説明

自動洗浄装置

【課題】 配管内部の尿石付着等を防止することができる最適な洗浄水の供給を行う自動洗浄装置を提供する。
【解決手段】
便器内部へ洗浄水を供給するバルブと、使用者の尿流を検知する検知手段からの検知信号に基づきバルブの開閉制御を行う制御部とを備えた自動洗浄装置において、前記制御部は、検知手段によって検知された使用者の尿量に応じて洗浄水量を決定するものであり、且つ以前からの積算尿量が任意の閾値に達した際に、通常とは異なる洗浄水量で洗浄する設備保護洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知手段からの検知信号に基づき便器洗浄を行う自動洗浄装置において、尿流検知により検知信号を導出し、検出された尿流信号に基づいて設備保護洗浄を行う自動洗浄装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、検知手段によって使用者の有無を判定し、検知手段からの出力信号に基づいて便器洗浄のための洗浄水供給を行う自動洗浄装置が知られている。一般的には、使用者が自動洗浄装置の前にいることを判定して便器洗浄を行うものであり、検知手段には光の投受光によって使用者の存在を確認する光電センサが使用されていた。
【0003】
上記のような自動洗浄装置は、尿石等による配管詰まりを防止するために、洗浄目的とは別に配管詰まり防止のための洗浄を行うものがあった。配管詰まり防止のための洗浄としては、使用者の使用時間を計測して累積時間が設定した時間を超えた場合に通常の洗浄時間よりも長い洗浄時間で洗浄水を便器内部に供給するものがある(例えば特許文献1参照)。参照文献1では、毎回の使用者に対して少ない洗浄水量での洗浄を行い、累積時間が設定した時間を超えた場合に通常洗浄時間よりも長い時間で洗浄を行うような設定となっている。また、使用間隔が長くなった場合に、通常時間よりも長い洗浄時間での洗浄を行うような設定となっている。
【特許文献1】特開平8−128094
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光電センサのように使用者の存在を検知して使用時間を累積し、その累積時間に対して配管詰まりを防止するための洗浄水供給を行うと、使用者が便器正面に立っている時間が長く、使用時間に対して尿量が少ない場合においても同量の洗浄水を供給してしまうため洗浄水を多く使用してしまう可能性がある。また、使用時間が短く尿量が多い場合においては、累積使用時間で判定を行うと尿を十分に洗浄することができない洗浄時間での洗浄になってしまう可能性がある。更に、毎回の洗浄時間が短いため尿を十分に洗浄できていない状態で使用間隔が長くなると、尿石等の付着する可能性が高くなり、次回使用時に通常洗浄時間よりも長い洗浄時間で洗浄を行ったとしても、尿石等の付着を完全に防止することができる可能性は低い。
そこで、本発明は、配管内部の尿石付着等を防止することができる最適な洗浄水の供給を行う自動洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、便器内部へ洗浄水を供給するバルブと、使用者の尿流を検知する検知手段からの検知信号に基づきバルブの開閉制御を行う制御部とを備えた自動洗浄装置であって、前記制御部は、検知手段によって検知された使用者の尿量に応じて通常洗浄の洗浄水量を決定するものであり、且つ積算尿量が任意の設定値に達した際に、設備保護洗浄を行うことをを特徴とする
【0006】
ここで、前記設備保護洗浄とは、通常行う使用者の尿を洗浄するための通常洗浄とは異なり、配管等に滞留する可能性のある尿が配管内部に滞留することを防止するための洗浄である。上記設備保護洗浄は、通常洗浄とは異なる洗浄水量で設定されるものであり、洗浄水量は設備保護洗浄を行う時点での積算尿量によって決定される。また、通常洗浄の洗浄水量以上の洗浄水を供給するように設定することで、滞留する尿を確実に洗浄することが可能となる。
また、通常洗浄とは、使用者が自動洗浄装置を通常通り使用する際に行う洗浄であり、検知手段から得られえた使用者の尿流時間、すなわち使用者の尿量で洗浄水量を決定するもので、使用者の使用状況、例えば、便器前の滞在時間等に左右されること無く、尿を洗浄するための最適な洗浄水量を供給することが可能となる。
【0007】
かかる構成により、検知手段は尿流を検知して洗浄水量を決定するため、洗浄に必要な最適な流量での洗浄が可能である。また、検知手段は尿流を検知するため、尿流を検知した時間を収集可能であり、収集された尿流検知時間によって設備保護洗浄を行うことによって、配管内部に残留する可能性がある尿が配管内部に付着する量に達すると推測される前に洗浄水を供給して、配管内部への付着を防止することが可能となる。
また、人体の存在時間に対して洗浄水量を決定するのではなく、検知された尿流時間、すなわち尿量で洗浄水量を決定するため、便器使用者の使用状況、例えば、便器前の滞在時間、尿の流速等に左右されることなく、最適な洗浄水量を供給することが可能となる。
【0008】
また、請求項2記載のように、前記設備保護洗浄は、使用者の尿流により尿量の積算量が任意の設定値に達した場合に、使用者の尿量に対しての通常洗浄の代わりに行われることを特徴とする。
【0009】
ここで、従来の設備保護洗浄は、通常洗浄以外に、別途設備保護洗浄を行うものもある。この場合には、使用者が使用していない場合に洗浄を行うため、通常洗浄とは別に洗浄水が必要になり、且つ使用者からは誤洗浄しているとも受け取られる。
【0010】
かかる構成により、設備保護洗浄を通常洗浄の代わりに行うことにより、別途通常洗浄を行うことなく、且つ使用者に対して誤洗浄という意識を持たせることなく洗浄を行うことが可能となる。また、通常洗浄とは異なる洗浄水量で洗浄を行うために、使用者からの尿を洗浄することができると共に、配管内部への尿の滞留を防止することができる洗浄も可能となる。
【0011】
また、請求項3記載のように、前記設定値の値に基づいて、前記設備保護洗浄の洗浄水量を決定することを特徴とする。
【0012】
設備保護洗浄は、設置場所によって異なる制御方法を行うのが望ましい。特に使用者数によっては、配管内部に残留する尿量は異なると考えられる。本発明の自動洗浄装置は、使用者の尿流を検知してその尿量によって設備保護洗浄の洗浄水量を制御している。そのため、設備保護洗浄の洗浄水量の制御に使用する尿量に応じた設定値を変動することにより、自動洗浄装置の設置場所に応じた最適な設備保護洗浄が可能となる。
【0013】
かかる構成により、自動洗浄装置の設定値を変動させることにより、設備保護洗浄の洗浄水量は変動するため、設置場所に応じた最適な設備保護洗浄を行うことが可能となる。また、節水を目的として使用する際には、設定値の値を大きくすることにより、設備保護洗浄の回数をある程度減らすことが可能となり、且つ設備保護洗浄を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項4記載のように、便器内部へ洗浄水を供給するバルブと、使用者の尿流を検知する検知手段からの検知信号に基づきバルブの開閉制御を行う制御部とを備えた自動洗浄装置であって、前記制御部は、検知手段によって検知された使用者の尿量に応じて通常洗浄の洗浄水量を決定するものであり、且つ使用者の積算使用回数が任意の設定回数に達した場合に、積算尿量に応じて設備保護洗浄を行うことを特徴とする。
【0015】
自動洗浄装置の設置場所によっては、使用者数は多く、検知する尿量が少ないという場合も存在する。その際、尿量を設備保護洗浄のON/OFF制御のトリガーとして使用した場合に、設備保護洗浄の間隔が長くなってしまい、尿石の付着等の原因になる可能性は少なくない。しかし、使用時間で制御すると尿量に対して多い洗浄水量で洗浄を行う可能性があるため、設備保護洗浄における最適な洗浄水量を供給することが出来ない。
【0016】
かかる構成により、使用者の積算使用回数が任意の設定回数に達した際に、その時点での積算尿量によって設備保護洗浄の洗浄水量を決定することで、上記のような使用条件においても設備保護洗浄を一定間隔で実施できると共に、最適な洗浄水量を供給することが可能となる。
【0017】
また、請求項5記載のように、前記設備保護洗浄は、使用者により積算使用回数が満足された場合に、通常洗浄の代わりに行われることを特徴とする。
【0018】
かかる構成により、請求項2同様に設備保護洗浄を通常の洗浄の代わりに行うことにより、別途通常洗浄を行うことなく、且つ使用者に対して誤洗浄という意識を持たせることなく洗浄を行うことが可能となる。また、通常洗浄とは異なる洗浄水量で洗浄を行うために、使用者からの尿を洗浄することができると共に、配管内部への尿の滞留を防止することができる洗浄も可能となる。
【0019】
また、請求項6記載のように、請求項3記載のように、前記設定回数や積算尿量の値に基づいて、前記設備保護洗浄の洗浄水量を決定することを特徴とする。
【0020】
設備保護洗浄を行うためのトリガーとして、使用者の積算回数を使用する場合、積算回数が所定の設定回数に達した場合に、その積算尿量に応じて設備保護洗浄を行うものである。よって、自動洗浄装置の設置場所に応じて設定回数を変動させて、設備保護洗浄の間隔を設定することが可能となる。
【0021】
かかる構成により、自動洗浄装置の設置場所によって設定回数を変動させることにより、設定回数の変動に伴う積算尿量の値も変動するため、設備保護洗浄の洗浄水量を容易に変化させることが可能となる。例えば、使用者が多い場所においては、設定回数を少なく設定することで、積算尿量の値も少なくなるため、設備保護洗浄の洗浄水量も少なくすることが可能となり、頻繁に設備保護洗浄を行うことを回避することも可能となる。
【0022】
また、積算尿量の値に対する設備保護洗浄の値を変動させることにより、少ない回数においても設備保護洗浄の洗浄水量を多くするということも可能となる。例えば、使用頻度の少ない場所においては、使用する間隔が長いため、尿が配管内に滞留する可能性も高くなる。そのため、少ない回数で設備保護洗浄を実施し、且つ設備保護洗浄の洗浄水量を多く設定することで、確実に尿の滞留を防止することが可能となる。
【0023】
また、請求項7記載のように、前記設備保護洗浄が実施された直後、積算尿量又は積算使用回数はリセットされることを特徴とする。
【0024】
上記設備保護洗浄は、通常洗浄の代わりに行われるため、設備保護洗浄を実施した直後に新たな使用者が便器を使用する場合も考えられる。そのため、設備保護洗浄の直後に積算尿量又は積算使用回数をクリアにしないと、次の使用者に対しても設備保護洗浄を行う可能性もあるため、洗浄水を必要以上に使用する可能性がある。
かかる構成により、設備保護洗浄の直後に積算尿量又は積算使用回数をリセットすることで、必要以上の設備保護洗浄を行うことが防止でき、洗浄水の無駄使いを抑制することが可能となる。
【0025】
また、請求項8記載のように、通常洗浄の洗浄水量が、前記設備保護洗浄の最小洗浄水量の場合に、積算尿量及び積算回数はリセットされることを特徴とする。
【0026】
設備保護洗浄は、配管内部の尿石付着等を防止するために通常の洗浄水量よりも多い洗浄水で洗浄を行うための機能である。設備保護洗浄の洗浄水量及び、通常洗浄の洗浄水量は尿量で決定されるものであり、非常に多い尿量に対しての通常洗浄の洗浄水量は、設備保護洗浄の洗浄水量の最小値と同等になる可能性もある。
【0027】
上記のように設備保護洗浄と同様の洗浄水量で通常洗浄を行った場合は、設備保護洗浄を行ったことと同様の効果を得ることができるため、設備保護洗浄を行ったことにしても効果の面では問題ない。
かかる構成により、通常洗浄の洗浄水量が設備保護洗浄の洗浄水量以上の洗浄水量で洗浄を行った場合には、設備保護洗浄が行われたのと同様の効果であるため、積算尿量又は積算使用回数をリセットすることで、洗浄効果を維持しつつ節水効果を得ることが可能となる。
【0028】
また、請求項9記載のように、前記検知手段は、周波数が100MHz〜100GHzの電磁波を利用した装置であることを特徴とする。
【0029】
電磁波は、導電物質以外の材質においては通過するという特性を持つ。そのため、電磁波を利用した検知装置は、陶器内部に隠蔽したり、陶器を介して検知対象物を検知することが可能である。
かかる構成により、電磁波を使用した検知手段を用いることで陶器内部に隠蔽したり、陶器を介して検知することが可能であるため、便器の外観を維持しつつ検知を行うことが可能である。また尿流検知を行うため、検知手段が使用者の目視で確認できる場所に設置すると、使用者に対して監視されているという感覚を持たれてしまうため、隠蔽することにより使用者に対して不快感を抱かせることなく検知を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、検知手段によって検知された尿流時間を設備保護洗浄の洗浄時間に適用することで、使用者の使用状況、例えば便器前の滞在時間、尿流速等による変動に依存せず、配管内部の尿石付着等を防止することができる最適な洗浄水の供給を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に本発明の自動洗浄装置を小便器に搭載した概略構成図を示す。本発明の自動洗浄装置は、小便器1内部へ洗浄水を供給するバルブ2と、使用者の尿流を検知する検知手段3からの検知信号に基づきバルブ2の開閉制御を行う制御部4とを備えた自動洗浄装置において、前記制御部4は、検知手段3によって検知された使用者の尿量に応じて洗浄水量を決定するものであり、且つ以前からの積算尿量が任意の設定値に達した際に、通常とは異なる洗浄水量で洗浄する設備保護洗浄を行うことをを特徴とするものである。
【0032】
ここで、本発明の特徴は検知手段によって使用者の尿流を検知することによって尿量を推測し、その尿量に対して通常洗浄の洗浄水量を決定し、且つ設備保護洗浄を行うものである。そのため、検知手段によって使用者の尿流を確実に検知する必要がある。本実施例では、検知手段を電波の送受信によって物体の検知を行う電波センサを用いている。電波センサは、検知する物体の速度、大きさ、距離によってセンサ出力信号が変動するものであり、本実施例では液体である尿流を検知するために、センサ出力信号の周波数と振幅値の大きさを使用するものである。ここで、電波センサによって尿流を確実にするために、センサ出力信号の振幅値が予め設定された設定値を越え、且つセンサ出力信号から得られる周波数が数十Hzから数百Hzの間の信号出ある場合のみ尿流信号であるという判断とする。これにより、小便器の近傍を通過する人体等のセンサ出力信号をキャンセルして、尿流のみの信号を抽出することが出来るため、確実に尿流すなわち尿量を検知することが可能となる。
【0033】
更に、使用者の尿流を確実に検知できるように本実施例では電波センサを小便器上部へ設置した。電波センサでは、検知物体の速度や大きさ、距離によって検知対象部との判断を行うものであり、尿流検知の場合には速度成分の検出が重要となる。電波センサは、電波センサから放射される電波の送信方向と略平行に移動する物体の速度検出は容易であるため、小便器上部に設置することによって尿流が自然落下によって床面方向に移動するところを検知することが出来るため、確実にボール部の尿流検知を行うことが可能となる。また、電波センサから放射される電波の送信方向と略垂直に尿流が放出された場合においても、背面に着尿して背面伝いで床面に流れる尿流を検知することが可能なため確実にボール部の尿流検知を行うことが可能となる。
【0034】
上記では、検知手段を小便器上部に設置する例を記載したが、他にも検知手段を背面に設置する方法もある。背面に設置した場合には、床面方向に向けて設置を行うことにより、自然落下する尿流や背面を伝う尿流を検知することが出来ると共に、小便器近傍を移動する人体を誤検知することを防止することが出来るためボール部の尿流検知精度を向上させることが可能となる。
また、床面近傍に設置することにより、小便器近傍を移動する人体の誤検知を防止することが可能となり、且つ排水溝に集まる尿流を検知することが可能となるため、尿流を確実に検知することが可能となる。検知手段の設置場所については、各々利点は異なるが、どの設置場所においてもボール部における尿流検知を精度良く行うことが可能であることは言うまでもない。
【0035】
ここで「ボール部」とは、床面、天井面、背面、側面と、前記5面によって囲まれた小便器内部の空間を総括して指す。また「床面」とは、排水口近傍の面であり、「天井面」とは、小便器が設置される床面に略平行の面で、且つ床面に対向する面である。「背面」とは、使用者と対峙する面で、且つ尿流が着尿する面である。「側面」とは、天井面及び背面と略垂直に設置され、天井面と背面に接続された面である。
【0036】
上記設置場所に検知手段を設置した場合において、尿流検知を行い、センサ出力信号から尿量を導出する。各使用者に対して導出された尿量によって、洗浄水量を決定して洗浄を行う。これにより、光電センサのように使用者が小便器直前にいる時間に対して洗浄水量が決定するものよりも最適な洗浄水量を供給することが出来るため、尿を確実に洗浄できると共に無駄水を抑制することが可能となる。
【0037】
ここで、尿流検知によって洗浄水量を設定して確実に洗浄を行うが、使用される環境においては尿が配管内部や排水口近傍に滞留してしまい、時間の経過によって尿石となって配管内部に付着する可能性がある。そこで、本発明では、積算された尿量を基に滞留した尿を洗浄するための設備保護洗浄を行うものである。
【0038】
(実施例1)
ここでは、積算された尿量が予め決定された設定値に達した際に設備保護洗浄を行う例について記載する。図2に本実施例おける設備保護洗浄のフローチャートを示す。本実施例においては、検知手段において検知開始して尿流が検知できるか否かの判定を行う(S200)。尿流が検知できると検知手段からの出力信号を基に使用者の尿量Aを導出する(S201)。導出された尿量Aは以前からの積算尿量Bに加算され(S202)、予め決定された設定値Cとの比較を行う(S203)。
ここで、自動洗浄装置は、使用率や使用状況によって配管や排水口近傍に残留する尿が異なるため、設備保護洗浄の洗浄水量を環境に応じて設定するのが望ましい。そのため、設定値Cの値を変更することによって設備保護洗浄の洗浄水量を容易に変動することが可能となっている。よって、どのような設置環境下においても最適な設備保護洗浄水量を供給することが可能となり、配管内部等の尿石付着を防止することが可能となる。
【0039】
積算尿量Bが設定値Cよりも少ない場合は、現在の使用者の尿量Aに対して洗浄水量が設定される(S204)。ここで、現在の使用者の尿量Aに対して設定された洗浄水量Yが、設定値Cに対して設定された洗浄水量Xよりも多い場合(S205)には、積算尿量Bの値をゼロにリセットして(S206)洗浄を開始する。洗浄水量Xは、通常洗浄における洗浄水量の最大値近傍に設定しており、滞留している尿を確実に洗浄するようにしている。そのため、洗浄水量Xよりも多い洗浄水量Yを用いれば、たとえ多量の尿量に対しても滞留している尿と併せて洗浄する流量を有するため、設備保護洗浄を行ったとするものである。そのため積算尿量Bをゼロにリセットして再度カウントを行うように設定している。これにより、再度設備保護洗浄を行う必要がなくなるため、無駄水の低減が出来ると共に、滞留している尿に関しても確実に洗浄することが可能となる。
【0040】
次に、設定値Cに対して積算尿量Bの値が多くなった場合には、設定値Cに対しての洗浄水量を選定して設備保護洗浄を行うようにする(S207)。その際に、現在の使用者の尿量に対して洗浄を行い、且つ再度設備保護洗浄を行うと洗浄水を多量に使用するため、ここでは設定値Cの値を積算尿量Bの値が越えた際には、設備保護洗浄の水量にて洗浄を行うものである。これにより、洗浄水の低減可能となり、且つ滞留する尿に関しても確実に洗浄することが可能となる。
また、設定値Cに対して設定された洗浄水量での洗浄を行った際には、設備保護洗浄を完了したと判断できるため、積算尿量Bの値をゼロにリセットして、再度尿量の積算を開始するものである。
【0041】
以上のフローを繰り返すことにより、検知手段で導出した尿量を基に最適な洗浄水量を供給することが可能になると共に、更に滞留する可能性がある尿も、通常洗浄の洗浄水量よりも多い洗浄水量で洗浄を行うため、配管内部に滞留する尿を確実に低減できるため尿石付着を防止でき、自動洗浄装置の設備保護を行うことが可能となる。
【0042】
(実施例2)
次に、積算使用回数が予め設定された設定値に達した際に、その時点での積算尿量に対して設備保護洗浄を行う例について記載する。
図3に本実施例おける設備保護洗浄のフローチャートを示す。本実施例においては、検知手段において検知開始して尿流が検知できるか否かの判定を行う(S300)。尿流が検知できると検知手段からの出力信号を基に使用者の尿量aを導出する(S301)。導出された尿量aは積算尿量bに加算され(S302)、積算回数nに1加算される(S303)。ここで、積算回数nと予め設定された回数である設定回数dとの比較を行う(S304)。
ここで、実施例2においては、積算尿量Bに関して予め設定された設定値Cとの比較を行うことで設備保護洗浄をするか否かの判定を行ったが、ここでは積算回数によって設備保護洗浄を行うか否かの判定を行うものである。例えば使用頻度の非常に少ない自動洗浄装置においては、滞留する尿は次の使用者が来るまでに尿石として付着する可能性があるため、設定回数dを小さく設定することにより、配管内部への尿の滞留時間を極力短くして尿石の付着を防止することが可能となる。また、使用頻度の高い自動洗浄装置に関しては、頻繁に洗浄水が供給されているために尿石が付着するまでの時間が長くなるため、設定回数dを大きくしても尿石の付着を防止することが出来ると共に洗浄水を極力少なくすることが可能となる。
設定回数dは変更可能であり、設定回数に対して積算尿量bの値に対して設備保護洗浄水量が決定するため、自動洗浄装置の設置環境に応じて変更することにより、尿石の付着を防止することが可能となる。
【0043】
次に、積算回数nが設定回数dよりも小さい場合には、現在の使用者の尿量aに対して洗浄水量が設定される(S305)。ここで、現在の使用者の尿量aに対して設定された洗浄水量yが、設定回数dに対して設定された洗浄水量xよりも多い場合(S308)には、積算回数nと積算尿量bの値をゼロにリセットして(S306、S307)洗浄を開始する。洗浄水量xは通常の洗浄における洗浄水量の最大値近傍に設定しており残留する尿を除去できる設定としている。そのため洗浄水量x以上の洗浄水量であるyを用いれば、多量の尿流を洗浄すると同時に残留する尿も併せて洗浄することが可能となり、設備保護洗浄を行ったと判断する。よって積算回数n及び積算尿量bをゼロにリセットして再度カウントを行うように設定されている。この設定により、設備保護洗浄と同等の洗浄を複数回行うことなく、残留した尿を除去することが可能となる。
【0044】
次に、設定回数dに対して積算回数nの値が多くなった場合には、その時点での積算尿量に応じた洗浄水量を選定して設備保護洗浄を行う。その際に現在の使用者に対しての通常洗浄を行った後に設備保護洗浄を行うと洗浄水を多量に使用するため、通常洗浄はキャンセルし、設備保護洗浄で2つの洗浄を実施するものである。積算尿量bに対する設備保護洗浄の洗浄水量は、通常洗浄の洗浄水量以上設定しているため、現在の使用者の尿は確実に洗浄でき、且つ滞留する尿をも洗浄することが可能となる。これにより、設備保護洗浄を行ったにも関わらず必要以上の洗浄水を使用することなく滞留する尿に関しても確実に洗浄することが可能となる。
また、積算尿量bに対して設定された洗浄水量での洗浄を行った際には、設備保護洗浄を完了したと判断できるため、積算回数n及び積算尿量bの値をゼロにリセットして、再度積算回数、積算尿量の収集を開始するものである。
【0045】
以上のフローを繰り返すことにより、検知手段で導出した尿量を基に最適な洗浄水量を供給することが可能になると共に、更に滞留する可能性がある尿も、通常の洗浄水量よりも多い洗浄水量で洗浄を行うため、配管内部に滞留する尿を確実に低減できるため尿石付着を防止でき、自動洗浄装置自身の設備保護を行うことが可能となる。
【0046】
以上までは、本発明の実施方法について記載したが、実際に設備保護洗浄を行うことによって尿石の付着を防止することができるかについて記載する。
尿石は、一般的に配管内部にある洗浄水に尿が滞留している状態で放置されることにより、細菌が増殖して配管内部にある洗浄水のpHが高くなる(図4)ことで発生すると言われている。洗浄水のpHが高くなると洗浄水中のカルシウムの溶解度が小さくなる(図5)ことでカルシウムが析出し尿石として配管内部等に付着する。
ここで、配管内部の洗浄水を定期的に入れ替えることによって、洗浄水のpHが高くなることを抑制することは可能であるが、必要以上の洗浄水を供給する必要があるため洗浄水に無駄が生じてしまう。
そのため配管内部の洗浄水中にある滞留している尿量を低減させる方法が望ましいと考えられる。洗浄水中に滞留する尿を除去するためには、使用者から放出された尿流に対して適切な洗浄水量での洗浄を行うと共に、滞留する可能性のある尿に対して更に洗浄水を供給して配管内部の尿を確実に除去することである。
本発明においては、上記の滞留する可能性のある尿を通常洗浄に加えて、更に設備保護洗浄を行うことによって滞留する尿を除去することにより、析出されるカルシウムの絶対量を削減することが出来、尿石の付着防止を行うものである。
【0047】
本発明の配管内部に滞留する尿を除去する設備保護洗浄に加えて、殺菌性のある洗浄水を供給する機能を使用することによって、析出するカルシウムの絶対量を少なくすると共に、pHを上昇させる原因となる菌の繁殖を抑制することが出来るため、尿石の発生を抑制でき、尿石の付着を防ぐことが可能となる。
【0048】
本実施例における設備保護洗浄は、通常使用される洗浄水による場合を記載しているが、設備保護洗浄の際に、上記記載のような殺菌性のある洗浄水を使用することにより更に尿石に付着を防止することが出来ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の自動洗浄装置を小便器に搭載した概略構成図
【図2】積算された尿量が予め設定された設定値に達した際に設備保護洗浄を行うフローチャート図
【図3】積算使用回数が予め設定された設定回数に達した際に、その時点での積算尿量に対して設備保護洗浄を行うフローチャート図
【図4】時間変動における残留洗浄水中の菌数及びpHの変動概略図
【図5】pH変動におけるカルシウムの溶解度変動概略図
【符号の説明】
【0050】
1…小便器
2…バルブ
3…検知手段
4…制御手段
5…給水管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内部へ洗浄水を供給するバルブと、使用者の尿流を検知する検知手段からの検知信号に基づきバルブの開閉制御を行う制御部とを備えた自動洗浄装置であって、
前記制御部は、検知手段によって検知された使用者の尿量に応じて通常洗浄の洗浄水量を決定するものであり、且つ積算尿量が任意の設定値に達した際に、設備保護洗浄を行うことをを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項2】
前記設備保護洗浄は、使用者の尿量の積算量が任意の設定値に達した場合に、通常洗浄の代わりに行われることを特徴とする請求項1記載の自動洗浄装置。
【請求項3】
前記設定値の値に基づいて、前記設備保護洗浄の洗浄水量を決定することを特徴とする請求項1から2の何れか1項に記載の自動洗浄装置。
【請求項4】
便器内部へ洗浄水を供給するバルブと、使用者の尿流を検知する検知手段からの検知信号に基づきバルブの開閉制御を行う制御部とを備えた自動洗浄装置であって、
前記制御部は、検知手段によって検知された使用者の尿量に応じて通常洗浄の洗浄水量を決定するものであり、且つ使用者の積算使用回数が任意の設定回数に達した場合に、積算尿量に応じて設備保護洗浄を行うことを特徴とする自動洗浄装置。
【請求項5】
前記設備保護洗浄は、使用者により積算使用回数が満足された場合に、通常洗浄の代わりに行われることを特徴とする請求項3記載の自動洗浄装置。
【請求項6】
前記設定回数または積算尿量の値に基づいて、前記設備保護洗浄の洗浄水量を決定することを特徴とする請求項4または5に記載の自動洗浄装置。
【請求項7】
前記設備保護洗浄が実施された直後、積算尿量はリセットされることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の自動洗浄装置。
【請求項8】
通常洗浄の洗浄水量が、前記設備保護洗浄の最小洗浄水量の場合に、積算尿量及び積算回数はリセットされることを特徴とする請求項1から7記載の何れか1項に記載の自動洗浄装置。
【請求項9】
前記検知手段は、周波数が100MHz〜100GHzの電磁波を利用した装置であることを特徴とする請求項1から8記載の何れか1項に記載の自動洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−183400(P2006−183400A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380137(P2004−380137)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】