説明

苗植付装置

【課題】苗植付装置の苗植付具の先端部分が描く軌跡を容易に変更できるようにする。
【解決手段】植付伝動部フレーム21に回転可能に取り付けられた回転ケース30と、回転ケース30に回動可能に取り付けられた植付体27と、植付伝動部フレーム21に固定された1個以上の案内カム32とを備える。各植付体27は、植付体本体37、植付体本体37に取り付けられ苗マットから苗を取る苗取り爪40、および案内カム32に案内される1個以上の従動カム34を有し、回転ケース30が回転するにしたがって植付体27が回転し、植付体27の回転にしたがって従動カム34が案内カム32に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の苗移植機に設けられる苗植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの苗移植機の後方に配置された苗載せ台に積載されている苗マットから苗を取り圃場に植え付ける苗植付装置として、左右方向の植付駆動軸を回転中心にして回転するロータリケースの左右の回転三等分角の略120度間隔位置に苗取り爪と苗押出体を有した苗植付具を配置して、ロータリケースの回転中に苗植付具の先端部をロータリケースの回転外周へ突出させて、略楕円形状の植付軌跡線を描いて苗の分離、植付作動を行わせる技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
図26は、特許文献1における、乗用型田植機の苗植付装置の側面図を示し、図27は、その苗植付装置の内部左側面図を示し、図28は、その苗植付装置の内部右側面図を示している。なお、図26および図27では、向かって左側が乗用型田植機の前方を示しており、図28では、向かって右側が乗用型田植機の前方を示している。
【0004】
苗植付装置200は、2条ごとで1組であり、乗用型田植機の後方に備えられた植付伝動部ケース201の植付伝動部後端部に設けられる。
【0005】
植付伝動部ケース201の後端に固定支持体202が植付伝動部ケース201と一体に設けられ、固定支持体202の内側に回転体(ロータリケース)203が回転軸208を中心に回動自在に嵌合している。回転体203には、その回転軸(サンギア軸)208を中心とする円周上に互いに120度の位相で3本の最終軸207が回動自在に設けられ、それぞれの最終軸207の回転体203から突出する左右両端部に苗植付具204が一体に取り付けられている。
【0006】
回転体203の内部には、回転体203と一体回転する駆動ギア209が設けられている。この駆動ギア209を植付伝動部ケース201の後端部に設けた入力ギア210で減速回転させることにより、回転体203が矢印B方向に回転する。
【0007】
図27には、駆動ギア209と入力ギア210との噛み合い状態が表されている。駆動ギア209の歯数は入力ギア210の歯数の3倍であり、駆動ギア209は3箇所(図27における入力ギア210との噛み合い位置を基準として回転中心から0°、120°、240°の位置)が最大径となる不等径ギアであり、入力ギア210は、図27において駆動ギア209と噛み合っている1箇所(図27における駆動ギア209の噛み合い位置を基準として0°の位置)が最小径となる不等径ギアになっている。したがって、駆動ギア209が0°、120°、240°の位置で入力ギア210と噛み合うときに、駆動ギア209の回転速度が速くなり、駆動ギア209の回転速度は1/3周期で変化する。
【0008】
また、回転体203の内部には、最終軸207へ伝動するためのギア列が設けられている。
【0009】
入力ギア210が噛合する駆動ギア209の回転で、駆動ギア209と一体の回転体203が回転し、固定支持体202のケース内面に固定された内歯歯車218に噛合する回転ギア211が回転体203の回転に連動して回転体203のサンギア軸208を中心とする円軌道を移動しながら回転する。
【0010】
回転ギア211は第1偏心ギア213と共に回転体203の両側壁に端部が固定支持された支持軸212に遊嵌され、回転ギア211と第1偏心ギア213が一体回転する。
【0011】
第1偏心ギア213には第2偏心ギア214が噛合し、第2偏心ギア214は回転体203の両側壁に端部が回転自在に支持されたサンギア軸208に固定される不等速ギア215と噛合しているので、第2偏心ギア214の回転で不等速ギア215が回転すると、サンギア軸208に固定されているサンギア223を介して、サンギア223に噛合するカウンタギア216が、カウンタギア216に噛合する最終ギア217を駆動させる。
【0012】
最終ギア217はサンギア軸208を中心とする円周上に等間隔に3個設けられた最終軸207にそれぞれ個別に固定支持されている。なお、最終軸207も不等速ギア215と同様に非円形ギア(不等径ギア)である。
【0013】
回転体203が回転すると、回転体203の両側に3個ずつ設けられた苗植付具204が円軌道を移動する。そのとき、回転体203の回転に連動する回転ギア211の作動がギア列を介して最終軸207へ伝達され、苗植付具204の姿勢が変化する。これにより、苗植付具204は、苗取り爪205の先端が軌跡230を描くように作動する。
【0014】
さらに、回転体203の内部には、最終軸207に一体回転するように取り付けた制動カム219と、制動カム219の外周面に当接し、固定軸224に遊嵌する二股状の制動アーム220と、制動アーム220を制動カム219に押し付けるスプリング221と、サンギア軸208に設けられ、スプリング221の内部に係止する突起を有する留め具222とからなる3組の位相ずれ防止機構が設けられている。
【0015】
図26に示すように、各苗植付具204は、先端部が鋭利に形成された二股フォーク状の苗取り爪205と、苗取り爪205の下側で突出・後退作動をする苗押出体206とを備えている。
【0016】
そして、苗押出体206は、カムを用いたリンク機構により、最終軸207の回転運動に応じて前後動するように構成されており、回転体203の回転により所定の周期で前後動することができる。
【0017】
苗取り爪205は苗載せ台にある苗を挟持しながら掻き取り、保持しているので、苗押出体206の前後方向への回動運動で苗取り爪205に保持された苗が圃場に向けて押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−92881号公報
【特許文献2】特開2007−89481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記した従来の苗植付装置では、苗植付具先端の軌跡を容易に変更することはできなかった。
【0020】
図26などに示す苗植付具204の先端部分の軌跡230は、苗移植機が走行していないときの静軌跡を示しているが、苗移植機の走行速度によって、苗植付具の先端部分が描く静軌跡の適切な形状が異なる。
【0021】
したがって、苗植付具の先端部分が描く軌跡は、これらの条件に対応して適切な軌跡となるように調整するのが望ましいが、従来の苗植付装置は、複雑なギアの組み合わせ機構によって苗植付具の先端部分の軌跡を実現しているため、その軌跡を容易に変更することはできなかった。
【0022】
本発明は、このような従来の苗植付装置の課題を考慮し、苗植付具の先端部分が描く軌跡を容易に変更できる苗植付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
【0024】
第1の本発明は、
走行車体(10)の後方に配置された苗載せ台(22)に積載されている苗マットから苗を取り圃場に植え付ける苗植付装置であって、
植付伝動部フレーム(21)に回転可能に取り付けられた回転ケース(30)と、
前記回転ケース(30)に回動可能に取り付けられた植付体(27)と、
前記植付伝動部フレーム(21)に固定された1個以上の案内カム(32)を備え、
前記植付体(27)は、植付体本体(37)と、前記植付体本体(37)に取り付けられ前記苗マットから前記苗を取る苗取り爪(40)と、前記案内カム(32)に案内される1個以上の従動カム(34)を有し、
前記回転ケース(30)が回転するにしたがって前記植付体(27)が回転し、前記植付体(27)の回転にしたがって前記従動カム(34)が前記案内カム(32)に沿って移動する構成としたことを特徴とする苗植付装置である。
【0025】
また、第2の本発明は、
前記植付体(27)は、前記回転ケース(30)に回動自在に軸支された回動軸(35)を有し、
前記従動カム(34)は、従動カム本体(38)と前記従動カム本体(38)に取り付けられたカムローラ(39、71)を有し、
前記回動軸(35)の一部には前記植付体本体(37)が固定されるとともに他の部分には前記従動カム本体(38)が固定され、
前記案内カム(32)は、案内溝(33、70)を有し、
前記案内溝(33、70)によって、前記カムローラ(39、71)が案内される構成としたことを特徴とする第1の本発明の苗植付装置である。
【0026】
また、第3の本発明は、
前記従動カム本体(38)および前記カムローラ(39)で構成される前記従動カム(34)が複数個設けられており、各従動カム本体(38)は1個の従動カムプレート(380)で兼ねられており、前記各カムローラ(39、71)は前記1個の従動カムプレート(380)に取り付けられる構成としたことを特徴とする第2の本発明の苗植付装置である。
【0027】
また、第4の本発明は、
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は、前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主カムローラ(39)を前記補助カムローラ(71)よりも長く形成し、
前記主案内溝(33)を前記補助案内溝(70)よりも深く形成し、
前記主カムローラ(39)は常時前記主案内溝(33)によって案内される構成とし、
前記補助カムローラ(71)は前記補助案内溝(70)が前記主案内溝(33)と交差する位置では前記補助案内溝(70)に接触しない構成としたことを特徴とする第3の本発明の苗植付装置である。
【0028】
また、第5の本発明は、
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主案内溝(33)および前記補助案内溝(70)を同じ深さで構成し、
前記主カムローラ(39)は常時前記主案内溝(33)によって案内される構成としたことを特徴とする第3の本発明の苗植付装置である。
【0029】
また、第6の本発明は、
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主カムローラ(39)を常時前記主案内溝(33)によって案内される構成とし、
前記補助案内溝(70)は、少なくとも前記主カムローラ(39)の動作が不安定となり得る、または前記植付体本体(37)に負荷がかかり得る前記補助カムローラ(71)の位置に対応する位置に形成される構成としたことを特徴とする第3の本発明の苗植付装置である。
【0030】
また、第7の本発明は、
前記従動カム(129、130)を2個設ける構成とすると共に、前記回動軸(35)の両端にそれぞれ前記従動カム本体(38)を固定したことを特徴とする第2の本発明の苗植付装置である。
【0031】
また、第8の本発明は、
前記案内溝(87)の底部に長手方向に沿った凸部を形成し、
前記カムローラ(85)の先端(88)に該カムローラ(85)が前記凸部に沿って移動するための凹部を形成したことを特徴とする第2〜第7のいずれかの本発明の苗植付装置である。
【0032】
また、第9の本発明は、
前記案内溝(91)の底部に長手方向に沿った凹部を形成し、
前記従動カム(34)は、前記カムローラ(89)の先端部分に前記凹部に接触する回転自在の球形部材(92)と、前記球形部材(92)を前記凹部へ押し付ける方向に付勢するバネ部材(93)を有する構成としたことを特徴とする第2〜第7のいずれかの本発明の苗植付装置である。
【発明の効果】
【0033】
第1の本発明によって、回転しない1個以上の案内カム(32)に回転ケース(30)と共に回転する植付体(27)の回動軸(35)の一端に取り付けられた1個以上の従動カム(34)を接触させたことにより、植付体(27)は案内カム(32)に従う軌跡(50)を描いて動き、案内カム(32)にしたがった姿勢で保持されて移動し、苗載せ台(22)に載置された苗マットに植付体(27)を略直交方向から接触させて苗を確実に掻き取ることができるので、欠株が生じることが防止され、作業者が手作業で苗を圃場に植え付ける作業が省略されて、作業者の労力が軽減される。
【0034】
また、植付体(27)が保持した苗を圃場に植え付ける際、植付体(27)が土中に入り込む点と出る点が略同じ点となる軌跡とすることができるので、苗の植付位置の周囲に植付体(27)の掘り溝が形成されることを防止でき、植え付けた苗が掘り溝によって倒れてしまうことが無く、苗の生育が安定する。
【0035】
第2の本発明によって、案内カム(32)に形成した案内溝(33、70)に植付体(27)のカムローラ(39、71)を接触させることにより、植付体(27)の回転軌跡がずれることがなく、複数の植付体(27)を回転させても互いに干渉し合うことを防止できるので、苗の植付間隔が乱れたり植え付けられない部分が生じたりすることが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0036】
また、苗マットから苗を掻き取るタイミングや、苗を圃場に植え付けるタイミングを一定に保つことができるので、いっそう苗の植付間隔が乱れたり植え付けられない部分が生じたりすることが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0037】
そして、カムローラ(39、71)を案内溝(33、70)に接触させて植付体(27)の軌跡を決めていることにより、植付体(27)が振動により揺動することが防止されるので、植付精度がいっそう向上する。
【0038】
第3の本発明によって、複数の従動カム(34)の従動カム本体(38)を、1個の従動カムプレート(380)で構成できるので、苗植付装置(23)のコストダウンが図れるとともに小型化を図れる。
【0039】
第4の本発明によって、植付体(27)の移動軌跡を決める主カムローラ(39)を案内カム(32)に形成した主案内溝(33)に接触させ、植付体(27)の姿勢を安定させる補助カムローラ(71)を案内カム(32)に形成した補助案内溝(70)に接触させたことにより、植付体(27)は主案内溝(33)に従う移動軌跡を描いて動くと共に、補助案内溝(70)に従った姿勢で保持されて移動するので、苗載せ台(22)に載置された苗マットに植付体(27)を略直交方向から接触させて苗を確実に掻き取ることができ、欠株が生じることが防止され、作業者が手作業で苗を圃場に植え付ける作業が省略されて、作業者の労力が軽減される。
【0040】
そして、主カムローラ(39)の長さを補助カムローラ(71)よりも長く構成したことにより、主カムローラ(39)は主案内溝(33)に常時接触するので植付体(27)の移動軌跡が安定して苗の植付精度が向上する。
【0041】
また、補助カムローラ(71)は主案内溝(33)と補助案内溝(70)の交差位置では補助案内溝(70)に接触しない構成としたことにより、補助カムローラ(71)が交差位置を容易に通過することができるので、単純な構成で植付体(27)の適切な作業軌跡を設定することができる。
【0042】
第5の本発明によって、補助案内溝(70)と主案内溝(33)の交差位置の補助案内溝(70)の深さを、主案内溝(33)の深さと同じ深さとしたことにより、補助カムローラ(71)が交差位置を容易に通過することができるので、単純な構成で植付体(27)の適切な作業軌跡を設定することができる。
【0043】
第6の本発明によって、例えば、補助案内溝(70)と主案内溝(33)が交差する部分に、補助案内溝(70)を形成しないようにすることで、補助カムローラ(71)が交差位置を容易に通過することができるので、単純な構成で植付体(27)の適切な作業軌跡を設定することができる。
【0044】
また、補助案内溝(70)を形成する距離が短くなるため、苗植付装置(23)の構成が簡潔になるとともに、軽量化を図ることができる。
【0045】
第7の本発明によって、植付体(27)の左右両側に主カムローラ(131)と補助カムローラ(132)を設け、この主カムローラ(131)と補助カムローラ(132)を、植付体(27)の左右一方側に配置した回転しない案内カム(125)に形成した主案内溝(127)と左右他方側に配置した回転しない案内カム(126)に形成した補助案内溝(128)とに接触させる構成としたことにより、植付体(27)は主案内溝(127)に従う移動軌跡を描いて動くと共に、補助案内溝(128)に従った姿勢で保持されて移動するので、苗載せ台(22)に載置された苗マットに植付体(27)を略直交方向から接触させて苗を確実に掻き取ることができるので、欠株が生じることが防止され、作業者が手作業で苗を圃場に植え付ける作業が省略されて、作業者の労力が軽減される。
【0046】
また、植付体(27)が保持した苗を圃場に植え付ける際、植付体(27)が土中に入り込む点と出る点が略同じ点となる軌跡とすることができるので、苗の植付位置の周囲に植付体(27)の掘り溝が形成されることを防止でき、植え付けた苗が掘り溝によって倒れてしまうことが無く、苗の生育が安定する。
【0047】
そして、植付体(27)の左右両側に主案内溝(127)を形成した案内カム(125)と補助案内溝(128)を形成した案内カム(126)を設けたことにより、主案内溝(127)と補助案内溝(128)が交差することがなく、主カムローラ(131)と補助カムローラ(132)を同一部材で構成することができるので、苗植付装置(23)の構成が簡潔になるとともにコストダウンが図られる。
【0048】
第8の本発明によって、主案内溝(87)と補助案内溝(87)の表面に凸部を形成し、主カムローラ(85)と補助カムローラ(85)の端部(88)に、主案内溝(87)と補助案内溝(87)の表面に形成した凸部に沿う凹部を形成したことにより、主カムローラ(85)及び補助カムローラ(85)が主案内溝(87)及び補助案内溝(87)から浮き上がって植付体(27)の姿勢が乱れることを防止できるので、苗が圃場に適切な姿勢で植え付けられる為、植付精度が向上する。
【0049】
第9の本発明によって、主案内溝(91)と補助案内溝(91)の表面に凹部を形成し、主カムローラ(89)と補助カムローラ(89)の端部に、主案内溝(91)と補助案内溝(91)の表面に形成した凹部に入り込む凸体(92)をそれぞれ配置したことにより、主カムローラ(89)及び補助カムローラ(89)が主案内溝(91)及び補助案内溝(91)から浮き上がって植付体(27)の姿勢が乱れることを防止できるので、苗が圃場に適切な姿勢で植え付けられる為、植付精度が向上する。
【0050】
そして、主カムローラ(89)及び補助カムローラ(89)の端部と凸体(92)との間に、凸体(92)を下方に付勢するバネ部材(93)を設けたことにより、凸体(92)がしっかりと主案内溝(91)及び補助案内溝(91)に接触するため、植付体(27)の作業軌跡がいっそう安定し、植付精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1の乗用型田植機の左側面図
【図2】本発明の実施の形態1の乗用型田植機の平面図
【図3】本発明の実施の形態1の苗植付装置の水平断面図
【図4】本発明の実施の形態1の植付伝動部ケースの側面図
【図5】本発明の実施の形態1の、苗植付具を装着した回転ケース外フレームの斜視図
【図6】本発明の実施の形態1の、案内カムの平面図
【図7】(a)本発明の実施の形態1の、従動カムとの関係を示した案内カムの平面図、(b)本発明の実施の形態1の、従動カムの断面図
【図8】本発明の実施の形態1の、苗植付動作時の苗植付具先端の軌跡を説明する図
【図9】本発明の実施の形態1の、案内カムの部分拡大断面図
【図10】(a)〜(c)本発明の実施の形態1の、案内カムにおける主案内溝と補助案内溝の構成例を示す図
【図11】本発明の実施の形態1の、カムローラ先端部および案内溝の関係を示す断面図
【図12】本発明の実施の形態1の、他の構成のカムローラ先端部および案内溝の関係を示す断面図
【図13】(a)本発明の実施の形態1の、他の構成のカムローラ先端部および案内溝の関係を示す断面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成のカムローラ先端部および案内溝の関係を示す模式平面図
【図14】本発明の実施の形態1の、他の構成のカムローラ先端部および案内溝の関係を示す模式平面図
【図15】(a)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムの平面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムおよび従動カムの断面図
【図16】本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムと従動カムとの関係を示した案内カムの平面図
【図17】本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムと従動カムとの関係を示した断面図
【図18】本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムと従動カムとの関係を示した断面図
【図19】本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムと従動カムとの関係を示した断面図
【図20】(a)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムの平面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムの側面図
【図21】(a)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムの下面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムのS2−S2断面図、(c)本発明の実施の形態1の、他の構成の案内カムのS3−O−S3断面図
【図22】本発明の実施の形態1の、苗植付具の断面図
【図23】(a)本発明の実施の形態1の、苗植付具ケースを外した状態の苗植付具の側面図、(b)本発明の実施の形態1の、苗植付具ケースを外した状態の苗植付具の背面図
【図24】本発明の実施の形態1の、他の構成の押し出しカムを備えた苗植付装置の回転ケース部分の斜視図
【図25】(a)本発明の実施の形態1の、他の構成の押し出しカムを備えた苗植付装置の回転ケース部分の、前方から見た正面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成の押し出しカムを備えた苗植付装置の回転ケース部分の側面図、(c)本発明の実施の形態1の、他の構成の押し出しカムを備えた苗植付装置の回転ケース部分の、後方から見た背面図
【図26】従来の乗用型田植機の苗植付装置の側面図
【図27】従来の乗用型田植機の苗植付装置の内部左側面図
【図28】従来の乗用型田植機の苗植付装置の内部右側面図
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0053】
(実施の形態1)
図1および図2に、本発明の実施の形態1の苗植付装置を装備した乗用型田植機の左側面図および平面図を示す。
【0054】
この乗用型田植機は、エンジン11を搭載し、駆動回転する各左右一対の前輪12および後輪13を備えた走行車体10の後方に、昇降リンク装置14を介して6条植の苗植え付け部15が連結されている。
【0055】
また、走行車体10には、運転座席16、前輪12を操向する操縦ハンドル17、予備の苗を載せておく予備苗載台18が設けられている。また運転座席16にはエンジン動力を変速する変速装置19の変速操作をする変速レバー20が設けられている。
【0056】
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0057】
苗植え付け部15は、走行車体10から伝動入力される植付伝動部ケース21の上側に前部が上位となるように傾斜した苗載せ台22を設けるとともに、植付伝動部ケース21の植付伝動部の後端部に2条ごとで1組の苗植付装置23を設けている。
【0058】
フロート24を接地させた状態で機体を進行させると、苗載せ台22が左右に往復移動して台上のマット苗を苗載せ台22下端側の苗取り口25に一株ずつ順次供給し、それを苗植付装置23が分離して取り出し圃場に植付ける。
【0059】
また苗植え付け部15には機体両側に昇降自在に設けられ、圃場上に下降させて、その先端部で圃場上に機体がUターンして次回の機体走行方向を示す目印となる線引きを予めするためのマーカ26が設けられている。
【0060】
次に、本実施の形態1の苗植付装置23の構成について説明する。
【0061】
図3に、本実施の形態1の苗植付装置23の水平断面図を示す。
【0062】
回転ケース30は、植付伝動部ケース21の後端部の両側に、回転軸36によって支持される。植付伝動部ケース21の伝動機構によって回転軸36が回転すると、回転軸36と一体となって回転ケース30が回転する。
【0063】
本実施の形態1の回転ケース30は、植付伝動部ケース21側に配置される回転ケース内フレーム29と、植付伝動部ケース21に対して外側に配置される回転ケース外フレーム28が回転ケース接合ネジ31によって接合されている。
【0064】
回転ケース30の外側側面には、3つの苗植付具27が、回転軸36に対して等間隔となる位置で、回動軸35によって回転ケース外フレーム28に軸支されている。
【0065】
苗植付具27は、回動軸35の一端に植付具アーム37が固定され、回動軸35の他端に従動カム34が固定されており、植付具アーム37および従動カム34は、回動軸35と一体となって回動する。図3に示すように、従動カム34は回転ケース30の内部に配置され、植付具アーム37は回転ケース30の外部に配置される。
【0066】
また、植付伝動部ケース21に固定され、回転軸36周りに一周している主案内溝33および補助案内溝70を備えた案内カム32が、回転ケース30の内部に設けられている。
【0067】
案内カム32は従動カム34の一部が主案内溝33および補助案内溝70に嵌るように配置されており、主案内溝33および補助案内溝70によって案内される従動カム34の動きに応じて回動軸35が回転し、植付具アーム37が回動軸35と一体となって回転するようになっている。
【0068】
苗植付具27は、回転軸36の回転に伴って回転する回転ケース30の回転ケース外フレーム28に取り付けられているので、回転軸36の回転に伴って回転軸36の周りを回動する。一方、案内カム32は、植付伝動部ケース21に固定されており、回転軸36が回転しても回転しないので、回転軸36が回転すると、苗植付具27は、従動カム34が主案内溝33および補助案内溝70に案内されることによって回動軸35自身が回転しながら、回動軸35の中心が回転軸36を中心とした円軌道を描くように回動する。
【0069】
なお、苗植付具27が、本発明の植付体の一例にあたり、植付具アーム37が、本発明の植付体本体の一例にあたる。また、植付伝動部ケース21が、本発明の植付伝動部フレームの一例にあたる。
【0070】
図4に、回転ケース30を装着していない状態の植付伝動部ケース21の側面図を示す。
【0071】
伝動軸49が回転すると、伝動軸49と一体に回転する歯車46が回転し、チェーン45、歯車47およびチェーン44を介して、歯車48が回転する。そして、回転軸36が、歯車48と一体となって回転することにより、回転ケース30が回転する。
【0072】
図5に、本実施の形態1の、苗植付具27を装着した回転ケース外フレーム28の斜視図を示し、図6に、案内カム32の平面図を示す。なお、図6において、網掛けを付している部分は、溝が形成されていない平面部分を表している。
【0073】
従動カム34は、板状の支持体38と、板状の支持体38の、回動軸35から離れた位置に立設する主カムローラ39、および主カムローラ39とは別の位置に立設する補助カムローラ71で構成されている。主カムローラ39が、案内カム32の主案内溝33に嵌りながら主案内溝33に沿って移動していくとともに、補助カムローラ71が、補助案内溝70に嵌りながら補助案内溝70に沿って移動していく。主カムローラ39が主案内溝33によって案内されることにより回動軸35が回転し、植付具アーム37が回動軸35と一体となって回動する。
【0074】
なお、支持体38が、本発明の従動カム本体の一例にあたる。
【0075】
なお、本発明の1つの従動カムとは、1つの案内溝によって案内される1つのカムローラおよび、そのカムローラが立設する支持体の構成を言う。また、本発明の1つの案内カムとは、1つのカムローラを案内する1つの案内溝の構成を言う。
【0076】
本実施の形態1の従動カム34は、図5に示すように、主カムローラ39が立設する支持体38と、補助カムローラ71が立設する支持体38を、1個の従動カムプレート380が兼ねている。すなわち、本実施の形態1の従動カム34は、1個の従動カムプレート380が2個の従動カム本体を兼ねている、本発明の2つの従動カムの構成を示した一例にあたる。
【0077】
また、主案内溝33および補助案内溝70の2つの案内溝が形成された案内カム32が、本発明の主案内溝および補助案内溝を有する1枚のプレートで構成された2個の案内カムの一例にあたる。
【0078】
回転ケース外フレーム28は、回転軸支持孔42の部分で回転軸36に固定支持されることにより、回転軸36の回転に伴って、回転軸36と一体に回転する。
【0079】
案内カム32は、固定用孔43の部分で、植付伝動部ケース21に固定される。
【0080】
図7(a)は、本実施の形態1の、案内カム32の平面図上に従動カム34との関係を示した図であり、図7(b)は、回転ケース外フレーム28に軸支された状態の従動カム34の断面図である。
【0081】
図7(a)では、苗植付具27の形状および姿勢を、苗植付具27の先端部および回動軸35の中心を頂点とする破線で示した三角形で表している。
【0082】
回動軸35の一端に固定されている従動カム34は、回動軸35が回転ケース30の回転軸36を中心に回動する際に、主カムローラ39が主案内溝33によって案内され、補助カムローラ71が補助案内溝70によって案内されることにより、回動軸35を中心とする回動軸35の回転が制御される。
【0083】
図8に、苗植付動作時の苗植付具27の先端の軌跡を示す。
【0084】
回動軸35は、回転ケース外フレーム28に軸支されているので、回転ケース30の回転に伴って、回転軸36を中心とした円形の回動軸軌跡51を描くように回動する。
【0085】
図8に破線で示した苗植付具27は、停止時における3つの苗植付具27の位置および姿勢を示している。回転ケース30が回転すると、従動カム34が主案内溝33および補助案内溝70によって案内されることにより回動軸35も回動軸35を中心として回転するため、図8に示すように回動軸35の位置によって苗植付具27の姿勢も変化する。
【0086】
回転ケース30が回転すると、苗植付具27の回動軸35が回動軸軌跡51に沿って回動するとともに、従動カム34の主カムローラ39は主案内溝33に沿って移動するので主カムローラ軌跡72を描くように移動し、従動カム34の補助カムローラ71は補助案内溝70に沿って移動するので補助カムローラ軌跡73を描くように移動する。
【0087】
回動軸35の一端には植付具アーム37が固定されており、他端には従動カム34が固定されているので、回動軸35の中心と主カムローラ39とを結ぶ線と植付具アーム37がなす角度は、いずれの回動軸35の位置においても一定の角度である。同様に、回動軸35の中心と補助カムローラ71とを結ぶ線と植付具アーム37がなす角度も、いずれの回動軸35の位置においても別の一定の角度である。したがって、主案内溝33によって主カムローラ39を案内し、補助案内溝70によって補助カムローラ71を案内することにより、すなわち主案内溝33によって主カムローラ39の位置を規制し、補助案内溝70によって補助カムローラ71の位置を規制することにより、植付具アーム37の向きを変化させることができる。
【0088】
図8に示す回動軸軌跡51に対して主カムローラ軌跡72を描くような主案内溝33を配置し、補助カムローラ軌跡73を描くような補助案内溝70を配置することにより、回動軸35の中心位置が回転ケース30の回転に伴って回動するとともに、従動カム34が主案内溝33および補助案内溝70に案内されながら移動していくので、苗植付具27の先端が苗植付具先端軌跡50を描くように苗植付具27の姿勢を変化させることができる。
【0089】
主案内溝33および補助案内溝70の形状を調整することにより、図26で示した従来の苗植付具204の先端が描く軌跡230と同様の苗植付具先端軌跡50を描くようにすることができる。
【0090】
すなわち、従来は複雑なギアの組み合わせ機構によって実現していた苗植付具204の先端が描く軌跡230を、本実施の形態1では、案内カム32と従動カム34という簡易な組み合わせ構造で実現することができる。
【0091】
従来の複雑なギア構造に比べて簡易な構成のカム構造なので、従来よりもメンテナンス性に優れている。
【0092】
また、回転ケース30も、回転ケース結合ネジ31により回転ケース外フレーム28と回転ケース内フレーム29を結合している簡易な構造であるため、例えば圃場において、回転ケース外フレーム28を外して、主案内溝33の形状が異なる他の案内カム32に交換することも容易にでき、簡単に苗植付具先端軌跡50を変えることができる。
【0093】
本実施の形態1の苗植付具27は、先端が苗植付具先端軌跡50を描くように動作し、苗載せ台22にある苗を苗取り口25で苗取り爪40によって挟持しながら掻き取り、苗押出体41が回動軸35の回転運動に応じて前後動して、苗取り爪40に保持された苗を圃場に向けて押し出す。
【0094】
次に、本実施の形態1の従動カム34および案内カム32の構成について説明する。
【0095】
図9に、本実施の形態1の案内カムの部分拡大断面図を示す。
【0096】
図7(b)に示すように、主カムローラ39の方が補助カムローラ71よりも長い形状で構成されており、図9に示すように、主カムローラ39を案内する案内カム32の主案内溝33は、補助カムローラ71を案内する補助案内溝70よりも深い形状で構成されている。
【0097】
図10(a)〜(c)に、本実施の形態1の、案内カムにおける主案内溝と補助案内溝の構成例を示す。いずれも、補助案内溝が主案内溝と交差する部分の斜視図を示している。
【0098】
図10(a)は、図6に示した案内カム32の構成を示しており、案内カム32の平面部分に対して、補助案内溝70を形成するとともに、補助案内溝70よりも深い主案内溝33を形成している。補助案内溝70よりも主案内溝33の方が深いので、交差する部分では、主案内溝33によって補助案内溝70が途切れた構成となる。
【0099】
主案内溝33は、補助案内溝70よりも深く形成されているので、主カムローラ39は、途切れることなく常時主案内溝33によって案内される。補助カムローラ71は、補助案内溝70に沿って案内されるが、補助案内溝70は主案内溝33との交差部分では途切れるため、主案内溝33との交差部分では、補助カムローラ71は補助案内溝70との接触が一時的に途絶えて通過することになる。
【0100】
図10(b)は、主案内溝および補助案内溝の構成が異なる案内カムの構成を示している。案内カムの平面部分に対して溝を形成するのではなく、平面部分に対して主案内溝用壁79および補助案内溝用壁80を立設させて形成することにより、これらの案内溝用壁によって囲まれる主案内溝75および補助案内溝77を形成している。補助案内溝77を主案内溝75よりも浅くするために、補助案内溝77の底部は、案内カムの平面部分よりも高い位置となるように構成されている。
【0101】
図10(c)は、主案内溝および補助案内溝の構成がさらに異なる案内カムの構成を示している。案内カムの平面部分に対して溝を形成して主案内溝76を形成し、補助案内溝用壁81を形成することにより、補助案内溝用壁81によって囲まれる補助案内溝78を形成している。この場合、補助案内溝78の底部が、案内カムの平面部分となる。
【0102】
このように、案内カムの平面部分に対して、溝または壁を形成することにより、深さの異なる主案内溝および補助案内溝を形成させることができる。
【0103】
次に、本実施の形態1において、主カムローラ39が主案内溝33によって案内されるとともに、補助カムローラ71が補助案内溝70によって案内される構成とした理由について説明する。
【0104】
苗植付具27の先端に描かせる苗植付具先端軌跡50の形状によって、回動軸35が回転軸36の周りを一周する際に、回転軸36を中心とする円周方向についての、回動軸35の中心位置に対する主カムローラ39の中心位置の関係が、後行する状態と先行する状態が入れ替わる場合がある。
【0105】
補助カムローラ71を設けずに、主カムローラ39が主案内溝33によって案内されるのみの構成とした場合には、回動軸35の中心位置に対する主カムローラ39の中心位置の関係が、後行する状態から先行する状態に入れ替わる際または先行する状態から後行する状態に入れ替わる際に主カムローラ39の動作が不安定になり、回動軸35を中心とした回動軸35自身の回転方向が反転する可能性がある。
【0106】
本実施の形態1では、主カムローラ39とは別に、補助案内溝70に案内される補助カムローラ71を設けているので、主カムローラ39の動作が不安定になる状態のときには補助カムローラ71が補助案内溝70によって案内される構成としているので、回動軸35を中心とした回動軸35自身の回転方向を確実に制御することができる。
【0107】
なお、支持体38に主カムローラ39および補助カムローラ71を配置する位置は、回動軸35の中心位置、主カムローラ39の中心位置、および補助カムローラ71の中心位置が一直線上とならないように配置する。
【0108】
苗植付具27の先端には、苗取り口25から苗を取る際に大きな抵抗がかかるため、このときに苗植付具27がブレ易くなる。
【0109】
本実施の形態1の苗植付具27は、主カムローラ39および補助カムローラ71の2本のカムローラで案内され苗植付具27の姿勢が制御されるので、このように大きな負荷がかかる苗取り時の位置でも、苗植付具27の姿勢をガタつきなく安定して制御することができる。また、苗を植え付ける苗押し出し時においても、苗植え付け姿勢を安定させることができる。
【0110】
なお、上記した実施の形態では、主案内溝33を全周に亘って設け、補助案内溝70も全周に亘って設けることとしたが、補助案内溝70については、全周に亘って設けるのではなく、主カムローラ39の動作が不安定となる位置や、苗植付具27に大きな負荷がかかる位置などにのみ設ける構成としてもよい。
【0111】
また、主カムローラ39の動作が不安定となる位置や、苗植付具27に大きな負荷がかかる位置などにおいて、主カムローラ39が通過する部分の主案内溝33の壁部分や、補助カムローラ71が通過する部分の補助案内溝70の壁部分に、主カムローラ39や補助カムローラ71を両側の溝壁によって挟み込むように付勢する板バネ部材を取り付けてもよい。このような構成とすることにより、苗植付具27の姿勢をよりガタつきなく安定に制御することができる。
【0112】
主案内溝33についても全周に亘って設けるのではなく、例えば苗植付具27に大きな負荷がかからないような位置では主案内溝33を設けずに、その位置では補助カムローラ71のみが補助案内溝70によって案内されるような構成としてもよい。回動軸35のどの位置においても、少なくとも主カムローラ39および補助カムローラ71のいずれかが案内されるように主案内溝33および補助案内溝70が形成されていればよい。
【0113】
また、上記した実施の形態では、主カムローラ39を補助カムローラ71よりも長い形状とし、主案内溝33を補助案内溝70よりも深い形状とした構成で説明したが、主カムローラ39を補助カムローラ71と同じ長さとし、主案内溝33を補助案内溝70と同じ深さとした構成としてもよい。
【0114】
また、上記した本実施の形態1では、1つの回転ケース30に3つの苗植付具27を備える構成を用いて説明したが、1つの回転ケースに対して2つの苗植付具を備える構成としてもよいし、4つ以上の苗植付具を備える構成としてもよい。
【0115】
次に、本実施の形態1のカムローラおよび案内溝の構成について説明する。
【0116】
上記した実施の形態では、図5および図7(b)などに示すように、主カムローラ39および補助カムローラ71は、円柱状の形状であり、それぞれ、支持体38に対して円柱状の中心を軸として自在に回転できるようになっている。また、図9に示すように、主案内溝33および補助案内溝70は、それぞれ、円柱状の主カムローラ39および補助カムローラ71に対応する形状をしている。
【0117】
カムローラおよび案内溝の構成は、次のような構成としてもよい。
【0118】
図11に、他の構成の主カムローラの先端部および主案内溝の構成を示す。図11は、図6におけるS1−S1断面に相当する断面部分を示している。
【0119】
案内カム86の主案内溝87の底部分には、図11に示すように、全周に亘って長手方向に、断面がカマボコ状の凸部が形成されている。
【0120】
このときに使用する主カムローラ85は、支持体38に対して自在に回転可能となっており、その先端部88は、主案内溝87の底部分のカマボコ状に対応する逆カマボコ状の凹部が形成されている。
【0121】
このような構成とすることにより、主カムローラ85の円柱状の周囲部分が主案内溝87の壁部分に沿って移動するとともに、主カムローラの先端部88の凹部が主案内溝87の底部分の凸部に沿って移動するので、所望の主カムローラ軌跡を正確に描かせるように主カムローラ85を移動させることができる。したがって、苗植付具27の先端が所望の苗植付具先端軌跡50を正確に描くように、苗植付具27の動作を制御することができる。
【0122】
図12に、さらに他の構成の主カムローラの先端部および主案内溝の構成を示す。図12は、図6におけるS1−S1断面に相当する断面部分を示している。
【0123】
案内カム90の主案内溝91の底部分には、図12に示すように、全周に亘って長手方向に、断面が円弧状の凹部が形成されている。
【0124】
このときに使用する主カムローラ89は、その先端部には、ボールペンのペン先のような、回転自在のスチール製の球形部材92が設けられており、押し出しスプリング93によって付勢されている。
【0125】
なお、押し出しスプリング93が、本発明のバネ部材の一例にあたる。
【0126】
このような構成とすることにより、主カムローラ89の円柱状の周囲部分が主案内溝91の壁部分に沿って移動するとともに、主カムローラの先端部に設けられている球形部材92が主案内溝91の底部分の凹部に沿って回転しながら移動するので、所望の主カムローラ軌跡を正確に描かせるように主カムローラ89を移動させることができる。したがって、苗植付具27の先端が所望の苗植付具先端軌跡50を正確に描くように、苗植付具27の動作を制御することができる。
【0127】
図13(a)に、さらに他の構成の主カムローラの先端部および主案内溝の構成を示す。図13(a)は、図6におけるS1−S1断面に相当する断面部分を示している。また、図13(b)は、この構成のカムローラの先端部および案内溝の関係を示す模式平面図を示している。
【0128】
案内カム95の主案内溝96は、図13(a)に示すように、全周に亘って、両壁部分が開口側に向かって広がるように傾斜した断面形状をしている。
【0129】
このときに使用する主カムローラ94は、その先端部に、押し出しスプリング98によって連結されるカムローラ先端部材99が取り付けられている。そして、主カムローラ94の先端部と、カムローラ先端部材99の間には、複数のスラストベアリング97が設けられており、主カムローラ94に対してカムローラ先端部材99が滑らかに回転できる構成となっている。
【0130】
カムローラ先端部材99は、周囲部分が、主案内溝96の傾斜した両壁部分に対応するように傾斜した形状をしている。カムローラ先端部材99は、押し出しスプリング98によって連結されているので、主案内溝96の底部側へ付勢され、カムローラ先端部材99の周囲部分が、主案内溝96の両壁の接触部100と示した部分に接触する。
【0131】
このような構成とすることにより、カムローラ先端部材99の周囲部分が、主案内溝96の両壁に接触しながら、主案内溝96に沿って移動するので、所望の主カムローラ軌跡を正確に描かせるように主カムローラ94を移動させることができる。したがって、苗植付具27の先端が所望の苗植付具先端軌跡50を正確に描くように、苗植付具27の動作を制御することができる。
【0132】
図14は、さらに他の構成の主カムローラの先端部の構成を示す模式平面図である。
【0133】
図14に示す案内カムは、上記した案内カム32であり、その主案内溝33は、図9に示すような断面形状をしている。
【0134】
主カムローラ101は、主カムローラ39と同様の円柱状であり、その周囲部分に2つの板バネ104が取り付けられている。板バネ104は、主案内溝33の両側の主案内溝壁105へ付勢するように取り付けられている。
【0135】
このような構成とすることにより、主カムローラ101が主案内溝33に沿って移動する際に、2つの板バネ104が常時両側の主案内溝壁105へ付勢しているので、主カムローラ101を案内する際のガタつきを防止でき、苗植付具27の動作をガタつきなく制御することができる。
【0136】
なお、図11〜図14で説明したカムローラおよび案内溝の構成は、主カムローラおよび主案内溝について説明したが、補助カムローラおよび補助案内溝についても同様の構成を適用できる。
【0137】
次に、本実施の形態1の、他の構成の従動カムおよび案内溝の構成について説明する。
【0138】
図15(a)は、本実施の形態1の、他の構成の案内カムの平面図を示し、図15(b)は、その構成の案内カムおよび従動カムの断面図を示している。
【0139】
図7(b)に示す従動カム34では、主カムローラ39と補助カムローラ71を支持体の同じ面に立設させたのに対し、図15(b)に示す従動カム113は、主カムローラ114を立設させた支持体の反対側の面に補助カムローラ115を立設させている。
【0140】
そして、案内カム110は、主カムローラ114を案内するための主案内溝111が形成されているとともに、回動軸35が移動する回動軸軌跡51よりも外側まで延伸し、従動カム113の反対側へ回り込むような形状をしており、その端部に、補助カムローラ115を案内するための補助案内溝112が形成されている。
【0141】
図16に、案内カム110の平面図上に、主カムローラ114と補助カムローラ115の位置関係を示す。図16には、2箇所の回動軸35の位置における、主カムローラ114および補助カムローラ115の位置を示している。
【0142】
従動カム113の外側から回り込んで補助案内溝112を形成した構成の案内カム110の場合、補助案内溝112は、回動軸35が通る円周領域より外側にしか配置できない。主カムローラ114の中心位置−回動軸35の中心位置−補助カムローラ115の中心位置、によって形成される角度を調整することにより、図16に示すように、補助カムローラ115の通る軌跡を、回動軸35が描く円周の軌跡よりも常に外側になるように形成させることができる。
【0143】
このような構成とすることにより、主案内溝111を補助案内溝112に交差させずに形成でき、また補助案内溝112を全周に亘って形成できるので、主カムローラ114および補助カムローラ115のいずれも常時主案内溝111および補助案内溝112に沿って移動できるため、回動軸35の中心周りの回動軸35自身の回転をより正確に制御できる。
【0144】
なお、補助カムローラ115の通る軌跡を、回動軸35が描く円周の軌跡よりも常に外側になるように形成させるためには、回動軸35および主カムローラ114間の距離と、回動軸35および補助カムローラ115間の距離とを調整することでも実現できるが、苗植付装置23を小型化するためには、図16に示すように、これらの距離を等しくしたまま、主カムローラ114の中心位置−回動軸35の中心位置−補助カムローラ115の中心位置、によって形成される角度を調整して実現するのが望ましい。
【0145】
図17は、図15(b)に示す従動カム113を用いる場合の、他の構成の案内カム106の断面図を示している。
【0146】
案内カム106には、図15(b)に示す案内カム110の主案内溝111の代わりに、回転軸36の位置を基準として主案内溝111の外側の壁の位置に主案内壁107が形成されており、補助案内溝112の代わりに、補助案内溝112の内側の壁の位置に補助案内壁108が形成されている。
【0147】
回動軸35が、回転軸36の周りを回動するのに伴い、主カムローラ114は主案内壁107に沿って移動し、補助カムローラ115は補助案内壁108に沿って移動する。
【0148】
このような構成とすることにより、主カムローラ114および補助カムローラ115に、図15に示す案内カム110を用いる場合と同様の軌跡を描かせることができる。
【0149】
主カムローラ114および補助カムローラ115を挟み込むように、主案内壁107および補助案内壁108の公差をプラス寄りに設定して案内カム110を構成することにより、苗植付具27のガタつきを防止することができる。
【0150】
図18は、本実施の形態1の、さらに他の構成の案内カムおよび従動カムの断面図を示している。
【0151】
図18に示す従動カム116は、図15(b)に示す従動カム113と同様に、補助カムローラ118が、主カムローラ117が立設している支持体の反対側の面に立設している構成であるが、主カムローラ117の中心位置−回動軸35の中心位置−補助カムローラ118の中心位置、によって形成される角度が従動カム113とは異なっており、補助カムローラ118が、円周状の回動軸軌跡51の内側および外側を通る軌跡を描く構成である。
【0152】
したがって、この場合には、図15(a)のように、全周に亘って補助案内溝を形成させることができない。
【0153】
図18に示す構成では、第1案内カム120および第2案内カム121の2つの案内カムを備えている。
【0154】
第1案内カム120は、主カムローラ117を案内するための主案内溝122が形成されているとともに、回動軸35が移動する回動軸軌跡51よりも外側まで延伸し、従動カム116の反対側へ回り込むような形状をしており、その端部に、補助カムローラ118を案内するための第1補助案内溝123が形成されている。第1補助案内溝123は、回動軸軌跡51よりも外側の部分にのみ形成されている。
【0155】
第2案内カム121は、補助カムローラ118を案内するための第2補助案内溝124が形成されている。第2補助案内溝124は、回動軸軌跡51よりも内側の部分にのみ形成されている。
【0156】
回動軸軌跡51上では、補助カムローラ118の案内は途切れるが、補助カムローラ118は、回動軸軌跡51の外側では第1補助案内溝123によって案内され、回動軸軌跡51の内側では第2補助案内溝124によって案内される。
【0157】
このような構成とすることにより、補助カムローラ118に、回動軸軌跡51と交差する軌跡を描かせることができる。
【0158】
図19は、本実施の形態1の、さらに他の構成の案内カムおよび従動カムの断面図を示している。
【0159】
図19に示す構成では、第1従動カム129および第2従動カム130の2つの従動カムが設けられており、それぞれの従動カム129、130を案内する第1案内カム125および第2案内カム126の2つの案内カムが設けられている。
【0160】
回動軸35の一端に第1従動カム129が固定されており、回動軸35の他端に第2従動カム130が固定されている。
【0161】
なお、第1従動カム129および第2従動カム130が、本発明の、回動軸の両端にそれぞれ従動カム本体が固定された2つの従動カムの一例にあたる。
【0162】
図19では図示を省略しているが、第1従動カム129と第2従動カム130の間の回動軸35の部分に、植付具アーム37が固定されている。したがって、第1従動カム129が回転ケース30の内側に配置されるのに対し、第2従動カム130は、回転ケース30の外側に配置されている。
【0163】
第1従動カム129には、支持体に主カムローラ131が立設しており、第2従動カム130には、支持体に補助カムローラ132が立設している。
【0164】
回転ケース30の内側に配置される第1案内カム125には、第1従動カム129の主カムローラ131を案内するための主案内溝127が形成されており、回転ケース30の外側に配置され、植付伝動部ケース21に固定された第2案内カム126には、第2従動カム130の補助カムローラ132を案内するための補助案内溝128が形成されている。
【0165】
回転ケース30の回転によって回動軸35が回転軸36を中心に回動するのに伴い、主カムローラ131が主案内溝127に案内されて移動するとともに、補助カムローラ132が補助案内溝128に案内されて移動することにより、回動軸35を中心とした回動軸35自身の回転が制御され、苗植付具27の動作が制御される。
【0166】
このような構成とすることにより、主案内溝127を補助案内溝128に交差させずに形成でき、また補助案内溝128を全周に亘って形成できるので、主カムローラ131および補助カムローラ132のいずれも常時主案内溝127および補助案内溝128に沿って移動できるため、回動軸35の中心周りの回動軸35自身の回転をより正確に制御できる。
【0167】
図20(a)は、本実施の形態1の、他の構成の案内カムの平面図を示し、図20(b)は、その側面図を示している。
【0168】
図21(a)は、図20(a)に示す案内カム140の下面図を示し、図21(b)および(c)は、それぞれ、図20(a)に示す案内カム140のS2−S2断面およびS3−O−S3断面を示している。
【0169】
この案内カム140を用いる場合、図5および図7(b)に示した従動カム34を用いる。
【0170】
図20(a)に示すように、案内カム140には、従動カム34の主カムローラ39を案内するための主案内溝141が全周に亘って形成されている。案内カム140には、補助カムローラ115を案内するための補助案内溝は形成されておらず、その代わりに、4つの板バネ142が配置されている。板バネ142は、溶接などによる板バネ留め部143によって案内カム140に固定されており、ピンが立設された板バネ押さえ部144では、板バネ142が規制されながら変動できるようになっている。
【0171】
回転ケース30の回転によって回動軸35が回転軸36を中心に回動するのに伴い、主カムローラ39が主案内溝141に案内されて移動するとともに、補助カムローラ71は、板バネ142によって規制されながら板バネ142の間を移動することにより、回動軸35を中心とした回動軸35自身の回転が制御され、苗植付具27の動作が制御される。
【0172】
この場合には、補助カムローラ71は、板バネ142によって補助カムローラ軌跡145を描くように案内される。
【0173】
次に、本実施の形態1の苗植付具27の苗押し出し機構について説明する。
【0174】
図22は、本実施の形態1の苗植付具27の断面図を示している。
【0175】
図23(a)は、苗植付具ケース150を外した状態の苗植付具27の側面図を示しており、図23(b)は、田植機の後方から見た苗植付具27の背面図を示している。
【0176】
苗植付具27は、先端部が鋭利に形成された二股フォーク状の苗取り爪40と、苗取り爪40の下側で突出・後退作動をする苗押出体41が取り付けられている。
【0177】
押し出しアーム軸153が、回動軸35に固定された植付具アーム37に固定されており、押し出しアーム軸153を支点として自在に回動できる押し出しアーム151が設けられている。押し出しアーム151の一端には、苗押出体41が連結されており、押し出しアーム軸153を支点とした押し出しアーム151の回動動作に応じて、苗押出体41が前後に動作するように構成されている。
【0178】
苗押出体41の後端には、苗押出体41を前へ押し出すように付勢する押し出しスプリング155が設けられている。
【0179】
一方、図23(b)に示すように、回転ケース30に対して回動自在な回動軸35を取り囲むようにリング状の押し出しカム154が回転ケース30に固定されている。図22に示すように、押し出しカム154の周囲部分には、段差のあるストッパ部156が形成されている。
【0180】
押し出しアーム151の、苗押出体41とは反対側の先端である押し出しアーム規制部152が、押し出しカム154の周囲部分に接触するように配置されている。
【0181】
押し出しカム154は回転ケース30に固定されているので、図8に示すように、回動軸35が回転軸36を中心として左回りに一回転すると、その間に、押し出しカム154は、苗植付具27に対して相対的に左回りに一回転することになる。
【0182】
そして、苗植付具27が苗植え付けの位置にきたときに、押し出しアーム規制部152が、押し出しカム154のストッパ部156の部分を通過するように構成されている。
【0183】
苗植え付けの位置に至るまでは、押し出しアーム規制部152が接している押し出しカム154の周囲部分の半径が徐々に大きくなっていくので、押し出しアーム151に連結された苗押出体41は徐々に後退していき、押し出しスプリング155が押し込まれていく。
【0184】
そして、苗植付具27が苗植え付けの位置に達したときに、押し出しアーム規制部152がストッパ部156を通過することにより、苗押出体41を後退させていた力が開放され、押し出しスプリング155によって苗押出体41が前方に勢いよく押し出され、苗が圃場に植え付けられる。
【0185】
図24に、本実施の形態1の他の構成の苗植付装置の斜視図を示す。
【0186】
図25(b)は、図24に示す苗植付装置の側面図を示し、図25(a)および図25(c)は、それぞれ、この苗植付装置の、田植機の前方から見た正面図および後方から見た背面図を示している。
【0187】
図24に示す苗植付装置は、図1および図3などに示す苗植付装置23と同様に、回転軸161を中心に回転する回転ケース160の側面に、3つの回動軸163が回転自在に軸支され、それぞれの回動軸163に苗植付具162が植付具アーム166によって固定されている。
【0188】
押し出しカム165が、植付伝動部ケースに固定されている。したがって、押し出しカム165は、回転ケース160が回転する際に、回転ケース160とともには回転しない。
【0189】
一方、苗植付具162の本体の外側に配置されているカムフォロアアーム164が、苗植付具162の苗押出体に連結している押し出しアームに連結されている。したがって、カムフォロアアーム164の動きに連動して、苗植付具162の苗押出体が前後に動作する。
【0190】
押し出しカム165は、回転ケース160の回転に伴って苗植付具162が回動する際に、カムフォロアアーム164の先端が接触しながら沿っていくように配置されている。
【0191】
また、押し出しカム165は、図25(b)に示すように、ストッパ部167が形成されており、回動軸163との間隔が、ストッパ部167に向かって徐々に狭くなっていく形状をしている。
【0192】
図25(b)において、回転ケース160が左回転すると、先端部が押し出しカム165に接触したカムフォロアアーム164は、ストッパ部167に向かうにしたがって、回動軸163に対して右回りの向きの力が徐々に加わっていく。そして、カムフォロアアーム164の先端がストッパ部167を通過したときに、その右回りの向きの力が開放されることにより、苗植付具162の苗押出体が勢いよく前方に押し出される。
【0193】
以上に説明したように、本実施の形態1の苗植付装置は、案内溝の形状を変化させるだけで苗植付具の先端部分が描く軌跡を容易に変更することができる。
【0194】
また、従来の複雑なギアの組み合わせによる構成ではなく、簡易な構造なので、メンテナンス性に優れ、また案内カムを交換するだけで、苗植付具の先端部分が描く軌跡を容易に変更することができる。
【0195】
また、簡易な構造であるため、部品点数も少なく、従来よりも低コストで実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明にかかる苗植付装置は、苗植付具の先端部分が描く軌跡を容易に変更できるので、苗植付装置を備えた乗用型田植機等の苗移植機など、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0197】
10 走行車体
11 エンジン
12 前輪
13 後輪
14 昇降リンク装置
15 苗植え付け部
16 運転座席
17 操縦ハンドル
18 予備苗載台
19 変速装置
20 変速レバー
21 植付伝動部ケース
22 苗載せ台
23 苗植付装置
24 フロート
25 苗取り口
26 マーカ
27 苗植付具
28 回転ケース外フレーム
29 回転ケース内フレーム
30 回転ケース
31 回転ケース接合ネジ
32 案内カム
33 主案内溝
34 従動カム
35 回動軸
36 回転軸
37 植付具アーム
38 支持体
39 主カムローラ
40 苗取り爪
41 苗押出体
42 回転軸支持孔
43 固定用孔
44、45 チェーン
46、47、48 歯車
49 伝動軸
50 苗植付具先端軌跡
51 回動軸軌跡
70 補助案内溝
71 補助カムローラ
72 主カムローラ軌跡
73 補助カムローラ軌跡
75 主案内溝
76 主案内溝
77 補助案内溝
78 補助案内溝
79 主案内溝用壁
80 補助案内溝用壁
81 補助案内溝用壁
85 主カムローラ
86 案内カム
87 主案内溝
88 主カムローラの先端部
89 主カムローラ
90 案内カム
91 主案内溝
92 球形部材
93 押し出しスプリング
94 主カムローラ
95 案内カム
96 主案内溝
97 スラストベアリング
98 押し出しスプリング
99 カムローラ先端部材
100 接触部
101 主カムローラ
104 板バネ
105 主案内溝壁
106 案内カム
107 主案内壁
108 補助案内壁
110 案内カム
111 主案内溝
112 補助案内溝
113 従動カム
114 主カムローラ
115 補助カムローラ
116 従動カム
117 主カムローラ
118 補助カムローラ
120 第1案内カム
121 第2案内カム
122 主案内溝
123 第1補助案内溝
124 第2補助案内溝
125 第1案内カム
126 第2案内カム
127 主案内溝
128 補助案内溝
129 第1従動カム
130 第2従動カム
131 主カムローラ
132 補助カムローラ
140 案内カム
141 主案内溝
142 板バネ
143 板バネ留め部
144 板バネ押さえ部
145 補助カムローラ軌跡
150 苗植付具ケース
151 押し出しアーム
152 押し出しアーム規制部
153 押し出しアーム軸
154 押し出しカム
155 押し出しスプリング
156 ストッパ部
160 回転ケース
161 回転軸
162 苗植付具
163 回動軸
164 カムフォロアアーム
165 押し出しカム
166 植付具アーム
167 ストッパ部
380 従動カムプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(10)の後方に配置された苗載せ台(22)に積載されている苗マットから苗を取り圃場に植え付ける苗植付装置であって、
植付伝動部フレーム(21)に回転可能に取り付けられた回転ケース(30)と、
前記回転ケース(30)に回動可能に取り付けられた植付体(27)と、
前記植付伝動部フレーム(21)に固定された1個以上の案内カム(32)を備え、
前記植付体(27)は、植付体本体(37)と、前記植付体本体(37)に取り付けられ前記苗マットから前記苗を取る苗取り爪(40)と、前記案内カム(32)に案内される1個以上の従動カム(34)を有し、
前記回転ケース(30)が回転するにしたがって前記植付体(27)が回転し、前記植付体(27)の回転にしたがって前記従動カム(34)が前記案内カム(32)に沿って移動する構成としたことを特徴とする苗植付装置。
【請求項2】
前記植付体(27)は、前記回転ケース(30)に回動自在に軸支された回動軸(35)を有し、
前記従動カム(34)は、従動カム本体(38)と前記従動カム本体(38)に取り付けられたカムローラ(39、71)を有し、
前記回動軸(35)の一部には前記植付体本体(37)が固定されるとともに他の部分には前記従動カム本体(38)が固定され、
前記案内カム(32)は、案内溝(33、70)を有し、
前記案内溝(33、70)によって、前記カムローラ(39、71)が案内される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の苗植付装置。
【請求項3】
前記従動カム本体(38)および前記カムローラ(39)で構成される前記従動カム(34)が複数個設けられており、各従動カム本体(38)は1個の従動カムプレート(380)で兼ねられており、前記各カムローラ(39、71)は前記1個の従動カムプレート(380)に取り付けられる構成としたことを特徴とする請求項2に記載の苗植付装置。
【請求項4】
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は、前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主カムローラ(39)を前記補助カムローラ(71)よりも長く形成し、
前記主案内溝(33)を前記補助案内溝(70)よりも深く形成し、
前記主カムローラ(39)は常時前記主案内溝(33)によって案内される構成とし、
前記補助カムローラ(71)は前記補助案内溝(70)が前記主案内溝(33)と交差する位置では前記補助案内溝(70)に接触しない構成としたことを特徴とする請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項5】
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主案内溝(33)および前記補助案内溝(70)を同じ深さで構成し、
前記主カムローラ(39)は常時前記主案内溝(33)によって案内される構成としたことを特徴とする請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項6】
前記案内カム(32)および前記従動カム(34)をそれぞれ2個設け、
前記カムローラ(39、71)は主カムローラ(39)および補助カムローラ(71)であり、前記従動カムプレート(38)の同一面側に取り付けられており、
前記2個の案内カム(32)は前記案内溝(33、70)として、前記主カムローラ(39)および前記補助カムローラ(71)のそれぞれに対応する主案内溝(33)および補助案内溝(70)を有する1枚のプレートで構成され、
前記主カムローラ(39)を常時前記主案内溝(33)によって案内される構成とし、
前記補助案内溝(70)は、少なくとも前記主カムローラ(39)の動作が不安定となり得る、または前記植付体本体(37)に負荷がかかり得る前記補助カムローラ(71)の位置に対応する位置に形成される構成としたことを特徴とする請求項3に記載の苗植付装置。
【請求項7】
前記従動カム(129、130)を2個設ける構成とすると共に、前記回動軸(35)の両端にそれぞれ前記従動カム本体(38)を固定したことを特徴とする請求項2に記載の苗植付装置。
【請求項8】
前記案内溝(87)の底部に長手方向に沿った凸部を形成し、
前記カムローラ(85)の先端(88)に該カムローラ(85)が前記凸部に沿って移動するための凹部を形成したことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の苗植付装置。
【請求項9】
前記案内溝(91)の底部に長手方向に沿った凹部を形成し、
前記従動カム(34)は、前記カムローラ(89)の先端部分に前記凹部に接触する回転自在の球形部材(92)と、前記球形部材(92)を前記凹部へ押し付ける方向に付勢するバネ部材(93)を有する構成としたことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の苗植付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate