説明

自己膨張式クッションおよびそれを有する履物

【課題】自己膨張式クッションおよびこれを有する履物を提供する。
【解決手段】クッションはバリア材料で構成された少なくとも1つの室を備えている。前記バリア材料はエラストマーよりなり、このエラストマーは少なくとも第1反応体化合物に対して少なくとも半透過性であり、前記の少なくとも1つの室には、第2反応体化合物が配置されている。前記第1反応体化合物および前記第2反応体化合物は反応して合成化合物を形成し、前記バリア材料を通る前記合成化合物の拡散速度は前記バリア材料を通る前記第1反応体化合物の拡散速度未満である。履物製品はクッションを有しており、このクッションはバリア材料で構成された少なくとも1つの室を備えており、この少なくとも1つの室には、少なくとも第1および第2の固形または液状反応体化合物が配置されており、前記第1反応体化合物および前記第2反応体化合物は反応して合成化合物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己膨張式クッションおよびそれを有する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
履物製品は、長い間、研究され、高められた履き心地および性能を達成するように再設計されてきた。この点では、特に運動靴では、主な関心事としては、足に快適な環境を持たせることができること、および靴、従って足および下脚が地面または床に突当たるときに受けるショックすなわち衝撃を軽減することができることが挙げられる。これらの力はランニング中およびジャンプ中に特に著しい。例えば、ヒールの4または5平方インチで着地するジョギング者は、ジョギング者の体重の約3倍ないし4倍の衝撃力を吸収するものと判断される。従って、180ポンドのジョギング者はヒール着地領域に720ポンドの概算衝撃力を生じることがある。各ヒールは1マイルあたり約800回、地面に突当たるので、履物における衝撃吸収機構の必要性を想像し易い。
【0003】
靴が強い繰り返しの衝撃を吸収する必要性に加えて、履き心地の重大性は靴を着用する誰にでも容易に理解される。実際、運動靴の履き心地は、着用者の精神状態、従って行動性、筋肉効率、エネルギ消費およびアスリートの訓練および競技能力達成するものと知られている。
【0004】
足の衝突衝撃を吸収し且つ全体の履き心地をもたらすために、履物技術には、非常に多くの衝撃吸収装置が存在している。衝撃吸収の1つの一般的な解決法は、圧縮性詰物材料の断片の使用を伴っていた。例えば、靴は、コットン詰物、馬毛詰物、ゴム、プラスチック、発泡体などを備えて構成されていた。これらの靴では、衝撃を吸収して分散するために圧縮性詰物材料の固有のレジリエンスが使用されている。しかしながら、これらの材料は、エネルギを着用者に戻すそれらの能力が比較的不十分であり、繰り返しの使用後、圧縮され、それらのクッション作用特性を失う。更に、厳しい衝撃では、圧縮性詰物の比較的薄い断片を使用しないかぎり、これらの設計は十分な圧縮または「ボトムアウト」を急に受け、その結果、着用者の身体に厳しい衝撃力がかかってしまう。この問題を解決するためにより厚くすると、圧縮性詰物材料が扱い難く、重くなり、履物の設計およびアスリートの行動性を妨げてしまう。また、詰物材料が厚いと、不安定性が生じることがある。
【0005】
圧縮性詰物材料で構成されたクッションの群の中では、発泡体挿入物が、それらの軽量および比較的有利なクッション作用特性のために運動は履物に好適である。圧縮性詰物材料の群の中の発泡体の優位性にもかかわらず、発泡体挿入物の気泡構造が時間および周期的な負荷に伴って悪化し、その結果、気泡壁部が崩壊し、これに対応した挿入物のクッション作用特性の急速な低減が生じる。
【0006】
ほぼ間違いなく、秀でた履物クッションは空気圧装置である。米国特許第259092号(1882)により実証されているように、空気圧式靴底が優れたクッション作用形態であるものと考えられていた。この早期の努力にもかかわらず、空気圧クッション作用装置は、ほぼ1世紀の間、種々の理由で商業的成果を達成することができなかった。実際、米国特許第4,183,156号に記載の発明がなされるまで、この業界は商業的に好首尾の靴に空気圧クッション作用をもたらす技術的ノウハウに欠けていた。これらの特許に記載の発明は靴の設計および運動履物市場に革命を起こした。
【0007】
より詳細には、これらの特許に記載のクッションは、運動努力で受ける衝撃を吸収し、エネルギをアスリートに効果的に戻すのに良く適している。更に、このクッションは運動活動中に起こる強い繰り返しの衝撃に良く適している。
【0008】
例外的な寿命を有する空気圧クッション作用装置が、厚くて、強くて耐久性のあるエラストマー外被で達成されることができる。しかしながら、厚い外被は、流体の特性がエラストマーバリア材料の特性により隠されるので、流体クッション作用の利点を軽減してしまう。非常に厚い材料を使用して良好な収容室を形成することが可能であるが、特定の形状のクッションを望む場合に、侵入的外被対控えめな外被の競争問題が生じる。しかも、流体は固有の形状を有していない。従って、エラストマー材料は流体に造形力を現さなければならない。明らかに、厚くて強いエラストマー外被は複雑な形状を容易に形成するが、流体媒体の動作特性が犠牲になる。従って、流体クッション作用の最大の利点を得るために肉厚の外被を有することが望ましい。
【0009】
運悪く、薄い可撓性の外被は膨張剤ガスの長期保持をもたらす際に技術的な難点を生じる。膨張剤物質の損失に取り組む1つの対案はクッションを膨張したり、再膨張したりするためにポンプ要素をクッションに供給することであった。この種類の装置の一例が米国特許第5,937,462号に示されており、この特許では、自己膨張性空気クッションは、主支持室に連結された収縮可能なプレナム室を有している。プレナムが足により収縮されると、空気が一方向弁を通ってプレナム室から押出されて支持室に入る。これらの種類の装置は理論上うまく作用するが、実際上、機械的圧送装置の複雑さが固有の故障の可能性を生じる。
【0010】
更に、空気クッション作用装置のものすごく好首尾の使用と関連された欠点は、多年の間、加圧クッションを維持するために活性化拡散系を設定する環境上不利なフッ素化炭化水素ガスに依存していたことであった。極めて制限された量が利用されているが、否定的な公の認識はこれらの量の使用と関連されていた。経済的に達成されなければならない全く完全な収容装置が無ければ、環境上許容可能なガス収容クッション作用装置がその加圧膨張剤ガスを少なくともゆっくり失うと言うジレンマが残存している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は膨張剤物質を補給する有利な方法および装置を提供し、以上に略述した欠点の多くを回避する。
明細書全体にわたって、多くの言及は運動履物の底部の一部としてのクッションを使用に対してなされているが、限定するわけでないが、礼装用靴、ブーツ、サンダルなどを含めて、種々の種類の履物に本発明のクッションを有利に組み入れることができることは理解されるべきである。また、クッション作用装置は、フットボール、サッカー、野球、膝、脚、肩、首および腕用のパッド、サンダル、ヘルメット、グローブ、シートクッションなどのような、これらの独特なクッション作用および動的特性が有利である多くの種類の運動設備において保護をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、バリア材料で構成された少なくとも1つの室を有するクッションが提供される。バリア材料は少なくとも第1反応体化合物に対して少なくとも半透過性であるエラストマーよりなることができる。室内には、第2反応体化合物が配置されており、第1反応体化合物および第2反応体化合物は互いに反応して剛性化合物を形成する。このクッションは、バリア材料を通る合成化合物の拡散速度がバリア材料を通る第1反応体化合物の拡散速度未満であるので、膨張されたままである。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、エラストマーバリア材料で構成された少なくとも1つの室を有するクッションが提供される。室には、第1および第2反応体の対が設けられている。この反応体の対は反応を受けて室の膨張を維持するように機能するガス状生成物を発生させる。
【0014】
本発明の更なる実施形態によれば、バリア材料で構成された少なくとも1つの室を有するクッションが提供される。バリア材料は、第1反応体化合物が少なくとも半透過性であるエラストマーよりなることができる。室内には、第2の液状または固形反応体化合物が配置されており、第1反応体化合物および第2反応体化合物は反応して合成ガス状化合物を形成する。クッションは、バリアを通る合成ガス状化合物の拡散速度が比較的低いか、或いは少なくとも実質的に遮断されるので、膨張されたままである。
【0015】
好ましくは、クッションは多数の室を有している。任意に、多数の室のうちの少なくとも幾つかは相互に連結されている。変更例として、幾つかの室は実質的に分離されることができるが、ガス連結通路を有している。
【0016】
実施形態のうちの幾つかによれば、第1反応体化合物はガス、液体、固体またはそれらの混合物であることができる。第1反応体が外部環境から室に入ることが期待される場合には、液体またはガスが好適である。第2反応体化合物は最も代表的には液体または固体である。
【0017】
模範的な膨張剤反応体化合物としては、二酸化炭素、酸素および窒素がある。代表的には、クッションの少なくとも1つの室は約14.7psiのゲージ圧より大きい値まで加圧される。
【0018】
また、本発明は前記のクッションを有する履物製品、および履物製品におけるクッションを膨張させる方法に向けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は図示されて説明される新規な部品、構成、配置、組合せおよび改良よりなる。組み入れられ、明細書の一部を構成する添付図面は本発明を示しており、そして説明文と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0020】
例が添付図面に示されている本発明の好適な実施形態を以下に説明する。本発明をこれらの好適な実施形態に関連して説明するが、本発明をこれらの実施形態に限定しようとするものではないことは理解されるであろう。それどころか、添付の請求項により定められる本発明の精神および範囲内に含まれるような変更例、変形例および同等例すべてを網羅しようとするものである。
【0021】
図1を参照すると、クッション作用装置を有する履物10の製品が示されている。この履物は皮、ナイロンまたは当業者に知られている他の材料または材料の他の組合せで一般に製造されている表甲部1を有している。この表甲部1は、限定するわけではないが、板ラシャまたは編みラシャのような当業者に受入れられる任意の手段により形成されている。ここに示される表甲部は運動靴に適しているが、サンダル表甲部およびブーツ表甲部が本発明の靴底構成部との組合せに同等に適している。靴底3は接着剤および/または縫い、または当業者に周知の他の技術により表甲部に固着されている。好適な靴底3は、中底部分5と、地面に接触する外底部分7とを備えている。外底部分7は、一般に、地面または床面との良好な摩擦接触を容易にするためにトレッドまたはスタッド9を備えている。中底部11は目視穴17を通して見える媒体収容クッション作用装置15を封入している発泡体13で構成されている。
【0022】
図2は個々の靴部品を分解予備構成段階で表している。この実施形態では、靴表甲部23内には、中敷21が位置決めされている。この靴表甲部は中底部29に固着された流体収容多室クッション25、27の上に敷設されている。これらの流体収容クッションは、好ましくは、中底部29の一体部分として封入された発泡体である。外底部31は中底部に接着されており、その結果生じる製品は靴にしっかり接着されるか或いは他の方法で取付けられる。
【0023】
クッションは、少なくとも1つのガスの拡散に対する少なくとも部分的なバリアである任意の可撓性材料で形成されることができる。クッションは好ましくいは可撓性ポリマー材料で構成されている。模範的な材料としては、ポリウレタン、ポリエステル、フルオロエラストマー、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエチレン/エチレンビニルアセテートコポリマー、ネオプレン、ブタジエンアクリロニトリルゴム、低密度ポリエチレン、付加物ゴム、硫化物ゴム、メチルゴム、加硫可能なゴム、ポリビニルアルコールおよび熱可塑性ゴムが挙げられる。他の適当な材料は米国特許第4,906,502号;第5,083,361号;第4,936,029号;第5,042,176号および第5,713,141号(これらは、出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に記載されている。これらの列挙した材料は限定するつもりではない。実際、以下により十分に述べるように、本発明の1つの利点は特別なバリアを形成するために材料の必要性に対する依存性が低減していることである。
【0024】
同様に、本発明は、履物またはこれに使用されるクッションの種類に関しては限定されない。模範的な装置として、米国特許第3,005,272号;第3,685,176号;第3,760,056号;第4,183,156号;第4,217,705号;第4,219,945号;第4,271,706号;第4,287,250号;第4,297,797号;第4,340,626号;第4,370,754号;第4,471,538号;第4,486,901号;第4,506,460号;第4,724,627号、第4,779,359号;第4,817,304号;第4,829,682号;第4,864,737号;第4,864,738号;第4,874,640号;第4,906,502号;第4,936,029号;第5,036,603号;第5,042,176号;第5,083,361号;第5,097,607号;第5,155,937号;第5,228,217号;第5,235,715号;第5,245,766号;第5,283,963号;第5,315,769号;第5,422,186号;第6,127,010号および第6,158,149号(これらの各々は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に教示されているものがある。
【0025】
本発明は、一般に、膨張剤を発生させる化学反応をクッション内に生じることに向けられており、膨張剤はクッションを形成するバリア材料によりかろうじて保持される。好適な膨張剤は泡およびガスである。かろうじて保持されることにより、ガス状生成物がクッションに少なくとも一時的に収容されてクッションの加圧をもたらし、そしてクッションが空気圧クッション作用装置の代表的なクッション作用特性を与える。膨張剤ガスは好ましくはバリア材料を通る膨張剤の損失を相殺するのに十分な割合で発生される。このようにして、クッションは長期間にわたって効果的に膨張されたままであることができる。なお、膨張剤発生反応はクッションを十分に膨張させるために、或いはメンテナンスチャージとして使用されることができ、クッションは、まず、初めの構成中に他の手段により膨張され、反応発生された膨張剤は所望の加圧を維持するのに使用される。しかも、本発明はクッションの部分圧を次第におよび自動的に増し、それによりクッションを大気圧以上までに加圧する。
【0026】
膨張剤発生反応は一般に幾つかの方法で達成されることができる。例えば、第1反応体がクッションに設けられることができ、クッションの中への拡散により第2反応体が得られることができる。第2反応体は、好ましくは、靴の普通の使用中に当然、出会う化合物から選択され、水および酸素は優れた例をなしている。変更例として、第1および第2の反応体は共にクッションに設けられることができる。この場合、天然の拡散剤が反応開始または速度制御機構として使用されることができる。
【0027】
室内の圧力の有用な範囲を維持するための膨張剤の生成は幾つかの異なる方法によって、およびこの説明に記載されていない方法によっても達成されることができる。閉鎖ポリマー室内にガスまたは泡を発生させることができる方法が許容可能である。一般に、生成された膨張剤の実行可能な選択は何でもよい。便宜上、これらの化合物が環境に優しく、以前の履物クッション作用装置に使用されていた場合、窒素、酸素または二酸化炭素の発生は優れた選択である。例として、窒素ガスは、尿素、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、UDMH、硝酸、硝酸アンモニウムなどを含む化合物から発生されることができる。更なる例として、酸素ガスが、過ホウ酸ナトリウムおよび非塩素含有漂白剤から発生されることができる。1つの追加の例として、二酸化炭素がアセチルサルチル酸および重炭酸ナトリウムから発生されることができる。
【0028】
目的は1年ないし3年の期間にわたって、例えば0以上ないし25PSIGの圧力を維持することである。模範的な方式としては、有機反応体の昇華、発酵、単分子分解、生体分子の分解および分子再組織、および化学反応がある。
【0029】
昇華方式は固体からガス源としてのガス相への直接相変換を使用する。間近な例はナフタレン(一般のモスボール)である。生体/有機物質の発酵はガスを生成する。有機反応体の単分子分解は、多くの実際の用途については、ガス、通常、窒素または二酸化炭素を生成する非常に一般的な方法である。分解の開始は、温度の上昇、電流の付加(温度上昇または電気化学反応を引起こす)、分解を促進する他の化学反応体の付加、または単に、常温で起こる同一温度依存性方法と通常称される物質の「普通の」時間依存性分解によってもよい。重合および他の反応のための遊離ラジカル開始剤としては、窒素または二酸化炭素ガスを生成するものが挙げられる。一般的な例は、X−N=N−Xの一般式を有するアゾジイソブチルニトリルのようなアゾ化合物である。これらの物質は分解して2つの遊離ラジカル種および窒素ガスを生じる。
【0030】
また、低温で起こるように分解を促進する反応体を添加することができる。1つの一般的な例は遊離ラジカルおよび二酸化炭素ガスの両方を生成するための少量の第三芳香続アミン(例えば、ジメチルアニリン)をベンゾイルパーオキサイドに添加することである。反応体の添加を制御し且つガスの発生を制御するために、トリガー系を設けることができる。
【0031】
同時応用は、突然の要求に応じて、多量のガス、通常、窒素を生成するためにより激しい反応体を使用することである。主な例は自動安全バッグである。一般的な反応体は窒素ガスを生成するように電流により反応される(本質的に点火される)アジ化ナトリウムである。代表的な配合物は70%のNaN3、28%のMoS2および2%のSである。これらの系は一般に激しいが、より徐々で制御された窒素放出を生じるようにされることができる。更に、反応がさほど激しくない異なる有機アジ化物を、選択することができ、そして長期間の遅い反応のために緩和することができる。
【0032】
生体分子分解もまた、ガスを生成する実行可能な手段である。これらの反応は2つの種の間で起こる。例えば、重炭酸ナトリウムNaHCO3(または炭酸ナトリウムNaHCO3)と酸発生種HXとの反応による二酸化炭素の生成により、CO2の非常に効率的な生成が行なわれる。酸物質は強酸(例えば、HCl)、中間強さの有機酸(例えば、酢酸)であることができる。実際、遅い分解により酸を生成する他の物質を使用することができる。
【0033】
亜硝酸ナトリウムNaNO2と塩化アンモニウムNH4Cl(または他のアンモニウム塩)との反応による窒素の生成もまた実行可能な選択肢である。反応機構は、有利には、N2の生成のための長期制御式反応を達成するためにH+触媒採用および温度の調整を緩和することにより反応を制御する手段をもたらす。もちろん、熟練者には明らかであるN2を形成するようにNaNO2と同様に反応することができる他の亜硝酸塩および硝酸塩がる。
【0034】
一般に、クッション内に容器に濃縮された反応成分を有することが好ましいこともある。水が必要とされる場合、クッション内への普通の水浸透によって、或いは容器からの浸透により或いは水の流れを誘発する或る物理的方法により水を生じるように設計された或る内部溜め源の使用によって、水が設けられることができる。
【0035】
水を含めて、反応体のうちの1つまたはそれ以上の微小カプセル化が反応制御のために使用されることができる。1つの制御方法はガス生成のための共試薬に接触するようにカプセル化された試薬を放出するためにカプセルを物理的に破壊することによる。破壊方法は、アンビルにおけるカプセル化物質を有するプランジャ/アンビル構成を設計することにより、要求に応じて起こるように行なわれることができる。容器内の圧力が或る値を過ぎて降下すると、容器の屋根部に取付けられたプランジャにおける重量により、容器の屋根部に取付けられたアンビルにおけるカプセル化物質にプランジャを衝突させる。
【0036】
他の制御方法はカプセルの壁部を通る浸透による。液状または溶液状態の試薬は、カプセル内の多孔性容器内に収容された他の反応成分の混合物の中へ既知の予想可能な速度で拡散する。別の方法は、固形試薬を収容しているカプセルの中へ水を拡散させて試薬を溶解し、次いでこの試薬がカプセルから反応体混合物の中へ拡散することである。同様に、試薬溶液が固形の共反応体を収容しているカプセルの中へ拡散してカプセル内に反応を引起こすことができる。生成されたガスはカプセルから拡散するか、或いは壁部の破壊を引起こしてその内容物すべてを周囲の混合物または溶液の中へ放出し得る。いずれの場合でも、液体がカプセルの中へ拡散すると、この液体はカプセルを膨潤/膨張させてカプセルの中へのおよびカプセルからの物質の移送率を高める。この一般方法は制御放出式アスピリンのような薬剤の送出し(制御放出)のために一般に使用されている。
【0037】
窒素の場合、約80cm3の体積のクッションの適当なクッション加圧を維持するために月基準で約0.006グラムの窒素が生成されることが必要とされるものと思われる。NaNO2+NH4Cl→N2+2H2Oの反応を使用すると、月あたり、約4.9×10-4モルのN2が必要とされる。従って、1年あたり、約5.9×10-3モルのN2が必要とされることが予想され、これは、クッション作用の5年の寿命を有する靴を提供するには、29.4×10-3モルのN2が発生されるべきであることを意味している。これは、約0.21gのH2Oを発生させる年あたりの約0.41gのNaNO2、0.031gのNH4Clに相互関連している。その場合、これは、試薬の5年分の供給では、1.06gの水の生成が伴う2.03gのNaNO2(0.94cm3)および1.58gのNH4Cl(1.03cm3)を必要とすることを予想するために使用されることができる。これらの計算は大きさの観点から系の実現可能性を実証している。また、反応がクッションの急速な過剰膨張まで進行して装置の全体寿命を短くするのを防ぐために水の存在が制御されたままに保つことが望ましいこともある。市販の乾燥剤物質は約3cm3の体積を生じるのに約8.83gが必要とされることを示している。これは、約5cm3の全系体積を生じる。
【0038】
しかしながら、反応運動論によれば、著しく過剰なガスが形成されることができる。従って、生じられた圧力は、クッションの構造上の性能限度を超えることがある。従って、溶液は、試薬のうちの1つまたはそれ以上が溶液中の試薬と平衡である固形相状態であるような十分な濃度(それにより占有される容積を減少させる)で使用されることができる。その場合、反応が起こって溶液中の試薬種を消費すると、これに代わって、固体相試薬の溶解が生じる。これにより、ガスの形成速度を均等にすることができる時間依存性方法を反応に強いる。変更例として、試薬のうちの1つまたはそれ以上が、試薬に対する浸透性が制御された膜内にカプセル化されてもよい。かくして、試薬はカプセルから拡散してガス生成のために共試薬と化合する。共試薬はガス生成のための同じ結果的な反応のためにカプセルの中へ拡散してもよい。変更例として、反応はPh緩和物質または他の反応調整剤の使用により制御されることができる。同様に、水の制御式導入は、溶液系反応の場合、反応速度を制御するのに使用されることもできる。
【0039】
有利には、系における水のレベルを制御するために、代表的な室バリア物質、例えば、ポリウレタンを通るH2Oの湿分蒸気透過速度を使用することができる。しかも、ポリウレタンを的確に調整することにより、室は、水蒸気を室から通し、そして無制御N2発生反応が結果的に生じることがある水の部分圧の蓄積を防ぐように構成されることができる。ポリウレタンは、H2O浸透速度の増減を考慮して多少の架橋を含めて、熟練者の公知のように調整されることができる。
【0040】
図3は長い時間にわたって窒素の制御式生成を得るための1つの可能な装置41を示している。外側容器43は反応体、生成物、水およびガスのすべてに対して不透過性である。作動中、水溜め部45からの水が所定の速度で膜49を通って反応体混合物室47の中へ浸透する。膜49は反応体混合物室47の中への水の浸透速度を制御するのに役立つ。浸透された水が所望の濃度に達すると、この水は反応体混合物のいくらかを溶媒和して2つの反応体のイオン化する。その場合、反応はN2ガスおよび他の生成物を生成するために公称スキームにより起こるべきである。
【0041】
外側膜50は、反応室からクッション環境へN2を逃がすための媒体として役立つためにガス(および水)に対して透過性である。結局、ガスは外側膜50を通ってクッション環境へ逃げる。反応体混合物室47内の水がイオン化反応体および塩生成物の溶媒和において強く錯化され、水の熱力学的活性度が低いので、最小量の水が外側膜50を通って逃げる。
【0042】
反応体混合物室47からの幾つかのイオンが水溜め部の中へ浸透するものと思われる。しかしながら、N2を形成する反応が水溜め部45において起こることがありそうもない。また、N2は、N2の濃度(より的確には、熱力学的活性度)が反応体混合物室47および水溜め部45の両方において等しくなるような時点まで水溜め部の中へ浸透する。水の熱力学的活性度を適度にする(従って、水の浸透速度を制御するのを助けるために、且つ反応が進むにつれて反応体混合物室47から水溜め部45の中へ塩化ナトリウムが移るのを阻むように水溜め部45における塩化ナトリウムの初期濃度を有することが有用であることもある。
【0043】
変更例として、反応体は別々の部分が反応体および乾燥剤を保持する管または2つの同心球体に収容されることができる。これらの2つの部分は多孔性膜により分離されており、管の頂部または球体の外殻は多孔性膜でもある。この多孔性膜はガスの自由通過を許容するが、固形物の通過を制限する。両方の場合、この構成によれば、ガスが、反応体部分に入りながら、或いは反応体部分から去りながら、乾燥剤部分に流通する。管構成体の底部における側壁部はガスおよび液体に対して不透過性であることができる。乾燥剤の上方の頂部のみが多孔性であって、周囲環境に開放している。一般に、この装置では、試薬および固形生成物NaClのために飽和水溶液を使用することが有利であると思われる。
【0044】
更なる別の膨張剤生成方法は、炭酸塩と酸との反応によりCO2ガスを生成することである。酸は塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)または燐酸(H3PO42のような強酸、または酢酸(CH3COOH)のような中間強さの有機酸、またはクエン酸(HOC{CH2CO2H}2)またはアスコルビン酸(ビタミンC、C666)のような有機弱(固形)酸であることができる。固形酸は、おそらく、反応を促進するために水(または他の液状媒体)の存在を必要とするであろう。水は、それ自身、触媒としての微量の酸(H+)の存在に応じた速度で炭酸塩とゆっくり反応する。上記酸のすべてをHVとして表すことができる。
【0045】

下記の例は、本発明の更なる説明を行なうために示されるが、添付請求項に定められる本発明の範囲への限定を示そうとするものではない。
【0046】
例1(化学反応の実証)
1つの反応の特性を調べるために簡単な実験を行なった。
0.5gのNH4Clおよび0.6gのNaNO2をH2Oと共に全容積8.7mlの容器に入れて各塩の1M溶液を形成した。1時間後、混合工程中または室温において、窒素の形成を示す泡が認められなかった。反応を約80℃まで加熱し、この時点で泡が現われた。
反応を速めるために、酢酸を添加した以外、同じ塩濃度および溶液量を使用して反応を繰返した。2、3滴の酢酸の添加により室温においていくらかの泡を生じた。もっと酸(3ml)を添加し、その時点でガスが適度に生じた。同じ条件を使用して実験を繰返して水の置換により生成されたガスの量を測定した。実際に置換されたN2ガスの量は全体でほぼ93mlであった。
【0047】
例2(化学反応の実証)
先の実験におけるように、8.7mlの1MのNH4Clおよび1MのNaNO2(以下の表では、「錠剤」と記載されている)を使用して圧力計を備えた密封圧力室で反応を行なった。装置を100℃のオーブンに入れた。ほぼ5時間後42psiになるまで圧力を時間にわたって増大した。
【0048】
例2(反応性ペレットの製造)
各ペレットが3×10-3モルの各反応体を収容するように、等モル濃度の反応体の混合物を製造した。
ペレット1つあたりの重量:
亜硝酸ナトリウム(NaNO2) 0.207グラム
塩化アンモニウム(NH4Cl) 0.161グラム
計 0.368グラム
【0049】
例3
13回の試験を行い、その際、下記表に示すように、金属被覆ポリオレフィンバッグに反応体錠剤を充填した。水が吸収された多孔性紙の形態で水が含まれていた。バッグを密封し、表に記載のように観察した。

【0050】
このクッション膨張の開示により直面される1つの追加の障害は一般に使用されている履物クッションの設計の結果である。特に、今日の多くの流体膨張式履物クッションは室間の連通の無い多室付きである。各室を本発明により膨張されたままに保つために、各室にガス源を組み入れなければならない。これは非実用的である。1つの追加の解決策はセル間の拡散または制限された連通通路を使用することであることができる。これらの通路は、隣接した室を異なる圧力に保つことがしばしば望ましいので、連接された室の間の急速な圧力均等化を許容しないが、ガス発生系を収容している室からガス発生系の無い室へのガスのゆっくりの拡散を許容する。これらの通路は、好ましくは、室を形成するエラストマー材料における溶接部に埋設されて室間に延びているねじ部により設けられるピンホール通路(例えば、0.00000102cmないし0.0254cm(0.0000004インチないし0.01インチ))または一方向圧力弁により制御されることができる。これらのねじ部は拡散通路を構成する。有利には、ねじ部の直径および中実であるか或いは中空であるかどうかは、室間の拡散速度を要求どおりにするように変更された特性であることができる。従って、2つの隣接した高圧の室は、比較的急速な拡散を許容するために大きい直径のねじ部または中空のねじ部を使用してもよく、隣接した低圧の室は、制限された再膨張速度のみを許容するために中実の小さい直径の結合ねじ部を使用してもよい。
【0051】
このようにして設計されたクッションの例が図4に示されており、この場合、クッション51は多数の室52ないし55を有している。これらの室の各々は、室間で連通密封されて窒素で0ないし35psiのような所望の圧力まで初めに膨張されることができる。室52、53および54は高圧の室(例えば、15psig)であり、室55は比較的低圧の室(例えば、5psig)である。かかと室52には、再膨張剤装置57が設けられている。装置57は、先の説明により、膨張剤ガスを発生させてクッションの所望に加圧を維持するように機能する。室52、53の間および室52、54の間には、大きい直径のねじ部(例えば、0.000102cmないし0.0254cm(0.00004インチないし0.001インチ)59、61がそれぞれ設けられており、室間にシールを形成するエラストマー材料には繊維が埋設されており、これらの繊維は各室の中へ延びている端部を有している。室52、55の間には、比較的幅狭い直径のねじ部63(例えば、0.00000102cmないし0.000102cm(0.0000004インチないし0.0000インチ))が設けられている。
前述の室膨張剤連通装置の種類は膨張剤装置の設計に有利に使用されることもできる。しかも、制御された反応速度をもたらす膨張剤装置が構成されることができる。
【0052】
図5を参照すると、例えば10psigと25psigとの間の圧力を有するクッション内には、カスケードガス発生装置71が示されている。
この装置71は複数のセル75aないし75hを形成するエラストマー材料で構成されている。セル75aないし75hには、先の例からの錠剤のような固形試薬77が部分的に充填されている。セル75aないし75cは好ましくは水および発生された窒素ガスの浸透を許容する半透過性バリア材料、例えば、ポリウレタンで構成されている。セル75dないし75hは好ましくは米国特許第6,251,305号(これは出典を明示することにより本願明細書の開示に一部とされる)に記載のような概ね非透過性の材料で構成されている。この点では、セル75dないし75hは窒素ガス発生反応を開始する水から隔離されることができる。このようにして、セル75dないし75h内の試薬77が保存状態に保持されている。セル75aには、窒素ガス発生反応を開始するのに十分な量の水が初めに設けられている。この水はセルに故意に注入されることができ、或いはセルの壁部を通る水の自然拡散に頼ることができる。セル内に水が少量でさえ存在することにより、試薬77の反応を開始することができる。
【0053】
圧力は、理想的には、制御速度でセル75a内の圧力まで、例えば、クッション73の初めの膨張圧力より高く上昇し、数5、6ヶ月間、高い圧力を維持し、この時点で、セルは試薬を使い果たし、圧力が降下する。この間、発生された窒素は、活性化拡散の結果、セル75aの壁部に浸透し、そして膨張剤ガスをクッション73に与える。更に、窒素ガスおよび水蒸気がセル75aからセル75bへ移ることができる。この方法は、セル75aとセル75bとの間およびセル75bとセル75cとの間に共通の壁部76を設けることにより容易化される。更に、セル75aに反応により発生された過剰の水蒸気がセル75aの壁部に浸透し、それによりクッション73内の水に加わる。また、この水蒸気はセル75bおよび75cの壁部に浸透して窒素発生方法をこれらのセルにおいて開始する。
【0054】
また、クッション73内の水蒸気からいくらかの水蒸気がセル76bに入る。従って、順次的に窒素ガス圧力がセル75bにおいて上昇する。セル75b内の窒素ガス圧力の上昇とセル75a内の圧力の降下との間でいくらかの時間の重なりがあることもある。重要なことに、この方法はセルaないし75dの群全体にわたって再発生する。保存状態に保持されたセル75eないし75hに関しては、セル75dからセル75eまで水蒸気を連通させて窒素がス発生反応を開始するのに、前述のような小径の繊維79が使用されている。この手順はセル75fないし75hについて繰返される。なお、窒素ガスをクッション73に逃がすために、セル75eないし75hの各々には、ピンホール開口部、繊維通路または弁81のような窒素ガス逃がし機構が設けられている。このようにして、窒素発生反応の長期制御が行なわれる。
【0055】
先に論述したように、この装置はN2発生速度を制御するためのMVTRの有利な使用を実証している。更に、MVTRがいずれか特定のセルにおける過剰の水蒸気の発生を制御するのを助けることが期待される。しかも、いずれかのセル内の高い水蒸気含有量がクッション73内のより低い湿度レベルまで外方に自然に拡散する。
【0056】
かくして、本発明によれば、前述の利点を十分に達成する履物製品が提供されたことは明らかである。本発明をその実施形態と関連して説明したが、前記説明を鑑みて当業者には多くの変更例、変形例および変化例が明らかであることは明白である。従って、添付の請求項の精神および広い範囲内に入るような変更例、変形例および変化例すべてを含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態を組み入れた靴の側面立面図である。
【図2】模範的な靴の実施形態の未組立て部品を示す斜視図である。
【図3】ガス供給装置の概略図である。
【図4】本発明による織製クッションの概略図である。
【図5】ガス供給装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア材料で構成された少なくとも1つの室を備えており、前記バリア材料がエラストマーよりなり、前記エラストマーが第1反応体化合物に対して少なくとも半透過性であり、前記の少なくとも1つの室内には、第2反応体化合物が配置されているクッションであって、前記第1反応体化合物および前記2反応体化合物は相互作用して合成化合物を形成し、前記バリア材料を通る前記合成化合物の拡散速度は前記バリア材料を通る前記第1反応体化合物の拡散速度未満である、クッション。
【請求項8】
前記合成化合物は少なくとも1つのガスよりなる請求項1に記載のクッション。
【請求項17】
前記第1反応体化合物の少なくとも一部がクッションの外側から前記室の中へ拡散する請求項1に記載のクッション。
【請求項21】
少なくとも1つの密封されたエラストマー室を備えているクッションを有しており、前記室が反応体物質および反応体ガスを有している履物製品であって、前記反応体物質および前記反応体ガスは反応を受けて膨張剤を形成し、前記反応の速度は前記密封エラストマー室を通る膨張剤の拡散速度に等しいか或いはそれより大きい、履物製品。
【請求項23】
前記密封エラストマー室には、その中への前記反応体ガスの拡散のための通路が設けられている請求項22に記載の履物製品。
【請求項24】
バリア材料で構成された少なくとも1つの室を備えたクッションを有しており、前記の少なくとも1つの室内には、少なくとも第1および第2の固形または液状の反応体化合物が配置されている履物製品であって、前記第1反応体化合物および前記第2反応体化合物は相互作用して合成ガス状化合物を形成する、履物製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501096(P2007−501096A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533438(P2006−533438)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016672
【国際公開番号】WO2004/106768
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505438889)
【Fターム(参考)】