芋掘り取り分離作業機
【課題】従来、手作業で圃場から芋を掘り取って、その後で芋分離装置で芋を分離作業する作業形態であった。従って、芋を圃場から掘り取る作業は大変な労力を要すると共に、芋の掘り取り作業と芋の分離作業とが効率よく行なえるものではなかった。この発明は、この種の芋を掘り取る作業と分離する作業とが効率よく行なえる簡潔な構成の芋掘り取り分離作業機を得ることを課題とする。
【解決手段】親芋Wを保持する支持部2とその親芋Wを押圧して小芋Sを分離する押圧部4と分離された小芋Sを選別する選別部3とからなる芋分離装置1aの下方に芋掘り取り部33を配置した芋掘り取り分離作業機。
【解決手段】親芋Wを保持する支持部2とその親芋Wを押圧して小芋Sを分離する押圧部4と分離された小芋Sを選別する選別部3とからなる芋分離装置1aの下方に芋掘り取り部33を配置した芋掘り取り分離作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から芋を掘り取って、芋の複合体である収穫芋の内の目的部分を分離する芋掘り取り分離作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、子芋が親芋の外周部に密生した状態の収穫芋について、その親芋から子芋を分離する芋分離装置がある。
【特許文献1】特開平11−168933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、先ず、手作業で圃場から芋を掘り取って、その後で上記の芋分離装置で芋を分離作業する作業形態であった。従って、芋を圃場から掘り取る作業は大変な労力を要すると共に、芋の掘り取り作業と芋の分離作業とが効率よく行なえるものではなかった。この発明は、この種の芋を掘り取る作業と分離する作業とが効率よく行なえる簡潔な構成の芋掘り取り分離作業機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、親芋Wを保持する支持部2とその親芋Wを押圧して小芋Sを分離する押圧部4と分離された小芋Sを選別する選別部3とからなる芋分離装置1aの下方に芋掘り取り部33を配置した芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0005】
従って、芋掘り取り部33は芋分離装置1aの下方に配置したから、作業機体の左右幅を狭く、且つ、前後長さも短く構成できるので、小型で簡潔な構成となり、芋掘り取り作業及び芋分離作業の作業性も良い。
【0006】
請求項2記載の発明は、芋掘り取り部33の支持フレーム31を作業機体左右方向一側に変位して設け、該支持フレーム31を作業機体側面視で芋分離装置1aと重複する位置に配置した請求項1記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の作用に加えて、支持フレーム31を作業機体側面視で芋分離装置1aと重複する位置に配置することにより、作業機体の高さを低く構成できて、更に、小型で簡潔な構成となると共に、支持フレーム31が親芋Wの掘り取りを阻害しない側方位置にあるので、掘り取り作業が適正に行なえる。
【0008】
請求項3記載の発明は、芋掘り取り部33の進行方向先端部33aを芋分離装置1aの親芋Wの支持部2の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置した請求項1または請求項2記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0009】
従って、請求項1または請求項2記載の作用に加えて、芋掘り取り部33の進行方向先端部33aを芋分離装置1aの親芋Wの支持部2の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置したから、芋掘り取り部33により芋Wは芋分離装置1aの支持部2よりも進行方向後方側で掘り取られていくようになり、掘り取られる芋Wが芋分離装置1aの支持部2下面に当たって傷つくことが防止できて、適正な掘り取り作業が行なえる。
【0010】
請求項4記載の発明は、芋掘り取り部33の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置1aの選別部3を芋掘り取り部33の上方を開放する状態に収納自在に構成した請求項1乃至請求項3記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0011】
従って、請求項1乃至請求項3記載の作用に加えて、芋掘り取り部33の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置1aの選別部3を芋掘り取り部33の上方を開放する状態に収納することにより、芋掘り取り部33にて掘り取られる芋Wが選別部3の下面に当たって傷つくことが防止できて適正な掘り取り作業が行なえると共に、作業者は該芋掘り取り部33の上方に開放された空間にて掘り起こされた芋Wを容易に拾い上げて収穫することができ作業性が良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、小型で簡潔な構成の芋掘り取り分離作業機を得ることができ、芋掘り取り作業及び芋分離作業の作業性も良く、課題を簡潔な構成で解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下に図面に基づいて詳細に説明する。
図1、図2は、それぞれ、芋掘り取り分離作業機Aをトラクタ(牽引走行車体)Tに装着した状態を示す一部断面側面図および平面図である。芋掘り取り分離作業機Aは、芋分離装置1aと掘り取り作業装置1bとにより構成されている。
【0014】
芋分離装置1aは、収穫芋の親芋Wからその外周に密生している子芋Sを扱き取るためのリング状受座2を取付けたテーブル状の選別枠3と、そのリング状受座2に対して進退動作して親芋Wを同リング状受座2内に強制嵌入する進退部材4と、これらを一体に構成するフレーム5とから構成される。
【0015】
リング状受座2は、親芋Wの茎側が嵌入可能なリング部2rと、このリング部2rを選別枠3の上面より上位に保持するように同心配置した円筒部2cとから構成し、さらに、その下方にカッター2bを配置し、これらをフレーム5の基部に固定する。
【0016】
上記リング状受座2は、親芋Wを強制嵌入して子芋Sを扱き取るために必要な内径寸法にリング部2rおよび円筒部2cを形成する。その上端位置は、倒立姿勢の親芋Wの茎側をリング部2rに嵌入保持した状態で子芋Sの茎が選別枠3と干渉しない範囲、例えば、リング部2rの内半径程度の落差を選別枠3土に確保できるように円筒部2cの高さ寸法を設定する。カッタ2bは、進退部材4によって強制嵌入される親芋Wの下行行程部分を横断するように配置した複数箇の刃物であり、一体的に集合して構成する。その複数の刃物は、具体的には、それぞれ刃を上にしてリング部2rの中心線C位置まで半径方向に下行傾斜で放射状に、例えば、平面視で十文字状に配置する。
【0017】
上記構成のリング状受座2は、リング部2rが円筒部2cによって選別枠3より上位に保持されることから、親芋Wの茎側を倒立姿勢で受けた際に子芋Sの茎をリング部2rの外周に出すことにより、安定したすわり姿勢で親芋Wを嵌入保持する支持手段として機能する。したがって、進退部材4によって親芋Wを強制嵌入した時にその外周に密生する子芋Sを能率良く扱き取ることができる。リング部2rから強制嵌入された親芋は、カッター2bに達すると裁断され、細片となって落下する。
【0018】
選別枠3は、フレーム5の基部に固定された長方形テーブル状の簀の子部材による選別作業台であり、その略中央に形成した開口部にカッター2bを含むリング状受座2を取付け、装置後端側を排出端3eとし、他の3縁辺に規制板3sを起立する。選別枠3の簀の子部材は、リング状受座2によって分離された子芋を散開状に受けるとともに、周囲に飛び散る泥や細根が隙間から落下することにより、オペレータが容易に選別作業を行なえる。
【0019】
また、選別枠3の後部側3aは、回動軸3bにて上方に回動させて収納した状態で固定できる構成とし、芋の掘り取り作業時は上方に回動させた収納状態で掘り取り作業を行い、芋の分離作業時には下方に回動させた水平なテーブル状態で選別作業を行なう。
【0020】
進退部材4は、親芋Wの根底部と当接して拘束押圧するための複数の突起4pによる拘束抑圧部と、この拘束抑圧部の突起4pを支持する複数の支柱4cによる胴部を備えて抑圧手段として機能する。この拘束抑圧部の複数の突起4pは、親芋Wの根底部の複数箇所で当接してその姿勢を拘束して滑らないように、側面視でハの字状に、すなわち、四方に放射状に下端を拡径傾斜したタコ足状に構成する。また、胴部の複数の支柱4cは、その支柱間隔を広く構成することにより、リング状受座2によって抜かれた子芋Sが拘束抑圧部の上方に捲れ上がった場合に、子芋Sの待避空間を確保することができる。
【0021】
この進退部材4を進退可能に駆動するために、リング状受座2の中心線C上でフレーム5の上部に複動型のシリンダ11を起立固定し、その進退ロッド11rの下端に進退部材4を取付ける。シリンダ11の駆動制御は、フレーム5の基部に油圧ポンプ12およびレバー操作による油圧制御弁13、または、スイッチ操作による電磁式油圧制御弁を設け、進退部材4を指令に応じて上下方向に手動で駆動制御し、または、下行動作に続く上昇動作を自動的に駆動制御するように油圧制御系を構成する。
【0022】
フレーム5は、上部連結部5aと下部連結部5bをアーム状に突設して各々トラクターの後部に設けた上部リンクTaと下部リンクTbとに連結可能に構成し、また、油圧ポンプ12の回転軸にカプラー12cを設けてトラクターの作業機駆動軸PTOと連結可能に構成し、油圧シリンダーにて作動する昇降アームTcにて上下昇降動する構成となっている。
【0023】
上述の構成による芋分離装置1aは、トラクターの後部に連結した状態でトラクターから作業機駆動軸PTOより動力を受けることにより稼動される。芋分離処理をする場合は、トラクターの進行を停止させ、選別枠3の後部側3aを下方に回動させた水平なテーブル状態として、まず、支持過程においてオペレータの操作により収穫芋を倒立姿勢で親芋Wの茎側をリング状受座2に嵌入支持し、続く抑圧過程において進退部材4を下降動作させることにより、親芋Wがリング状受座2内に強制嵌入されることにより、その外周に密生している子芋Sが扱き落とされて選別枠3土に散開される。親芋Wはそのままカッター2bに達するまで嵌入されて裁断され、細片となって落下する。
【0024】
この場合において、進退部材4およびその拘束抑圧部を構成する複数の突起4pが親芋Wの根底部の複数位置で当接して抑圧動作することから、親芋Wはその姿勢が維持されつつリング状受座2内に抑圧嵌入されて子芋Sがリング状受座2の外側方に扱き取られる。
【0025】
従って、上記構成の芋分離装置1aにより、親芋Wをリング状受座2内に抑圧嵌入する際に親芋Wの傾斜が防止でき、その結果、リング状受座2の相対的な傾斜動作によって子芋Sが潰される事態を回避することができるので、リング状受座2と進退部材4とからなる簡易な構成により、子芋Sを傷つけることなく分離性能を確保するとともに、コスト上の問題およびメンテナンス上の問題を解決することができる。
【0026】
一方、選別枠3上に散開された子芋Sについては、出荷対象の子芋が、オペレータにより適宜選別される。また、リング状受座2内に嵌入された親芋Wは、カッター2bにより裁断されて細片となって落下するので、圃場を走行しながら芋分離処理をする場合は、選別枠3の貢の子部材の隙間や排出端3eから落下する細根や微細な子芋片とともに、そのまま、有機肥料化される。
【0027】
尚、オペレータにより選別された子芋Sは、フレーム5の左側(機体進行方に向かって左側)に固定されたコンテナ載置棚5cに載置されたコンテナk内に収納することができる。そして、選別作業を終えれば、コンテナ載置棚5cにコンテナkを載置したままトラクターTで収穫した芋を運ぶことができるので、作業性が良い。
(芋分離装置の別構成例)
芋分離装置の別構成例について、図5の要部拡大側面図(a)と平面図(b)とにより説明する。
【0028】
この芋分離装置は、選別枠3の略中央ビリング部材21によるリング状受座を配置し、また、進退部材23の下端に直立状の突起23pによる拘束抑圧部を形成した例であり、上記リング部材21の下方には、複数個のカッター22を十文字状にボルト等の締結部材22fにより固定して構成する。
【0029】
上記カッター22は、進退部材4が下降した際にその突起23pと干渉しない位置に配置し、かつ、進退部材4の昇降ストロークsの下降端位置では、拘束抑圧部の突起23がカッター22の下端位置から所定寸法hを飛び出す位置に高さを定めることにより、親芋を完全に下方に押し抜くことができる。そして、リング部材21の中心線Cの位置で下端が側面視で互いにオーバーラップするように複数のカッター22を一体的に構成することにより、親芋Wを分割して細片化することができる。
【0030】
進退部材23は、部分拡大図を付記した要部側面図を図6に示すように、複数の支柱23cによる胴部の下端に鋭利な突起23qによる拘束抑圧部を形成することにより、抑圧工程における親芋に対する滑りを防止することができる。
【0031】
上記の他に、進退部材は、その側面図を図7に示すように、1本の中心支柱24cによって胴部を細く形成することにより、リング部材21によって捲れ込んだ子芋Sのスペースが確保されて擦り傷を防止することができる。
【0032】
また、進退部材は、縦断面図(右半は作用状態)を図8に示すように、中心支柱25cと、この中心支柱25cに一体に焼き付けたゴム膜等による筒状の弾性外周部材25eとからなる空気抜き25h付き中空体として胴部を形成し、その下端外周の等分周位置の複数個(図例は4個)の弾性突起25pによって拘束抑圧部を形成する。このように進退部材を構成することにより、その胴部に捲れ込んだ子芋Sの擦り傷を防止することができる
また、進退部材は、その斜視図(a)および作用側面図(b)を図9に示すように、親芋Wの径寸法と略等しい大径の筒体26cによって胴部を構成することにより、リング状受座2によって親芋Wから子芋S、孫芋を剥離する時に、それらの捲れ込みを阻止できるので、損傷を小さく抑えることができる。
【0033】
栽培圃場や収穫時期により親芋Wの大きさは異なるので、図10は、色々な大きさの親芋Wに適応できるリング状受座2部分の例を示す。リング状受座2の下方に下部支持板27をボルト28にて固定し、下部支持板27の中央には前記直立状の突起23pによる拘束抑圧部を設けた進退部材23の下端が貫通する孔27aが形成されている。そして、リング状受座2の内部に小径のリング状受座29aを嵌合させて下部支持板27にて支持し、更に、小径のリング状受座29aの内部に更に小径のリング状受座29bを嵌合させて下部支持板27にて支持した構成としている。
【0034】
従って、大きな親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29a・29bを共に除けて、リング状受座2に前述のように親芋Wを置いて分離作業を行なうと適正な小芋Sの分離作業が行なえる。次に、中程度の大きさの親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29aを嵌合支持させて、小径のリング状受座29aに中程度の大きさの親芋Wを置いて分離作業を行なうと中程度の大きさの親芋Wは適正に支持されるので小芋Sの分離作業が良好に行なえる。更に小さい親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29a内に更に小径のリング状受座29bを嵌合支持させて、リング状受座29bに親芋Wを置いて分離作業を行なうと小さな親芋Wは適正に支持されるので小芋Sの分離作業が良好に行なえる。
【0035】
図11(a)(b)は、リング状受座2の他の例を示し、リング状受座2の上端部に中心に向けてゴム板2gを設けた構成であり、ゴム板2gの外周はリング状受座2の上端部に溶着されてリング状受座2と一体構成となっており、ゴム板2gには所定ピッチで切り込み2g’が入れられている。切り込み2g’は、リング状受座2に親芋Wを置いた際に、リング状受座2内部のゴム板2gが親芋Wの外周部に沿って適切に変形して遮蔽するためのものである。
【0036】
従って、リング状受座2に前述のように親芋Wを置いて分離作業を行なうと適正な小芋Sの分離作業が行なえるが、その際、リング状受座2内部のゴム板2gにて親芋Wの外周が遮蔽された状態となるので、小芋Sはリング状受座2内部に入ることなく選別枠3上に分離され、適切で良好な分離作業が行なえる。また、該リング状受座2内部と親芋Wの外周との遮蔽をゴム板2gで行なうことにより、分離作業時に小芋Sに傷が入ることが防止されると共に、作業者がリング状受座2に親芋Wを置く際にリング状受座2部にて手を引っ掛けて怪我をすることも防止できる。
【0037】
尚、上記の実施例では、リング状受座(支持部)2に置かれた親芋Wを進退部材(押圧部)4にて押圧して親芋Wから小芋Sを分離する例を示したが、進退部材(押圧部)4は、親芋Wに圧を掛ける形態以外に親芋Wを打撃する形態の構成でも良い(即ち、親芋Wを打撃して小芋Sを分離するものも、親芋Wを押圧して小芋Sを分離することの一実施例である)。
【0038】
次に、掘り取り作業装置1bについて詳細に説明する。
掘り取り作業装置1bは、フレーム5の左右中心から右側に(機体進行方に向かって右側)ずれた位置に側面視コ字状の連結ヒッチ30を設け、該コ字状の連結ヒッチ30に掘り取り作業装置1bの掘取フレーム31の基部を勘合させて、係止ピン32にて連結されている。そして、掘取フレーム31の後端部をU字状に下方に湾曲させた下端に芋掘り鋤刃33の一端部を溶接固定し、芋掘り鋤刃33は芋掘り鋤刃33の他端部が後方に位置するように平面視で斜め後方に傾斜した姿勢となるように片持ち支持された構成となっている。
【0039】
そして、芋掘り鋤刃33の後辺部には所定の隙間をあけて棒材34の先端部が溶接固定され、機体側面視で芋掘り鋤刃33の先端辺から棒材34の後端まで後方にいくほど上方に傾斜した構成となっている。そして、フレーム5の右側(機体進行方に向かって右側)に掘り取った芋Wを収納する収納枠35が固定されている。
【0040】
そして、特に、芋掘り鋤刃33は、芋分離装置1aの下方に配置されている。また、機体側面視でその芋掘り鋤刃33の先端33aは、リング状受座2やその下方のカッター2bの前後方向中心よりも後方位置となるように配置構成されている。
【0041】
掘り取り作業を行なう場合には、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態として、トラクターTの左右車輪が畝を跨いだ状態として、昇降アームTcにて芋掘り鋤刃33が畝内の芋Wの下方位置になるように上下昇降調節して、トラクターTを前進させる。すると、芋掘り鋤刃33が畝を鋤いて親芋Wが機体後方で徐々に上方に移動するようにして掘り起こされていく。そして、芋掘り鋤刃33の後辺部の棒材34にて、土等が棒材34から下方に落ちて、親芋Wが畝上に掘り起こされた状態となる。そこで、機体の右側方を歩いている作業者がこの掘り起こされた親芋Wを拾い上げて収納枠35内に入れる。このようにして、畝内の親芋Wが掘り起こされて収穫される。
【0042】
この時、芋掘り鋤刃33は芋分離装置1aの下方に配置されて機体の左右幅が狭くて前後長さも短く構成できてコンパクトな構成であり、掘り取り作業装置1bの掘取フレーム31をリング状受座2やその下方のカッター2bの側方に配置することにより、芋分離装置1aと掘取フレーム31を側面視で重複した位置に配置することができて、更に、機体構成がコンパクトで簡潔なものとなる。また、掘取フレーム31が掘り取られる親芋Wの上昇を阻害しない側方位置にあるので、掘り取り作業が適正に行なえる。
【0043】
更に、機体側面視でその芋掘り鋤刃33の先端33aは、リング状受座2やその下方のカッター2bの前後方向中心よりも後方位置となるように配置されているので、掘り取られる親芋Wはリング状受座2やその下方のカッター2bの後方で上昇するように掘り取られるので、掘り取られる芋Wがカッター2b等の部材に当たって傷つくことが防止でき、更に、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態とすることにより、掘り取られる芋Wが選別枠3の後部側3a下面に当たって傷つくことが防止できて、適正な掘り取り作業が行なえる。
【0044】
また、芋掘り鋤刃33は芋分離装置1aの下方に配置されて機体の左右幅が狭くて前後長さも短く構成できてコンパクトな構成としながらも、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態とすることにより、芋掘り鋤刃33の後部上方に開放された空間ができるので、作業者は掘り起こされた芋Wを容易に拾い上げて収穫することができる。
【0045】
尚、フレーム5の左側(機体進行方に向かって左側)には、トラクターTの左後輪の後方に位置する上下位置調節自在のゲージ輪40が設けられている。このゲージ輪40を上下調節して、芋掘り鋤刃33が畝内の芋Wの下方位置になるように芋掘り取り分離作業機Aの高さ調節をする。また、芋掘り鋤刃33の端部に後方に向けて延設した棒状部材又は板体を設ければ、掘り取り作業時に芋掘り鋤刃33が土の抵抗を受けて機体が左右に変向しようとする作用を打ち消す方向修正舵としての機能(直進性を向上させる機能)を持つと共に、非作業時にはスタンドとして用いることができる。
【0046】
最後に、図12乃至図14に示す芋掘り取り作業機について説明する。
芋掘り取り作業機Bは、機体フレーム50下部の左右両側に左右走行クローラ装置51を設け、機体フレーム50の上部には操縦座席52を配置した操縦部53と掘り取り作業部54と掘り取った芋Wをコンテナkに入れて載置する載置棚55等により構成されている。
【0047】
掘り取り作業部54は、掘り取りフレーム56を機体フレーム50に対してその前部が上下動調節自在に装着されており、該掘り取りフレーム56の下部には機体側からの駆動力で駆動回転する駆動ローラ57にて駆動されて周回動する挟持ベルト58を対向して設け、該1対の挟持ベルト58を上下に3段設けている。そして、各挟持ベルト58には、前部ガイドローラ59と後部ガイドローラ60とその中間部分にテンションローラ61とを配設している。
【0048】
掘り取りフレーム56の前端下部には、芋掘り鋤刃62を後方程上位となるように傾斜姿勢で固定して設けている。
そして、駆動ローラ57及び前部ガイドローラ59及び後部ガイドローラ60は、図13に示すように、その左右ローラ間が下方のベルト58程間隔が広くなるように配置しており、芋掘り鋤刃62にて掘り取った芋W(芋Wの形状は下部ほど大きい)を確実に左右挟持ベルト58にて挟持できるようになっている。
【0049】
また、左右テンションローラ61は、図12に示すように、上下3段の挟持ベルト58に対して側面視で順次千鳥状に配置してあり、上下3段の挟持ベルト58の下端から上端まで芋Wを略同じ挟持力で挟持して搬送できるようにしている。
【0050】
更に、左右テンションローラ61は、図14に示すように、上部と下部を各々上部圧縮バネ65と下部圧縮バネ66とで左右テンションローラ61間が狭くなる方向に付勢してあるが、上部圧縮バネ65の付勢力が下部圧縮バネ66の付勢力よりも大きくなるように設定してあり、下部ほど大きい芋Wの形状に合わせて左右挟持ベルト58にテンションを掛けるように構成しており、掘り取った芋Wを確実に左右挟持ベルト58にて挟持搬送できるようになっている。尚、左右テンションローラ61の上部と下部を各々上部圧縮バネ65と下部圧縮バネ66とで付勢する構成に変えて、テンションローラ61の上下片側を回動支点として他方を圧縮バネで付勢する構成にすれば構成が簡潔となる。
【0051】
上記のように構成した芋掘り取り作業機Bの左右走行クローラ装置51を跨いだ状態として、芋掘り鋤刃59が畝内の芋Wの下方位置になるように上下昇降調節して、機体を前進させる。すると、芋掘り鋤刃59が畝を鋤いて芋Wが機体後方で徐々に上方に移動するようにして掘り起こされていく。そして、芋掘り鋤刃33にて掘り起こした芋Wを上下3段の左右挟持ベルト58が挟持して機体後方上方に搬送する。掘り取り作業部54の後部を歩行する作業者が、この上下3段の左右挟持ベルト58にて機体後方上方に搬送された芋Wを取って、載置棚55に置かれたコンテナkに入れて収穫作業を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】芋掘り取り分離作業機をトラクターに装着した全体側面図である。
【図2】芋掘り取り分離作業機の平面図である。
【図3】芋掘り取り分離作業機の一部断面平面図である。
【図4】芋分離装置の要部側面図である。
【図5】別構成の芋分離装置の要部側面図(a)および平面図(b)である。
【図6】部分拡大図を付記した別構成の進退部材の要部側面図である。
【図7】進退部材の構成例の側面図である。
【図8】進退部材の構成例の縦断面図(右半は作用状態)である。
【図9】進退部材の構成例の斜視図(a)および作用側面図(b)である。
【図10】他の例を示す芋分離装置の要部側面図である。
【図11】他の例を示す芋分離装置の要部側面図(a)および平面図(b)である。
【図12】芋掘り取り作業機の全体側面図である。
【図13】左右挟持ベルト58の駆動ローラ部の作用説明用断面図である。
【図14】左右挟持ベルト58のテンションローラ部の作用説明用断面図である。
【符号の説明】
【0053】
2 支持部(リング状受座)
4 押圧部(進退部材)
3 選別部(選別枠)
1a 芋分離装置
33 芋掘り取り部(芋掘り鋤刃)
31 芋掘り取り部の支持フレーム(掘取フレーム)
33a 芋掘り取り部の進行方向先端部
S 子芋
W 親芋
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から芋を掘り取って、芋の複合体である収穫芋の内の目的部分を分離する芋掘り取り分離作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、子芋が親芋の外周部に密生した状態の収穫芋について、その親芋から子芋を分離する芋分離装置がある。
【特許文献1】特開平11−168933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、先ず、手作業で圃場から芋を掘り取って、その後で上記の芋分離装置で芋を分離作業する作業形態であった。従って、芋を圃場から掘り取る作業は大変な労力を要すると共に、芋の掘り取り作業と芋の分離作業とが効率よく行なえるものではなかった。この発明は、この種の芋を掘り取る作業と分離する作業とが効率よく行なえる簡潔な構成の芋掘り取り分離作業機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、親芋Wを保持する支持部2とその親芋Wを押圧して小芋Sを分離する押圧部4と分離された小芋Sを選別する選別部3とからなる芋分離装置1aの下方に芋掘り取り部33を配置した芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0005】
従って、芋掘り取り部33は芋分離装置1aの下方に配置したから、作業機体の左右幅を狭く、且つ、前後長さも短く構成できるので、小型で簡潔な構成となり、芋掘り取り作業及び芋分離作業の作業性も良い。
【0006】
請求項2記載の発明は、芋掘り取り部33の支持フレーム31を作業機体左右方向一側に変位して設け、該支持フレーム31を作業機体側面視で芋分離装置1aと重複する位置に配置した請求項1記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の作用に加えて、支持フレーム31を作業機体側面視で芋分離装置1aと重複する位置に配置することにより、作業機体の高さを低く構成できて、更に、小型で簡潔な構成となると共に、支持フレーム31が親芋Wの掘り取りを阻害しない側方位置にあるので、掘り取り作業が適正に行なえる。
【0008】
請求項3記載の発明は、芋掘り取り部33の進行方向先端部33aを芋分離装置1aの親芋Wの支持部2の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置した請求項1または請求項2記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0009】
従って、請求項1または請求項2記載の作用に加えて、芋掘り取り部33の進行方向先端部33aを芋分離装置1aの親芋Wの支持部2の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置したから、芋掘り取り部33により芋Wは芋分離装置1aの支持部2よりも進行方向後方側で掘り取られていくようになり、掘り取られる芋Wが芋分離装置1aの支持部2下面に当たって傷つくことが防止できて、適正な掘り取り作業が行なえる。
【0010】
請求項4記載の発明は、芋掘り取り部33の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置1aの選別部3を芋掘り取り部33の上方を開放する状態に収納自在に構成した請求項1乃至請求項3記載の芋掘り取り分離作業機としたものである。
【0011】
従って、請求項1乃至請求項3記載の作用に加えて、芋掘り取り部33の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置1aの選別部3を芋掘り取り部33の上方を開放する状態に収納することにより、芋掘り取り部33にて掘り取られる芋Wが選別部3の下面に当たって傷つくことが防止できて適正な掘り取り作業が行なえると共に、作業者は該芋掘り取り部33の上方に開放された空間にて掘り起こされた芋Wを容易に拾い上げて収穫することができ作業性が良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、小型で簡潔な構成の芋掘り取り分離作業機を得ることができ、芋掘り取り作業及び芋分離作業の作業性も良く、課題を簡潔な構成で解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下に図面に基づいて詳細に説明する。
図1、図2は、それぞれ、芋掘り取り分離作業機Aをトラクタ(牽引走行車体)Tに装着した状態を示す一部断面側面図および平面図である。芋掘り取り分離作業機Aは、芋分離装置1aと掘り取り作業装置1bとにより構成されている。
【0014】
芋分離装置1aは、収穫芋の親芋Wからその外周に密生している子芋Sを扱き取るためのリング状受座2を取付けたテーブル状の選別枠3と、そのリング状受座2に対して進退動作して親芋Wを同リング状受座2内に強制嵌入する進退部材4と、これらを一体に構成するフレーム5とから構成される。
【0015】
リング状受座2は、親芋Wの茎側が嵌入可能なリング部2rと、このリング部2rを選別枠3の上面より上位に保持するように同心配置した円筒部2cとから構成し、さらに、その下方にカッター2bを配置し、これらをフレーム5の基部に固定する。
【0016】
上記リング状受座2は、親芋Wを強制嵌入して子芋Sを扱き取るために必要な内径寸法にリング部2rおよび円筒部2cを形成する。その上端位置は、倒立姿勢の親芋Wの茎側をリング部2rに嵌入保持した状態で子芋Sの茎が選別枠3と干渉しない範囲、例えば、リング部2rの内半径程度の落差を選別枠3土に確保できるように円筒部2cの高さ寸法を設定する。カッタ2bは、進退部材4によって強制嵌入される親芋Wの下行行程部分を横断するように配置した複数箇の刃物であり、一体的に集合して構成する。その複数の刃物は、具体的には、それぞれ刃を上にしてリング部2rの中心線C位置まで半径方向に下行傾斜で放射状に、例えば、平面視で十文字状に配置する。
【0017】
上記構成のリング状受座2は、リング部2rが円筒部2cによって選別枠3より上位に保持されることから、親芋Wの茎側を倒立姿勢で受けた際に子芋Sの茎をリング部2rの外周に出すことにより、安定したすわり姿勢で親芋Wを嵌入保持する支持手段として機能する。したがって、進退部材4によって親芋Wを強制嵌入した時にその外周に密生する子芋Sを能率良く扱き取ることができる。リング部2rから強制嵌入された親芋は、カッター2bに達すると裁断され、細片となって落下する。
【0018】
選別枠3は、フレーム5の基部に固定された長方形テーブル状の簀の子部材による選別作業台であり、その略中央に形成した開口部にカッター2bを含むリング状受座2を取付け、装置後端側を排出端3eとし、他の3縁辺に規制板3sを起立する。選別枠3の簀の子部材は、リング状受座2によって分離された子芋を散開状に受けるとともに、周囲に飛び散る泥や細根が隙間から落下することにより、オペレータが容易に選別作業を行なえる。
【0019】
また、選別枠3の後部側3aは、回動軸3bにて上方に回動させて収納した状態で固定できる構成とし、芋の掘り取り作業時は上方に回動させた収納状態で掘り取り作業を行い、芋の分離作業時には下方に回動させた水平なテーブル状態で選別作業を行なう。
【0020】
進退部材4は、親芋Wの根底部と当接して拘束押圧するための複数の突起4pによる拘束抑圧部と、この拘束抑圧部の突起4pを支持する複数の支柱4cによる胴部を備えて抑圧手段として機能する。この拘束抑圧部の複数の突起4pは、親芋Wの根底部の複数箇所で当接してその姿勢を拘束して滑らないように、側面視でハの字状に、すなわち、四方に放射状に下端を拡径傾斜したタコ足状に構成する。また、胴部の複数の支柱4cは、その支柱間隔を広く構成することにより、リング状受座2によって抜かれた子芋Sが拘束抑圧部の上方に捲れ上がった場合に、子芋Sの待避空間を確保することができる。
【0021】
この進退部材4を進退可能に駆動するために、リング状受座2の中心線C上でフレーム5の上部に複動型のシリンダ11を起立固定し、その進退ロッド11rの下端に進退部材4を取付ける。シリンダ11の駆動制御は、フレーム5の基部に油圧ポンプ12およびレバー操作による油圧制御弁13、または、スイッチ操作による電磁式油圧制御弁を設け、進退部材4を指令に応じて上下方向に手動で駆動制御し、または、下行動作に続く上昇動作を自動的に駆動制御するように油圧制御系を構成する。
【0022】
フレーム5は、上部連結部5aと下部連結部5bをアーム状に突設して各々トラクターの後部に設けた上部リンクTaと下部リンクTbとに連結可能に構成し、また、油圧ポンプ12の回転軸にカプラー12cを設けてトラクターの作業機駆動軸PTOと連結可能に構成し、油圧シリンダーにて作動する昇降アームTcにて上下昇降動する構成となっている。
【0023】
上述の構成による芋分離装置1aは、トラクターの後部に連結した状態でトラクターから作業機駆動軸PTOより動力を受けることにより稼動される。芋分離処理をする場合は、トラクターの進行を停止させ、選別枠3の後部側3aを下方に回動させた水平なテーブル状態として、まず、支持過程においてオペレータの操作により収穫芋を倒立姿勢で親芋Wの茎側をリング状受座2に嵌入支持し、続く抑圧過程において進退部材4を下降動作させることにより、親芋Wがリング状受座2内に強制嵌入されることにより、その外周に密生している子芋Sが扱き落とされて選別枠3土に散開される。親芋Wはそのままカッター2bに達するまで嵌入されて裁断され、細片となって落下する。
【0024】
この場合において、進退部材4およびその拘束抑圧部を構成する複数の突起4pが親芋Wの根底部の複数位置で当接して抑圧動作することから、親芋Wはその姿勢が維持されつつリング状受座2内に抑圧嵌入されて子芋Sがリング状受座2の外側方に扱き取られる。
【0025】
従って、上記構成の芋分離装置1aにより、親芋Wをリング状受座2内に抑圧嵌入する際に親芋Wの傾斜が防止でき、その結果、リング状受座2の相対的な傾斜動作によって子芋Sが潰される事態を回避することができるので、リング状受座2と進退部材4とからなる簡易な構成により、子芋Sを傷つけることなく分離性能を確保するとともに、コスト上の問題およびメンテナンス上の問題を解決することができる。
【0026】
一方、選別枠3上に散開された子芋Sについては、出荷対象の子芋が、オペレータにより適宜選別される。また、リング状受座2内に嵌入された親芋Wは、カッター2bにより裁断されて細片となって落下するので、圃場を走行しながら芋分離処理をする場合は、選別枠3の貢の子部材の隙間や排出端3eから落下する細根や微細な子芋片とともに、そのまま、有機肥料化される。
【0027】
尚、オペレータにより選別された子芋Sは、フレーム5の左側(機体進行方に向かって左側)に固定されたコンテナ載置棚5cに載置されたコンテナk内に収納することができる。そして、選別作業を終えれば、コンテナ載置棚5cにコンテナkを載置したままトラクターTで収穫した芋を運ぶことができるので、作業性が良い。
(芋分離装置の別構成例)
芋分離装置の別構成例について、図5の要部拡大側面図(a)と平面図(b)とにより説明する。
【0028】
この芋分離装置は、選別枠3の略中央ビリング部材21によるリング状受座を配置し、また、進退部材23の下端に直立状の突起23pによる拘束抑圧部を形成した例であり、上記リング部材21の下方には、複数個のカッター22を十文字状にボルト等の締結部材22fにより固定して構成する。
【0029】
上記カッター22は、進退部材4が下降した際にその突起23pと干渉しない位置に配置し、かつ、進退部材4の昇降ストロークsの下降端位置では、拘束抑圧部の突起23がカッター22の下端位置から所定寸法hを飛び出す位置に高さを定めることにより、親芋を完全に下方に押し抜くことができる。そして、リング部材21の中心線Cの位置で下端が側面視で互いにオーバーラップするように複数のカッター22を一体的に構成することにより、親芋Wを分割して細片化することができる。
【0030】
進退部材23は、部分拡大図を付記した要部側面図を図6に示すように、複数の支柱23cによる胴部の下端に鋭利な突起23qによる拘束抑圧部を形成することにより、抑圧工程における親芋に対する滑りを防止することができる。
【0031】
上記の他に、進退部材は、その側面図を図7に示すように、1本の中心支柱24cによって胴部を細く形成することにより、リング部材21によって捲れ込んだ子芋Sのスペースが確保されて擦り傷を防止することができる。
【0032】
また、進退部材は、縦断面図(右半は作用状態)を図8に示すように、中心支柱25cと、この中心支柱25cに一体に焼き付けたゴム膜等による筒状の弾性外周部材25eとからなる空気抜き25h付き中空体として胴部を形成し、その下端外周の等分周位置の複数個(図例は4個)の弾性突起25pによって拘束抑圧部を形成する。このように進退部材を構成することにより、その胴部に捲れ込んだ子芋Sの擦り傷を防止することができる
また、進退部材は、その斜視図(a)および作用側面図(b)を図9に示すように、親芋Wの径寸法と略等しい大径の筒体26cによって胴部を構成することにより、リング状受座2によって親芋Wから子芋S、孫芋を剥離する時に、それらの捲れ込みを阻止できるので、損傷を小さく抑えることができる。
【0033】
栽培圃場や収穫時期により親芋Wの大きさは異なるので、図10は、色々な大きさの親芋Wに適応できるリング状受座2部分の例を示す。リング状受座2の下方に下部支持板27をボルト28にて固定し、下部支持板27の中央には前記直立状の突起23pによる拘束抑圧部を設けた進退部材23の下端が貫通する孔27aが形成されている。そして、リング状受座2の内部に小径のリング状受座29aを嵌合させて下部支持板27にて支持し、更に、小径のリング状受座29aの内部に更に小径のリング状受座29bを嵌合させて下部支持板27にて支持した構成としている。
【0034】
従って、大きな親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29a・29bを共に除けて、リング状受座2に前述のように親芋Wを置いて分離作業を行なうと適正な小芋Sの分離作業が行なえる。次に、中程度の大きさの親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29aを嵌合支持させて、小径のリング状受座29aに中程度の大きさの親芋Wを置いて分離作業を行なうと中程度の大きさの親芋Wは適正に支持されるので小芋Sの分離作業が良好に行なえる。更に小さい親芋Wの小芋分離作業をするときは、内側の小径のリング状受座29a内に更に小径のリング状受座29bを嵌合支持させて、リング状受座29bに親芋Wを置いて分離作業を行なうと小さな親芋Wは適正に支持されるので小芋Sの分離作業が良好に行なえる。
【0035】
図11(a)(b)は、リング状受座2の他の例を示し、リング状受座2の上端部に中心に向けてゴム板2gを設けた構成であり、ゴム板2gの外周はリング状受座2の上端部に溶着されてリング状受座2と一体構成となっており、ゴム板2gには所定ピッチで切り込み2g’が入れられている。切り込み2g’は、リング状受座2に親芋Wを置いた際に、リング状受座2内部のゴム板2gが親芋Wの外周部に沿って適切に変形して遮蔽するためのものである。
【0036】
従って、リング状受座2に前述のように親芋Wを置いて分離作業を行なうと適正な小芋Sの分離作業が行なえるが、その際、リング状受座2内部のゴム板2gにて親芋Wの外周が遮蔽された状態となるので、小芋Sはリング状受座2内部に入ることなく選別枠3上に分離され、適切で良好な分離作業が行なえる。また、該リング状受座2内部と親芋Wの外周との遮蔽をゴム板2gで行なうことにより、分離作業時に小芋Sに傷が入ることが防止されると共に、作業者がリング状受座2に親芋Wを置く際にリング状受座2部にて手を引っ掛けて怪我をすることも防止できる。
【0037】
尚、上記の実施例では、リング状受座(支持部)2に置かれた親芋Wを進退部材(押圧部)4にて押圧して親芋Wから小芋Sを分離する例を示したが、進退部材(押圧部)4は、親芋Wに圧を掛ける形態以外に親芋Wを打撃する形態の構成でも良い(即ち、親芋Wを打撃して小芋Sを分離するものも、親芋Wを押圧して小芋Sを分離することの一実施例である)。
【0038】
次に、掘り取り作業装置1bについて詳細に説明する。
掘り取り作業装置1bは、フレーム5の左右中心から右側に(機体進行方に向かって右側)ずれた位置に側面視コ字状の連結ヒッチ30を設け、該コ字状の連結ヒッチ30に掘り取り作業装置1bの掘取フレーム31の基部を勘合させて、係止ピン32にて連結されている。そして、掘取フレーム31の後端部をU字状に下方に湾曲させた下端に芋掘り鋤刃33の一端部を溶接固定し、芋掘り鋤刃33は芋掘り鋤刃33の他端部が後方に位置するように平面視で斜め後方に傾斜した姿勢となるように片持ち支持された構成となっている。
【0039】
そして、芋掘り鋤刃33の後辺部には所定の隙間をあけて棒材34の先端部が溶接固定され、機体側面視で芋掘り鋤刃33の先端辺から棒材34の後端まで後方にいくほど上方に傾斜した構成となっている。そして、フレーム5の右側(機体進行方に向かって右側)に掘り取った芋Wを収納する収納枠35が固定されている。
【0040】
そして、特に、芋掘り鋤刃33は、芋分離装置1aの下方に配置されている。また、機体側面視でその芋掘り鋤刃33の先端33aは、リング状受座2やその下方のカッター2bの前後方向中心よりも後方位置となるように配置構成されている。
【0041】
掘り取り作業を行なう場合には、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態として、トラクターTの左右車輪が畝を跨いだ状態として、昇降アームTcにて芋掘り鋤刃33が畝内の芋Wの下方位置になるように上下昇降調節して、トラクターTを前進させる。すると、芋掘り鋤刃33が畝を鋤いて親芋Wが機体後方で徐々に上方に移動するようにして掘り起こされていく。そして、芋掘り鋤刃33の後辺部の棒材34にて、土等が棒材34から下方に落ちて、親芋Wが畝上に掘り起こされた状態となる。そこで、機体の右側方を歩いている作業者がこの掘り起こされた親芋Wを拾い上げて収納枠35内に入れる。このようにして、畝内の親芋Wが掘り起こされて収穫される。
【0042】
この時、芋掘り鋤刃33は芋分離装置1aの下方に配置されて機体の左右幅が狭くて前後長さも短く構成できてコンパクトな構成であり、掘り取り作業装置1bの掘取フレーム31をリング状受座2やその下方のカッター2bの側方に配置することにより、芋分離装置1aと掘取フレーム31を側面視で重複した位置に配置することができて、更に、機体構成がコンパクトで簡潔なものとなる。また、掘取フレーム31が掘り取られる親芋Wの上昇を阻害しない側方位置にあるので、掘り取り作業が適正に行なえる。
【0043】
更に、機体側面視でその芋掘り鋤刃33の先端33aは、リング状受座2やその下方のカッター2bの前後方向中心よりも後方位置となるように配置されているので、掘り取られる親芋Wはリング状受座2やその下方のカッター2bの後方で上昇するように掘り取られるので、掘り取られる芋Wがカッター2b等の部材に当たって傷つくことが防止でき、更に、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態とすることにより、掘り取られる芋Wが選別枠3の後部側3a下面に当たって傷つくことが防止できて、適正な掘り取り作業が行なえる。
【0044】
また、芋掘り鋤刃33は芋分離装置1aの下方に配置されて機体の左右幅が狭くて前後長さも短く構成できてコンパクトな構成としながらも、選別枠3の後部側3aを上方に回動させた収納状態とすることにより、芋掘り鋤刃33の後部上方に開放された空間ができるので、作業者は掘り起こされた芋Wを容易に拾い上げて収穫することができる。
【0045】
尚、フレーム5の左側(機体進行方に向かって左側)には、トラクターTの左後輪の後方に位置する上下位置調節自在のゲージ輪40が設けられている。このゲージ輪40を上下調節して、芋掘り鋤刃33が畝内の芋Wの下方位置になるように芋掘り取り分離作業機Aの高さ調節をする。また、芋掘り鋤刃33の端部に後方に向けて延設した棒状部材又は板体を設ければ、掘り取り作業時に芋掘り鋤刃33が土の抵抗を受けて機体が左右に変向しようとする作用を打ち消す方向修正舵としての機能(直進性を向上させる機能)を持つと共に、非作業時にはスタンドとして用いることができる。
【0046】
最後に、図12乃至図14に示す芋掘り取り作業機について説明する。
芋掘り取り作業機Bは、機体フレーム50下部の左右両側に左右走行クローラ装置51を設け、機体フレーム50の上部には操縦座席52を配置した操縦部53と掘り取り作業部54と掘り取った芋Wをコンテナkに入れて載置する載置棚55等により構成されている。
【0047】
掘り取り作業部54は、掘り取りフレーム56を機体フレーム50に対してその前部が上下動調節自在に装着されており、該掘り取りフレーム56の下部には機体側からの駆動力で駆動回転する駆動ローラ57にて駆動されて周回動する挟持ベルト58を対向して設け、該1対の挟持ベルト58を上下に3段設けている。そして、各挟持ベルト58には、前部ガイドローラ59と後部ガイドローラ60とその中間部分にテンションローラ61とを配設している。
【0048】
掘り取りフレーム56の前端下部には、芋掘り鋤刃62を後方程上位となるように傾斜姿勢で固定して設けている。
そして、駆動ローラ57及び前部ガイドローラ59及び後部ガイドローラ60は、図13に示すように、その左右ローラ間が下方のベルト58程間隔が広くなるように配置しており、芋掘り鋤刃62にて掘り取った芋W(芋Wの形状は下部ほど大きい)を確実に左右挟持ベルト58にて挟持できるようになっている。
【0049】
また、左右テンションローラ61は、図12に示すように、上下3段の挟持ベルト58に対して側面視で順次千鳥状に配置してあり、上下3段の挟持ベルト58の下端から上端まで芋Wを略同じ挟持力で挟持して搬送できるようにしている。
【0050】
更に、左右テンションローラ61は、図14に示すように、上部と下部を各々上部圧縮バネ65と下部圧縮バネ66とで左右テンションローラ61間が狭くなる方向に付勢してあるが、上部圧縮バネ65の付勢力が下部圧縮バネ66の付勢力よりも大きくなるように設定してあり、下部ほど大きい芋Wの形状に合わせて左右挟持ベルト58にテンションを掛けるように構成しており、掘り取った芋Wを確実に左右挟持ベルト58にて挟持搬送できるようになっている。尚、左右テンションローラ61の上部と下部を各々上部圧縮バネ65と下部圧縮バネ66とで付勢する構成に変えて、テンションローラ61の上下片側を回動支点として他方を圧縮バネで付勢する構成にすれば構成が簡潔となる。
【0051】
上記のように構成した芋掘り取り作業機Bの左右走行クローラ装置51を跨いだ状態として、芋掘り鋤刃59が畝内の芋Wの下方位置になるように上下昇降調節して、機体を前進させる。すると、芋掘り鋤刃59が畝を鋤いて芋Wが機体後方で徐々に上方に移動するようにして掘り起こされていく。そして、芋掘り鋤刃33にて掘り起こした芋Wを上下3段の左右挟持ベルト58が挟持して機体後方上方に搬送する。掘り取り作業部54の後部を歩行する作業者が、この上下3段の左右挟持ベルト58にて機体後方上方に搬送された芋Wを取って、載置棚55に置かれたコンテナkに入れて収穫作業を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】芋掘り取り分離作業機をトラクターに装着した全体側面図である。
【図2】芋掘り取り分離作業機の平面図である。
【図3】芋掘り取り分離作業機の一部断面平面図である。
【図4】芋分離装置の要部側面図である。
【図5】別構成の芋分離装置の要部側面図(a)および平面図(b)である。
【図6】部分拡大図を付記した別構成の進退部材の要部側面図である。
【図7】進退部材の構成例の側面図である。
【図8】進退部材の構成例の縦断面図(右半は作用状態)である。
【図9】進退部材の構成例の斜視図(a)および作用側面図(b)である。
【図10】他の例を示す芋分離装置の要部側面図である。
【図11】他の例を示す芋分離装置の要部側面図(a)および平面図(b)である。
【図12】芋掘り取り作業機の全体側面図である。
【図13】左右挟持ベルト58の駆動ローラ部の作用説明用断面図である。
【図14】左右挟持ベルト58のテンションローラ部の作用説明用断面図である。
【符号の説明】
【0053】
2 支持部(リング状受座)
4 押圧部(進退部材)
3 選別部(選別枠)
1a 芋分離装置
33 芋掘り取り部(芋掘り鋤刃)
31 芋掘り取り部の支持フレーム(掘取フレーム)
33a 芋掘り取り部の進行方向先端部
S 子芋
W 親芋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親芋(W)を保持する支持部(2)とその親芋(W)を押圧して小芋(S)を分離する押圧部(4)と分離された小芋(S)を選別する選別部(3)とからなる芋分離装置(1a)の下方に芋掘り取り部(33)を配置したことを特徴とする芋掘り取り分離作業機。
【請求項2】
芋掘り取り部(33)の支持フレーム(31)を作業機体左右方向一側に変位して設け、該支持フレーム(31)を作業機体側面視で芋分離装置(1a)と重複する位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の芋掘り取り分離作業機。
【請求項3】
芋掘り取り部(33)の進行方向先端部(33a)を芋分離装置(1a)の親芋(W)の支持部(2)の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の芋掘り取り分離作業機。
【請求項4】
芋掘り取り部(33)の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置(1a)の選別部(3)を芋掘り取り部(33)の上方を開放する状態に収納自在に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の芋掘り取り分離作業機。
【請求項1】
親芋(W)を保持する支持部(2)とその親芋(W)を押圧して小芋(S)を分離する押圧部(4)と分離された小芋(S)を選別する選別部(3)とからなる芋分離装置(1a)の下方に芋掘り取り部(33)を配置したことを特徴とする芋掘り取り分離作業機。
【請求項2】
芋掘り取り部(33)の支持フレーム(31)を作業機体左右方向一側に変位して設け、該支持フレーム(31)を作業機体側面視で芋分離装置(1a)と重複する位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の芋掘り取り分離作業機。
【請求項3】
芋掘り取り部(33)の進行方向先端部(33a)を芋分離装置(1a)の親芋(W)の支持部(2)の前後方向中心よりも進行方向で後方位置となるように配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の芋掘り取り分離作業機。
【請求項4】
芋掘り取り部(33)の少なくとも後部上方に位置する芋分離装置(1a)の選別部(3)を芋掘り取り部(33)の上方を開放する状態に収納自在に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の芋掘り取り分離作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−73010(P2008−73010A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258604(P2006−258604)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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