苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造
【課題】縦送りベルトの表面に付着する夾雑物に起因した欠株の発生をより確実に防止できるようにする。
【解決手段】苗載台17を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルト43が回動して苗載台17に載置した苗を苗載台17の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、苗載台17の背面側で縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段60を装備し、除去手段60を、縦送りベルト43を回動可能に支持するローラ41が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aに作用するように構成してある。
【解決手段】苗載台17を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルト43が回動して苗載台17に載置した苗を苗載台17の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、苗載台17の背面側で縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段60を装備し、除去手段60を、縦送りベルト43を回動可能に支持するローラ41が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aに作用するように構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させる横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに前記苗載台に載置した苗を縦送りベルトで前記苗載台の下端に向けて縦送りする縦送り機構とを備えた苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置としては、マット状苗を載置した苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して苗載台に載置したマット状苗を苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、移植機などにおいては、ポット苗などを植付装置に搬送する搬送ベルトの外周面に付着した夾雑物を取り除くブラシを、搬送ベルトの左右両端を支持する左右のプーリー軸の間に配備して、搬送ベルトにおける左右のプーリー軸の間に位置するベルト部分の表面に作用させるように構成したものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−113623号公報(段落番号0016〜0019、図2、図3、図8、図9)
【特許文献2】特開平10−201312号公報(段落番号0009〜0010、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような苗植付装置においては、縦送りベルトの表面に付着した苗根や土などの夾雑物が、マット状苗とともに苗載台の表面側で下方に移動して苗載台の下部を左右摺動可能に支持する摺動レールの苗受面に堆積することで、縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することがあり、このような場合には、植付機構による摺動レールの苗受面に形成した苗取出口からの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合を招く虞がある。
【0006】
そこで、このような不都合の発生を防止するために、特許文献1に記載の苗植付装置において特許文献2に記載のブラシによる夾雑物除去構造を採用することが考えられるが、この構成では、縦送りベルトにおける上下のローラ(左右のプーリー軸に相当)の間に位置するベルト部分の表面にブラシが作用するようになることから、縦送りベルトが回動する際に、植え付け作動時の振動などでブラシが作用するベルト部分が撓んでブラシから逃げるようになる場合があり、このような場合には、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物をブラシで取り除くことができなくなる。
【0007】
つまり、縦送りベルトの表面に付着する夾雑物に起因した欠株の発生をより確実に防止するためには改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、縦送りベルトの表面に付着する夾雑物に起因した欠株の発生をより確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の課題解決手段では、
苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して前記苗載台に載置した苗を前記苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、
前記苗載台の背面側で前記縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段を装備し、
前記除去手段を、前記縦送りベルトを回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの被支持部分に作用するように構成してある。
【0010】
この課題解決手段によると、苗載台が左右のストローク端に達して縦送り機構の縦送りベルトが回動すると、除去手段が、縦送りベルトの被支持部分に作用して縦送りベルトの表面に付着した苗根や土などの夾雑物を取り除いて苗載台の背面側から落下させるようになる。
【0011】
そして、除去手段が作用する縦送りベルトの被支持部分はローラで支持する部分であることから、その被支持部分が植え付け作動時の振動などで撓んで除去手段から逃げるようになることはなく、これにより、植え付け作動時の振動などにかかわらず除去手段を縦送りベルトの被支持部分に適切に作用させることができる。
【0012】
つまり、植え付け作動時の振動などにかかわらず縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を除去手段によって取り除くことができ、これにより、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物がマット状苗とともに苗載台の表面側で下方に移動して摺動レールの苗受面に堆積することを効果的に抑制することができる。
【0013】
その結果、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因して、植付機構による摺動レールの苗受面に形成した苗取出口からの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記除去手段に、前記苗載台に形成した苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合する係合部を備えて、前記除去手段を、前記縦送りベルトの下端部を回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用するように構成してある。
【0015】
この課題解決手段によると、除去手段に備えた左右の係合部を苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合するだけで、除去手段を苗載台に縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用する状態に簡単に取り付けることができる。
【0016】
そして、この取り付け状態では、除去手段の左右の係合部が苗縦送り用の開口における左右の側縁に接当して除去手段の左右方向での位置ズレを防止するようになる。その結果、縦送りベルトの被支持部分に除去手段をより適切に作用させることができる。
【0017】
従って、除去手段の取り付け構造を簡単にしながらも、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【0018】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記除去手段に、前記被支持部分を前記ローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に作用するブラシを備えてある。
【0019】
この課題解決手段によると、苗載台が左右のストローク端に達して縦送り機構の縦送りベルトが回動すると、除去手段のブラシが、縦送りベルトの被支持部分をローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に直接的に作用して、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を確実に取り除いて苗載台の背面側から落下させるようになる。
【0020】
従って、ブラシを用いた簡単な構成でありながら、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用田植機の左側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】苗植付装置の要部の左側面図である。
【図4】苗植付装置の構成を示す展開図である。
【図5】苗植付装置での苗載台の背面側の構成を示す要部の正面図である。
【図6】苗植付装置での苗載台の下端側の構成を示す要部の縦断左側面図である。
【図7】バランスバネ用の調整機構の構成を示す要部の一部破断正面図である。
【図8】苗切れ検出手段の構成を示す要部の正面図である。
【図9】苗切れ検出手段の構成を示す要部の縦断左側面図である。
【図10】除去手段の構成を示す要部の正面図である。
【図11】根洗苗の植え付けを可能にした状態を示す要部の縦断左側面図である。
【図12】根洗苗の植え付けを可能にした状態を示す要部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造を乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜3に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、走行車体1の後部にリンク機構2を油圧式の昇降シリンダ3の作動で上下揺動するように連結し、このリンク機構2の後端下部に前後向きの支軸4を介して6条用の苗植付装置5をローリング可能に連結して6条植え用に構成してある。又、走行車体1の後部と苗植付装置5とにわたって6条用の施肥装置6を装備してミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0024】
図1及び図2に示すように、走行車体1は、車体フレーム7の前部に搭載したエンジン8からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)、及び、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9に副変速装置として内蔵したギア式変速装置(図示せず)、などを介して左右の前輪10及び左右の後輪11に伝達する4輪駆動式に構成してある。エンジン8の後方には、前輪操舵用のステアリングホイール12及び運転座席13などを配備して搭乗運転部14を形成してある。走行車体1における前部の左右両横側方箇所には、3枚の予備苗を上下方向に所定間隔をあけて載置する予備苗載装置15を立設してある。
【0025】
図1〜5に示すように、苗植付装置5は、前後向きの支軸4などを備えた動力分配ケース16、6条分のマット状苗を載置するように形成した苗載台17、苗載台17を左右方向に一定ストロークで往復移動させる横送り機構18、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに苗載台上の各マット状苗を苗載台17の下端に向けて所定ピッチで縦送りする縦送り機構19、苗載台17に載置した各マット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付ける6基のロータリ式の植付機構20、及び、走行車体1の走行に伴って圃場を滑走することにより苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する3つの整地フロート21、などを植付フレーム22に備えて最大6条の苗の植え付けを行うように構成してある。
【0026】
植付フレーム22は、苗植付装置5の前下部に左右向きに配備した角パイプ状の主支持部材23、苗載台17の上部を左右方向に往復移動可能に支持するように主支持部材23に前傾姿勢で立設した門型の支持枠24、及び、左右方向に一定間隔をあけた状態で主支持部材23から後方に向けて延出したフレーム兼用の3つの伝動ケース25、などから構成してある。
【0027】
動力分配ケース16には、T/Mケース9が出力する植え付け作業用の動力を受け取って、横送り機構18、縦送り機構19、及び、各植付機構20に分配供給する動力分配機構(図示せず)を内蔵してある。
【0028】
図1〜6に示すように、苗載台17における背面の下端部には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の下側摺動部材26を備えてある。苗載台17における背面の上部側には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の上側摺動部材27を備えてある。下側摺動部材26は、左右両端の伝動ケース25に苗取り量調節機構28を介して支持させた左右向きの摺動レール29に相対摺動可能に載置してある。上側摺動部材27は、支持枠24の上端部に上下向きの支軸30を介して左右方向に一定間隔をあけて配備した3個のローラ31に摺動移動可能に外嵌してある。これらの構成から、苗載台17は、走行車体1の後端上方から苗植付装置5の後端下部にわたる前傾姿勢で左右方向に摺動可能な状態で苗植付装置5に装備してある。
【0029】
苗載台17の表面には、苗載台17の上下にわたる7条の仕切壁17Aによって6面の苗載置面17Bを区画形成してある。各苗載置面17Bの下部側には、苗縦送り用として使用する第1開口17Cと苗切れ検出用として使用する第2開口17Dとを形成してある。各第2開口17Dは、偶数番目の仕切壁17Aを挟む2つの第2開口17Dが隣接するように配置設定してある。
【0030】
図4に示すように、横送り機構18は、動力分配ケース16から主支持部材23の左端部に備えた支持部材32にわたる左右向きの横送り軸33を備えている。この横送り軸33には、苗載台17と一体摺動する移動部材34を相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌してある。移動部材34には、横送り軸33の表面に形成した無端螺旋溝33Aに係入するコマ部材(図示せず)を、横送り軸33と直交する軸心を中心とした相対回転を許容するように内蔵してある。そして、これらの構成から、横送り機構18は、横送り軸33の回転に伴って無端螺旋溝33Aに沿ってコマ部材が螺進することにより、このコマ部材を内蔵する移動部材34とともに苗載台17が左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成してある。
【0031】
図3〜6に示すように、縦送り機構19は、動力分配ケース16から主支持部材23の右端部に備えた支持部材35にわたる左右向きの駆動軸36を備えている。駆動軸36は、その左右両端部に駆動軸36と一体回転する駆動アーム37を備えている。駆動アーム37は、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに苗載台17に備えた縦送りアーム38を蹴り上げ揺動操作する。縦送りアーム38は、その揺動支点部38Aを苗載台17における下端部の背面に左右向きに備えた六角軸からなる縦送り軸39の所定位置にワンウェイクラッチ(図示せず)を介して外嵌してある。縦送り軸39には、3本の筒軸40を相対回転可能に外嵌してあり、各筒軸40には、筒軸40と一体回転する2つの駆動ローラ41を外嵌してある。各駆動ローラ41は、苗載台17の背面側における対応する第1開口17Cの下端部付近に位置するように配置設定してある。苗載台17の背面側における各第1開口17Cの上端部付近には従動ローラ42を配備してある。そして、対になる駆動ローラ41と従動ローラ42とにわたって、ゴム製の突起付き無端回動ベルトからなる縦送りベルト43を渡し掛けてある。各従動ローラ42は、苗載台17における上下中間部の背面に左右向きに備えた3本の支軸44のうちの対応するものに相対回転可能に外嵌してある。縦送り軸39と各筒軸40との間には、縦送り軸39から各筒軸40への伝動を断続する縦送りクラッチ45を介装してある。
【0032】
これらの構成から、縦送り機構19は、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに、左右いずれかの駆動アーム37が縦送りアーム38を蹴り上げ揺動操作し、このときの縦送りアーム38の揺動がワンウェイクラッチを介して縦送り軸39に伝わることにより、縦送り軸39とともに、この縦送り軸39と縦送りクラッチ45及び筒軸40を介して連動する駆動ローラ41が所定の回転角度分だけ回転して、回転する駆動ローラ41に巻き掛けた縦送りベルト43を所定量だけ回動させるようになる。これにより、苗載台17に載置したマット条苗のうちの縦送りクラッチ45により縦送り選択したマット条苗を所定量だけ縦送りすることができる。
【0033】
図3、図5及び図7に示すように、苗植付装置5は、リンク機構2の後端上部と苗載台17に備えた上側摺動部材27の左右の各端部とにわたってそれぞれバランスバネ46を架設してある。そして、この左右のバランスバネ46により、苗載台17の横送り駆動による左右バランスの変化で走行車体1に対してローリング方向に傾斜することを防止するように構成してある。
【0034】
上側摺動部材27の左右両端部には、バランスバネ46が発揮するバネ力の微調整を可能にする調整機構47を装備してある。各調整機構47は、上側摺動部材27の左右両端部に備えた螺合部27Aに、ノブ付きボルト48を、苗載台17の横外方側から内方に向けて左右向きに螺合して構成してある。ノブ付きボルト48の螺合始端部には、バランスバネ46の一端部を係止する係止具49を相対回転可能に取り付けてある。
【0035】
このような調整機構47を装備することにより、例えば苗植付装置5に薬剤散布装置などを装備することで苗植付装置5の左右バランスに変化が生じた場合には、各調整機構47のノブ付きボルト48を操作して左右のバランスバネ46の長さを変更することにより、各バランスバネ46のバネ力を、薬剤散布装置などを装備することで変化した苗植付装置5の左右バランスに適した状態に簡単かつ迅速に微調整することができ、走行車体1に対する苗植付装置5のローリング姿勢を適正な姿勢に維持することができる。
【0036】
図1、図2、図4及び図5に示すように、苗載台17は、その上端部17Eが水平又は略水平になるように形成してある。これにより、苗載台17の各苗載置面17Bにマット状苗を供給する際には、一旦、マット状苗を苗載台17の上端部17Eに水平姿勢又は略水平姿勢で仮置きすることができ、マット状苗を各苗載置面17Bに適正な姿勢で供給するための各苗載置面17Bに対するマット状苗の位置決めを簡単に行えるようになる。その結果、各苗載置面17Bへの苗供給を適正かつ円滑に行うことができ、各苗載置面17Bにマット状苗を斜めに傾いた状態で供給する不具合を生じ難くすることができる。
【0037】
尚、図示は省略するが、前述したように苗載台17の上端部17Eを水平又は略水平に形成する構成に代えて、苗載台17の上部に、苗載台17の上部に沿った姿勢で格納する格納位置と苗載台17の上端から水平姿勢又は略水平姿勢で走行車体1に向けて延出する使用位置とにわたって出退操作可能に構成した延長苗載台を備えるように構成してもよい。又、苗載台17の上部に、前記格納位置と前記使用位置とにわたって揺動操作可能に構成した延長苗載台を備えるように構成してもよい。更に、苗載台17の上端から水平姿勢又は略水平姿勢で走行車体1に向けて延出するように苗載台17の上端に取り付けることが可能な着脱式の延長苗載台を備えるように構成してもよい。
【0038】
図1及び図5に示すように、苗載台17における背面の上端部には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の補強部材50を取り付けてある。この補強部材50の左右中央部には支持板51を介して振動装置52を取り付けてある。振動装置52には、偏心させた錘52Aを回転させることで振動を発生させる振動モータを採用してある。
【0039】
又、図示は省略するが、苗植付装置5には、苗載台17が左右のストローク端に到達している間、苗載台17に備えた押圧部との接触により閉じ状態に切り換わって振動装置52に通電する常開型のスイッチを装備してある。
【0040】
この構成から、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに縦送り機構19が作動して苗載台上の各マット状苗を苗載台17の下端に向けて縦送りする間は、振動装置52が作動して苗載台17の上部側を振動させて苗載台17の上部側でのマット状苗の縦滑り移動を促進させるようになる。その結果、育苗の際に床土に変えて人工マットを採用することにより、マット状苗の軽量化が進み、苗載台17の上部側でのマット状苗の自重による縦滑り移動が行われ難くなった場合であっても、縦送り機構19の作動による苗載台17の下部側でのマット状苗の縦送りとともに苗載台17の上部側でのマット状苗の縦滑りを円滑に行わせることができ、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の所定量の縦送りを適正に行うことができる。
【0041】
尚、振動装置52の作動に関する構成は種々の変更が可能であり、例えば、苗載台17の左右のストローク端への到達に関係なく定期的に振動装置52が作動するように構成してもよい。
【0042】
図2、図5、図8及び図9に示すように、苗載台17には、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の残量が所定量を下回った場合に苗切れとして検出する苗切れ検出手段53を装備してある。苗切れ検出手段53は、2面の苗載置面17Bでの苗切れを1つのリミットスイッチ54で検出するように構成した3つの検出部53Aを備えている。
【0043】
各検出部53Aは、偶数番目の仕切壁17Aの内部における隣接する2つの第2開口17Dで挟まれた部位に配備したリミットスイッチ54、各第2開口17Dに出退揺動可能に備えた苗切れ検出用の検出アーム55、リミットスイッチ54を挟んで隣接する2つの検出アーム55の揺動支点とリミットスイッチ54の操作具とを兼ねるように形成した線状鋼材からなる支持部材56、及び、2つの検出アーム55を突出付勢する作用部57Aを左右に備えるW字状に形成した線状のバネ鋼材からなる付勢バネ57、などから構成してある。
【0044】
各支持部材56は、対応する2つの検出アーム55のうちの少なくとも一方が突出揺動するのに伴って揺動してリミットスイッチ54を押圧操作するように、対応する2つの検出アーム55に片当たり接触している。
【0045】
各付勢バネ57は、その下部に形成した連結部57Bを苗載台17に備えた支持金具58と押え具59とで挟持することで苗載台17に取り付けてある。連結部57Bは、付勢バネ57の苗載台17に対する上下方向での取り付け位置の調整を可能にする凹部57Cを有するように形成してある。支持金具58には、付勢バネ57の取り付け位置の調整範囲を制限する開口58Aを形成してある。押え具59は、連結部57Bとの接当で回り止めした状態で支持金具58にビス止めしてある。そして、付勢バネ57の凹部57C及び支持金具58の開口58Aを利用して苗載台17に対する付勢バネ57の取り付け位置を上下方向に調整することで、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置の各検出アーム55の揺動支点からの距離を変更することができ、これにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した大きさに簡単に調整することができる。
【0046】
具体的には、例えば各苗載置面17Bに床土を使用して形成することで重量が大きくなったマット状苗を載置する場合には、苗載台17に対する各付勢バネ57の取り付け位置を下方側に調整して、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置を各検出アーム55の揺動支点から離すことにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した大きいものに簡単に調整することができる。逆に、各苗載置面17Bに床土に代えて人工マットを採用することで重量が小さくなったマット状苗を載置する場合には、苗載台17に対する各付勢バネ57の取り付け位置を上方側に調整して、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置を各検出アーム55の揺動支点に近づけることにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した小さいものに簡単に調整することができる。
【0047】
つまり、2つの検出アーム55を1つの付勢バネ57で突出付勢するように構成することで構成の簡素化を図りながらも、各苗載置面17Bに重量の小さいマット状苗を載置した場合に、各検出アーム55の突出姿勢への復元力がマット状苗の重量に勝つことに起因した苗切れ検出手段53による苗切れの誤検出を防止することができる。
【0048】
図3、図5、図6及び図10に示すように、苗載台17の背面には、各縦送りベルト43の表面に付着した苗根や土などの夾雑物を取り除く複数の除去手段60を備えている。各除去手段60は、苗載台17に形成した各第1開口17Cにおける下縁の左右両端に係合するフック状の左右の係合部61Aと、左右の係合部61Aから延出するアーム部61Bと、左右のアーム部61Bの延出端にわたる横長のホルダ部61Cとを備えて門形に形成したブラシ支持部材61を備え、このブラシ支持部材61のホルダ部61Cに、縦送りベルト43の回動に伴って縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除くブラシ62を取り付けて、ブラシ62と苗載台17の背面との間に、縦送りベルト43の表面から取り除いた夾雑物の苗載台17の背面側での落下を許容する空間63を確保するように構成してある。
【0049】
各ブラシ支持部材61において、左右のアーム部61Bは、係合部側端部の上下長さがホルダ部側端部の上下長さよりも長くなるように形成してあり、これにより、ブラシ62と苗載台17の背面との間に空間63を確保しながらも高い支持強度を確保することができる。又、各アーム部61Bの係合部側端部に連結する係合部61Cの上下長さを長くして、各係合部61Cの苗載台17に対する係合代を大きくすることできるので、各ブラシ支持部材61を苗載台17に取り付けた状態での安定性を向上させることができる。
【0050】
各ブラシ62は、駆動ローラ41が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aを駆動ローラ41との間に挟んだ状態でその被支持部分43Aの表面に作用するようにブラシ支持部材61のホルダ部61Cに取り付けてある。
【0051】
上記の構成から、苗載台17が左右のストローク端に達して縦送り機構19の各縦送りベルト43が縦送り作動すると、各除去手段60のブラシ62が、各縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除いて、苗載台17の背面と各ブラシ62との間の各空間63から落下させるようになる。これにより、各縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物がマット状苗とともに苗載台17の表面側で下方に移動して摺動レール29の苗受面29Aに堆積することを効果的に抑制することができる。その結果、各縦送りベルト43の表面に付着していた夾雑物が摺動レール29の苗受面29Aに堆積して各縦送りベルト43によるマット状苗の縦送りを阻害することに起因して、各植付機構20による摺動レール29に形成した苗取出口29Bからの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合を防止することができる。
【0052】
又、各ブラシ62が駆動ローラ41との間に縦送りベルト43の被支持部分43Aを挟んだ状態でその被支持部分43Aの表面に作用することにより、例えば、各ブラシ62が駆動ローラ41と従動ローラ42との間に位置して縦送りベルト43における駆動ローラ41と従動ローラ42との間に位置するベルト部分に作用するように各除去手段60を構成した場合に生じる各縦送りベルト43の撓みによる各縦送りベルト43の各ブラシ62からの逃げを阻止することができる。これにより、各縦送りベルト43の撓みで各縦送りベルト43が各ブラシ62から逃げることに起因した各ブラシ62による各縦送りベルト43の表面からの夾雑物の除去不良を阻止することができる。その結果、各縦送りベルト43の表面に付着していた夾雑物が摺動レール29の苗受面29Aに堆積して各縦送りベルト43によるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【0053】
更に、各除去手段60の取り付けは、各除去手段60に備えた左右の係合部61Aを各第1開口17Cにおける下縁の左右両端に係合するだけであり、しかも、各除去手段60を取り付けた状態では、各除去手段60のブラシ62が各縦送りベルト43の下端部に下方から接触して各除去手段60の各第1開口17Cの下縁からの浮き上がりを防止し、かつ、各除去手段60の左右の係合部61Aが各第1開口17Cの左右の側縁に接当して各除去手段60の左右方向での位置ズレを防止するようになる。つまり、各除去手段60の取り付け構造を簡単にしながら、各第1開口17Cに対する各除去手段60の位置ズレを防止することができ、各除去手段60を各駆動ローラ41が支持する各縦送りベルト43の被支持部分43Aに適切に作用させることができる。
【0054】
尚、図1及び図3に示す符号64は、各苗載置面17Bの下端部に配備した左右のブラケット65などを介して各苗載置面17Bの上方に位置するように配備することにより、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の各苗載置面17Bからの浮き上がりを防止する苗ステーである。
【0055】
図1、図11及び図12に示すように、苗載台17の各苗載置面17Bには、手植え用の根洗苗を詰め込んだ苗カセット66を載置することができる。各苗カセット66は、その底板66Aと苗載置面17Bとの間に縦送りベルト43の回動を許容する空間67を確保するように形成してある。
【0056】
各苗カセット66には、苗カセット66の上板66Bから下端の開口66Cに向けて延出するロッド68を備えてある。このロッド68には、苗カセット内の根洗苗を開口66Cに向けて押圧する押圧板69を摺動可能に外嵌してある。これにより、苗載置面17Bに苗カセット66を載置した状態では、苗カセット66の傾斜と押圧板69の重量により、押圧板69が苗カセット内の根洗苗をロッド68に沿って下方の開口66Cに向けて押圧するようになる。そして、各植付機構20が作動して各苗カセット内の根洗苗を各開口66Cから取り出して圃場に植え付けると、根洗苗の減少とともに押圧板69がロッド68に沿って下方に摺動して苗カセット内の根洗苗を開口66Cに向けて縦送りするようになる。
【0057】
苗ステー取り付け用の各ブラケット65は、苗カセット66の下端上部を受け止め支持するとともに、押圧板69が苗カセット66の開口66Cに向けて押圧した根洗苗を受け止める苗受部材70の取り付けが可能となるように構成してある。各苗受部材70は、左右のブラケット65にわたる苗受板71に複数の苗受棒72を左右方向に所定間隔をあけて整列装備した櫛状に形成してある。各苗受棒72は、植え付け作動する各植付機構20の植付爪73との接触を回避する位置に配置してある。
【0058】
この構成から、苗載台17の各苗載置面17Bに苗カセット66を載置して根洗苗の植え付けを行う場合には、各苗ステー取り付け用のブラケット65に苗受部材70を取り付けておくことにより、根洗苗が摺動レール29に接触することを抑制することができる。これにより、苗載台17の左右方向への摺動移動にかかわらず、根洗苗を各植付機構20の各植付爪73による各苗カセット66からの取り出しを行い易い起立姿勢に保持することができ、各植付機構20の各植付爪73による各苗カセット66からの根洗苗の取り出しを安定して行うことができる。
【0059】
又、各苗受部材70の各苗受棒72により、各植付機構20の各植付爪73で各苗カセット66から根洗苗を取り出す際に、根絡みに起因して各植付爪73が取り出す根洗苗とともに隣接する根洗苗が引き摺り出されることを抑制することができ、これにより、各植付爪73による根洗苗の取り出し量を安定させることができる。
【0060】
つまり、苗載台17の各苗ステー取り付け用のブラケット65に苗受部材70を取り付け、苗載台17の各苗載置面17Bに苗カセット66を載置することにより、マット状苗の植え付けを行うように構成した乗用田植機を、手植え用の根洗苗を植え付けることが可能な状態に簡単に変更することができる。
【0061】
尚、図示は省略するが、各苗カセット66を、苗載置面上での傾斜角度の調節が可能となるように、苗ステー取り付け用のブラケット65などを利用して苗載置面上に装備するように構成してもよい。この構成によると、各苗カセット66の傾斜角度を調節することにより、押圧板69の押圧による開口66Cに向けた根洗苗の縦送り量を調整することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
【0063】
〔1〕苗植付装置5としては、マット状苗以外にロール苗やポット苗などの植え付けを行うように構成したものであってもよい。
【0064】
〔2〕除去手段60としては、ローラ41,42が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aにエアを吹き付けることで縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除くように構成したものであってもよい。
【0065】
〔3〕除去手段60としては、縦送りベルト43の上端部を回動可能に支持するローラ42が支持する縦送りベルト43の上端側の被支持部分43Aに作用するように構成したものであってもよい。
【0066】
〔4〕縦送り機構19に、縦送りベルト43の上下中間部を支持するローラ41,42を備え、そのローラ41,42が支持する縦送りベルト43における上下中間部の被支持部分43Aに除去手段60が作用するように構成してもよい。
【0067】
〔5〕除去手段60を、縦送りベルト支持用のローラ41,42を支持するために苗載台17に取り付けた支持部材に取り付けるように構成してもよい。又、その支持部材とともに除去手段60を苗載台17に取り付けるように構成してもよい。更に、除去手段60を、専用の支持部材を介して苗載台17又は植付フレーム22に取り付けるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造は、苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して苗載台に載置した苗を苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構を備え乗用田植機用や歩行田植機用あるいは藺草移植機用などの苗植付装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
17 苗載台
17C 開口
18 横送り機構
19 縦送り機構
41 ローラ
42 ローラ
43 縦送りベルト
43A 被支持部分
60 除去手段
61A 係合部
62 ブラシ
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させる横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに前記苗載台に載置した苗を縦送りベルトで前記苗載台の下端に向けて縦送りする縦送り機構とを備えた苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置としては、マット状苗を載置した苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して苗載台に載置したマット状苗を苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、移植機などにおいては、ポット苗などを植付装置に搬送する搬送ベルトの外周面に付着した夾雑物を取り除くブラシを、搬送ベルトの左右両端を支持する左右のプーリー軸の間に配備して、搬送ベルトにおける左右のプーリー軸の間に位置するベルト部分の表面に作用させるように構成したものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−113623号公報(段落番号0016〜0019、図2、図3、図8、図9)
【特許文献2】特開平10−201312号公報(段落番号0009〜0010、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような苗植付装置においては、縦送りベルトの表面に付着した苗根や土などの夾雑物が、マット状苗とともに苗載台の表面側で下方に移動して苗載台の下部を左右摺動可能に支持する摺動レールの苗受面に堆積することで、縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することがあり、このような場合には、植付機構による摺動レールの苗受面に形成した苗取出口からの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合を招く虞がある。
【0006】
そこで、このような不都合の発生を防止するために、特許文献1に記載の苗植付装置において特許文献2に記載のブラシによる夾雑物除去構造を採用することが考えられるが、この構成では、縦送りベルトにおける上下のローラ(左右のプーリー軸に相当)の間に位置するベルト部分の表面にブラシが作用するようになることから、縦送りベルトが回動する際に、植え付け作動時の振動などでブラシが作用するベルト部分が撓んでブラシから逃げるようになる場合があり、このような場合には、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物をブラシで取り除くことができなくなる。
【0007】
つまり、縦送りベルトの表面に付着する夾雑物に起因した欠株の発生をより確実に防止するためには改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、縦送りベルトの表面に付着する夾雑物に起因した欠株の発生をより確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の課題解決手段では、
苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して前記苗載台に載置した苗を前記苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、
前記苗載台の背面側で前記縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段を装備し、
前記除去手段を、前記縦送りベルトを回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの被支持部分に作用するように構成してある。
【0010】
この課題解決手段によると、苗載台が左右のストローク端に達して縦送り機構の縦送りベルトが回動すると、除去手段が、縦送りベルトの被支持部分に作用して縦送りベルトの表面に付着した苗根や土などの夾雑物を取り除いて苗載台の背面側から落下させるようになる。
【0011】
そして、除去手段が作用する縦送りベルトの被支持部分はローラで支持する部分であることから、その被支持部分が植え付け作動時の振動などで撓んで除去手段から逃げるようになることはなく、これにより、植え付け作動時の振動などにかかわらず除去手段を縦送りベルトの被支持部分に適切に作用させることができる。
【0012】
つまり、植え付け作動時の振動などにかかわらず縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を除去手段によって取り除くことができ、これにより、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物がマット状苗とともに苗載台の表面側で下方に移動して摺動レールの苗受面に堆積することを効果的に抑制することができる。
【0013】
その結果、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因して、植付機構による摺動レールの苗受面に形成した苗取出口からの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記除去手段に、前記苗載台に形成した苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合する係合部を備えて、前記除去手段を、前記縦送りベルトの下端部を回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用するように構成してある。
【0015】
この課題解決手段によると、除去手段に備えた左右の係合部を苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合するだけで、除去手段を苗載台に縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用する状態に簡単に取り付けることができる。
【0016】
そして、この取り付け状態では、除去手段の左右の係合部が苗縦送り用の開口における左右の側縁に接当して除去手段の左右方向での位置ズレを防止するようになる。その結果、縦送りベルトの被支持部分に除去手段をより適切に作用させることができる。
【0017】
従って、除去手段の取り付け構造を簡単にしながらも、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【0018】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記除去手段に、前記被支持部分を前記ローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に作用するブラシを備えてある。
【0019】
この課題解決手段によると、苗載台が左右のストローク端に達して縦送り機構の縦送りベルトが回動すると、除去手段のブラシが、縦送りベルトの被支持部分をローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に直接的に作用して、縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を確実に取り除いて苗載台の背面側から落下させるようになる。
【0020】
従って、ブラシを用いた簡単な構成でありながら、縦送りベルトの表面に付着していた夾雑物が摺動レールの苗受面に堆積して縦送りベルトによるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用田植機の左側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】苗植付装置の要部の左側面図である。
【図4】苗植付装置の構成を示す展開図である。
【図5】苗植付装置での苗載台の背面側の構成を示す要部の正面図である。
【図6】苗植付装置での苗載台の下端側の構成を示す要部の縦断左側面図である。
【図7】バランスバネ用の調整機構の構成を示す要部の一部破断正面図である。
【図8】苗切れ検出手段の構成を示す要部の正面図である。
【図9】苗切れ検出手段の構成を示す要部の縦断左側面図である。
【図10】除去手段の構成を示す要部の正面図である。
【図11】根洗苗の植え付けを可能にした状態を示す要部の縦断左側面図である。
【図12】根洗苗の植え付けを可能にした状態を示す要部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造を乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1〜3に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、走行車体1の後部にリンク機構2を油圧式の昇降シリンダ3の作動で上下揺動するように連結し、このリンク機構2の後端下部に前後向きの支軸4を介して6条用の苗植付装置5をローリング可能に連結して6条植え用に構成してある。又、走行車体1の後部と苗植付装置5とにわたって6条用の施肥装置6を装備してミッドマウント施肥仕様に構成してある。
【0024】
図1及び図2に示すように、走行車体1は、車体フレーム7の前部に搭載したエンジン8からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)、及び、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9に副変速装置として内蔵したギア式変速装置(図示せず)、などを介して左右の前輪10及び左右の後輪11に伝達する4輪駆動式に構成してある。エンジン8の後方には、前輪操舵用のステアリングホイール12及び運転座席13などを配備して搭乗運転部14を形成してある。走行車体1における前部の左右両横側方箇所には、3枚の予備苗を上下方向に所定間隔をあけて載置する予備苗載装置15を立設してある。
【0025】
図1〜5に示すように、苗植付装置5は、前後向きの支軸4などを備えた動力分配ケース16、6条分のマット状苗を載置するように形成した苗載台17、苗載台17を左右方向に一定ストロークで往復移動させる横送り機構18、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに苗載台上の各マット状苗を苗載台17の下端に向けて所定ピッチで縦送りする縦送り機構19、苗載台17に載置した各マット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付ける6基のロータリ式の植付機構20、及び、走行車体1の走行に伴って圃場を滑走することにより苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する3つの整地フロート21、などを植付フレーム22に備えて最大6条の苗の植え付けを行うように構成してある。
【0026】
植付フレーム22は、苗植付装置5の前下部に左右向きに配備した角パイプ状の主支持部材23、苗載台17の上部を左右方向に往復移動可能に支持するように主支持部材23に前傾姿勢で立設した門型の支持枠24、及び、左右方向に一定間隔をあけた状態で主支持部材23から後方に向けて延出したフレーム兼用の3つの伝動ケース25、などから構成してある。
【0027】
動力分配ケース16には、T/Mケース9が出力する植え付け作業用の動力を受け取って、横送り機構18、縦送り機構19、及び、各植付機構20に分配供給する動力分配機構(図示せず)を内蔵してある。
【0028】
図1〜6に示すように、苗載台17における背面の下端部には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の下側摺動部材26を備えてある。苗載台17における背面の上部側には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の上側摺動部材27を備えてある。下側摺動部材26は、左右両端の伝動ケース25に苗取り量調節機構28を介して支持させた左右向きの摺動レール29に相対摺動可能に載置してある。上側摺動部材27は、支持枠24の上端部に上下向きの支軸30を介して左右方向に一定間隔をあけて配備した3個のローラ31に摺動移動可能に外嵌してある。これらの構成から、苗載台17は、走行車体1の後端上方から苗植付装置5の後端下部にわたる前傾姿勢で左右方向に摺動可能な状態で苗植付装置5に装備してある。
【0029】
苗載台17の表面には、苗載台17の上下にわたる7条の仕切壁17Aによって6面の苗載置面17Bを区画形成してある。各苗載置面17Bの下部側には、苗縦送り用として使用する第1開口17Cと苗切れ検出用として使用する第2開口17Dとを形成してある。各第2開口17Dは、偶数番目の仕切壁17Aを挟む2つの第2開口17Dが隣接するように配置設定してある。
【0030】
図4に示すように、横送り機構18は、動力分配ケース16から主支持部材23の左端部に備えた支持部材32にわたる左右向きの横送り軸33を備えている。この横送り軸33には、苗載台17と一体摺動する移動部材34を相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌してある。移動部材34には、横送り軸33の表面に形成した無端螺旋溝33Aに係入するコマ部材(図示せず)を、横送り軸33と直交する軸心を中心とした相対回転を許容するように内蔵してある。そして、これらの構成から、横送り機構18は、横送り軸33の回転に伴って無端螺旋溝33Aに沿ってコマ部材が螺進することにより、このコマ部材を内蔵する移動部材34とともに苗載台17が左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成してある。
【0031】
図3〜6に示すように、縦送り機構19は、動力分配ケース16から主支持部材23の右端部に備えた支持部材35にわたる左右向きの駆動軸36を備えている。駆動軸36は、その左右両端部に駆動軸36と一体回転する駆動アーム37を備えている。駆動アーム37は、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに苗載台17に備えた縦送りアーム38を蹴り上げ揺動操作する。縦送りアーム38は、その揺動支点部38Aを苗載台17における下端部の背面に左右向きに備えた六角軸からなる縦送り軸39の所定位置にワンウェイクラッチ(図示せず)を介して外嵌してある。縦送り軸39には、3本の筒軸40を相対回転可能に外嵌してあり、各筒軸40には、筒軸40と一体回転する2つの駆動ローラ41を外嵌してある。各駆動ローラ41は、苗載台17の背面側における対応する第1開口17Cの下端部付近に位置するように配置設定してある。苗載台17の背面側における各第1開口17Cの上端部付近には従動ローラ42を配備してある。そして、対になる駆動ローラ41と従動ローラ42とにわたって、ゴム製の突起付き無端回動ベルトからなる縦送りベルト43を渡し掛けてある。各従動ローラ42は、苗載台17における上下中間部の背面に左右向きに備えた3本の支軸44のうちの対応するものに相対回転可能に外嵌してある。縦送り軸39と各筒軸40との間には、縦送り軸39から各筒軸40への伝動を断続する縦送りクラッチ45を介装してある。
【0032】
これらの構成から、縦送り機構19は、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに、左右いずれかの駆動アーム37が縦送りアーム38を蹴り上げ揺動操作し、このときの縦送りアーム38の揺動がワンウェイクラッチを介して縦送り軸39に伝わることにより、縦送り軸39とともに、この縦送り軸39と縦送りクラッチ45及び筒軸40を介して連動する駆動ローラ41が所定の回転角度分だけ回転して、回転する駆動ローラ41に巻き掛けた縦送りベルト43を所定量だけ回動させるようになる。これにより、苗載台17に載置したマット条苗のうちの縦送りクラッチ45により縦送り選択したマット条苗を所定量だけ縦送りすることができる。
【0033】
図3、図5及び図7に示すように、苗植付装置5は、リンク機構2の後端上部と苗載台17に備えた上側摺動部材27の左右の各端部とにわたってそれぞれバランスバネ46を架設してある。そして、この左右のバランスバネ46により、苗載台17の横送り駆動による左右バランスの変化で走行車体1に対してローリング方向に傾斜することを防止するように構成してある。
【0034】
上側摺動部材27の左右両端部には、バランスバネ46が発揮するバネ力の微調整を可能にする調整機構47を装備してある。各調整機構47は、上側摺動部材27の左右両端部に備えた螺合部27Aに、ノブ付きボルト48を、苗載台17の横外方側から内方に向けて左右向きに螺合して構成してある。ノブ付きボルト48の螺合始端部には、バランスバネ46の一端部を係止する係止具49を相対回転可能に取り付けてある。
【0035】
このような調整機構47を装備することにより、例えば苗植付装置5に薬剤散布装置などを装備することで苗植付装置5の左右バランスに変化が生じた場合には、各調整機構47のノブ付きボルト48を操作して左右のバランスバネ46の長さを変更することにより、各バランスバネ46のバネ力を、薬剤散布装置などを装備することで変化した苗植付装置5の左右バランスに適した状態に簡単かつ迅速に微調整することができ、走行車体1に対する苗植付装置5のローリング姿勢を適正な姿勢に維持することができる。
【0036】
図1、図2、図4及び図5に示すように、苗載台17は、その上端部17Eが水平又は略水平になるように形成してある。これにより、苗載台17の各苗載置面17Bにマット状苗を供給する際には、一旦、マット状苗を苗載台17の上端部17Eに水平姿勢又は略水平姿勢で仮置きすることができ、マット状苗を各苗載置面17Bに適正な姿勢で供給するための各苗載置面17Bに対するマット状苗の位置決めを簡単に行えるようになる。その結果、各苗載置面17Bへの苗供給を適正かつ円滑に行うことができ、各苗載置面17Bにマット状苗を斜めに傾いた状態で供給する不具合を生じ難くすることができる。
【0037】
尚、図示は省略するが、前述したように苗載台17の上端部17Eを水平又は略水平に形成する構成に代えて、苗載台17の上部に、苗載台17の上部に沿った姿勢で格納する格納位置と苗載台17の上端から水平姿勢又は略水平姿勢で走行車体1に向けて延出する使用位置とにわたって出退操作可能に構成した延長苗載台を備えるように構成してもよい。又、苗載台17の上部に、前記格納位置と前記使用位置とにわたって揺動操作可能に構成した延長苗載台を備えるように構成してもよい。更に、苗載台17の上端から水平姿勢又は略水平姿勢で走行車体1に向けて延出するように苗載台17の上端に取り付けることが可能な着脱式の延長苗載台を備えるように構成してもよい。
【0038】
図1及び図5に示すように、苗載台17における背面の上端部には、苗載台17の左右両端部にわたる横長の補強部材50を取り付けてある。この補強部材50の左右中央部には支持板51を介して振動装置52を取り付けてある。振動装置52には、偏心させた錘52Aを回転させることで振動を発生させる振動モータを採用してある。
【0039】
又、図示は省略するが、苗植付装置5には、苗載台17が左右のストローク端に到達している間、苗載台17に備えた押圧部との接触により閉じ状態に切り換わって振動装置52に通電する常開型のスイッチを装備してある。
【0040】
この構成から、苗載台17が左右のストローク端に達するごとに縦送り機構19が作動して苗載台上の各マット状苗を苗載台17の下端に向けて縦送りする間は、振動装置52が作動して苗載台17の上部側を振動させて苗載台17の上部側でのマット状苗の縦滑り移動を促進させるようになる。その結果、育苗の際に床土に変えて人工マットを採用することにより、マット状苗の軽量化が進み、苗載台17の上部側でのマット状苗の自重による縦滑り移動が行われ難くなった場合であっても、縦送り機構19の作動による苗載台17の下部側でのマット状苗の縦送りとともに苗載台17の上部側でのマット状苗の縦滑りを円滑に行わせることができ、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の所定量の縦送りを適正に行うことができる。
【0041】
尚、振動装置52の作動に関する構成は種々の変更が可能であり、例えば、苗載台17の左右のストローク端への到達に関係なく定期的に振動装置52が作動するように構成してもよい。
【0042】
図2、図5、図8及び図9に示すように、苗載台17には、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の残量が所定量を下回った場合に苗切れとして検出する苗切れ検出手段53を装備してある。苗切れ検出手段53は、2面の苗載置面17Bでの苗切れを1つのリミットスイッチ54で検出するように構成した3つの検出部53Aを備えている。
【0043】
各検出部53Aは、偶数番目の仕切壁17Aの内部における隣接する2つの第2開口17Dで挟まれた部位に配備したリミットスイッチ54、各第2開口17Dに出退揺動可能に備えた苗切れ検出用の検出アーム55、リミットスイッチ54を挟んで隣接する2つの検出アーム55の揺動支点とリミットスイッチ54の操作具とを兼ねるように形成した線状鋼材からなる支持部材56、及び、2つの検出アーム55を突出付勢する作用部57Aを左右に備えるW字状に形成した線状のバネ鋼材からなる付勢バネ57、などから構成してある。
【0044】
各支持部材56は、対応する2つの検出アーム55のうちの少なくとも一方が突出揺動するのに伴って揺動してリミットスイッチ54を押圧操作するように、対応する2つの検出アーム55に片当たり接触している。
【0045】
各付勢バネ57は、その下部に形成した連結部57Bを苗載台17に備えた支持金具58と押え具59とで挟持することで苗載台17に取り付けてある。連結部57Bは、付勢バネ57の苗載台17に対する上下方向での取り付け位置の調整を可能にする凹部57Cを有するように形成してある。支持金具58には、付勢バネ57の取り付け位置の調整範囲を制限する開口58Aを形成してある。押え具59は、連結部57Bとの接当で回り止めした状態で支持金具58にビス止めしてある。そして、付勢バネ57の凹部57C及び支持金具58の開口58Aを利用して苗載台17に対する付勢バネ57の取り付け位置を上下方向に調整することで、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置の各検出アーム55の揺動支点からの距離を変更することができ、これにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した大きさに簡単に調整することができる。
【0046】
具体的には、例えば各苗載置面17Bに床土を使用して形成することで重量が大きくなったマット状苗を載置する場合には、苗載台17に対する各付勢バネ57の取り付け位置を下方側に調整して、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置を各検出アーム55の揺動支点から離すことにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した大きいものに簡単に調整することができる。逆に、各苗載置面17Bに床土に代えて人工マットを採用することで重量が小さくなったマット状苗を載置する場合には、苗載台17に対する各付勢バネ57の取り付け位置を上方側に調整して、各検出アーム55に対して各付勢バネ57の各作用部57Aが作用する位置を各検出アーム55の揺動支点に近づけることにより、各付勢バネ57の付勢力から得られる各検出アーム55の突出姿勢への復元力を、各苗載置面17Bに載置するマット状苗の重量に適した小さいものに簡単に調整することができる。
【0047】
つまり、2つの検出アーム55を1つの付勢バネ57で突出付勢するように構成することで構成の簡素化を図りながらも、各苗載置面17Bに重量の小さいマット状苗を載置した場合に、各検出アーム55の突出姿勢への復元力がマット状苗の重量に勝つことに起因した苗切れ検出手段53による苗切れの誤検出を防止することができる。
【0048】
図3、図5、図6及び図10に示すように、苗載台17の背面には、各縦送りベルト43の表面に付着した苗根や土などの夾雑物を取り除く複数の除去手段60を備えている。各除去手段60は、苗載台17に形成した各第1開口17Cにおける下縁の左右両端に係合するフック状の左右の係合部61Aと、左右の係合部61Aから延出するアーム部61Bと、左右のアーム部61Bの延出端にわたる横長のホルダ部61Cとを備えて門形に形成したブラシ支持部材61を備え、このブラシ支持部材61のホルダ部61Cに、縦送りベルト43の回動に伴って縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除くブラシ62を取り付けて、ブラシ62と苗載台17の背面との間に、縦送りベルト43の表面から取り除いた夾雑物の苗載台17の背面側での落下を許容する空間63を確保するように構成してある。
【0049】
各ブラシ支持部材61において、左右のアーム部61Bは、係合部側端部の上下長さがホルダ部側端部の上下長さよりも長くなるように形成してあり、これにより、ブラシ62と苗載台17の背面との間に空間63を確保しながらも高い支持強度を確保することができる。又、各アーム部61Bの係合部側端部に連結する係合部61Cの上下長さを長くして、各係合部61Cの苗載台17に対する係合代を大きくすることできるので、各ブラシ支持部材61を苗載台17に取り付けた状態での安定性を向上させることができる。
【0050】
各ブラシ62は、駆動ローラ41が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aを駆動ローラ41との間に挟んだ状態でその被支持部分43Aの表面に作用するようにブラシ支持部材61のホルダ部61Cに取り付けてある。
【0051】
上記の構成から、苗載台17が左右のストローク端に達して縦送り機構19の各縦送りベルト43が縦送り作動すると、各除去手段60のブラシ62が、各縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除いて、苗載台17の背面と各ブラシ62との間の各空間63から落下させるようになる。これにより、各縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物がマット状苗とともに苗載台17の表面側で下方に移動して摺動レール29の苗受面29Aに堆積することを効果的に抑制することができる。その結果、各縦送りベルト43の表面に付着していた夾雑物が摺動レール29の苗受面29Aに堆積して各縦送りベルト43によるマット状苗の縦送りを阻害することに起因して、各植付機構20による摺動レール29に形成した苗取出口29Bからの苗の取り出しが不可能になって欠株が発生する不都合を防止することができる。
【0052】
又、各ブラシ62が駆動ローラ41との間に縦送りベルト43の被支持部分43Aを挟んだ状態でその被支持部分43Aの表面に作用することにより、例えば、各ブラシ62が駆動ローラ41と従動ローラ42との間に位置して縦送りベルト43における駆動ローラ41と従動ローラ42との間に位置するベルト部分に作用するように各除去手段60を構成した場合に生じる各縦送りベルト43の撓みによる各縦送りベルト43の各ブラシ62からの逃げを阻止することができる。これにより、各縦送りベルト43の撓みで各縦送りベルト43が各ブラシ62から逃げることに起因した各ブラシ62による各縦送りベルト43の表面からの夾雑物の除去不良を阻止することができる。その結果、各縦送りベルト43の表面に付着していた夾雑物が摺動レール29の苗受面29Aに堆積して各縦送りベルト43によるマット状苗の縦送りを阻害することに起因した欠株の発生をより確実に防止することができる。
【0053】
更に、各除去手段60の取り付けは、各除去手段60に備えた左右の係合部61Aを各第1開口17Cにおける下縁の左右両端に係合するだけであり、しかも、各除去手段60を取り付けた状態では、各除去手段60のブラシ62が各縦送りベルト43の下端部に下方から接触して各除去手段60の各第1開口17Cの下縁からの浮き上がりを防止し、かつ、各除去手段60の左右の係合部61Aが各第1開口17Cの左右の側縁に接当して各除去手段60の左右方向での位置ズレを防止するようになる。つまり、各除去手段60の取り付け構造を簡単にしながら、各第1開口17Cに対する各除去手段60の位置ズレを防止することができ、各除去手段60を各駆動ローラ41が支持する各縦送りベルト43の被支持部分43Aに適切に作用させることができる。
【0054】
尚、図1及び図3に示す符号64は、各苗載置面17Bの下端部に配備した左右のブラケット65などを介して各苗載置面17Bの上方に位置するように配備することにより、各苗載置面17Bに載置したマット状苗の各苗載置面17Bからの浮き上がりを防止する苗ステーである。
【0055】
図1、図11及び図12に示すように、苗載台17の各苗載置面17Bには、手植え用の根洗苗を詰め込んだ苗カセット66を載置することができる。各苗カセット66は、その底板66Aと苗載置面17Bとの間に縦送りベルト43の回動を許容する空間67を確保するように形成してある。
【0056】
各苗カセット66には、苗カセット66の上板66Bから下端の開口66Cに向けて延出するロッド68を備えてある。このロッド68には、苗カセット内の根洗苗を開口66Cに向けて押圧する押圧板69を摺動可能に外嵌してある。これにより、苗載置面17Bに苗カセット66を載置した状態では、苗カセット66の傾斜と押圧板69の重量により、押圧板69が苗カセット内の根洗苗をロッド68に沿って下方の開口66Cに向けて押圧するようになる。そして、各植付機構20が作動して各苗カセット内の根洗苗を各開口66Cから取り出して圃場に植え付けると、根洗苗の減少とともに押圧板69がロッド68に沿って下方に摺動して苗カセット内の根洗苗を開口66Cに向けて縦送りするようになる。
【0057】
苗ステー取り付け用の各ブラケット65は、苗カセット66の下端上部を受け止め支持するとともに、押圧板69が苗カセット66の開口66Cに向けて押圧した根洗苗を受け止める苗受部材70の取り付けが可能となるように構成してある。各苗受部材70は、左右のブラケット65にわたる苗受板71に複数の苗受棒72を左右方向に所定間隔をあけて整列装備した櫛状に形成してある。各苗受棒72は、植え付け作動する各植付機構20の植付爪73との接触を回避する位置に配置してある。
【0058】
この構成から、苗載台17の各苗載置面17Bに苗カセット66を載置して根洗苗の植え付けを行う場合には、各苗ステー取り付け用のブラケット65に苗受部材70を取り付けておくことにより、根洗苗が摺動レール29に接触することを抑制することができる。これにより、苗載台17の左右方向への摺動移動にかかわらず、根洗苗を各植付機構20の各植付爪73による各苗カセット66からの取り出しを行い易い起立姿勢に保持することができ、各植付機構20の各植付爪73による各苗カセット66からの根洗苗の取り出しを安定して行うことができる。
【0059】
又、各苗受部材70の各苗受棒72により、各植付機構20の各植付爪73で各苗カセット66から根洗苗を取り出す際に、根絡みに起因して各植付爪73が取り出す根洗苗とともに隣接する根洗苗が引き摺り出されることを抑制することができ、これにより、各植付爪73による根洗苗の取り出し量を安定させることができる。
【0060】
つまり、苗載台17の各苗ステー取り付け用のブラケット65に苗受部材70を取り付け、苗載台17の各苗載置面17Bに苗カセット66を載置することにより、マット状苗の植え付けを行うように構成した乗用田植機を、手植え用の根洗苗を植え付けることが可能な状態に簡単に変更することができる。
【0061】
尚、図示は省略するが、各苗カセット66を、苗載置面上での傾斜角度の調節が可能となるように、苗ステー取り付け用のブラケット65などを利用して苗載置面上に装備するように構成してもよい。この構成によると、各苗カセット66の傾斜角度を調節することにより、押圧板69の押圧による開口66Cに向けた根洗苗の縦送り量を調整することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
【0063】
〔1〕苗植付装置5としては、マット状苗以外にロール苗やポット苗などの植え付けを行うように構成したものであってもよい。
【0064】
〔2〕除去手段60としては、ローラ41,42が支持する縦送りベルト43の被支持部分43Aにエアを吹き付けることで縦送りベルト43の表面に付着した夾雑物を取り除くように構成したものであってもよい。
【0065】
〔3〕除去手段60としては、縦送りベルト43の上端部を回動可能に支持するローラ42が支持する縦送りベルト43の上端側の被支持部分43Aに作用するように構成したものであってもよい。
【0066】
〔4〕縦送り機構19に、縦送りベルト43の上下中間部を支持するローラ41,42を備え、そのローラ41,42が支持する縦送りベルト43における上下中間部の被支持部分43Aに除去手段60が作用するように構成してもよい。
【0067】
〔5〕除去手段60を、縦送りベルト支持用のローラ41,42を支持するために苗載台17に取り付けた支持部材に取り付けるように構成してもよい。又、その支持部材とともに除去手段60を苗載台17に取り付けるように構成してもよい。更に、除去手段60を、専用の支持部材を介して苗載台17又は植付フレーム22に取り付けるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造は、苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して苗載台に載置した苗を苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構を備え乗用田植機用や歩行田植機用あるいは藺草移植機用などの苗植付装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
17 苗載台
17C 開口
18 横送り機構
19 縦送り機構
41 ローラ
42 ローラ
43 縦送りベルト
43A 被支持部分
60 除去手段
61A 係合部
62 ブラシ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して前記苗載台に載置した苗を前記苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、
前記苗載台の背面側で前記縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段を装備し、
前記除去手段を、前記縦送りベルトを回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの被支持部分に作用するように構成してある苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【請求項2】
前記除去手段に、前記苗載台に形成した苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合する係合部を備えて、前記除去手段を、前記縦送りベルトの下端部を回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用するように構成してある請求項1に記載の苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【請求項3】
前記除去手段に、前記被支持部分を前記ローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に作用するブラシを備えてある請求項1又は2に記載の苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【請求項1】
苗載台を左右方向に一定ストロークで往復移動させるように構成した横送り機構と、前記苗載台が左右のストローク端に達するごとに縦送りベルトが回動して前記苗載台に載置した苗を前記苗載台の下端に向けて縦送りするように構成した縦送り機構とを備え、
前記苗載台の背面側で前記縦送りベルトの表面に付着した夾雑物を取り除く除去手段を装備し、
前記除去手段を、前記縦送りベルトを回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの被支持部分に作用するように構成してある苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【請求項2】
前記除去手段に、前記苗載台に形成した苗縦送り用の開口における下縁の左右両端に係合する係合部を備えて、前記除去手段を、前記縦送りベルトの下端部を回動可能に支持するローラが支持する前記縦送りベルトの下端側の被支持部分に作用するように構成してある請求項1に記載の苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【請求項3】
前記除去手段に、前記被支持部分を前記ローラとの間に挟んだ状態でその被支持部分に作用するブラシを備えてある請求項1又は2に記載の苗植付装置における縦送りベルト用の夾雑物除去構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−254781(P2011−254781A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134169(P2010−134169)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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