説明

苗移植機

【課題】上下動して上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体と、該苗植付け体に上方から苗を落下させて供給する複数の苗収容体を有する苗供給装置とを備え苗移植機において、苗載台から苗収容体への苗供給作業の作業効率を良くして、苗移植作業の作業性及び作業効率を良くすることを課題とする。
【解決手段】機体を自走させる走行装置1と、上下動して上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体4と、該苗植付け体4に上方から苗を落下させて供給する複数の苗収容体45を有する苗供給装置42と設けた苗移植機において、機体上部に設けた苗載台80,82の端部を苗供給装置42の苗収容体45近くに配置すると共に、苗載台80,82を前部が高く後部が低い傾斜状に設けて、苗載台80,82上に育苗箱PTを機体前後方向に複数個載置する構成とした苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植付ける苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、機体を自走させる走行装置と、上下動して上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体と、該苗植付け体に上方から苗を落下させて供給する複数の苗収容体を有する苗供給装置とを備え、機体の前部に1個若しくは2個のポットトレイ等の育苗箱を載置する苗載台を設けた苗移植機がある。
【特許文献1】特開2008−104427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、苗移植作業時に作業者が苗供給装置の苗収容体に苗を供給する時、苗載台が作業者の位置から遠く離れており、苗供給作業の作業効率において課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、機体を自走させる走行装置1と、上下動して上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体4と、該苗植付け体4に上方から苗を落下させて供給する複数の苗収容体45を有する苗供給装置42と設けた苗移植機において、機体上部に設けた苗載台80,82の端部を苗供給装置42の苗収容体45近くに配置すると共に、苗載台80,82を前部が高く後部が低い傾斜状に設けて、苗載台80,82上に育苗箱PTを機体前後方向に複数個載置する構成とした苗移植機としたものである。
【0005】
従って、苗移植作業時に作業者が苗供給装置42の苗収容体45に苗を供給する時、苗載台80,82の端部が苗供給装置42の苗収容体45近くに配置されているので、作業者は苗載台80,82の端部に載置されている育苗箱PTの苗を容易に取出して苗収容体45に供給することができる。また、苗載台80,82の端部に載置されている育苗箱PTの苗が無くなった時には、該空の育苗箱PTを取り除くと次の育苗箱PTが苗を容易に取出せる位置に移動し、苗供給作業が容易に且つ作業効率良く行える。
【0006】
請求項2記載の発明は、苗載台80,82の下方に空の育苗箱PTを収納する空苗箱収納部89を配置し、苗載台80,82には、空の育苗箱PTを苗載台80,82の下方に向けて通過させることができる空間部88を設けた請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、苗供給装置42の苗収容体45近くの苗載台80,82の端部に載置されている育苗箱PTの苗が無くなった時には、該空の育苗箱PTを空間部88を通して空苗箱収納部89に入れることができ、空の育苗箱PTを空苗箱収納部89内に収納する作業も容易で効率よく行えて、苗移植作業の作業性及び作業効率が向上する。更に、空苗箱収納部89は苗載台80,82の下方空間を利用して配置しているので、機体を簡潔に且つコンパクトに構成でき、小型の苗移植機を構成することができ、操作性が向上する。
【0008】
請求項3記載の発明は、苗載台80,82の空間部88の下方位置から空苗箱収納部89まで育苗箱PTを移動案内する苗箱シュータ90と該苗箱シュータ90上を移動する育苗箱PTを上方から押さえる苗箱押さえ装置91を設けた請求項2記載の苗移植機としたものである。
【0009】
従って、請求項1又は請求項2記載の発明の作用に加えて、苗供給装置42の苗収容体45近くの苗載台80,82の端部に載置されている育苗箱PTの苗が無くなった時には、該空の育苗箱PTを空間部88から下方に落とすと、空の育苗箱PTは苗箱押さえ装置91で上面を押さえられた状態で苗箱シュータ90上を移動して空苗箱収納部89内に収納される。空の育苗箱PTを空苗箱収納部89内に収納する作業が更に容易となり、苗移植作業の作業性及び作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように苗移植機を構成することにより、苗載台80に載置されている育苗箱PTの苗を容易に取出して苗収容体45に供給することができる。また、苗供給装置42の苗収容体45近くの苗載台80,82の端部に載置されている育苗箱PTの苗が無くなった時には、該空の育苗箱PTを空間部88を通して空苗箱収納部89に入れることができ、空の育苗箱PTを空苗箱収納部89内に収納する作業も容易で効率よく行えて、苗移植作業の作業性及び作業効率が向上する。更に、空苗箱収納部89は苗載台80,82の下方空間を利用して配置しているので、機体を簡潔に且つコンパクトに構成でき、小型の苗移植機を構成することができ、操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の一実施形態としての苗移植機を以下に説明する。尚、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前という。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側が左という。
【0012】
苗移植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に、昇降駆動するリンク機構3と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付け体4,4を左右に二体備えた構成としている。
【0013】
走行装置1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6,6と、該車輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
【0014】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構(走行部系変速伝動部C1と作業部系変速伝動部C2)に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に左右伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この左右伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース8内の走行部系変速伝動部C1を経た走行用の動力が左右伝動ケース9,9内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は左右伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側の側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。
【0015】
また、左右伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆13の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド14で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0016】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い左右伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い左右伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、機体に対する畝上面高さを検出するセンサーSの検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した操作具Lの人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう作動する構成ともしている。
【0017】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右伝動ケース9,9を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0018】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右方向に設けた支持軸16aに回動自在に取り付けた左右前輪支持フレーム16b,16bの各々の下端部側方に固定した車軸17,17に回転自在に取り付けている。
【0019】
そして、左右前輪支持フレーム16b,16bは引張バネ16c,16cにより各々前輪7,7が上方に移動する方向に付勢されている。また、左右前輪支持フレーム16b,16bの上端部には各々左右従動カムローラ16d,16dが一体に設けられており、前記左右伝動ケース9,9の前端に各々一体に設けられた左右駆動カム16e,16eに各々引張バネ16c,16cの付勢力により接当する構成となっている。そして、機体旋回時に昇降用油圧シリンダ12を作動させて左右車輪6,6が最も下動した位置になるように左右伝動ケース9,9を下動させると、左右駆動カム16e,16eに各々設けた凹部16f,16fに前記左右従動カムローラ16d,16dが落ち込んで、引張バネ16c,16cの不勢力によって、左右前輪7,7が上動する。
【0020】
従って、苗植付作業時には、図1に示すように左右前輪7,7は下動した接地位置にあり、適切な苗移植作業が行える。そして、機体旋回時には、機体を上昇させる為に操作具Lを操作して昇降用油圧シリンダ12を作動させ左右車輪6,6が最も下動した位置になるように左右伝動ケース9,9を下動させると、左右駆動カム16e,16eに各々設けた凹部16f,16fに左右従動カムローラ16d,16dが落ち込んで、引張バネ16c,16cの不勢力によって、左右前輪7,7が自動的に上動する。よって、左右前輪7,7が上動して退避した位置にあるので、左右前輪7,7が畝に接当して畝を崩すような事態を回避しながら、機体の旋回も容易に効率良く行える。
【0021】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム2bの後端部に取り付けている。機体フレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0022】
尚、左右前輪7,7の替わりに畝上面を転動する鎮圧輪としてもよい。また、左右車輪6,6はクローラー式の走行装置としてもよい。
次に、リンク機構3及び苗植付け体4について説明する。
【0023】
リンク機構3は、ミッションケース8内の作業部系変速伝動部C2を経た苗移植作業部駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース18に装着している。図例のように植付け伝動ケース18は、その前部がミッションケース8の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部18aと、この第一ケース部18aの上部左側部に固定されそこから後方に延びる第二ケース部18bを有するものとしている。これら第一ケース部18a、第二ケース部18b内にリンク機構3を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。なお、第一ケース部18a内に内装した伝動機構には、リンク機構3及び苗植付け体4,4をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構Kと、リンク機構3及び苗植付け体4,4の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備える。間欠駆動機構Kによって停止する時間は、該間欠駆動機構Kの伝動上手側に設けた株間変更用変速部C3によって調節され、この調節によって苗植付け体4,4による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0024】
そして、リンク機構3は、左右の苗植付け体4,4の前側の開閉支点となる軸19の左右二個所で回動自在に連結する第一昇降アーム20と、苗植付け体4の後側の開閉支点となる軸21の左側部に回動自在に連結する第二昇降アーム22とを備える。そして、第一昇降アーム20の下端部は、第二ケース部18bの下部にから右側に延びる取付軸に揺動自在に取り付けた第一揺動アーム23の先端部と回動自在に連結し、第二昇降アーム22の下端部は、第二ケース部18bの後部側下部にから右側に延びる取付軸に揺動自在に取り付けた第二揺動アーム24の先端部と回動自在に連結する。また、第一昇降アーム20の中間部は、第二ケース部18bの右側部から突出し駆動回転する第一駆動軸25に固定されて駆動回転する第一駆動アーム26の先端部と回動自在に連結し、第二昇降アーム22の中間部は、第二ケース部18cの後部側右側部から突出し駆動回転する第二駆動軸27に固定されて駆動回転する第二駆動アーム28の先端部と回動自在に連結する。従って、第一駆動アーム26と第二駆動アーム28とが植付け伝動ケース18内の伝動機構によって動力が伝達されて駆動回転すると、第一昇降アーム20と第二昇降アーム22が揺動しながら昇降動し、その結果、左右の苗植付け体4,4の下端部が側面視で上下に長い閉ループ軌跡Tで昇降動する。また、第一駆動アーム26と第二駆動アーム28とは、共に、左側方から見て反時計回りに回転して左右の苗植付け体4,4の下端部が左側方から見て反時計回りに閉ループ軌跡Tで昇降回動する。従って、作業走行しながら左右の苗植付け体4,4が上記回転方向で前記軌跡Tを描くように昇降回動すると、軌跡Tの下端部で苗植付け体4,4の下端部が圃場の畝Uの土壌中に付き刺さったとき、苗植付け体4が畝Uに対して前後に大きくずれないようになり、前後に大きく植え跡を残さずに適確な姿勢で苗を植付けることができる。なお、くちばし状の苗植付け体4、4は、その昇降動最下位まで下降すると前後に開いて苗植付け体4,4内の苗を畝Uの土壌に放出する。
【0025】
左右の苗植付け体4,4は、それぞれ下方に向かって延びるくちばし状に形成したもので前後に開閉可能に構成している。このくちばし状部の前側部分である前くちばし部4F,4Fは、その上部側が後方にアーム状にのびてその先端部が苗植付け体4,4の後側の開閉支点となる軸21に回動自在に連結し、くちばし状部の後側部分である後くちばし部4B,4Bは、その上部側が前方にアーム状にのびてその先端部が苗植付け体4,4の前側の開閉支点となる軸19に回動自在に連結する。そして、前くちばし部4F,4F上部の後方にのびるアーム状部と後くちばし部4B,4B上部の前方にのびるアーム状部とは、それぞれ前側の軸19と後側の軸21との前後中央位置に設けた長孔に横軸方向の軸部を有するナットを嵌めて連結し、前くちばし部4F,4Fと後くちばし部4B,4Bの一方側は他方側の動作に連動して回動し両者が前後に開閉動作するようになっている。また、前くちばし部4Fと後くちばし部4Bとはスプリングにて苗植付け体4を閉じる方向互いに連結している。更に、第一昇降アーム20と第一揺動アーム23とが互いに連結する軸部分に、左右の苗植付け体4,4を開閉動作させるための開閉アーム31を回動自在に連結し、その開閉アーム31の先端部と左右の前くちばし部4F,4Fの各上部から上方に延びる各アーム部を互いに左右に連結する連結軸とを連結ロッド32で連結している。開閉アーム31の中間部には、苗植付け体4,4がその昇降動最下位まで下降したときに、第一昇降アーム20を回動自在に連結している第一駆動アーム26の先端部に固定の軸に固定したカム34と該カム34に開閉アーム31を圧接させるスプリングの作用によって前後揺動して開閉アーム31が前後に回動し、開閉アーム31が後方に回動すると左右の前くちばし部4F,4Fを後側の回動支点である軸21周りに上方回動し、これとともに後くちばし部4B,4Bを前側の回動支点である軸19周りに上方回動して、苗植付け体4が開く。そして、苗植付け体4,4が上昇途中でカム34の開き作用から開放され苗植付け体4,4が閉じる。なお、上記のカム34、開閉アーム31、連結ロッド32等は、苗植付け体4の開閉機構を構成するが、公知の別の開閉機構を採用してもよい。
【0026】
苗植付け体4,4の上部には、苗植付け体4,4内に苗を案内する筒状の案内体35,35を取り付けている。この案内体35,35は、苗植付け体4,4の開閉支点となる軸19,21より上方に突出させて設けていて、上方から投入された苗を苗植付け体4,4内の下端部に苗を案内する。
【0027】
上記苗植付け体4,4が植付けた苗に対して覆土鎮圧するための接地転動輪36,36;36,36を、左右の苗植付け体4,4の苗植付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。該接地転動輪36,36;36,36は、機体フレーム2bの途中部に前部が左右軸回りに回動自在に取付けた支持フレーム37,37;37,37の後部側にそれぞれ横軸回りに回転自在に取付けている。支持フレーム37,37;37,37の左右内側2つのフレームの後部と左右外側2つのフレームの後部はそれぞれ互いに連結する連結部38,38を有し、該連結部38,38と、機体後部側に設けた支持部材39,39に下降下限位置を設定して上下動自在に取付けた後部支持ロッド40,40の下端部を横軸回りに取付けて支持している。この後部支持ロッド40,40には、接地転動輪36,36;36,36に設定した鎮圧力を与えるようウエイト41,41を装着している。
【0028】
尚、上記の苗植付け体4,4は、前くちばし部4Fと後くちばし部4Bとが機体前後方向に開閉して苗を植付ける構成であるが、くちばし部を左右に分割して、左右くちばし部とし、左右くちばし部を各々機体左右方向に開閉して苗を植付ける構成としても良い。
【0029】
各苗植付け体4,4の左右側方位置には各々左右土飛散防止体75,75が設けられている。この左右土飛散防止体75,75は、苗植付け体4に対向する内側面が円弧面状の鉄板で構成され、その上部を接地転動輪36の支持フレーム37に溶接固着し、その下部は圃場面近くまで垂下し、下端は苗植付け体4が圃場に苗を植付ける位置の側方若しくは若干後方位置になるように設けられている。従って、苗植付け体4の前後くちばし部4F・4Bが前後開閉する(又は、左右くちばし部が左右開閉する)時に圃場の土が左右に飛散するが、この飛散する土を内側面が円弧面状の左右土飛散防止体75,75が受け止めて、苗植付け体4が圃場に苗を植付ける位置の側方若しくは若干後方位置に飛散した土を戻す。そして、その戻された土を鎮圧輪である左右接地転動輪36,36が鎮圧して苗を適切に植付けることができる。よって、苗植付け体4にて圃場に植付けた苗に対して適切な覆土鎮圧が行われ、適切な苗の移植作業が行えると共に苗の植付け姿勢も良くなる。また、左右土飛散防止体75,75は、接地転動輪36の支持フレーム37に設けられているので、接地転動輪36と共に上下移動するので、圃場面からの高さが常に適切に維持され、適切な土の飛散防止及び土戻し効果を奏することができる。
【0030】
また、左右土飛散防止体75,75の他の実施例として、図3に示すように、左右土飛散防止体75,75を各々左右接地転動輪36,36の左右支持フレーム37,37に回動自在に支持し、左右土飛散防止体75,75の上端部間に苗植付け体4が入り込むことができる隙間Zを設けた構成とし、且つ、左右土飛散防止体75,75の上端部には苗植付け体4の外側面に付着した土を取り除く弾性材よりなるスクレーパ75a,75aを固定して設けている。そして、左右土飛散防止体75,75は、各々矢印ホ方向に回動するように巻きバネにて付勢されており、図3の(a)に示すように、左右土飛散防止体75,75の土受け面75cが急傾斜になるようにしている。従って、苗植付け体4が苗を植付ける為に下動して、左右土飛散防止体75,75の上端部間の隙間Zに入り込むと、図3の(b)に示すように、左右土飛散防止体75,75は各々反矢印ホ方向に回動して、土受け面75cは緩傾斜になり、苗植付け体4はそのまま下動して開き苗を植付ける。そして、苗植付け体4が上動する際に、苗植付け体4の外周は弾性材よりなるスクレーパ75a,75aにて付着した土が取り除かれる。また、苗植付け体4が開いて苗を植付ける時に左右側方に飛散させた土は、左右土飛散防止体75,75が受け止めて、苗植付け体4が上動して左右土飛散防止体75,75から離れると、左右土飛散防止体75,75の土受け面75cが急傾斜になり、確実に苗植付け体4が圃場に苗を植付ける位置の側方若しくは若干後方位置に飛散した土を戻す。そして、その戻された土を鎮圧輪である左右接地転動輪36,36が鎮圧して苗を適切に植付けることができる。
【0031】
上記構成の苗移植機は、苗植付け体4,4に上方から苗を落下させて供給する苗供給装置42を備える。
即ち、機体を自走させる走行装置1と、上下動するよう設けて上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体4,4と、該苗植付け体4,4に上方から苗を落下させて供給する苗供給装置42とを備え、前記苗供給装置42には、上下に開口する筒状体43…と該筒状体43…の下側の開口部43a…を開閉する底蓋44…とを有し互いにループ状に連結する複数の苗収容体45…と、該苗収容体45…を前記苗植付け体4,4の上方を通過する状態で機体平面視非円形のループ状の軌跡で周回動させる苗収容体移動機構46と、前記苗収容体45…の底蓋44…を苗植付け体4,4の上方位置で開放する底蓋開放機構47を設けた構成としている。
【0032】
この苗移植機は、以下のように作用するものとなる。走行装置1によって機体が自走する。走行中、苗植付け体4,4は上下動し、上位に位置するときに苗供給装置42から落下供給された苗を上方から苗を受入れて、下位に位置するときに受入れた苗を圃場に放出して苗を圃場に移植する。苗供給装置42は、上下に開口する筒状体43…と該筒状体43…の下側の開口部43a…を開閉する底蓋44…とを有した苗収容体45…が複数備えられて互いにループ状に連結し、苗収容体移動機構46によって苗植付け体4,4の上方を通過する状態で機体平面視非円形のループ状の軌跡で周回動する。そして、底蓋開放機構47により苗植付け体4,4の上方位置で苗収容体45…の底蓋44…が開放される。従って、苗収容体45…の中に収容された苗は、苗収容体45…の周回動によって苗植付け体4,4の上方位置まで移送されそこで落下し苗植付け体4,4に供給される。よって、この苗移植機は、苗供給作業を余裕をもって行え、作業能率の向上が図れる。
【0033】
そして、苗供給装置42は、前記苗収容体45…の外周に円筒外周部43c…を形成し、該円筒外周部43c…に外側から回動自在に係合する係合部48を有して二つの苗収容体45,45を連結する連結体49を複数設け、該連結体49…の前記係合部48…を苗収容体45…の前記円筒外周部43c…に回動自在に係合し該円筒外周部43c…を回動軸として隣の苗収容体45…が回動自在に連結する状態として前記複数の苗収容体45…を互いに連結した構成としている。これにより、この苗移植機は、苗収容体45…は、苗収容体45…の円筒外周部43c…を回動軸として隣の苗収容体45…が回動しながら周回動することになって、苗収容体45…の間隔の変動が生じ難いものとなり、よって、苗植付け体4,4に対する苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができ、また、苗収容体45…の個数と周回動する範囲を設定したうえで、苗収容体の上側開口部43b…を可能な限り広く形成できて、機体のコンパクト化を図りつつ苗収容体45…への苗供給作業をできるだけ容易に行えるものとなる。
【0034】
また、苗供給装置42は、前記苗収容体45…の筒状体43…に底蓋44…を開閉回動可能に取付け、該苗収容体45…のそれぞれに前記連結体49…を一つづつ一体的に取付け、該連結体49…の前記係合部48を隣の苗収容体45…の前記円筒外周部43c…に回動自在に係合させて苗収容体45…を互いに連結した構成としている。これにより、この苗移植機は、苗収容体45…は、苗収容体45…の円筒外周部43c…を回動軸として隣の苗収容体45…が回動しながら周回動し、しかも、苗収容体45…が周回動するとき、連結体49…が周回方向に沿う姿勢で移動するとともに、連結体49…を筒状体43…に一体的に取付けた苗収容体45…も、底蓋44…の取付部50…が周回方向に対し設定方向に位置する状態を維持しながら移動することになる。よって、苗収容体45…の底蓋44…は、苗植付け体4,4の上方位置においていつも同じ方向に開放動作するものとなり、底蓋開放機構47による底蓋44…の開放が適確に作動するようになり、苗植付け体4,4に対する苗供給が一層適正に行われて適確な苗の移植ができるものとなる。
【0035】
そしてまた、この苗移植機は、前記苗植付け体4,4は左右方向に複数体並べて設け、前記苗供給装置42は、苗収容体45…が機体平面視で左右方向に直線的に移動する区間SSを有する軌跡で周回動する構成とし、且つ、苗収容体45…が左右方向に直線的に移動する区間SSで左右に並列する複数の苗植付け体4,4の上方を通過するように配置した構成として、圃場に苗を複数条同時に移植されるものとしている。よって、複数の苗植付け体4,4に対して苗を供給する苗供給装置42を簡略に構成でき、また、苗収容体45…に対して苗を供給しやすくするために苗収容体45…が連続的に移動するように苗収容体移動機構46を駆動しても、左右方向に複数並列する苗植付け体4,4のそれぞれに対しそれぞれ同様な落下軌跡で苗を苗収容体45…から落下供給できて、複数の苗植付け体4,4に対する苗の供給が適確に行え、複数条同時の苗移植が適確に行える。
【0036】
ところで、本例のように、苗植付け体4,4を左右に二体並べて設けて同時に2条植付け可能に構成した場合は、右側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45と左側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45とが交互になるように連結し、且つ、右側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45が右側の苗植付け体4の上方に位置するとき、左側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45が丁度左側の苗植付け体4の上方に位置する状態となるように構成し、更に、苗植付け体4,4の植付昇降動作が一動作する間に苗収容体45が2個分周回移動するように構成する。これにより、苗収容体45…が左右の苗植付け体4,4の上方を左右方向に直列的に通過しながら左右両方の苗植付け体4,4に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、左右の苗植付け体4,4の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗収容体45…が生じないよう余すことなく左右両方の苗植付け体4,4に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、左右に並ぶ二体の苗植付け体4,4に対して確実に苗を供給できて2条植えが適確に行える。
【0037】
以下に、苗供給装置42の苗収容体移動機構46の構成について説明する。即ち、ループ状に連結した苗収容体45…を巻き掛ける移動作用体51,51を機体の左右に設け、該移動作用体51,51を駆動回転する構成として、ループ状に連結した苗収容体45…を機体平面視で左右に長い長円軌跡を描かせて周回移動する構成としている。移動作用体51,51の外周には、その外周に巻き掛けられた苗収容体45…の円筒外周部52…に係合する凹部を苗収容体45…の連結間隔に対応する間隔で複数形成して、苗収容体45…を確実に移動させられるように設けている。移動作用体51,51の駆動構成は、苗植付け体4,4を間欠駆動する前記間欠駆動機構Kの伝動上手側で前記株間変更用変速部C3の伝動下手側の伝動経路から動力を取出して移動作用体51,51を連続回転駆動し、苗収容体45…を連続的に周回移動させるように構成している。具体的は、植付け伝動ケース18の第一ケース部18aの左側部から連続回転する回転軸53aを突出させ、該回転軸53aに自在継ぎ手を介して伝動軸53bを連結し、該伝動軸53bにて機体左側に設けた伝動ケース54に伝動し、該伝動ケース54から上方に突出させた回転軸55に一体回転するように取付けた左側の移動作用体51を駆動回転する構成としている。また、回転軸55にはスプロケット56も一体回転するように取付け、該スプロケット56と、右側の移動作用体51の回転軸57に一体回転するように取付けたスプロケット58とに伝動チェン59を巻き掛けて、左右の移動作用体51,51の両方を駆動回転する構成としている。ところで、一方側の移動作用体を駆動回転する構成の場合、駆動回転する移動作用体に取り込まれていく側の苗収容体の列は緊張した連結状態となるが、駆動回転する移動作用体から繰出される側の苗収容体の列は弛緩した連結状態となる。このため、駆動回転する移動作用体から苗収容体が繰出される個所で、移動作用体が苗収容体に係合する部位から苗収容体が外れることがあり、また、駆動回転する移動作用体から苗収容体が繰出された後の苗収容体の列が乱れて、苗収容体の列の下側を支持する部材等との摩擦が大きくなって突然引っかかったようになり、苗収容体の移動が円滑に行われなくなることが生じる。しかしながら、上記のように左右の移動作用体51,51の両方を駆動回転する構成としたので、移動作用体51,51から苗収容体45…が外れたり苗収容体45…の列が乱れたりすることが生じにくくなって苗収容体45…が円滑に移動するものとなり、これにより苗植付け体4,4への苗の供給が良好に行われて苗移植作業を良好に継続できるものとなった。
【0038】
なお、前記伝動ケース54内の伝動機構は、該伝動ケース54の前側に突出する入力軸60が、その前端部が前記伝動軸53の後端部と自在継ぎ手を介して連結して伝動回転し、伝動ケース54内で、入力軸60の後端部に形成したベベルギヤ61が、前記移動作用体51の回転軸55と一体回転するように取付けたベベルギヤ62と噛み合うように設けている。従って、前記伝動軸53を介して伝動されてきた回転動力は、この伝動ケース54内で上下方向の前記回転軸55回りの回転に変換されて前記移動作用体51を伝動回転する構成としている。本例では、苗供給装置42の後側に移動してきた苗収容体45…が右側に移動する方向となるように苗収容体45…の周回移動方向Dを設定していて、操縦ハンドル2の左側方で苗供給装置42の後側位置に立って苗収容体45…に右手で供給する苗供給作業形態で作業者が苗を供給しやすいようになっている。
【0039】
本例では、機体の左右一方側に複数の苗植付け体4,4を左右に並べて設け、その左右反対側に、苗供給装置42の移動作用体51,51を駆動回転する動力を入力して左右一方側の移動作用体51の回転軸55に伝動する上記伝動要素60,61,62を備え該回転軸55を上方に突出させて駆動回転可能に支持する上記伝動ケース54を設けた構成としている。従って、仮に、上記伝動ケース54を苗植付け体4,4を配置した側に設けた場合には、苗植付け体4,4と苗収容体45…との間に上記伝動ケース54が入り込んで、苗供給装置42が高い位置に配置されてしまうことになったり、また、それを回避するために、外側方に苗供給装置42が突出したものとなってしまう。しかしながら、本例では、上記のように左右に振り分けて構成したので、機体の左右重量バランスが良好になり、苗供給装置42の左右幅を過大に広く構成することなく必要充分な幅を有しつつコンパクトに構成でき、尚且つ、苗供給装置42から苗植付け体4,4への苗の落下距離ができるだけ短くなるよう苗供給装置42を低く配置できて、苗植付け体4,4への苗の落下供給が適確に行え、また、苗供給装置42への苗の供給が容易に行える高さに設定しやすくなる。従って、上記のように構成したことにより、機体の左右重量バランスが良好になるとともに、機体の構成をできるだけコンパクトに構成でき、しかも、苗植付け体4,4への苗の落下供給が適確に行え、且つ、苗供給装置42への苗供給が容易に行える高さに設定しやすい構成のものとなる。
【0040】
苗供給装置42を駆動する動力は、前記のとおり、苗植付け体4,4を間欠駆動する前記間欠駆動機構Kの伝動上手側で、前記株間変更用変速部C3の伝動下手側の伝動経路から取出している。これにより、苗植付け体4,4は間欠的に駆動し、苗供給装置42は連続的に駆動する構成とした苗移植機にあって、苗植付け体4,4が昇降軌跡Tの上位において間欠的に停止する時間を変更して苗植付株間を変更可能とするよう株間変更用変速部C3を間欠駆動機構Kの伝動上手側に設けた構成において、上記のように苗供給装置42を駆動する動力を取出す構成としたので、間欠駆動する苗植付け体4,4の間欠停止時間を変更して苗植付株間を変更しても、それに対応して、連続的に駆動される苗供給装置42の動作速度も変更されるので、苗供給装置42から苗植付け体4,4への苗の供給が良好に行われ、作物等の種類に応じて、適宜、苗植付株間を変更調節しても良好に苗移植作業が行えるものとなる。
【0041】
また、苗供給装置42への伝動を入り切りするクラッチ手段CL1を、苗供給装置42を駆動する動力を前記間欠駆動機構Kの伝動上手側で、前記株間変更用変速部C3の伝動下手側から移動作用体51を回転駆動する回転軸55への伝動経路に設け、一方、苗植付け体4,4への伝動を継続して切ることを可能とするクラッチ手段CL2を前記間欠駆動機構Kに設けている。そして、苗供給装置42側のクラッチ手段CL1と苗植付け体4,4側のクラッチ手段CL2は、操縦ハンドル2側に設けた一つの人為操作具(例えば操作レバー等)によって同時に切り操作及び入り操作されるように構成している。前記間欠駆動機構Kには、苗植付け体4,4を一サイクル植付け動作させて自動的に停止させる一回転停止機構とこの一回転停止機構による苗植付け体4,4を一サイクル植付け動作の開始操作を行う一回転開始機構を備えて、その一回転開始機構の作動タイミングが前記株間変更用変速部C3によって調節される構成となる。従って、前記一回転開始機構の作用部と一回転停止機構の非作用部との位置関係を作用しあわない位置に変更操作するだけで、苗植付け体4,4を設定位置で継続的に停止できる。このように、間欠駆動機構Kを利用して前記クラッチ手段CL2を構成すれば、苗植付け体4,4を設定位置で停止でき、且つ、構成の簡略化が図れる。一方、苗供給装置42は連続的に駆動するため、前記クラッチ手段CL1は間欠駆動機構Kの伝動上手側に設けることになり、苗植付け体4,4側の前記クラッチCL2を上記ように間欠駆動機構Kを利用すると当該クラッチCL2と共用できない。しかしながら、苗供給装置42側のクラッチ手段CL1と苗植付け体4,4側のクラッチ手段CL2を一つの人為操作具によって同時に切り操作及び入り操作するように構成することによって、苗植付け体4,4側の前記クラッチCL2を上記ように間欠駆動機構Kを利用する利点を生かしながら、連続的に駆動される苗供給装置42の停止及び駆動再開を、苗植付け体4,4の停止及び駆動再開のタイミングに合わせて行うことができる。
【0042】
なお、前記苗供給装置42側のクラッチ手段CL1は、伝動負荷が設定値以上になると自動的に動力を切断する機構を備えている。また、苗植付け体4,4側と苗供給装置42側とに動力が分岐する前の作業部系伝動経路にも、伝動負荷が設定値以上になると自動的に動力を切断する機構を有するクラッチ手段CL3を設けている。そして、該クラッチ手段CL3において自動的に動力を切断する伝動負荷の設定値は、前記苗供給装置42側のクラッチ手段CL1において自動的に動力を切断する伝動負荷の設定値よりも高い値に設定している。これにより、前記苗供給装置42への苗供給作業中に作業者等が誤って接触して苗収容部45…の周回移動を強制的に停止させるような過負荷状態が苗供給装置42の駆動系に生じても、前記クラッチ手段CL1が作動して苗供給装置42の駆動系の破損を適宜回避できるようになる。この苗供給装置42への伝動を自動的に遮断するのを苗植付け体4,4側と苗供給装置42側とに動力が分岐する前の作業部系伝動経路に設けた前記クラッチ手段CL3にて動作させようとすると、圃場に苗を植付けるために土壌中に突入するために伝動負荷が苗供給装置42の駆動系よりも大きいものとなる苗植付け体4,4の駆動が適確に継続することができなくなる。しかしながら、上記のように構成したことにより、苗植付け体4,4と苗供給装置42の駆動を適確に継続できるようにし、且つ、苗植付け体4,4に対して生じた過負荷と苗供給装置42に対して生じた過負荷をそれぞれ前記クラッチ手段CL1,CL3にて適確に解放できて、苗植付け体4,4と苗供給装置42の両駆動系を適確に保護することができる。
【0043】
上記苗供給装置42の支持構成は、以下のように構成している。左右の車輪6,6;7,7の間にエンジン5とミッションケース8を配置した機体前部側から、機体下部側を後方に向って延びて後部側を後上がり状態に形成した機体フレーム2bを設けて該機体フレーム2bの後端部に操縦ハンドル2を装着するとともに、前記機体前部側から機体上部側を後方に向って延びる第一支持フレーム63を設けて該第一支持フレーム63の後部側を前記機体フレーム2bと連結し、該支持フレーム63から左右両外側方に延びる第二支持フレーム64を設け、該第二支持フレーム64の左右両側部で、ループ状に連結した苗収容体45…を機体平面視で左右に長い長円軌跡を描かせて周回移動させる左右の移動作用体51,51の回転軸を支持する構成とした。従って、第一支持フレーム63が、操縦ハンドル2を装着する機体フレーム2bとともに機体の中央部寄りに配置されるとともに機体フレーム2bと連結して機体の左右バランスが良好で且つ強硬なフレーム構造を形成するものとなり、そして、このように構成した第一支持フレーム63から左右両外側方に第二支持フレーム64を延ばして、その左右両側で苗収容体45…を周回移動させる左右の移動作用体51,51の回転軸を支持するので、苗供給装置42の支持構造が簡潔且つ充分な強度を有したものとなり、機体のコンパクト化、軽量化が図れる。
【0044】
また、第二支持フレーム64を、第一支持フレームと連結する側の基部側フレーム部64aと、移動作用体51,51の回転軸を支持する側の支持部側フレーム部64bとで分割構成し、基部側フレーム部64aに対して支持部側フレーム部64bを左右方向に移動調節可能に設けている。これにより、左右の移動作用体51,51の外周に巻き掛けられるループ状に連結した苗収容体45…の緊張状態を適宜調節することが容易に行え、組み立てやメンテナンスが容易になる。
【0045】
苗供給装置42には、苗収容体45…を、その周回移動軌跡に沿う移動を案内するガイド体65,65,65を苗収容体45…の周回移動軌跡の内側と外側とに設けている。一方、苗収容体45…には、周回移動軌跡の内側と外側に突出する突出部66を形成し、前記ガイド体65,65,65が前記突出部66の上側に位置し且つ苗収容体45…を周回移動軌跡の内外から挟み込むように配置した構成にしている。これにより、苗収容体45…の周回移動が適確且つ円滑に行われ、苗収容体45…が左右方向に直線的に移動する区間SSで苗植付け体4,4の上方を通過するように配置した構成にあって、周回移動中に苗収容体45…が前後に揺動して、苗植付け体4,4の上方を通過するときに苗収容体45…が前後にずれて苗植付け体4,4に対する苗供給が適確に行われなくなるのを防止できる。しかも、苗収容体45…に形成した突出部66の上側に前記ガイド体65,65,65が位置するので、周回移動中に苗収容体45…の浮き上がりも防止されて、苗収容体45…の周回動が適確に行われるようになる。苗収容体45…の周回移動軌跡の下方には、苗収容体45…の周回移動中で且つ苗植付け体4,4の上方位置以外で、苗収容体45…を、下方回動により開放動作する底蓋44が閉じた状態となるようにして支持する支持体67を周回移動軌跡に沿って設けている。従って、前記ガイド体65,65,65と前記突出部66の上記構成は、苗収容体45…の底部に設けた底蓋44が周回移動中に開いて苗収容体45…内に収容した苗が底蓋44が開いて生じた隙間からはみ出て苗を傷めることも防止するものとなる。また、本例では、苗収容体45…のそれぞれに一体的に設けた連結体39…に上記突出部66を形成したので、構成の簡略化が図れている。なお、前記支持体66と前記ガイド体65,65,65は、第一支持フレーム63に取付けた取付部材68に取付けて支持している。
【0046】
苗供給装置42の苗収容体45…の周回移動軌跡の内側部位は、上側をガバー体69で覆っている。従って、作業者が苗供給装置42の後側から苗収容体45…に苗を供給するときに、このカバー体69の上に苗を一時的に置け、しかも、このカバー体69上に置いた苗は、苗収容体45…に苗供給する作業者から取出すのも容易であり、従って、苗供給作業が容易に行え、作業能率の向上が図れる。本例のカバー体69は、苗収容体45…の周回移動軌跡の内側ほぼ全域を覆うように構成しているので、カバー体69の上に置いた苗が落下することが生じ難い。また、カバー体69の上面が平坦な面となるように形成しているので、カバー体69の上に置いた苗が取り出し難い個所に移動することが生じにくくなり、作業性の向上が図れる。更に、カバー体69の上面をざらつきのある面に形成しておけば、苗が滑りにくく、前記の効果が一層顕著になる。
【0047】
以下、苗供給装置42の苗収容体45…の底蓋44…を苗植付け体4,4の上方位置で開放する底蓋開放機構47について説明する。
まず、前記のとおり、苗収容体45…の周回移動軌跡の下方には、苗収容体45…の周回移動中で且つ苗植付け体4,4の上方位置以外で、苗収容体45…を、下方回動により開放動作する底蓋44が閉じた状態となるようにして支持する支持体67を周回移動軌跡に沿って設けている。この支持体67は、苗植付け体4,4の上方位置では、底蓋44が下方回動して開放動作可能となるように底蓋44の下方領域から退避した位置に変位させて設けている。また、底蓋44を下方回動可能に取付けている取付部50を苗収容体45…の周回移動方向Dの上手側になるように構成している。
【0048】
更に、この支持体67は、左右の苗植付け体4,4のそれぞれに対応して苗を供給する苗収容体45…を設定しており、例えば、本例のように、苗植付け体4,4を左右に二体並べて設けて同時に2条植付け可能に構成した場合には、前記のように、右側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45と左側の苗植付け体4に落下供給する苗収容体45とを交互に連結している。従って、右側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が右側の苗植付け体4の上方を通過するときにのみその苗収容体45の底蓋44が開放されるようにし、且つ、左側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が左側の苗植付け体4の上方を通過するときにのみその苗収容体45の底蓋44が開放されるようにする必要がある。このため、底蓋44に苗収容体45…の周回移動軌跡に対して外側に突出する突出部44aを設けたものと、内側に突出する突出部44bを有するものを設け、外側突出部44aを設けた底蓋44と内側突出部44bを設けた底蓋44とを互いに連結する苗収容体45…に対して交互に設ける。そして、先に苗植付け体4の上方を通過することになる右側(周回移動方向Dの上手側)の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が右側の苗植付け体4の上方を通過するとき、前記支持体67は、前記突出部44a或は44bを支持する位置から退避し、且つ、反対側に突出する突出部44b或は44aを支持する位置に変位するように設ける。また、後に苗植付け体4の上方を通過することになる左側(周回移動方向Dの下手側)左側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が左側の苗植付け体4の上方を通過するとき、前記支持体67は、前記突出部44b或は44aを支持する位置から退避し、且つ、反対側に突出する突出部44a或は44bを支持する位置となる個所に変位するように設ける。これにより、右側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が右側の苗植付け体4の上方を通過するときは、その苗収容体45の底蓋44が開放可能となり、且つ、左側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が右側の苗植付け体4の上方を通過するときは、その苗収容体45の底蓋44は閉じた状態に支持される。また、左側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が左側の苗植付け体4の上方を通過するときは、その苗収容体45の底蓋44が開放可能となり、且つ、右側の苗植付け体4に落下供給するよう設定した苗収容体45が左側の苗植付け体4の上方を通過するときは、その苗収容体45の底蓋44は閉じた状態に支持される。従って、この構成を採用すれば、左右の苗植付け体4,4の上方位置に移動した苗収容体45…の底蓋44は、苗供給すべき苗植付け体4に対応して支持体67による支持状態が解除されて開放動作することになる。よって、左右の苗植付け体4,4に対して適確に苗を落下供給でき、良好に苗移植作業が行える。
【0049】
更に、本例では、苗収容体45が、苗植付け体4,4の上方位置に移動しても、苗植付け体4,4が苗収容体45の直下に位置する個所まで上昇するまで底蓋44を閉じた状態で支持し、且つ、苗植付け体4,4が苗収容体45の直下に位置する個所まで上昇すると前記底蓋44の支持状態を解除して底蓋44を開放動作させる可動支持体70を設けている。この可動支持体70は、底蓋44を閉じた状態に支持する底蓋支持位置と底蓋44を開放可能にする底蓋非支持位置とに移動可能に設けて、苗植付け体4,4とともに昇降動する昇降部材71,71と接当することにより可動支持体70が底蓋支持位置から底蓋非支持位置に移動し、前記昇降部材71,71が接当しないときにはスプリング等の弾性部材によって底蓋支持位置に位置するように構成している。従って、苗植付け体4,4が間欠駆動機構KKによって間欠的に動作するのに対し苗収容体45が連続的に周回移動する構成にあっても、苗植付け体4,4が苗収容体45の直下に位置する個所まで上昇してから底蓋44が開放動作することになって、苗収容体45から苗植付け体4,4への苗の落下供給が良好に行われる。
【0050】
苗移植機の機体上部には、苗供給装置42に供給する苗が収納されているポットトレイPT(ポットトレイPTは、育苗箱の一種で、複数のポットを縦横に配列してその各ポットにて苗を育苗する一般的なポットトレイである。)の長手方向を左右に向けた状態で3個載置することができる苗載台80を機体側面視で機体前部位置から苗供給装置42の前側位置まで設けている。この苗載台80は、杆体を溶接して枠組み構成し機体平面視で縦長い長方形状とし、下部を前記植付け伝動ケース18の第一ケース部18aに基部を固定した支持フレーム81で支持固定し、前部が高くて後部が低い状態に傾斜して設けている。また、苗載台80は、前部及び左右側部にはポットトレイPTが落下するのを防止する受け部80aを設けているが、後部は開放した構造となっており、苗載台80に載置したポットトレイPTは後方に向けて移動できる構成となっている。
【0051】
82はポットトレイPTの長手方向を左右に向けた状態で1個載置することができる補助苗載台であって、苗載台80の後端部から苗供給装置42の前後中央位置まで、第一支持フレーム63に下部を固定した後部支持フレーム83の上端部に設けた左右軸84に前後傾斜回動及び固定自在に設けている。即ち、傾斜調節レバー85を補助苗載台82と一体に設け、該傾斜調節レバー85を補助苗載台82の前端が苗載台80の後端と一致する状態(苗載台80の傾斜と一致する状態)と、補助苗載台82の前端が苗載台80の後端よりも下方位置になる状態とに固定できるように左右軸84に基部を固定したレバー係止具86に係止できる構成となっている。
【0052】
そして、補助苗載台82の前端を苗載台80の後端と一致する状態にした時に、苗載台80に載置されたポットトレイPTの後端面を受け止める左右方向の棒材よりなるストッパー87を補助苗載台82の前端部に設けている。また、補助苗載台82の前部底面にはポットトレイPTを斜めにして下方に通過させることができる空間部88が形成されている。尚、82aは、補助苗載台82に載置されたポットトレイPTが落下するのを防止する受け部である。
【0053】
89は苗載台80の下方空間に配置された空になったポットトレイPTを収納する空苗箱収納部であって、杆体を溶接して枠組み構成し機体平面視で左右方向に長い箱状の構成となっており、第一支持フレーム63に下部を固定した苗箱シュータ90の前端部に溶接固定されている。この空苗箱収納部89には、長手方向を左右に向けた状態のポットトレイPTを複数個載置収納することができる。また、空苗箱収納部89の左右側壁部には、上方に開放した空間89a,89aが形成されており、空苗箱収納部89に収納されたポットトレイPTを該空間89aから手で掴んで取出し易い構成となっている。
【0054】
苗箱シュータ90は、前部が低くて後部が高い状態に傾斜して設け、後部を前記補助苗載台82の前部底面に設けたポットトレイPTを斜めにして下方に通過させる空間部88の下方に位置させている。
【0055】
91は苗箱シュータ90の上方に配置された苗箱押さえ装置であって、後部を支持フレーム81に回動自在に支持し、前端を空苗箱収納部89の前後中央部に位置させて設けている。
【0056】
次に、苗移植作業時における上記の苗載台80、補助苗載台82、苗箱シュータ90、苗箱押さえ装置91及び空苗箱収納部89の作用について説明する。
先ず、傾斜調節レバー85を操作して補助苗載台82をその前端が苗載台80の後端と一致する状態(苗載台80の傾斜と一致する状態)として、苗を育苗したポットトレイPTを苗載台80に長手方向を左右に向けた状態で3個載置し、補助苗載台82に1個載置する。そして、機体を前進させて各部を駆動させて移植作業を行なう際に、作業者は苗供給装置42の後方で機体の左右一側の作業位置B(若しくは、操縦ハンドル2の左右グリップ部2a,2a間の操縦位置)で苗収容体45への苗供給を行なうが、この作業者の位置に近い補助苗載台82に載置したポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給することができ、苗供給作業が容易に且つ作業効率良く行える。また、補助苗載台82は前側が高く後側が低い状態に傾斜しているので、補助苗載台82に載置したポットトレイPTの上面は作業者の方を向いており、このポットトレイPTから苗を取出す作業も容易で且つ効率良く行なえる。
【0057】
そして、補助苗載台82に載置したポットトレイPTの苗を全て取出して、このポットトレイPTが空になると、作業者はこの空のポットトレイPTの後端部を掴んで前方に向けて傾斜させて、補助苗載台82前部の空間部88から下方に向けて苗箱シュータ90に落とす。すると、この空のポットトレイPTは、苗箱シュータ90上を滑って苗箱押さえ装置91で上面を押さえられた状態で前方に移動し、空苗箱収納部89内に収納される。この時、空苗箱収納部89内に収納されたポットトレイPTは、苗箱押さえ装置91の前端部で上方から押さえられた状態となり、空のポットトレイPTが空苗箱収納部89から落下することを防止できる。
【0058】
次に、作業者は、傾斜調節レバー85を操作して補助苗載台82前端が苗載台80の後端よりも下方位置になる状態にする。すると、苗載台80に載置された最後部のポットトレイPTの後端面を受け止めていたストッパー87がポットトレイPTの後端面を受け止める位置から下方に移動するので、苗載台80に載置された最後部のポットトレイPTが苗載台80から補助苗載台82上まで移動する。このポットトレイPTが補助苗載台82上に移動した時点で、作業者は傾斜調節レバー85を操作して補助苗載台82前端が苗載台80の後端と一致する状態に戻して補助苗載台82を固定する。すると、再び、ストッパー87が苗載台80に載置されたポットトレイPTの後端面を受け止めた状態となる。そこで、作業者は、新たに補助苗載台82に載置されたポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給し苗移植作業を継続する。以下同様にして、苗載台80に載置したポットトレイPTを順次補助苗載台82に移動させて、苗移植作業を行なう。そして、苗載台80に載置されたポットトレイPTを全て使い切ると、機体を停止して、空のポットトレイPTを空苗箱収納部89から取り出し、苗載台80及び補助苗載台82に新たに苗を育苗したポットトレイPTを載置し、苗移植作業を再開する。
【0059】
このようにして、苗載台80に載置した複数のポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給する苗供給作業が容易に且つ作業効率良く行える。また、空のポットトレイPTを空苗箱収納部89内に収納する作業も容易で効率よく行えて、苗移植作業の作業性及び作業効率が向上する。更に、空苗箱収納部89及び苗箱シュータ90は苗載台80の下方空間を利用して配置しているので、機体を簡潔に且つコンパクトに構成でき、小型の苗移植機を構成することができ、操作性が向上する。
【0060】
図12は、他の苗載台80の例を示す。
即ち、苗移植機の機体上部には、苗供給装置42に供給する苗が収納されているポットトレイPT(ポットトレイPTは、育苗箱の一種で、複数のポットを縦横に配列してその各ポットにて苗を育苗する一般的なポットトレイである。)の長手方向を左右に向けた状態で4個載置することができる苗載台80を機体側面視で機体前部位置から苗供給装置42の前後中央位置まで設けている。この苗載台80は、杆体を溶接して枠組み構成し機体平面視で縦長い長方形状とし、下部中央を前記植付け伝動ケース18の第一ケース部18aに基部を固定した支持フレーム81で支持固定し、後部を第一支持フレーム63に下部を固定した後部支持フレーム83で支持固定し、前部が高くて後部が低い状態に傾斜して設けている。また、苗載台80は、前後部及び左右側部にはポットトレイPTが落下するのを防止する受け部80aを設けている。
【0061】
そして、苗載台80の後端からポットトレイPTが1個載置できる位置に、その位置より前方にあるポットトレイPTの移動を受け止めるストッパー87が苗載台80の苗載置面よりも上方に突出してポットトレイPTの移動を受け止める状態と苗載台80の苗載置面よりも下方に引っ込んでポットトレイPTが後方に移動できる状態とに切り替え自在に設けられている。また、ストッパー87よりも後方位置で苗載台80の底面にはポットトレイPTを斜めにして下方に通過させることができる空間部88が形成されている。尚、ストッパー87は、この空間部88の前端部で突出及び引き込み作動する。
【0062】
89は苗載台80の下方空間に配置された空になったポットトレイPTを収納する空苗箱収納部であって、杆体を溶接して枠組み構成し機体平面視で左右方向に長い箱状の構成となっており、第一支持フレーム63に下部を固定した苗箱シュータ90の前端部に溶接固定されている。この空苗箱収納部89には、長手方向を左右に向けた状態のポットトレイPTを複数個載置収納することができる。また、空苗箱収納部89の左右側壁部には、上方に開放した空間89a,89aが形成されており、空苗箱収納部89に収納されたポットトレイPTを該空間89aから手で掴んで取出し易い構成となっている。
【0063】
苗箱シュータ90は、前部が低くて後部が高い状態に傾斜して設け、後部を前記補助苗載台82の前部底面に設けたポットトレイPTを斜めにして下方に通過させる空間部88の下方に位置させている。
【0064】
91は苗箱シュータ90の上方に配置された苗箱押さえ装置であって、前後中央部を支持フレーム81に回動自在に支持し、前端を空苗箱収納部89の前後中央部に位置させて設け、後端部が前記ストッパー87を構成している。通常は、苗箱押さえ装置91の後部側が重いので、図12に示すようにストッパー87が苗載台80の苗載置面よりも上方に突出してポットトレイPTの移動を受け止める状態となっている。そして、空のポットトレイPTを苗載台80の空間部88から下方に向けて苗箱シュータ90に落とし、この空のポットトレイPTが苗箱シュータ90上を滑って苗箱押さえ装置91の自重で上面を押さえられた状態で前方に移動して空苗箱収納部89内に収納される時、ポットトレイPTの通過により苗箱押さえ装置91の後部が上動するので、自動的に苗箱押さえ装置91の後端部に設けたストッパー87は苗載台80の苗載置面よりも下方に引っ込んでポットトレイPTが後方に移動できる状態になる。
【0065】
次に、苗移植作業時における上記の例の苗載台80、苗箱シュータ90、苗箱押さえ装置91及び空苗箱収納部89の作用について説明する。
先ず、苗を育苗したポットトレイPTを苗載台80に長手方向を左右に向けた状態でストッパー87の前方位置に3個載置し、ストッパー87の後方位置に1個載置する。そして、機体を前進させて各部を駆動させて移植作業を行なう際に、作業者は苗供給装置42の後方で機体の左右一側の作業位置B(若しくは、操縦ハンドル2の左右グリップ部2a,2a間の操縦位置)で苗収容体45への苗供給を行なうが、この作業者の位置に近い苗載台80のストッパー87後方位置に載置したポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給することができ、苗供給作業が容易に且つ作業効率良く行える。また、苗載台80は前側が高く後側が低い状態に傾斜しているので、苗載台80に載置したポットトレイPTの上面は作業者の方を向いており、このポットトレイPTから苗を取出す作業も容易で且つ効率良く行なえる。
【0066】
そして、この苗載台80に載置したポットトレイPTの苗を全て取出して、このポットトレイPTが空になると、作業者はこの空のポットトレイPTの後端部を掴んで前方に向けて傾斜させて、苗載台80の空間部88から下方に向けて苗箱シュータ90に落とす。すると、この空のポットトレイPTは、苗箱シュータ90上を滑って苗箱押さえ装置91で上面を押さえられた状態で前方に移動し、空苗箱収納部89内に収納される。この時、空のポットトレイPTの通過により苗箱押さえ装置91の後部が上動するので、自動的に苗箱押さえ装置91の後端部に設けたストッパー87は苗載台80の苗載置面よりも下方に引っ込んでポットトレイPTが後方に移動できる状態になり、ストッパー87にて受け止められていたポットトレイPTが後方に移動し、その移動が終了した時点で、苗箱押さえ装置91の後部側が重いので再び自動的にストッパー87は苗載台80の苗載置面よりも上方に突出してポットトレイPTの移動を受け止める状態となり、ポットトレイPTを受け止める。
【0067】
そこで、作業者は、苗載台80のストッパー87の後方に移動して来た新たなポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給し苗移植作業を継続する。以下同様にして、苗載台80に載置したポットトレイPTが順次後方に移動して、苗移植作業を行なう。そして、苗載台80に載置されたポットトレイPTを全て使い切ると、機体を停止して、空のポットトレイPTを空苗箱収納部89から取り出し、苗載台80に新たに苗を育苗したポットトレイPTを載置し、苗移植作業を再開する。
【0068】
このようにして、苗載台80に載置した複数のポットトレイPTから1株ずつ苗を取出して各苗収容体45に苗を供給する苗供給作業が容易に且つ作業効率良く行える。また、空のポットトレイPTを空苗箱収納部89内に収納する作業も容易で効率よく行えて、苗移植作業の作業性及び作業効率が向上する。更に、空苗箱収納部89及び苗箱シュータ90は苗載台80の下方空間を利用して配置しているので、機体を簡潔に且つコンパクトに構成でき、小型の苗移植機を構成することができ、操作性が向上する。
【0069】
また、苗載台80のポットトレイPTを移動させる時、エンジン5のアクセルを自動操作して機体の進行速度を遅くするようにすると(例えば、空のポットトレイPTの通過により苗箱押さえ装置91の後部が上動することをセンサで検出して、ポットトレイPTを移動させる時と判断し、該センサの検出にてアクセルを作動させてエンジン5の回転を所定時間遅くする)、苗載台80のポットトレイPTを移動時には各苗収容体45に苗を供給する作業が一時的に行えないが、機体進行速度が自動的に遅くなるので、この進行速度が遅い間にポットトレイPTの移動を行えて、連続苗移植作業が容易に且つ効率良く行える。
【0070】
また、各苗収容体45に苗を供給する作業が適切に余裕をもって行えているか如何かを判断して、機体の進行速度を制御するようにすると、作業者にとって適切な移動速度となって、容易で良好な苗移植作業が行なえる。即ち、苗供給装置42のF位置にある苗収容体45に苗が入っているか如何かを判断し(F位置に苗収容体45の重量を検出するセンサを設けて、苗が入っている時は苗収容体45の重量が重くなるので、苗収容体45の重量が所定値より重いときは苗が入っていると判断する)、F位置にある苗収容体45に苗が入っている時は適切に各苗収容体45への苗供給作業が行えているので機体の進行速度は変更せず、F位置にある苗収容体45に苗が入っていない時は各苗収容体45への苗供給作業が遅れている時なので、エンジン5のアクセルを操作して機体の進行速度を遅くする。このようにすると、作業者の各苗収容体45への苗供給作業の状態に応じて自動的に機体の進行速度が制御されるので、容易に且つ効率良く苗移植作業が行える。
【0071】
また、苗植付け体4,4の作動回数を検出するセンサを設けて、苗の植付本数を計算し、1個のポットトレイPT分の苗を植付けた時に、エンジン5のアクセルを操作して機体の進行速度を遅くする。このようにすると、苗載台80のポットトレイPTを移動する時に自動的に機体の進行速度が遅くなるので、容易に且つ効率良く苗移植作業が行える。
【0072】
最後に、上記の実施例において、苗載台80の後部は後部支持フレーム83に対して機体左右方向の支持軸にて苗載台80の前部が上下動自在になるように回動自在に支持し、苗載台80の前部側を支持する支持フレーム81は伸縮作動する電動モータにて上下長さを変更自在に設け、該電動モータの作動にて苗載台80の前後傾斜角度を変更できる構成とする。そして、機体旋回時に、前記操作具Lを操作して昇降用油圧シリンダ12を作動させて左右車輪6,6を下動して機体を上昇させた時に、該操作具Lの機体上昇操作に連携して電動モータを作動させて支持フレーム81の上下長さを長くし、苗載台80の前後傾斜角度を急傾斜にして、前部側を更に高くする。すると、機体旋回時に機体を上昇させて前部が下がる状態で旋回するが、機体が前傾姿勢になっても苗載台80は前部側が高くなっているので、苗載台80に載置したポットトレイPTが前方に落ちてしまうような事態を回避でき、良好な機体の旋回が行える。また、苗載台80の傾斜が急傾斜になることによって苗載台80の重心が機体後方に移動し機体前部側荷重が減るので、機体旋回時に作業者が操縦ハンドル2を支持する支持荷重が軽減されて旋回が容易に行えるようになる。
【0073】
また、背の高い苗を移植する時に苗供給装置42の各苗収容体45の上下長さの長いものを用いる場合(各苗収容体45内に上下長さの長い筒を入れて、各苗収容体45の上下長さを長くする)、電動モータを作動させて支持フレーム81の上下長さを長くして苗載台80の前後傾斜角度を急傾斜にして、苗載台80と各苗収容体45との干渉を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】苗移植機の側面図。
【図2】苗移植機の平面図。
【図3】左右土飛散防止体の他の例を示す作用説明用背面図。
【図4】苗載台及び補助苗載台の平面図。
【図5】苗移植機の伝動構成を示す説明図。
【図6】苗収容体の連結構成を示す斜視図。
【図7】苗供給装置の一部を示す平面図。
【図8】苗供給装置の一部を示す断面側面図。
【図9】苗供給装置から苗植付け体への苗供給部を示す正面図。
【図10】苗供給装置から苗植付け体への苗供給部を示す平面図。
【図11】苗収容体連結状態を示す平面図。
【図12】苗載台の他の例を示す苗移植機の側面図。
【符号の説明】
【0075】
1 走行装置
4 苗植付け体
42 苗供給装置
45 苗収容体
80,82 苗載台(82 補助苗載台)
88 空間部
89 空苗箱収納部
90 苗箱シュータ
91 苗箱押さえ装置
PT 育苗箱(ポットトレイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を自走させる走行装置(1)と、上下動して上位で上方から苗を受入れて下位で受入れた苗を圃場に放出する苗植付け体(4)と、該苗植付け体(4)に上方から苗を落下させて供給する複数の苗収容体(45)を有する苗供給装置(42)と設けた苗移植機において、機体上部に設けた苗載台(80,82)の端部を苗供給装置(42)の苗収容体(45)近くに配置すると共に、苗載台(80,82)を前部が高く後部が低い傾斜状に設けて、苗載台(80,82)上に育苗箱(PT)を機体前後方向に複数個載置する構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗載台(80,82)の下方に空の育苗箱(PT)を収納する空苗箱収納部(89)を配置し、苗載台(80,82)には、空の育苗箱(PT)を苗載台(80,82)の下方に向けて通過させることができる空間部(88)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
苗載台(80,82)の空間部(88)の下方位置から空苗箱収納部(89)まで育苗箱(PT)を移動案内する苗箱シュータ(90)と該苗箱シュータ(90)上を移動する育苗箱(PT)を上方から押さえる苗箱押さえ装置(91)を設けたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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