説明

自立保持装置

【課題】組み立てが容易で、かつ、小型化や低コスト化を図るのに適した自立保持装置を提供すること。
【解決手段】自立保持装置は、第1回転軸12に連結された便座に対する自立保持機構19を備えており、かかる自立保持機構19では、第1回転軸12の軸端部126に半径方向外側に突出した内側ピン191が保持され、カバー13の円筒部134には半径方向に変位可能な外側ピン192が保持されている。円筒部134には、コイルバネからなる環状付勢部材195が装着されており、第1回転軸12に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、環状付勢部材195の付勢力により内側ピン191と外側ピン192との乗り越えが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器の便座や便蓋、あるいは開閉蓋等の揺動体を倒れないように自立状態に保持する自立保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式便器の便座や便蓋、あるいは開閉蓋等の回転体を倒れないように起立した状態に自立保持する自立保持装置としては以下の先行技術が存在する。
【0003】
まず、オイルダンパー機構のダンパー軸に設けた凹溝に内側ローラを配置する一方、外枠に設けたスリットに外側ローラを配置し、内側ローラと外側ローラの乗り越えを、部分的な開放部を備えた円弧状の板バネで阻止する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記の先行技術と同様な構成において、内側ローラに代えて樹脂突起を用い、外側ローラに代えてバネ性をもった樹脂突起を用いた構成が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、上記の先行技術と同様な構成において、外側ローラに代えて板バネを用いた構成が提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また、2枚の板バネの間にボールを挿入し、ダンパー軸が回転した際、板バネの抗力でダンパー軸の回転を阻止する構成が提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
さらに、複数のアシストスプリングを便座が開く方向に直列配置した構成が提案されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平8−182635号公報
【特許文献2】特開平8−24161号公報
【特許文献3】特開2004−194772号公報
【特許文献4】特開平6−343576号公報
【特許文献5】特開2007−68910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、円弧状の板バネを用いた場合には、組み立ての際、板バネが開くように大きな力で半径方向外側から板バネを装着する必要があるため、組み立て作業が難しいという問題点がある。しかも、円弧状の板バネを用いた場合には、開放部の位置を外側ローラに対して周方向でずれるように位置を調整する必要があるので、組み立て作業に手間がかかるとともに、板バネの周方向の位置を規定する位置決め部を設ける必要がある分、構造を簡素化しにくいという問題点がある。また、特許文献2に記載の構成のように、バネ性をもった樹脂突起を用いた場合には、バネ性が経時的あるいは環境温度によって変化するなどの問題点がある。また、特許文献3、4に記載の構成では、複雑な構成の板バネが必要であり、部品コストが増大する。さらに、特許文献5に記載の構成では、複数のアシストスプリングが直列に配置する必要があるため、軸線方向の寸法が長くなってしまうという問題点がある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、組み立てが容易で、かつ、小型化や低コスト化を図るのに適した自立保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明では、固定体に回転可能に支持された回転部材に所定レベル以上の回転トルクが印加されない限り当該回転部材の回転を阻止して当該回転部材と一体に回転する揺動体の自立を保持する自立保持装置であって、前記固定体および前記回転部材のうち、一方側部材に形成された軸部には半径方向外側に突出した突部が形成され、他方側部材において前記軸部の周りを囲む筒部には半径方向に変位可能な押圧部が形成され、前記筒部には、前記押圧部を半径方向内側に向けて付勢する環状付勢部材が装着され、前記回転部材に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、前記環状付勢部材の付勢力により前記突部と前記押圧部との乗り越えが阻止され、前記回転部材に所定レベル以上の回転トルクが付与されているときには、前記環状付勢部材の付勢力に抗して前記押圧部を半径方向外側に変位させて前記突部と前記押圧部との乗り越えが行なわれることを特徴とする。
【0011】
本発明では、回転部材に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、内側部材において半径方向外側に突出した突部と、外側部材において半径方向に変位可能な押圧部との乗り越えを環状付勢部材の付勢力によって阻止する。このため、洋式便器の便座や便蓋、あるいは開閉蓋等の揺動体を倒れないように自立状態に保持することができる。ここで、押圧部は環状付勢部材によって付勢され、かかる環状付勢部材であれば、筒部の軸線方向から装着すればよいので、円弧状の板バネが開くように大きな力を加えて半径方向外側から板バネを外側部材に装着するという手間のかかる組み立て作業を行なう必要がない。また、環状付勢部材であれば、周方向に関しては位置決めや位置合わせを行う必要がないので、その点からいっても、組み立て作業が容易であるとともに、構成の簡素化を図ることができる。さらに、環状付勢部材であれば、周方向のいずれの箇所が押圧部に接している場合でも同等の付勢力を発揮するので、安定した動作を行なうという利点もある。
【0012】
本発明において、前記一方側部材が前記回転部材であり、前記他方側部材が前記固定体である構成、前記一方側部材が前記固定体であり、前記他方側部材が前記回転部材である構成を採用することができる。ここで、前記一方側部材が前記回転部材であり、前記他方側部材が前記固定体である場合、回転部材側の軸部を固定体側の筒部で囲むことができるので、内部への異物の侵入を防止することができる。
【0013】
本発明において、前記環状付勢部材としては、コイルバネを用いることが好ましい。コイルバネは比較的安価であるため、自立保持装置のコストを低減することができる。しかも、コイルバネであれば、占有スペースが狭くてよい。また、コイルバネであれば、径の拡大と縮小が繰り返されても劣化が小さい。さらに、コイルバネの場合、線材の巻回方向に捩れながら径が拡大するため、径の拡大と縮小が繰り返されるうちに周方向にずれていく。このため、コイルバネにおいて押圧部に接する箇所が移動するため、特定箇所が変形してしまうことがないので、付勢力が安定しているという利点がある。さらにまた、コイルバネであれば、線材の巻回数や太さを変えるだけで、付勢力を調整することができる。また、線材が多重に巻回されている場合、その一部が切断されても、付勢力を発揮するため、ある程度の自立保持機能を発揮することができる。
【0014】
本発明において、前記コイルバネは1巻以上のターンを有し、当該コイルバネの端部は前記固定体および前記回転部材に対して巻回方向に回転可能な状態で前記筒部に装着されていることが好ましい。すなわち、コイルバネの端部が固定されておらず、前記乗り越えの際、ターンの数(巻き数)が減るように径が広がることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記突部および前記押圧部はいずれも、金属製であることが好ましい。このように構成すると、環境温度が変化しても、動作が安定しており、寿命も長い。
【0016】
本発明において、前記突部は、前記押圧部と接する箇所が断面円弧状であり、前記押圧部は、前記突部と接する箇所が断面円弧状であることが好ましい。このように構成すると、エッジがないので、突部と押圧部との間に異常な引っ掛かりが発生せず、突部と押圧部との乗り越えがスムーズである。
【0017】
本発明において、前記突部および前記押圧部は各々、前記筒部の軸線方向の一方側端面で開口する穴あるいは溝から挿入された金属製の丸棒であることが好ましい。このように構成すると、筒部の軸線方向の一方側で開口する穴や溝から金属製の丸棒を挿入すればよいので、組み立て作業が容易である。
【0018】
本発明において、前記回転部材が一方方向に回転する際に当該回転部材に制動力を印加する第1ダンパー機構を備えていることが好ましい。このように構成すると、揺動体が倒れようとする際の方向と、第1ダンパー機構において制動力が発生する際の揺動体の回転方向とを一致させれば、突部と押圧部との乗り越えを阻止する環状付勢部材に求められる付勢力を小さくすることができる。
【0019】
本発明では、前記固定体において、前記第1ダンパー機構を構成する固定部材は、前記円筒部と異なる部材からなることが好ましい。このように構成すると、自立保持機構と第1ダンパー機構とを途中まで別々に組み立てた後、連結すればよいので、組み立て作業を効率よく行なうことができる。
【0020】
本発明において、前記回転部材とは別の回転部材が前記固定体に対して回転可能に支持され、前記別の回転部材には、当該別の回転部材が一方方向に回転する際に制動力を発揮する第2ダンパー機構を備え、前記環状付勢部材は、前記第2ダンパー機構を構成する部材により、前記筒部からの抜けが防止されていること好ましい。このように構成すると、環状付勢部材の抜け防止対策を別途行なう必要がないため、構成の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る自立保持装置では、回転部材に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、内側部材において半径方向外側に突出した突部と、外側部材において半径方向に変位可能な押圧部との乗り越えを環状付勢部材の付勢力によって阻止する。このため、洋式便器の便座や便蓋、あるいは開閉蓋等の揺動体を倒れないように自立状態に保持することができる。ここで、押圧部は環状付勢部材によって付勢され、かかる環状付勢部材であれば、筒部の軸線方向から装着すればよいので、円弧状の板バネが開くように大きな力を加えて半径方向外側から板バネを外側部材に装着するという手間のかかる組み立て作業を行なう必要がない。また、環状付勢部材であれば、周方向に関しては位置決めや位置合わせを行う必要がないので、その点からいっても、組み立て作業が容易であるとともに、構成の簡素化を図ることができる。さらに、環状付勢部材であれば、周方向のいずれの箇所が押圧部に接している場合でも同等の付勢力を発揮するので、安定した動作を行なうという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(全体構成)
図1(A)、(B)は、本発明に係る自立保持装置を備えた洋式トイレの全体図、および便座や便蓋が揺動する様子を示す側面図である。図2は、本発明が適用された自立保持装置の分解斜視図である。図3(A)、(B)は、図2に示す自立保持装置を軸線方向と平行に切断したときの縦断面図、および各部材の連結部分の縦断面図である。
【0024】
図1(A)、(B)に示す洋式便器は、便器本体2、水タンク3、便座5、便蓋6、および自立保持装置1などから構成されている。便座5および便蓋6は、便器本体2にヒンジ機構を介して支持されており、便器本体2に対して開閉自在となっている。本形態において、便座5は、図1(b)に実線で示す全開位置から2点鎖線で示す全閉位置までの間で開閉され、その開閉角度θは110°前後に設定されている。
【0025】
このように構成した洋式便器において、自立保持装置1は、後述するように、便座5および便蓋6を起立状態(開姿勢)から平伏状態(閉姿勢)に移行する際(矢印Cで示す)、その速度を低減するダンパー機能と、便座5が斜め姿勢になった際、所定レベル以上の力が便座5に印加されない限り便座5の自重による傾倒を阻止し、便座5を自立状態に保持するトルクリミッタ機能とを備えている。
【0026】
図2および図3(A)において、本形態の自立保持装置1は、図1に示す便蓋6および便座5の双方に機構的に連結される回転軸を備えるもので、筒状の第1回転軸12と、この第1回転軸12内に同軸状に挿入され、第1回転軸12から両方の軸端部が突き出た第2回転軸16と、第1回転軸12が内部を挿通する第1ケーシング11と、第2回転軸16の一方の軸端部160に同軸状に連結されたロータ17と、ロータ17が内部に同軸状に配置された第2のケーシング18とを有している。本形態では、第1回転軸12の第1ケーシング11からの突出部分に便座5が機構的に連結され、第2回転軸16の第1回転軸12からの突出部分に便蓋6が機構的に連結される。
【0027】
詳しくは後述するように、第1ケーシング11と第1回転軸12との間に区画形成された第1密閉空間20A、および第2のケーシング18とロータ17との間に区画形成された第2密閉空間20Bの各々には、オイル(粘性流体)を用いた第1流体圧ダンパー機構10A、および第2流体圧ダンパー機構10Bが構成されている。
【0028】
第1ケーシング11と第2のケーシング18は、図3(B)に示すように、第2回転軸16の軸端部160を通す開口部130が形成されたカバー13を間に挟んでフランジ同士が共通のねじ116で軸線方向に連結され、部材同士は溶接により接合されている。従って、第1ケーシング11は共通のカバー13の一方側端面で覆われ、第2のケーシング18は共通のカバー13の他方側端面で覆われている。なお、第2回転軸16において、カバー13の開口部130から突出している軸端部160には、その抜けを防止する止め輪161が取り付けてある。
【0029】
(自立保持機構の構成)
本形態では、以下に説明するように、第1ケーシング11、第2のケーシング18およびカバー13からなる固定体100に回転可能に支持された第1回転軸12(回転部材)に所定レベル以上の回転トルクが印加されない限り第1回転軸12の回転を阻止する自立保持機構19が構成されており、かかる自立保持機構19によって、便座5を自立状態に保持するようになっている。かかる自立保持機構19の構成を、図2、図3、図4、図5および図6を参照して説明する。
【0030】
図4は、本発明を適用した自立保持装置1において自立保持機構が構成されているユニット部分の斜視図である。図5(A)〜(F)はそれぞれ、図2に示す自立保持装置1において、自立保持機構を構成する第1回転軸12の軸端面の断面図、カバー13の断面図、カバー13に第1回転軸12を位置合わせした状態の正面図、およびカバー13に第1回転軸12を位置合わせした状態の断面図である。なお、図5では、各部材の構成が分かりやすいように、断面図以外にも、同一部材に係る部分には同一の斜線を付してある。
【0031】
図1(B)に示すように、本形態では、第1回転軸12の回転領域は、第1回転軸12に連結された便座5が自重で倒れる第1回転領域L1と、便座5が自立保持される第2回転領域L2とに区分されているともに、自立保持装置1には、第1回転軸12が第1回転領域L1と第2回転領域L2との間を移行するときに負荷を発生させる自立保持機構19が内蔵されている。
【0032】
かかる自立保持機構19を構成するにあたって、本形態では、図2、図3および図4に示すように、第1ケーシング11、第2のケーシング18およびカバー13からなる固定体100のうち、カバー13と第1回転軸12とを利用している。
【0033】
すなわち、図2、図3(A)、図4、および図5(A)、(B)に示すように、第1回転軸12(回転部材)においてカバー13側に位置する軸端部126(軸部)の外周面には、その端縁から軸線方向に延びた断面半円状の2本のピン保持溝129が形成されている。また、カバー13において、第1回転軸12の軸端部126が差し込まれる円筒部134(筒部)のうち、第1回転軸12の軸端部126が当接する底面135には、自立保持装置1の組立時に、軸線方向からみてピン保持溝129に重なる位置に2つのピン挿入孔136が形成されている。
【0034】
このため、図5(C)、(D)に示すように、自立保持装置1の組立時、第1回転軸12を軸線周りに回転させて2つのピン保持溝129の位置と2つのピン挿入孔136の位置を合わせれば、図5(E)、(F)に示すように、ピン挿入孔136からピン保持溝129に2本の内側ピン191を各々装着することができる。この状態で、内側ピン191の約1/2に相当する部分は、図5(F)に示すようにピン保持溝129から半径方向外側に突出し、突部を構成する。
【0035】
また、図5(B)に示すように、カバー13において内側ピン191よりも半径方向外側に位置する円筒部134には、外側ピン192を装着するピン収納溝137が2箇所に形成されており、これらのピン収納溝137は、円筒部134を囲む環状溝138と、第1回転軸12の軸端部126と円筒部134との間に形成された隙間139とに繋がっている。このため、図5(E)、(F)に示すように、環状溝138内において、円筒部134の周りに環状付勢部材195を装着した後、環状付勢部材195をやや変形させながら2つのピン収納溝137の各々に2本の外側ピン192を装着すると、2本の外側ピン192は、環状付勢部材195によって、第1回転軸12の軸端部126の外周面に弾性をもって押圧された状態で保持される。
【0036】
ここで、ピン収納溝137は、外側ピン192の周方向の変位を阻止するが、外側ピン192が半径方向に変位することが可能なサイズに形成されている。このため、外側ピン192は、半径方向外側に変位する押圧部として機能する。また、環状付勢部材195の付勢力は、便座5が起立している状態から、矢印Cで示す閉方向に回転させる際に閉位置に到達するのに必要な回転トルクの下限レベルを規定する。かかる環状付勢部材195として、本形態では、金属製の線材を多重に巻回したコイルバネが用いられており、コイルバネの両端部は固定されておらず、固定体100および第1回転軸12に対して巻回方向に回転可能な状態で円筒部134に装着されている。
【0037】
(自立保持機構19の動作、作用およびその主な効果)
図6(A)、(B)、(C)は、図4および図5に示す自立保持機構19の動作を示す説明図であり、図5(F)に示す状態から第1回転軸12が矢印Cで示す方向に順次回転した様子を示してある。
【0038】
図4および図5を参照して説明した自立保持機構19において、便座5が図2(B)にように便器本体2上で平伏する姿勢から、利用者が便座5を開方向に回転させると、自立保持機構19において、第1回転軸12は、図5(F)に示す位置から矢印Oで示す開方向に回転し、図6(A)に示すように、内側ピン191と外側ピン192が当接する。その間、外側ピン192は、環状付勢部材195によって、第1回転軸12の軸端部126の外周面に付勢されているだけであるため、大きな負荷を発生させない。かかる開動作の際、便座5および第1回転軸12に印加される回転トルクは大きいので、外側ピン192が環状付勢部材195で押圧されているにもかかわらず、図6(B)に示すように、環状付勢部材195の付勢力に抗して、内側ピン191が外側ピン192を外側に変位させ、図6(C)に示すように、内側ピン191と外側ピン192との乗り越えが起こる。しかる後は、便座5は小さな力で回転させることができ、便座5は、水タンク3の側(奥の方)に傾斜する姿勢となる。
【0039】
かかる動作とは反対に、水タンク3の側(奥の方)に傾斜していた便座5に閉方向の力が加わると、第1回転軸12も、矢印Cで示す閉方向に回転し、図6(C)に示すように、内側ピン191が外側ピン192に当接する状態となる。その間、外側ピン192は、環状付勢部材195によって、第1回転軸12の軸端部126の外周面に付勢されているだけであるため、大きな負荷を発生させない。但し、図6(C)に示すように、内側ピン191が外側ピン192に当接した状態では、第1回転軸12が、矢印Cで示す閉方向に回転しようとする方向に対しては、環状付勢部材195の付勢力によって、大きな負荷が加わる。従って、利用者が便座5に力を加えず、便座5に不用意な力が加わって便座5が閉方向に回転しようとしている場合には、第1回転軸12に印加されている矢印C方向の回転トルクが所定レベル未満であるので、環状付勢部材195の付勢力は、内側ピン191が外側ピン192を乗り越えるのを阻止する。それ故、第1回転軸12は、図6(C)に示す位置で停止するので、便座5は、自立姿勢に保持されることになる。
【0040】
これに対して、利用者が便座5を閉方向に回転させようとした場合には、第1回転軸12に印加されている矢印C方向の回転トルクが所定レベル以上であるため、図6(B)に示すように、内側ピン191が外側ピン192を半径方向外側に強く押圧するので、環状付勢部材195は径が拡大するように変形する。その結果、図6(A)に示すように、内側ピン191は外側ピン192を乗り越えるので、それ以降、利用者が便座5から手を放した場合でも、便座5は自重により、矢印Cで示す閉方向に回転し、便器本体2上に平伏した姿勢となる。
【0041】
なお、本形態では、図2(B)に示すように、便座5が直立した位置から閉方向に斜めに傾いた位置で、自立保持機構19によって第1回転軸12に負荷を印加するように構成したが、自立保持機構19によって第1回転軸12に負荷を印加する位置については、便座5が直立した位置、あるいは、便座5が直立した位置から開方向に斜めに傾いた位置であってもよい。
【0042】
以上説明したように、本形態の自立保持装置1では、第1回転軸12に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、第1回転軸12において半径方向外側に突出した内側ピン191(突部)と、カバー13の円筒部134において半径方向に変位可能な外側ピン192(押圧部)との乗り越えを環状付勢部材195の付勢力によって阻止する。このため、便座5を倒れないように自立状態に保持することができる。ここで、外側ピン192は環状付勢部材195によって付勢され、かかる環状付勢部材195であれば、円筒部134の軸線方向から装着すればよいので、円弧状の板バネが開くように大きな力を加えて半径方向外側から板バネを外側部材に装着するという手間のかかる組み立て作業を行なう必要がない。
【0043】
また、環状付勢部材195であれば、周方向に関しては位置決めや位置合わせを行う必要がないので、その点からいっても、組み立て作業が容易であるとともに、構成の簡素化を図ることができる。さらに、環状付勢部材195であれば、周方向のいずれの箇所が押圧部に接している場合でも同等の付勢力を発揮するので、安定した動作を行なうという利点もある。
【0044】
また、本形態では、環状付勢部材195として、安価なコイルバネを用いたため、自立保持装置1のコストを低減することができる。しかも、環状付勢部材195がコイルバネであれば、占有スペースが狭くてよい。また、環状付勢部材195がコイルバネであれば、径の拡大と縮小が繰り返されても劣化が小さい。さらに、環状付勢部材195がコイルバネの場合、線材の巻回方向に捩れながら径が拡大するため、径の拡大と縮小が繰り返されるうちに周方向にずれていく。このため、環状付勢部材195において外側ピン192に接する箇所が移動するため、特定箇所が変形してしまうことがないので、付勢力が安定しているという利点がある。また、環状付勢部材195がコイルバネであれば、線材の巻回数や太さを変えるだけで、付勢力を調整することができる。また、環状付勢部材195が、線材が多重に巻回されたコイルバネであれば、その一部が切断されても、付勢力を発揮するため、ある程度の自立保持機能を発揮することができる。
【0045】
また、本形態では、回転する第1回転軸12の軸端部126を内側に配置し、外側に固定のカバー13の円筒部134を第1回転軸12の軸端部126を囲むように配置したため、内部への異物の侵入を防止することができる。
【0046】
また、突部を構成する丸棒状の内側ピン191、および押圧部を構成する丸棒状の外側ピン192がいずれも、金属製であるため、環境温度が変化しても、動作が安定しており、寿命も長い。特に環状付勢部材195として金属製のコイルバネを用いた場合、押圧部の磨耗を防止できるので、長期間にわたって良好な摺動性を維持することができる。また、内側ピン191および外側ピン192については、長名の丸棒を切断すればよいので安価である。しかも、突部および押圧部を丸棒で形成すれば、互いに接する箇所が断面円弧状であるため、エッジがないので、異常な引っ掛かりが発生せず、スムーズに乗り越えを行なう。また、突部および押圧部が線接触状態にあるので、押圧部は突部を確実に付勢することができる。また、押圧部が外側ピン192であれば、ある程度の長さ寸法を有しているので、多重に巻回したコイルバネを環状付勢部材195として用いるのに適している。しかも、内側ピン191と外側ピン192とが乗り越えを行なう際、クリック音およびクリック感を発生させるので、便座5を倒す際、手を放すタイミングが分りやすい。また、内側ピン191および外側ピン192をSUS製にすれば、錆が発生しないので、長期間にわたって良好な摺動性を維持することができる。
【0047】
また、内側ピン191、および外側ピン192を用いた自立保持機構19であれば、自立保持装置1の組立の際、第1回転軸12とカバー13との位置合わせを行い、カバー13のピン挿入孔136から第1回転軸12に形成されているピン保持溝129に内側ピン191を落とし込めばよい。また、環状溝138に環状付勢部材195を装着した後、環状付勢部材195をやや変形させながらピン収納溝137に外側ピン192を装着すればよい。従って、自立保持機構19の組立作業を効率よく行うことができる。
【0048】
ここで、自立保持装置1の組立時には、第1回転軸12を自在に回転させることができるので、ピン保持溝129とピン挿入孔136の位置を合わせることができるが、内側ピン191をピン保持溝129に落とし込んだ後、第1回転軸12を回転させれば、ピン保持溝129は、カバー13の底部135で塞がれる。しかも、自立保持装置1を組み立てた以降は、第1回転軸12は、後述する流体圧ダンパー機構10Aによって回転領域が規定され、このような回転領域内では、ピン保持溝129とピン挿入孔136の位置が合うことがない。従って、内側ピン191は、ピン保持溝129およびピン挿入孔136から抜け落ちることがない。
【0049】
しかも、自立保持装置1を分解する際、第1回転軸12の回転領域に対する流体圧ダンパー機構10Aによる制約が解除される。従って、第1回転軸12を回してピン保持溝129とピン挿入孔136の位置を合わせることができるので、内側ピン191を抜くことができる。また、環状付勢部材195を外せば、外側ピン192も抜くことができる。それ故、本形態の自立保持装置1は、組み直しも容易に行うことができる。
【0050】
さらに、本形態の自立保持装置1は、第1回転軸12に対する第1流体圧ダンパー機構10A(図7を参照して後述する)を備えており、かかる第1流体圧ダンパー機構10Aにおいて制動力が発揮する方向は、便座5が倒れようとする際の方向である。このため、自立保持機構19では、環状付勢部材195に求められる付勢力を小さくすることができる。
【0051】
しかも、自立保持機構19は、固定体100のうち、カバー13を利用して構成され、第1流体圧ダンパー機構10Aは、固定体100のうち、第1ケーシング11を利用して構成されている。このため、自立保持機構19と第1流体圧ダンパー機構10Aとを途中まで別々に組み立てた後、カバー13と第1ケーシング11とを連結すればよいので、組み立て作業を効率よく行なうことができる。
【0052】
さらにまた、第1回転軸12とは別の第2回転軸16(別の回転部材)が固定体100に対して回転可能に支持され、かかる第2回転軸16には、図8を参照して後述する第2流体圧ダンパー機構10Bが構成されている。また、自立保持機構19は、第1流体圧ダンパー機構10Aと第2流体圧ダンパー機構10Bとの間に配置されている。このため、カバー13において環状付勢部材195が配置されている環状溝138の開口は、第2流体圧ダンパー機構10Bを構成する部材(後述するロータ17の端面)で塞がれるため、環状付勢部材195が円筒部134から抜けることがない。それ故、環状付勢部材195の抜け防止対策を別途行なう必要がないため、構成の簡素化を図ることができる。
【0053】
(第1流体圧ダンパー機構)
図2、図3および図7を参照して、便座5に対する第1流体圧ダンパー機構を説明する。図7(A)〜(E)はそれぞれ、図2に示す第1流体圧ダンパー機構において、起立していた便座を倒そうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に垂直に切断したときの断面図、軸線方向と平行に切断したときの断面図、平伏している便座を起こそうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に垂直に切断したときの断面図、平伏している便座を起こそうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に平行に切断したときの断面図、および逆止弁が変形した様子を示す説明図である。
【0054】
図2および図3(A)に示すように、本形態の自立保持装置1では、第1回転軸12の軸線方向の略中央位置から先端側にはOリング52を装着するOリング装着溝127が形成されている。また、第1回転軸12の軸線方向の略中央位置から基端寄りの位置にもOリング53を装着するOリング装着溝128が形成されている。さらに、カバー13の外周面にもOリング54を装着するOリング装着溝131が形成されている。従って、各Oリング装着溝127、128、131にOリング52、53、54を装着する一方、第1ケーシング11内に所定量のオイル(粘性流体)を注入しておき、次に、第1ケーシング11内に第1回転軸12を挿入し、しかる後に、カバー13を取り付ければ、第1回転軸12、第1ケーシング11、およびカバー13によって第1密閉空間20Aが区画形成されるとともに、この第1密閉空間20Aにはオイルが充填された状態となる。
【0055】
また、図2、図3(A)、および図6(A)、(B)において、第1ケーシング11の円筒内壁111からは、半径方向内側に一対の隔壁112が第1回転軸12の外周面近傍まで突出している一方、第1回転軸12の外周面からは一対の翼部120が突出し、第1密閉空間20Aは、隔壁112と翼部120とによって複数のオイル室に区画されている。すなわち、隔壁112によって区画形成された2つの空間は各々、翼部120によって、翼部120に対して矢印CWで示す方向の側に位置する第1オイル室21と、翼部120に対して矢印CCWで示す方向の側に位置する第2オイル室22とに区画形成されている。また、隔壁112および翼部120は、第1回転軸12の回転領域を規定するストッパーとして機能する。ここで、第1回転軸12の回転領域は、それに連結された便座5の開閉動作に対応する角度範囲である。
【0056】
本形態において、翼部120には、凹部からなるオリフィス125の両側に第1係合突部121および第2係合突部122が形成されている。従って、翼部120では、第1係合突部121、オリフィス125、および第2係合突部122が軸線方向にこの順に並んでおり、第1係合突部121の軸線方向における外側、および第2係合突部122の軸線方向における外側には各々、断面矩形の切り欠きが形成されている。また、翼部120には、オリフィス125を開閉する逆止弁30が装着される。
【0057】
逆止弁30は、翼部120の周方向に位置する2つの端面のうち、矢印CCWで示す方向側(閉方向)の端面(一方側端面)の側でオリフィス125を覆う平板状の弁部35と、弁部35の一方端から第1係合突部121の外側を回って翼部120の矢印CWで示す方向側(開方向)の端面(他方側端面)まで屈曲して第1係合突部121に係合するコの字形状の第1係合部31と、弁部35の他方端から第2係合突部122の外側を回って翼部120の矢印CWで示す方向側の端面まで屈曲して第2係合突部122に係合するコの字形状の第2係合部32とを備えた樹脂成形品である。
【0058】
ここで、逆止弁30は、第1ケーシング11の内底と、第1ケーシング11の開口を塞ぐカバー13の端面とによって軸線方向の両側から支持される。
【0059】
このように構成した第1流体圧ダンパー機構10Aにおいて、第1回転軸12に便座を機構的に連結した場合の動作を説明する。
【0060】
第1流体圧ダンパー機構10Aでは、起立していた便座5を倒そうとすると、図7(A)、(B)に示すように、第1ケーシング11の方は固定されたまま、第1回転軸12が矢印CCWで示す方向に回転する。その際、第1回転軸12の外周面は、隔壁112の先端面を摺動しながら矢印CCWで示す方向に回転し、翼部120は、矢印CCWで示す方向に回転しながら第2オイル室22を狭める。その結果、第2オイル室22のオイルは加圧されて、第1オイル室21に移動しようとするが、その圧力で逆止弁30が矢印CWで示す方向の方向に変位し、翼部120の矢印CCWで示す方向の側に位置する端面に弁部35が押し付けられる。その結果、オリフィス125は、弁部35で塞がれるため、第1オイル室21のオイルは、第1ケーシング11の円筒内壁111と逆止弁30との隙間などから第2オイル室22に移動するだけである。従って、便座5は、このときのオイルの流動抵抗によって高負荷状態になって、制動力が発生するので、緩やかに閉じることができる。
【0061】
これに対して、平伏していた便座5を起こそうとすると、図7(C)、(D)に示すように、第1ケーシング11の方は固定されたまま、第1回転軸12が矢印CWで示す方向に回転する。その際、第1回転軸12の外周面は、隔壁112の先端面を摺動しながら矢印CWで示す方向に回転し、翼部120は、矢印CWで示す方向に回転しながら第1オイル室21を狭める。その結果、第1オイル室21のオイルは、第2オイル室22に移動しようとし、その圧力で逆止弁30が矢印CCWで示す方向の方向に変位し、翼部120の矢印CCWで示す方向側の端面から弁部35が離間する。その結果、オリフィス125は開放状態となり、第1オイル室21のオイルは、オリフィス125から第2オイル室22に自由に移動する。従って、便座5は低負荷状態になるので、小さな力で起こすことができる。
【0062】
また、第1流体圧ダンパー機構10Aにおいて、高負荷状態のときには、逆止弁30の弁部35が翼部120に押し付けられるので変形しにくいが、低負荷状態のときには、弁部35が翼部120から離間しているので、オイルの圧力を弁部35全体が受けることになって、図7(E)に示すように逆止弁30が撓む。それでも、本形態では、逆止弁30の第1係合部31および第2係合部32は、翼部120の第1係合突部121および第2係合突部122の各々の外側を回って屈曲して第1係合突部121および第2係合突部122に係合している。従って、低負荷状態のとき、逆止弁30が撓んでも、このような変形は、第1係合部31および第2係合部32が第1係合突部121および第2係合突部122にさらに深く係合しようとする方向の変形であるので、逆止弁30が翼部120から外れることはない。それ故、第1係合部31および第2係合部32については、剛性を高める必要がないので、自立保持装置1を組み立てる際、逆止弁30を小さな力で変形させて翼部120に装着することができる。よって、組立性に優れている。また、本形態の逆止弁30は、撓んでも、外れることがないので、重い便座に対応するときに用いられる高粘度の粘性流体にも対応することができる。
【0063】
また、逆止弁30は、第1係合部31および第2係合部32が翼部120の矢印Cで示す方向側の端面の側で離間し、各々がコの字形状を有している。このため、逆止弁30を撓ませて、第1係合部31および第2係合部32の内側に第1係合突部121および第2係合突部122を容易に嵌めることができる。
【0064】
さらに本形態では、第1ケーシング11の内部に第1回転軸12を挿入した状態で、逆止弁30は軸線方向の両側から支持され、かつ、逆止弁30の第1係合部31および第2係合部32が第1係合突部121および第2係合突部122の外側を回っているので、逆止弁30がどのように撓んでも、翼部120から外れることがない。
【0065】
(第2流体圧ダンパー機構)
図2、図3および図8を参照して、便蓋6に対する第2流体圧ダンパー機構を説明する。図8は、図2に示す第2流体圧ダンパー機構の断面図である。
【0066】
図2および図3(A)において、本形態の自立保持装置1では、第1ケーシング11のフランジ部115に対しては、カバー13を介して第2のケーシング18が連結され、この第2のケーシング18の内側にロータ17が配置される。ロータ17の端面には長穴状の連結穴179が形成されている一方、第2回転軸16の軸端部160は、断面長丸形状になっている。このため、第2回転軸16の軸端部160をロータ17の連結穴179に嵌め込むだけで、ロータ17は、第2回転軸16と別部品であるが、第2回転軸16と一体に軸線周りに回転する。
【0067】
ここで、ロータ17の大径部177には、Oリング55が装着されるOリング装着溝172が形成されている。従って、第2のケーシング18内に所定量のオイル(粘性流体)を注入しておき、しかる後に、第2のケーシング18内にロータ17を挿入すれば、ロータ17と第2のケーシング18との間には第2密閉空間20Bが区画形成されるとともに、この第2密閉空間20B内にはオイルが充填された状態となる。
【0068】
第2のケーシング18とロータ17との間でも、第1ケーシング11と第1回転軸12との間と同様、第2のケーシング18の円筒内壁181からは、半径方向内側に一対の隔壁182がロータ17の外周面近傍まで突出している一方、ロータ17の外周面からは一対の翼部170が突出し、第2密閉空間20Bは、隔壁182と翼部170とによって複数のオイル室に区画されている。従って、ロータ17は、隔壁180と翼部170がストッパーになって回転領域が規定されている結果、第2回転軸16も回転領域が規定されている。ここで、第2回転軸16の回転領域は、それに連結された便蓋6の開閉動作に対応する角度範囲である。
【0069】
また、翼部170にはオリフィス175が形成されている一方、この翼部170には、第1流体圧ダンパー機構10Aと同様な逆止弁30が装着されている。すなわち、翼部170では、第1流体圧ダンパー機構10Aの翼部120と同様、第1係合突部171、オリフィス175、および第2係合突部172が軸線方向にこの順に並んでいるので、逆止弁30の弁部35は、翼部170の周方向に位置する2つの端面のうち、矢印CCWで示す方向側の端面(一方側端面)の側でオリフィス175を覆っている。また、逆止弁30のコの字形状の第1係合部31は、第1係合突部171の外側を回って翼部170の矢印CWで示す方向側の端面(他方側端面)まで屈曲して第1係合突部171に係合し、コの字形状の第2係合部32は、第2係合突部172の外側を回って翼部170の矢印Cで示す方向側の端面まで屈曲して第2係合突部172に係合している。この状態で、逆止弁30は、第2のケーシング18の内底と、ロータ17の大径部177とによって軸線方向の両側から支持されている。
【0070】
このように構成した第2流体圧ダンパー機構10Bにおける動作は、第1流体圧ダンパー機構10Aと同様であるため、その説明を省略するが、起立していた便蓋6を倒そうとすると、オイルの流動抵抗によって高負荷状態になって、制動力が発生するので、緩やかに閉じることができる。また、平伏していた便蓋6を起こそうとすると、便蓋6は低負荷状態にあるので、小さな力で起こすことができる。
【0071】
[その他の実施の形態]
上記形態では、環状付勢部材195としてコイルバネを用いたが、リング状あるいは円筒状のゴム体であってもよい。
【0072】
上記形態では、内側ピン191および外側ピン192によって突部および押圧部を形成したが、突部については、第1回転軸12の一部が半径方向外側に突出している構成を採用してもよく、押圧部についても、カバー13の一部を舌状などに形成することにより構成してもよい。
【0073】
上記形態では、回転部材(第1回転軸12)の側に軸部が形成され、固定体(カバー13)の側に環状付勢部材195が装着された筒部が構成されていたが、固定体の側に軸部が形成され、回転部材の側に環状付勢部材が装着された円筒部が構成されている形態であってもよい。
【0074】
上記形態では、ダンパー機構として流体圧ダンパー機構を採用したが、ステッピングモータやDCモータのディテントトルクを利用したダンパー機構などを用いてもよい。
【0075】
上記形態では、第1回転軸12に対して自立保持機構19および第1流体圧ダンパー機構10Aを構成するにあって、共通の回転部材に自立保持機構19および第1流体圧ダンパー機構10Aを構成したが、異なる回転部材に自立保持機構19および第1流体圧ダンパー機構10Aを設け、異なる回転部材を連結して第1回転軸12とする構成を採用すれば、各々を別々に組み立てることができるので、組み立て作業の効率を高めることができる。
【0076】
上記形態では、カバー13の環状溝138を、第2流体圧ダンパー機構10Bを構成する部材(ロータ17)で覆って環状付勢部材195の抜け止めを行なったが、環状付勢部材195に対して軸線方向の両側に第1流体圧ダンパー機構10Aを構成する部材および第2流体圧ダンパー機構10Bを構成する部材を配置して、環状付勢部材195の両方向での抜け止めを行なう構成を採用してもよい。
【0077】
本発明は、便座5に対する自立保持装置1の他、便蓋6に対する自立保持装置にも適用でき、1つの自己保持装置に対して、便座5に対する自立保持機構、および便蓋6に対する自立保持機構の双方を設けてもよい。
【0078】
また、本発明は、便座5や便蓋6に対する自己保持装置の他、開閉蓋(揺動体)の倒れやあおりを防止するための自立保持装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明が適用された自立保持装置を備えた洋式トイレの説明図である。
【図2】本発明が適用された自立保持装置の分解斜視図である。
【図3】(A)、(B)は、図2に示す自立保持装置を軸線方向と平行に切断したときの縦断面図、および各部材の連結部分の縦断面図である。
【図4】本発明を適用した自立保持装置において自立保持機構が構成されているユニット部分の斜視図である。
【図5】(A)〜(F)はそれぞれ、図2に示す自立保持装置において、自立保持機構を構成する第1回転軸の軸端面の断面図、カバーの断面図、カバーに第1回転軸を位置合わせした状態の正面図、およびカバーに第1回転軸を位置合わせした状態の断面図である。第1回転軸とカバーとの間に構成された自立保持機構の正面図、この自立保持機構の断面図である。
【図6】(A)、(B)、(C)は、図4および図5に示す自立保持機構の動作を示す説明図である。
【図7】(A)〜(E)はそれぞれ、図2に示す自立保持装置の便座に対する第1ダンパ機構において、起立していた便座を倒そうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に垂直に切断したときの断面図、軸線方向と平行に切断したときの断面図、平伏している便座を起こそうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に垂直に切断したときの断面図、平伏している便座を起こそうとする動作を行っているときの密閉空間内の様子を軸線方向に平行に切断したときの断面図、および逆止弁が変形した様子を示す説明図である。
【図8】図2に示す自立保持装置の便蓋に対する第2流体圧ダンパー機構の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 自立保持装置
2 便器本体
5 便座(揺動体)
6 便蓋
10A 第1流体圧ダンパー機構
10B 第2流体圧ダンパー機構
11 第1ケーシング
12 第1回転軸
13 カバー
16 第2回転軸
17 ロータ
18 第2のケーシング
19 自立保持機構
20A 第1密閉空間
20B 第2密閉空間
30 逆止弁
100 固定体
129 ピン保持溝
126 第1回転軸の軸端部(軸部)
134 カバーの円筒部
136 ピン挿入孔
191 内側ピン(突部)
137 ピン収納溝
192 外側ピン(押圧部)
195 環状付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体に回転可能に支持された回転部材に所定レベル以上の回転トルクが印加されない限り当該回転部材の回転を阻止して当該回転部材と一体に回転する揺動体の自立を保持する自立保持装置であって、
前記固定体および前記回転部材のうち、一方側部材に形成された軸部には半径方向外側に突出した突部が形成され、他方側部材において前記軸部の周りを囲む筒部には半径方向に変位可能な押圧部が形成され、
前記筒部には、前記押圧部を半径方向内側に向けて付勢する環状付勢部材が装着され、
前記回転部材に所定レベル未満の回転トルクが付与されているときには、前記環状付勢部材の付勢力により前記突部と前記押圧部との乗り越えが阻止され、
前記回転部材に所定レベル以上の回転トルクが付与されているときには、前記環状付勢部材の付勢力に抗して前記押圧部を半径方向外側に変位させて前記突部と前記押圧部との乗り越えが行なわれることを特徴とする自立保持装置。
【請求項2】
前記一方側部材は、前記回転部材であり、
前記他方側部材は、前記固定体であることを特徴とする請求項1に記載の自立保持装置。
【請求項3】
前記環状付勢部材は、コイルバネであることを特徴とする請求項2に記載の自立保持装置。
【請求項4】
前記コイルバネは1巻以上のターンを有し、
当該コイルバネの端部は、前記固定体および前記回転部材に対して巻回方向に回転可能な状態で前記筒部に装着されていることを特徴とする請求項3に記載の自立保持装置。
【請求項5】
前記突部および前記押圧部はいずれも、金属製であることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の自立保持装置。
【請求項6】
前記突部は、前記押圧部と接する箇所が断面円弧状であり、
前記押圧部は、前記突部と接する箇所が断面円弧状であることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の自立保持装置。
【請求項7】
前記突部および前記押圧部は各々、前記筒部の軸線方向の一方側端面で開口する穴あるいは溝から挿入された金属製の丸棒であることを特徴とする請求項6の何れか一項に記載の自立保持装置。
【請求項8】
前記回転部材が一方方向に回転する際に当該回転部材に制動力を印加する第1ダンパー機構を備えていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項に記載の自立保持装置。
【請求項9】
前記固定体において、前記第1ダンパー機構を構成する固定部材は、前記円筒部と異なる部材からなることを特徴とする請求項8に記載の自立保持装置。
【請求項10】
前記回転部材とは別の回転部材が前記固定体に対して回転可能に支持され、
前記別の回転部材には、当該別の回転部材が一方方向に回転する際に制動力を発揮する第2ダンパー機構を備え、
前記環状付勢部材は、前記第2ダンパー機構を構成する部材により、前記筒部からの抜けが防止されていることを特徴とする請求項8または9に記載の自立保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−189698(P2009−189698A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35870(P2008−35870)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】