説明

芝刈機

【課題】芝刈り機構と刈草を受け入れる集草ボックスと、この集草ボックスを持ち上げるリフト機構とを備え、集草ボックスにおける後面の開口を開閉自在に塞ぐ後蓋板を備えた芝刈機において、集草ボックスを高く持ち上げたときにおける支持の安定性の向上を図り小型・軽量化を達成し刈草の零れを少なくする。
【解決手段】集草ボックス18における底部を開放して、この開放された底部を開閉自在に塞ぐ底蓋板20を設け、この底蓋板20を後蓋板21の開き作動に連動して開き作動するように連結し、更に集草ボックス18の刈草の受け入れ口の底部に刈草の底部誘導板28を底蓋板20の開き回動に連動して傾斜回動するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,走行しながら芝草を刈り取るようにした芝刈機のうち,刈り取った刈草の適宜量を集めたのち高い位置まで持ち上げて排出するように構成した集草排出機構を備えて成る芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,この種の芝刈機における集草排出機構には,例えば,特許文献1及び2に記載されているように,前記芝刈機の後部から後ろ向きに放出される刈草を,後面の開口部に開閉自在な後蓋板を備えて成る集草ボックス内に,当該集草ボックスを下降した位置において受け入れ,この集草ボックス内に所定量の刈草が入ると,前記集草ボックスを高い位置まで持ち上げたのち後蓋板を開きながら後面の開口部が下向きになるように後ろ向きに回動することによって,その内部に入れた刈草を高い位置から排出するという構成にしている。
【特許文献1】特開2001−275438号公報
【特許文献2】特開2002−84850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし,このように,集草ボックス内に受け入れた刈草の排出を,前記集草ボックスを,高く持ち上げた状態のもとで,その後面における開口が下向きになるように大きく後ろ向きに回動して行うものであることにより,前記の排出を行うときにおいて,前記集草ボックスの地面からの重心高さが高くなるから,前記集草ボックスが横方向に振れ易いというように,集草ボックスを高く持ち上げた状態での支持が不安定になるという問題があった。
【0004】
しかも,前記集草ボックスを,これに刈草を入れて重くなった状態で,その後面における開口が下向きになるように大きく後ろ向きに回動しなければならず,この後ろ向き回動するための機構(例えば,油圧シリンダ等)を,出力の大きい従って大型のものに構成しなければならず,前記集草ボックスにおける重量が大幅に嵩むことになるから,集草ボックスを高く持ち上げた状態での支持の不安定性が増大するばかりか,前記リフト機構における大型化及び重量アップ,ひいては,芝刈機全体の大型化及び重量アップを招来するという問題もあり,その上,前記芝刈機の後部から後ろ向きに放出される刈草を集草ボックス内に受け入れるときに,この集草ボックスのうち刈草受け入れ口の底部から刈草が多量に零れるという問題もあった。
【0005】
本発明は,これらの問題を解消した芝刈機を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「芝刈り機構と,この芝刈り機構にて刈り取った刈草を前向きの姿勢で受け入れる集草ボックスと,この集草ボックスを前向きの姿勢で持ち上げるようにしたリフト機構とを備え,更に,前記集草ボックスにおける後面の開口を開閉自在に塞ぐようにした後蓋板を備えて成る芝刈機において,
前記集草ボックスにおける底部を開放して,この開放された底部を開閉自在に塞ぐ底蓋板を設け,この底蓋板を,前記後蓋板の開き作動に連動して開き回動するように構成する一方,前記集草ボックスのうち前記芝刈り機構にて刈り取った刈草の受け入れ口の底部に,前記刈草を前記集草ボックス内に導く底部誘導板を,前記底蓋板の前端から前向きに突出するように設けて,この底部誘導板を,前記底蓋板又は前記後蓋板の開き作動に連動して傾斜回動するように構成した。」
ことを特徴としている。
【0007】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記底蓋板における開き作動を,当該底蓋板のうち少なくとも前端部が前記集草ボックス内に向かってはね上がる開き回動に構成する一方,前記底部誘導板における傾斜回動を,当該底部誘導板の後端を中心として前端部がはね上がる回動に構成した。」
ことを特徴としている。
【0008】
請求項3は,
「前記請求項2の記載において,前記底部誘導板における傾斜回動を,前記底蓋板における開き作動に先立って行うように構成した。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前記請求項1に記載した構成において,刈り取り作業の進行に伴い,刈草を集草ボックス内に受け入れる。
【0010】
このとき,集草ボックスのうち刈草の受け入れ口の底部には,前記刈草を前記集草ボックス内に導く底部誘導板が前向きに突出するように設けられていることにより,前記刈草を前記底部誘導板を介して集草ボックス内に円滑に導くことができるから,前記刈草の零れを確実に低減できる。
【0011】
そして,集草ボックス内に所定量の刈草を受け入れると,リフト機構が,前記集草ボックスを高い位置まで持ち上げる。
【0012】
この持ち上げた状態で,前記集草ボックスの後面における後蓋板を開き作動すると,これに連動して,前記集草ボックスの底面における底蓋板も開き作動することにより,前記集草ボックス内の刈草は,地面からの高い位置より排出される。
【0013】
つまり,集草ボックス内からの刈草の排出は,集草ボックスの後面における後蓋板の開き作動に連動して底蓋板が開き作動することによって行うものであって,前記した従来のように,集草ボックスを,高く持ち上げた状態で,その全体を大きく後ろ回動することを必要としないことにより,高く持ち上げたときにおける地面からの重心高さを従来の場合よりも大幅に低くすることができ,しかも,前記後蓋板を開閉作動するだけで良くて,その開閉作動を,前記従来の場合よりも比較的出力の小さい,従って小型の機構(例えば,油圧シリンダ)にて行うことができ,集草ボックスにおける重量を軽減できるから,集草ボックスを高く持ち上げた状態での支持の安定性をより向上できるとともに,リフト機構における小型化及び軽量化,ひいては,芝刈機全体の小型化及び軽量化を確実に図ることができる。
【0014】
そして,前記した刈草の高く持ち上げた状態での排出に際しては,前記底部誘導板が,前記底蓋板又は前記後蓋板の開き作動に連動して,傾斜回動することにより,この底部誘導板の上面に堆積する刈草の全てを,当該底部誘導板の上面から確実に落とすことができる。
【0015】
つまり,前記集草ボックス内に刈草を受け入れるときにおける零れを確実に少なくすることができるものでありながら,前記集草ボックスを高く持ち上げた状態での排出に際しては,当該集草ボックス内における刈草の殆ど全てを確実に排出できる。
【0016】
特に,請求項2に記載した構成によると,前記集草ボックスにおける最大持ち上げ高さを,底蓋板及び底部誘導板における前端部をはね上げることで,これら底蓋板及び底部誘導板の前端部を下向きに開く回動する場合よりも,低くすることができるから,前記した効果を助長できる。
【0017】
また,請求項3に記載した構成によると,前記底部誘導板の上面に堆積する刈草を,当該底部誘導板から底蓋板の上面に移したあとで,前記底蓋板の上面から落とすことができるから,これらの上面に堆積する刈草が広い範囲に分散して落ちることを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図14の図面について説明する。
【0019】
これらの図において,符号1は,乗用型の芝刈機を示し,この芝刈機1は,前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム3にて構成した走行機体2を有し,この走行機体2は,地面4に接地する左右一対の前輪5と,同じく地面4に接地する左右一対の後輪6とで支持され,且つ,この走行機体2には,その上面に前部から順番にエンジン7,操縦ハンドル8,操縦座席9が設けられていると共に,前記エンジン7を着脱可能に覆うボンネットカバー10,前記操縦座席9に対するステップ台11及び前記両後輪6を覆うフェンダー12が設けられている。この場合,操縦座席9に座ったオペレータが操縦ハンドル8を回動操作することにより,左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。
【0020】
操縦座席9の下方には,ミッションケース61が配置されている。実施形態では,左右両サイドフレーム3の後部が前低後高形の傾斜部になっており,これら両傾斜部にミッションケース61が支持されている。また,ミッションケース61は,エンジン7からの動力を適宜変速して左右の後車輪6に伝達することによって,前進走行又は後退走行するように構成されている。
【0021】
前記走行機体2における下面には,前輪5と後輪6との間の部位に,前記エンジン6からの動力伝達による駆動にて前記地面4における芝草を刈り取るようにしたロータリー式の芝刈り機構13が昇降可能に設けられているとともに,両後輪5間の部位に,前記ロータリー式の芝刈り機構13にて刈り取った刈草を走行機体2の後方に向かって放出するようにした排出ダクト14が後方に延びるように設けられている。
【0022】
なお,前記両後輪6における中心部の外側面には,図1及び図2に示すように,金属棒を半円形のループ状等に曲げ加工して成るロープ掛け具15が,当該後輪6の中心におけるハブをその車軸に対して着脱可能に取付けための複数本のボルト15aによる同時に締結にて着脱自在に取付けされており,前記芝刈機1をトレーラ等に載せて搬送するときにおいて,当該芝刈機1のうち後部をトレーラ等に対して固定するためのロープ又は鎖等を前記フロープ掛け具15に対して掛けることができるように構成しており,このロープ掛け具15は,ループ状にすることに限らず,フック状に構成しても良いが,図示のように半円形のループ状に構成した場合には,これに草等が巻き付くことを低減できるばかりか,剛性を向上できる等の利点がある。また,このような構成のロープ掛け具15は,前記両後輪6に代えて両前輪5に設けるか,両前輪5及び両後輪6の両方に設けることができる。
【0023】
前記芝刈機1の後部には,前記排出ダクト14から後方に放出される刈草を,詳しくは後述するように,集めて高く持ち上げて排出するように集草排出機構16が装着されている一方,前記芝刈機1の前部には,前記集草排出機構16に対して前後の重量バランスを図るためのウエイト17が取付けられている。
【0024】
左右両サイドフレーム3における傾斜部の後端部分には,エンジン7に燃料を供給する燃料タンク62が搭載されている。右サイドフレーム3における傾斜部の外側に,ミッションケース61の作動油を供給するためのオイルタンク63が搭載されている。左サイドフレーム3における傾斜部の外側(燃料タンク62を挟んでオイルタンク63と反対側)には,エンジン7の始動等に用いるバッテリ64が搭載されている。
【0025】
実施形態の芝刈機1では,エンジン7の回転動力の一部を左右両後輪6に配分する二輪駆動方式が採用されている。すなわち,エンジン7の回転動力の一部は,エンジン7から前後外向きに突出する出力軸65の後端部から,前後両端に自在継手を有する推進軸66と,ミッションケース61より前方の部位に配置された走行用伝動中継ケース67と,無端入力ベルト68とを介して,ミッションケース61に伝達される。そして,ミッションケース61に左右外向きに突設した水平な左右の後輪駆動軸69から,左右の無端後輪駆動チェン70を介して走行機体1の後部側にある左右の車軸に伝達される。その結果,左右の車軸に取り付けられた左右の後車輪6が回転駆動することになる。
【0026】
他方,エンジン7の他の回転動力は,出力軸65の前端部から,PTO動力伝達用の無端PTO伝動ベルト71を介して,エンジン7の下方に回動可能に配置されたPTO軸72に伝達される。次いで,PTO軸72から,前後両端に自在継手を有する中間軸73を介して,芝刈り機構13の上面のうち右サイドフレーム3より更に右側の部位に配置されたモア用ギヤボックス74に動力伝達される。その結果,芝刈り機構13を構成する左右一対の刈刃(図示せず)が回転駆動し,これら両刈刃にて地面に植立した芝草等を刈り取りながら,刈草を芝刈り機構13の左右幅中央に集めて排出ダクト14に放出することになる。
【0027】
そして,前記集草排出機構16は,前面に前記排出ダクト14の後端が臨む開口部18aを備えた集草ボックス18と,前記集草ボックス18を,下降した位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢と,この前向き姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成したリフト機構19とを備えている。
【0028】
前記集草排出機構16における集草ボックス18は,左右両側面及び上面を,多孔板(パンチング板)又は金網等の通気性板製の側面板18b及び天井板18cにて囲う一方,その底面及び後面を開放するという構成であり,この集草ボックス18のうち開放された底面は,開閉自在な底蓋板20にて,同じく開放された後面は,開閉自在な後蓋板21にて塞ぐように構成されている。
【0029】
前記底蓋板20は,前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22の下端にピン23にて回動自在に枢着されており,この底蓋板20は,多孔板(パンチング板)又は金網等のように通気性を有する薄金属板を,図5に示すように,前端から後方に向かって比較的緩やかな角度で斜め上向きに傾斜する傾斜部20aと,この傾斜部20aの後端から下向きに折れ曲がる鉛直部20bとを複数回にわたって繰り返して設けるというように,高さの低い鋸歯状の断面に折り曲げることでその剛性を高めるという構成であり,その枢着ピン23の位置は,当該底蓋板20における後端よりも前側の部位で,且つ,当該底蓋板20における前端と後端との間の中心位置よりも適宜寸法だけ後端にずれた部位に位置しており,従って,前記底蓋板20は,通常の状態においてはその枢着ピン23より前側の重量にて前記集草ボックス18における左右両側面板18bの下端相互間を連結する横部材39の上面に接当して,前記集草ボックス18における開放された底部の全てを閉じて(塞いで)いるが,その後端部に対して下向きに外力が作用すると,その枢着ピン23を中心にして前端がはね上がるように開き回動するという構成にされている。
【0030】
一方,前記後蓋板21は,同じく,多孔板(パンチング板)又は金網等のよう通気性板製であり,その左右両側面において前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側面にピン24a,25aにて回転自在に枢着して成る上下一対のリンク24,25に対して回動自在に連結することにより,前記集草ボックス18において開放された後面を閉じる状態と,後面からはね上がるように開く状態とに開閉作動するように構成されており,この開閉作動を,前記ブラケット部材22と,前記上下一対のリンク24,25のうち下部リンク25との間に装架した復動型の開閉用油圧シリンダ26によって行うように構成している。
【0031】
前記後蓋板21と,前記底蓋板20における前端部との間を,前記集草ボックス18の内部に配設した左右一対の可撓性を有する金属製ワイヤ27又はチエン等の可撓性部材にて連結することにより,前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン突出動にて集草ボックス18の後面を開放するように跳ね上がり回動すると,これに前記金属製ワイヤ27を介して連動して,前記底蓋板20が,その前端がはね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放し,前記後蓋板21が開閉用油圧シリンダ26におけるピストン後退動にて集草ボックス18の後面を閉じる状態に戻ると,これに連動して,前記底蓋板20が,その前側の重量にて集草ボックス18の底面を閉じる状態に戻るというように構成している。
【0032】
この場合,前記両金属製ワイヤ27の両端を前記底蓋板20及び後蓋板21に対してピン27a,27bにて回動自在に連結するに際して,前記金属製ワイヤ27をその長手軸線の回りに適宜角度(例えば,90〜180度)だけその弾性に抗して捩じった状態にし,この状態で前記ピン27a,27bにて結合することにより,前記底蓋板20及び後蓋板21が閉じた状態にあるとき,前記金属製ワイヤ27における途中で弛んでいる部分は,図1に示すように,前記底蓋板20の上面に接当する状態に維持できることになるから,前記集草ボックス18内への刈草の受け入れに際し,前記金属製ワイヤ27が邪魔になることを回避できる。
【0033】
この場合,他の実施の形態としては,前記集草ボックス18における両外側において,前記後蓋板21に対する開閉機構であるところの前記上下リンク24,25のうち一方又は前記開閉用油圧シリンダ26と,前記底蓋板20とを連結することによって,前記後蓋板21の開き作動に連動して前記底蓋板20が開き回動するように構成することができる。
【0034】
前記集草ボックス18の前面における開口部18aの下辺には,前記排出ダクト14の後端から後方に放出される刈草を前記集草ボックス18内に零すことなく円滑に誘導するための底部誘導板28が,前記排出ダクト14の後端部内にのぞむように前向きに突出して設けられており,且つ,この底部誘導板28は,その後端が前記集草ボックス18における左右両側面板18bに対してピン軸28aにて回動自在に枢着することにより,後端のピン軸28aを中心に当該底部誘導板28の前端が上向きにはね上がるように傾斜回動するという構成にしている。
【0035】
更に,この底部誘導板28には,前記集草ボックス18における左右両側面板18bの内面に近接する左右のガイド板28bを備え,前方視において上向きコ字状に構成されている。
【0036】
そして,前記底部誘導板28は,図15に示すように,その枢着ピン軸28aに固着したアーム28cと,前記底蓋板20における枢着ピン23に固着したアーム28dとにその間に配設したリンク28eの両端をピン28f,28gにて連結することにより,前記底蓋板20における開き回動に連動して傾斜回動するように構成されている。
【0037】
この場合,別の実施の形態としては,前記底部誘導板28を,前記開閉用油圧シリンダ26又は前記下部リンク25等と連結することにより,前記底蓋板20における開き回動に先立って傾斜回動し,次いで,前記底蓋板20が開き回動するように構成することができる。
【0038】
そして,前記集草排出機構16におけるリフト機構19は,図3〜図7に示すように構成されている。
【0039】
すなわち,このリフト機構19は,前記集草ボックス18を挟む左右両側の各々に配設したマスト部材29,復動型の昇降用油圧シリンダ30及び上下一対のリフト用リンク31,32を備え,前記両マフト部材29は,中空断面の角パイプ製で上下方向に延びて,その下端部29aにおいて前記走行機体2の後部に対してボルト59の締結等にて着脱可能に取付けられており,且つ,その相互間は複数本の横部材33にて連結され,前記芝刈機1の走行方向から見て井桁状に構成されている。
【0040】
なお,この両マスト部材29の走行機体2への着脱可能な状態での取付けは,前記走行機体2における両サイドフレーム3の後端へのボルト59による締結と,前記両サイドフレーム3の後端から下向きに延びる後輪支持用フレーム3aへのボルト59による締結にて行うように構成している。
【0041】
また,前記両マスト部材29は,側面視(図1,図3,図4及び図6)において,その上端部29bが前記走行機体2に対する取付け部である下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方(走行機体2側)に位置するように,その途中の部分において前側に曲げられており,この両マスト部材29における上端部29bの後面には,後ろ向きの溝型断面に構成した上部ブラケット部材34が溶接等にて固着されている一方,この両マスト部材29における下端には,下部ブラケット部材35が,後ろ向きに突出するように固着されている。
【0042】
前記上下一対のリフト用リンク31,32の基端は,前記両マスト部材29の上端部29bにおける上部ブラケット部材34に対して,当該上部ブラケット部材34における溝内に挿入した状態で,この上部ブラケット部材34を貫通するように着脱自在に差し込んだリフトピン36,37にて回動自在に枢着されている。
【0043】
つまり,前記両リフト用リンク31,32の基端に対するリフトピン36,37は,前記上部ブラケット部材34に対して両端支持の構造であることにより,当該リフトピン36,37による支持の剛性及び耐久性を向上でき,これに加えて,前記両リフト用リンク31,32の基端は,前記上部ブラケット部材34における溝内に挿入されていることにより,前記リフトピン36,37における支持の剛性が高いことと相俟って,前記リフト用リンク31,32の横方向への振れを確実に低減できる。
【0044】
また,前記両マスト部材29を,上端部29bが下端部29aよりも適宜寸法Eだけ前方(走行機体2側)に位置するというように前側に曲げた構成にしたことにより,前記上下一対のリフト用リンク31,32基端のリフトピン36,37における前記走行機体2の前後方向に沿った位置を,前記マスト部材29を真っ直ぐの構成にした場合よりも,前記適宜寸法Eだけ前方の部位に位置することができるから,前記集草ボックス18を,後述するように,最高に上昇動したときに,その最高上昇高さを前記適宜寸法Eの分だけ高くすることができ,しかも,この集草ボックス18における前記走行機体2に対する支持荷重の作用点が,前記適宜寸法Eの分だけ前方に位置するから,前記走行機体2における後ろ荷重を低減できる。
【0045】
一方,前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち上部リンク31の先端は,前記集草ボックス18の左右両側面板18bの外側に固着したブラケット部材22にピン38にて回動自在に枢着され,前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端は,前記底蓋板20に対する枢着ピン23にて前記集草ボックス18の左右両側面板18bの下端部に対して回動自在に枢着されている。
【0046】
なお,前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32の先端における前記集草ボックス18に対する枢着ピンは,前記集草ボックス18における底蓋板20に対する枢着ピン23と一体の兼用にしているが,下部リンク32の先端に対する枢着ピンを,底蓋板20に対する枢着ピン23とを別体に構成できることは勿論である。
【0047】
前記両マスト部材29の下端における下部ブラケット部材35の内面の各々には,レバー体40が回動自在にピン41にて枢着され,この両レバー体40の相互間は,両レバー体40が同時に回動するように横部材42を介して一体的に連結されており,この両レバー体40の各々には,前記昇降用油圧シリンダ30の基端がピン43にて回動自在に連結されている。
【0048】
また,前記両レバー体40は,当該レバー体40が後方に回動したときに,前記シリンダ枢着用ピン43が前記下部ブラケット部材35の後端におけるストッパー部44に対して,これ以上の後方回転を阻止するように接当するという構成である。
【0049】
この場合,前記ストッパー部44に対してシリンダ枢着用ピン43が接当するという構成にすることに代えて,前記ストッパー部44に対して前記レバー体40に設けた別のストッパー部材が接当するという構成にしても良い。
【0050】
これに加えて,前記両レバー体40には,当該レバー体40が後方回動して,シリンダ枢着用ピン43がストッパー部44に対して接当した状態において,前記下部ブラケット部材35の下面から下向きに突出するようにしたアウトリガー45と,前記下部ブラケット部材35におけるストッパー部44と実質的に同じ位置にまで後方に突出するか,このストッパー部44よりも更に後方に突出するようにしたバンパー体46とが設けられている。
【0051】
更に,前記両レバー体40には,当該レバー体40が前方に回動したときに,前記下部ブラケット部材35又は前記マスト部材29に対して,これ以上の前方回転を阻止するように接当するストッパー片47が設けられている。
【0052】
そして,前記両昇降用油圧シリンダ30の先端を,前記上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32に対してピン48にて連結して,前記上下一対のリフト用リンク31,32を,前記両昇降用油圧シリンダ30にて上下方向に回動することにより,前記集草ボックス18を,下降位置において前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる前向きの姿勢と,この前向きの姿勢のままで高く持ち上げた状態とに往復して昇降動するように構成している。
【0053】
すなわち,前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン突出動にて前向き姿勢の集草ボックス18を高く持ち上げる一方,前記昇降用油圧シリンダ30におけるピストン後退動にて前向き姿勢の集草ボックス18を元の位置に下降するように構成している。
【0054】
なお,上下一対のリフト用リンク31,32のうち下部リンク32には,前記集草ボックス18を高く持ち上げた姿勢のときに,前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34に対して,下向き回動を阻止するように着脱自在に係合するフック状のロック手段手段49が設けられており,このフック状のロック手段手段49は,上部リンク31に設けるか,前記両マスト部材29の上端部29b又は第1ブラケット部材34側に設けても良い。
【0055】
また,右側におけるリフト用リンク31,32と,左側におけるリフト用リンク31,32との相互間は,これらの各リンクが同時に回動するように,その上端の部分において横部材50,51を介して連結されている。
【0056】
更にまた,前記芝刈機1のうちその操縦座席9から手が届く部位には,前記ロータリー式の芝刈り機構13をON・OFF操作するためのPTO操作レバー52が設けられているとともに,前記開閉用油圧シリンダ26を,ピストン突出動する開位置,ピストン後退動する閉位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための開閉操作レバー53が設けられ,更に,前記昇降用油圧シリンダ30を,ピストン突出動する上げ位置,ピストン後退動する下げ位置及びその中間でピストン作動停止する中立位置に切り換え操作するための昇降操作レバー54が設けられている。
【0057】
この構成において,前記集草排出機構16における集草ボックス18を,その底蓋板20及び後蓋板21を閉じた状態で下降した位置に保持することにより,前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢し,この状態で,芝刈機1を,そのロータリー式芝刈り機構13を駆動しながら前進走行することにより,所定の芝刈りを行うことができ,前記ロータリー式芝刈り機構13にて刈り取られた刈草は,排出ダクト14及び底部誘導板28を介して前記集草ボックス18内に入るように集められる。
【0058】
そして,前記集草ボックス18内に所定量の刈草が溜まると,刈取作業及び前進走行を停止して,集草ボックス18内からの刈草の放出作業を開始する。
【0059】
この放出作業に際しては,先ず,前記両昇降用油圧シリンダ30を,その昇降操作レバー54の上げ位置への操作によりピストンが突出動するように作動して,前記集草ボックス18を持ち上げるようにする。
【0060】
すると,先ず,この両昇降用油圧シリンダ30の基端におけるレバー体40が後方に回動して,その枢着ピン43がストッパー部44に接当する状態になるから,図10に示すように,このレバー体40に設けたアウトリガー45が,地面4に接近するように突出して,芝刈機1が前部が浮き上がるように後ろ方向に傾くことを阻止できる状態になる。これと同時に,前記レバー体40に設けたバンパー体46が,前記ストッパー部44と実質的に同じ位置にまで後方に突出するか,このストッパー部44よりも更に後方に突出する状態になる。
【0061】
つまり,前記集草ボックス18の持ち上げ作動の前に,アウトリガー45が地面4に接近するように突出し,バンパー体46が後方に突出する。
【0062】
次いで,前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動にて上下一対のリフト用リンク31,32が上向きに回動することにより,図11に示すように,前記集草ボックス18が,その底蓋体20及び後蓋板21を閉じた状態のままで持ち上げられ,そして,最も高い位置まで持ち上げられると,前記昇降操作レバー54を中立位置に操作することにより,前記両昇降用油圧シリンダ30における更なるピストン突出動,つまり,前記集草ボックス18が持ち上げが停止すると同時に,前記集草ボックス18がロック手段49にて前記した最も高い位置から下降しないようにロックするようにしている。
【0063】
なお,前記両昇降用油圧シリンダ30は,前記集草ボックス18を最高位置に持ち上げた状態になると,自動的にそのピストン作動停止する中立位置になるように構成することができる。また,前記集草ボックス18は,下降位置において排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる状態のときには,前部が低くて後部が高くなるように前傾斜しているが,最も高い位置まで持ち上げられた状態においては,逆に前部が高くて後部が低くなるように後ろ傾斜になるように構成されている。
【0064】
そして,この状態で,前記芝刈機1を,前進又は後進走行するように走行操作することで,図12に示すように,その後部が地面4に置かれた集草用コンテナAに接近するように移動して,前記のように高く持ち上げた集草ボックス18が前記集草用コンテナAの真上に位置する。
【0065】
前記芝刈機1をその後部が前記集草用コンテナAに接近するように後進走行する際に,前記集草用コンテナAへの衝突にて破損が発生することを前記バンパー体46にて確実に回避できる。
【0066】
そして,前記開閉用油圧シリンダ26を,その開閉操作レバー53の開位置への操作によりピストンが突出動するように作動させる。
【0067】
すると,図12に示すように,前記集草ボックス18に対する後蓋板21が開き回動するから,前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が始まる。
【0068】
次いで,前記集草ボックス18に対する底蓋板20が,前記後蓋板21における開き回動に可撓性を有する金属製ワイヤ27を介して連動して,図13に示すように,その前端がはね上がる一方後端が下がるように回動して集草ボックス18の底面を開放するから,前記集草ボックス18内における刈草の前記集草用コンテナA内への排出が更に進行する。
【0069】
前記後蓋板21が全開になると,前記開閉操作レバー53を中立位置に操作することにより,前記両開閉用油圧シリンダ26における更なるピストン突出動,つまり,前記後蓋板21の開き作動を停止する。
【0070】
なお,前記両開閉用油圧シリンダ26は,前記後蓋板21が最大に開くと,自動的にそのピストンが作動停止する中立位置になるように構成することができる。
【0071】
次いで,前記集草ボックス18内における刈草の排出に伴い,その排出落下中の刈草が,前記底蓋板20における後端に当たることにより,前記底蓋板20が,図14に示すように,当該底蓋板20と前記後蓋板21とを連動連結する金属製ワイヤ27を弛ませながら,前記後蓋体21の開き回動にかかわらず,自動的に更に大きく開き回動するから,前記集草ボックス18内における刈草の全てを排出することができる。
【0072】
なお,前記底蓋板20におけるその後端に排出落下中の刈草が当たることによる開き回動は,以下に述べるように,前記後蓋板21における開き回動に追従して行うように構成している。
【0073】
すなわち,図9に示すように,前記開閉用油圧シリンダ26の基端における枢着ピン55に,前記底蓋板20における後端部の下面が接当する受け片56aを備えたレバー体56を回転自在に設け,このレバー体56を,リンク57を介して前記下部リンク25に,当該下部リンク25の上向き回動,つまり,前記後蓋板21を開く方向への回動に伴って下向きに回動するように連結することにより,前記底蓋板20におけるその後端に排出落下中の刈草が当たることによる開き回動,ひいては,当該底蓋板20における開き回動による刈草の排出を,急速に一挙に行うことがないように構成している。
【0074】
また,前記底蓋板20の開き回動に連動して,前記底部誘導板28が,図14に示すように,前端部がはね上がるように傾斜回動するから,この底部誘導板28の上面に堆積する刈草は,当該底部誘導板28の上面から前記集草用コンテナA内に入るように落下する。
【0075】
このようにして,前記集草ボックス18内における刈草の集草用コンテナA内への排出が完了すると,前記開閉操作レバー53の閉位置への操作にて前記後蓋板21を閉じることにより,前記底蓋板20が,その前端における重量によって自動的に閉じる。
【0076】
なお,前記開閉操作レバー53は,前記後蓋板21を閉じたときにおいて中立位置にするが,これを自動的に行うように構成することもできる。
【0077】
そこで,前記芝刈機1を前記集草用コンテナAから離れるように移動したのち,前記昇降操作レバー54を下げ位置に操作して,前記両昇降用油圧シリンダ30をピストン後退動に作動することにより,前記集草ボックス18は,前記図10に示すように,下降して前記排出ダクト14から放出される刈草を受け入れる姿勢に戻る。
【0078】
次いで,前記両昇降用油圧シリンダ30が更にピストン後退動することにより,前記両レバー体40が,その枢着ピン43がストッパー部44から離れるように前方向に回動して,そのストッパー片47が下部ブラケット部材35又はマスト部材29に接当するように前方回転するから,前記アウトリガー45及びバンパー体46が,図1に示すように,元の後退した位置に戻って,前記刈取作業を行う状態に復帰する。
【0079】
なお,前記昇降操作レバー54は,前記両レバー体40が第2ブラケット部材35又はマスト部材29に接当するように前方回転したときにおいて中立位置にするが,これを自動的に行うように構成することもできる。
【0080】
また,前記実施の形態は,前記アウトリガー45における突出を,前記集草ボックス18の持ち上げを開始する前(直前)の時期において行うように構成した場合であったが,更に別の実施の形態においては,集草ボックス18の持ち上げを開始したあとで,且つ,高さ高さにまで持ち上げるまでの間,つまり,持ち上げ途中の時期において行う構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1において集草ボックスを取り外して斜め後方から見た斜視図である。
【図4】図1において集草排出機構を斜め前方から見た斜視図である。
【図5】図4のV−V視断面図である。
【図6】前記集草排出機構におけるリフト機構を示す斜視図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】前記集草ボックスを最大上昇位置で斜め前方から見た斜視図である。
【図9】前記集草ボックスを最大上昇位置で斜め後方から見た斜視図である。
【図10】刈草放出作業の第1状態を示す図である。
【図11】刈草放出作業の第2状態を示す図である。
【図12】刈草放出作業の第3状態を示す図である。
【図13】刈草放出作業の第4状態を示す図である。
【図14】刈草放出作業の第5状態を示す図である。
【図15】集草ボックスの要部拡大図である。
【符号の説明】
【0082】
1 芝刈機
2 走行機体
3 サイドフレーム
4 地面
5 前輪
6 後輪
7 エンジン
8 操縦ハンドル
9 操縦座席
13 ロータリー式芝刈り機構
14 排出ダクト
15 ロープ掛け具
16 集草排出機構
18 集草ボックス
19 リフト機構
20 底蓋板
21 後蓋板
23 底蓋板の枢着ピン
26 蓋の開閉用油圧シリンダ
27 可撓性ワイヤー
28 底部誘導板
29 マスト部材
30 昇降用油圧シリンダ
31,32 リフト用リンク
34 上部ブラケット部材
35 下部ブラケット部材
36,37 リフトピン
38 枢着ピン
40 レバー体
41 枢着ピン
43 昇降用油圧シリンダの枢着ピン
44 ストッパー部
45 アウトリガー
46 バンパー体
52 PTO操作レバー
53 開閉操作レバー
54 昇降操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝刈り機構と,この芝刈り機構にて刈り取った刈草を前向きの姿勢で受け入れる集草ボックスと,この集草ボックスを前向きの姿勢で持ち上げるようにしたリフト機構とを備え,更に,前記集草ボックスにおける後面の開口を開閉自在に塞ぐようにした後蓋板を備えて成る芝刈機において,
前記集草ボックスにおける底部を開放して,この開放された底部を開閉自在に塞ぐ底蓋板を設け,この底蓋板を,前記後蓋板の開き作動に連動して開き回動するように構成する一方,前記集草ボックスのうち前記芝刈り機構にて刈り取った刈草の受け入れ口の底部に,前記刈草を前記集草ボックス内に導く底部誘導板を,前記底蓋板の前端から前向きに突出するように設けて,この底部誘導板を,前記底蓋板又は前記後蓋板の開き作動に連動して傾斜回動するように構成したことを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記底蓋板における開き作動を,当該底蓋板のうち少なくとも前端部が前記集草ボックス内に向かってはね上がる開き回動に構成する一方,前記底部誘導板における傾斜回動を,当該底部誘導板の後端を中心として前端部がはね上がる回動に構成したことを特徴とする芝刈機。
【請求項3】
前記請求項2の記載において,前記底部誘導板における傾斜回動を,前記底蓋板における開き作動に先立って行うように構成したことを特徴とする芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−278803(P2008−278803A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126074(P2007−126074)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】