説明

自然薯等の栽培装置および自然薯等の栽培方法

【課題】自然薯等を大量生産でき、作業者の作業負担を軽減することができる自然薯等の栽培技術を提供する。
【解決手段】自然薯等の栽培装置10は、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器1と、複数の栽培容器1を配置して収容するためのホルダ2と、を備え、圃場に埋設するものである。栽培容器1は、円筒形状であり、ホルダ2内に傾斜させた状態で一直線上に複数配置されて収容されており、長手方向Aにおいて、栽培容器1が上下方向で重なるように配置されている。ホルダ2は、垂直断面形状がU字状または凹字状であり、目の粗い金網で形成された箱状である。ホルダ2の上部には、このホルダ2を吊り下げるまたは引き上げるための係止具であるフック部6が複数設けられている。複数の栽培容器1を一度に埋設したり取り出したりすることができ、作業効率を高めて自然薯等を大量生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然薯等の栽培技術に関し、より詳しくは、植え付けや収穫等の作業効率を高める栽培装置および栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の自然薯や山芋等(以下、自然薯等と称す)の栽培技術が提案されている。自然薯等は土中ではもともと真っ直ぐに伸びる特性があるものの、土壌が硬かったり石があったりすると土中で真っ直ぐに伸びず、品質や商品価値を下がる特性が劣ることがある。品質を高く維持しながらも作業効率を高めるために、自然薯等を傾斜させて真っ直ぐ伸ばす栽培方法が主流になっている。
【0003】
前記栽培方法としては例えば、切り欠きが形成され直径が5〜6cm、長さが1.3m程度の塩化ビニール製のパイプに栽培用の土を入れ、予め所定深さおよび所定長さに掘った溝にパイプを多数並べて傾斜させて埋設し、このパイプの地表部に種芋を植え付ける方法が知られている。この栽培方法においては、収穫時にはパイプを埋設した深さまで栽培地を再び掘り起こし、このパイプの一本ずつを引き抜いている。このような栽培方法は、種芋の植え付けや収穫作業の作業者への負担が大きく、これらの作業負担を軽減する栽培容器や栽培方法が開発されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
特許文献1には、底板部を波形又はすじ状の仕切り線状に形成すると共に、底板部に傾斜を付け、しかも積み重ね可能な複数の自然薯及び山芋類の栽培容器及びそれを収納する外箱を用意し、自然薯及び山芋類を栽培する栽培容器が記載されている。
【0005】
特許文献2には、地中部に所定幅と所定深さからなる取付溝を形成し、この取付溝内へ内部が中空状に形成された円筒体を多数並べて埋設し、これら円筒体内へ、用土を充填した栽培袋を該円筒体の略全長に対してそれぞれ挿入し、これら栽培袋内の用土へ種芋を撒いた後、所定の成育に達したとき、前記覆土を取り除いて円筒体内から栽培袋ごと自然薯を取り出して収穫する自然薯の栽培方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−164223号公報
【特許文献2】特開平11−75533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の栽培容器は、一度に複数本栽培できるものであるが、家庭菜園を目的としており圃場に埋設するものではないため、灌水等の栽培管理が煩雑になったり、使用する土の量が少なく外気温の影響を受けやすくなって自然薯等の品質が不安定になったりする等の問題がある。従って、品質の安定した自然薯等の大量生産には不向きである。また、この栽培容器を圃場に埋設しても、積み重ねた下方の山芋が埋まってしまい、圃場での栽培を行うことができない。
特許文献2に記載の栽培方法は、植え付け時には一本一本土中に埋める必要があり、収穫時には一本一本土中から取り出す必要があるため、作業者の手作業によるところが大きく、作業効率が悪いため大量生産には不向きである。
【0008】
以上のように、自然薯等の栽培技術において、自然薯等の品質を安定させながらも大量生産できる技術は未だ確立されてはおらず、手作業によるところが大きい。また、手作業が多いと作業者の負担が大きく、中腰姿勢になったり屈む姿勢を取ったりして、作業負担が依然として解決されない問題が残っている。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、品質の安定した自然薯等を、作業効率を高めて大量生産することができる自然薯等の栽培技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自然薯等の栽培装置は、圃場に埋設して自然薯等を生育させる自然薯等の栽培装置であって、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器と、前記複数の栽培容器を配置して収容するためのホルダと、を備えていることを特徴とする。
ホルダに複数の栽培容器を配置して収容したことにより、複数の栽培容器は、ホルダ内で一体となった状態となるため、このホルダを圃場に埋設すれば、一度の埋設作業で複数の栽培容器を埋設することができ、作業効率を高めて自然薯等を大量生産することができる。また、自然薯等の収穫時には、自然薯等が入ったままのホルダを取り出せば、圃場からの一度の取り出し作業で複数の栽培容器を取り出すことができ、取り出し作業の効率化をはかることができる。さらに、自然薯等一本一本がほぼ同一条件で栽培されるため、品質が安定したものなる。
【0011】
ここで、複数の栽培容器を、円筒形状とし、ホルダ内に傾斜状態で一直線上に配置して収容すれば、各栽培容器が上下方向に見て重なるように配置することとなり、上下方向の空間を有効利用することができ、面積当たりの自然薯等の本数を高めて栽培スペースを有効に利用することができる。また、栽培容器を円筒形状としたことにより、自然薯等を真っ直ぐに伸ばして栽培することが可能となり、高品質を維持した上で栽培効率を高めることが可能となる。
【0012】
また、ホルダは、垂直断面形状がU字状または凹字状であり、金網で形成された箱状であることが望ましい。このような構成とすれば、金網を折り曲げてホルダを容易に製造することができるとともに、頑丈且つ軽量なホルダとすることができる。
【0013】
さらにホルダには、このホルダを吊り下げるまたは引き上げるための係止具を設けることが望ましい。この係止具により、重機等で係止し吊り下げてホルダを移動させることが可能となるため、複数の栽培容器を有するホルダを圃場へ迅速に持ち込んで埋設することができる。また、圃場から取り出す場合においても、重機等で係止具を引き上げてホルダを取り出すことができ、吊り下げながら所定の場所に移動させることもできる。また、以上のように重機等を使用すれば、圃場への埋設作業と圃場からの取り出し作業のいずれにおいても、作業者は中腰になることがないため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0014】
ここで、ホルダの形状を、直方体状または斜方体状としている。ホルダの形状を直方体状とすれば、これを埋設するために、圃場に穴を掘りやすくなる。また、ホルダの形状を斜方体状とすれば、複数のホルダを一直線上に配置しても埋設後の自然薯等の並びを等間隔とすることができ、栽培効率を高めることができる。なお、直方体状とは、正面図および平面図が矩形(長方形)、側面図が長方形(ただし、下部がU字状のものを含む)である形状を意味し、斜方体状とは、正面図が平行四辺形であり、平面図が長方形であり、側面図が長方形(ただし、下部がU字状のものを含む)である形状を意味する。
【0015】
また、本発明の自然薯等の栽培方法は、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器に培養土を充填する充填工程と、複数の栽培容器をホルダに配置して栽培装置とする配置工程と、培養土に種芋またはムカゴを播く播種工程と、栽培装置を埋設するために圃場に土を掘ってなる穴部を形成する掘削工程と、栽培装置を穴部に埋設する埋設工程と、自然薯等が所定の大きさに達したときに圃場から自然薯等とともに栽培装置を取り出す取り出し工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
上記のような構成とすれば、重機やクレーン等を使用して、一度の埋設作業で複数の栽培容器を埋設することができ、また、圃場からの一度の取り出し作業で複数の栽培容器を取り出すことができるため、作業効率を高めることができ、自然薯等を大量生産することができる。圃場への埋設作業と圃場からの取り出し作業のいずれにおいても、作業者は中腰になることがないため、作業者の労働負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の最大の特徴は、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器を、ホルダに配置して収容したことにある。一度の埋設作業で複数の栽培容器を埋設することができ、また、圃場からの一度の取り出し作業で複数の栽培容器を取り出すことができるため、作業効率を高めることができ、自然薯等を大量生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態である自然薯等の栽培装置を示す正面図であり、図2は同栽培装置の拡大側面図である。図3は同栽培装置の栽培容器の下端部付近を示す拡大正面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である自然薯等の栽培装置(以下、栽培装置と称す)10は、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器1と、複数の栽培容器1を配置して収容するためのホルダ2と、を備え、圃場に埋設して自然薯等を生育させるものである。栽培容器1は、円筒形状であり、ホルダ2内に傾斜させた状態でほぼ一直線上に複数配置されて収容されており、長手方向Aにおいて、栽培容器1が上下方向で重なるように配置されている。栽培容器1には、この円筒状の軸線方向に切り欠き1cが形成されており、この切り欠き1cを上向きにして配置されている。栽培容器1の上端部1aは、上方が開放され且つ幅が広くなった形状に形成されており、この上端部1aに後述する種芋またはムカゴ等を植え付けて自然薯等を栽培するものである。
【0020】
また、ホルダ2は、垂直断面形状がU字状または凹字状であり、目の粗い金網で形成された箱状である。そしてこのホルダ2は、直方体状であり正面視矩形状である。ホルダ2の底部には、栽培容器1の下端部1bを当接させて位置決めするためのストッパ3が複数設けられており、一つの栽培容器1に対し、一個のストッパ3が対応している。さらに、ホルダ2の側面には、複数の栽培容器1を傾斜状態に保つための受け梁4a,4bが一定間隔毎に、複数設けられている。受け梁4aは栽培容器1の上部付近を支持しており、受け梁4bは栽培容器1の中部付近を支持している。なお、受け梁4aは、栽培容器1の横滑りを防止する目的で、中央部が凹型またはV型の形状としてある。
【0021】
以上のように、一つの栽培容器1に対し、ストッパ3と受け梁4a,4bとにより3箇所支持されて、傾斜角(仰角)を約15度に設定して傾斜させて配置している。ここで、さらに多くの箇所にストッパや受け梁を設けてさらに安定化をはかることもでき、傾斜角度も適宜設計変更しても良い。また、傾斜角度とは、水平方向から立ち上がった角度を意味する。
なお、本実施形態においては、栽培容器1の上部はホルダ2の側面より突出して配置されているが、これに限定されるものではなく、栽培容器1が安定してホルダ2に配置されて収容できれば他の形態とすることもできる。
【0022】
ホルダ2の寸法について説明する。ホルダ2の長手方向Aの長さは約3.9mであり、高さは約27.5cm、厚み方向C(図5参照)の厚みが約16cmである。ホルダ2の内部には、約30cm間隔で栽培容器10が配置されている。後述するフック部6は任意の位置に設けることができるが、本実施形態においては、ホルダ2の中心位置と、そこから両側に約1.2m離間した位置とに、合計3箇所に設けてある。なお、ホルダ2の大きさは適宜設計変更でき、ホルダ2やフック部6等は、収穫時の取り出しに耐え得る強度を備えている。ホルダ2の金網の目は10〜30cmとしているが、これに限定されるものではなく、圃場に埋設するために栽培容器1とホルダ2との間に容易に土壌を流し込める程度あれば良く、適宜設計変更できる。
【0023】
さらに、ホルダ2の上部には、このホルダ2を吊り下げるまたは引き上げるための係止具であるフック部6が複数設けられている。そして、フック部6には吊り輪7が係止されており、この吊り輪7がワイヤ8により吊り下げビーム9の上端部に設けられた係止部材9aに吊り下げ可能に支持されている。吊り下げビーム9の係止部材9aにはワイヤ11が係止されており、このワイヤ11が、重機やクレーンにより吊り上げ可能となっている。すなわち、ワイヤ11を重機やクレーンにより引き上げれば、ホルダ2に配置し収容された複数の栽培容器1を一度に持ち上げて、移動することができる。なお、吊り輪7は、フック部6から外すことができ、吊り輪7とワイヤ8,11と吊り下げビーム9は各栽培装置10を埋設する毎に使いまわすことができる。
【0024】
従って、栽培装置10により、一度の埋設作業で複数の栽培容器1を埋設することができ、また、自然薯等の収穫時においては、圃場からの一度の取り出し作業で複数の栽培容器1を取り出すことができるため、作業効率を高めることができ、自然薯等を大量生産することができる。
【0025】
次に、図4を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。図4は本発明の第2の実施形態である自然薯等の栽培装置(以下、栽培装置)20を示す一部を省略した正面図である。ここで、図4において、ホルダ22以外は第1の実施形態の栽培装置と同一であり、同一の符号を付してあるため、説明を省略する。
【0026】
ホルダ22は、正面視が並行四辺形の形状である斜方体状であり、ホルダ22内に複数の栽培容器1を傾斜状態でほぼ一直線上に配置したとき、ホルダ22の長手方向Aにある側面は水平方向に対して傾斜状態にあり、複数の栽培容器1とほぼ同等である仰角約15度としてある。
上記の構成とすれば、ホルダ22は、圃場に埋設する際に、長手方向に隣接するホルダの端部を重ねるように配置すれば、後述するように、圃場において栽培容器1が途切れることなく、ほぼ一直線上に埋めることができ、圃場中のスペースをさらに有効利用することができる(図6参照)。
【0027】
次に、本発明の自然薯等の栽培方法について、工程ごとに説明する。
(1)充填工程
自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器1に、上端部1aから培養土を充填する。充填に際しては、自動充填装置を用いて均一な密度となるように充填し、自然薯等の生育の安定化をはかる。なお、培養土を栽培容器1に充填すると、培養土の圧力により切り欠き1cが広がって、栽培容器1は少し膨らんで断面U字の形状となる。このとき、外形を拘束するように複数本林立させて振動機により振動を与えながら充填する。使用する培養土としては、赤土、マサ土、パーライト、モミガラ等をコンクリートミキサーに投入し混合したものを使用するが、状況に応じて適宜変更しても良い。
【0028】
(2)配置工程
複数の栽培容器1をホルダ2に仰角を15度の状態で傾斜させて配置して栽培装置10,20を形成する。なお、ストッパ3や受け梁4a,4bは予めホルダ2,22に設けられているため、これらに栽培容器1をホルダ2,22に支持させることで容易に配置して収容することができる。なお、本栽培方法においては、充填工程の次に配置工程としているが、逆にしても良く、培養土が均一に充填できれば配置工程の次に充填工程とすることもできる。
【0029】
(3)播種工程
栽培容器1に充填した培養土に、種芋またはムカゴを播いて、覆土をする。種芋を使用すると生育期間は短く済むが、品質を考慮すれば、ムカゴや種子を発芽させて生育させた苗を培養土に播く方が望ましい。なお、播種工程は、充填工程と配置工程の間に設けても良く、配置工程と充填工程の後に設けても良い。
【0030】
(4)掘削工程
栽培装置10,20を埋設するために圃場に土を掘って穴部を形成する。この穴部は、長手方向A(図1,図4参照)に沿って掘るため、細長い溝状の穴部となる。
【0031】
(5)埋設工程
栽培装置10,20を穴部に埋設する。穴部と栽培装置10,20との間に隙間が生じる場合には、土壌を隙間に充填し、さらに上方から覆土を行う。なお、この工程は、ワイヤ11を重機やクレーンで持ち上げて行う。埋設後は、吊り輪7をフック部6から外し、図2に示す栽培装置10,20の状態で圃場に埋設する。
ここで、栽培装置10,20のホルダ2,22の並べ方について、図5および図6を用いて説明する。図5はホルダ2の並びを示す概略図であり、(a)はホルダ2を二つ配置した場合の平面図、(b)はさらに複数のホルダ2を配置した概要を示す平面図、(c)は(b)において自然薯等を栽培した概要を示す拡大側面図である。図6はホルダ22の並びを示す概略図であり、(a)はホルダ22を二つ配置した場合の平面図、(b)は(a)において自然薯等を栽培した概要を示す拡大側面図である。
【0032】
第1の実施形態である正面視矩形状(直方体状)のホルダ2を圃場に埋設する場合、図5(a)に示すように、自然薯等二つ分のピッチに相当する平面視長さB(約60cm)を、栽培容器1の厚みC方向に重ねて配置する。これを順次繰り返して配置すれば、ホルダ2の長さ方向Aでみると、栽培容器1に植え付けられた種芋等をほぼ等間隔で植え付けることができ、圃場スペースを有効利用することが可能となる。
また、図5(b)に示すようにホルダ2を交互に配置し二列とすることもできる。この場合、図5(c)に示すように、一列でみるとホルダ2の境界では、自然薯等12の間隔Dは約90cmとなり、ホルダ2内での自然薯等12の間隔Eの約30cmよりも大きくなるが、マルチ管理等の作業性を考慮すると、ホルダ2を二列とすることが望ましい。なお、以上のようなホルダ2の並びは、これらに限定されるものではなく、適宜配置を変更しても良い。
【0033】
一方、第2の実施形態である正面視並行四辺形の形状のホルダ22を圃場に埋設する場合、図6(a)に示すように、長手方向Aにほぼ一直線上に並べて配置する、すなわち図6(b)に示すように、長手方向に隣接するホルダ22の端部を上下方向に重ねるように配置する。これにより、圃場において栽培容器1を一列にほぼ一直線上に埋めて種芋等をほぼ等間隔で植え付けることができ、ホルダ22内の自然薯等12の間隔D’と、ホルダ22での境界にある自然薯等12の間隔Eは、概ね等間隔とすることができ、約30cmである。このように、列中において大きな隙間をなくすことができ、圃場中のスペースをさらに有効利用することができる。
また、ホルダ22には、上下左右にずれることを防止するための係止具13が設けられており、係止具13によりホルダ22どうしを係止させて、圃場中において一直線上に並べて配置する。これにより、埋設後のホルダ22のずれを防止でき、自然薯等12の栽培期間中において自然薯等12がほぼ一直線上に植え付けられているため見た目にも良い。なお、係止具13は板を使用しているが、係止できるものではあればワイヤ等でも良い。
【0034】
次に、栽培装置10,20の埋設後の概要について図7を用いて説明する。図7は栽培装置10,20を埋設し自然薯等12を栽培している概要を示す図であり、(a)は第1実施形態の栽培装置10を二列に並列配置したことを示す断面図、(b)は第2実施形態の栽培装置20を一列に配置したことを示す断面図である。
【0035】
図7(a)に示すように、栽培装置10を圃場Sに栽培容器1の上端部1aの一部が地面Gよりも高くなるように埋設し、土または培養土を被せて栽培装置10全体が埋まるように畝31を形成する。気温や地温に応じて、マルチ32を畝31に被覆する。ここで、自然薯等12が生長しても生育が阻害されないように、自然薯等12間は、他の被覆資材33で被覆する。このように、地温を下げずに栽培することにより、自然薯等12の生育を促す。以上のように、埋設する栽培装置10毎に畝31をつくり自然薯等12を栽培する。また、畝31間(株間)は溝状となるが、ここにもマルチ32を被覆しても良く、さらにマルチ32の繋ぎ目どうしをファスナー等で止めれば、地温や土壌水分をさらに好適に維持できる。
【0036】
また、図7(b)に示すように、栽培装置20を圃場Sに栽培容器1の上端部1aの一部が地面Gよりも高くなるように埋設し、土または培養土を被せて畝31を形成する。気温や地温に応じて、マルチ32を畝31に被覆する。このようにマルチ32で被覆すれば、前述と同様に、自然薯等12の生育を促すことができる。また、前述と同様に、畝31間(株間)は溝状となるが、ここにもマルチ32を被覆しても良く、さらにマルチ32の繋ぎ目どうしをファスナー等で止めれば、地温や土壌水分を好適に維持できる。
なお、マルチ32は、土壌温度を好適に調整するために、白色ビニルマルチを使用することが望ましい。
【0037】
(6)取り出し工程
自然薯等が所定の大きさに達したときに、畝31の表面を払いのけて、吊り輪7をフック部6に引っ掛け係止して、ワイヤ11を重機やクレーンで持ち上げて圃場から自然薯等とともに栽培装置10,20を取り出す。このとき、栽培容器1,21とホルダ2,22との間にある土壌は、ホルダ2,22の網目から容易に落とすことができる。そしてこの栽培装置を所定の場所へそのまま移動する。
【0038】
(7)培養土除去工程
所定の位置へ移動した栽培装置10,20から栽培容器1を取り出す。そして、上端部1aが引っ掛かるセットダイと振動モータを有する振動機に、栽培容器1の上端部1aをセットダイに固定して、栽培容器1内の培養土を振動モータから発生する振動により培養土を下方に落として除去する。
【0039】
(8)自然薯等の取り出し工程
培養土を除去後、栽培容器1の切り欠き1cを幅方向に開き、自然薯等を取り出す。なお、この工程は自動化することが可能である。
【0040】
以上のことから、本発明においては、ホルダ10,20に複数の栽培容器1,21を配置して収容したことにより、複数の栽培容器1,21は、ホルダ10,20内で一体となった状態となるため、このホルダ10,20を圃場に埋設すれば、一度の埋設作業で複数の栽培容器1,21を埋設することができ、作業効率を高めて自然薯等を大量生産することができる。また、自然薯等の収穫時には、自然薯等が入ったままのホルダ10,20を取り出すこととなり、圃場からの一度の取り出し作業で複数の栽培容器1,21を取り出すことができ、取り出し作業の効率化をはかることができる。さらに、作業中に作業者は中腰になることがないため、作業者の労働負担を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、自然薯等の根部が真っ直ぐ伸びるような作物を大量生産する技術として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態である自然薯等の栽培装置を示す正面図である。
【図2】同栽培装置の拡大側面図である。
【図3】同栽培装置の栽培容器の下端部付近を示す拡大正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態である自然薯等の栽培装置を示す一部を省略した正面図である。
【図5】ホルダの並びを示す概略図であり、(a)はホルダを二つ配置した場合の平面図、(b)はさらに複数のホルダを配置した概要を示す平面図、(c)は(b)において自然薯等を栽培した概要を示す拡大側面図である。
【図6】ホルダの並びを示す概略図であり、(a)はホルダを二つ配置した場合の平面図、(b)は(a)において自然薯等を栽培した概要を示す拡大側面図である。
【図7】栽培装置を埋設し自然薯等を栽培している概要を示す図であり、(a)は第1実施形態の栽培装置を二列に並列配置したことを示す断面図、(b)は第2実施形態の栽培装置を一列に配置したことを示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10,20 自然薯等の栽培装置
1 栽培容器
1a 上端部
1b 下端部
1c 切り欠き
2,22 ホルダ
3 ストッパ
4a,4b 受け梁
6 フック部
7 吊り輪
8,11 ワイヤ
9 吊り下げビーム
9a 係止部材 12 自然薯等
31 畝
32 マルチ
33 被覆資材
A 幅方向
B 長さ
C 厚み方向
D,D’ 間隔
E 間隔
G 地面
S 圃場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に埋設して自然薯等を生育させる自然薯等の栽培装置であって、自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器と、前記複数の栽培容器を配置して収容するためのホルダと、を備えていることを特徴とする自然薯等の栽培装置。
【請求項2】
前記複数の栽培容器は、円筒形状であり、前記ホルダ内に傾斜状態で一直線上に配置されて収容されている請求項1記載の自然薯等の栽培装置。
【請求項3】
前記ホルダは、垂直断面形状がU字状または凹字状であり、金網で形成された箱状である請求項1または2記載の自然薯等の栽培装置。
【請求項4】
前記ホルダには、該ホルダを吊り下げるまたは引き上げるための係止具が設けられている請求項1から3のいずれかの項に記載の自然薯等の栽培装置。
【請求項5】
前記ホルダの形状は、直方体状または斜方体状である請求項1から4のいずれかの項に記載の自然薯等の栽培装置。
【請求項6】
自然薯等を栽培するために内部に空洞を有する複数の栽培容器に培養土を充填する充填工程と、前記複数の栽培容器をホルダに配置して栽培装置とする配置工程と、前記培養土に種芋またはムカゴを播く播種工程と、前記栽培装置を埋設するために圃場に土を掘ってなる穴部を形成する掘削工程と、前記栽培装置を前記穴部に埋設する埋設工程と、自然薯等が所定の大きさに達したときに圃場から自然薯等とともに前記栽培装置を取り出す取り出し工程と、を有することを特徴とする自然薯等の栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−116948(P2007−116948A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311846(P2005−311846)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(592095734)株式会社八ちゃん堂 (12)
【Fターム(参考)】