説明

自動二輪車

【課題】本発明は、ドライブシャフトが、ピボット軸と後輪車軸とを結ぶ線の下側に配置されている自動二輪車において、スイングアームに、容易に所定の剛性をもたせることができ、併せて、外観性を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】自動二輪車10は、車体フレーム11にピボット軸27を介して揺動自在に設けられるスイングアーム28と、このスイングアーム28に軸支されるドライブシャフト32とを備えており、ドライブシャフトの中心軸32Jは、ピボット軸27と後輪車軸40とを結ぶ線28Cの下側に配置され、スイングアーム28は、ドライブシャフト32を囲うように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシャフトを備えている自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから後輪へ駆動力を伝達するドライブシャフトを備えている自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−91123公報(図2)
【0003】
特許文献1の図2において、ドライブシャフト41(符号は同公報のものを流用する。以下同じ。)は、ピボット軸28の下方で、且つ、リヤスイングアーム31の下方に配置されている。かかる構造によれば、リヤスイングアーム31は、ピボット軸28の長さを十分に確保して両側から締め付けられるため、ピボット軸28の締結剛性を容易に確保することができる。
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、リヤスイングアーム31本体の上下幅が小さくなる部位が生ずるため、剛性確保のための制約が生じ、所定の剛性を確保し難くなるという課題がある。加えて、ドライブシャフト41の一部が露出するため、車両の外観性に改良の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ドライブシャフトが、ピボット軸と後輪のアクスル軸とを結ぶ線の下側に配置されている自動二輪車において、スイングアームに、容易に所定の剛性をもたせることができ、併せて、外観性を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームと、この車体フレームに懸架されるエンジンと、前記車体フレームの後部に設けたピボット軸と、このピボット軸から後方に延設され後輪を揺動自在に支持するスイングアームと、エンジンと後輪の間に設けエンジンから後輪へ駆動力を伝達するドライブシャフトと、を備える自動二輪車において、ドライブシャフトの中心軸は、車体を側方から見たときに、ピボット軸と後輪のアクスル軸とを結ぶ線の下側に配置され、スイングアームは、ドライブシャフトを囲うように設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、スイングアームは、前部に、仕切部材で仕切られた上部空間と下部空間とを有し、この下部空間に、ドライブシャフトが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、スイングアームは、前端の下部に切欠部が設けられ、この切欠部は、カバー部材で塞がれ、このカバー部材でドライブシャフトの前部を覆うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、ドライブシャフトの中心軸は、車体を側方から見たときに、ピボット軸と後輪のアクスル軸とを結ぶ線の下側に配置され、スイングアームは、ドライブシャフトを囲うように設けられている。
【0010】
かかる構造であれば、ピボット軸は、その長さを十分に確保して両側から締め付けられるため、ピボット軸の締結剛性を容易に確保しつつ、スイングアームの上下幅を十分に確保してスイングアームの剛性も向上させ、且つ、ドライブシャフトを露出させないようにして外観性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、スイングアームは、前部に、仕切部材で仕切られた上部空間と下部空間とを有し、この下部空間に、ドライブシャフトが設けられている。
スイングアームには、前部に、仕切部材が設けられているので、ピボット軸の周辺の剛性を高めることができる。加えて、スイングアームの捩り中心を、高さ方向でピボット軸寄りに近づけることができる。スイングアームの捩り中心が、ピボット軸寄りに近づけられれば、スイングアームの重量増加が抑えられ、適切な捩り特性が得られる。
【0012】
請求項3に係る発明では、スイングアームは、前端の下部が切欠かれており、スイングアームのピボット軸下側の剛性を低下させるようにした。スイングアームのピボット軸下側の剛性を低下させることで、スイングアームの捩り中心を、高さ方向で前記ピボット軸寄りに一層近づけることができる。この場合に、切欠部は、カバー部材で塞がれ、このカバー部材でドライブシャフトの前部を覆うようにしたので、ドライブシャフトが露出せず、車両の外観性が低下する心配はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各々車両に着座した乗員から見た方向である。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0014】
図1は本発明に係る車両の左側面図であり、車両としての自動二輪車10には、車体フレーム11が備えられている。
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延出されエンジン13を支持するメインフレーム14と、このメインフレーム14の後端上部から後方に延ばし乗員シート15を支持し、バッテリ16などの電装部品などを取り付け、且つ、リヤフェンダ17を含む車体後部18を支持するリヤフレーム19と、からなる。
なお、メインフレーム14には、このメインフレーム14の後端部に設けられスイングアーム28を支持するピボットプレート22を含む。
【0015】
ピボットプレート22には、ピボット軸27が設けられ、このピボット軸27から後方にリヤスイングアーム28(スイングアーム28)が延ばされ、このスイングアーム28とメインフレーム14の間に衝撃を吸収するリヤクッションユニット29が設けられ、スイングアーム28の先端部に、後輪31が取り付けられている。後輪31は、エンジン13と後輪31との間をつなぐドライブシャフト32によって駆動される。
【0016】
ヘッドパイプ12には、フロントフォーク24が設けられており、このフロントフォーク24の下端部に前輪25が取り付けられ、フロントフォーク24の上端部に前輪25を操舵する操舵ハンドル26が設けられている。
【0017】
メインフレーム14には、エンジン13(V型4気筒エンジン13)が搭載されている。エンジン13は、第1〜第4支持点30a〜30dを介してメインフレーム14に支持されている。第1〜第4支持点30a〜30dは、車幅方向水平に設けられ、車両の前から後へこの順に配置されている。これらの支持点のうち、第3〜第4支持点30c〜30dは、ピボットプレート22に設けられている。つまり、エンジン13は、メインフレーム14およびピボットプレート22によって懸架されている。
【0018】
V型4気筒エンジン13は、クランクケース37と、このクランクケース37に設けたクランクシャフト34を中心に斜め前上方に延びている前シリンダ35と、クランクシャフト34を中心に斜め後上方に延びている後シリンダ36とをV字状に配置した形態をもつ。そして、このV型4気筒エンジン13は、車両を側面から見たときに、エンジン13の上部を構成する前シリンダ35および後シリンダ36にメインフレーム14が重なり、エンジン13の後部を構成するクランクケース37にピボットプレート22の一部が重なるように懸架されている。
【0019】
V型4気筒エンジン13には、排気装置33が備えられている。
排気装置33は、各シリンダ35、35、36、36から延びている排気管41a〜41dと、これらの排気管41a〜41dが集合され排気ガスの浄化を行う触媒管45と、この触媒管45から延びている全体集合管46と、この全体集合管46に連結される消音器47と、から構成されている。
【0020】
図中、51はエンジン13を冷却するラジエータユニット、52L、52R(手前側の符号52Lのみ示す。以下同じ。)はフロントフォークに設けたフロントデイスクブレーキキャリパ、53L、53R(手前側の符号53Lのみ示す。以下同じ。)は前輪25に設けフロントデイスクブレーキキャリパ52L、52Rによって挟持されるフロントデイスクプレート、54は操舵ハンドルに設けたフロントマスタシリンダ、56はメインフレーム14に取り付けた燃料タンクを覆い後述するカウル部70を兼ねる燃料タンクカバー、57L、57R(手前側の符号57Lのみ示す。以下同じ。)はメインフレーム14に取り付けた運転者用ステップ、58L、58R(手前側の符号58Lのみ示す。以下同じ。)はリヤフレーム19に取り付けた同乗者用ステップ、59はヘッドライト、60はフロントフェンダ、61L、61R(手前側の符号61Lのみ示す。以下同じ。)はミラー、62はリヤデイスクブレーキキャリパ、63は後輪31に設けリヤデイスクブレーキキャリパ62によって挟持されるリヤデイスクプレート、65はメインスタンドである。
【0021】
以下、自動二輪車10の主に外観部を構成するカウル部70について説明を行う。
カウル部70には、ヘッドパイプ12から延ばし後述するカウルステー71を介して車体フレーム11の前方を覆うフロントカウル部72と、このフロントカウル部72に連続して設け車両の側方を覆うサイドカウル部73と、エンジン13の下方に設けるアンダカウル74と、が備えられており、風よけや車両の外観性を高めることなどを目的とする。
【0022】
フロントカウル部72は、ヘッドライト59の上方を覆うアッパセンタカウル76と、このアッパセンタカウル76の上方に延びているウインドスクリーン77と、メインフレーム14の側方を覆うミドルカウル78L、78R(図手前側の符号78Lのみ示す。以下同じ。)が取り付けられウインドスクリーン77の左右を支持するフロントアッパサイドカウル79L、79R(図手前側の符号79Lのみ示す。以下同じ。)の一部とを含む。
【0023】
サイドカウル部73は、ウインドスクリーン77の左右を支持するフロントアッパサイドカウル79L、79Rと、ヘッドパイプ12およびメインフレーム14の側方を覆うミドルカウル78L、78Rと、燃料タンクカバー56の下方を覆い運転中に運転者Rの脚部Rfによって挟まれるニーカバー81L、81R(図手前側の符号81Lのみ示す。以下同じ。)と、これらのニーカバー81L、81Rの下方に設けられメインフレーム14の構成要素であるピボットプレート22L、22R(図手前側の符号22Lのみ示す。以下同じ。)の外側面を覆うピボットプレートカバー82L、82Rとを含む。
【0024】
車両の後部構造について補足すると、ピボットプレート22には、ピボット軸27を介して揺動自在に支持されるスイングアーム28が設けられ、このスイングアーム28の後部には、内部に後輪車軸40を有するギヤボックス124が設けられ、このギヤボックス124をスイングアーム28に締め付ける締付部125が設けられ、この締付部125には、ギヤボックス124の外側面を側方から覆うギヤボックスカバー126が設けられている。
【0025】
締付部125には、スイングアーム28側に設けられているフランジ部131と、このフランジ部131に取り付けられスイングアーム28からギヤボックス124にねじ込まれリヤスイングアーム28とギヤボックス124との間を固定する締結部材132・・・と、が備えられている。
なお、スイングアーム28には、内部にドライブシャフト32が配置されている。
【0026】
図2は本発明に係る自動二輪車の要部側面図、図3は本発明に係る自動二輪車の要部断面図である。以下、図2〜3を参照して説明を行う。
車両としての自動二輪車10は、ピボットプレート22に設けられるピボット軸27と、このピボット軸27に揺動自在に設けられるスイングアーム28と、このスイングアーム28の後部に後輪車軸40を介して回転可能に軸支される後輪31と、スイングアーム28と車体フレーム11との間に介在されるリヤクッション29(リヤクッションユニット29)とを備える。
【0027】
後輪駆動機構110は、エンジン(図1の符号13)からの出力軸としての第1ドライブシャフト111に連結して駆動力を伝達する自在継手113と、この自在継手113の後端113bに連結されてエンジン13の駆動力を伝達する第2ドライブシャフト112と、この第2ドライブシャフト112の後端112bに取り付け第2ドライブシャフト112の軸長を変更可能にする軸長可変機構115と、この軸長可変機構115に連結されて駆動力の方向を変換して後輪車軸40に伝達するドライブギヤ117およびドリブンギヤ118と、ドライブギヤ117を支持する軸受部121a、121bと、を主要な構成要素とする。
【0028】
本実施例において、軸長可変機構115はトリポード形等速ジョイントを利用するが、これに限定されず、ボールスプラインすべり継手、クロスグルーブ形継手などでもよく、スライド機能を有する継手であればその構造には限定されない。
【0029】
すなわち、自在継手113の前後両端に連結されている第1ドライブシャフト111と第2ドライブシャフト112とをあわせたものを、ドライブシャフト32とするとき、自動二輪車10は、車体フレーム11にピボット軸27を介して揺動自在に設けられるスイングアーム28と、このスイングアーム28に軸支されるとともにエンジン13の駆動力を伝達するドライブシャフト32によって回転する駆動車輪としての後輪31とを備えており、エンジン13から後輪31へドライブシャフト32と自在継手113を介して駆動力が伝達される。
【0030】
ドライブシャフトの中心軸32Jは、車体を側方から見たときに、ピボット軸27と後輪31のアクスル軸40(後輪車軸40)とを結ぶ線28Cの下側に配置され、このピボット軸27と後輪31のアクスル軸40とを結ぶ線28Cは、スイングアーム28を前後に貫通しており、スイングアーム28は、ドライブシャフト32を囲うように設けられている。
スイングアーム28は、中空部28eを有し、前部28aに、仕切部材134で仕切られた上部空間28euと下部空間28ebとを有し、この下部空間28ebに、ドライブシャフト32が設けられている。
【0031】
スイングアーム28には、前部28aに、仕切部材134が設けられているので、ピボット軸27の周辺の剛性を高めることができる。加えて、スイングアーム28の捩り中心を、高さ方向でピボット軸27寄りに近づけることができる。スイングアーム28の捩り中心が、ピボット軸27寄りに近づけられれば、コーナリング中の後輪31の挙動特性を一般的な自動二輪車に近づけることができるため、コーナリング走行時において、適切な操縦性を維持させることができる。
【0032】
スイングアーム28は、前端28aaの下部に切欠部133が設けられ、この切欠部135は、カバー部材137で塞がれ、このカバー部材137でドライブシャフト32の前部を覆うようにした。
【0033】
スイングアーム28の後端部には、後輪車軸40およびその周辺の駆動系部品を収納するギヤボックス124が配置されている。
加えて、リヤブレーキキャリパ62(リヤデイスクブレーキキャリパ62)に連結されるブレーキホース139は、ギヤボックスカバー126で被われている。
ブレーキホース139をギヤボックスカバー126で覆い、ブレーキホース139が側方から見えなくなるようにしたので、リヤブレーキキャリパ62回りの外観性を一層高めることができる。
【0034】
スイングアーム28には、車体フレーム11から第1揺動軸141を介して後方に延ばし揺動可能に設けられる第1腕部材142と、スイングアーム28の中間部28mから第2揺動軸143を介して前方に延ばし揺動可能に設けられる側面視略三角形状をもつ第2腕部材144と、この第2腕部材144の前端144aと車体フレーム11の間に介在されるリヤクッション29と、この第2腕部材144の中間部144に第1腕部材142の先端部を揺動可能に取り付ける第3揺動軸145とが設けられており、スイングアーム28にかかる振動などを吸収するようにした。148はブーツ、149a、149bはギヤボックスカバー126をスイングアーム28に取り付けるボルトである。
【0035】
スイングアーム28には、前部に、仕切部材134が設けられているので、ピボット軸27の周辺の剛性を高めることができる。加えて、スイングアーム28の捩り中心を、高さ方向でピボット軸27寄りに近づけることができる。スイングアーム28の捩り中心が、ピボット軸27寄りに近づけられれば、コーナリング中の後輪31の挙動特性を一般的な自動二輪車に近づけることができるため、コーナリング走行時において、適切な操縦性を維持させることができる。
【0036】
スイングアーム28は、前端28aaの下部が切欠かれており、この切欠きにより生じた切欠部135は、樹脂製のカバー部材137で塞がれ、このカバー部材137でドライブシャフト32の前部を覆うようにした。カバー部材137は樹脂製であるので、軽量化を図ることができる。
【0037】
スイングアーム28は、前端28aaの下部が切欠かれており、スイングアーム28のピボット軸下側の剛性を低下させるようにした。スイングアーム28のピボット軸下側の剛性を低下させることで、スイングアーム28の捩り中心を、高さ方向でピボット軸27寄りに一層近づけることができ、適切な捩り特性を設定することが可能となる。
【0038】
リヤブレーキキャリパ62に連結されるブレーキホース139は、ギヤボックスカバー126で覆われている。
ブレーキホース139をギヤボックスカバー126で覆い、ブレーキホース139が見えなくなるようにしたので、リヤブレーキキャリパ62回りの外観性を一層高めることができる。
【0039】
図4は図2の4−4線断面図であり、ドライブシャフト32を備える後輪駆動機構110は、スイングアーム28およびこのスイングアーム28の側に設けたギヤボックス124に収納されている。スイングアーム28は、後輪31の左側に延びている部材であり、後輪31を片持ちで支持する部材である。
【0040】
後輪駆動機構110には、ギヤボックス124にドリブンギヤ118を支持する後輪車軸40としてのスリーブ151が回転自在に設けられ、このスリーブ151にリヤデイスクプレート63と後輪31に含まれている後輪ハブ31hが一体的に取り付けられている。
【0041】
上記構成によって、ドリブンギヤ118に加わった駆動力は、スリーブ151、後輪ハブ31hとこの順に伝達され、後輪31を駆動させる。
本実施例において、スイングアーム28、ドライブシャフト32および後輪駆動機構110は、後輪31の左側に配置されているが、後輪31の右側に配置することは差し支えない。
【0042】
図中、152a〜152cは後輪車軸40を支持する軸受、153はシール部材、154は締結ボルト、157はスイングアーム28の前部に開け前述したカバー部材137の前部を止める締結穴、158はスイングアーム28の中間部に開け前述したカバー部材137の後部を止める締結穴、161a、161bは鋳抜き穴、162a、162bは鋳抜き穴161a、161bを塞ぐキャップである。
【0043】
図5は図2の5−5線断面図であり、ピボット軸およびその近傍の構造が示されている。ピボットプレート22には、左右に垂下させた垂下部22Lu、22Ruが設けられ、これらの垂下部22Lu、22Ruにピボット穴164L、164Rが開けられ、これらのピボット穴164L、164Rの間にピボット軸27を掛け渡し、このピボット軸27にスイングアーム28が回動可能に設けられている。
【0044】
図3を併せて参照して、スイングアーム28は、前端28aaの下部が切欠かれており、この切欠きにより生じた切欠部135には、筒状のカバー部材137が設けられ、このカバー部材137でドライブシャフト32の前部32aを覆っている。
【0045】
すなわち、スイングアーム28は、前端28aaの下部を切欠くことで、スイングアーム28のピボット軸27下側の剛性を低下させるようにした。スイングアーム28のピボット軸27下側の剛性を低下させることで、スイングアーム28の捩り中心を、高さ方向でピボット軸27寄りに一層近づけることができる。
【0046】
図6は図2の6−6線断面図であり、スイングアーム28は、中空部28eを有し、前部に、仕切部材134で仕切られた上部空間28euと下部空間28ebとを有し、この下部空間28euに、ドライブシャフト32が設けられている。
【0047】
図3を併せて参照して、スイングアーム28には、前部28aに、仕切部材134が設けられているので、ピボット軸27の周辺の剛性を高めることができる。加えて、スイングアーム28の捩り中心を、高さ方向でピボット軸27寄りに近づけることができる。スイングアーム28の捩り中心が、ピボット軸27寄りに近づけられれば、スイングアーム28の重量増加が抑えられ、適切な捩り特性が得られる。
【0048】
図7は図2の7−7線断面図であり、図6を併せて参照し説明を行う。
図において、スイングアームの中空部28eを構成する上部空間28euと下部空間28cbとの間には、ウイングアーム28を鋳造する際に、上下の砂型を接続する接続部材としての円柱が通る穴186が形成されている。165はスイングアーム28の下面28uに開けた締結穴158にカバー部材137を締結する締結ボルトである。
【0049】
以下、車両を後方から見たときに、ピボット軸中心の高さに対するスイングアームの捩り中心高さの位置関係によって、スイングアームの捩れ特性に差が出ることを説明する。
図8はピボット軸の位置に対するスイングアームの捩り中心の位置によってコーナリング特性が変化することを説明する図であり、後輪を後方から見たものである。
【0050】
図8(a)において、ピボット軸の中心線27Xaの高さとスイングアームの捩り中心28ta高さとが一致している場合が示されており、スイングアームの捩り中心28taは、ピボット軸の中心線27Xa寄りに位置することになる。ピボット軸の位置と後輪車軸の位置とが、ほぼ一致している場合には、図に示されるように、左右のコーナリング時には、後輪31の挙動は、スイングアームの捩れ中心28taを軸に傾動することになる。
【0051】
図8(b)において、ピボット軸の中心線27Xbの高さに対し、スイングアームの捩り中心28tbが下方に位置している場合であり、後輪31の挙動は、ピボット軸の中心線27Xbから離間した位置にあるスイングアームの捩れ中心28tbを軸に傾動することになる。
【0052】
この場合に、スイングアームの捩れ中心28tbとピボット軸の中心線7Xbとは離間しているので、コーナリング時において、(a)と(b)との間には、後輪31の挙動に差が生ずることになる。つまり、スイングアームの捩れ特性は維持され、コーナリング走行時において、適切な操縦性を維持させるためには、スイングアームの捩れ中心が、(a)のように、ピボット軸寄りに近づけて設けられることが望ましい。
【0053】
図3に戻って、この点、本発明では、スイングアーム28の捩り中心は、ピボット軸27寄りに近づけて設けられているため、コーナリング走行時において、適切な操縦性を維持させることができる。
【0054】
図9は本発明に係る自動二輪車に備えられているギヤボックスカバーの構造を説明する図であり、図9(a)はギヤボックスカバーの左側面図、図9(b)は図9(a)の9(b)矢視図である。以下、図9(a)〜(b)および図2を併せて参照して説明を行う。
【0055】
ギヤボックスカバー126は、スイングアーム(図1の符号28)とギヤボックス(図1の符号124)の外形に合わせて形成され、上記2つの部材28、124の接合部(図1の符号167)およびその周辺部を覆う部材であり、接合部167などの上面を覆う上面部171と、接合部167などの側面を覆う側面部172と、接合部167などの下面を覆う下面部173とからなり、側面部172には、スイングアーム28の外面と係合する前切欠部135aと後輪車軸40の外周側部40sと係合する後切欠部135bとが備えられている。上面部171には、ギヤボックスカバー126を開閉可能にする溝部としての樹脂ヒンジ部168が形成されている。
【0056】
前切欠部135aの下方には、走行風をギヤボックスカバー126の内側に取り入れる導風部としての走行風取入部177が設けられ、この走行風取入部177の後方下端には、導風出口としての走行風出力部178が設けられ、この走行風出力部178に臨むようにリヤブレーキキャリパ62が設けられている。すなわち、リヤブレーキキャリパ62は、ギヤボックス124の下方に設けられ、導風部176は、ギヤボックスカバー126の下部に形成される。
【0057】
ギヤボックス124の周囲にリヤブレーキキャリパ62が設けられ、ギヤボックスカバー126に、前方から走行風を取り入れる走行風取入部177と、この走行風取入部177の後方に延びており走行風取入部177で取り入れた導風を後方へ導くガイド部179と、このガイド部179の後方に、且つ、リヤブレーキキャリパ62と側面視で一部が重なるように設けられ導風を出力する走行風出力部178と、からなる導風部176が形成されている。
【0058】
図10は図9の10−10線断面図である。図9を併せて参照し、ギヤボックスカバー126の取付関係について説明を行う。
側面部172の前端を構成する走行風取入部177には、ギヤボックスカバー126をスイングアーム28の下面に取り付けるギヤボックスカバー取付リブ181が内側に延び、このギヤボックスカバー取付リブ181には、下取付穴182が開けられている。
【0059】
上面部171には、ギヤボックスカバー126をスイングアーム28の上面28uに取り付ける上取付穴183が開けられている。上下の取付穴182、183を用いてギヤボックスカバー126をスイングアーム28にしっかりと取り付けるようにした。
【0060】
走行風取入部177には、ギヤボックスカバー126をスイングアーム28に取り付けるギヤボックスカバー取付リブ181が内側に延びている。
このリブ181は、ギヤボックス124への取付機能を有する。この取付機能の他、ギヤボックスカバー126を補強する機能を有するので、ギヤボックスカバー126の剛性を高めることができる。ギヤボックスカバー126の剛性が高められれば、導風部176が風圧などによって、振動したり変形したりする心配はない。ギヤボックスカバー126に変形などが生じ難くなれば、走行風取入部177を大きく確保することができる。
【0061】
なお、本実施例において、ギヤボックスカバー126の取付先は、スイングアーム28であるが、ギヤボックス124でも差し支えないものとする。
この他、上面部171の樹脂ヒンジ部168の内側には、別の取付穴184が開けられており、この別の取付穴184を、ギヤボックス124を含む固定側に開けた穴に位置あわせを行い、締結部材で固定側に締結するようにした。
【0062】
かかる構成であれば、上下の取付穴182、183から締結部材を取り外した後は、ギヤボックスカバー126を完全に取り外すことなく、樹脂ヒンジ部168に中心として側面部172を上方に回動させることで、接合部167を露出させることができるようになる。ギヤボックスカバー126が完全に取り外されないため、ギヤボックスカバー126が紛失する心配はなく、メンテナンスを容易に行える。
【0063】
以上に述べた自動二輪車の作用を次に述べる。
図3に戻って、本発明に係る自動二輪車10では、ドライブシャフトの中心軸32Jは、車体を側方から見たときに、ピボット軸27と後輪のアクスル軸40とを結ぶ線の下側に配置され、スイングアーム28は、ドライブシャフト32を囲うように設けられている。
【0064】
かかる構造であれば、ピボット軸27の締結剛性を容易に確保しつつ、スイングアーム28の上下幅を十分に確保してスイングアーム28の剛性も向上させ、且つ、ドライブシャフト32を露出させないようにして外観性を向上させることができる。
【0065】
図11は本発明に係る自動二輪車の作用説明図であり、走行風は、走行風取入部177から、図矢印aのように、ギヤボックスカバー126の内側に入り、ガイド部179で走行風取入部177で取り入れた導風を後方へ導き、このガイド部179の後方に設けられ導風を出力する走行風出力部178と、からなる導風部176を流れる。
このようなギヤボックスカバー126であれば、車両の後部の外観性を高めるとともに、リヤブレーキキャリパ62を効果的に冷却することが可能となる。
【0066】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ドライブシャフトを備えている自動二輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る車両の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の要部側面図である。
【図3】本発明に係る自動二輪車の要部断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】ピボット軸の位置に対するスイングアームの捩り中心の位置によってコーナリング特性が変化することを説明する図である。
【図9】本発明に係る自動二輪車に備えられているギヤボックスカバーの構造を説明する図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】図2の11−11線断面図および本発明に係る自動二輪車の作用説明図である。
【符号の説明】
【0069】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、13…エンジン、27…ピボット軸、28…スイングアーム、28C…ピボット軸と後輪のアクスル軸とを結ぶ線、28a…スイングアームの前部、28aa…スイングアームの前端、31…後輪、32…ドライブシャフト、32a…ドライブシャフトの前部、32J…ドライブシャフトの中心軸、134…仕切部材、135…切欠部、137…カバー部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、この車体フレームに懸架されるエンジンと、前記車体フレームの後部に設けたピボット軸と、このピボット軸から後方に延設され後輪を揺動自在に支持するスイングアームと、前記エンジンと前記後輪の間に設け前記エンジンから前記後輪へ駆動力を伝達するドライブシャフトと、を備える自動二輪車において、
前記ドライブシャフトの中心軸は、車体を側方から見たときに、前記ピボット軸と前記後輪のアクスル軸とを結ぶ線の下側に配置され、
前記スイングアームは、前記ドライブシャフトを囲うように設けられていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記スイングアームは、前部に、仕切部材で仕切られた上部空間と下部空間とを有し、この下部空間に、前記ドライブシャフトが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記スイングアームは、前端の下部に切欠部が設けられ、この切欠部は、カバー部材で塞がれ、このカバー部材で前記ドライブシャフトの前部を覆うようにしたことを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−42736(P2010−42736A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207286(P2008−207286)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】