説明

苗植付装置

【課題】 1個のロータリケースで2条の苗植付具を作動させることができ、しかもその作動機構に無理な力がかからず正確に作動させられる苗植付装置を提供することを課題としている。
【解決手段】 左右方向の回転中心線24回りに回転する回転体21に前記回転中心線24に対し偏心した左右方向の最終軸25を回転自在に設け、回転体21から左右に突出する最終軸25の突出部に苗植付具26を一体に取り付けるとともに、回転体21の回転に伴って該回転体21に対して最終軸25を回転させるギヤ列を設けた苗植付装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の苗移植機に設けられる苗植付装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右方向の植付駆動軸を回転中心にして回転するロータリケースに苗植付具が設けられ、該苗植付具が円軌道上を移動しながら苗を植付けるロータリ苗植付装置は、一般的には1個のロータリケース(回転体)21に苗植付具(移植具)30が1条分だけ設けられている(特許文献1参照。)。これは、植付駆動軸(回転軸)22へ伝動する植付伝動ケース12がロータリケースの側方近傍に設けられるため、ロータリケース21の左右両側に苗植付具30を設けることができないからである。
【0003】
特殊な例としては、左右並列に設けた2個のロータリケース21,21同士、又はロータリケース21と回転体65とを左右方向の軸51で結び、この軸51に苗植付具22を取り付けた構成がある(特許文献2参照。)。この構成であれば、1個のロータリケースで2条以上の苗植付具を作動させることも可能である。
【特許文献1】特公平7−112381号公報
【特許文献2】実開昭62−91926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表される構成の場合、植付条数と同数だけロータリケースが必要であるから、全体の部品点数が多くコスト高になるという問題点があった。一方、特許文献2の構成は、ロータリケース1個当たり2条以上の苗植付具を設けられるので上記問題点は解決できるが、苗植付具を取り付ける軸51に捩じれや撓みが生じやすく、それに起因する破損や植付精度の低下が起きることが予想される。そこで本発明では、1個のロータリケースで2条の苗植付具を作動させることができ、しかもその作動機構に無理な力がかからず正確に作動させられる苗植付装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するべく次の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、左右方向の回転中心線24回りに回転する回転体21に前記回転中心線24に対し偏心した左右方向の最終軸25を回転自在に設け、回転体21から左右に突出する最終軸25の突出部に苗植付具26を一体に取り付けるとともに、回転体21の回転に伴って該回転体21に対して最終軸25を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置とした。
【0006】
従って、請求項1に係る苗植付装置は、回転体21が回転中心線24回りに回転することにより、苗植付具26が円軌道を移動する。その際、苗植付具26が取り付けられている最終軸25が最終軸回転伝達機構を介して回転体21に対して回転することにより、苗植付具26の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。また、最終軸25を回転体21から左右両側に突出させ、その左右両突出部に苗植付具26を設けることが可能になる。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、最終軸25を一体回転する第一最終軸25aと該第一最終軸25aに外嵌する第二最終軸25bとに分割構成し、該第一最終軸25a及び第二最終軸25bの互いの回転方向における位相角度を変更設定できる角度変更機構を設け、第一最終軸25a及び第二最終軸25bのうちの一方の軸25aへ最終軸回転伝達機構により伝達され、他方の軸25bに苗植付具26を取り付けた構成とした請求項1に記載の苗植付装置とした。
【0008】
従って、請求項2に係る苗植付装置は、請求項1に係る苗植付装置の作用に加えて、回転体21の回転に伴って第一最終軸25a及び第二最終軸25bのうちの一方の軸25a
へ最終軸回転伝達機構により伝達され、その一方の軸25aと他方の軸25bとが一体回転して苗植付具26の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。そして、角度変更機構で第一最終軸25aと第二最終軸25bとの互いの回転方向における位相角度を変更設定することにより、同じ最終軸25の左右両突出部に取り付けた2条分の苗植付具26の姿勢を同時に変更して調節することができる。
【発明の効果】
【0009】
よって、請求項1に係る苗植付装置は、回転体21の左右両側に苗植付具26を設けられるので、1個の回転体を複数条(通常は2条)で兼用させ、苗植付装置全体の軽量化、コストダウンを図ることが可能となるとともに、最終軸回転伝達機構の左右に苗植付具26を配置することができるので、最終軸25ひいては苗植付具26への伝動が安定し植付精度が向上する。
【0010】
また、請求項2に係る苗植付装置は、請求項2に係る苗植付装置の作用に加えて、角度変更機構により2条分の苗植付具26の姿勢を同時に変更して調節することができるので、苗植付具26による植付姿勢の変更調節を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の一形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図2は苗植付装置を装備した乗用型の田植機を表している。この乗用型の田植機1は、エンジン2を搭載し駆動回転する各左右一対の前輪3及び後輪4を備えた走行車体5の後方に、昇降リンク装置6を介して6条植の苗植付部7が連結されている。図中の符号8は操縦座席、9は前輪3,3を操向するステアリングハンドル、10は予備の苗を載せておく予備苗載台、70は圃場面に肥料や薬剤等の粉粒体を施用する粉粒体施用装置である。
【0012】
前記粉粒体施用装置70は、苗植付部7の後述する苗植付装置14から上方に延びる粉粒体施用装置支持フレ−ム71に支持され、粉粒体を貯留する貯留タンク72と、該貯留タンク72の下側で粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出部73と、該繰出部73で繰り出された粉粒体を左右方向に拡散しながら圃場面へ放出して散布する散布部74と、前記繰出部73へ繰出動力を伝達する繰出ロッド75とを備えている。前記繰出ロッド75は、苗植付装置14の駆動に連動して上下に往復作動し、上端部に連結した繰出ア−ム76を上下に往復回動させる。尚、繰出ア−ム76の上下回動に伴って、図示しない一方向クラッチを介して繰出部73内の繰出ロ−ルが所定の一方向に回転し、粉粒体を所定量づつ繰り出す構成となっている。この粉粒体施用装置70は主として薬剤散布用に使用され、貯留タンク72へ粒状の薬剤を貯留して作動させることにより圃場面に均一に薬剤を散布することができる。
【0013】
苗植付部7は、走行車体5から伝動入力される伝動ケース12の上側に前部が上位となるように傾斜した苗載台13を設けるとともに、伝動ケース12の植付伝動部12aの後端部に2条ごとで1組の苗植付装置14を設けている。前記苗載台13は、苗取出口16を備える左右方向に設けた横枠77に沿って左右動自在に支持され、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口16に供給するとともに、横一列分の苗を全て苗取出口16に供給すると苗送りベルト78により苗を所定量だけ下方に移送する構成となっている。従って、フロート15を接地させた状態で機体を進行させると、苗載台13の左右往復移動又は苗送りベルト78の移送によりマット苗を前記苗取出口16に一株分づつ順次供給し、それを苗植付装置14が分離して取り出し圃場に植え付ける。前記苗送りベルト78は、下側の駆動ローラ79と上側の従動ローラ80とに張架されている。
【0014】
苗載台13は前後に傾斜しているので、該苗載台13上にマット苗を載置すると該マット苗はある程度は苗送りベルト78により下位側にずれ落ちないように保持されるが、苗送りベルト78より下位にあるマット苗はその自重によりすれ落ちて下端部(横枠77上の部分)の苗が圧縮されてつぶれやすく、その結果苗送りベルト78に保持されているマット苗と苗送りベルト78より下位にあるマット苗との間に隙間が生じ、以降の植付時に苗取出口16にマット苗が供給されずに植付欠株を生じるおそれがある。一方、マット苗がずれ落ちないように苗載台13の傾斜を緩くすると、苗載台13の前後方向の幅が広くなりひいては機体の前後長が長くなって機体の前後重量バランスが悪くなる。そこで、図17に示すように、苗載台13の上部を急傾斜とし下部を緩傾斜として苗載台13を屈曲させた構成とすると、上記課題を解消できる。尚、図17に示すように、苗送りベルト78の部分を境に苗載台13の傾斜を異ならせることが好ましい。図17(b)に示す構成では、駆動ローラ79の近くで苗載台13を屈曲させ苗送りベルト78の傾斜を苗載台13の上部の急傾斜と同等にしているので、緩傾斜となる苗載台13の下部が短くなり、機体の前後長を効率良く短縮できる。また、図17(a)に示す構成では、従動ローラ80の近くで苗載台13を屈曲させ苗送りベルト78の傾斜を苗載台13の下部の緩傾斜と同等にしているので、苗送りベルト78による苗の保持力が向上し、作業者による苗載台13への苗補給時に補給される苗を苗送りベルト78で確実に保持して苗送りベルト78より下位にあるマット苗が圧縮されてつぶれるようなことを防止できる。
【0015】
苗植付装置14は、図3乃至図6に示す構成となっている。植付伝動部12aの後端に側面視環状の固定支持体20が一体に設けられ、その内側に回転体(ロータリケース)21がベアリング22及びブッシュ23を介して回動自在に嵌合している。回転体21には、その回転中心線24を中心とする円周上に互いに120度の位相で3本の最終軸25が回動自在に設けられ、それぞれの最終軸25の回転体21から突出する左右両端部に苗植付具26がそれぞれ一体に取り付けられる構成となっている。
【0016】
前記最終軸25は、軸心側となる第一最終軸25aと該第一最終軸25aに外嵌されて外側に位置する第二最終軸25bとに分割構成されている。前記第一最終軸25aは、断面が円形となる丸軸状に形成され、中途部にキ−溝81を備えている。前記第二最終軸25bは、断面が外面及び内面共に円形のパイプ状に形成されているが、その左右両端の回転体(ロータリケース)21からの突出部では外面が四角形状に形成されている。この第二最終軸25bの左右両端の外面四角形状の突出部にそれぞれ四角形状の内面を備える苗植付具26の装着用孔82を嵌合させて左右の苗植付具26を取り付けている。また、第二最終軸25aには、前記キ−溝81に相当する位置にキ−用孔を設けると共に、左側の前記突出部に相当する位置に角度変更用ボルト83が挿通されるボルト用孔を設けている。そして、苗植付具26に螺合する前記角度変更用ボルト83の先端部が、第二最終軸25bの前記ボルト用孔を通って第一最終軸25aの外面に圧接される構成となっている。よって、前記角度変更用ボルト83を締め付けて該ボルト83の先端を第一最終軸25aに圧接させることにより、第一最終軸25aと左側の苗植付具26とが一体で回転するようになり、左側の苗植付具26から第二最終軸25bを介して右側の苗植付具26が回転し、左右の苗植付具26が一体回転する構成となっている。そして、角度変更用ボルト83を弛めて第一最終軸25aに対して第二最終軸25bを回動させて苗植付具26の姿勢(角度)を変更し再度角度変更用ボルト83を締め付けることにより、左右の苗植付具26の姿勢(角度)を同時に変更調節することができる。従って、これらの第一最終軸25a、第二最終軸25b及び角度変更用ボルト83等により、左右の苗植付具26の姿勢(角度)を同時に変更できる角度変更機構が構成されている。
【0017】
回転体21の内部には、該回転体21のケースと一体回転する駆動ギヤ30が設けられている。この駆動ギヤ30を植付伝動部12aの後端部に設けた入力ギヤ31で減速回転させることにより、回転体21が回転する。なお、入力ギヤ31へ伝動するチェーン伝動装置32のスプロケット32aから入力ギヤ31への伝動部には、伝動を切ったとき該ギヤが所定の位相で停止する停止クラッチ33が設けられている。
【0018】
図5に駆動ギヤ30と入力ギヤ31との噛み合い状態が表されている。一見すると分かりにくいが、駆動ギヤ30の歯数は入力ギヤ31の歯数の3倍であり、駆動ギヤ30は丸印を付けた3箇所(図5における入力ギヤ31との噛み合い位置を基準として0。,120。,240。の位置)が最大径となる不等径ギヤ、入力ギヤ31は丸印を付けた1箇所(図6における駆動ギヤ30の噛み合い位置を基準として0。の位置)が最小径となる不等径ギヤになっている。したがって、駆動ギヤ30が0。,120。,240。の位置で入力ギヤ31と噛み合うときに、駆動ギヤ30の回転速度が速くなり、駆動ギヤ30の回転速度は1/3周期で変化する
また、回転体21の内部には、最終軸25へ伝動するためのギヤ列が設けられている。
このギヤ列は、回転体21の回転中心線24を中心とする円軌道を移動しながら回転する回転ギヤ35と、該回転ギヤと一体回転する中間ギヤ36と、該中間ギヤに噛合する第一カウンタギヤ37と、該第一カウンタギヤと一体回転する3個の第二カウンタギヤ38と、最終軸25に取り付けられ各第二カウンタギヤとそれぞれ個別に噛合する最終ギヤ39とからなっている。最終ギヤ39は、第二最終軸25b回りに遊転する構成であるが、第一最終軸25aのキ−溝81に嵌合するキ−84を介して前記第一最終軸25aと係合している。従って、回転体21の内部のギヤ列により第一最終軸25aを回転させる構成となっており、前記ギヤ列により回転体21の回転に伴って該回転体21に対して最終軸25を回転させる最終軸回転伝達機構が構成されている。尚、回転ギヤ35は、固定支持体20に固定された内歯の固定ギヤ40と噛合し、回転体21の回転に連動して前記作動をする。第二カウンタギヤ38及び最終ギヤ39は非円形ギヤ(不等径ギヤ)である。
【0019】
回転体21が回転すると、1条における3個の苗植付具26が円軌道を移動する。そのとき、回転体21の回転に連動する回転ギヤ35の作動がギヤ列を介して最終軸25へ伝達され、図7乃至図10に示すように、苗植付具26の姿勢が変化する。これにより、苗植付具26は、後記苗取り爪47の先端が軌跡Pを描くように作動する。機体の移動を加味した苗取り爪47の先端動軌跡は図11のようになる。各先端動軌跡P′(1〜3)は株間を変更するために機体の移動速度に対する苗植付装置14の作動速度を異ならせた場合をそれぞれ示すもので、P′(1)、P′(2)、P′(3)の順に株間が広くなる。軌跡Pにおいて下死点である苗植付位置Bからさらに後方へ移動する行程Cが含まれていることにより、動軌跡P′(1〜3)では苗取り爪47が苗植付位置Bを通過後ほぼ真上へ移動するようになっている。
【0020】
さらに、回転体21の内部には、最終軸25に一体回転するように取り付けた制動カム42と、該制動カムの外周面に当接する制動アーム43と、該制動アームを制動カム42に押し付けるスプリング44とからなる3組の位相ずれ防止機構が設けられている。この位相ずれ防止機構は、苗植付具26が苗取出位置A及び苗植付位置Bにある時に最終ギヤ39の回転を制動し、各ギヤ間のバックラッシュを吸収して、後述する苗取出し及び苗植付けの動作が正確に行われるように作用する。
【0021】
苗植付具26には、先端部が鋭利に形成された二股フォーク状の苗取り爪47と、該苗取り爪の下側で突出・後退作動をする苗押出体48とが設けられている。苗押出体48の作動機構は次のようになっている。第一最終軸25aの端部に回転自在に嵌合する押出カム50の外周面に、アーム軸51に回動自在に軸支されたカムアーム52が摺接している。各押出カム50は、個別に回転しないように回転体21の外側に設けた連結プレート50aによって互いに連結されている。尚、この連結プレート50aは、機体側面視で回転体21の回転中心線24の位置から各苗植付具26の押出カム50位置へ向けて放射状に延設された構成となっている。また、アーム軸51にはカムアーム52と一体に回動する押出規制アーム53が軸支されていて、該押出規制アームの先端部と苗押出体48を支持する押出ロッド54の端部とが継手部材55を介して連結されている。継手部材55は、付勢体である押出スプリング56によって押出ロッド54を突出させる側に付勢されている。押出スプリング56は苗取り爪47に対し左右にずらせて配置されているため、苗植付具26が苗押出体48の押し出し方向にコンパクトになり、回転体21の回転方向に設けられた3個の苗植付具26が互いに干渉するのを防いでいる。
【0022】
最終軸25が回転すると、該軸に対し押出カム50が相対的に回転し、押出カム50とカムアーム52とからなるカム機構の働きで押出規制アーム53が揺動する。押出スプリング56を圧縮する位置に押出規制アーム53があるときは、苗押出体48が後退した状態にある。その位置から押出規制アーム53が回動して押出スプリング56の圧縮が緩和されると、押出スプリング56の弾発力で押出ロッド54が押し出され、苗押出体48が突出する。
【0023】
乗用田植機1での作業時、前述したように、3個の苗植付具26が先端軌跡Pを描きながら同一軌道上を互いに1/3周期の間隔を保ったまま移動する。苗取出位置Aで苗取り
爪47が苗取出口16の苗を一株分に分離して取り出す。このとき、苗押出体48は後退した状態にある。苗植付具26が下動して苗植付位置Bまで移動すると、苗押出体48が突出し、苗取り爪47が保持している苗の土部を下向きに押すことにより、苗を苗取り爪47から押し出して圃場に植付ける。その後、苗植付具26はさらに後方に移動してから、下動時よりも後方の軌道を通って上動する。図11の動軌跡P′(1〜3)に示されているように、苗取り爪47が苗植付位置Bを通過後ほぼ真上へ移動するため、先行する苗植付具26が植付けた苗に干渉しない。苗植付位置Bから苗取出位置Aへ移動するまでの間に、苗押出体48は後退する。
【0024】
このように、この苗植付装置14は、固定支持体20により外側から回転自在に支持された回転体21の左右両側に苗植付具26を設け、1個の回転体で同時に2条に苗を植付けるとともに、各条に3個の苗植付具を設け、高速植付けが可能な構成になっている。上記構成を実現し、しかも機能性向上、コスト低減を図るため、この苗植付装置には以下の特徴的な構造が採用されている。
【0025】
まず、固定支持体20は分割面60で前後に2分割されており、植付伝動部12aと一体の前部材20aに対して後部材20bを結合ボルト61で結合する構成になっている。このように固定支持体20を分割することにより、固定支持体20の後半分を取り外すことができるので、回転体21のメンテンスが容易である。
【0026】
次に、3本の最終軸25へ伝動するギヤ列は、回転体21の回転中心線24上に配置した共通のカウンタ軸62に1個の第一カウンタギヤ37と複数(3個)の第二カウンタギヤ38とを取り付け、各第二カウンタギヤを対応する最終ギヤ39にそれぞれ噛合させ、1本のカウンタ軸62から複数(3本)の最終軸25へ動力を分岐して伝動する構成としている。これにより、少ないギヤ数で有効なギヤ列を構成することができ、軽量化及びコストダウンが図れるようになる。この場合、本実施形態のように、側面視で3本のうち1本の最終軸25とカウンタ軸62とを通る直線上に、回転ギヤ35及び中間ギヤ36を取り付けた中間軸63を配置するとよい。
【0027】
また、回転体21の左右中央に駆動ギヤ30を設け、その左右一方(図示例では右側)に回転ギヤ35及び固定ギヤ40を配置し、反対側に中間ギヤ36、第一カウンタギヤ37、第二カウンタギヤ38及び最終ギヤ39を配置した構成としている。なお、駆動ギヤ30は中心部が開口しており、この開口部30aにカウンタ軸62及び中間軸63が挿通されている。このように、ギヤ列の各ギヤを左右に振り分けて配置することにより、左右のバランスが良好になる。
【0028】
前述のように最終ギヤ39は非円形ギヤ(不等径ギヤ)であるため、回転体21の回転位置によって最終軸25に対して最終ギヤ39が外側に張り出す幅が異なる。そこで、最終ギヤ39の最大外径部が外側にくる箇所については、側面視で最終ギヤ39の一部が回転体21よりも外側に突出させ、それに対応する部分20aだけ固定支持体20の外形を大きくした形状としている(図5、図6参照)。これにより、固定支持体20を必要以上に大きくすることなく、回転体21を小型化できる。
【0029】
このような不等径の最終ギヤ39を採用する場合は、最終ギヤ39が移動経路の下位に位置するとき当該最終ギヤの最大外径部が上側になるようにすれば、最終軸25を地面に近づけることが可能になり、苗植付深さの調節範囲を広くできる。
【0030】
さらに、前述のように、入力ギヤ31と駆動ギヤ30との歯数比を苗植付具26の数と同じ「3」とするとともに、両ギヤ30,31を不等径ギヤとすることにより、駆動ギヤ30の回転速度が1/3周期で変化するように不等速駆動回転させているが、駆動ギヤ30の回転速度が速くなるのは回転体21の回転中心線24よりも後側に2個の苗植付具26が位置するときに設定している。換言すれば、上動する苗植付具26(回転体21の回転中心線24よりも後側に位置する)の数の方が下動する苗植付具26(回転体21の回転中心線24よりも前側に位置する)の数より多いとき回転体21の回転速度が速くなるように設定しており、上動する苗植付具26の数と下動する苗植付具26の数とのアンバランスによる回転体21の回転速度の変動を極力抑え、回転体21の実回転速度の変動による振動の発生を抑えて回転体21を円滑に回転させることができる。
【0031】
入力ギヤ31と駆動ギヤ30の組み合わせによる減速機構を回転体21への伝動の直前
に配置することにより、停止クラッチ33の配置の自由度が高くなり、例えば本実施形態のように植付伝動部12aの後端部に停止クラッチ33を設けることができる。また、停止クラッチ33を、回転体21の左右両側に設けられる2条の苗植付装置14の両方に共用させることができる。また、停止クラッチ33により回転体21が停止したとき、いずれか1個の苗植付具26が回転体21の回転中心24の直上又は直下に位置するようになっている(例えば図3に示す位置)。このようにすると、奇数個(3個)の苗植付具26を含めた回転体21の重量バランスが前後均等になるので、作動停止が確実に行われると共に、停止位置が安定する。また、1個の苗植付具26が回転体21の回転中心線24の直上に位置する状態で回転体21が停止した場合(図3の状態)、下側の前後一対の苗植付具26は下端の高さが略同一になるので、作動停止時に地面から下側の苗植付具26までの距離が適正に保たれ、苗植付具26が地面と干渉するのを防げる。更には、回転体21の停止時に苗植付具26が固定支持体20の後端よりも前側にあるので、後方の障害物に苗植付具26が当たることが防げ、苗植付具26の保護に有効である。
【0032】
以上により、この乗用型の田植機1における苗植付装置14は、左右方向の回転中心線24回りに回転する回転体21に前記回転中心線24に対し偏心した左右方向の最終軸25を回転自在に設け、回転体21から左右に突出する最終軸25の突出部に苗植付具26を一体に取り付けるとともに、回転体21の回転に伴って該回転体21に対して最終軸25を回転させる最終軸回転伝達機構を設けている。
【0033】
従って、この苗植付装置14は、回転体21が回転中心線24回りに回転することにより、苗植付具26が円軌道を移動する。その際、苗植付具26が取り付けられている最終軸25が最終軸回転伝達機構を介して回転体21に対して回転することにより、苗植付具26の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。また、回転体21から左右両側に突出する最終軸25の左右両突出部に苗植付具26を設けて回転体21の左右両側に苗植付具26を設けられるので、1個の回転体21を2条で兼用させ、苗植付装置14全体の軽量化、コストダウンを図ることが可能となるとともに、最終軸回転伝達機構の左右に苗植付具26を配置することができるので、最終軸25ひいては苗植付具26への伝動が安定し植付精度が向上する。
【0034】
また、この苗植付装置14は、最終軸25を互いに一体回転する第一最終軸25aと該第一最終軸25aに外嵌する第二最終軸25bとに分割構成し、該第一最終軸25a及び第二最終軸25bの互いの回転方向における位相角度を変更設定できる角度変更用ボルト83等からなる角度変更機構を設け、第一最終軸25aへ最終軸回転伝達機構によりキ−84を介して伝達され、四角形状の軸と孔との嵌合により第二最終軸25bの左右両端部で該軸25bと一体回転するように苗植付具26を取り付けた構成となっている。
【0035】
従って、この苗植付装置14は、回転体21の回転に伴って第一最終軸25aへ最終軸回転伝達機構により伝達され、前記第一最終軸25aと第二最終軸25bとが一体回転して苗植付具26の姿勢が適宜変化して円軌道上の移動位置に応じた適正姿勢を保持する。そして、左右の苗植付具26で共通の角度変更用ボルト83を弛めて第一最終軸25aと第二最終軸25bとの互いの回転方向における位相角度を変更設定することにより、同じ最終軸25の左右両突出部に取り付けた2条分の苗植付具26の姿勢を同時に変更して調節することができ、苗植付具26による植付姿勢の変更調節を容易に行える。尚、この苗植付具26の姿勢変更により苗取出口16上での苗植付具26による苗の掻き取り量(分離量)を変更することができ、植付苗1株あたりの苗本数を変更することができる。
【0036】
また、図12に示すように、苗植付具26の先端が苗取出口16から苗を掻き取らない状態(苗植付具26の作動軌跡が苗取出口16上を通過しない状態)になるまで苗植付具26の姿勢を変更することもでき、同じ植付条に苗を植え付ける複数個の苗植付具26のうちの一部の苗植付具26の姿勢を苗を掻き取らない状態にまで変更すれば、植付株間が極端に広くなる「疎植」の植付をすることができる。例えば、この実施の形態の場合、同じ植付条に苗を植え付ける3個の苗植付具26のうちの2個を苗を掻き取らない状態に変更すれば、植付株間を3倍に広げることができる。この「疎植」へ切り替えるために機体
に備える全条分の苗植付具26を姿勢変更するにあたり、左右複数条分(2条分)の苗植付具26の姿勢変更が同時に行えるので、角度変更用ボルト83による角度変更回数(箇所)が少なくなり(2分の1になり)、「疎植」への切替作業が容易になる。従来は、単一の苗植付具26毎に姿勢変更させる必要があり、その姿勢変更回数(箇所)が多く「疎植」への切替作業が困難である。
【0037】
この発明の実施の形態は四角形状の軸と孔との嵌合により第二最終軸25bと各苗植付具26とを一体回転させる構成について説明したが、各苗植付具26の第二最終軸25bとの係合部にコッタピンを設け、該コッタピンにより各苗植付具26を第二最終軸25bに固定して該第二最終軸25bと一体回転させる構成としてもよい。
【0038】
また、この発明の実施の形態は最終軸回転伝達機構として回転体(ロータリケース)21内部に設けたギヤ列について説明したが、最終軸回転伝達機構として回転体(ロータリケース)21内部に固定支持体20側に固定された苗植付具姿勢変更用カムを設け、該カムにより回転体21の回転に伴って移動する苗植付具26(最終軸25)の位置に応じて最終軸25を適宜回転させて該苗植付具26の姿勢を変化させる構成としてもよい。これにより、前述のギヤ列に比較して部品点数が少なくなり、コストダウンが図れる。このとき、左右2条分の苗植付具26における苗植付具姿勢変更用カムを共通のものとすれば、更に部品点数を削減できる。また、回転体21の回転により最終軸が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするため、最終軸25を左右の苗植付具26に対応して左右に分割し、この左右の最終軸の間に苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。また、前述のように最終軸25を左右の苗植付具26で共通のものとしながら最終軸25が苗植付具姿勢変更用カムと干渉しないようにするには、機体側面視で複数本(3本)の最終軸25の内側又は外側にのみ苗植付具姿勢変更用カムを配置すればよい。尚、前記苗植付具姿勢変更用カムを駆動ギヤ30内部の開口部(空間部)30aに配置すれば、回転体21内部のスペ−スの有効利用が図れて苗植付装置14の更なる小型化を図ることができる。
【0039】
また、前述の実施の形態は各押出カム50を連結する連結プレート50aを機体側面視で回転体21の回転中心線24の位置から各苗植付具26の押出カム50位置へ向けて放射状に延設された構成としたが、図13に示すように連結プレート50aを環状(円環状)に構成してもよい。これにより、上動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して後側にある苗植付具26)の数と下動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して前側にある苗植付具26)の数とのアンバランスによる回転体21の回転に伴って回転する部分全体の前後の重量アンバランスを連結プレート50aの重量により更に増大させることなく抑えることができ、回転体21の回転速度の変動を極力抑え、回転体21の実回転速度の変動による振動の発生を抑えて回転体21を円滑に回転させ、円滑で適正な苗の植付を行うことができる。このとき、連結プレート50aにおける各押出カム50(各苗植付具26)の間にバランスウエイト取付部85を設け、該バランスウエイト取付部85に取付ボルト86等によりバランスウエイト87を取り付けた構成とすれば、更に回転する部分全体の前後の重量アンバランスを抑えることができ、回転体21の回転速度の変動を極力抑えることができる。また、前記バランスウエイト87に代えて、各押出カム50(各苗植付具26)の間の連結プレート50a自体の厚みtを厚く構成することにより、回転部分全体の前後重量アンバランスを抑えることができる。尚、図14に示すように、連結プレート50a自体の厚みtを異ならせることと前記バランスウエイト87とを併用してもよい。また、連結プレート50aに限らず駆動ギヤ30や回転体21自体等、一体で回転する部材において、同じ植付条における各押出カム50(各苗植付具26)の間の部分で厚みを大きくしたりバランスウエイトを装着したりすることにより、回転部分全体の前後重量アンバランスを抑えることができる。
【0040】
また、上述の回転部分全体の前後重量アンバランスを抑える手段として、図15に示すように、環状の連結プレート50aを、各押出カム50(各苗植付具26)の間の部分が回転体21の回転中心から離れた位置となるようにして重量アップを図った構成してもよい。これにより、回転体21による回転部分全体の前後重量アンバランスを回転域の全域にわたって抑えることができる。このとき、連結プレート50aにおける回転体21の回
転中心から離れた部分に粉粒体施用装置70の繰出ロッド75を連結すれば、回転体21を小型化したにも拘らず回転体21の回転に伴う前記繰出ロッド75の上下作動ストロ−クを大きくとることができ、繰出部73により所望の繰出量を安定して得ることができる。また、この繰出ロッド75の下端部における連結位置は同じ植付条における各苗植付具26の間となるため、角度変更用ボルト83等からなる角度変更機構による苗植付具26の姿勢を変更調節するときや苗植付具26を回転体21に対して左右移動させて苗植付具26の左右位置を変更調節するとき等、苗植付具26のメンテナンス時に繰出ロッド75が近くに位置しないので邪魔になりにくく、苗植付具26のメンテナンスを容易に行える。
【0041】
前記繰出ロッド75は、その上動(繰出ア−ム76の上動)で繰出部73の繰出ロ−ルを回転させ、下動(繰出ア−ム76の下動)時には一方向クラッチにより繰出ロ−ルへ伝動しない構成となっている。従って、上述のように同じ植付条における各苗植付具26の間に繰出ロッド75の下端部を連結させると、前記繰出ロ−ルへの伝動負荷が大きい場合には、連結プレート50aの回転で繰出ロッド75の下端部が最後位に位置する該繰出ロッド75の上動量が大きくなるタイミング(繰出ロッド75の駆動負荷が大きくなるタイミング)で、上動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して後側にある苗植付具26)の数(実施の形態では2個)と下動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して前側にある苗植付具26)の数(実施の形態では1個)とのアンバランスによる回転体21の回転に伴って回転する部分全体の前後の重量アンバランスにより回転体21の回転駆動負荷が大きくなる。よって、回転体21自身及び繰出ロッド75の双方の駆動負荷が相乗されて、回転体21の回転駆動負荷が更に大きくなってしまい、回転体21を円滑に回転させて円滑で適正な苗の植付を行うことが困難になるおそれがある。そこで、図16に示すように、繰出ロッド75の下端部を苗植付具26の位置又はその近くに連結させ、回転体21自身と繰出ロッド75との駆動負荷のピ−クが発生するタイミングを異ならせて上記課題を解消することができる。このとき、繰出ロッド75の上動量が大きくなるタイミング(繰出ロッド75の駆動負荷が大きくなるタイミング)で、上動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して後側にある苗植付具26)の数(実施の形態では1個)より下動する苗植付具26(回転体21の回転中心に対して前側にある苗植付具26)の数(実施の形態では2個)が多くなるので、その前後の重量アンバランスにより回転体21が適正な回転速度より速く回転しようとする傾向があるが、繰出ロッド75の駆動負荷が回転体21へ伝播されることにより回転体21へ回転抵抗を与え、回転体21を円滑に回転させることができる。
【0042】
ところで、この乗用型の田植機1における予備苗載台10は機体の前部に上下複数段に設けられているので、畦から予備苗載台10への苗補給では上段の位置が高すぎて畦から苗補給しにくく、予備苗載台10から苗植付部7の苗載台13への苗補給では両者間の前後方向の距離がある分苗補給の手間がかかり、また前記苗載台13へ苗補給する際には苗箱から苗を取り出す作業を要し、更にその苗が取り出された空の苗箱を収集して回収する作業が必要であり、このように苗補給作業において作業者に負担を与える要素がある。そこで、図18及び図19に示すように、乗用型の田植機1に苗箱90ごとマット苗を搬送できるコンベア91を設けることができる。このコンベア91は、回転自在のロ−ラ92からなるロ−ラコンベアであり、略水平方向へ搬送する高位部分91a及び低位部分91bを備えるとともに、前記高位部分91aと低位部分91bとを接続する傾斜部分91cを備えている。前記高位部分91a、低位部分91b及び傾斜部分91cは機体平面視で同じ方向へ苗を搬送する構成となっており、コンベア91は、該コンベア91の低位部分91b側の端部で上下方向に延びるコンベア支持フレ−ム93に支持され、該コンベア支持フレ−ム93の上端部に設けたコンベア回動レバ−94によりコンベア支持フレ−ム93を中心に該コンベア支持フレ−ム93より機体の左右方向外側で横方向(水平方向)へ回動可能に設けられている。尚、前記コンベア回動レバ−94は、コンベア支持フレ−ム93より機体の左右方向内側で横方向(水平方向)へ回動操作する構成となっているが、平面視でコンベア91の回動方向とは逆方向に回動させてコンベア91を回動させる構成となっている。従って、コンベア回動レバ−94をコンベア支持フレ−ム93の内側で前側へ回動操作すると、コンベア91がコンベア支持フレ−ム93の外側を介して前側へ回動する。逆に、コンベア回動レバ−94をコンベア支持フレ−ム93の内側で後側へ回動操作すると、コンベア91がコンベア支持フレ−ム93の外側を介して後側へ回動する。よって、コンベア91を前後何れかの移動させたい側へコンベア回動レバ−94を操作すればよいので、このコンベア91の移動操作が判り易く、しかもコンベア91から離れた位置でコンベア回動レバ−94を操作できるので、コンベア回動レバ−94の操作を回動するコンベア91が邪魔にならずに容易に行える。尚、コンベア91の側部には畦等の機外にいる作業者が把持できる把持部95を設けており、コンベア回動レバ−94を操作しなくても前記把持部95を把持してコンベア91を回動させることもできる構成となっている。従って、機外から機体へ搭乗する際にコンベア91が邪魔になるときには、前記把持部95によりコンベア91を回動させることができる。
【0043】
機体前方の畦から機体側へ苗を補給するときには、コンベア回動レバ−94によりコンベア91を機体前方へ向けて高位部分91aが低位部分91bより前側へ位置するように回動させ、作業者が前記高位部分91aへ苗箱90ごと苗を載せて順次低位部分91bへ向けて搬送することにより、コンベア91に複数枚の苗を載置できる。そして、コンベア91から苗植付部7の苗載台13へ苗を補給するときには、コンベア91を機体後方へ向けて回動させて苗載台13へ近づけて行う。尚、高位部分91aの下方には空の苗箱90を収容する空箱収容部96を設けており、低位部分91bと傾斜部分91cとの接続部分に設けた苗剥ぎ取り具97を苗箱90と該苗箱90内のマット苗の底面との間に挿入し、低位部分91bにある苗箱90をロ−ラコンベアのロ−ラ92間を通して空箱収容部96へ向けて搬送することにより、マット苗のみが傾斜部分91c乃至高位部分91aに取り出され、マット苗が取り出された空の苗箱90が空箱収容部96へ供給される構成となっている。よって、作業者は苗載台13に近い位置でマット苗のみを苗載台13へ容易に補給することができる。尚、空箱収容部96へ回収される複数枚の空の苗箱90は、コンベア91を前側に回動させた状態で機体前方の畦にいる作業者が取り出せばよい。尚、上述のコンベア91はフリ−のロ−ラコンベアとしたが、ベルトコンベアで構成してもよく、また電動モ−タ等により駆動する構成としてコンベアの回動に連動して自動搬送するコンベアとしてもよい。
【0044】
また、図20及び図21に示すように、上述のコンベア91を前後方向で上下に複数段備える予備苗載台10と苗植付部7の苗載台13との間に配置してもよい。尚、前記コンベア91は、高位部分91aが低位部分91bの後側に位置するように向ける。そして、予備苗載台10は、回動リンク機構98により上下複数段ごと前後移動できる構成となっており、コンベア91の始端部に接続できる構成となっている。よって、予備苗載台10上の苗を苗箱ごとそのままコンベア91の始端部に載せて後方へ搬送することにより、コンベア91の中途部にある苗剥ぎ取り具97によりマット苗のみを高位部分91aへ搬送でき、高位部分91aにあるマット苗をそのまま苗植付部7の苗載台13へ補給することができる。尚、回動リンク機構98により予備苗載台10を後側に移動させた状態では、上下複数段の予備苗載台10のうちの上下中央段がコンベア91の始端部に接近し、当該上下中央段及びそれより上段からコンベア91への苗供給が容易に行える。回動リンク機構98により予備苗載台10を後側に移動させない通常状態では、予備苗載台10の下段とコンベア91の始端部(低位部分91b)とが同じ高さとなり、前記下段からコンベア91への苗供給が容易に行える。尚、コンベア91は、その中途部に設けた上下方向の回動軸99回りに横方向へ回動する構成となっており、倉庫等への格納時には機体の左右内側へ移動させて収納することができる。
【0045】
また、図22に示すように、上下複数段の予備苗載台10を主回動リンク機構100により一体的に前後に移動できる構成とすると共に、別途設けた副回動リンク機構101により上下複数段の予備苗載台10の前後位置をそれぞれ異ならせて予備苗載台10を移動できる構成とすることができる。具体的には、基部となる下部が機体側に支持される主回動リンク機構100の上部に最上段の予備苗載台10aを設け、基部となる上部が前記最上段の予備苗載台10aに支持される副回動リンク機構101の適宜位置に最上段以外の
各予備苗載台10bを設けた構成としている。これにより、図22(b)に示すように、主回動リンク機構100により上下複数段の予備苗載台10を前後一方側に移動させた状態で、副回動リンク機構101により下段の予備苗載台10ほど主回動リンク機構100で移動させた側に突出するように予備苗載台10を移動できるので、主回動リンク機構100及び副回動リンク機構101の双方で予備苗載台10の移動量を大きくとることができることはもとより、その移動させた側から予備苗載台10への苗供給あるいは予備苗載台10からの苗取出を行う際に直上の予備苗載台10が邪魔になりにくく、苗供給あるいは苗取出の作業を容易に行える。尚、主回動リンク機構100及び副回動リンク機構101は、前後移動しても予備苗載台10の前後姿勢が変化しないように平行リンク機構とするのが望ましい。従来、回動リンク機構により上下複数段の予備苗載台の前後位置をそれぞれ異ならせて予備苗載台を移動できる構成としたものがあるが、前記回動リンク機構は基部となる下部が機体側に支持されその基部より上側の該回動リンク機構の適宜位置に上下複数段の各予備苗載台を設けた構成としていたので、回動リンク機構による予備苗載台の前後移動で上段の予備苗載台ほどその移動させた側に突出し、移動させた側から予備苗載台への苗供給あるいは予備苗載台10からの苗取出を行う際に直上の予備苗載台が邪魔になり、苗供給あるいは苗取出の作業がしにくい。
【0046】
また、図23に示すように、上下複数段の各予備苗載台10を前後一方側の軸103回りに上下回動可能に設け、前後他方側に各予備苗載台10を上側へ回動付勢するスプリング104を設けた構成とすることができる。予備苗載台10へ苗が載置されていないときは、図23(a)に示すように、前記スプリング104の付勢力により予備苗載台10が前後水平姿勢に維持される。一方、予備苗載台10へ苗が載置されているときは、図23(b)に示すように、苗の自重でスプリング104が撓んで予備苗載台10が前後に傾斜した姿勢となる。従って、予備苗載台10から苗を取り出す際には、上下複数段の予備苗載台10がそれぞれ前後に傾斜しているので、上段の予備苗載台10から順に苗を取り出すことにより上段のものから順に上側へ回動するため、スプリング104が配置された前後一側(スプリング104により上側へ回動付勢される前後一側)において苗が載置されていない予備苗載台10とその直下の苗が載置された予備苗載台10との間隔が広くなり、前記直下の予備苗載台10からの苗の取出を容易に行える。尚、予備苗載台10を苗箱ごと苗を載置する構成でなく苗箱から苗を取り出すための苗取り板105ごと苗を載置する構成とし、前記苗取り板105の一側に備える把持部105aが予備苗載台10のスプリング104が配置された側(スプリング104により上側へ回動付勢される側)に位置するよう予備苗載台10上へ苗取り板105を載置すれば、予備苗載台10からの苗取出時に直上の予備苗載台10との間隔が広くなる側から苗取り板105の把持部105aを把持して苗を苗取り板105ごと取り出すことができ、苗取出作業を容易に行える。また、上下複数段の予備苗載台10を上下方向の回動軸回りに回動できる構成とすれば、直上の予備苗載台10との間隔が広くなる側を前後何れの方向へも向けることができ、苗補給の作業性が向上する。
【0047】
図24は、苗箱90の一例を示すものであるが、この苗箱90は、その一側端部分90aを苗箱本体の樹脂素材で構成される樹脂製のヒンジ106により上下回動可能に構成すると共に、前記一側端部分90aの上面が本体部分の上面の延長面上に位置するように付勢する弾性体(ゴム板)107を該苗箱90の裏面側に設けている。これにより、苗箱90への床土詰めや播種等の作業を行うときには、前記一側端部分90aが無闇に回動せず良好に床土詰めや播種等の作業が行える。そして、苗箱90から苗を取り出すときには、前記一側端部分90aを弾性体107に抗して下側へ回動させることにより、端部から容易にマット苗を取り出すことができ、苗補給作業性の向上が図れる。
【0048】
図25に示すものは、上述の弾性体107に代えて、一側端部分90aの回動を阻止するフック108を苗箱90の側壁90bの上端部に一側端部分90aと本体部分とに架け渡して設けたものである。従って、苗箱90への床土詰めや播種等の作業を行うときには、前記フック108により一側端部分90aが回動しないように固定し、苗箱90から苗を取り出すときには、前記フック108を外して一側端部分90aを下側へ回動させ、端部から容易にマット苗を取り出すことができる。
【0049】
図26に示すものは、苗箱90の一側端の側壁90cを樹脂製のヒンジ106により回動させて開閉可能に設け、苗箱90の一側から例えば苗取り板を挿入する等してマット苗を容易に取り出せるように構成したものである。また、前記側壁90cには把持用の孔109を設けており、側壁90cを開いた状態で該孔109に手をかけて苗箱90を運搬することができ、苗補給作業性の向上が図れる。
【0050】
図27に示すものは、苗箱90の底板90dをスライドさせて取り外すことができるものであり、前記底板90dを取り外すことにより苗を下方へ抜いて取り出すことができるものである。これにより、従来のような苗取り板が不要になり、苗箱からの苗の取出が容易になる。底板90dを取り外した後の苗箱90の側壁90b,90cは、苗箱90の隅部をヒンジにして折りたたむことができる。従って、苗を取り出した後の空の苗箱90をコンパクトにすることができ、この空の苗箱の収納スペ−スの縮小化が可能になる。
【0051】
図28に示すものは、苗箱90の底板90dの長手方向に多数のヒンジ106を構成すると共に、該ヒンジ106に対応する側壁90bに切れ目110を入れ、苗箱90が上側へ凸になるようにアコ−ディオン状に屈曲するものである。これにより、苗箱90を屈曲させた状態で苗箱90の長手方向へ向けてマット苗を容易に取り出すことができる。尚、苗箱90への床土詰めや播種等の作業を行うときには、側壁90bの長手方向にわたって規制軸111を挿入することにより苗箱90の屈曲を阻止することができ、良好に床土詰めや播種等の作業が行える。
【0052】
また、図29に示すものは、上述と同様に苗箱90が屈曲するものであるが、上述の規制軸111に代えてレ−ル112を設け、苗箱90の長手方向の一端を前記レ−ル112上に移動しないように連結し、他端に車輪113を設け、該車輪113をレ−ル112上で移動させて苗箱90を上側へ屈曲させるものである。前記レ−ル112により、苗箱90が下側へ屈曲するようなことが確実に防止されるので、床土詰めや播種等の作業で苗箱90をコンベア上で安定して搬送させることができる。尚、苗箱90が屈曲せず真直となる通常状態で車輪113がレ−ル112上で移動しないように固定する固定具等を設けると、苗箱90が無闇に屈曲するようなことが防止され、床土詰めや播種等の作業をより良好に行える。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は苗植付装置に限定せず、苗載台から苗を取り出す苗取出行程において使用する苗取出装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】乗用型の田植機の側面図
【図2】粉粒体施用装置を省略した乗用型の田植機の平面図
【図3】苗植付装置を示す一部断面側面図
【図4】苗植付装置の展開断面図
【図5】図4のS1−S1断面図
【図6】図4のS2−S2断面図
【図7】苗掻き取り行程におけるギヤ列の状態と苗植付具の状態との関係を示す図
【図8】苗植付具下降行程におけるギヤ列の状態と苗植付具の状態との関係を示す図
【図9】苗植付行程におけるギヤ列の状態と苗植付具の状態との関係を示す図
【図10】苗植付具上昇行程におけるギヤ列の状態と苗植付具の状態との関係を示す図
【図11】苗植付具先端の静軌跡及び機体の移動を加味した苗植付具先端の動軌跡を示す図
【図12】苗植付具の姿勢を変更した状態を示す苗植付装置の一部の側面図
【図13】異なる連結プレートを示す側面図
【図14】異なる連結プレートを示す底面図
【図15】異なる連結プレートを示す側面図
【図16】異なる繰出ロッドの連結位置を示す側面図
【図17】苗載台を示す側面図((a)従動ローラの近くで屈曲させた状態、(b)駆動ローラの近くで屈曲させた状態)
【図18】コンベアを前側へ向けた状態を示す斜視図
【図19】コンベアを後側へ向けた状態を示す斜視図
【図20】コンベアを予備苗載台の後側に設けた状態を示す側面図
【図21】コンベアを予備苗載台の後側に設けた状態を示す平面図
【図22】前後移動する予備苗載台を示す側面図((a)通常状態、(b)移動状態)
【図23】前後傾斜する予備苗載台を示す側面図((a)通常状態、(b)傾斜状態)
【図24】苗箱を示す図((a)斜視図、(b)通常状態を示す側面図、(c)回動状態を示す側面図)
【図25】異なる苗箱を示す図((a)斜視図、(b)側面図)
【図26】側壁を開いた状態の苗箱を示す斜視図
【図27】底板が取り外しできる苗箱を示す斜視図
【図28】屈曲する苗箱を示す斜視図((a)屈曲状態、(b)通常状態)
【図29】異なる屈曲する苗箱を示す斜視図
【符号の説明】
【0055】
14…苗植付装置、21…回転体、24…回転中心線、25…最終軸、25a…第一最終軸、25b…第二最終軸、26…苗植付具、35…回転ギヤ、36…中間ギヤ、37…第一カウンタギヤ、38…第二カウンタギヤ、39…最終ギヤ、40…固定ギヤ、83…
角度変更用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向の回転中心線24回りに回転する回転体21に前記回転中心線24に対し偏心した左右方向の最終軸25を回転自在に設け、回転体21から左右に突出する最終軸25の突出部に苗植付具26を一体に取り付けるとともに、回転体21の回転に伴って該回転体21に対して最終軸25を回転させる最終軸回転伝達機構を設けた苗植付装置。
【請求項2】
最終軸25を一体回転する第一最終軸25aと該第一最終軸25aに外嵌する第二最終軸25bとに分割構成し、該第一最終軸25a及び第二最終軸25bの互いの回転方向における位相角度を変更設定できる角度変更機構を設け、第一最終軸25a及び第二最終軸25bのうちの一方の軸25aへ最終軸回転伝達機構により伝達され、他方の軸25bに苗植付具26を取り付けた構成とした請求項1に記載の苗植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−34191(P2006−34191A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220274(P2004−220274)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】