説明

自動芝刈り機及びその制御方法

【課題】市販の芝刈り機を改造して自律走行のための学習と自動運転をさせるための制御装置及び制御プログラムを付与した自動芝刈り機及びその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の自動芝刈り機は、手動運転型の芝刈り機に自律走行のための各種装置が取り付けられて自動運転を行う自動芝刈り機であって、少なくとも位置検出手段を含む各種センサと、少なくとも走行車両の駆動系(アクセル)及び操舵系(ステアリング)を含む自動操縦のためのアクチュエータと、アクチュエータにより走行車両を目的位置に移動させるための走行制御ユニットと、走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、センサの情報を基に走行制御ユニットを制御するための各種演算処理を行う演算ユニットと、無線通信により演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動芝刈り機及びその制御方法に関し、より詳細には、一般の芝刈り機にアクチュエータや測位機器を取り付け、走行経路を学習させて自律走行を可能にした自動芝刈り機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場、公園、サッカー場等において、芝生の状態を維持するためには、定期的な芝刈りを必要とし、特にゴルフ場のような広い場所では、大きな労力や費用が掛かり、このような背景から、例えば特許文献1のような手動運転と自動運転とを選択することが可能な芝刈り機や特許文献2のような自律航法装置を有する無人芝刈り機が開示されている。
【0003】
一方、このような手動運転と自律走行による自動運転とを選択することが可能な芝刈り機は、製造数も少なくそれ故高額なためそれほど普及していない。従って、一般の市販の手動型の芝刈り機を、比較的簡易且つ安価に自律走行可能な自動芝刈り機に改造することは、コストカットや経費の柔軟な運用という側面からも望まれている。
【0004】
しかし、当初から自動運転を行うように設計された従来の手動運転と自動運転とを選択することが可能な芝刈り機の場合は、その芝刈り機に最適になるように制御回路や制御ソフトを作り込むことができるが、市販の芝刈り機にアクセルやハンドルを操作するためのアクチュエータや、位置測定及び姿勢制御のための機器を取り付けて自律走行をさせるためには、そのための工夫が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−128044号公報
【特許文献2】特開平9−37610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、市販の芝刈り機を改造して自律走行を可能にすると共に、自律走行のための学習と自動運転をさせるための制御装置及び制御プログラムを付与した自動芝刈り機及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の自動芝刈り機は、手動運転型の芝刈り機に自律走行のための各種装置が取り付けられて自動運転を行う自動芝刈り機であって、少なくとも位置検出手段を含む各種センサと、少なくとも走行車両の駆動系(アクセル)及び操舵系(ステアリング)を含む自動操縦のためのアクチュエータと、前記アクチュエータにより走行車両を目的位置に移動させるための走行制御ユニットと、走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、前記センサの情報を基に前記走行制御ユニットを制御するための各種演算処理を行う演算ユニットと、無線通信により前記演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備え、前記演算ユニットは、前記位置検出手段による位置情報及び車両のエンコーダ情報を基に走行車両の移動経路を記憶し、該記憶した位置情報及び走行情報を基に自動運転させるための学習手段と、前記自動運転の際に、前記センサにより取得する位置情報の更新間隔による遅延、及び走行車両の移動方向を決定する回頭角度の算出に要する遅延を、走行車両の平均速度、走行車両の進行方位、及び位置更新後の経過時間を基に補償して現在位置及び制御情報が伝達される位置を推定する位置予測手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記学習手段は、経路移動中の緯度、経度、及びデータ作成時刻を少なくとも含む複数の走行データを所定の間隔で記録して保存し、前記演算ユニットは、前記自動運転の際に、前記複数の走行データ地点のうちの所定範囲の走行データ地点を目的位置候補とし、走行車両の速度に応じて次の目的位置を定める。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の自動芝刈り機の制御方法は、手動運転型の芝刈り機に少なくとも位置検出手段を含む各種センサと、自動操縦のためのスロットルアクチュエータ及びステアリングアクチュエータとが取り付けられて自律走行による自動運転を行う自動芝刈り機の制御方法であって、電源投入後に車両の位置及び方位を初期化して前記各アクチュエータを初期化する原点復帰待ち段階と、前記各アクチュエータの初期化を確認後に前記スロットルアクチュエータ及び前記ステアリングアクチュエータを作動させるための原点を復帰する原点復帰済待機段階と、位置情報及び走行情報をクリアすると共に前記各アクチュエータを操舵系(ステアリング)及び駆動系(アクセル)から切り離して教示運転を行う学習段階と、予め記憶された位置情報及び走行情報を基に前記各アクチュエータの制御量を所定の値に設定して自律走行する自動運転段階と、を有し、前記自動運転段階は、前記センサにより取得する位置情報の更新間隔による遅延、及び走行車両の移動方向を決定する回頭角度の算出に要する遅延を、走行車両の平均速度、走行車両の進行方位、及び位置更新後の経過時間を基に補償して現在位置及び制御情報が伝達される位置を推定する位置予測段階を含むことを特徴とする。
【0010】
前記教示運転を行う学習段階は、車両の位置情報を更新する段階と、車両の移動方向を決定する段階と、車両の移動速度を決定する段階と、芝刈りを行うか否かを決定する段階と、緯度、経度、及びデータ作成時刻を少なくとも含む走行データを作成する段階と、を含み、前記自律走行する自動運転段階は、車両の位置情報を更新する段階と、車両の移動方向を決定する段階と、車両の移動速度を決定する段階と、芝刈りを行うか否かを決定する段階と、前記学習段階で作成された前記走行データを有する複数の目的位置を辿って経路移動する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動芝刈り機及びその制御方法によれば、手段運転型の市販の芝刈り機に各種センサと自動操縦するためのアクチュエータを取り付け、走行パターンを学習させることで移動経路に対応した自律走行を可能にして無人の自動運転を可能にすると共に、センサにより取得する現在位置の更新間隔による遅延及び走行車両の移動方向の算出に要する遅延を解消して未来位置を予測するので、比較的廉価に自動芝刈り機を導入でき、芝の維持に要する労力や経費を節減することができ、且つ正確に自動芝刈りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図である。
【図2】図1に示す自動芝刈り機を遠隔操作する基地局との通信を説明するための図である。
【図3】図1に示す自動芝刈り機の概略構成図の一例である。
【図4】図3に示す自動芝刈り機の移動パターンの処理の説明図である。
【図5】図4に示す移動パターンを処理する演算ユニットの処理の説明図である。
【図6】図5に示す移動コマンドによる車体の動きの説明図である。
【図7】図5に示す移動コマンドによるアクチュエータの動きの説明図である。
【図8】図3に示す自動芝刈り機の自動運転実現方式の説明図である。
【図9】図3に示す自動芝刈り機で使用する座標系の説明図である。
【図10】図3に示す自動芝刈り機の自動運転制御における目的位置及び目的方向に車両を移動させるための計算過程を示す説明図である。
【図11】図3に示す自動芝刈り機の制御遅延の説明図である。
【図12】図3に示す自動芝刈り機の目的位置設定の説明図である。
【図13】図3に示す自動芝刈り機の走行データ通過判定の説明図である。
【図14】図3に示す自動芝刈り機の可変走行方式での速度決定の説明図である。
【図15】図3に示す自動芝刈り機の演算ユニットの状態遷移図の一例である。
【図16】図3に示す自動芝刈り機の走行制御ユニットの状態遷移図の一例である。
【図17】図15に示す自動芝刈り機の演算ユニットの個々の動作フロー図である。
【図18】図15に示す自動芝刈り機の演算ユニットの個々の動作フロー図である。
【図19】図15に示す自動芝刈り機の演算ユニットの個々の動作フロー図である。
【図20】図16に示す自動芝刈り機の走行制御ユニットの個々の動作フロー図である。
【図21】図16に示す自動芝刈り機の走行制御ユニットの個々の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の自動芝刈り機及びその制御方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図であり、図2は、図1に示す自動芝刈り機を遠隔操作する基地局との通信を説明するための図であり、図3は、図1に示す自動芝刈り機の概略構成図の一例である。
【0015】
図1及び図3を参照すると、本実施形態の自動芝刈り機1は、カッティング部2、小エリア無線機11、GPS受信機12、GPSコンパス13、操作パネル14、障害物センサ15、RFIDリーダ16、3Dジャイロセンサ17、非常停止スイッチ18、演算ユニット21、走行制御ユニット31、ステアリングアクチュエータ32、舵角センサ33、スロットルアクチュエータ34、車速センサ35、バッテリ41、及びDC/DCコンバータ42を備える。
【0016】
カッティング部2は、刃の回転を駆動する機構部を含み(図示せず)、手動運転時の手動操作、又は自動運転時の遠隔操作により上昇又は下降し、演算ユニット21又は走行制御ユニット31により制御されて芝面に接触し、走行路面に沿って芝刈りを行う。
【0017】
小エリア無線機11は、図2に示すように、例えばゴルフ場のクラブハウス等に備えられた基地局を介して自動芝刈り機1を遠隔操作する際や、自動芝刈り機で学習した位置情報等を基地局又は基地局を介して通信ネットワークに接続されたPC(パーソナルコンピュータ)等の通信端末(図示せず)との間で通信して送受信するために用いられる。また、基地局に設けられたRTK−GPS基準局からのデータの取得を行う。
【0018】
GPS受信機12は、現在の位置情報を取得する。GPSコンパス13は、2つのアンテナ(図示せず)で受信した衛星電波の位相差を利用して方位測定を行う。GPS受信機12には、搬送波の数及び位相より基準局(RTK−GPS基準局)で誤差を求め移動局に通知することにより2.5cm以内の精密測位が可能なRTK(realtime kinematic)方式のRTK−GPS受信機を用いる。
【0019】
操作パネル14は、タッチパネル方式を採用し、操作、設定のための入力手段及びそのための表示手段を備える。タッチパネルは、自動芝刈り機1に走行経路等を学習させ自律走行を可能とするための各種情報の入出力操作を行うタッチスイッチと、その情報を表示するモニタ画面が一体になったものであり、屋外使用を考慮すると雨除けカバー等の防水・防滴構造が望ましい。
【0020】
障害物センサ15は、赤外線レーザー等を用いたレーザーセンサや超音波センサにより移動目的経路に存在する人、物、木、段差等の障害物を検知し、これにより自動芝刈り機1は、障害物が取り除かれるまで所定時間待機し、予め経路データとして記憶されている場合又は所定時間経過後に、衝突を避けるために迂回する。障害物センサ15は、その反射光又は反射波を計測することで障害物を検知して障害物までの距離を測定する。走行経路の路面の段差は、所定の角度で照射したレーザー光又は超音波の反射よりその距離を測定し、平担時との反射距離差を計測することで判断する。
【0021】
RFIDリーダ16は、要所に設けられた固定ポイントの微弱無線信号のICタグ情報を検知し、立ち入り禁止区域と判断して迂回すると共に、ポイント通過時に緯度経度データを取得して自位置の補正を行う。立ち入り禁止区域に専用ロープ等を使用し、ロープ内部に例えば50cm間隔でICタグを埋め込み、自動芝刈り機1に取り付けたRFIDアンテナでICタグの情報を読み取る。
【0022】
3D(三次元)ジャイロセンサ17は、X(水平横)、Y(水平縦)、Z(垂直)軸の角速度(ロール、ピッチ、ヨー)を検出する。3Dジャイロセンサ17には、機械式(レート)ジャイロ或いはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シリコン振動子リングを用いた振動式ジャイロ等の小型の高精度角速度検出が可能なものを使用し、角度情報を基に車体の向きや傾きを感知して位置補正に使用する。角速度を積分することでその角度を算出することができる。3Dジャイロセンサ17は、衝撃感知センサとして用いることもできる。3Dジャイロセンサ17の機能を補間するために、ホール素子等を用いた多軸の地磁気センサ(電子コンパス)、MEMS等を用いた半導体式の多軸加速度センサ等を併用するようにしても良い。
【0023】
非常停止スイッチ18は、手動操作で危険を察知した場合などの緊急時に車両を停止させるために用いる。
【0024】
演算ユニット21には、小エリア無線機11、GPS受信機12、GPSコンパス13、操作パネル14、障害物センサ15、RFIDリーダ16、3Dジャイロセンサ17、非常停止スイッチ18の他、各種設定のための応答、警告、注意喚起等に用いるモニタランプやアラームが接続され(図示せず)、これらと情報の授受を行う。演算ユニット21は、GPS受信機12からの位置情報、GPSコンパス13からの方位、3Dジャイロセンサ17からの補正情報や、走行制御ユニット31を介してエンジン回転数、舵角、車速等の走行情報等を入力し、演算処理及び各種制御を担う。
【0025】
また、演算ユニット21には、異常状態を検知すると演算処理を中断し、最優先で走行制御ユニット31を制御して緊急停止させるインターロック部を備える(図示せず)。インターロック部は、走行時の車体の規定以上の傾き、転倒、衝突を検知した場合等の異常時に、直接走行制御ユニット31を制御して即時に停止させる緊急停止機能を有し、3Dジャイロセンサ17及び非常停止スイッチ18からの情報が用いられる。インターロック部の機能として、カッティング部2に異物が挟まったことを検知して緊急停止するようにしても良い。
【0026】
演算ユニット21は、処理全体に亘る制御を司るCPU、デジタル信号処理のためのDSP(Digital Signal Prosessor)、各種入出力(I/O)インタフェース等の各種機能を含む周辺回路を集積したデジタル及びアナログASIC(Application Specific Integrated Circuit)、制御プログラムや各種データを記憶する不揮発性Flashメモリを含むROM、演算時の作業領域等の一時記憶として用いるRAM等を有するが、本発明の要旨ではないこれらの説明及びその構成図については省略する。
【0027】
走行制御ユニット31は、ガソリン又はディーゼルエンジンタイプの市販の乗用型の芝刈り機を改造して自律走行により車両を目的位置に移動させるための走行系を制御するユニットであり、舵角センサ33、エンジン回転数、及び車輪の回転を検出する車速センサ35等の走行情報を入力して演算ユニット21に提供し、これらの走行情報を基に補正された演算ユニット21からの情報に基づき車両の操舵系(ステアリング又はハンドル)を自動操作するためのステアリングアクチュエータ32、及び駆動系(アクセル又はスロットル)を自動操作するためのスロットルアクチュエータ34を制御し、速度や方位角を調整して車両を走行させる。制動系(ブレーキ)を自動操作するためのブレーキアクチュエータを更に備えることもできる。
【0028】
電動モータタイプの自動芝刈り機(図示せず)の場合は、走行制御ユニットとして、左右の駆動モータ及びステアリングモータの従来のモータ駆動部を置き換え、演算ユニットと通信して左右の車輪及びステアリングに備えられたエンコーダからの回転信号を演算ユニットにフィードバックし、演算ユニットで演算された結果を基に、左右の駆動モータ及びステアリングモータ制御して駆動することができる。
【0029】
ステアリング(ハンドル)アクチュエータ32は、自動運転するための操舵系(ステアリング)を動かし、スロットル(アクセル)アクチュエータ34は、駆動系(スロットル:アクセル)を動かして自動操縦するために用いられる。この他、制動系(ブレーキ)用のアクチュエータを備えても良い。
【0030】
舵角センサ33は、進行方向等の走行情報をモニタするための車輪の角度を検出し、車速センサ35は、車速等の走行情報をモニタするための車輪の回転を検出する。舵角センサ33及び車速センサ35には、回転に応じてパルスを発生するロータリーエンコーダを用いることができる。
【0031】
バッテリ41は、電気系統に電源を供給し、DC/DCコンバータ42は、車両に搭載される上記各ユニットに供給される各種電源電圧を生成する。
【0032】
図示していないが、自動芝刈り機1は、更に、車体の前後部等に取り付けられて車体が何らかの物体に接触したことを感知するバンパーセンサや、芝刈り状況や周囲状況をカメラで撮影してその撮像画像を処理し、小エリア無線機11を介して基地局に送信して通信回線に接続された管理端末で監視させるための機能、メモリカード、USB、RS232C等の各種入出力インタフェース、各ユニットの電圧をモニタする電圧検出部、各ユニットの異常温度を検出して電源供給を停止するサーマルプロテクタ等、を備えることができる。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、基地局(又はGPS基準局)と移動局(自動芝刈り機1)との通信方式に小エリア無線を使用して3km四方程度の広域エリアをカバーする。RTK−GPSの場合、通常160バイト/秒の補正データがGPS基準局から送出され、補正データをそのまま送出した場合、伝送速度が低いとデータを送りきることができない場合が生じるが、本実施形態では、RTK−GPS専用の通信回線と他のデータ用通信回線とを分けずに、WGS−84世界測地系座標を2km×2kmのエリアに分割し、左下を原点とするオフセット座標に変換してバイト数を4バイトから2バイトに削減してデータ圧縮を行うことで160バイトの補正データを50バイト程度まで削減する。この処理により通信時間を短くでき、自動芝刈り機1と基地局との運行状況データの送受信を可能としている。
【0034】
図4は、図3に示す自動芝刈り機の移動パターンの処理の説明図であり、図5は、図4に示す移動パターンを処理する演算ユニットの処理の説明図であり、図6は、図5に示す移動コマンドによる車両の動きの説明図であり、図7は、図5に示す移動コマンドによるアクチュエータの動きの説明図である。
【0035】
本実施形態の自動芝刈り機1は、起動時にGPS受信機12からのRTK−GPS受信データより現在地を取得する。GPS受信が不可能な場合は、予め基地局に接続された通信端末により位置、進行方向等の情報を編集して自動芝刈り機1に地図データとして転送し記憶させるか、或いはメモリカード等を用いて直接記憶させる。自動芝刈り機1は地図上の通過ポイント(目的位置)の座標データを記憶した移動パターン(走行パターン)を利用して移動ルート(走行ルート)をトレースする。
【0036】
図4は、予めPC等により地図データを基に位置、進行方向等の情報を編集して通過ポイントの座標データを記憶した移動パターンを作成し、複数の移動目的位置を設定する例を示している。その際、地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させるようにしても良い。自動ルートの作成の際は、予め障害物の位置座標とその範囲を設定し、障害物を避けて移動ルートを設定する。なお、自動ルート生成の最適化モデルについての説明は省略する。作成された移動パターンは小エリア無線機11を介して基地局に接続されたPC等の通信端末から自動芝刈り機1に転送し記憶させるか、或いはメモリカード等を用いて直接記憶させる。自動芝刈り機1は、現在の移動目的位置と次の移動目的位置との間を移動する動作を繰り返すことで移動経路をトレースする。
【0037】
図5を参照すると、演算ユニット21は、次の移動目的位置を設定し、GPS受信機12、GPSコンパス13、3Dジャイロセンサ17、舵角センサ33及び車速センサ35等の各種センサからの現在地情報を基に駆動軸移動コマンドを補正し、移動目的位置に向けて駆動系を制御するための移動コマンドとして走行制御ユニット31に伝達する。
【0038】
より詳細に説明すると、演算ユニット21は、GPS受信機12から緯度経度データ、GPSコンパス13から方位データ、3Dジャイロセンサ17からX、Y、Z角度データをそれぞれ入力し、エンジン回転数、舵角センサ33及び車速センサ35からの走行情報を基に補正して自動芝刈り機1の現在位置及び移動方向を取得し、設定された移動目的位置のデータと取得した現在のデータ値を比較演算して制御コマンドを生成し、進行方向の水平成分(X軸方向)と垂直成分(Z軸方向)を、進行方向と直交するY軸のピッチ角でサンプリングして傾斜成分による距離誤差を補正し、積分器により一旦距離又は速度成分に変換した後に舵角センサ33及び車速センサ35等の走行情報を基に更に補正し、再度サンプリングして走行制御ユニット31に伝達する。移動位置に誤差が生じている場合は移動目的位置に近づくようにステアリングアクチュエータ32を制御して移動方向を修正する。相対方位は左右の駆動軸の回転数を車速センサ35から取得して求めると共に、エンジン回転数、舵角センサ33及び車速センサ35から取得したデータを補正値として使用する。
【0039】
図6を参照すると、走行制御ユニット31は、移動コマンドを受信してステアリングアクチュエータ32を制御して進行方向を定め、スロットルアクチュエータ34を制御して車体を移動させる。図6ではステアリングアクチュエータ32の制御により駆動輪である後輪タイヤの向き(タイヤ角)を変える例を示しているが、前輪タイヤの向き(タイヤ角)を変えて方向を定めても良いし、駆動輪は前輪であっても良い。
【0040】
図7を参照すると、走行制御ユニット31は、受信した移動コマンドに応じ、スロットルアクチュエータ34の制御によりアクセルを操作して車体を進めるか車体を停止させ、ステアリングアクチュエータ32の制御によりハンドルを操作して進行方向を定め、移動目的位置に向けて車体を進める。
【0041】
RTK−GPSの場合、起動時に測位まで5〜10分程度の時間を要することから、何らかの理由によりGPSデータが途絶えた場合、自動芝刈り機1の動作停止状態が続いてしまうことになるため、GPS信号が途絶えた場合でも緯度経度のデータを取得できるように3Dジャイロセンサ17により方位角を取得し、舵角センサ33及び車速センサ35から取得したタイヤ角や回転数及び回転差を利用して方位及び移動距離データを作成する。これにより無人作業も可能になり、防水構造を採用した場合は雨天の利用も可能になる。
【0042】
移動時は、3Dジャイロセンサ17からのデータを積分して連続記憶させ、自動芝刈り機1の現在位置を求めて記憶された座標とのずれを補正するように自動芝刈り機1を移動させる。このとき、車速センサ35からのパルスをカウントすることで移動距離を求めて移動データの精度を高める。また、地磁気センサを用いてそのずれを補正することもできる。
【0043】
図8は、図3に示す自動芝刈り機の自動運転実現方式の説明図であり、図9は、図3に示す自動芝刈り機で使用する座標系の説明図である。
【0044】
図8を参照すると、自動芝刈り機1の移動パターンは、先ず図8(a)に示すように、教示機能(学習手段)により手動運転による走行経路の緯度・経度をGPS受信機12等により取得し、所定距離間隔で記録した一連の走行データを走行ルート情報として保存する。次に図8(b)に示すように、自動走行(自動運転)機能によりアクセル及びハンドルを制御し、保存された走行ルート情報中の走行データを順次辿って走行する。走行ルート情報は、上述したように、地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させるなど、地図座標に基づき記憶させることもできる。
【0045】
走行ルート情報は、自動運転時に進行方向を決定するための情報であり、走行経路中の複数位置の緯度、経度、及びデータ生成時刻からなる走行データの集合である。走行ルート情報は教示機能を有効にすることで作成され、車両を手動運転した際に所定距離以上の移動が発生する毎に新たなデータが作成される。
【0046】
図9に示すように、本実施形態による自動芝刈り機1の説明では、東を正として子午線からの距離を緯度x、北を正として赤道からの距離を経度yとし、方位は東を基準に反時計回りに正とした座標系を採用する。
【0047】
図10は、図3に示す自動芝刈り機の自動運転制御における目的位置及び目的方向に車両を移動させるための計算過程を示す説明図である。
【0048】
図10(a)〜(d)は、自動芝刈り機1を目的位置及び目的方向に車両を移動させるためのタイヤ角指示量sを決定する迄の計算過程を示し、図10(a)は目的位置の決定、図10(b)は目的位置迄の距離及びその所要時間の計算、図10(c)は目的位置への目的方位の計算、図10(d)は車両の回頭角度、平均回頭角速度の計算の過程をそれぞれ示す。
【0049】
図10(a)を参照すると、先ず、車両の現在位置(厳密にはGPSアンテナの取り付け位置)Pa(x,y)から、ある距離分進めた位置(目的位置)の走行データをPb(x,y)とする。目的位置Pbの設定については図12を参照して後述する。
【0050】
図10(b)を参照すると、現在位置Pa(x,y)と目的位置Pb(x,y)との間に存在する各走行データPn−1−P間の距離r=√((x−xn−1+(y−yn−1)を求め、その合計をra−b=Σ(r+r+…+r)として現在位置Paから目的位置Pb迄の距離(Pa−Pb)を求める。目的位置Pbに到着する迄の所要時間は、平均車速vを用いて、所要時間ta−b=ra−b/vにより求まる。平均車速vについては図14を参照して後述する。
【0051】
図10(c)を参照すると、現在位置Pa(x,y)から見た目的位置Pb(x,y)の目的方位θb=arctan((y−y)/(x−x))を求める。この解は2つあるので、(y−y)と(x−x)の符号が、それぞれ「+/+」で東と北の間、「+/−」で東と南の間、「−/+」で西と北の間、「−/−」で東と北の間と判断する。
【0052】
図10(d)を参照すると、先ず目的方位θbと現在の方位θaより車両の回頭角度θa−b=θb−θaを求める。ここで、計算結果が−180°〜+180°の範囲にならない場合は−180°〜+180°の範囲になるように変換する。次に平均回頭角速度ωa−b=θa−b/ta−bを求めてタイヤ角指示量sを決定する。タイヤ角指示量sは、予め保存されている回頭角速度ωa−bとタイヤ角指示量sの対応テーブルを参照して求める。例えば、ωa−b(°/sec)に対応するタイヤ角指示量s(°)は、「〜−13.66→20」、…、「−6.59〜−7.58→10」、…、「−0.63〜1.26→0」、…、「8.65〜9.33→−10」、…、「24.92→−25」である。
【0053】
図11は、図3に示す自動芝刈り機の制御遅延の説明図である。
【0054】
自動芝刈り機1は、上述のようにタイヤ角指示量sを決定し、車両のタイヤ角を制御しようとしても、諸々の性能限界による遅延が存在するため、無視できない誤差が発生する。図11(a)は、現在位置座標の更新間隔の非リアルタイム性による補正計算の遅れを示し、図11(b)は、演算ユニット21のCPUから指示が出されて走行制御ユニット31のドライバが調整処理を終えるまでの遅れを示す。
【0055】
図11(a)を参照すると、タイヤ角の補正計算は、GPS受信機12からTgps=100msec毎に送られてくる現在位置座標を基に計算するが、現在位置座標の受信と補正計算が非同期に行われるため、最後の受信から補正計算までのタイムラグがt=0〜100msec発生する。
【0056】
図11(b)を参照すると、演算ユニット21のCPUではTcpu=250msec毎にタイヤ角の補正計算を行い、計算結果を走行制御ユニット31のドライバにタイヤ角指示量sとして送信するが、ドライバ側では、タイヤ角指示量sを受信してからタイヤ角が指定の角度になるように調整しながらモータ(アクチュエータ)を動かす調整処理を行う。このためCPU側から見ると、タイヤ角指示量sを送信してから実際に装置が指定のタイヤ角になる迄に毎回tmsecの遅れが発生することになる。
【0057】
従って、本実施形態の自動芝刈り機1には、先読み機能(位置予測手段)を付加する。図11(a)に示す要因による遅れ解消に対しては現在位置予測を行う。車両の平均速度v、進行方位θ、及びGPS更新経過時間t(GPSデータを受信してからの時間)から、現在緯度=GPS緯度+v×sinθ×t、現在経度=GPS経度+v×cosθ×tにより現在位置を推定する。
【0058】
図11(b)に示す要因による遅れ解消に対してはタイヤ順応時間分先読みする。タイヤが順応するのに遅れが生じることを考慮して、その時間T>t1、t2、…tnとなる時間分、現在位置の未来、即ち実際に制御情報が伝達される位置を予測する。角速度をωとして0〜T迄を積分し、未来緯度=現在緯度+∫(v×sin(θ+ωΔt))、未来経度=現在経度+∫(v×cos(θ+ωΔt))により現在位置の未来予測を行う。
【0059】
図12は、図3に示す自動芝刈り機の目的位置設定の説明図であり、図13は、図3に示す自動芝刈り機の走行データ通過判定の説明図であり、図14は、図3に示す自動芝刈り機の可変走行方式での速度決定の説明図である。
【0060】
車両が目的位置に近づくにつれて、様々なデータの誤差及び車両の遅れが影響して車両がふらつく現象を回避するため、図12に示すように、常に複数の走行データ地点を目的位置候補とし、車両速度が速い程遠くの位置の走行データ地点を目的位置に設定する。例えば、5km/hでは約1.5m先の走行データ地点を目的位置とする。
【0061】
図12の場合も全ての目的ポイントを通過するように車両を走行させ、各走行データ地点を通過する毎に目的位置を更新する。目的位置を何mに設定するかは車両速度に応じて調整する。ここで、車両が走行データ地点を通過する毎に目的位置を更新するため、走行データ通過判定を行う。図13(a)は非通過を示し、図13(b)は通過したことを示す。走行データ通過判定では、車両が通過ポイントを通り越した場合、即ち通過ポイントと1つ前の通過ポイントを結ぶ直線に対し、通過ポイントを通るような垂線を超えた場合に通過と判定する。
【0062】
車速vの決定は、自動走行前に所定の速度vcを設定して自動走行中は常に車速v=vで走行する一定速度走行方式とするか、又は図14に示すように、走行データ中のデータ作成時刻を参照することで、教示の際に現在位置Pa(x,y,t′)から目的位置Pb(x,y,t′)迄の移動に要した時間ta−b′=t′−t′を計算し、上述した現在位置Paと目的位置Pbとの間の距離(ra−b)を用いて車速v=ra−b/ta−b′を計算する可変走行方式とする。
【0063】
次に、本発明の一実施形態による自動芝刈り機1の制御方法について説明する。
【0064】
図15は、図3に示す自動芝刈り機の演算ユニットの状態遷移図の一例であり、図16は、図3に示す自動芝刈り機の走行制御ユニットの状態遷移図の一例である。
【0065】
本実施形態の自動芝刈り機1は、電源ONにより作動中となり、自動芝刈り機1に備え付けられたタッチパネル方式の操作パネル14に、例えば「原点復帰1」、「原点復帰2」、「自動運転」、「教示」、「データ書込み」、「デバイスモニタ」、「異常履歴」、「終了」の選択ボタンが表示されたメインメニュー(図示せず)が表示される。
【0066】
図15を参照すると、自動芝刈り機1の演算ユニット21は、電源未投入の電源OFF状態から電源ON状態になり作動中になると、スロットルアクチュエータ及びステアリングアクチュエータを初期化する原点復帰(1)待ちの状態になる。ここで、「原点復帰」とは、アクチュエータがハンドル又はアクセルに接続されてその制御量を0とした場合をいう。
【0067】
原点復帰(1)待ちで「原点復帰1」ボタンが押下されると、原点復帰(1)モードになり、画面には「エンジン始動前原点復帰中」が表示されてスロットルアクチュエータ(アクセル制御量)が初期化され、原点復帰(2)待ちに移行する。
【0068】
原点復帰(2)待ちで「原点復帰2」ボタンが押下されると、原点復帰(2)モードになり、画面には「エンジン始動後原点復帰中」が表示されてステアリングアクチュエータ(ハンドル制御量)が初期化され、自動操縦が可能な原点復帰済(待機中)に移行する。
【0069】
原点復帰済(待機中)で「教示」ボタンが押下されると、教示モードになり、画面には「教示中」が表示されると共に、「基準点」と「終了」ボタンが表示される。「基準点」ボタンが押下されると基準点を更新し、「終了」ボタンが押下されるとアクチュエータが解放されてハンドル及びアクセルが切り離された(未原点復帰)待機中になる。(未原点復帰)待機中で「教示」ボタンが押下されると再び教示モードに移行する。ここで、「基準点」とは、緯度・経度データからデータ量を減らした上述のオフセット座標等の所定の位置データ形式に変換するための地点をいい、位置を較正するための既知の緯度・経度データを有する地点であることが望ましい。
【0070】
原点復帰済(待機中)で「自動運転」ボタンが押下されると、自動運転モードになり、画面には「自動運転中」が表示されると共に、「終了」ボタンが表示される。「終了」ボタンが押下されるとアクチュエータが解放された(未原点復帰)待機中になる。(未原点復帰)待機中で「原点復帰1」ボタンが押下されると再び原点復帰(2)待ちに移行する。
【0071】
作動中に「データ書込み」ボタンが押下されると、データ書込みモードになり、画面には「教示データ書込み中」が表示されると共に、「UpLoad」及び「DownLoad」と「取り消し」ボタンが表示される。「UpLoad」ボタンが押下されると経路移動のためのポイントデータ(走行データ)を基地局に送信するか又はメモリカードに保存し、「DownLoad」ボタンが押下されると経路移動のためのポイントデータ(走行データ)を基地局から受信するか又はメモリカードから読み込み、「取り消し」ボタンの押下により、UpLoad及びDownLoadの途中で中断することができる。
【0072】
作動中に非常停止スイッチ18が押下されると、非常停止中の状態に移行する。
【0073】
図16を参照すると、自動芝刈り機1の走行制御ユニット31は、電源未投入の電源OFF状態から電源ON状態になり作動中になると、スロットルアクチュエータ及びステアリングアクチュエータのドライバを初期化してアクチュエータをアクセル及びハンドルから解放する未原点復帰の状態になる。
【0074】
未原点復帰で、演算ユニット21のCPUから「アクセル原点復帰」通知を受信すると、スロットルアクチュエータをアクセルに接続し、アクセル制御量を0に設定してアクセル原点復帰済に移行し、アクセル原点復帰済で、CPUから「ハンドル原点復帰」通知を受信すると、ステアリングアクチュエータをハンドルと連結し、ハンドル制御量を0に設定して自動操縦可能な原点復帰済に移行する。原点復帰済で、CPUから「モータフリー」通知を受信すると、アクチュエータ(モータ)をアクセル及びハンドルから解放する未原点復帰の状態に戻る。
【0075】
作動中に非常停止スイッチ18が押下されるか、又はCPUから「非常停止」通知を受信すると、モータ制御量を0に設定して非常停止中の状態に移行する。
【0076】
なお、上記図15及び図16に示した手動運転による教示機能以外の操作・表示及び制御は、小エリア無線機11を介して基地局に設置された通信端末から行うこともでき、自動芝刈り機1を遠隔操作することができる。
【0077】
以下、図15及び図16の状態遷移図の個々の動作について図17〜図21の動作フロー図を参照して説明する。
【0078】
図17〜図19は、図15に示す自動芝刈り機の演算ユニットの個々の動作フロー図である。
【0079】
図17(a)を参照すると、演算ユニット21のCPUは、電源未投入の電源OFF状態から電源ON状態になると(ステップS101)、GPS受信機12の初期化(ステップS102)及びGPSコンパス13の初期化(ステップS103)を行い、走行制御ユニット31の信号変換機にアクチュエータをアクセル及びハンドルから解放する「モータフリー」通知を送信して(ステップS104)原点復帰(1)待ちの状態になる。
【0080】
図17(b)を参照すると、CPUは、原点復帰(1)待ちの状態で、操作パネル14から「原点復帰(1)」押下の入力を受信すると(ステップS111)、信号変換機からスロットルアクチュエータをアクセルに接続してアクセル制御量を0に設定する原点復帰完了通知を受信したか否かを判断し(ステップS112)、原点復帰完了通知を受信していない場合は信号変換機に「アクセル原点復帰」通知を送信し(ステップS113)、原点復帰完了通知を受信した場合は原点復帰(2)待ちの状態に移行する。
【0081】
図17(c)を参照すると、CPUは、原点復帰(2)待ち又は(未原点復帰)待機中の状態で、操作パネル14から「原点復帰(2)」押下の入力を受信すると(ステップS121)、信号変換機からステアリングアクチュエータをハンドルに連結してハンドル制御量を0に設定する原点復帰完了通知を受信したか否かを判断し(ステップS122)、原点復帰完了通知を受信していない場合は、信号変換機に「ハンドル原点復帰」通知を送信し(ステップS123)、原点復帰完了通知を受信した場合は、自動操縦が可能な(原点復帰済)待機中の状態に移行する。なお、図15に示すように、(未原点復帰)待機中の状態で、操作パネル14から「原点復帰(1)」押下の入力を受信した場合は、上記図17(b)の動作フローになる。
【0082】
図17(d)を参照すると、CPUは、(原点復帰済)待機中又は(未原点復帰)待機中の状態で、操作パネル14から「教示」押下の入力を受信すると(ステップS131)、経路移動のためのポイントデータ(走行データ)をクリアし(ステップS132)、所定の位置データ形式に変換するための現在の緯度・経度データを基準点として読み込み(ステップS133)、信号変換機にアクチュエータをアクセル及びハンドルから解放する「モータフリー」通知を送信して(ステップS134)教示中の状態になる。
【0083】
図17(e)を参照すると、CPUは、教示中になると、GPS受信機12から新たな位置情報を受信して位置情報を更新し(ステップS141)、信号変換機から受信した車両の移動方向を決定するためのタイヤ角情報を更新し(ステップS142)、信号変換機から受信したカッティング部2の上昇又は下降による芝刈りON/OFF状態を更新し(ステップS143)、車両が前回ポイントデータ作成地点から50cm以上移動したか否かを判断する(ステップS144)。車両の移動が50cmに達しない場合は、芝刈りON/OFF状態が変化したか否かを判断し(ステップS145)、変化があった場合はポイントデータを作成して(ステップS146)教示中の状態を継続する。ステップS144で、車両が50cm以上移動した場合はステップS146のポイントデータ作成に移行、即ち50cm毎にポイントデータを作成して教示中の状態を継続する。ステップS145で芝刈りON/OFF状態の変化がなかった場合は、そのまま教示中の状態を継続する。
【0084】
図17(f)を参照すると、CPUは、教示中に、操作パネル14から「基準点」押下の入力を受信すると(ステップS151)、所定の位置データ形式に変換するための現在の基準点を更新し(ステップS152)、更新した基準点を保存して(ステップS153)教示中の状態を継続する。
【0085】
図17(g)を参照すると、CPUは、教示中に、操作パネル14から「終了」押下の入力を受信すると(ステップS161)、教示中に取得した移動経路の全てのポイントデータを保存して(ステップS162)アクチュエータがアクセル及びハンドルから解放された(未原点復帰)待機中の状態に移行する。
【0086】
図18の(h)を参照すると、CPUは、(原点復帰済)待機中の状態で、操作パネル14から「自動運転」押下の入力を受信すると(ステップS171)、教示中に取得して保存した移動経路の全てのポイントデータを読み込み(ステップS172)、教示中に取得して保存した所定の位置データ形式に変換するための基準点を読み込み(ステップS172)、自動運転中の状態に移行する。
【0087】
図18の(i)を参照すると、CPUは、自動運転中になると、GPS受信機12から新たな位置情報を受信して位置情報を更新し(ステップS181)、GPSコンパス13から新たな方位情報を受信して方位情報を更新し(ステップS182)、運転経過時間が2秒以上経過したか否かを判断し(ステップS183)、経過時間が2秒に満たない場合は、アクチュエータのアクセル制御量を50に固定し(ステップS190)、タイヤ角制御量を0に固定し(ステップS191)、芝刈りOFF状態に固定して(ステップS192)2秒間直進走行を継続する。ステップS183で2秒以上経過すると、非常停止等のアラームがあるか否かを判断し、アラームを検知すると、アクセル制御量を0に固定して(ステップS189)走行を停止する。ステップS184でアラームを検知しなければ、移動経路の終端ポイントに到着したか否かを判断し(ステップS185)、終端ポイントでない場合は、図12〜図14を参照して説明したような方式で目的位置及び移動速度を決定して、対応するアクセル制御量を決定し(ステップS186)、対応するタイヤ角制御量を決定し(ステップS187)、芝刈りON/OFF状態を決定して(ステップS188)自動運転を継続する。
【0088】
図18の(j)を参照すると、CPUは、自動運転中に、操作パネル14から「終了」押下の入力を受信すると(ステップS201)、アクチュエータのアクセス制御量を0に固定し(ステップS202)、信号変換機にアクチュエータをアクセル及びハンドルから解放する「モータフリー」通知を送信して(ステップS203)(未原点復帰)待機中の状態に移行する。
【0089】
図19の(k)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中に、操作パネル14から「UpLoad」押下の入力を受信すると(ステップS211)、小エリア無線機11を介して基地局に接続されたPC等の通信端末に教示中に保存されたポイントデータ(走行データ)を保存する旨を問い合わせてPCからポイントデータ要求信号を受信し(ステップS212)、ポイントデータのカウンタ値Nを0に設定し(ステップS213)、順次N番目のポイントデータをPCに送信して(ステップS214)カウンタ値Nをインクリメントする(ステップS215)。ポイントデータ送信中に操作パネル14から「取り消し」押下の入力を受信すると(ステップS216)、ポイントデータの送信を中止し、そうでない場合は、ポイント終端になったか否かを判断する(ステップS217)。ステップS217でポイント終端になるまでステップS214に戻ってポイントデータの送信を継続し、ポイント終端になると、PCに全てのポイントデータが送信されたかを問い合わせてPCからポイントデータ受信確認信号が到着する迄待ち(ステップS218)、途中で操作パネル14から「取り消し」押下の入力を受信すると(ステップS219)、ポイントデータの送信を中止し、そうでない場合は、ポイントデータ受信確認信号を受信した後「UpLoad」処理を終了する。
【0090】
図19の(l)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中に、操作パネル14から「DownLoad」押下の入力を受信すると(ステップS221)、保存されたポイントデータ(走行データ)をクリアし(ステップS222)、小エリア無線機11を介して基地局に接続されたPCにポイントデータ要求信号を送信し(ステップS223)、PCに保存されたポイントデータを受信して(ステップS224)自動芝刈り機1に保存されたポイントデータを更新する(ステップS225)。ポイントデータ更新中に操作パネル14から「取り消し」押下の入力を受信すると(ステップS226)、ポイントデータの更新を中止して元のポイントデータを復帰し、そうでない場合は、ポイント終端になったか否かを判断する(ステップS227)。ステップS227でポイント終端になるまでステップS224に戻ってポイントデータの更新を継続し、ポイント終端になると、PCに全てのポイントデータ受信が確認された旨を送信して(ステップS228)「DownLoad」処理を終了する
【0091】
図19の(m)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中は、信号変換機に、経路移動に伴う要求通知を250msec毎に送信する(ステップS231、ステップS232)。
【0092】
図19の(n)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中に非常停止スイッチ18押下の入力を受信すると(ステップS241)、信号変換機に非常停止通知を送信して(ステップS242)非常停止中の状態に移行する。
【0093】
図20及び図21は、図16に示す自動芝刈り機の走行制御ユニットの個々の動作フロー図である。
【0094】
図20(a)を参照すると、走行制御ユニット31の信号変換機は、電源未投入の電源OFF状態から電源ON状態になると(ステップS301)、アクチュエータを駆動するモータドライバを初期化し(ステップS302)、アクセル及びハンドルをアクチュエータから解放して未原点復帰の状態になる。
【0095】
図20(b)を参照すると、信号変換機は、未原点復帰の状態中、演算ユニット21のCPUに、ステアリング及びスロットルアクチュエータの状態、舵角センサ33及び車速センサ35の情報を状態通知として5msec毎に送信すると共にCPUからの指示を待つ(ステップS311、ステップS312)。
【0096】
図20(c)を参照すると、信号変換機は、未原点復帰の状態で、CPUから「アクセル原点復帰」の通知を受信すると(ステップS321)アクセル原点復帰機能を作動し(ステップS322)、アクセル制御量を0に設定し(ステップS323)アクセルを原点位置に移動させてアクセル原点復帰済の状態になる。
【0097】
図20(d)を参照すると、信号変換機は、アクセル原点復帰済の状態中、CPUに、スロットルアクチュエータの状態及び舵角センサの情報を状態通知として100msec毎に送信する(ステップS331、ステップS332)。
【0098】
図20(e)を参照すると、信号変換機は、アクセル原点復帰済の状態で、CPUから「ハンドル原点復帰」の通知を受信すると(ステップS341)ハンドル原点復帰機能を作動し、ハンドル制御量を0に設定し(ステップS342)ハンドルを原点位置に移動させて自動操縦が可能な原点復帰済の状態になる。
【0099】
図20(f)を参照すると、信号変換機は、原点復帰済の状態中、CPUに、ステアリングアクチュエータの状態及び車速センサの情報を状態通知として100msec毎に送信する(ステップS351、ステップS352)。
【0100】
図20(g)を参照すると、信号変換機は、原点復帰済の状態、即ち自動運転中に、CPUから車両の移動方向を決定するためのタイヤ角の指示値を更新する通知を受信し(ステップS361)、CPUから車両の移動速度を決定するためのアクセル量の指示値を更新する通知を受信すると(ステップS362)、新たなタイヤ角の指示値と現在値との差が予め設定された許容差を超えるか否かによりタイヤ角にズレを生じるか否かを判断し(ステップS363)、ズレを生じる場合は指示されたタイヤ角に相当するハンドル制御量の値を更新してハンドルを移動させて(ステップS364)移動方向を変更し、アクセル制御量を指示された値に更新してアクセルを移動させて(ステップS365)速度を変更し、原点復帰済みの状態を継続する。ステップS363でタイヤ角にずれを生じない場合は、ハンドルを移動させずアクセルのみ移動させる。
【0101】
図20(h)を参照すると、信号変換機は、原点復帰済の状態で、CPUから「モータフリー」の通知を受信すると(ステップS371)、アクチュエータをアクセル及びハンドルから解放すると共にハンドル制御量及びアクセル制御量を0に設定して未原点復帰の状態になる。
【0102】
図21の(i)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中に、CPUから芝刈りON/OFF状態を更新する通知を受信し(ステップS401)、芝刈りOFFからONに変化した場合は(ステップS402)カッティング部2の芝刈りカッターを下降させ(ステップS403)、芝刈りONからOFFに変化した場合は(ステップS404)カッティング部2の芝刈りカッターを上昇させ(ステップS405)、芝刈りON/OFFに変化がない場合はそのまま継続する。
【0103】
図21の(j)を参照すると、自動芝刈り機1の作動中に、非常停止スイッチ18押下の入力を受信するか(ステップS411)、又はCPUから「非常停止」が通知されると(ステップS421)、非常停止機能を作動させモータ制御量を0に設定して(ステップS412)非常停止中の状態に移行する。
【0104】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 自動芝刈り機
2 カッティング部
11 小エリア無線機
12 GPS受信機
13 GPSコンパス
14 操作パネル
15 障害物センサ
16 RFIDリーダ
17 3Dジャイロセンサ
18 非常停止スイッチ
21 演算ユニット
31 走行制御ユニット
32 ステアリングアクチュエータ
33 舵角センサ
34 スロットルアクチュエータ
35 車速センサ
41 バッテリ
42 DC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動運転型の芝刈り機に自律走行のための各種装置が取り付けられて自動運転を行う自動芝刈り機であって、
少なくとも位置検出手段を含む各種センサと、
少なくとも走行車両の駆動系(アクセル)及び操舵系(ステアリング)を含む自動操縦のためのアクチュエータと、
前記アクチュエータにより走行車両を目的位置に移動させるための走行制御ユニットと、
走行路面に沿って芝刈りを行うカッティング部と、
前記センサの情報を基に前記走行制御ユニットを制御するための各種演算処理を行う演算ユニットと、
無線通信により前記演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段と、を備え、
前記演算ユニットは、
前記位置検出手段による位置情報及び車両のエンコーダ情報を基に走行車両の移動経路を記憶し、該記憶した位置情報及び走行情報を基に自動運転させるための学習手段と、
前記自動運転の際に、前記センサにより取得する位置情報の更新間隔による遅延、及び走行車両の移動方向を決定する回頭角度の算出に要する遅延を、走行車両の平均速度、走行車両の進行方位、及び位置更新後の経過時間を基に補償して現在位置及び制御情報が伝達される位置を推定する位置予測手段と、を有することを特徴とする自動芝刈り機。
【請求項2】
前記学習手段は、経路移動中の緯度、経度、及びデータ作成時刻を少なくとも含む複数の走行データを所定の間隔で記録して保存し、
前記演算ユニットは、前記自動運転の際に、前記複数の走行データ地点のうちの所定範囲の走行データ地点を目的位置候補とし、走行車両の速度に応じて次の目的位置を定めることを特徴とする請求項1に記載の自動芝刈り機。
【請求項3】
手動運転型の芝刈り機に少なくとも位置検出手段を含む各種センサと、自動操縦のためのスロットルアクチュエータ及びステアリングアクチュエータとが取り付けられて自律走行による自動運転を行う自動芝刈り機の制御方法であって、
電源投入後に車両の位置及び方位を初期化して前記各アクチュエータを初期化する原点復帰待ち段階と、
前記各アクチュエータの初期化を確認後に前記スロットルアクチュエータ及び前記ステアリングアクチュエータを作動させるための原点を復帰する原点復帰済待機段階と、
位置情報及び走行情報をクリアすると共に前記各アクチュエータを操舵系(ステアリング)及び駆動系(アクセル)から切り離して教示運転を行う学習段階と、
予め記憶された位置情報及び走行情報を基に前記各アクチュエータの制御量を所定の値に設定して自律走行する自動運転段階と、を有し、
前記自動運転段階は、前記センサにより取得する位置情報の更新間隔による遅延、及び走行車両の移動方向を決定する回頭角度の算出に要する遅延を、走行車両の平均速度、走行車両の進行方位、及び位置更新後の経過時間を基に補償して現在位置及び制御情報が伝達される位置を推定する位置予測段階を含むことを特徴とする自動芝刈り機の制御方法。
【請求項4】
前記教示運転を行う学習段階は、
車両の位置情報を更新する段階と、
車両の移動方向を決定する段階と、
車両の移動速度を決定する段階と、
芝刈りを行うか否かを決定する段階と、
緯度、経度、及びデータ作成時刻を少なくとも含む走行データを作成する段階と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の自動芝刈り機の制御方法。
【請求項5】
前記自律走行する自動運転段階は、
車両の位置情報を更新する段階と、
車両の方位置情報を更新する段階と、
車両の移動方向を決定する段階と、
車両の移動速度を決定する段階と、
芝刈りを行うか否かを決定する段階と、
前記学習段階で作成された前記走行データを有する複数の目的位置を辿って経路移動する段階と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の自動芝刈り機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−31389(P2013−31389A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168428(P2011−168428)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(503320968)株式会社オリジナルソフト (4)
【Fターム(参考)】