説明

苗の調整ステーション

【課題】 障害物が密集した場所やインビトロ等の狭い作業空間において、培養した無菌の植物を分割し、発根用容器に移し替える移植工程の自動化を可能にする苗の調整ステーションの提供。
【解決手段】 切断刃を有し、XYZ方向に移動自在な調整用ハンドと、苗の形状を認識可能なセンサ部と、苗を最適把持力で把持する回動自在のセパレートチャックとを備え、センサ部によりセパレートチャックに把持された苗の形状を計測し、その計測データに基づいて切断箇所を算出し、調整用ハンドにより苗の不要箇所を切断する苗の調整装置と苗の調整装置を複数備え、各調整ステーションで異なる箇所の切断を行う苗の調整ステーション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼芽をインビトロで培養するに際し、幼芽の下葉等を機械的に調整することができる苗調整ステーションに関し、特に無菌クローン苗の移植において、培養した無菌の幼苗を分割し、下葉等を調整し、発根用容器に移し替えるといった作業の自動化を可能にする苗調整ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年園芸作物や樹木の苗の生産においてこれまで行われてきた実生苗や挿し木苗での生産以外にマイクロプロパゲーションで優秀個体の無菌化クローンを大量増殖し、発根させて苗製品にする手法が広く普及してきている。
一般的な手法としては、成長組織点を無菌環境内で植物個体から切出してインビトロ(無菌透明容器内)で培養環境を与え、多芽体に成長させ、さらに継体培養により大量増殖させ、そして大量増殖させたそれぞれの幼芽を最適な大きさまでインビトロで成長させた後に、再び無菌環境で幼芽を分離し、発根用の容器に移し替え、再びインビトロで培養し発根完了後に無菌クローン苗製品とするものがある。感染した苗であっても、植物体成長の元になる成長点組織にはウィルスが侵入しないことを利用した手法である。
【0003】
このように植物工場での生産工程としては、主に分離した苗をインビトロへ植え込む移植工程とインビトロでの培養工程とがある。苗の培養工程についてはほぼ自動化されているが、移植工程については依然手作業で行われており、大量に優秀な作業者を繁忙期に確保する必要があることから機械化の要求が増大している。
【0004】
しかしながら、自動化に際しては、不定形な形状をしている植物の幼芽を分割移植するために、茎のどの部分をどの位置で切るかといった高度で複雑な認識を行わねばならない。また、幼芽は柔らかく脆弱であり、過剰な把持力を与えた場合、茎の導管を破壊しその後の生育が順調にいかないという問題がある。このため幼芽の移植を自動的に行うためには高度な形状認識と微少な把持力制御が不可欠であった。
【0005】
苗の分割移植装置としては、レーザー光を利用した認識装置により苗の形状を認識し、認識結果に基づいて苗の所定の高さの位置に把持機構及び切断機構を導く装置が提言されている(特許文献1,2)。
【0006】
また、挿し木苗の移植システムとしては、オープントレイ上の苗に対してスリットレーザ光とPSD センサにより茎形状をスキャンし歪みセンサによるフィードバックによる把持力制御、マニピュレーターにより挿し木苗の自動生産をするものが提言されている(非特許文献1,2)。
【特許文献1】特開平3−228607号公報
【特許文献2】特開平5−3707号公報
【非特許文献1】M.Takatsuji, Handbook of Plant Factory,Tokai University Press, pp. 123{159, 1997. 東海大学出版会編:「植物工場ハンドブック」, 東海大学出版会(1997), pp123-159
【非特許文献2】高山眞策シーエムシー出版 種苗生産システム (1992 初版2002 普及版pp180)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
苗の育成に伴うコストの大半は人件費であり、機械化することにより、苗の生産コストを大幅に削減することができる。また、人手の作業では、ウィルス混入による収量低下が生じてしまうため、このことも生産コストの増加につながっていた。
上述のとおり、苗の培養工程については、ほぼ自動化されているため、本発明ではインビトロでの培養容器への移植工程を自動化することを解決すべき課題とする。図1は、クローン苗の育成工程の流れ図であるが、本発明はインビトロでの培養容器への移植工程であるSTEP13ないし15の工程を自動化することを課題とする。
【0008】
そもそも、上記装置類は、幼芽の分離に主眼を置いた装置であり、幼芽の下葉等を切断してインビトロでの培養に適するよう調整するといった作業を行うことは難しかった。
【0009】
しかも、上記装置類では、ハンドの開閉をモータで直接制御する構造のため、茎を把持する力の微弱な調整を行うことは難しく、調整工程で利用した場合には、茎を傷つけてしまうおそれがあった。
【0010】
また、上記装置類では、植物のような把持部分の近傍に障害物(葉)がある場合、障害物を避けて対象物を把持することができなかった。
さらには、オープントレイでの作業を前提としており、容器の中での苗が密集した作業環境での作動はできなかった。すなわち、無菌クローン苗の生産を行う場合、インビトロでの作業はできないため、無菌状態とするためには、クリーンルームが必要であった。そのため、広い作業スペースと高価な設備が必要であり、多額のコストがかかるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、障害物が密集した場所やインビトロ等の狭い作業空間において、培養した無菌の植物を分割し、発根用容器に移し替える移植工程の自動化を可能にする苗の調整ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の(1)ないし(4)の苗の調整装置を要旨とする。
(1)切断刃を有し、XYZ方向に移動自在な調整用ハンドと、苗の形状を認識可能なセンサ部と、苗を最適把持力で把持する回動自在のセパレートチャックとを備え、センサ部によりセパレートチャックに把持された苗の形状を計測し、その計測データに基づいて切断箇所を算出し、調整用ハンドにより苗の不要箇所を切断する苗の調整装置。
(2)前記調整用ハンドは、切断刃の噛合点を中心軸に回転可能である(1)の苗の調整装置。
(3)前記調整用ハンドは、3軸直動スライダによりXYZ方向に移動自在である(1)または(2)の苗の調整装置。
(4)前記切断箇所の算出は、セパレートチャックを所定角度回転させた複数位置での計測データに基づいて行うことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかの苗の調整装置。
【0013】
また、本発明は以下の(5)ないし(7)の苗の調整ステーションを要旨とする。
(5)(1)ないし(4)のいずれかの苗の調整装置を複数備え、各調整ステーションで異なる箇所の切断を行う苗の調整ステーション。
(6)前記1以上の苗の調整装置は、調整用ハンドに把持部を有することを特徴とする(5)の苗の調整ステーション。
(7)さらに、先端部に円筒形のブラシを有し、XYZ方向に移動自在な調整用ブラシと、苗を最適把持力で把持するセパレートチャックとを備える切断葉除去装置を備える(5)または(6)の苗の調整ステーション。
【0014】
また、本発明は以下の(8)の苗の自動移植ステーションを要旨とする。
(8)(5)ないし(7)のいずれかの苗の調整ステーションの前工程に汎用的な苗の分離ステーションを、後工程に汎用的な苗の植込ステーションを配した苗の自動移植ステーション。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来手作業で行っていたインビトロでの培養に適した苗とするために必要な下葉等の切断作業を自動化することが可能となる。
また、形状認識と切断刃の相対距離認識を行った上で下葉等の切断作業をするため、多様な形状の植物の調整を行うことが可能であり、ロゼット型植物(例えば、ほうれん草)にも対応することができる。
【0016】
また、障害物が密集した場所やインビトロ環境等の狭い作業空間において、作業を機械化することが可能となる。すなわち、クリーンルームを設ける必要がなく、クリーンベンチでの作業が可能となるため、設備面でもクローン苗の生産コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
1.システム構成
図2に示すとおり、本発明の調整ステーション102は、その上流に分離ステーション101を、その下流に植込ステーション103を配して使用される。
分離ステーション101は調整ステーション102に分離した幼芽の受け渡しを行い、調整ステーション102により調整された幼芽は植込ステーション103に引き渡され、植込ステーション103にてインビトロへの植え込みが行われる。
各構成要素はイーサネット(登録商標)やRS-232Cケーブル等の汎用的な通信方式によ
り、統合コントローラと接続され、連携的に制御される。
以下では、調整ステーション102の各構成要素について説明する。
【0018】
調整ステーション102の構成は、セパレートチャック21と、三次元センサ22と、調整ハンド23を主たる構成要素とする(図3参照)。
(1)セパレートチャック21
セパレートチャック21は、時計回り、反時計回りに回転自在の把持チャックであり、苗の茎部分を把持する。セパレートチャック21には、苗の茎を中心に回転自在であり、これが回転することにより調整ハンド23の移動を最小限とすることが可能となる。
【0019】
(2)三次元センサ22
三次元センサ22は、一対のステレオカメラと、スリット投光器とから構成され、ステレオ撮像が可能である。遠近歪みをなくするためには、撮像光学系にあおり光学系を用いることが好ましい。すなわち、図4に示すように2台のカメラを相互に平行にしたままで、レンズ50a,50bの中心とCCD撮像素子51a,51bの中心をずらし、CCD撮像素子とレンズ中心を結んだ一対の撮像系の中心線の交点が計測対象物付近に有るようなあおり光学系を用いることによって、CCD撮像素子上に遠近ひずみのない結像画像を得ることも可能になる。あおり光学系は通常の光学系よりも左右のカメラで共通に撮像できる面積が広くなるため、ステレオ画像処理に有効な光学系である。これにより、カメラから近い位置にある対象物体であっても、正確な相対距離画像を得ることができる。
装置中央にはレーザーダイオード光源を斜めスリットパターンに発光するスリット投光器が設置してある。斜めスリットパターンは全部で4本あり、撮像範囲のどの位置に計測対象物体が位置してもスリット光が当たるように考慮されている。
なお、視覚センサ周辺部で照明光源からの光が容器に直接反射してカメラに入光しない位置に該照明用光源、好ましくはLEDを配置するのが好ましい。
【0020】
なお、センサ部は、上述のあおり光学系のものとしてもよいが、相対距離計測が不要な場合にはより汎用的なものとしてもよい。例えば、植込位置に目標位置をもって格子状に植えられた幼芽を容器から分離する場合には以下の手順で空間認識を行う。
すなわち、透明な容器の下に設置したCCDカメラの撮像による画像から透明な寒天培地に植えられた苗のカルスを適当な閾値で2値化し、縮小・膨張などの画像処理を加えることで画像上のノイズを除去し苗のカルス部のみを抽出し、それぞれのカルスの重心位置を認識し、CCD画像上での各苗のピクセル位置を計算し、全ての苗のカルス位置のXY座標を得る。それぞれの苗位置は、あらかじめ決められたエリアに対応してラベリングされる。ラベリングする順番はハンドが干渉しにくい移動経路によって決定すればよく、ラベリングの若い順に苗を取り出すようにする。
苗を取り出す際には茎の部分だけでなく、カルスの部分を把持しても良い。取り出した苗は、容器外の苗の仮置き場に載置し次の調整工程が容易に行えるようにしてもよいし、調整ステーションが次工程にある場合には受け渡し用ハンドに持ち替えてもよい。
【0021】
(3)調整ハンド23
調整ハンド23は、切断刃26とその切断刃26を開閉動するモータ25と、それらが取り付けられたプレート28とから構成される。調整ハンド23は、プレート28により多関節ロボットに連結され、XYZ軸方向に移動自在であり、三次元センサ22の計測情報に基づき、XYZ軸方向に移動しながら苗の下葉等の切断処理を行う。切断刃26をY軸を中心に回動(θ軸と言う)することが好ましく、これにより、重い調整ハンド23そのもののXYZ軸方向移動を最小限とすることで、処理速度を高めることができる。
また、調整ハンドの切断刃の上方または下方に把持用ハンドを設けた構成のものを別途設け、把持用ハンドがない調整ハンドと連携させることにより、より細かな調整作業を行うことができる。
なお、切断刃は、植物の形状認識の際に反射が生じない素材で構成するのがよく、好ましい材料としてはセラミックスが挙げられる。
【0022】
2.植物の空間位置及び形状の計測
本発明では、光切断法と相対ステレオ法の組み合わせにより植物の形状や空間位置の計測を行う。
光切断法とは、計測物体に平面状のレーザー光(スリット光)を照射し、三角測量の原理を利用して距離を計測する手法である。相対ステレオ法とは、基本的には複数のカメラを使用したステレオ視を距離計測の手法とするが、ステレオ視以外の方法で得られる画面内の基準点までの距離情報を利用し、ステレオ画像処理を行うことにより、基準点からの相対高さを計測する手法である。高速な画像処理が可能であり、カメラ間隔や取り付け角度等の外部パラメータを必要としない利点がある。
【0023】
作業空間内に茎があるかの判定する際には、設定した範囲の太さの茎が、設定した立体空間範囲の中にあるかをスリット光が茎上で反射している特徴を識別し、光切断法により位置計測をすることで判定を行う。作業空間範囲の中に茎が検出されると、その茎のどの位置が把持位置として適しているかを検出する。具体的には、茎の光点位置から追跡して分岐点を判断し、その上部で葉が存在しない部分を切り出し点とする。
切り出し点が分かった後に、複合作業ハンドを近傍まで移動させることで、相対ステレオ方法により切断または把持位置とハンドとの間の相対距離を算出することができる。これにより、ハンドの残移動量がわかることになる。
【0024】
3.不要箇所の切断処理
下葉等の切断処理は、図5に示す手順で行われる。まず、三次元センサ22により、分離した苗の切断箇所を確定するために分離した苗の撮像を行う(STEP21)。撮像により得られたデータを画像処理し、切断対象となる箇所(例えば、ユーカリの場合は下葉、シンビジウムの場合は根っこの部分)を認識する(STEP23)。この際、撮像した角度によって、切断箇所とも非切断箇所とも判断できない箇所もあるが、グレーポイントとして取り扱う。分離苗の撮像は、予め指定した角度に達するまで複数回行う(STEP23)。指定角度に達していない場合には、分離苗を回転し(STEP24)、異なる角度から撮像を行う。一定精度が得られ、且つ作業効率の良い撮像パターンとしては、60〜90度の範囲を3箇所撮像することが、好ましい態様として例示される。指定した角度での撮像が終了すると、全ての撮像データに基づき、切断箇所を算出し、重ね合わせ等行うことで切断箇所を確定する(STEP25)。不要な根っこ等を切断し(STEP26)、植え込みを行うか植え込みステーションへの受け渡しを行う(STEP27)。なお、ハサミの揺動角度を茎の傾きに並行するようにすると葉を切断しやすい。
【0025】
4.葉と茎境界の認識
上記STEP22の処理について詳述する。
葉と茎境界の認識は、撮像した画像データを2値化したものに輪郭線追跡(チェインコード)を適用することで輪郭を抽出し、葉のエッジ探索を行って葉の端部を検出するというものである。これらを、複数の角度からの画像データに対して行うことで、認識精度を高めている。
【0026】
(1)輪郭線の抽出
2値化した処理対象データの最下最左の点を検出し、この点を追跡開始点P1とする。次にP1を中心にP1の8近傍を図12(a)で示すように、時計回りに調べ背景画素から処理対象画素に変化した最初の点P2を図12(b)で示すように検出する。注目画素をP1からP2に移し、P2についても同様な探索を行うことでP3を得る。この処理を、Pn=P1となるか、Pnが探索有効範囲から外れるまで繰り返す。また、PnとPn-1のベクトル関係を図12(c)で示すコードで記述したものをチェインコードという。
上記処理に用いた2値化画像と上記処理により得られたエッジ画像を図13に示す。
(2)葉認識アルゴリズム
細線化された苗のエッジ画像からある画素間の方向ベクトルを求め、その傾きにより葉と茎を区別するアルゴリズムを作成し、葉の切断点を抽出する。ここで、苗の茎はx軸に対してある程度鉛直方向に伸びていると仮定して作業を行うものとする。
【0027】
イ)茎のエッジと探索領域
エッジ画像下側からx軸正方向に茎のエッジ探索を行い、その茎の存在するエッジ座標値を「茎初期位置点」とする(図14(a)参照)。得られる二つの茎初期位置点からエッジ探索を開始する。すなわち、エッジ探索は苗の右側エッジ、左側エッジ別々に行う。また、エッジ探索はある範囲の探索領域を定め行う。例えば、探索領域を3×3画素とする。
【0028】
ロ)隣接エッジ検出
イ)で得られる茎初期位置点に隣接するエッジ点検出を行い、順次エッジ点探索を繰り返し行っていく。このとき、探索領域内のエッジ点の数を数え、4個以上になったときはエッジが分岐しているとし、探索領域の中心を分岐点として記憶する。それから、ある一方のエッジ点を探索し、エッジの端が任意の高さまで来なければ、輪郭のエッジではないと判断し、分岐点に戻りもうひとつのエッジ点追跡を行う。例えば、図14(b)に示すように検出したい次のエッジ点は現在得られているi-1番目のエッジ点を中心とした探索領域内で過去に検出済みのエッジ点、すなわちi-1番目とi-2番目のエッジ点位置以外の画素に現れる。ここでは、i番目のエッジ点が検出されるエッジ点となる。図14(c)は探索内にエッジ点が複数存在した場合を示している。
【0029】
ハ)方向ベクトル算出
茎のエッジ方向ベクトルを求める。i番目のエッジ点での方向ベクトルをi番目のエッジ点座標値と二つ前に検出されたi-2番目のエッジ点座標値との差分を取り求める(図14(d)参照)。ここで、ベクトルの傾きはx軸とベクトルの成す角度とする。図14(e)に方向ベクトルを示す。
【0030】
ニ)方向ベクトルの傾きを用いた葉検出
茎がx軸方向に対してある程度鉛直方向に向いているという仮定条件において、方向ベクトルの傾きが50°〜120°の範囲内であるとき、茎の方向ベクトルを表しているものとし、それ以外の傾きを持つ場合は葉の方向ベクトルと定める。ここで、葉も50°〜120°の傾きを持つ部分が存在するため、その部分を茎と認識してしまう場合(図14(f)の「葉候補」参照)がある。しかし、葉候補の位置は茎から大きく離れているため、葉候補の前に茎と認識されたエッジ点の最終点(図14(f)の点p)と葉候補のエッジ点の開始点(図14(f)の点q)のx座標の値を比較し、設定したある閾値以外なら葉候補のエッジ点は葉のエッジ点として認識するようにする。こうして得られた葉と茎の切断点を図14(g)に示す。
【0031】
ホ)葉の検出
ニ)で検出した葉領域と検出された領域とその葉の切断点を用い、葉の端点の検出を行う。1つの葉領域には2つの切断点が出力される。y方向に大きいものを基準点(図14(h)の点p)とし、基準点から葉部の各エッジ点までの距離を計算し、その後最も距離の長いエッジ点を葉の葉端点(図14(h)の点r)として出力する。
【0032】
ヘ)シミュレーション結果
上記画像処理を行ったシミュレーション結果を図14に示す。
なお、図14においては、鮮明な画像を入力画像としているため、好ましい結果が得られたが、実際の撮像画像には2値化すると不鮮明な部分が現れる。そこで、苗を複数角度から撮像(例えば、120°毎に回転)した画像データについて、それぞれ前処理と葉認識プログラムを実行しそれぞれの画像について、茎と葉の境界を求めることで精度を高めている。さらに、奥行き方向の形状データ計測を行う場合は、葉の位置を認識し、さらに相対距離計測を用いた茎位置のトレースによる相対距離計測を茎の輪郭の各点をステレオカメラの画像上での視差を計測する。好ましい手法としては、発明者の提言している特願2004-228743に記載の方法がある。このデータと前記葉の切り出し点位置とを統合した上で、セパレートチャックの割り出し角度に対応するXYZ直交軸上での切出座標位置を認識する。
【0033】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
(構成)
図6および7に示すように、本実施例の調整ステーションは、調整ハンド23aおよびそれをXYZ軸方向に移動可能とする三軸直動スライダ31と、調整ハンド23bおよびそれをXYZ軸方向に移動可能とする三軸直動スライダ32と、調整ブラシ34およびそれをXYZ軸方向に移動可能とする三軸直動スライダ33と、セパレートチャック21a〜21cとから構成される。
【0035】
調整ハンド23aは、セパレートチャック21aの対向位置に配され、図8および9に示すように、切断刃26の上方に把持ハンド29を有しており、把持ハンド29により茎を把持した状態で苗の下部を切断することができる。調整ハンド23aは、X軸を中心に回動(θ軸作動)可能であり、三軸直動スライダ31による作動を最小限とすることで、処理速度を高めている。
調整ハンド23bは、セパレートチャック21bの対向位置に配され、切断刃26のみを有するハンドである。調整ハンド23bも、X軸を中心に回動(θ軸作動)可能であり、三軸直動スライダ32による作動を最小限とすることで、処理速度を高めている。
セパレートチャック21aおよび21bは、茎を中心に回転可能なロータリーテーブル上に固定されたL型の把持用チャックであり、把持幅約3mm、把持力は約20gである。L型の把持用チャックは取り外しが可能であり、取り外して高温の滅菌処理を施すことができる。セパレートチャック21aおよび21bは、一対の把持爪を撓ませることで苗の茎を最適な把持力で把持することが可能である。
セパレートチャック22cは、調整ブラシ34により切断した苗の下葉等を排除する際に、苗の上部を把持するものである。本実施例においては、セパレートチャック22cを別構成としたが、セパレートチャック22bにて兼用としてもよい。
三次元センサ22aおよび22bは、苗の形状認識を行い、苗の姿勢や切断点を算出すると共に調整作業に必要なハンドの移動量を算出する。
なお、本実施例の構成は、ユーカリの幼芽を調整することを前提とするものであるが、把持幅や把持力は可変であり、他の植物にも適用可能であることは言うまでもない。
【0036】
(作動)
まず、分離ステーションにより分離された苗がセパレートチャック21aにより把持される。三次元センサ22aにより把持された苗の茎の形状を認識し、調整ハンド23aにより茎を把持した状態で先端から所定長さの位置を切断する。この際、切断位置に下葉等がある場合には、必要に応じてセパレートチャック21aを回転させる。
所定長の苗を把持した調整ハンド23aは、三軸直動スライダ31により水平移動し、セパレートチャック21bに苗を受け渡す。三次元センサ22bにより形状認識された苗は、セパレートチャック21bを回転させながら、調整ハンド23bにより下葉等の切断処理がなされる。
下葉等の調整が済んだ苗は植込ハンドと直交する形で受け渡しをおこない調整が完了する。この際、最終的な苗の高さを植込ハンドが把持した後に規定の長さに切断すると、新しい切り口が形成されて発根が良くなることが期待できる。下葉等の切断が済んだ苗は調整ハンド23aによりセパレートチャック21cに移動され、調整ブラシ34により下葉等が完全に取り除かれると、再び調整ハンド23aにより把持され植込ステーションに受け渡される。
【0037】
葉と茎の接合が弱い植物品種においては、下葉が残った苗の上部をセパレートチャック21cで把持し、規定位置を調整ブラシ34の左右のブラシで挟み(図16参照)、これを下方に移動することで葉を落とす構成とすると生産性を向上できる。この際、調整ブラシ34による処理後も、そのまま左右のブラシで苗を把持してセパレートチャック21bに苗を受け渡し、形状検査をセンサ部22bで実施し、植込ハンドに受けわたすようにしてもよい。なお、ブラシの開閉にはハンドの開閉に用いるのと同様のアクチュエータを用いることができる。
【実施例2】
【0038】
図10に示すとおり、本発明の苗の移植補助ステーションは、ロータリーテーブル41と、三次元センサ22と、ロボットハンド部を主たる構成要素とする。各構成要素はイーサネット(登録商標)やRS-232Cケーブル等の汎用的な通信方式により、統合コントローラ6と接続され、連携的に制御される。
図10の構成では、分離から植え込みまで一連の作業を行うことができるが、別途に設けた分離ステーションおよび植込ステーションと連携してもよいし、その一部を手動で行ってもよい。
以下では、苗の移植補助ステーションの各構成要素について説明する。
【0039】
(1)ロータリーテーブル41
ロータリーテーブル41は、時計回り、反時計回りに回転自在の円形回転テーブルであり、大型ロータリーテーブルと、小型ロータリーテーブルとから構成される。ロータリーテーブル41には、植え込み用容器と、分離用容器と、消毒容器と、切断ゴミシャーレとが載置され、各作業段階では大型ロータリーテーブルを回転して各容器類の位置を調整する。ロータリーテーブル41の上に設けられた小型ロータリーテーブルにより、各容器が個別に回転自在であり、各作業段階において各容器を個別に回転させることで、作業範囲を広げ、作業精度を向上することを可能としている(図11参照)。
【0040】
(2)三次元センサ22
三次元センサ22は、一対のステレオカメラと、スリット投光器とから構成され、ステレオ撮像が可能である。遠近歪みをなくするために、撮像光学系にあおり光学系を用いており、図4に示す構成と同様のものである。
【0041】
(3)ロボットハンド部
ロボットハンド部は、調整用ハンド23と、分離用ハンド42と、植込用ハンド43により構成される。ロボットハンド部は、これら全てを備える必然性はなく、いくつかのハンドについては別構成とすることもできる。
多関節ロボット1の先端に設けられた分離用ハンド42により幼芽が分離されると、調整用ハンド23は分離用ハンド42の対向位置に移動して不要な下葉等の切断処理を行う。植込用ハンド43は下葉等の調整が終わった幼芽を茎の導管を傷つけないように把持し、植え込みを行う。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】クローン苗の育成工程の流れ図である。
【図2】クローン苗を移植するためのシステム(分離ステーション、調整ステーション、植込ステーション)の平面図である。
【図3】調整ステーションのシステム構成図である。
【図4】あおり光学系の説明図である。
【図5】本発明の調整ステーションによる不要箇所切断作業の流れ図である。
【図6】実施例1の調整ステーションの構成斜視図である。
【図7】実施例1の調整ステーションの構成平面図である。
【図8】実施例1の把持ハンド付き調整ハンドの構成平面図である。
【図9】実施例1の把持ハンド付き調整ハンドの構成側面図である。
【図10】実施例2の調整ステーションの構成平面図である。
【図11】ロータリーテーブルの説明図である。
【図12】エッジ画像作成手順の説明図である。
【図13】撮像2値化データとエッジ画像の出力である。
【図14】葉認識アルゴリズムの説明図である。
【図15】葉認識シミュレーションの出力結果である。
【図16】調整ブラシによる下葉の除去作業の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 多関節ロボット
2 ロボットコントローラ
3 センサコントローラ
6 統合コントローラ
21 セパレートチャック
22 三次元センサ
23 調整用ハンド
25 切断刃駆動モータ
26 切断刃
27 シュート
28 プレート
29 把持ハンド
31,32,33 直動スライダ
34 調整ブラシ
41 ロータリーテーブル
42 分離用ハンド
43 植込用ハンド
50 レンズ
51 CCD撮像素子
91,95 搬入コンベア
92,96 セパレートチャック
93,97 搬出コンベア
101 分離ステーション
102 調整ステーション
103 植込ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃を有し、XYZ方向に移動自在な調整用ハンドと、苗の形状を認識可能なセンサ部と、苗を最適把持力で把持する回動自在のセパレートチャックとを備え、
センサ部によりセパレートチャックに把持された苗の形状を計測し、その計測データに基づいて切断箇所を算出し、調整用ハンドにより苗の不要箇所を切断する苗の調整装置。
【請求項2】
前記調整用ハンドは、切断刃の噛合点を中心軸に回転可能である請求項1の苗の調整装置。
【請求項3】
前記調整用ハンドは、3軸直動スライダによりXYZ方向に移動自在である請求項1または2の苗の調整装置。
【請求項4】
前記切断箇所の算出は、セパレートチャックを所定角度回転させた複数位置での計測データに基づいて行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの苗の調整装置。
【請求項5】
請求項項1ないし4のいずれかの苗の調整装置を複数備え、
各調整ステーションで異なる箇所の切断を行う苗の調整ステーション。
【請求項6】
前記1以上の苗の調整装置は、調整用ハンドに把持部を有することを特徴とする請求項5の苗の調整ステーション。
【請求項7】
さらに、先端部に円筒形のブラシを有し、XYZ方向に移動自在な調整用ブラシと、苗を最適把持力で把持するセパレートチャックとを備える切断葉除去装置を備える請求項5または6の苗の調整ステーション。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかの苗の調整ステーションの前工程に汎用的な苗の分離ステーションを、後工程に汎用的な苗の植込ステーションを配した苗の自動移植ステーション。






【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−180862(P2006−180862A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38493(P2005−38493)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(396005014)宝田電産株式会社 (8)
【Fターム(参考)】