苗植機の苗タンク移動装置
【課題】 苗植機の苗タンクを左右方向へ往復移動するためのリードカム軸の外周を覆う拡縮ブーツにあっては、ブーツ室内への吸気、排気作用によって、泥水の吸入、排出が起り易く、この吸排する泥水にはブーツ室内の潤滑油等をも混入させて、田面に潤滑油を排出させて汚すことが多い。
【解決手段】 苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通する。
【解決手段】 苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リードカム軸の回転によって、リードカムを移動案内して、このリードカムに連結の苗タンクを、苗植爪の作動位置に対して左右横方向へ移動させる苗植機の苗タンク移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードカム軸の回転によって、このリードカム軸に嵌合するリードカムを軸方向に往復移動させて、苗タンクを一マット苗幅域にわたって往復移動する技術や、このリードカム軸の左右両側部に防泥用の拡縮ブーツを被覆する技術(例えば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58ー88257号公報(第1頁、図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗植機では、水田走行による苗植作業が多く、苗タンクや、この苗タンクを左右方向へ往復移動するためのリードカム軸等が、苗植土壌面に接近した位置を移動して、このリードカム軸の外周を覆う拡縮ブーツの伸縮作用によって、ブーツ室内への吸気、排気作用によって、泥水の吸入、排出が起り易く、この吸排する泥水にはブーツ室内の潤滑油等をも混入させて、田面に潤滑油を排出させて汚すことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通することを特徴とする苗植機の苗タンク移動装置の構成とする。苗植作用時に、リードカム軸3が回転されると、このリードカム軸3に嵌合されているリードカム2が軸方向に沿って往復移動されて、このリードカム2に連結の苗タンク1をタンク幅方向へ往復移動して、この苗タンク1前端縁の苗分離部を、定位置で作動の苗植付爪に対して繰出供給して苗植作動を行わせる。このようなリードカム2の左右往復移動において、このリードカム2の左右両側部に配置の拡縮ブーツ4、5が伸縮されて、リードカム軸3の外周部を覆うブーツ室6、7が拡縮される。リードカム2がリードカム軸3に対して左側へ移動すときは、左側のブーツ室6が縮少されて、右側のブーツ室7が拡張され、又、リードカム2が右側へ移動するときは、これとは逆に右側のブーツ室7が縮少されて、左側のブーツ室6が拡張される。このような左、右のブーツ室6、7の拡縮において、相互間を通気自在に連通しているため、このブーツ室6、7の連通部間を、空気圧力差に従って高圧側から低圧側へ流入して、拡縮ブーツ4、5の拡縮作動の抵抗とならず、円滑な拡縮を行わせ、又、外部からの泥水の吸入を阻止して、このリードカム軸3におけるリードカム2部等との摺動摩擦部に潤滑油面を形成して、円滑な苗タンク1の移動を行わせる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記左右の拡縮ブーツ4、5間のブーツ室6、7間を連通する連通管8に、これらリードカム軸3に対するリードカム2の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置9を設ける。この連通管8は、前記のように左右の拡縮ブーツ4、5が拡縮することによって、この左右のブーツ室6、7の空気が流通して、拡縮ブーツ4、5の拡縮抵抗を軽減する。これと共に、この連通管8には、潤滑給油装置9が連通されているため、この潤滑給油装置9から供給される潤滑油を、左右の各ブーツ室6、7のリードカム軸3とリードカム2との嵌合摺動部に潤滑する。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記潤滑給油装置9は、前記リードカム軸3及び苗植装置10を伝動する苗植伝動装置11の潤滑油を給油する。苗植装置10は、苗植伝動装置11の伝動によって、リードカム2、又はリードカム軸3の駆動により苗タンク1を左右往復移動して苗の繰出供給を行わせ、苗植爪を作動させて、この苗タンク1から繰出される苗を分離保持して土壌面へ植付ける。そして、前記潤滑給油装置9は、この苗植伝動装置11の潤滑作用を行う潤滑油の一部を用いて、左右のブーツ室6、7へ供給して、リードカム軸3とリードカム2の摺動部に潤滑する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記拡縮ブーツ4、5の蛇腹外周の折重合面12間に、折重合面12間に間隙13を形成する凸部14を形成する。前記拡縮ブーツ4、5は、蛇腹形態の折重合面12を形成して、この相隣接の折重合面12間の間隙13を拡縮することによって、ブーツ室6、7を拡縮する。各ブーツ室6、7を縮少するときは、この折重合面12間は圧縮されて相互に折重合して、この折重合面12間に凸部14を挾持する関係になる。この拡縮ブーツ4、5の折重合面12間に凸部14を介在することによって、折重合面12間相互の密着を防止して、拡縮ブーツ4、5の開拡時は、折重合面12間を開拡し易くする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、リードカム軸3の左右両側部の拡縮のブーツ室4、5が拡縮するとき、この左右ブーツ室6、7の空気が相互連通部を経て移動して、拡縮ブーツ4、5の円滑な潤滑、拡縮作動を維持し、外部からの吸排気や、泥水の吸入排出等をなくして、水田面に潤滑油を漏出して汚さないものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記左右の拡縮ブーツ4、5間の圧力空気の流動案内を行わせる連通管8を利用して、潤滑油を供給できると共に、左右のブーツ室6、7に共用の潤滑給油装置9で潤滑油を供給でき、軽量化、及びコストダウンを図ることができる。又、左右のブーツ室6、7お圧力変化を利用して潤滑油を供給できるので、潤滑給油装置9を簡単な形態のものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、苗植伝動装置11の潤滑油を、リードカム軸3及びリードカム2の潤滑油として共用して、潤滑給油装置9一層簡単な構成とすることができ、軽量化、及びコストダウン化を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、拡縮ブーツ4、5の折重合面12間の密着による拡縮抵抗の変化を少くすることができ、この密着による拡縮ブーツ4、5の外れや、取付位置移動を防止し、水の侵入を防止して、円滑なリードカムの作動を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リードカム軸部の平面図。
【図2】苗植機の側面図。
【図3】その平面図。
【図4】リートカム軸部の正面図。
【図5】その拡縮ブーツ部の平断面図と、側面図。
【図6】苗植伝動ケースのロータ軸部の斜視図。
【図7】主変速レバーとブレーキペダル部の側面図。
【図8】作業具取付ソケット部の作動状態を示す側面図と、取付ピンの正面図。
【図9】その取付ソケット部の正面図と、平面図。
【図10】操向ケース部の正面図。
【図11】車輪ダンパーの制御ブロック図。
【図12】後輪側の車輪ダンパー例を示す側面図。
【図13】後輪側の車輪ダンパー例の一部を示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づいて、前輪23と後車輪24を有した四輪乗用走行形態の車体15の後側に、平行リンク形態の昇降リンク25を介して昇降可態の苗植装置10を連結して、苗植機を構成する。車体15は、運転席21を有して、この下部にエンジン22を搭載し、このフロア36前部のステアリングポスト上にはステアリングハンドル20を設けて、前記前輪23を操向できる。前記エンジン22からは、フロア36の下側の油圧無段変速装置41をベルト伝動して、ミッションケース42の入力軸を伝動する。このミッションケース42の伝動装置から前輪23を伝動し、後輪伝動軸43を介してリヤアクスルハウジング44の後輪軸45を伝動する。又、ミッションケース42から後方へわたるPTO軸を設けて、このPTO軸から車体15後部に搭載の施肥装置38を伝動し、前記苗植装置10の入力軸26を伝動する構成としている。前記フロア36の外側には、補助苗載枠37を設け、苗植装置10の苗タンク1に補給する苗を収容した苗トレイを搭載することができる。又、施肥装置38は、運転席21の後側の肥料ホッパーから繰出す肥料を、施肥ホース39を介してフロート16の作溝器40部に案内させて、この作溝器40によって形成される苗植土壌面の施肥溝に施肥させる。
【0015】
前記苗植装置10は、多条植形態の苗タンク1と、この苗タンク1から繰出す苗を分離保持してフロート16によって均平される土壌面へ植付ける苗植爪29と等から構成される。苗植伝動装置11は、伝動ケース30を主体として、この伝動ケース30の前上部に左右横方向にわたるリードカム軸3を軸支して、内部の苗植伝動装置11の一部から回転伝動する。このリードカム軸3の中央部にリードカム2を嵌合させて、往復形態に形成する螺旋形態の案内溝に摺動子を嵌合させて、このリードカム2を一苗タンク1幅間隔分左右方向へ往復移動するように構成している。前記苗植伝動ケース30の後端部には、苗植爪29を有したロータリ形態の苗植ロータ17を軸装して、苗植伝動装置11を介して伝動し、各苗植爪29を側面視楕円形状の植付軌跡線Dに作動させて、上端部では苗タンク1下端部の苗取口31を通過させて苗の分離保持を行わせ、下端部ではフロート16で均平した土壌面に挿苗して一定深さに植付ける。
【0016】
前記苗タンク1は、植付条数に応じた枚数のマット苗を載せて、前記後端下部の苗取口31へ繰出供給するもので、後下り傾斜面に構成して、各マット苗収容幅毎に仕切46を有し、各仕切46間には繰出ベルト28を有する。前記リードカム軸3の回転によるリードカム2、及びこのリードカム2により一体的に横移動される苗タンク1は、この左右の仕切46間の一マット苗幅分相当の間隔を左側、又は右側へ往復移動する。これによって仕切46間のマット苗の前端縁を苗取口31に対して横方向へ人事移動させながら、苗植爪29を作用させてマット苗を分離しながら植付ける。又、この苗タンク1が左端、又は右端に移動して折返行程に至ったときは、このリードカム軸3の両端部のクランクアーム48によって、苗タンク1底部の繰出ベルト28を掛け渡したベルト47のワンウエイクラッチ、及び苗送アーム50を係合回動して、各繰出ベルト28を一駒分だけ間歇的に回動させて、マット苗を苗取口31側へ繰出すものである。
【0017】
前記後輪24と苗植装置10のフロート16との間には、土壌面を掻き均す代掻ロータ54を配置して、各フロート16による均平性を高める。この代掻ロータ54は、前記苗植伝動ケース30の前側に構成する苗タンク1支持フレーム34の前側に沿って、代掻フレーム35を、上下のリンクアーム37を介して上下動自在に設け、この代掻フレーム35をレバー51の操作により上下動することができる。代掻ロータ54の代掻位置を土壌面の深さに応じて変更することができる。各代掻ロータ54はフロート16の位置に応じて前後に配置位置を異にするが、前記後輪軸45を軸装するリヤアクスルハウジング44の一部から連動軸32を介して、この代掻ロータ54のロータ軸33を伝動するように構成している。49は前側の代掻ロータ54を吊下げているバランススプリングである。
【0018】
ここにおいて、この苗植機の苗タンク移動装置は、苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合してタンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通する苗タンク移動装置の構成とする。苗植作用時に、リードカム軸3が回転されると、このリードカム軸3に嵌合されているリードカム2が軸方向に沿って往復移動されて、このリードカム2に連結の苗タンク1をタンク幅方向へ往復移動して、この苗タンク1前端縁の苗分離部を、定位置で作動の苗植付爪に対して繰出供給して苗植作動を行わせる。このようなリードカム2の左右往復移動において、このリードカム2の左右両側部に配置の拡縮ブーツ4、5が伸縮されて、リードカム軸3の外周部を覆うブーツ室6、7が拡縮される。リードカム2がリードカム軸3に対して左側へ移動すときは、左側のブーツ室6が縮少されて、右側のブーツ室7が拡張され、又、リードカム2が右側へ移動するときは、これとは逆に右側のブーツ室7が縮少されて、左側のブーツ室6が拡張される。このような左、右のブーツ室6、7の拡縮において、相互間を通気自在に連通しているため、このブーツ室6、7の連通部間を、空気圧力に従って高圧側から低圧側へ流入して、拡縮ブーツ4、5の拡縮作動の抵抗とならず、円滑な拡縮を行わせ、又、外部からの泥水の吸入を阻止して、このリードカム軸3におけるリードカム2部等との摺動摩擦部に潤滑油面を形成して、円滑な苗タンク1の移動を行わせる。
【0019】
又、前記左右の拡縮ブーツ4、5間のブーツ室6、7間を連通する連通管8に、これらリードカム軸3に対するリードカム2の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置9を設ける。この連通管8は、前記のように左右の拡縮ブーツ4、5が拡縮することによって、この左右のブーツ室6、7の空気が流通して、拡縮ブーツ4、5の拡縮抵抗を軽減する。これと共に、この連通管8には、潤滑給油装置9が連通されているため、この潤滑給油装置9から供給される潤滑油を、左右の各ブーツ室6、7のリードカム軸3とリードカム2との嵌合摺動部に供給して潤滑する。
【0020】
又、前記潤滑油装置9は、前記リードカム軸3及び苗植装置10を伝動する苗植伝動装置11の潤滑油を供給する。苗植装置10は、苗植伝動装置11の伝動によって、リードカム2、又はリードカム軸3の駆動により苗タンク1を左右往復移動して苗の繰出供給を行わせ、苗植爪を作動させて、この苗タンク1から繰出される苗を分離保持して土壌面へ植付ける。そして、前記潤滑給油装置9は、この苗植伝動装置11の潤滑作用を行う潤滑油の一部を用いて、左右のブーツ室6、7へ供給して、リードカム軸3とリードカム2の摺動部に潤滑する。
【0021】
更に、前記拡縮ブーツ4、5の蛇腹外周の折重合面12間に、この折重合面12相互間の間隙13を形成する凸部14を形成する。前記拡縮ブーツ4、5は、蛇腹形態の折重合面12を形成して、この相隣接の折重合面12間の間隙13を拡縮することによって、ブーツ室6、7を拡縮する。各ブーツ室6、7を縮少するときは、この折重合面12間は圧縮されて相互に折重合して、この折重合面12間に凸部14を挾持する関係になる。この拡縮ブーツ4、5の折重合面12間に凸部14を介在することによって、折重合面12間相互間の密着を防止して、拡縮ブーツ4、5の開拡時は、折重合面12間を開拡し易くする。
【0022】
前記左右のブーツ室6、7間を連通する連通部は、各拡縮ブーツ4、5の内側端を連結するリードカム2の外周にわたって連通管8を迂回させて設け、両ブーツ室6、7間を連通して、空気を流れ易くする。又、この連通管8を迂回させないで、例えば、リードカム2のメタル自体に連通路を形成して、左右のブーツ室6、7相互間を連通する形態とすることもできる。
【0023】
前記連通管8に連通するオイルタンクを潤滑給油装置9として、給油ホース18で連結して、このブーツ室6、7の拡縮により吸引圧をオイルタンク内に働かせて、潤滑油としてブーツ室6、7内へ吸入するように構成することもできる。又、この潤滑給油装置9としてプランジャ噴射機構等によりオイルを噴霧状にしてブーツ室6、7内へ送込む形態とすることも可能である。
【0024】
又、図4のように各ブーツ室6、7を、苗植伝動ケース30内と給油ホース19で連通して、この苗植伝動ケース30の潤滑油の一部を吸引して、ブーツ室6、7内に潤滑するように構成することもできる。
【0025】
前記拡縮ブーツ4、5は、ゴム材等から蛇腹形態に構成されるが、この拡縮ブーツ4、5の外周面は、縮少A時に相隣接すの折重合面12が密着状態に重合することがあり、このとき折重合面12間に間隙13部を形成するように、凸部14を形成するが、この凸部14が対向の折重合面12に接当して、凸部14の周囲に間隙13部を形成して、ブーツ室6、7が拡張Bするとき、折重合面12間が開き易い状態となる。
【0026】
次に、主に図1、図6に基づいて、前記各苗植ロータ17、及びこの苗植爪29の伝動構成において、ロータ軸55のスプロケット56は、チエン57掛け、及び偏芯ギヤを介して伝動構成しているが、このスプロケット56は偏芯ギヤの伝動回転によって不等速回転の構成としている。そこで、このスプロケット56の一定位置に突起58を形成し、前記苗植伝動ケース30に設けるマグネット59にこの突起58が回転して接近すると、磁力速回転抵抗を生じて、この不等速回転を緩和して、伝動のシャクリ現象を軽減する構成したものである。この場合、突起58、及びマグネット59の位置は、偏芯ギヤによる不等速回転のピーク直後にする。マグネット59の磁力で金属粉を吸着して、回転部の耐久性を向上させる。
【0027】
次に、主として図7に基づいて、前記油圧無段変速装置41の変速操作を行う主変速レバー60の作動を、ブレーキペダル61の半踏込操作によって固定して、変速作動を規制する形態とするもので、苗植機の格納時や、運搬のためにトラックへの積隣時、又は畦越え走行時等の急発進や、急増速等を防止して、安全性を高めるものである。主変速レバー60は、油圧無段変速装置41のトラニオン軸62を連動回動して、中立位置Nから前進位置F、又は後進位置Bへ操作して、前進高速、又は後進高速の走行変速を行うことができる。この主変速レバー60によって一体的にトラニオン軸62周りに回動される二又状の前進中立アーム63と、後進中立アーム64が設けられて、これら前進中立アーム63と後進中立アーム64間の角度は、同軸62上の連結プレート65と、各アーム63、64上の長穴66、67、及び、これに嵌合して締めつけるボルト68、69等によって開度調節可能に連結している。ブレーキペダル61は、前記トラニオン軸62の直下位置にペダル軸70を配置し、このブレーキペダル61のペダル軸70周りに、前進中立復帰カム71と、後進中立復帰カム72を突出形成して、このブレーキペダル61を踏込んで走行ブレーキを制動することによって、前進中立復帰カム71、又は後進中立復帰カム72が、対向の前進中立アーム63、又は後進中立アーム64を押して、前進位置F、又は後進位置Bにある主変速レバー60を、中立位置Nへ戻するように作動する。又、このブレーキペダル61の踏込位置は、半踏込み状態(半ブレーキ状態)として操作されることが多く、これらの場合は、変速レバー61が中立位置N、又は中立位置Nに近い位置に戻されて、前進位置F、又は後進位置Bの増速側への作動を行わせないように規制する。 次に、主として図8、図9に基づいて、ヒッチソケット75に作業取付軸76を嵌合して取付け、この取付部のピン穴77、78に取付ピン79を差込んで固定する場合に、この取付ピン79の基部をクランク状に形成して、この取付ピン79周りに回動してヒッチソケット75の外周面に嵌合する係合部80を形成する。作業具は、代掻レーキ81として、前記代掻ロータ54に代えて装着する構成としている。82はヒッチソケット75を取付けるブラケットである。前記係合部80の先端内側にはヒッチソケット75の凹部係合の凸部83を形成して、係合により取付ピン79の外れ止めを行い易く構成している。
【0028】
次に、主として図10、図11、図12に基づいて、前記苗植機の車輪にダンパーを設けて、このダンパーによる車体支持圧を操向作業に応じて強弱に切替えたり、車輪昇降を規制制御させるものである。前輪23、及び後輪24の車軸85を軸装する車軸の操向ケース86は、アクスルハウジング87の左右両端部の操向軸88周りに操向回動自在に設けられて、ステアリングハンドル20によって操向連動することができる。このアクスルハウジング87の連動軸89からベベルギヤ90噛合によって操向軸88へ伝動し、更にベベルギヤ91の噛合によって車軸85を伝動回転して走行できる。
【0029】
前記操向軸88の周りには、アクスルハウジング87終端部のターミナルケース92を設け、このターミナルケース92周りに回動、摺動自在に操向ケース86の上端部を嵌合させている。又、このターミナルケース92の上端部にはスプリング98、99を内装するカップリング94を設けて、このカップリング94の外周部に、操向ケース86から上方に突設のアーム93上端部のアーム筒104を、回動、及び摺動自在に嵌合させている。このターミナルケース92の上端のプレート95と、カップリング94の上端部、及びこのアクチュエータ96の受座97との間に、前記強、弱のスプリング98、99を介在させて、操向ケース86に対して、アクスルハウジング87側の車体15重量を支持させている。このアクチュエータ94によって弱いスプリング99の圧縮力を変えることによって、これら両スプリング98、99による車輪支持力を強弱に調節、切替変更することができる。
【0030】
又、前記後輪24のアクスルハウジング87と操向ケース86との間には、後輪上下規制用のアクチュエータ100を設け、このアクチュエータ100の伸縮によって、後輪24のアクスルハウジング87の上下動域を規制することができる。
【0031】
これら前輪23、後輪24の強弱用の各アクシュエータ96、及び後輪24の上下規制用のアクシュエータ100を制御するコントローラ101は、入力側に副変速レバーセンサ102、及び植付昇降操作スイッチ103等を設ける。副変速レバーセンサ102が車速の路上走行速を検出すると、アクチュエータ96によって前輪23又は後輪24のダンパーを軟くし、低速の苗植走行速を検出すると、ダンパーを硬くするように制御する。又、苗植昇降操作スイッチ103により、苗植装置10をリフトシリンダ27よって昇降させて、苗植姿勢に下降させたり、非苗植姿勢に上昇させることができが、この苗植付伝動入りにすることによって、前記アクチュエータ100の伸縮を固定して車体15後部の沈下を防ぐことができる。
【0032】
前記図11のようなダンパー機構は前輪23、又は後輪24側のアクスルハウジングに構成されるが、後輪24のアクスルハウジングには、図12のように、単にダンパースプリングによって上下動自在に支持する形態で、操向を不要とする形態とすることもできる。車体15に対して車軸85を有したアクスルケース105を、ケース支持軸106の周りに上下揺動自在に設け、このアクスルケース105のブラケット107と、車体15側のブラケット108との間に、ダンパスプリング98、99を設ける。このうち弱い側のスプリング99をアクチュエータ96によって圧力調節するように構成している。又、前記車体15側のブラケット108には、後輪24の上下動を規制するためのアクチュエータ109を設け、このアクチュエータ109によって伸出するピン110を、アクスルケース105のストッパー111に当てることによって、このアクスルケース105の車体15に対する上動を係止する。
【符号の説明】
【0033】
1 苗タンク
2 リードカム
3 リードカム軸
4 拡縮ブーツ
5 拡縮ブーツ
6 ブーツ室
7 ブーツ室
8 連通管
9 潤滑給油装置
10 苗植装置
11 苗植伝動装置
12 折重合面
13 間隙
14 凸部
【技術分野】
【0001】
この発明は、リードカム軸の回転によって、リードカムを移動案内して、このリードカムに連結の苗タンクを、苗植爪の作動位置に対して左右横方向へ移動させる苗植機の苗タンク移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードカム軸の回転によって、このリードカム軸に嵌合するリードカムを軸方向に往復移動させて、苗タンクを一マット苗幅域にわたって往復移動する技術や、このリードカム軸の左右両側部に防泥用の拡縮ブーツを被覆する技術(例えば、特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58ー88257号公報(第1頁、図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗植機では、水田走行による苗植作業が多く、苗タンクや、この苗タンクを左右方向へ往復移動するためのリードカム軸等が、苗植土壌面に接近した位置を移動して、このリードカム軸の外周を覆う拡縮ブーツの伸縮作用によって、ブーツ室内への吸気、排気作用によって、泥水の吸入、排出が起り易く、この吸排する泥水にはブーツ室内の潤滑油等をも混入させて、田面に潤滑油を排出させて汚すことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通することを特徴とする苗植機の苗タンク移動装置の構成とする。苗植作用時に、リードカム軸3が回転されると、このリードカム軸3に嵌合されているリードカム2が軸方向に沿って往復移動されて、このリードカム2に連結の苗タンク1をタンク幅方向へ往復移動して、この苗タンク1前端縁の苗分離部を、定位置で作動の苗植付爪に対して繰出供給して苗植作動を行わせる。このようなリードカム2の左右往復移動において、このリードカム2の左右両側部に配置の拡縮ブーツ4、5が伸縮されて、リードカム軸3の外周部を覆うブーツ室6、7が拡縮される。リードカム2がリードカム軸3に対して左側へ移動すときは、左側のブーツ室6が縮少されて、右側のブーツ室7が拡張され、又、リードカム2が右側へ移動するときは、これとは逆に右側のブーツ室7が縮少されて、左側のブーツ室6が拡張される。このような左、右のブーツ室6、7の拡縮において、相互間を通気自在に連通しているため、このブーツ室6、7の連通部間を、空気圧力差に従って高圧側から低圧側へ流入して、拡縮ブーツ4、5の拡縮作動の抵抗とならず、円滑な拡縮を行わせ、又、外部からの泥水の吸入を阻止して、このリードカム軸3におけるリードカム2部等との摺動摩擦部に潤滑油面を形成して、円滑な苗タンク1の移動を行わせる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記左右の拡縮ブーツ4、5間のブーツ室6、7間を連通する連通管8に、これらリードカム軸3に対するリードカム2の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置9を設ける。この連通管8は、前記のように左右の拡縮ブーツ4、5が拡縮することによって、この左右のブーツ室6、7の空気が流通して、拡縮ブーツ4、5の拡縮抵抗を軽減する。これと共に、この連通管8には、潤滑給油装置9が連通されているため、この潤滑給油装置9から供給される潤滑油を、左右の各ブーツ室6、7のリードカム軸3とリードカム2との嵌合摺動部に潤滑する。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記潤滑給油装置9は、前記リードカム軸3及び苗植装置10を伝動する苗植伝動装置11の潤滑油を給油する。苗植装置10は、苗植伝動装置11の伝動によって、リードカム2、又はリードカム軸3の駆動により苗タンク1を左右往復移動して苗の繰出供給を行わせ、苗植爪を作動させて、この苗タンク1から繰出される苗を分離保持して土壌面へ植付ける。そして、前記潤滑給油装置9は、この苗植伝動装置11の潤滑作用を行う潤滑油の一部を用いて、左右のブーツ室6、7へ供給して、リードカム軸3とリードカム2の摺動部に潤滑する。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記拡縮ブーツ4、5の蛇腹外周の折重合面12間に、折重合面12間に間隙13を形成する凸部14を形成する。前記拡縮ブーツ4、5は、蛇腹形態の折重合面12を形成して、この相隣接の折重合面12間の間隙13を拡縮することによって、ブーツ室6、7を拡縮する。各ブーツ室6、7を縮少するときは、この折重合面12間は圧縮されて相互に折重合して、この折重合面12間に凸部14を挾持する関係になる。この拡縮ブーツ4、5の折重合面12間に凸部14を介在することによって、折重合面12間相互の密着を防止して、拡縮ブーツ4、5の開拡時は、折重合面12間を開拡し易くする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、リードカム軸3の左右両側部の拡縮のブーツ室4、5が拡縮するとき、この左右ブーツ室6、7の空気が相互連通部を経て移動して、拡縮ブーツ4、5の円滑な潤滑、拡縮作動を維持し、外部からの吸排気や、泥水の吸入排出等をなくして、水田面に潤滑油を漏出して汚さないものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記左右の拡縮ブーツ4、5間の圧力空気の流動案内を行わせる連通管8を利用して、潤滑油を供給できると共に、左右のブーツ室6、7に共用の潤滑給油装置9で潤滑油を供給でき、軽量化、及びコストダウンを図ることができる。又、左右のブーツ室6、7お圧力変化を利用して潤滑油を供給できるので、潤滑給油装置9を簡単な形態のものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、苗植伝動装置11の潤滑油を、リードカム軸3及びリードカム2の潤滑油として共用して、潤滑給油装置9一層簡単な構成とすることができ、軽量化、及びコストダウン化を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、拡縮ブーツ4、5の折重合面12間の密着による拡縮抵抗の変化を少くすることができ、この密着による拡縮ブーツ4、5の外れや、取付位置移動を防止し、水の侵入を防止して、円滑なリードカムの作動を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リードカム軸部の平面図。
【図2】苗植機の側面図。
【図3】その平面図。
【図4】リートカム軸部の正面図。
【図5】その拡縮ブーツ部の平断面図と、側面図。
【図6】苗植伝動ケースのロータ軸部の斜視図。
【図7】主変速レバーとブレーキペダル部の側面図。
【図8】作業具取付ソケット部の作動状態を示す側面図と、取付ピンの正面図。
【図9】その取付ソケット部の正面図と、平面図。
【図10】操向ケース部の正面図。
【図11】車輪ダンパーの制御ブロック図。
【図12】後輪側の車輪ダンパー例を示す側面図。
【図13】後輪側の車輪ダンパー例の一部を示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づいて、前輪23と後車輪24を有した四輪乗用走行形態の車体15の後側に、平行リンク形態の昇降リンク25を介して昇降可態の苗植装置10を連結して、苗植機を構成する。車体15は、運転席21を有して、この下部にエンジン22を搭載し、このフロア36前部のステアリングポスト上にはステアリングハンドル20を設けて、前記前輪23を操向できる。前記エンジン22からは、フロア36の下側の油圧無段変速装置41をベルト伝動して、ミッションケース42の入力軸を伝動する。このミッションケース42の伝動装置から前輪23を伝動し、後輪伝動軸43を介してリヤアクスルハウジング44の後輪軸45を伝動する。又、ミッションケース42から後方へわたるPTO軸を設けて、このPTO軸から車体15後部に搭載の施肥装置38を伝動し、前記苗植装置10の入力軸26を伝動する構成としている。前記フロア36の外側には、補助苗載枠37を設け、苗植装置10の苗タンク1に補給する苗を収容した苗トレイを搭載することができる。又、施肥装置38は、運転席21の後側の肥料ホッパーから繰出す肥料を、施肥ホース39を介してフロート16の作溝器40部に案内させて、この作溝器40によって形成される苗植土壌面の施肥溝に施肥させる。
【0015】
前記苗植装置10は、多条植形態の苗タンク1と、この苗タンク1から繰出す苗を分離保持してフロート16によって均平される土壌面へ植付ける苗植爪29と等から構成される。苗植伝動装置11は、伝動ケース30を主体として、この伝動ケース30の前上部に左右横方向にわたるリードカム軸3を軸支して、内部の苗植伝動装置11の一部から回転伝動する。このリードカム軸3の中央部にリードカム2を嵌合させて、往復形態に形成する螺旋形態の案内溝に摺動子を嵌合させて、このリードカム2を一苗タンク1幅間隔分左右方向へ往復移動するように構成している。前記苗植伝動ケース30の後端部には、苗植爪29を有したロータリ形態の苗植ロータ17を軸装して、苗植伝動装置11を介して伝動し、各苗植爪29を側面視楕円形状の植付軌跡線Dに作動させて、上端部では苗タンク1下端部の苗取口31を通過させて苗の分離保持を行わせ、下端部ではフロート16で均平した土壌面に挿苗して一定深さに植付ける。
【0016】
前記苗タンク1は、植付条数に応じた枚数のマット苗を載せて、前記後端下部の苗取口31へ繰出供給するもので、後下り傾斜面に構成して、各マット苗収容幅毎に仕切46を有し、各仕切46間には繰出ベルト28を有する。前記リードカム軸3の回転によるリードカム2、及びこのリードカム2により一体的に横移動される苗タンク1は、この左右の仕切46間の一マット苗幅分相当の間隔を左側、又は右側へ往復移動する。これによって仕切46間のマット苗の前端縁を苗取口31に対して横方向へ人事移動させながら、苗植爪29を作用させてマット苗を分離しながら植付ける。又、この苗タンク1が左端、又は右端に移動して折返行程に至ったときは、このリードカム軸3の両端部のクランクアーム48によって、苗タンク1底部の繰出ベルト28を掛け渡したベルト47のワンウエイクラッチ、及び苗送アーム50を係合回動して、各繰出ベルト28を一駒分だけ間歇的に回動させて、マット苗を苗取口31側へ繰出すものである。
【0017】
前記後輪24と苗植装置10のフロート16との間には、土壌面を掻き均す代掻ロータ54を配置して、各フロート16による均平性を高める。この代掻ロータ54は、前記苗植伝動ケース30の前側に構成する苗タンク1支持フレーム34の前側に沿って、代掻フレーム35を、上下のリンクアーム37を介して上下動自在に設け、この代掻フレーム35をレバー51の操作により上下動することができる。代掻ロータ54の代掻位置を土壌面の深さに応じて変更することができる。各代掻ロータ54はフロート16の位置に応じて前後に配置位置を異にするが、前記後輪軸45を軸装するリヤアクスルハウジング44の一部から連動軸32を介して、この代掻ロータ54のロータ軸33を伝動するように構成している。49は前側の代掻ロータ54を吊下げているバランススプリングである。
【0018】
ここにおいて、この苗植機の苗タンク移動装置は、苗タンク1と一体的に設けるリードカム2を嵌合してタンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸3の外周部に、このリードカム軸3に嵌合案内されるリードカム2と、このリードカム軸3の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ4、5を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ4、5内のブーツ室6、7相互間を通気自在に連通する苗タンク移動装置の構成とする。苗植作用時に、リードカム軸3が回転されると、このリードカム軸3に嵌合されているリードカム2が軸方向に沿って往復移動されて、このリードカム2に連結の苗タンク1をタンク幅方向へ往復移動して、この苗タンク1前端縁の苗分離部を、定位置で作動の苗植付爪に対して繰出供給して苗植作動を行わせる。このようなリードカム2の左右往復移動において、このリードカム2の左右両側部に配置の拡縮ブーツ4、5が伸縮されて、リードカム軸3の外周部を覆うブーツ室6、7が拡縮される。リードカム2がリードカム軸3に対して左側へ移動すときは、左側のブーツ室6が縮少されて、右側のブーツ室7が拡張され、又、リードカム2が右側へ移動するときは、これとは逆に右側のブーツ室7が縮少されて、左側のブーツ室6が拡張される。このような左、右のブーツ室6、7の拡縮において、相互間を通気自在に連通しているため、このブーツ室6、7の連通部間を、空気圧力に従って高圧側から低圧側へ流入して、拡縮ブーツ4、5の拡縮作動の抵抗とならず、円滑な拡縮を行わせ、又、外部からの泥水の吸入を阻止して、このリードカム軸3におけるリードカム2部等との摺動摩擦部に潤滑油面を形成して、円滑な苗タンク1の移動を行わせる。
【0019】
又、前記左右の拡縮ブーツ4、5間のブーツ室6、7間を連通する連通管8に、これらリードカム軸3に対するリードカム2の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置9を設ける。この連通管8は、前記のように左右の拡縮ブーツ4、5が拡縮することによって、この左右のブーツ室6、7の空気が流通して、拡縮ブーツ4、5の拡縮抵抗を軽減する。これと共に、この連通管8には、潤滑給油装置9が連通されているため、この潤滑給油装置9から供給される潤滑油を、左右の各ブーツ室6、7のリードカム軸3とリードカム2との嵌合摺動部に供給して潤滑する。
【0020】
又、前記潤滑油装置9は、前記リードカム軸3及び苗植装置10を伝動する苗植伝動装置11の潤滑油を供給する。苗植装置10は、苗植伝動装置11の伝動によって、リードカム2、又はリードカム軸3の駆動により苗タンク1を左右往復移動して苗の繰出供給を行わせ、苗植爪を作動させて、この苗タンク1から繰出される苗を分離保持して土壌面へ植付ける。そして、前記潤滑給油装置9は、この苗植伝動装置11の潤滑作用を行う潤滑油の一部を用いて、左右のブーツ室6、7へ供給して、リードカム軸3とリードカム2の摺動部に潤滑する。
【0021】
更に、前記拡縮ブーツ4、5の蛇腹外周の折重合面12間に、この折重合面12相互間の間隙13を形成する凸部14を形成する。前記拡縮ブーツ4、5は、蛇腹形態の折重合面12を形成して、この相隣接の折重合面12間の間隙13を拡縮することによって、ブーツ室6、7を拡縮する。各ブーツ室6、7を縮少するときは、この折重合面12間は圧縮されて相互に折重合して、この折重合面12間に凸部14を挾持する関係になる。この拡縮ブーツ4、5の折重合面12間に凸部14を介在することによって、折重合面12間相互間の密着を防止して、拡縮ブーツ4、5の開拡時は、折重合面12間を開拡し易くする。
【0022】
前記左右のブーツ室6、7間を連通する連通部は、各拡縮ブーツ4、5の内側端を連結するリードカム2の外周にわたって連通管8を迂回させて設け、両ブーツ室6、7間を連通して、空気を流れ易くする。又、この連通管8を迂回させないで、例えば、リードカム2のメタル自体に連通路を形成して、左右のブーツ室6、7相互間を連通する形態とすることもできる。
【0023】
前記連通管8に連通するオイルタンクを潤滑給油装置9として、給油ホース18で連結して、このブーツ室6、7の拡縮により吸引圧をオイルタンク内に働かせて、潤滑油としてブーツ室6、7内へ吸入するように構成することもできる。又、この潤滑給油装置9としてプランジャ噴射機構等によりオイルを噴霧状にしてブーツ室6、7内へ送込む形態とすることも可能である。
【0024】
又、図4のように各ブーツ室6、7を、苗植伝動ケース30内と給油ホース19で連通して、この苗植伝動ケース30の潤滑油の一部を吸引して、ブーツ室6、7内に潤滑するように構成することもできる。
【0025】
前記拡縮ブーツ4、5は、ゴム材等から蛇腹形態に構成されるが、この拡縮ブーツ4、5の外周面は、縮少A時に相隣接すの折重合面12が密着状態に重合することがあり、このとき折重合面12間に間隙13部を形成するように、凸部14を形成するが、この凸部14が対向の折重合面12に接当して、凸部14の周囲に間隙13部を形成して、ブーツ室6、7が拡張Bするとき、折重合面12間が開き易い状態となる。
【0026】
次に、主に図1、図6に基づいて、前記各苗植ロータ17、及びこの苗植爪29の伝動構成において、ロータ軸55のスプロケット56は、チエン57掛け、及び偏芯ギヤを介して伝動構成しているが、このスプロケット56は偏芯ギヤの伝動回転によって不等速回転の構成としている。そこで、このスプロケット56の一定位置に突起58を形成し、前記苗植伝動ケース30に設けるマグネット59にこの突起58が回転して接近すると、磁力速回転抵抗を生じて、この不等速回転を緩和して、伝動のシャクリ現象を軽減する構成したものである。この場合、突起58、及びマグネット59の位置は、偏芯ギヤによる不等速回転のピーク直後にする。マグネット59の磁力で金属粉を吸着して、回転部の耐久性を向上させる。
【0027】
次に、主として図7に基づいて、前記油圧無段変速装置41の変速操作を行う主変速レバー60の作動を、ブレーキペダル61の半踏込操作によって固定して、変速作動を規制する形態とするもので、苗植機の格納時や、運搬のためにトラックへの積隣時、又は畦越え走行時等の急発進や、急増速等を防止して、安全性を高めるものである。主変速レバー60は、油圧無段変速装置41のトラニオン軸62を連動回動して、中立位置Nから前進位置F、又は後進位置Bへ操作して、前進高速、又は後進高速の走行変速を行うことができる。この主変速レバー60によって一体的にトラニオン軸62周りに回動される二又状の前進中立アーム63と、後進中立アーム64が設けられて、これら前進中立アーム63と後進中立アーム64間の角度は、同軸62上の連結プレート65と、各アーム63、64上の長穴66、67、及び、これに嵌合して締めつけるボルト68、69等によって開度調節可能に連結している。ブレーキペダル61は、前記トラニオン軸62の直下位置にペダル軸70を配置し、このブレーキペダル61のペダル軸70周りに、前進中立復帰カム71と、後進中立復帰カム72を突出形成して、このブレーキペダル61を踏込んで走行ブレーキを制動することによって、前進中立復帰カム71、又は後進中立復帰カム72が、対向の前進中立アーム63、又は後進中立アーム64を押して、前進位置F、又は後進位置Bにある主変速レバー60を、中立位置Nへ戻するように作動する。又、このブレーキペダル61の踏込位置は、半踏込み状態(半ブレーキ状態)として操作されることが多く、これらの場合は、変速レバー61が中立位置N、又は中立位置Nに近い位置に戻されて、前進位置F、又は後進位置Bの増速側への作動を行わせないように規制する。 次に、主として図8、図9に基づいて、ヒッチソケット75に作業取付軸76を嵌合して取付け、この取付部のピン穴77、78に取付ピン79を差込んで固定する場合に、この取付ピン79の基部をクランク状に形成して、この取付ピン79周りに回動してヒッチソケット75の外周面に嵌合する係合部80を形成する。作業具は、代掻レーキ81として、前記代掻ロータ54に代えて装着する構成としている。82はヒッチソケット75を取付けるブラケットである。前記係合部80の先端内側にはヒッチソケット75の凹部係合の凸部83を形成して、係合により取付ピン79の外れ止めを行い易く構成している。
【0028】
次に、主として図10、図11、図12に基づいて、前記苗植機の車輪にダンパーを設けて、このダンパーによる車体支持圧を操向作業に応じて強弱に切替えたり、車輪昇降を規制制御させるものである。前輪23、及び後輪24の車軸85を軸装する車軸の操向ケース86は、アクスルハウジング87の左右両端部の操向軸88周りに操向回動自在に設けられて、ステアリングハンドル20によって操向連動することができる。このアクスルハウジング87の連動軸89からベベルギヤ90噛合によって操向軸88へ伝動し、更にベベルギヤ91の噛合によって車軸85を伝動回転して走行できる。
【0029】
前記操向軸88の周りには、アクスルハウジング87終端部のターミナルケース92を設け、このターミナルケース92周りに回動、摺動自在に操向ケース86の上端部を嵌合させている。又、このターミナルケース92の上端部にはスプリング98、99を内装するカップリング94を設けて、このカップリング94の外周部に、操向ケース86から上方に突設のアーム93上端部のアーム筒104を、回動、及び摺動自在に嵌合させている。このターミナルケース92の上端のプレート95と、カップリング94の上端部、及びこのアクチュエータ96の受座97との間に、前記強、弱のスプリング98、99を介在させて、操向ケース86に対して、アクスルハウジング87側の車体15重量を支持させている。このアクチュエータ94によって弱いスプリング99の圧縮力を変えることによって、これら両スプリング98、99による車輪支持力を強弱に調節、切替変更することができる。
【0030】
又、前記後輪24のアクスルハウジング87と操向ケース86との間には、後輪上下規制用のアクチュエータ100を設け、このアクチュエータ100の伸縮によって、後輪24のアクスルハウジング87の上下動域を規制することができる。
【0031】
これら前輪23、後輪24の強弱用の各アクシュエータ96、及び後輪24の上下規制用のアクシュエータ100を制御するコントローラ101は、入力側に副変速レバーセンサ102、及び植付昇降操作スイッチ103等を設ける。副変速レバーセンサ102が車速の路上走行速を検出すると、アクチュエータ96によって前輪23又は後輪24のダンパーを軟くし、低速の苗植走行速を検出すると、ダンパーを硬くするように制御する。又、苗植昇降操作スイッチ103により、苗植装置10をリフトシリンダ27よって昇降させて、苗植姿勢に下降させたり、非苗植姿勢に上昇させることができが、この苗植付伝動入りにすることによって、前記アクチュエータ100の伸縮を固定して車体15後部の沈下を防ぐことができる。
【0032】
前記図11のようなダンパー機構は前輪23、又は後輪24側のアクスルハウジングに構成されるが、後輪24のアクスルハウジングには、図12のように、単にダンパースプリングによって上下動自在に支持する形態で、操向を不要とする形態とすることもできる。車体15に対して車軸85を有したアクスルケース105を、ケース支持軸106の周りに上下揺動自在に設け、このアクスルケース105のブラケット107と、車体15側のブラケット108との間に、ダンパスプリング98、99を設ける。このうち弱い側のスプリング99をアクチュエータ96によって圧力調節するように構成している。又、前記車体15側のブラケット108には、後輪24の上下動を規制するためのアクチュエータ109を設け、このアクチュエータ109によって伸出するピン110を、アクスルケース105のストッパー111に当てることによって、このアクスルケース105の車体15に対する上動を係止する。
【符号の説明】
【0033】
1 苗タンク
2 リードカム
3 リードカム軸
4 拡縮ブーツ
5 拡縮ブーツ
6 ブーツ室
7 ブーツ室
8 連通管
9 潤滑給油装置
10 苗植装置
11 苗植伝動装置
12 折重合面
13 間隙
14 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗タンク(1)と一体的に設けるリードカム(2)を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸(3)の外周部に、このリードカム軸(3)に嵌合案内されるリードカム(2)と、このリードカム軸(3)の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ(4)(5)を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ(4)(5)内のブーツ室(6)(7)相互間を通気自在に連通することを特徴とする苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項2】
前記左右の拡縮ブーツ(4)(5)間のブーツ室(6)(7)間を連通する連通管(8)に、これらリードカム軸(3)に対するリードカム(2)の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置(9)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項3】
前記潤滑給油装置(9)は、前記リードカム軸(3)及び苗植装置(10)を伝動する苗植伝動装置(11)の潤滑油を給油することを特徴とする請求項1、又は2に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項4】
前記拡縮ブーツ(4)(5)の蛇腹外周の折重合面(12)間に、折重合面(12)間の間隙(13)を形成する凸部(14)を形成したことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項1】
苗タンク(1)と一体的に設けるリードカム(2)を嵌合して苗タンク幅の方向へ沿って往復移動するリードカム軸(3)の外周部に、このリードカム軸(3)に嵌合案内されるリードカム(2)と、このリードカム軸(3)の両端部との間にわたって各々覆う左右一対の拡縮ブーツ(4)(5)を設け、これら左右一対の拡縮ブーツ(4)(5)内のブーツ室(6)(7)相互間を通気自在に連通することを特徴とする苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項2】
前記左右の拡縮ブーツ(4)(5)間のブーツ室(6)(7)間を連通する連通管(8)に、これらリードカム軸(3)に対するリードカム(2)の嵌合摺動部を潤滑する潤滑給油装置(9)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項3】
前記潤滑給油装置(9)は、前記リードカム軸(3)及び苗植装置(10)を伝動する苗植伝動装置(11)の潤滑油を給油することを特徴とする請求項1、又は2に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【請求項4】
前記拡縮ブーツ(4)(5)の蛇腹外周の折重合面(12)間に、折重合面(12)間の間隙(13)を形成する凸部(14)を形成したことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の苗植機の苗タンク移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−30436(P2011−30436A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176774(P2009−176774)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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