説明

自転車用発電ハブのステータヨークおよびその製造方法

【課題】容易に組み立てることができる自転車用発電ハブのステータヨークを得る。
【解決手段】自転車用発電ハブのステータヨーク18aの第1ヨーク部材24は、第1筒状部24aおよび複数の第1ポール部24bを備える。複数の第1ボール部24bは、第1筒状部24aに一体的に設けられる。複数の第1ボール部24bはそれぞれ、第1筒状部24aの軸方向の一端から第1筒状部24aの径方向に延びる第1延出部24cと、第1延出部24cから第1筒状部24aの軸方向かつ他端側に延びる第1端部24dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータヨーク、特に、自転車用発電ハブのステータヨークおよび自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用発電ハブにおいて、クローポール型のものが従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来の発電ハブのステータヨークは、2つのポール部と、コア部と、を有する。ポール部は、円板部と、円板部周縁から周方向に間隔を隔てて軸方向に沿うように折り曲げられた極片と、を有する薄板部材を有する。薄板部材は厚み方向に積層される。コア部は、2つのポール部を磁気的に連結する。
【0003】
このよう構成の従来のステータヨークでは、コア部をコイルボビン内に装着し、コイルボビンの両側から折り曲げられたポール部を厚み方向に重ねて、ステータヨークを組み立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−229403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成では、ステータヨークを組み立てる際に、ポール部の積層作業と、コア部のボビン内への装着作業とが必要である。このため、ステータヨークの組立作業が煩雑である。
【0006】
本発明の課題は、容易に組み立てることができる自転車用発電ハブのステータヨークを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、第1筒状部および複数の第1ポール部を備える。複数の第1ボール部は、第1筒状部に一体的に設けられる。複数の第1ボール部はそれぞれ、第1筒状部の軸方向の一端から第1筒状部の径方向に延びる第1延出部と、第1延出部から第1筒状部の軸方向かつ他端側に延びる第1端部とを有する。
【0008】
このステータヨークでは、第1ポール部が第1筒状部と一体的に設けられる。これにより、第1筒状部をコイルボビン内に装着するだけで、ステータヨークの組み立てが完了する。このため、容易に組み立てることができる自転車用発電ハブのステータヨークを得ることができる。
【0009】
発明2に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明1に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、第1筒状部には軸方向に延びる空隙が形成される。この場合には、第1筒状部において、渦電流の発生を抑えることができる。
【0010】
発明3に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明1または2に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、複数の第2ポール部をさらに備える。複数の第2ポール部は、軸方向から複数の第1延出部に重なる複数の第2延出部と、径方向から複数の第1端部に重なる複数の第2端部とを有する。
【0011】
この場合には、第1延出部に第2延出部を重ね、第1端部に第2端部を重ねるだけで、積層ヨークを容易に組み立てできる。
【0012】
発明4に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明3に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、第1筒状部が挿入される第2筒状部をさらに備える。第2延出部は、第2筒状部の軸方向の一端から第2筒状部の径方向に延び、第2端部は、第2延出部から軸方向に延びる。
【0013】
この場合には、第2筒状部に第1筒状部を挿入するだけで、第1端部を第2端部の径方向外方に積層できるとともに、第1延出部を第2円周部の軸方向外方に積層できる。このため、ステータヨークをさらに容易に組み立てできる。また、コイルボビンに挿入可能な2つの筒状部も積層構造になるため、筒状部で発生する鉄損を低減できる。
【0014】
発明5に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明4に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、第2筒状部には軸方向に延びる空隙が形成される。この場合には、第2筒状部において、渦電流の発生を抑えることができる。
【0015】
発明6に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明1または2に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、第1筒状部は円筒状に形成される。
【0016】
この場合には、第1筒状部が円筒状であるので、第1筒状部をコイルボビン内に芯出しして配置しやすい。
【0017】
発明7に係る自転車用発電ハブのステータヨークは、発明4または5に記載の自転車用発電ハブのステータヨークにおいて、第1円筒部および第2筒状部は円筒状に形成される。
【0018】
この場合には、外周側に配置される第2筒状部が円筒状であるので、コイルボビン内に第2筒状部を芯出しして配置しやすい。
【0019】
発明8に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法は、筒状部材を得る工程および延出部と端部とを設ける工程を備える。筒状部材を得る工程では、磁性体からなり、複数の切り欠き部を介してその周方向に並ぶ複数の細片を有する筒状部材を得る。延出部と端部とを設ける工程では、複数の細片を折り曲げることによって、切り欠き部の根元側から筒状部材の径方向外側に延びる延出部と、筒状部材の軸方向一端側から他端側に延出部から延びる端部とを設ける。
【0020】
この自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法では、磁性体からなる筒状部材に切り欠き部を介して周方向に並ぶ複数の細片を有する筒状部材を得る。得られた筒状部材の複数の細片の根元側を径方向外側に折り曲げることにより、切り欠き部の根元側から径方向外側に伸びる延出部を形成できる。また、延出部の途中から筒状部材の一端側から他端側に延びるように軸方向に沿って細片を折り曲げると端部を形成できる。これにより、複数のポール部を有するステータヨークを一つの部材から歩留まりよく製造できる。
【0021】
発明9に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法は、発明8に記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法において、筒状部材は、四角形の板状部材にその一辺と平行になるように複数の切り欠き部を形成して複数の細片を設けた後に、板状部材を前記一辺と直交する方向に湾曲させることによって得られる。
【0022】
この場合には、複数のポール部を有するステータヨークを四角形の一つの板状部材から製造することができる。
【0023】
発明10に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法は、発明8に記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法において、筒状部材は、筒にその軸方向一端側から軸方向他端側に延びるように複数の切り欠き部を形成して複数の細片を設けることによって得られる。
【0024】
この場合には、予め筒を用いることによって、より簡単にステータヨークを製造できる。
【0025】
発明11に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法は、板状部材を得る工程、延出部と端部とを設ける工程、および板状部材を湾曲させる工程を備える。板状部材を得る工程では、その一辺と平行になるように複数の切り欠き部を形成して複数の細片を有する四角形の磁性体からなる板状部材を得る。延出部と端部とを設ける工程では、複数の細片を折り曲げることによって、切り欠き部の根元側から板状部材に対して直交する方向に延びる延出部と、延出部から記板状部材に対して平行な方向にかつ板状部材の他の辺側に延びる端部とを設ける。板状部材を湾曲させる工程では、板状部材を前記一辺と直交する方向に湾曲させる。
【0026】
この自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法では、磁性体からなる板状部材に切り欠き部を介して周方向に並ぶ複数の細片を有する板状部材を得る。得られた筒状部材の複数の細片を切り欠き部の根元側から折り曲げることにより、切り欠き部の根元側から外側に伸びる延出部を形成できる。また、延出部の途中から筒状部材の一端側から他端側に延びるように軸方向に沿って細片を折り曲げると端部を形成できる。これにより、複数のポール部を有するステータヨークを一つの部材から歩留まりよく製造できる。
【0027】
発明12に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法は、発明8から11のいずれかに記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法において、筒状部材には軸方向に延びる空隙が形成される。これにより、渦電流を抑えることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る自転車用発電ハブのステータヨークでは、第1筒状部をコイルボビン内に装着するだけで、ステータヨークの組み立てが完了する。このため、自転車用発電ハブのステータヨークを容易に組み立てできる。
【0029】
本発明に係る自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法では、複数のポール部を有するステータヨークを一つの部材から製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態を採用した自転車用発電ハブの半截断面図。
【図2】その固定子の断面図。
【図3】そのステータヨークの斜視図。
【図4】ステータヨークの製造工程を示す斜視図。
【図5】ステータヨークの製造工程の他の実施形態の図4に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すように、本発明の一実施形態による自転車用の発電ハブ(ハブダイナモ)10は、自転車のフロントフォーク102に装着される。ハブ軸15を有する発電ハブ10は、固定子13と、ハブ軸15に回転自在に装着されたハブシェル14と、を備える。ハブシェル14の内周面には、環状の磁石12が設けられる。磁石12には、周方向に複数の磁極が配置される。ここで、図1、図2および図3において、後述するコイルボビン16の周方向が矢印Aで示される。また、コイルボビン16の軸方向が矢印Bで示される。この実施形態では、ハブ軸15、コイルボビン16、後述する一対のステータヨーク18aおよびステータヨーク18bが同軸上に配置される。したがって、いずれにとっても周方向は矢印A方向であり、軸方向は矢印B方向である。
【0032】
<固定子>
固定子13は、ハブ軸15と、ハブ軸15が挿通されるコイルボビン16と、コイルボビン16に巻回されるコイル17と、コイルボビン16に設けられる一対のステータヨーク18aおよびステータヨーク18bと、を備える。固定子13は、連結部材20によりハブ軸15に対して相対的に回転不能に連結される。また、固定子13は、第1位置決め部材21及び第2位置決め部材22により、磁石12に対向可能な位置でB方向(軸方向)に位置決めされる。連結部材20は、コイルボビン16の矢印B方向(図1参照)他端側(図1において右側)に配置される。第1位置決め部材21は、コイルボビン16の矢印B方向(軸方向:図1参照)一端側(図1において左側)に配置される。第2位置決め部材22は、連結部材20をコイルボビン16との間に挟んで、コイルボビン16の矢印B方向(軸方向:図1参照)他端側(図1において右側)に配置される。
【0033】
<ハブ軸>
ハブ軸15は、中空に形成され、たとえばクイックレリーズ機構11によってフロントフォーク102に着脱可能に固定される。ハブ軸15の第1端(図1左端)の外周面には、第1雄ネジ部15aが形成される。また、ハブ軸15の第2端(図1右側)の外周面には、第2雄ネジ部15bが形成される。さらに、ハブ軸15の外周面には、その中央部から第2端へと延びる軸方向溝15cが形成される。軸方向溝15cは、コイル17から延びる電気配線17aを配置するために用いられる。ハブ軸15の外周面には、第1位置決め部材21をかしめるための第1環状溝15dおよび第2位置決め部材22をかしめるための第2環状溝15eが形成される。第2環状溝15eは、軸方向溝15cを横切るように形成される。軸方向溝15cの深さは、電気配線17aを配置するために、第2環状溝15eの深さよりも大きい。
【0034】
ハブ軸15の第2端には、コイル17からの電力を前照灯等の外部機器に供給するためのコネクタ28が第2雄ネジ部15bに螺合するナット部材50により固定される。
【0035】
<コイルボビン>
コイルボビン16には、コイル17が巻回されるとともに、一対のステータヨーク18aおよびステータヨーク18bが装着(たとえば接着)される。コイルボビン16は、磁石12の内周面に対向するようにハブ軸15に位置決めされる。コイルボビン16は、コイル17が外周面に巻回される筒状部16aと、筒状部16aの矢印B方向他端側(図1において左側)に設けられる第1フランジ16bと、筒状部16aの矢印B方向一端側(図1において右側)に設けられる第2フランジ16cとを有する。図1に示すように、筒状部16aの貫通孔16dには、ハブ軸15が挿通される。コイルボビン16は、ステータヨーク18bを介して、連結部材20により第2フランジ16c側でハブ軸15に回転不能に連結される。連結部材20は、一対のステータヨーク18aおよびステータヨーク18bを、ハブ軸15に回転不能に連結する。
【0036】
<コイル>
図1に示すように、コイル17は、コイルボビン16の筒状部16aに巻回される。コイル17は、たとえば、銅線、アルミニウム合金線等の導電金属線材製である。コイル17の両端部には、2本の電気配線17aが電気的に接続される。電気配線17aは、コイル17で発生した電力を外部に出力するために設けられる。電気配線17aは、前述した軸方向溝15cに配置される。
【0037】
<ステータヨーク>
ステータヨーク18aは、図2および図3に示すように、コイルボビン16の矢印B方向一端側の第1フランジ16bに配置される。ステータヨーク18bは、コイルボビン16の矢印B方向他端側の第2フランジ16cに配置される。ステータヨーク18aおよびステータヨーク18bは、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)で形成される。
【0038】
ステータヨーク18aおよびステータヨーク18bは、第1ヨーク部材24と、第2ヨーク部材25と、第3ヨーク部材26と、をそれぞれ有する積層ヨークである。第1ヨーク部材24と、第2ヨーク部材25と、第3ヨーク部材26と、は同じ厚みであり、互いに接着される。ステータヨーク18aおよびステータヨーク18bは、同様に構成されるので、以降の説明では、ステータヨーク18aについて主に説明する。
【0039】
第1ヨーク部材24は、第1筒状部24aと、第1筒状部24aに一体的に設けられる複数(たとえば14個)の第1ポール部24bと、を有する。第1筒状部24aは、円筒状であり、ハブ軸15の外周面に装着される。第1筒状部24aの矢印B方向寸法は、図2に示すように、その端面がコイルボビン16の貫通孔16dにおいて矢印B方向の軸方向の中央に位置するように設定される。第1筒状部24aには軸方向に延びる空隙24eが形成される。
【0040】
複数の第1ポール部24bはそれぞれ、第1延出部24cと、第1端部24dと、を有する。第1延出部24cは、第1筒状部24aの矢印B方向の一端(図2および図3の左端)から径方向に延びる。複数の第1延出部24cは、放射状に配置される。
【0041】
第1端部24dは、第1延出部24cから第1筒状部24aの矢印B方向かつ他端側に延びる。第1端部24dの先端部分は、第2フランジ16cの外周面に形成された第4切欠き部23f(図2参照)に支持される。
【0042】
第2ヨーク部材25は、第2筒状部25aと、第2筒状部25aに一体的に設けられる複数(たとえば14個)の第2ポール部25bと、を有する。第2筒状部25aは、円筒状であり、第1筒状部24aの外周面に装着される。したがって、第1ヨーク部材24の第1筒状部24aは、第2筒状部25a内に挿入される。第2筒状部25aの矢印B方向寸法は、図3に示すように、その端面が第1筒状部24aの端面と面一になるように設定される。第2筒状部25aには軸方向に延びる空隙25eが形成される。
【0043】
複数の第2ポール部25bはそれぞれ、第2延出部25cと、第2端部25dと、を有する。第2延出部25cは、第2筒状部25aの矢印B方向の一端(図2および図3の左端)から径方向に延びる。複数の第2延出部25cは、矢印B方向から第1延出部24cと重なるように放射状に配置される。複数の第2延出部25cは、複数の第1延出部24cの矢印B方向内側(第1フランジ16b側)に配置される。
【0044】
第2端部25dは、第2延出部25cから第2筒状部25aの矢印B方向かつ他端側に延びる。第2端部25dは径方向から第1端部24dと重なる。第2端部25dは、第1端部24dに径方向内側に配置される。第2端部25dの先端部分は、第1端部24dより一端側に配置される。したがって、第2端部25dは、第1端部24dより矢印B方向の長さが短い。
【0045】
第3ヨーク部材26は、第3筒状部26aと、第3筒状部26aに一体的に設けられる複数(たとえば14個)の第3ポール部26bと、を有する。第3筒状部26aは、円筒状であり、第2筒状部25aの外周面とコイルボビン16の貫通孔16dの内周面との間に装着される。したがって、第2ヨーク部材25の第2筒状部25aは、第3筒状部26a内に挿入される。第3筒状部26aの矢印B方向寸法は、図3に示すように、図3に示すように、その端面が第1筒状部24aの端面および第2筒状部25aの端面と面一になるように設定される。第3筒状部26aには軸方向に延びる空隙26eが形成される。
【0046】
複数の第3ポール部26bはそれぞれ、第3延出部26cと、第3端部26dと、を有する。第3延出部26cは、第3筒状部26aの矢印B方向の一端(図2および図3の左端)から径方向に延びる。複数の第3延出部26cは、矢印B方向から第1延出部24cおよび第2延出部25cと重なるように放射状に配置される。複数の第3延出部26cは、複数の第2延出部25cの矢印B方向内側(第1フランジ16b側)に配置される。複数の第3延出部26cは、第1フランジ16bの第1溝23aに装着(接着)される。
【0047】
第3端部26dは、第3延出部26cから第3筒状部26aの矢印B方向かつ他端側に延びる。第3端部26dの先端部分は、第2端部25dより一端側に配置される。したがって、第3端部26dは、第2端部25dより矢印B方向の長さが短い。ステータヨーク18bの第3延出部26cは、第2溝23dに装着(接着)される。
【0048】
<ハブシェル>
ハブシェル14は、図1に示すように、ハブ軸15に第1軸受30および第2軸受31により回転自在に支持される。第1軸受30は、ナット部材51により矢印B方向(軸方向)の位置が調整される。ハブシェル14は、第1軸受30が配置される筒状のシェル本体40と、シェル本体40に装着される第2軸受31が配置される蓋部材42と、を有する。シェル本体40には、車輪とリムと連結される一対のハブフランジ40aが矢印B方向に間隔を隔てて配置される。
【0049】
シェル本体40の内周面には、磁石12が固定される。磁石12とシェル本体40との間には、バックヨーク27が配置される。磁石12の内周面は、ステータヨーク18aの径方向外側部分およびステータヨーク18bの径方向外側部分と僅かな隙間をあけて配置される。
【0050】
<ステータヨークの製造手順>
このような構成のステータヨーク18aおよびステータヨーク18bの第1ヨーク部材24の製造方法について図4を参照して説明する。なお、第2ヨーク部材25および第3ヨーク部材26の製造方法は、第1ヨーク部材24の製造方法と、サイズが異なるだけで同じである。
【0051】
第1ヨーク部材24の製造方法は、図4(A−2)に示す第1筒状部材64を得る工程と、図4(B−2)に示す第1筒状部材64から、第1筒状部24aおよび第1ポール部24bを設ける工程と、を備える。
【0052】
第1筒状部材64を得る工程では、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)等の磁性体製の四角形の板状部材60を用意する。そして、図4(A−1)に示すように、この板状部材60に、その一辺60aと平行になるように複数の切り欠き部62を形成して複数の細片66を設ける。この板状部材60を、一辺60aと直交する方向に湾曲させることによって図4(A−2)に示すような筒状部材64を得る。なお、板状部材60を湾曲させることによって筒状部材64に形成される継ぎ目は接触していないほうが好ましい。すなわち、第1筒状部24aには軸方向に延びる空隙24eが形成されることが好ましい。これによって渦電流を抑えることができる。
【0053】
第1筒状部24aおよび第1ポール部24bを設ける工程では、図4(B−1a)に示すように、細片66を切り欠き部62の根元側から筒状部材64の径方向に沿って直角に折り曲げて細片66を放射状に配置する。続いて、図4(B−2)に示すように、細片66の先端部が筒状部材64軸方向と平行に延びるように細片66の途中を直角に折り曲げる。
【0054】
または、図4(B1−b)に示すように、細片66を切り欠き部62の途中から筒状部材64の径方向に沿って直角に折り曲げて細片66を放射状に配置する。続いて、図4(B−2)に示すように、細片66の先端部が筒状部材64の軸方向と平行に延びるように細片66の途中を直角に折り曲げる。
【0055】
これにより、図4(B1−a)および図4(B1−b)いずれの手順でも、切り欠き部62の根元側から筒状部材64の径方向外側に延びる第1延出部24cと、筒状部材64の軸方向一端側から他端側に第1延出部24cから延びる第1端部24dとを形成する。これにより第1ヨーク部材24が得られる。
【0056】
第2ヨーク部材25および第3ヨーク部材26は、第2および第3筒状部材の直径を筒状部材64の直径より徐々に大きくし、かつ第2および第3ポール部の長さを徐々に長くすればよい。
【0057】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
(a)前記実施形態では、板状部材を湾曲させて筒状部材を得たが、筒状部材を得る方法はこれに限定されない。たとえば、磁性体製の筒の軸方向一端側から軸方向他端側に延びるように複数の切り欠き部を形成して複数の細片を設けることによって筒状部材を得てもよい。
【0059】
(b)前記実施形態では、筒状部材64を形成した後に細片66を折り曲げているが、本発明はこれに限定されない。図5に示すように、細片66を有する板状部材60を得る工程と、細片66を折り曲げる工程と、細片66が折り曲げられた板状部材60を筒状に湾曲させる工程とを順に経て、第1ヨーク部材24を得るようにしてもよい。
【0060】
詳しくは、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)等の磁性体製の四角形の板状部材60を用意する。そして、図5(A)に示すように、この板状部材60に、その一辺60aと平行になるように複数の切り欠き部62を形成して複数の細片66を有する板状部材60を得る。
【0061】
その後、図5(B−1a)に示すように、細片66を切り欠き部62の根元側から直角に折り曲げる。続いて、図5(B−2)に示すように、細片66の先端部切り欠き部62が形成されない部分と平行に延びるように細片66を切り欠き部62の途中から直角に折り曲げる。
【0062】
または、図5(B−1b)に示すように、細片66を切り欠き部62の途中から直角に折り曲げる。続いて、図5(B−2)に示すように、細片66の先端部切り欠き部62が形成されない部分と平行に延びるように細片66を切り欠き部62の根元側から直角に折り曲げる。
【0063】
これにより、図5(B−1a)および図5(B−1b)のいずれの手順を経ても、切り欠き部62の根元側から筒状部材64の径方向外側に延びる第1延出部24cと、筒状部材64の軸方向一端側から他端側に第1延出部24cから延びる第1端部24dとが形成される。
【0064】
最後に第1延出部24cおよび第1端部24dとなる部分が折り曲げられた板状部材60を、一辺60aと直交する方向に湾曲させることによって図5(C)に示すような第1ヨーク部材24を得る。
【0065】
(c)前記実施形態では、第1溝および第2溝により、ステータヨークの周方向の位置決めを行ったが、ステータヨークの位置決め方法はこれに限定されない。たとえば、溝ではなく、少なくとも一つのポール部の周方向の両側または別のポール部の周方向の一方側と他方側に接触する突起により周方向の位置決めを行ってもよい。
【0066】
(d)前記実施形態では、ステータヨーク18aおよび18bが同様に構成される場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、ステータヨーク18aおよび18bにおいて、ヨーク部材の筒状部の矢印B方向寸法を異なるようにしてもよい。言い換えれば、ステータヨーク18aおよび18bの接触部がコイルボビン16の貫通孔16d内で中央からずれるようにしてもよい。
【0067】
(e)前記実施形態では、ステータヨーク18aおよび18bをそれぞれ3つのヨーク部材で構成する場合について説明したが、ステータヨークを構成するヨーク部材の数は任意に設定できる。たとえば、ステータヨークを1つのヨーク部材によって構成してもよいし、ステータヨークを4つ以上のヨーク部材によって構成してもよい。
【0068】
(f)前記実施形態では、ステータヨーク18aにおいて、ヨーク部材24,25および26の端部24d,25dおよび26dの軸方向寸法をそれぞれ異ならせる場合について説明したが、これに限定されない。ステータヨークにおいて各ヨーク部材の端部の軸方向寸法がそろうように、各ヨーク部材を設けてもよい。
【0069】
(g)前記実施形態では、筒状部を三重構造にしたが、筒状部の構造は任意に設定できる。筒状部をハブ軸外周面とコイルボビン16の貫通孔の内周面との間に配置し、筒状部に一体的に形成された第1ポール部と、筒状部と別体で設けられ、筒状部に磁気的に連結可能かつ第1ポール部と重なる少なくとも一つの第2ポール部を設けてもよい。
【0070】
(h)前記実施形態では、第1筒状部24a、第2筒状部25aおよび第3筒状部26aにそれぞれ空隙24e、25eおよび26eを設ける場合について説明したがこれに限定されない。少なくとも1つの筒状部において空隙を設けないようにしてもよい。言い換えれば少なくとも1つのヨーク部材において筒状部を設ける際に継ぎ目が接するようにしてもよい。この場合、継ぎ目は、接着されてもよいし、溶接されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 発電ハブ
13 固定子
15 ハブ軸
18a ステータヨーク
18b ステータヨーク
24a 第1筒状部
24b 第1ポール部
24c 第1延出部
24d 第1端部
24e 空隙
25a 第2筒状部
25b 第2ポール部
25c 第2延出部
25d 第2端部
25e 空隙
60 板状部材
60a 一辺
62 切り欠き部
64 筒状部材
66 細片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒状部、および
前記第1筒状部に一体的に設けられる複数の第1ポール部を備え
前記複数の第1ポール部はそれぞれ、前記第1筒状部の軸方向の一端から前記第1筒状部の径方向に延びる第1延出部と、前記第1延出部から前記第1筒状部の軸方向かつ他端側に延びる第1端部とを有する、自転車用発電ハブのステータヨーク。
【請求項2】
前記第1筒状部には前記軸方向に延びる空隙が形成される、請求項1に記載のステータヨーク。
【請求項3】
複数の第2ポール部をさらに備え、
前記複数の第2ポール部は、前記軸方向から前記複数の第1延出部に重なる複数の第2延出部と、前記径方向から前記複数の第1ポール部に重なる複数の第2ポール部とを有する、請求項1または2に記載のステータヨーク。
【請求項4】
第1筒状部が挿入される第2筒状部をさらに備え、
前記第2延出部は、前記第2筒状部の前記軸方向の一端から前記第2筒状部の前記径方向に延び、前記第2端部は、前記第2延出部から前記軸方向に延びる、請求項3に記載のステータヨーク。
【請求項5】
前記第2筒状部には前記軸方向に延びる空隙が形成される、請求項4に記載のステータヨーク。
【請求項6】
前記第1筒状部は円筒状に形成される、請求項1または2に記載のステータヨーク。
【請求項7】
前記第1円筒部および前記第2筒状部は円筒状に形成される、請求項4または5に記載のステータヨーク。
【請求項8】
磁性体からなり、複数の切り欠き部を介してその周方向に並ぶ複数の細片を有する筒状部材を得る工程、および
前記複数の細片を折り曲げることによって、前記切り欠き部の根元側から前記筒状部材の径方向外側に延びる延出部と、前記筒状部材の軸方向一端側から他端側に前記延出部から延びる端部とを設ける工程、を備える、自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法。
【請求項9】
前記筒状部材は、四角形の板状部材にその一辺と平行になるように前記複数の切り欠き部を形成して前記複数の細片を設けた後に、前記板状部材を前記一辺と直交する方向に湾曲させることによって得られる、請求項6に記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法。
【請求項10】
前記筒状部材は、筒にその軸方向一端側から軸方向他端側に延びるように前記複数の切り欠き部を形成して前記複数の細片を設けることによって得られる、請求項6に記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法。
【請求項11】
その一辺と平行になるように複数の切り欠き部を形成して複数の細片を有する四角形の磁性体からなる板状部材を得る工程、
前記複数の細片を折り曲げることによって、前記切り欠き部の根元側から前記板状部材に対して直交する方向に延びる延出部と、前記延出部から前記板状部材に対して平行な方向にかつ前記板状部材の他の辺側に延びる端部とを設ける工程、および
前記板状部材を前記一辺と直交する方向に湾曲させる工程を備える、自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法。
【請求項12】
前記筒状部材には前記軸方向に延びる空隙が形成される、請求項8から11のいずれかに1項に記載の自転車用発電ハブのステータヨークの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46537(P2013−46537A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184383(P2011−184383)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】