、図1ではガラス5の背後の見切り板等は省いてある。ここで、導体パターンPは、少なくとも、電荷変動の影響を実際上受けない比較的広い導体層領域を含み、導体パターンQは、少なくとも、各種回路部品の端子が半田付されたり圧接されて電気的接続が確立されるランド部ないしパッド部及び回路部品間の狭義の配線パターン部を含む。回路基板10の裏蓋側表面11には、電池収容凹部21を備えた電池枠20が配置され、該電池収容凹部21にはボタン型電池22が収容されている。図2において、破線22は、図2の断面よりも手前側にある電池の外周の位置(厚さ方向Tに沿って見た位置)を示す。図1からわかるように、回路基板10のガラス側表面12には、パネル枠30が配置固定され、該パネル枠30のパネル保持用突起部(係止用突起部)31,31とコネクタ32,32とにより、LCD(液晶表示装置)パネル40が保持されている。液晶表示パネル40と回路基板10との間には、弾力性導電端子51を介して板状導電体としての金属板50が配置されている。回路基板10と、電池枠20と、パネル枠30とは一体的に固定されている。固定は相互に直接的に行われていても、ケース2を介して相対的に静置固定されていてもよい。
【0049】
より詳しくは、回路基板10は、例えば、厚さ0.5〜1mm程度の所謂ガラエポ(ガラス繊維強化エポキシ)基板の上下表面11,12に導体パターンP,Qを形成してなる。回路基板10のガラス側表面12の導体パターンQは、図2に示したように、圧電式加速度センサ用導体パターン部Q1や、フィルタ手段用導体パターン部(フィルタ手段としてのフィルタ回路CFを構成する各種回路部品間の配線パターン部を含む)Q2や、増幅手段用導体パターン部(増幅手段としての増幅回路CAを構成する各種回路部品間の配線パターン部を含む)Q3や、データ処理集積回路用導体パターン部Q4や、導体パターン部Q1,Q2をつなぐ配線パターン部Q5や、導体パターン部Q2,Q3をつなぐ配線パターン部Q6や、導体パターン部Q3,Q4をつなぐ配線パターン部(図示せず)や、他の回路部品(図示せず)につながる配線パターン部Q7等を含む。図2では、配線パターン部Q7の例示としてデータ処理用集積回路CPUから他の回路部品(図示せず)につながる配線パターン部のみが示されている。圧電式加速度センサ用導体パターン部Q1、フィルタ手段用導体パターン部Q2、増幅手段用導体パターン部Q3及びデータ処理集積回路用導体パターン部Q4には、夫々、圧電式加速度センサ60、フィルタ回路CF、増幅回路CA及びデータ処理集積回路CPUが実装される。圧電式加速度センサ60の出力信号を与える圧電式加速度センサ用導電パターン部Q1は、アース側導電パターン部Q11と信号出力側導電パターン部Q12とを含み、夫々に、基準電位側出力端子としてのアース側出力端子61と信号側出力端子62とがリフローにより半田付けされる。図2からわかるように、加速度センサ60は、厚さ方向に沿う方向に見て(即ち図2のような面でみて)、大半の部分が電池22に重なるように、配置される。この例では、電池22に重なる部分は、信号出力側端子62の全体を含むセンサ60の筐体の大半の部分であり、アース側端子61の一部だけが電池22と重なる領域の外にある。また、この例では、他の回路部品との接続を容易にすべく、圧電式加速度センサ60は、最大感度軸Aがアナログ時計の3時と9時とを結ぶ方向に対して所定角度(例えば、12.5度)傾斜し且つ信号側出力端子62がアース側端子61よりも回路基板10の中央部に近い側に位置するように、配置される。図2からわかるように、この例では、加速度センサ60の長手方向は、該センサ60の配設位置における周方向よりも径方向に近い。
【0050】
なお、上記導体パターンは、表面12上の配線パターンのうち本発明の実施例を例示的に説明するために必要な部分を例示的に示したもので、実際には、表面12上には、他の各種の回路部品が実装され、それに応じて多数の配線パターンを含む多数の導体パターンが形成される。例えば、図示しない配線パターン部Q7には、押しボタンスイッチSとデータ処理用集積回路CPUとを結ぶ入力ラインや、データ処理用集積回路CPUとLED40接続用のコネクタ32,32の接触パターン部(図示せず)とを結ぶ出力ラインを含む。更に、例えば、通常は、ブザーのような音響信号を発する回路部品が含まれることからこれに関連した導体パターンが含まれる。また、LED40のバックライトとしてELパネル等が含まれる場合、該ELパネルの駆動用回路部品に関連した導体パターンが含まれる。また、回路部品には、例えば、水晶缶のような発振器やブザーやLEDの駆動用の昇圧コイル等も含まれ、配線パターンには、各種電源ライン等も含まれる。その結果、図2においては、説明の都合上、フィルタ回路CFや増幅回路CA等が夫々一纏まりに所望領域内に集っているかのごとく示したけれども、実際には、フィルタ回路CFや増幅回路CA等を構成する各種回路部品も最大径が高々2〜3cm程度又はそれ以下である狭い回路基板10の表面12上に広く分布配置せざるを得ず、関連する配線パターンも複雑に入り乱れることも避け難いことが多い。
【0051】
なお図2からわかるように、デジタルデータ処理手段としてのデータ処理用集積回路CPUに対する信号の入出力ラインQ7は、圧電式加速度センサ60から十分な間隔(例えば、0.5〜1mm程度又はそれ以上)をおいて該加速度センサ60を迂回するように延びている。これにより、データ処理用集積回路CPUの入出力ラインQ7を通る歩行関連デジタル信号に起因するノイズが圧電式加速度センサ60の出力に混入する虞れを最低限に抑える。
【0052】
一方、電池22の背面側に位置する回路基板10の裏蓋側表面11上には、図2において、想像線で示したように、導電パターンPとして、大きなアース用導電パターンP1が形成されている。このアースパターンP1は、圧電式加速度センサ60の出力側端子62の背面(厚さ方向Tに見て出力側端子62に重なる領域)の全体を含み、典型的には、図2からわかるように、圧電式加速度センサ60の全体の背面側の全体を含む。これにより、圧電式加速度センサ60に背面側からノイズが入る虞れを最低限に抑えている。また、アースパターンP1は、デジタルデータ処理用集積回路CPUの全域及び該集積回路CPUに対する入出力配線パターンの実際上全域の背面側に拡がっている。
【0053】
このアースパターンP1の形態の導電パターンPは、実際上、電池枠20の底壁部23の下面(図1でみて下側の面)に密接している。即ち、回路基板10のうちアースパターンP1のある表面11には、通常はその上に回路部品を実装するスペースはない。従って、この電子歩数計1では、回路基板10のうち電池枠20の存在の故に実際上利用し難い領域を、圧電式加速度センサ60へのノイズの侵入を防ぐ広いアースパターンP1として最大限利用している。換言すれば、回路基板10のうち圧電式加速度センサ60が実装された領域の背面側は、回路基板10が中間にアース層を含む多層基板(例えば、図7に示した従来の基板110)でない限り、本来一定の電位を与える大きな導電パターンを形成する必要がある領域であるところ、この電子歩数計1では、その導電パターン領域を本来回路部品の実装の余地のない電池枠20の底壁部23に接する領域にすることにより、回路基板10の表面を最大限効率的に活用している。その結果、電子歩数計1では、回路基板10の利用効率が高められ、回路基板10が単層基板であるにもかかわらず、回路基板10の平面的な大きさ(厚さ方向Tに垂直な平面内での大きさ)を最小限にすることが可能になっている。なお、この電子歩数計1では、回路基板10が二面11,12だけに導電パターンP,Qのある単層基板になっているけれども、他に目的がある場合、所望ならば、回路基板10が厚さ方向Tの中間に別の導電パターン層のある多層基板になっていてもよい。
【0054】
電池枠20は、底壁部23のうち導電パターンPに対面しない領域に想像線で示したように開口24(図2)を備え、該開口24内に破線で示したように負極端子25が臨み、電池収容凹部21内に収容されたボタン型電池22の底面にある負極26に接触する。なお、アースパターンP1と電気的に接続された正極端子(図示せず)は、例えば図5の従来例において示したのと同様に、電池22の正極27に電池22の周面で接触する。
【0055】
但し、所望ならば、電池22の負極26が裏蓋4に対面する向きに(図1において上下が反転した状態で)電池22を電池収容凹部22に配設するようにしてもよい。その場合、電池収容凹部22の底壁部23を実際上全域にわたって省き、図1において下側に露出する電池22の正極が回路基板10の表面11にあるアース用導電パターンPに直接接触するようにしてもよい。
【0056】
液晶パネル40は、この例では、液晶層を間に挟むと共に多数の電極を備えたガラス基板41,42とその両側の偏光板43,44とを有する反射型液晶パネルからなる。但し、所望ならば、背面側の偏光板44の背後にバックライトとして働くEL(エレクトロルミネセンス)パネル等を備えていてもよい。
【0057】
パネル枠30の係止用突起部31,31で支持された液晶パネル40のガラス基板41と回路基板10との間には、ゴムのような弾力性を備えたコネクタ32,32が配置され、回路基板10の関連端子部とガラス基板41の関連端子部45,45とに圧接されて両者の間を電気的に接続し、液晶パネル40に駆動信号及び表示情報信号を与える。従って、コネクタ32,32及び液晶パネル40は、圧電式加速度センサ60に対するノイズ発生源になる虞れがあるから、圧電式加速度センサ60の出力側端子62がこれらのノイズ源に過度に近接するのを避けることが好ましい。この電子歩数計1では、圧電式加速度センサ60は、図1及び図2からわかるように、出力側端子62がアース側端子61よりも回路基板10の中央側に位置するように配置され、出力側端子62が近接するコネクタ32Aから十分に遠ざけられる。
【0058】
金属板50は、例えば、厚さが0.15〜0.2mm程度のSUS板からなり、弾力性導電端子51によって液晶パネル40の奥側の偏光板44の背面に押付けられている。弾力性導電端子51は、一端が回路基板10の表面12上にあるアースパターン(図示せず)に押付けられ、他端が金属板50の背面に押付けられて、金属板50を機械的に固定すると共に該金属板50を電気的にアース電位に保つ。なお、この例では、図1からわかるように、弾力性導電端子51は、横に曲がったり倒れたりしないように、パネル枠20のうち中央部に形成された筒状突起部33の中央孔に遊嵌されている。図1では、このような筒状突起部33及び弾力性導電端子51が一組だけ示されているけれども、スペースが確保される場合には、筒状突起部33及び弾力性導電端子51が複数組設けられてもよい。
【0059】
金属板50は、液晶パネル40の実際上全範囲に重なる大きさ及び形状を有し、液晶パネル40に対して静置されている。従って、歩行信号と同様な繰返し周波数成分を備えたデジタル信号等が液晶パネル40に出入りしたり液晶パネル40内を流れても、当該信号に伴うノイズは嵩のある金属板50で遮蔽され得るので、液晶パネル40への入出力信号や該液晶パネル40内を流れる信号が、圧電式加速度センサ60の出力信号に対するノイズになる虞れが少ない。なお、金属板50は、圧電式加速度センサ60の出力側端子62の領域を液晶パネル40のうち該端子62に比較的近接する領域から遮蔽するに十分な範囲で拡がっているだけであってもよいけれども、液晶パネル40から圧電式加速度センサ60へのノイズの侵入を確実に防ぎ且つ液晶パネル40からCPU等の他の回路部品へのノイズの侵入を避けるためには、金属板50が液晶パネル40と同様な範囲で拡がっていることが好ましい。但し、他の回路部品へのノイズの侵入が実際上問題にならない場合には、回路基板10への実装状態において圧電式加速度センサ60よりも高さの高い回路部品(図1に示した例でいえばCPU)の領域において金属板50を切欠いたり金属板50に開口を設けておいて、金属板50と圧電式加速度センサ60との厚さ方向の間隔をより短くしてもよい。また、所望ならば、金属板50を設ける代わりに、回路基板10に固定される断面U字状の金属体で圧電式加速度センサ60を囲ってもよい。
【0060】
パネル枠30は、筒状突起部33以外にも、該突起部33と同じ高さの突起部34を備える。この場合、衝撃等によって金属板50が動いた場合でも、金属板50が圧電式加速度センサ60に過度に近接して金属板50による遮蔽(例えば容量性結合の抑制ないし変位電流の侵入の抑制等)が不十分になるのを突起部33,34の頂面(図1では下面)で防ぎ得る。例えば、金属板50が過度に近接した場合、静電誘導等により圧電式加速度センサ60の出力端子がノイズの影響を受ける虞れもあり得る。筒状突起部33が複数ある場合、突起部34はなくてもよい。
【0061】
なお、仮に、液晶パネル40等から光その他の放射があるような場合であっても、金属板50は、そのようなノイズの侵入も最低限に抑え得る。また、液晶パネル40が反射型液晶パネルである場合や、液晶パネル40と金属板50との間にELパネルのようなバックライトがある場合、金属板50のうち液晶パネル側の表面が反射面としても働き得る。更に、液晶パネル40と金属板50との間にELパネルのようなバックライトがあるときは、場合によっては、金属板50がELパネル等のアース電位を与えるのにも利用され得る。
【0062】
以上の如く構成された電子歩数計1において、圧電式加速度センサ60が歩行を検出すると、センサ60の出力端子62からの出力信号は、フィルタ回路CF及び増幅回路CAを介してデータ処理用集積回路CPUに与えられて歩行データ処理が行われ得る。また、導電パターンP1や金属板50が圧電式加速度センサ60の出力端子62に各種のノイズが入るのを最低限に抑えるので、実際上、センサ60の出力端子62からの歩行信号だけが、正確に、歩行データ処理に用いられ得る。
【0063】
以上においては、説明した一実施例の腕装着型電子歩数計1は、本発明の範囲内で、次に列記するように種々に変形され得る。
【0064】
(1)上記一実施例においては、電池22の正極27がアース側端子になる(アース側端子と同電位になるように電気的に接続した)例について説明したけれども、電池の負極26をアース側端子にしてもよい。
【0065】
(2)また、安定な電位を与えるための広い導体パターンP1や金属板50のうちのいずれか一方を電池22の正極27及び負極26のうちのいずれか一方に電気的に接続してこれと同電位とし、導電パターンP1及び金属板50のうちの他方を正極27及び負極26のうちの他方と電気的に接続してこれと同電位にしてもよい。
【0066】
(3)更に、上記一実施例においては、圧電式加速度センサ60の一対の出力端子61,62のうち信号出力端子62とは異なる端子61がアース電位に設定されている例について説明したけれども、上記一実施例や上記(1)や(2)で説明したような各種変形例において、圧電式加速度センサ60の基準側端子61は、アース電位である代わりに電池の正極27若しくは負極26のような大きな金属体と同電位であっても、電池の正極27若しくは負極26のような大きな金属体に対して確実に一定の電位に設定され得る限り、該正極27及び負極26とは異なる電位(該正極27又は負極26に対して一定の電位)に設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による好ましい一実施例の腕装着型電子歩数計の本体部の縦断面説明図。
【図2】図1の腕装着型歩数計の本体部についてのII-II線断面(回路基板のガラス側導電(配線)パターンに沿った断面)説明図(但し、パネル枠は外周部分のみを示し、コネクタは省略し、且つ断面になる部分が導体パターン等になることからハッチングは付していない)。
【図3】図1の腕装着型電子歩数計の外観の一例を示した平面説明図。
【図4】図1の腕装着型電子歩数計の関連機能の概略を示したブロック図。
【図5】従来の腕装着型電子歩数計の本体部についての裏蓋側から見た平面説明図。
【図6】図5の腕装着型電子歩数計の本体部についての図1と同様な縦断面説明図。
【図7】図5の腕装着型電子歩数計の一部についての拡大断面説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 圧電式電子歩数計
2 ケース
3 電子歩数計本体
4 裏蓋
5 ガラス
10 回路基板
11 裏蓋側表面(一方の主面)
12 表示パネル側表面(他方の主面)
20 電池枠
21 電池収容凹部
22 電池
23 底壁部
24 開口部
25 負極側端子
26 負極
27 正極
30 パネル枠
31 パネル保持用(係止用)突起部
32,32A コネクタ
33 筒状突起部
34 突起部
40 液晶パネル
41,42 ガラス基板
43,44 偏光板
50 金属板(板状導電体)
51 弾性導電体
60 圧電式加速度センサ
61 アース側端子
62 出力側端子
A 最大感度軸(最大感度方向)
B,B1,B2 バンド
CA 増幅回路(増幅手段)
CD 表示手段
CF フィルタ回路(フィルタ手段)
CI 入力手段
CPU デジタルデータ処理部
D,D1,D2 表示領域
P,P1 導電パターン
Q,Q1,Q11,Q12,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7 導電パターン
S,S1,S2,S3,S4,S5,S6 押しボタンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行を感知するための圧電式加速度センサを備えた腕装着型電子歩数計であって、
該電子歩数計の厚さ方向の中間部において該厚さ方向に対して垂直に拡がった回路基板と、
該回路基板の一方の主面側に配置された電池と、
前記回路基板の他方の主面側で且つ厚さ方向に見て前記電池と少なくとも部分的に重なり合う領域において、該回路基板に実装された前記圧電式加速度センサと、
前記厚さ方向に見て、前記回路基板の前記一方の主面側の表面のうち前記圧電式加速度センサと重なり合う領域に形成された導電パターンと
を有する腕装着型電子歩数計。
【請求項2】
前記圧電式加速度センサの一対の出力端子のうちの基準電位側でない方の出力端子を含む部分が前記厚さ方向に見て前記電池と重なり合う位置に前記圧電式加速度センサが配置されている請求項1に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項3】
前記導電パターンが、前記電池の正極又は負極につながるように構成された請求項1又は2に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項4】
前記圧電式加速度センサはその最大感度軸が所定の方向に一致するように且つ該加速度センサの長手方向が該加速度センサの配設位置における前記回路基板の周方向よりも径方向に近い方向に向いた状態で、該回路基板に実装されている請求項1から3までのいずれか一つの項に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項5】
前記回路基板の前記他方の主面側で且つ該回路基板から間隔をおいたところに表示パネルが配置され、該回路基板と該表示パネルとの間に、板状導電体が配置されている請求項1から4までのいずれか一つの項に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項6】
前記表示パネルが液晶表示パネルを含む請求項5に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項7】
前記板状導電体を一定の電位に保つべく前記回路基板上の導電パターンのうち電池の正極又は負極に接続された導電パターンと該板状導電体との間に配置された弾性導電端子を備える請求項5又は6に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項8】
前記表示パネルがEL(エレクトロルミネセンス)パネルを含み、前記板状導電体が該ELパネルのアース電極になっている請求項7に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項9】
前記圧電式加速度センサと前記板状導電体との間隔を一定に保つスペーサを備える請求項5から8までのいずれか一つの項に記載の腕装着型電子歩数計。
【請求項10】
前記回路基板に実装された他の回路部品の入出力信号配線パターンが、前記圧電式加速度センサを迂回するように該回路基板に形成されている請求項1から9までのいずれか一つの項に記載の腕装着型電子歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−33467(P2008−33467A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204110(P2006−204110)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】