苗移植機
【課題】 本発明は、苗載台を上側へ移動させて苗受枠と苗載台との間に空間を容易に作り、メンテナンス性の向上を図ろうとするものである。
【解決手段】 苗の端部を受ける苗受枠81と、該苗受枠81に備える苗取出口と、左右移動する連結部材83により前記苗受枠81に沿って左右移動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台80と、苗載台80の左右移動終端で該苗載台80上の苗を苗受枠81側に移送する苗送りベルトと、前記苗取出口に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けた苗移植機において、連結部材83の連結溝169に苗載台80側の連結軸168を挿入して上下移動可能に苗載台80を連結し、苗送りベルトへ伝動する中継軸89を苗載台80に設け、フック170を機体側に設け、該フック170に中継軸89を掛けることで苗載台80を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした。
【解決手段】 苗の端部を受ける苗受枠81と、該苗受枠81に備える苗取出口と、左右移動する連結部材83により前記苗受枠81に沿って左右移動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台80と、苗載台80の左右移動終端で該苗載台80上の苗を苗受枠81側に移送する苗送りベルトと、前記苗取出口に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けた苗移植機において、連結部材83の連結溝169に苗載台80側の連結軸168を挿入して上下移動可能に苗載台80を連結し、苗送りベルトへ伝動する中継軸89を苗載台80に設け、フック170を機体側に設け、該フック170に中継軸89を掛けることで苗載台80を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の一例である乗用型田植機において、苗の端部を受ける苗受枠と、該苗受枠に備える苗取出口と、左右移動する連結部材により前記苗受枠に沿って左右移動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台と、苗載台の左右移動終端で該苗載台上の苗を苗受枠側に移送する苗送りベルトと、前記苗取出口に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けた構成が公知である(特許文献1参照。)。
【0003】
また、乗用型田植機において、後下がり傾斜の苗載台を上部の支軸回りに上側へ回動させ、その回動状態で苗載台の下部をスタンドにより保持して、苗受枠と苗載台との間に空間を作り、この空間を介して苗受枠や苗載台の周辺のメンテナンスを容易に行えるようにしたものが公知である(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−314293号公報
【特許文献2】特開2008−283941号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術のように、苗載台を上側へ回動させるためには、左右移動する連結部材の連結を外したり、苗載台の下部を保持するスタンドを装着したりする必要があり、これらの作業が煩わしい。また、後下がり傾斜の苗載台を上部の支軸回りに回動させると、苗載台の下端が後方に移動するため、作業者が機体の後側からメンテナンス作業を行うとき、苗載台の下端が邪魔で苗受枠と苗載台との間の空間に手を入れて作業を行いにくい場合が考えられる。
本発明は、苗載台を上側へ移動させて苗受枠と苗載台との間に空間を容易に作り、メンテナンス性の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)に設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした苗移植機とした。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通した請求項1に記載の苗移植機とした。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持された請求項1又は請求項2に記載の苗移植機とした。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(172)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、作業者は、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を案内させながら苗載台(80)を上側に移動し、機体側のフック(170)に苗載台(80)側の中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持できるので、苗受枠(81)と苗載台(80)との間に空間を容易に作ることができ、また苗載台(80)の下端があまり後方に移動しないようにでき、移動状態の苗載台(80)はフック(170)と連結部材(83)の連結溝(169)とで確実に保持され、更には従来のようなスタンドが無いから、メンテナンス作業の容易化が図れると共に、メンテナンス作業の安全性も向上する。
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)が、苗受枠(81)に接する通常状態から、機体の振動等により不意に移動状態に移行しにくくなり、通常植付作業時に苗載台(80)が連結溝(169)により移動して植付精度が低下するようなことを防止できる。また、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とは連通しているので、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
請求項3に係る発明によると、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)の移動において支持部材(122)及び苗受枠(81)が障害とならず、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
請求項4に係る発明によると、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)の移動状態で誤って苗植付装置(37)が作動することがなく、メンテナンス作業の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】走行車体の要部を示す平面図
【図4】苗植付部を判りやすく示す展開平面図
【図5】苗載台の下部を示す断面側面図
【図6】スライダの周辺構造を示す断面側面図
【図7】一部破断して苗浮き上がり防止具を示す苗載台の下部の断面側面図
【図8】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す側面図
【図9】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す背面図
【図10】苗浮き上がり防止具を示す拡大側面図
【図11】ブレーキロッドを示す図
【図12】下降規制装置及び振動抑制装置を示す側面図
【図13】スライドキーを示す図
【図14】苗載台の移動状態を判り易く示す側面図
【図15】集泥装置を示す斜視図
【図16】集泥装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
【0014】
図1及び図2は、施肥装置付きの乗用型の田植機(1)を示すものであり、この乗用型の田植機(1)は、走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)が昇降可能に装着され、走行車体(2)の後部上側に施肥装置(5)の本体部分が設けられている。
【0015】
走行車体(2)は、駆動輪である各左右一対の前輪(6)及び後輪(7)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース(8)が配置され、そのミッションケース(8)の左右側方に前輪ファイナルケース(9)が設けられ、該前輪ファイナルケース(9)の変向可能な前輪支持部(9a)から外向きに突出する前輪車軸に前輪(6)が取り付けられている。また、ミッションケース(8)の背面部にメインフレーム(10)の前端部が固着されており、そのメインフレーム(10)の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(11)を支点にして後輪ギヤケース(12)がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース(12)から外向きに突出する後輪車軸に後輪(7)が取り付けられている。
【0016】
原動機となるエンジン(13)はメインフレーム(10)の上に搭載されており、該エンジン(13)の回転動力が、第一ベルト伝動装置(14)を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置(HST)(15)へ入力される。そして、該前後進無段変速装置(HST)(15)からの出力が第二ベルト伝動装置(16)を介してミッションケース(8)に伝達される。ミッションケース(8)に伝達された回転動力は、該ケース(8)内の伝動分岐部(8a)で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース(9)に伝達されて前輪(6)を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース(12)に伝達されて後輪(7)を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸(17)を介して走行車体(2)の後部に設けた植付クラッチケース(18)に伝達され、それから植付伝動軸(19)によって苗植付部(4)へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(図示せず)によって施肥装置(5)へ伝動される。植付クラッチケース(18)内には、苗植付部(4)及び施肥装置(5)への伝動を入切する植付クラッチを設けている。
【0017】
尚、エンジンを始動すると共にエンジンの駆動を入切するエンジンスイッチ(キースイッチ)に連動して、燃料コックを開閉する構成となっている。すなわち、エンジンスイッチをエンジン停止位置に操作すると、連動ケーブル等を介して燃料のキャブレターへの燃料供給路を開閉する燃料コックを閉じる。これにより、キャブレターに燃料に混在する塵や不純物が溜まるのを抑えている。特に、歩行型の作業機(田植機)の場合は、機体の前後傾斜姿勢が変化し易いが、上記構成により、キャブレター内で燃料がオーバーフローするのを防止できる。
【0018】
エンジン(13)の上部はエンジンカバー(20)で覆われており、その上に座席(21)が設置されている。座席(21)の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット(22)があり、その上方に前輪(6)を操向操作するハンドル(23)が設けられている。座席(21)の右側には、前記前後進無段変速装置(HST)(15)を操作する前後進変速レバー(24)が設けられている。また、ハンドル(23)の近傍には、苗植付部(4)の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作レバー(25)が設けられている。尚、該植付昇降操作レバー(25)により、植付クラッチ及び後述する昇降油圧シリンダ(76)を操作する構成となっている。エンジンカバー(20)及びボンネット(22)の下端左右両側は水平状のフロアステップ(26)になっている。また、走行車体(2)の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台(27)が設けられている。
【0019】
座席(21)前方の右側には、ブレーキペダル(150)を設けている。このブレーキペダル(150)でミッションケース(8)内のブレーキ装置を操作し、前輪(6)及び後輪(7)を制動する構成となっている。ブレーキペダル(150)からブレーキ装置への操作連繋機構において、ロッド長を調節可能なブレーキロッド(151)を備えている。このブレーキロッド(151)は、一端がスプリング(圧縮スプリング)(152)を介して摺動可能に構成され、他端がダブルナット(二重のナット構造)(153)を介してロッド長を変更可能に構成されている。このロッド長の変更により、ブレーキペダル(150)の遊び量や踏み代を調節する。前記スプリング(152)により、ブレーキ装置の制動力が最大となるまで確実にブレーキペダル(150)を踏み込める構成としている。具体的には、ブレーキロッド(151)の端部部材(154)のプレート(154a)の孔に主ロッド部(155)を貫通し、主ロッド部(155)の端部に設けた座金(156)と前記プレート(154a)との間にスプリング(圧縮スプリング)(152)を介在させて、前記端部部材(154)と主ロッド部(155)とを摺動可能にしている。前記プレート(154a)よりもブレーキロッド(151)の他端側となる主ロッド部(155)の適宜位置には突起(155a)を設け、ブレーキペダル(150)を放したときにプレート(154a)が前記突起(155a)を押してブレーキ装置を制動しない状態へ確実に戻す構成としている。ブレーキロッド(151)の他端側にダブルナット(153)によるロッド長調節機構を設けたので、ブレーキロッド(151)のロッド長の変更に拘らず、ブレーキロッド(151)の一端側の座金(156)と突起(155a)との間隔は一定であるため、ブレーキペダル(150)戻し時のブレーキ装置の非制動状態への復帰を確実に行え、ブレーキのひきずりを確実に防止できる。従来は、ブレーキロッドの一端側に主ロッド部に対する前記座金の位置を変更してブレーキロッドのロッド長を変更する構成であったので、ロッド長の変更で座金と突起との間隔が変わるため、この間隔が大きくなるとブレーキペダルを放したときにプレートが突起を押さずにブレーキ装置を非制動状態へ確実に戻さず、ブレーキをひきずるおそれがある。
【0020】
昇降リンク装置(3)は、1本の上リンク(70)と左右一対の下リンク(71)を備えている。これらリンク(70,71)は、その基部側がメインフレーム(10)の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム(72)に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク(73)が連結されている。そして、縦リンク(73)の下端部に苗植付部(4)に回転自在に支承された連結軸(74)が挿入連結され、連結軸(74)を中心として苗植付部(4)が左右にローリング自在に連結されている。メインフレーム(10)に固着した支持部材と上リンク(70)に一体形成したスイングアーム(75)の先端部との間に昇降油圧シリンダ(76)が設けられており、該シリンダ(76)を油圧で伸縮させることにより、上リンク(70)が上下に回動し、苗植付部(4)がほぼ一定姿勢のまま昇降する。尚、昇降油圧シリンダ(76)とスイングアーム(75)との間にスイングスプリングを介しており、このスイングスプリングにより通常植付時等の苗植付部(4)の昇降による振動を減衰し、苗植付部(4)の昇降におけるハンチングを防止している。
【0021】
また、苗植付部(4)が対地浮上する高さで下降を規制する下降規制装置(157)を設けている。この下降規制装置(157)は、下リンク(71)に下側から接触する規制ロッド(158)をリンクベースフレーム(72)に規制用スプリング(159)を介して上下動可能に設け、通常は苗植付部(4)の下降で下リンク(71)が下側へ回動しても、規制ロッド(158)は規制用スプリング(159)に抗して下動し、苗植付部(4)の下降を規制しない。下降規制レバー(160)を規制位置に操作すると、該下降規制レバー(160)の規制部(160a)が規制ロッド(158)の下動域に突出し、下リンク(71)の下側への回動で規制ロッド(158)が下動すると、該規制ロッド(158)の下端が規制部(160a)に接触して規制され、苗植付部(4)の下降を規制する。これにより、苗植付部(4)が対地浮上する高さとなるので、坂道等の走行時に機体の低重心化を図ることができ、機体の転倒を防止できる。尚、通常植付時等の下降規制レバー(160)を非規制位置に操作した状態では、苗植付部(4)が下降するときに接地する直前で規制用スプリング(159)により下降速度が抑えられ、デセラ機構となる。
【0022】
また、苗植付部(4)が下降した状態で振動するのを抑える振動抑制装置(161)を設けている。この振動抑制装置(161)は、リンクベースフレーム(72)に設けた振動抑制レバー(162)と上リンク(70)とを振動抑制用スプリング(163)を介して振動抑制用ロッド(164)を介して連結しており、振動抑制レバー(162)を振動抑制位置に操作すると、振動抑制ロッド(164)及び振動抑制用スプリング(163)により上リンク(70)を前斜め下側に引っ張る構成となっている。これにより、トラック等での輸送時に、苗植付部(4)を荷台等に接触させた状態でもスイングスプリングにより輸送による振動が増幅して、苗植付部(4)が振動するのを抑制でき、苗植付部(4)が破損するのを防止できる。無論、トラックの荷台のあおりの位置等の条件により苗植付部(4)を上昇させた状態で輸送するときには、輸送による振動が更に増幅し易いが、振動抑制装置(161)により苗植付部(4)を上昇させた状態で輸送するときにも振動を抑制できる。
また、連結軸(74)回りに苗植付部(4)が左右に大きくローリングしたことを左右傾斜センサにより検出すると、DFIによる電子燃料噴射制御によりエンジン回転数を低下させて走行速度を低下させる構成としている。これにより、走行車体(2)が左右に大きく傾いたときに植付が乱れるのを極力抑えることができる。尚、走行速度を減速させる手段としては、電子燃料噴射制御によるエンジン回転数の低下の他、エンジンスロットルによりエンジン回転数を低下させる手段や変速装置を低速側に作動制御する手段等を採用できる。尚、左右傾斜センサとしては、走行車体(2)と苗植付部(4)との角度差を検出するセンサや、苗植付部(4)の絶対水平に対する傾斜角度を検出するセンサや、苗植付部(4)が左右ローリング可能範囲内の最大までローリングしたことを検出するリミットスイッチ式のセンサ等を採用できる。
【0023】
苗植付部(4)は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース(77)、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口(78)に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口(78)に供給すると苗送りベルト(79)により苗を下方に移送する苗載台(80)、苗取出口(78)に供給された苗を苗植付具(37a)で圃場に植付ける苗植付装置(37)等を備えている。
【0024】
苗載台(80)は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠となる横枠(81)に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台(80)は、上下に延びる複数の仕切り壁部(80a)を備えており、該仕切り壁部(80a)により区分けされて各条の苗載部(80b)が構成され、8条分の苗を搭載できる構成となっている。尚、前記横枠(81)に8条分の前記苗取出口(78)が設けられている。伝動ケース(77)の左右両側から突出して該伝動ケース(77)内の動力で横方向に左右往復移動する横移動棒(82)が設けられ、該横移動棒(82)の両端部に固着した連結部材(83)と苗載台(80)とが連結されていて、横移動棒(82)が左右往復動することにより苗載台(80)が左右往復動するようにしている。尚、伝動ケース(77)内には、リードカムと該リードカムに螺合する該リードカム軸が設けられている。従って、横移動棒(82)は、その中間部が伝動ケース(77)内で前記リードカムに固着され、前記リードカム軸の駆動回転により左右往復移動する構成となっている。尚、横枠(81)は、苗載台(80)の下部を左右移動可能に支持する支持部材となり、苗載台(80)の上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)への移動を規制せずに該苗載台(80)を上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)へ移動自在に支持した構成となっている。
【0025】
伝動ケース(77)内には、リードカム軸の回転速度を複数段に切り替える横移動切替装置を設けている。この横移動切替装置は、伝動比の異なる複数対の伝動ギヤを備え、スライドキー(165)により伝動する伝動ギヤ(166)を選択し、苗載台(80)の左右移動速度を変更する構成である。スライドキー(165)は、シフタから片持ち支持されているので、スライド切替操作時の切替抵抗で伝動ギヤ(166)のキー溝(166a)の反対側に撓み易いが、スライド方向両端部に傾斜面を施すと共に、シフタ側の傾斜面(165a)よりもその反対側の傾斜面(165b)の傾斜角度を大きくし、スライド切替の往復行程において何れの切替方向でもスムーズに切替できるようにしている。
【0026】
尚、上述の連結部材(83)は横移動棒(82)を介して左右移動する構成としたが、リードカム軸及びリードカムを伝動ケース(77)の外側に露出させて配置すると共に、連結部材(83)をリードカムと一体で構成してもよい。この場合は、連結部材(83)は1個設けたのでよい。
【0027】
連結部材(83)と苗載台(80)との連結構造を詳細に説明すると、苗載台(80)には、支持アーム(167)を介して連結軸(168)を一体的に固着して左右に設けている。この連結軸(168)は、ボルトにより構成され、支持アーム(167)から左右一方に延び、先端は径が大きい頭部となる。一方、連結部材(83)には、長孔で構成される連結溝(169)を設けている。この連結溝(169)は、L字型に屈曲しており、屈曲部を境に、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを備えている。従って、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とを交差(直交)させて連通した構成となっている。通常溝部(169a)は、機体側面視で若干前下がり傾斜の上下方向に延びている。移動溝部(169b)は、苗載台(80)の前後傾斜方向に近い前上がり傾斜方向に延びている。尚、移動溝部(169b)は、苗載台(80)の前後傾斜に比較すると上側へいくほど前側に位置するべく(上側へ行くほど苗載台(80)から離れるべく)若干前側へ傾いた方向に向いている。連結軸(168)は連結溝(169)を貫通し、連結溝(169)の左右に殆んど隙間のない状態で前記支持アーム(167)と連結軸の頭部とが位置する。よって、連結部材(83)が左右移動すると、連結軸(168)ひいては苗載台(80)も同期して左右移動する。
【0028】
苗載台(80)の裏面側の上下には、左右方向に長い左右移動用案内部材(120、121)がそれぞれ固着して設けられている。上側の左右移動用案内部材(120)は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ(122)が係合している。この支持ローラ(122)は、上側の左右移動用案内部材(120)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、伝動ケース(77)の上側に固着された苗載台支持フレーム(123)の上部に取り付けられている。下側の左右移動用案内部材(121)は、側面視で下側が切り欠かれた切り欠き断面形状部分(121a)とその直上の四角形の断面形状部分(121b)とを備え、前記切り欠き断面形状部分(121a)にスライダ(124)が固着されている。このスライダ(124)は、上部に設けた突起(124a)を下側の左右移動用案内部材(121)に設けた取付孔に挿入して固着する構成となっており、下側の左右移動用案内部材(121)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、横枠(81)の上部に備えるレール部分(81a)に上側から係合する。従って、苗載台(80)は、支持ローラ(122)と横枠(81)とにより左右方向に移動可能に支持されている。また、支持ローラ(122)とスライダ(124)とは、ポリエチレン系樹脂(超高分子量ポリエチレン)で形成された摺動部材となっている。従って、支持ローラ(122)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材となり、苗載台(80)の上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)への移動を規制せずに該苗載台(80)を上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)へ移動自在に支持した構成となっている。
【0029】
苗送りベルト(79)は、駆動ローラ(84)と従動ローラ(85)とに張架されている。駆動ローラ(84)は左右方向の苗送り駆動軸(86)と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸(86)は、ラチェット機構(87)により、苗送りベルト(79)が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。
【0030】
苗送りベルト(79)の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース(77)の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム(88)が設けられている。また、苗送り駆動軸(86)の上側には左右方向の中継軸(89)が設けられ、それに従動側アーム(90)が取り付けられている。中継軸(89)と苗送り駆動軸(86)とは、アーム(91,92)及びリンク(93)とからなるリンク機構(94)により伝動連結されている。
【0031】
苗載台(80)が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接して、中継軸(89)を所定角度回転させる。その回転がリンク機構(94)及びラチェット機構(87)を介して苗送り駆動軸(86)に伝達される。これにより、苗送りベルト(79)が所定量だけ作動する。尚、苗載台(80)が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム(88)に対して左右に2個の従動側アーム(90)が同一の中継軸(89)上に設けられている。駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)から離れると、後述する揺動支点軸(95)に係止したスプリング(96)の張力によって中継軸(89)及び従動側アーム(90)は駆動前の位置に戻る。尚、中継軸(89)及び従動側アーム(90)は、スプリング(96)の張力で、中継軸(89)の端部に設けたストッパ(97)が苗載台(80)本体側の規制部材(98)に当接する位置まで戻る構成となっている。
【0032】
ところで、苗送り駆動軸(86)は、左側4条部分と右側4条部分とに分割されている。また、中継軸(89)も左側中継軸と右側中継軸とに分割されている。そして、左右の苗送り駆動軸(86)及び中継軸(89)に対応して、駆動側アーム(88)、リンク機構(94)及び左右2個の従動側アーム(90)も左右にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0033】
従動側アーム(90)は、回動中心近くの基部分(90a)と駆動側アーム(88)が当接する回動先端側部分(90b)とが別体で構成され、両部分(90a,90b)がアーム(90)中途部に設けた左右方向の揺動支点軸(95)で連結されている。尚、前記基部分(90a)が中継軸(89)と一体回転する構成となっており、前記回動先端側部分(90b)は、揺動支点軸(95)に設けたトルクスプリング(図示せず)により揺動支点軸(95)回りに上側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側とは反対側)へ回動する方向へ付勢され、常態ではそれ以上上側へ回動しないように中継軸(89)に当接している。従って、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接する通常の苗送り伝動時には、従動側アーム(90)の基部分(90a)と回動先端側部分(90b)とが一体的に中継軸(89)回りに上側へ回動する。一方、駆動側アーム(88)が逆転して従動側アーム(90)にその上側から当接するときは、基部分(90a)に対して回動先端側部分(90b)だけが下側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側)へトルクスプリングに抗して揺動するのである。
【0034】
苗載台(80)の苗載面(80c)の上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面(80c)側へ押圧する苗押え具(130)が設けられている。この苗押え具(130)により、マット苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧し、苗送りベルト(79)で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。苗押え具(130)は、金属製の棒材のみが組み合って構成され、マット苗に当たる部分は苗載台(80)に沿って延びる接触部(131,132)で構成されている。この接触部(131,132)は、各条の苗載部(80b)毎に3本ずつ設けられ、苗載部(80b)の左右中央に位置する全長が短い1本の中央の接触部(131)と、苗載部(80b)の左右両側部に位置する全長が長い2本の側部の接触部(132)とからなる。これらの接触部(131,132)は、前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)の両端が上側(苗載台(80)の苗載面(80c)とは反対側)に屈曲している。尚、前記前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)は、軸である。中央の接触部(131)及び側部の接触部(132)の屈曲した後端部(132b)の上端は左右方向に延びる軸となる後側部(133)に溶接により固着され、側部の接触部(132)の屈曲した前端部(132a)の上端は左右方向に延びる前側部(134)に溶接により固着され、側部の接触部(132)は前側部(134)及び後側部(133)で両持ち支持され、中央の接触部(131)は後側部(133)で片持ち支持されている。尚、前側部(134)及び後側部(133)は2条分の苗載部(80b)毎にそれぞれ1本設けられ、2条分の苗載部(80b)における接触部(131,132)が共通の前側部(134)及び後側部(133)に支持される構成となっている。
苗載台支持フレーム(123)には、上下方向略中央位置で左右に延びる左右フレーム部(123a)を備えている。この左右フレーム(123a)は、断面円形の丸軸である。この左右フレーム(123a)の左右の適所には、下端にフック(170)を備える吊下げ部材(171)を、該左右フレーム(123a)の軸回りに左右各々回動自在に取り付けている。
【0035】
従って、苗載台(80)の通常の植付作業状態(通常状態)では、苗載台(80)の自重により、連結部材(83)の連結溝(169)の通常溝部(169a)の下端部(前下端部)に連結軸(168)が位置する。苗載台(80)を上側の移動状態へ移動させるにあたり、作業者が、連結軸(168)を通常溝部(169a)に案内させながら苗載台(80)を上側(後斜め上側)へ移動させ、更に連結溝(169)の屈曲部を介して連結軸(168)を連結溝(169)の移動溝部(169b)に案内させながら苗載台(80)を前斜め上側へ移動させる。そして、連結軸(168)が移動溝部(169b)の前端部(上端部)に位置する状態で、苗送り伝動機構の中継軸(89)を吊下げ部材(171)のフック(170)に掛けることで、苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成となっている。この移動状態では、苗載台(80)は、通常状態から苗載台(80)の前後傾斜方向に沿って上側へ移動した位置となり、通常状態と苗載台(80)の前後傾斜角度も略同じとなる。尚、左右の吊下げ部材(171)は、中継軸(89)が位置する左右位置に配置されている。また、吊下げ部材(171)を左右フレーム(123a)の軸回りに回動自在にしているため、中継軸(89)をフック(170)に掛ける作業を容易に行える。尚、吊下げ部材(171)を、左右フレーム(123a)に対して回動しない構成としてもよい。
【0036】
左右一方(右側)のフック(170)と植付昇降操作レバー(25)との間には、停止連動装置となる停止連動用ワイヤ(172)を連結している。よって、苗載台(80)の移動状態でフック(170)に中継軸(89)を掛けることで、該中継軸(89)により停止連動用ワイヤ(172)が引かれ、植付昇降操作レバー(25)を苗植付部(4)を作動させる植付位置から苗植付部(4)を作動させない非植付位置へ強制的に操作する構成となっている。
【0037】
苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には後側の支柱(135)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この後側の支柱(135)には前後方向に向く断面円形状の取付孔が設けられている。この取付孔は、後側の支柱(135)の上下方向に複数設けられている。同様に、苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には前側の支柱(136)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この前側の支柱(136)の上端部には前側から切り欠いた断面半円形状の切り欠き部(136a)が設けられている。一方、前記後側部(133)の左右両端には後側に屈曲した固定部(133a)が設けられ、この固定部(133a)が前記取付孔に挿入されている。また、前記前側部(134)の左右両端部が前記切り欠き部(136a)に挿入されている。従って、前側部(134)が左右の前側の支柱(136)で支持され、後側部(133)が左右の後側の支柱(135)で支持され、苗押え具(130)全体が苗載台(80)に支持された構成となっている。
【0038】
そして、苗押え具(130)は、前記固定部(133a)を取付孔から抜いて外すことにより、前側部(134)を軸心として上下に回動させることができる。この苗押え具(130)の回動により、植付作業終了時等に、苗押え具(130)と苗載台(80)の苗載面(80c)との間に残った苗を、苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に取り出すことができる。また、苗押え具(130)を回動して前記固定部(133a)を別の取付孔に挿入することにより、苗載面(80c)に対する接触部(131,132)の位置あるいは角度を変更することができ、マット苗の床部の厚みや強度等の違いに応じて苗押え具(130)の位置あるいは角度を調節し、苗送りベルト(79)の苗送り抵抗が過大にならずに苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧することができる。更には、固定部(133a)を取付孔から抜いて外すと共に前側部(134)を切り欠き部(136a)から外すことにより、苗載台(80)から苗押え具(130)を取り外すことができ、苗載台(80)上に残った苗を容易に取り出せることはもとより、苗載台(80)や苗植付部(4)のメンテナンスを苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に行える。尚、固定部(133a)を取付孔から抜くときは、苗押え具(130)(主として後側部(133))を撓ませながら抜くようになっている。
【0039】
後側部(133)の左右両端部には、上側へ延びる苗受け止め具取付部(137)を溶接により固着して設けている。この苗受け止め具取付部(137)に苗受け止め具(138)を引っ掛けて装着できる構成となっている。前記苗受け止め具(138)は、各条の苗載部(80b)毎に設けられ、当該苗載部(80b)上の苗がその自重により苗取出口(78)側に移動しないように受け止めるものである。この苗受け止め具(138)により、苗送りベルト(79)の作動に拘らず、苗取出口(78)へ確実に苗が供給されないようにでき、一部の植付条で苗を植え付けずに他の植付条のみで部分的に苗の植付作業を行うことができる。
【0040】
各々の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)の上端と後側部(133)とが交差する部分には、苗載台(80)上の苗が苗載面(80c)あるいは横枠(81)から浮き上がるのを防止すると共に、苗載台(80)の左右移動で左右方向へずれるのを防止する苗浮き上がり防止具(139)を取り付けている。この苗浮き上がり防止具(139)は、合成樹脂製であり、上部に苗押え具(130)の後側部(133)が嵌る上部切り欠き溝(140)を備え、側面に上下方向に向く苗押え具(130)の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る側部切り欠き溝(141)を備え、下部にマット苗の床部の上面に当たって該苗を押圧する浮き上がり防止作用部(142)を備えている。尚、この苗浮き上がり防止具(139)は、上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)により、苗押え具(130)に着脱できる。前記上部切り欠き溝(140)は、苗浮き上がり防止具(139)の上側から切り欠いた構成となっており、前記後側部(133)が嵌る嵌合部となる断面円形の部分(140a)を上下に複数(2個)連ねて設けている。前記側部切り欠き溝(141)は、機体の左側から切り欠いた構成となっており、前記接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る断面半円形状の部分が上下方向に貫通した構成となっている。この側部切り欠き溝(141)の上下の適宜の位置には、苗浮き上がり防止具(139)が前記苗押え具(130)から外れにくいように該溝(141)側に突出する突出部(141a)が設けられている。前記浮き上がり防止作用部(142)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)と同じ左右方向の位置で且つ前記接触部(131,132)より後側に配置され、斜め後下方に向く鋭角状の頂点部(142a)を備えた側面視三角形状であり、この下辺部(142b)に苗の床部の上面が接触することになる。前記下辺部(142b)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の接触面部分より苗載面(80c)側に位置し、苗載台(80)の苗送り下手側(下側、後側又は苗取出口(78)側)へいくほど苗載面(80c)に近づくように苗載面(80c)に対して斜めに構成されている。前記頂点部(142a)は、苗載台(80)の苗載面(80c)の後端と対向する位置に配置されている。また、浮き上がり防止作用部(142)の左右方向の幅は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の左右方向の幅より狭くなっている。
【0041】
苗植付部(4)の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート(100)、左右それぞれ最外2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート(101)及びセンターフロート(100)とサイドフロート(101)との間で残り1条分の苗植付位置を整地するミッドフロート(102)が設けられている。これらフロート(100,101,102)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート(100,101,102)が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置(37)により苗が植付けられる。各フロート(100,101,102)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート(100)の前部の上下動が上下動検出機構(103)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ(76)を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部(4)を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。尚、上下動検出機構(103)の検出により、各フロート(100,101,102)が土壌面に対して浮き気味である(フロート(100,101,102)の前後傾斜姿勢が前下がり傾向にある)と判断されるときは、DFIによる電子燃料噴射制御によりエンジン回転数を低下させて走行速度を低下させる構成としている。これにより、土壌面に対して苗植付部(4)が浮き気味になって植付が乱れるのを極力抑えることができる。尚、走行速度を減速させる手段としては、電子燃料噴射制御によるエンジン回転数の低下の他、エンジンスロットルによりエンジン回転数を低下させる手段や変速装置を低速側に作動制御する手段等を採用できる。尚、各フロート(100,101,102)が土壌面に対して浮き気味であることを判断する手段としては、センターフロート(100)の上下動検出機構(103)の検出に基づくものの他、左右のサイドフロート(101)の上下動を検出する格別のセンサの検出に基づくものとしてもよい。尚、前記センサは、リミットスイッチ式のセンサとしてもよい。
【0042】
施肥装置(5)は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)(110)に貯留されている肥料(粉粒体)を各条の肥料繰出部(粉粒体繰出部)(63)によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)(111)でフロート(100,101,102)に取り付けた施肥ガイド(112)まで導き、施肥ガイド(112)の前側に設けた作溝体(113)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。電動モータ(114)で駆動のブロア(115)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ(116)を経由して肥料移送ホース(111)内に吹き込み、肥料移送ホース(111)内の肥料を苗植付部(4)側の肥料吐出口(施肥ガイド(112))へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド(112)及び作溝体(113)の後方でフロート(100,101,102)に取り付けた覆土板(117)により覆土される。
【0043】
各条の施肥ガイド(112)及び作溝体(113)は、対応する苗植付装置(37)との位置関係(距離)を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置(機体側面視で同じ位置)に配置される。同様に、各条の覆土板(117)も対応する施肥ガイド(112)、作溝体(113)及び苗植付装置(37)との位置関係を(距離)を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0044】
施肥伝動機構により施肥装置(5)へ伝動される動力は、左右方向に延びる施肥駆動軸に伝動され、該施肥駆動軸から各条の繰出用ギヤを介して各条の肥料繰出部(63)へ伝動される。前述ではブロア(115)を電動モータ(114)で駆動する構成について説明したが、施肥駆動軸からブロア用伝動機構を介してブロア(115)を駆動する構成とすれば、電動モータ(114)が不要になってコストダウンが図れると共に、電動モータ(114)を使用しないことで電装系の故障を削減することもできる。このとき、エアチャンバ(116)内にブロア(115)をその駆動軸が左右方向に向く状態で配置する構成とすれば、例えばプーリ及び伝動ベルト等により施肥駆動軸からブロア(115)へ伝動でき、ブロア用伝動機構の構成を簡単にできる。更に望ましくは、エアチャンパ(116)を左右に分割すると共に、その分割位置である左右のエアチャンパの端部に左右各々のブロア(115)を配置すれば、ブロア(115)への伝動のために施肥駆動軸を延ばす必要もなく、またエアチャンパ(116)内に設けるためにブロア(115)が小型で能力の低いものとなっても、エアチャンパ(116)を左右に分割して左右各々のブロア(115)を設けるので、所望の風圧を得ることができ、尚、共通の伝動ベルト(ブロア用伝動機構)により左右のブロア(115)へ伝動する構成とすれば、コストダウンが図れる。特に、4条仕様の田植機の場合、エアチャンパ(116)を左右に2条分ずつに分割すれば、エアチャンパ(116)内の小型のブロア(115)でも各々2条分で必要な風圧を十分に得ることができる。
【0045】
前述の施肥装置(5)は粒状肥料を施肥する構成であるが、施肥装置としてペースト状肥料を施肥する構成とすることもできる。このとき、肥料繰出部は、ペースト状肥料を送り出すポンプとなる。肥料貯留タンクにペースト状肥料を貯留することとなるが、ポンプにより良好に繰り出すためにペースト状肥料を攪拌して流動性を高める攪拌装置を、肥料貯留タンク内に設けている。攪拌装置は、駆動モータにより回転駆動する構成であり、駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が大きいときは駆動モータが正転と逆転を交互に繰り返し、肥料の種類や気温変化等の環境変化によりペースト状肥料の粘性が高い状態でも良好な流動性を得られるようにしている。駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が小さいときは駆動モータの回転速度を低下させ、電力の消費を抑える。また、駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が極端に小さいとき、肥料貯留タンク内のペースト状肥料の貯留量が減少したと判断し、肥料補給を促す警報を発する。これにより、格別の肥料減少センサが不要であり、コストダウンが図れる。
以上により、この乗用型の田植機(1)は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成としている。
よって、作業者は、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を案内させながら苗載台(80)を上側に移動し、機体側のフック(170)に苗載台(80)側の中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持できるので、苗受枠(81)と苗載台(80)との間に空間を容易に作ることができ、また、移動状態において、苗載台(80)が、通常状態と略同じ前後傾斜角度で、通常状態から苗載台(80)の前後傾斜方向に沿って上側へ移動した位置となるため、苗載台(80)の下端が苗受枠(81)の前後位置に近く、苗載台(80)の下端が後方に移動しないため、苗載台(80)の下端が邪魔で苗受枠(81)と苗載台(80)との間の空間に手を入れて作業を行いにくいことがなく、移動状態の苗載台(80)はフック(170)と連結部材(83)の連結溝(169)とで確実に保持され、更には従来のようなスタンドが無いから、伝動ケース(77)、苗送りベルト(79)、該苗送りベルト(79)への伝動機構、苗載台(80)を左右移動させる機構、及び苗受枠(81)を上下移動させて苗植付装置(37)による苗の掻き取り量を調節する機構等の苗載台(80)の前側に位置する部材のメンテナンス作業の容易化が図れると共に、メンテナンス作業の安全性も向上する。
また、連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通している。
よって、苗載台(80)が、苗受枠(81)に接する通常状態から、機体の振動等により不意に移動状態に移行しにくくなり、通常植付作業時に苗載台(80)が連結溝(169)により移動して植付精度が低下するようなことを防止できる。また、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とは連通しているので、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
【0046】
また、苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持されているので、苗載台(80)の移動において支持部材(122)及び苗受枠(81)が障害とならず、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
【0047】
また、移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(停止連動用ワイヤ)(172)を設けているので、苗載台(80)の移動状態で誤って苗植付装置(37)及び苗載台(80)を含む苗植付部(4)が作動することがなく、移動状態で苗載台(80)が左右移動して破損するのを防止すると共に、メンテナンスを行う作業者が怪我をするようなことを防止でき、メンテナンス作業の安全性が向上する。
【0048】
尚、苗載台(80)への苗補給作業を容易にするため、苗載台(80)の直前となる肥料貯留タンク(110)の上方に補給用苗載台(173)を設けることができる。この補給用苗載台(173)は、植付条数に合わせて左右に8枚の苗を搭載する構成であり、傾動用シリンダ(174)の作動により前部の回動軸(175)回りの回動で後ろ下がりに傾斜して苗載台(80)へ苗補給を行う。この苗補給時、苗載台(80)を左右中央位置に左右移動させて補給用苗載台(173)の左右位置に合わせる。補給用苗載台(173)の下方には、該補給用苗載台(173)と一体で回動する補給用肥料タンク(176)を設けている。この補給用肥料タンク(176)の後部下側には肥料排出口(177)を備え、この肥料排出口(177)を開閉する開閉蓋(177a)を設けている。従って、肥料貯留タンク(110)の蓋(110a)を開けた状態で、補給用肥料タンク(176)の開閉蓋(177a)を開け、補給用苗載台(173)及び補給用肥料タンク(176)を後ろ下がり姿勢に回動させることにより、苗載台(80)への苗補給と肥料貯留タンク(110)への肥料補給とを同時に行え、補給作業を能率良く行えると共に、苗補給及び肥料補給を共通の傾動用シリンダ(174)で行う構成として構造の簡略化が図れる。
【0049】
また、田植機(1)で田植作業をした後、路上走行するときに、前輪(6)及び後輪(7)に付着した泥が路上に落下し、路面を汚してしまうことがあり、田植後に汚した路面を清掃するのが手間がかかり面倒である。そこで、乗用型の田植機(1)において昇降リンク装置(3)を苗植付部(4)ごと走行車体(2)から外し、代わりに路面の泥を集める集泥装置(178)を装着できる構成としている。この集泥装置(178)は、路面に接する掬い部(179)を前端に備える集泥枠(180)と、該集泥枠(180)に設けた左右の遊転車輪(181)と、走行車体(2)のリンクベースフレーム(72)から集泥枠(180)を上下動自在に牽引する左右の牽引リンク(182)と、集泥枠(180)の後側に設けたスコップ(183)を保持する保持枠(184)とを備えている。従って、田植作業後に田植機(1)を路上走行させた後、洗車場等で田植機(1)を洗車し、その後、昇降リンク装置(3)を苗植付部(4)ごと走行車体(2)から外し、代わりに走行車体(2)に集泥装置(178)を装着し、田植作業後に走行した路上を再度走行することにより、掬い部(179)が路面に追従して接地しながら路上の泥を掬い上げ、泥が集泥枠(180)に集められる。よって、集泥装置(178)により、容易に路面を清掃することができ、清掃作業の容易化が図れる。
【0050】
尚、この発明の実施の形態は乗用型の田植機(1)について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1:乗用型の田植機、37:苗植付装置、78:苗取出口、79:苗送りベルト、80:苗載台、81:横枠、83:連結部材、89:中継軸、122:支持ローラ、168:連結軸、169:連結溝、169a:通常溝部、169b:移動溝部、170:フック、172:停止連動用ワイヤ
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の一例である乗用型田植機において、苗の端部を受ける苗受枠と、該苗受枠に備える苗取出口と、左右移動する連結部材により前記苗受枠に沿って左右移動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台と、苗載台の左右移動終端で該苗載台上の苗を苗受枠側に移送する苗送りベルトと、前記苗取出口に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けた構成が公知である(特許文献1参照。)。
【0003】
また、乗用型田植機において、後下がり傾斜の苗載台を上部の支軸回りに上側へ回動させ、その回動状態で苗載台の下部をスタンドにより保持して、苗受枠と苗載台との間に空間を作り、この空間を介して苗受枠や苗載台の周辺のメンテナンスを容易に行えるようにしたものが公知である(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−314293号公報
【特許文献2】特開2008−283941号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術のように、苗載台を上側へ回動させるためには、左右移動する連結部材の連結を外したり、苗載台の下部を保持するスタンドを装着したりする必要があり、これらの作業が煩わしい。また、後下がり傾斜の苗載台を上部の支軸回りに回動させると、苗載台の下端が後方に移動するため、作業者が機体の後側からメンテナンス作業を行うとき、苗載台の下端が邪魔で苗受枠と苗載台との間の空間に手を入れて作業を行いにくい場合が考えられる。
本発明は、苗載台を上側へ移動させて苗受枠と苗載台との間に空間を容易に作り、メンテナンス性の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)に設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした苗移植機とした。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通した請求項1に記載の苗移植機とした。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持された請求項1又は請求項2に記載の苗移植機とした。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(172)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、作業者は、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を案内させながら苗載台(80)を上側に移動し、機体側のフック(170)に苗載台(80)側の中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持できるので、苗受枠(81)と苗載台(80)との間に空間を容易に作ることができ、また苗載台(80)の下端があまり後方に移動しないようにでき、移動状態の苗載台(80)はフック(170)と連結部材(83)の連結溝(169)とで確実に保持され、更には従来のようなスタンドが無いから、メンテナンス作業の容易化が図れると共に、メンテナンス作業の安全性も向上する。
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)が、苗受枠(81)に接する通常状態から、機体の振動等により不意に移動状態に移行しにくくなり、通常植付作業時に苗載台(80)が連結溝(169)により移動して植付精度が低下するようなことを防止できる。また、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とは連通しているので、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
請求項3に係る発明によると、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)の移動において支持部材(122)及び苗受枠(81)が障害とならず、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
請求項4に係る発明によると、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明の効果に加えて、苗載台(80)の移動状態で誤って苗植付装置(37)が作動することがなく、メンテナンス作業の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】走行車体の要部を示す平面図
【図4】苗植付部を判りやすく示す展開平面図
【図5】苗載台の下部を示す断面側面図
【図6】スライダの周辺構造を示す断面側面図
【図7】一部破断して苗浮き上がり防止具を示す苗載台の下部の断面側面図
【図8】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す側面図
【図9】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す背面図
【図10】苗浮き上がり防止具を示す拡大側面図
【図11】ブレーキロッドを示す図
【図12】下降規制装置及び振動抑制装置を示す側面図
【図13】スライドキーを示す図
【図14】苗載台の移動状態を判り易く示す側面図
【図15】集泥装置を示す斜視図
【図16】集泥装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
【0014】
図1及び図2は、施肥装置付きの乗用型の田植機(1)を示すものであり、この乗用型の田植機(1)は、走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)が昇降可能に装着され、走行車体(2)の後部上側に施肥装置(5)の本体部分が設けられている。
【0015】
走行車体(2)は、駆動輪である各左右一対の前輪(6)及び後輪(7)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース(8)が配置され、そのミッションケース(8)の左右側方に前輪ファイナルケース(9)が設けられ、該前輪ファイナルケース(9)の変向可能な前輪支持部(9a)から外向きに突出する前輪車軸に前輪(6)が取り付けられている。また、ミッションケース(8)の背面部にメインフレーム(10)の前端部が固着されており、そのメインフレーム(10)の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(11)を支点にして後輪ギヤケース(12)がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース(12)から外向きに突出する後輪車軸に後輪(7)が取り付けられている。
【0016】
原動機となるエンジン(13)はメインフレーム(10)の上に搭載されており、該エンジン(13)の回転動力が、第一ベルト伝動装置(14)を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置(HST)(15)へ入力される。そして、該前後進無段変速装置(HST)(15)からの出力が第二ベルト伝動装置(16)を介してミッションケース(8)に伝達される。ミッションケース(8)に伝達された回転動力は、該ケース(8)内の伝動分岐部(8a)で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース(9)に伝達されて前輪(6)を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース(12)に伝達されて後輪(7)を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸(17)を介して走行車体(2)の後部に設けた植付クラッチケース(18)に伝達され、それから植付伝動軸(19)によって苗植付部(4)へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(図示せず)によって施肥装置(5)へ伝動される。植付クラッチケース(18)内には、苗植付部(4)及び施肥装置(5)への伝動を入切する植付クラッチを設けている。
【0017】
尚、エンジンを始動すると共にエンジンの駆動を入切するエンジンスイッチ(キースイッチ)に連動して、燃料コックを開閉する構成となっている。すなわち、エンジンスイッチをエンジン停止位置に操作すると、連動ケーブル等を介して燃料のキャブレターへの燃料供給路を開閉する燃料コックを閉じる。これにより、キャブレターに燃料に混在する塵や不純物が溜まるのを抑えている。特に、歩行型の作業機(田植機)の場合は、機体の前後傾斜姿勢が変化し易いが、上記構成により、キャブレター内で燃料がオーバーフローするのを防止できる。
【0018】
エンジン(13)の上部はエンジンカバー(20)で覆われており、その上に座席(21)が設置されている。座席(21)の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット(22)があり、その上方に前輪(6)を操向操作するハンドル(23)が設けられている。座席(21)の右側には、前記前後進無段変速装置(HST)(15)を操作する前後進変速レバー(24)が設けられている。また、ハンドル(23)の近傍には、苗植付部(4)の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作レバー(25)が設けられている。尚、該植付昇降操作レバー(25)により、植付クラッチ及び後述する昇降油圧シリンダ(76)を操作する構成となっている。エンジンカバー(20)及びボンネット(22)の下端左右両側は水平状のフロアステップ(26)になっている。また、走行車体(2)の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台(27)が設けられている。
【0019】
座席(21)前方の右側には、ブレーキペダル(150)を設けている。このブレーキペダル(150)でミッションケース(8)内のブレーキ装置を操作し、前輪(6)及び後輪(7)を制動する構成となっている。ブレーキペダル(150)からブレーキ装置への操作連繋機構において、ロッド長を調節可能なブレーキロッド(151)を備えている。このブレーキロッド(151)は、一端がスプリング(圧縮スプリング)(152)を介して摺動可能に構成され、他端がダブルナット(二重のナット構造)(153)を介してロッド長を変更可能に構成されている。このロッド長の変更により、ブレーキペダル(150)の遊び量や踏み代を調節する。前記スプリング(152)により、ブレーキ装置の制動力が最大となるまで確実にブレーキペダル(150)を踏み込める構成としている。具体的には、ブレーキロッド(151)の端部部材(154)のプレート(154a)の孔に主ロッド部(155)を貫通し、主ロッド部(155)の端部に設けた座金(156)と前記プレート(154a)との間にスプリング(圧縮スプリング)(152)を介在させて、前記端部部材(154)と主ロッド部(155)とを摺動可能にしている。前記プレート(154a)よりもブレーキロッド(151)の他端側となる主ロッド部(155)の適宜位置には突起(155a)を設け、ブレーキペダル(150)を放したときにプレート(154a)が前記突起(155a)を押してブレーキ装置を制動しない状態へ確実に戻す構成としている。ブレーキロッド(151)の他端側にダブルナット(153)によるロッド長調節機構を設けたので、ブレーキロッド(151)のロッド長の変更に拘らず、ブレーキロッド(151)の一端側の座金(156)と突起(155a)との間隔は一定であるため、ブレーキペダル(150)戻し時のブレーキ装置の非制動状態への復帰を確実に行え、ブレーキのひきずりを確実に防止できる。従来は、ブレーキロッドの一端側に主ロッド部に対する前記座金の位置を変更してブレーキロッドのロッド長を変更する構成であったので、ロッド長の変更で座金と突起との間隔が変わるため、この間隔が大きくなるとブレーキペダルを放したときにプレートが突起を押さずにブレーキ装置を非制動状態へ確実に戻さず、ブレーキをひきずるおそれがある。
【0020】
昇降リンク装置(3)は、1本の上リンク(70)と左右一対の下リンク(71)を備えている。これらリンク(70,71)は、その基部側がメインフレーム(10)の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム(72)に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク(73)が連結されている。そして、縦リンク(73)の下端部に苗植付部(4)に回転自在に支承された連結軸(74)が挿入連結され、連結軸(74)を中心として苗植付部(4)が左右にローリング自在に連結されている。メインフレーム(10)に固着した支持部材と上リンク(70)に一体形成したスイングアーム(75)の先端部との間に昇降油圧シリンダ(76)が設けられており、該シリンダ(76)を油圧で伸縮させることにより、上リンク(70)が上下に回動し、苗植付部(4)がほぼ一定姿勢のまま昇降する。尚、昇降油圧シリンダ(76)とスイングアーム(75)との間にスイングスプリングを介しており、このスイングスプリングにより通常植付時等の苗植付部(4)の昇降による振動を減衰し、苗植付部(4)の昇降におけるハンチングを防止している。
【0021】
また、苗植付部(4)が対地浮上する高さで下降を規制する下降規制装置(157)を設けている。この下降規制装置(157)は、下リンク(71)に下側から接触する規制ロッド(158)をリンクベースフレーム(72)に規制用スプリング(159)を介して上下動可能に設け、通常は苗植付部(4)の下降で下リンク(71)が下側へ回動しても、規制ロッド(158)は規制用スプリング(159)に抗して下動し、苗植付部(4)の下降を規制しない。下降規制レバー(160)を規制位置に操作すると、該下降規制レバー(160)の規制部(160a)が規制ロッド(158)の下動域に突出し、下リンク(71)の下側への回動で規制ロッド(158)が下動すると、該規制ロッド(158)の下端が規制部(160a)に接触して規制され、苗植付部(4)の下降を規制する。これにより、苗植付部(4)が対地浮上する高さとなるので、坂道等の走行時に機体の低重心化を図ることができ、機体の転倒を防止できる。尚、通常植付時等の下降規制レバー(160)を非規制位置に操作した状態では、苗植付部(4)が下降するときに接地する直前で規制用スプリング(159)により下降速度が抑えられ、デセラ機構となる。
【0022】
また、苗植付部(4)が下降した状態で振動するのを抑える振動抑制装置(161)を設けている。この振動抑制装置(161)は、リンクベースフレーム(72)に設けた振動抑制レバー(162)と上リンク(70)とを振動抑制用スプリング(163)を介して振動抑制用ロッド(164)を介して連結しており、振動抑制レバー(162)を振動抑制位置に操作すると、振動抑制ロッド(164)及び振動抑制用スプリング(163)により上リンク(70)を前斜め下側に引っ張る構成となっている。これにより、トラック等での輸送時に、苗植付部(4)を荷台等に接触させた状態でもスイングスプリングにより輸送による振動が増幅して、苗植付部(4)が振動するのを抑制でき、苗植付部(4)が破損するのを防止できる。無論、トラックの荷台のあおりの位置等の条件により苗植付部(4)を上昇させた状態で輸送するときには、輸送による振動が更に増幅し易いが、振動抑制装置(161)により苗植付部(4)を上昇させた状態で輸送するときにも振動を抑制できる。
また、連結軸(74)回りに苗植付部(4)が左右に大きくローリングしたことを左右傾斜センサにより検出すると、DFIによる電子燃料噴射制御によりエンジン回転数を低下させて走行速度を低下させる構成としている。これにより、走行車体(2)が左右に大きく傾いたときに植付が乱れるのを極力抑えることができる。尚、走行速度を減速させる手段としては、電子燃料噴射制御によるエンジン回転数の低下の他、エンジンスロットルによりエンジン回転数を低下させる手段や変速装置を低速側に作動制御する手段等を採用できる。尚、左右傾斜センサとしては、走行車体(2)と苗植付部(4)との角度差を検出するセンサや、苗植付部(4)の絶対水平に対する傾斜角度を検出するセンサや、苗植付部(4)が左右ローリング可能範囲内の最大までローリングしたことを検出するリミットスイッチ式のセンサ等を採用できる。
【0023】
苗植付部(4)は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース(77)、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口(78)に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口(78)に供給すると苗送りベルト(79)により苗を下方に移送する苗載台(80)、苗取出口(78)に供給された苗を苗植付具(37a)で圃場に植付ける苗植付装置(37)等を備えている。
【0024】
苗載台(80)は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠となる横枠(81)に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台(80)は、上下に延びる複数の仕切り壁部(80a)を備えており、該仕切り壁部(80a)により区分けされて各条の苗載部(80b)が構成され、8条分の苗を搭載できる構成となっている。尚、前記横枠(81)に8条分の前記苗取出口(78)が設けられている。伝動ケース(77)の左右両側から突出して該伝動ケース(77)内の動力で横方向に左右往復移動する横移動棒(82)が設けられ、該横移動棒(82)の両端部に固着した連結部材(83)と苗載台(80)とが連結されていて、横移動棒(82)が左右往復動することにより苗載台(80)が左右往復動するようにしている。尚、伝動ケース(77)内には、リードカムと該リードカムに螺合する該リードカム軸が設けられている。従って、横移動棒(82)は、その中間部が伝動ケース(77)内で前記リードカムに固着され、前記リードカム軸の駆動回転により左右往復移動する構成となっている。尚、横枠(81)は、苗載台(80)の下部を左右移動可能に支持する支持部材となり、苗載台(80)の上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)への移動を規制せずに該苗載台(80)を上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)へ移動自在に支持した構成となっている。
【0025】
伝動ケース(77)内には、リードカム軸の回転速度を複数段に切り替える横移動切替装置を設けている。この横移動切替装置は、伝動比の異なる複数対の伝動ギヤを備え、スライドキー(165)により伝動する伝動ギヤ(166)を選択し、苗載台(80)の左右移動速度を変更する構成である。スライドキー(165)は、シフタから片持ち支持されているので、スライド切替操作時の切替抵抗で伝動ギヤ(166)のキー溝(166a)の反対側に撓み易いが、スライド方向両端部に傾斜面を施すと共に、シフタ側の傾斜面(165a)よりもその反対側の傾斜面(165b)の傾斜角度を大きくし、スライド切替の往復行程において何れの切替方向でもスムーズに切替できるようにしている。
【0026】
尚、上述の連結部材(83)は横移動棒(82)を介して左右移動する構成としたが、リードカム軸及びリードカムを伝動ケース(77)の外側に露出させて配置すると共に、連結部材(83)をリードカムと一体で構成してもよい。この場合は、連結部材(83)は1個設けたのでよい。
【0027】
連結部材(83)と苗載台(80)との連結構造を詳細に説明すると、苗載台(80)には、支持アーム(167)を介して連結軸(168)を一体的に固着して左右に設けている。この連結軸(168)は、ボルトにより構成され、支持アーム(167)から左右一方に延び、先端は径が大きい頭部となる。一方、連結部材(83)には、長孔で構成される連結溝(169)を設けている。この連結溝(169)は、L字型に屈曲しており、屈曲部を境に、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを備えている。従って、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とを交差(直交)させて連通した構成となっている。通常溝部(169a)は、機体側面視で若干前下がり傾斜の上下方向に延びている。移動溝部(169b)は、苗載台(80)の前後傾斜方向に近い前上がり傾斜方向に延びている。尚、移動溝部(169b)は、苗載台(80)の前後傾斜に比較すると上側へいくほど前側に位置するべく(上側へ行くほど苗載台(80)から離れるべく)若干前側へ傾いた方向に向いている。連結軸(168)は連結溝(169)を貫通し、連結溝(169)の左右に殆んど隙間のない状態で前記支持アーム(167)と連結軸の頭部とが位置する。よって、連結部材(83)が左右移動すると、連結軸(168)ひいては苗載台(80)も同期して左右移動する。
【0028】
苗載台(80)の裏面側の上下には、左右方向に長い左右移動用案内部材(120、121)がそれぞれ固着して設けられている。上側の左右移動用案内部材(120)は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ(122)が係合している。この支持ローラ(122)は、上側の左右移動用案内部材(120)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、伝動ケース(77)の上側に固着された苗載台支持フレーム(123)の上部に取り付けられている。下側の左右移動用案内部材(121)は、側面視で下側が切り欠かれた切り欠き断面形状部分(121a)とその直上の四角形の断面形状部分(121b)とを備え、前記切り欠き断面形状部分(121a)にスライダ(124)が固着されている。このスライダ(124)は、上部に設けた突起(124a)を下側の左右移動用案内部材(121)に設けた取付孔に挿入して固着する構成となっており、下側の左右移動用案内部材(121)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、横枠(81)の上部に備えるレール部分(81a)に上側から係合する。従って、苗載台(80)は、支持ローラ(122)と横枠(81)とにより左右方向に移動可能に支持されている。また、支持ローラ(122)とスライダ(124)とは、ポリエチレン系樹脂(超高分子量ポリエチレン)で形成された摺動部材となっている。従って、支持ローラ(122)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材となり、苗載台(80)の上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)への移動を規制せずに該苗載台(80)を上側(厳密には苗載台(80)の傾斜に沿う斜め前上方向)へ移動自在に支持した構成となっている。
【0029】
苗送りベルト(79)は、駆動ローラ(84)と従動ローラ(85)とに張架されている。駆動ローラ(84)は左右方向の苗送り駆動軸(86)と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸(86)は、ラチェット機構(87)により、苗送りベルト(79)が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。
【0030】
苗送りベルト(79)の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース(77)の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム(88)が設けられている。また、苗送り駆動軸(86)の上側には左右方向の中継軸(89)が設けられ、それに従動側アーム(90)が取り付けられている。中継軸(89)と苗送り駆動軸(86)とは、アーム(91,92)及びリンク(93)とからなるリンク機構(94)により伝動連結されている。
【0031】
苗載台(80)が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接して、中継軸(89)を所定角度回転させる。その回転がリンク機構(94)及びラチェット機構(87)を介して苗送り駆動軸(86)に伝達される。これにより、苗送りベルト(79)が所定量だけ作動する。尚、苗載台(80)が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム(88)に対して左右に2個の従動側アーム(90)が同一の中継軸(89)上に設けられている。駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)から離れると、後述する揺動支点軸(95)に係止したスプリング(96)の張力によって中継軸(89)及び従動側アーム(90)は駆動前の位置に戻る。尚、中継軸(89)及び従動側アーム(90)は、スプリング(96)の張力で、中継軸(89)の端部に設けたストッパ(97)が苗載台(80)本体側の規制部材(98)に当接する位置まで戻る構成となっている。
【0032】
ところで、苗送り駆動軸(86)は、左側4条部分と右側4条部分とに分割されている。また、中継軸(89)も左側中継軸と右側中継軸とに分割されている。そして、左右の苗送り駆動軸(86)及び中継軸(89)に対応して、駆動側アーム(88)、リンク機構(94)及び左右2個の従動側アーム(90)も左右にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0033】
従動側アーム(90)は、回動中心近くの基部分(90a)と駆動側アーム(88)が当接する回動先端側部分(90b)とが別体で構成され、両部分(90a,90b)がアーム(90)中途部に設けた左右方向の揺動支点軸(95)で連結されている。尚、前記基部分(90a)が中継軸(89)と一体回転する構成となっており、前記回動先端側部分(90b)は、揺動支点軸(95)に設けたトルクスプリング(図示せず)により揺動支点軸(95)回りに上側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側とは反対側)へ回動する方向へ付勢され、常態ではそれ以上上側へ回動しないように中継軸(89)に当接している。従って、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接する通常の苗送り伝動時には、従動側アーム(90)の基部分(90a)と回動先端側部分(90b)とが一体的に中継軸(89)回りに上側へ回動する。一方、駆動側アーム(88)が逆転して従動側アーム(90)にその上側から当接するときは、基部分(90a)に対して回動先端側部分(90b)だけが下側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側)へトルクスプリングに抗して揺動するのである。
【0034】
苗載台(80)の苗載面(80c)の上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面(80c)側へ押圧する苗押え具(130)が設けられている。この苗押え具(130)により、マット苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧し、苗送りベルト(79)で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。苗押え具(130)は、金属製の棒材のみが組み合って構成され、マット苗に当たる部分は苗載台(80)に沿って延びる接触部(131,132)で構成されている。この接触部(131,132)は、各条の苗載部(80b)毎に3本ずつ設けられ、苗載部(80b)の左右中央に位置する全長が短い1本の中央の接触部(131)と、苗載部(80b)の左右両側部に位置する全長が長い2本の側部の接触部(132)とからなる。これらの接触部(131,132)は、前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)の両端が上側(苗載台(80)の苗載面(80c)とは反対側)に屈曲している。尚、前記前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)は、軸である。中央の接触部(131)及び側部の接触部(132)の屈曲した後端部(132b)の上端は左右方向に延びる軸となる後側部(133)に溶接により固着され、側部の接触部(132)の屈曲した前端部(132a)の上端は左右方向に延びる前側部(134)に溶接により固着され、側部の接触部(132)は前側部(134)及び後側部(133)で両持ち支持され、中央の接触部(131)は後側部(133)で片持ち支持されている。尚、前側部(134)及び後側部(133)は2条分の苗載部(80b)毎にそれぞれ1本設けられ、2条分の苗載部(80b)における接触部(131,132)が共通の前側部(134)及び後側部(133)に支持される構成となっている。
苗載台支持フレーム(123)には、上下方向略中央位置で左右に延びる左右フレーム部(123a)を備えている。この左右フレーム(123a)は、断面円形の丸軸である。この左右フレーム(123a)の左右の適所には、下端にフック(170)を備える吊下げ部材(171)を、該左右フレーム(123a)の軸回りに左右各々回動自在に取り付けている。
【0035】
従って、苗載台(80)の通常の植付作業状態(通常状態)では、苗載台(80)の自重により、連結部材(83)の連結溝(169)の通常溝部(169a)の下端部(前下端部)に連結軸(168)が位置する。苗載台(80)を上側の移動状態へ移動させるにあたり、作業者が、連結軸(168)を通常溝部(169a)に案内させながら苗載台(80)を上側(後斜め上側)へ移動させ、更に連結溝(169)の屈曲部を介して連結軸(168)を連結溝(169)の移動溝部(169b)に案内させながら苗載台(80)を前斜め上側へ移動させる。そして、連結軸(168)が移動溝部(169b)の前端部(上端部)に位置する状態で、苗送り伝動機構の中継軸(89)を吊下げ部材(171)のフック(170)に掛けることで、苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成となっている。この移動状態では、苗載台(80)は、通常状態から苗載台(80)の前後傾斜方向に沿って上側へ移動した位置となり、通常状態と苗載台(80)の前後傾斜角度も略同じとなる。尚、左右の吊下げ部材(171)は、中継軸(89)が位置する左右位置に配置されている。また、吊下げ部材(171)を左右フレーム(123a)の軸回りに回動自在にしているため、中継軸(89)をフック(170)に掛ける作業を容易に行える。尚、吊下げ部材(171)を、左右フレーム(123a)に対して回動しない構成としてもよい。
【0036】
左右一方(右側)のフック(170)と植付昇降操作レバー(25)との間には、停止連動装置となる停止連動用ワイヤ(172)を連結している。よって、苗載台(80)の移動状態でフック(170)に中継軸(89)を掛けることで、該中継軸(89)により停止連動用ワイヤ(172)が引かれ、植付昇降操作レバー(25)を苗植付部(4)を作動させる植付位置から苗植付部(4)を作動させない非植付位置へ強制的に操作する構成となっている。
【0037】
苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には後側の支柱(135)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この後側の支柱(135)には前後方向に向く断面円形状の取付孔が設けられている。この取付孔は、後側の支柱(135)の上下方向に複数設けられている。同様に、苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には前側の支柱(136)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この前側の支柱(136)の上端部には前側から切り欠いた断面半円形状の切り欠き部(136a)が設けられている。一方、前記後側部(133)の左右両端には後側に屈曲した固定部(133a)が設けられ、この固定部(133a)が前記取付孔に挿入されている。また、前記前側部(134)の左右両端部が前記切り欠き部(136a)に挿入されている。従って、前側部(134)が左右の前側の支柱(136)で支持され、後側部(133)が左右の後側の支柱(135)で支持され、苗押え具(130)全体が苗載台(80)に支持された構成となっている。
【0038】
そして、苗押え具(130)は、前記固定部(133a)を取付孔から抜いて外すことにより、前側部(134)を軸心として上下に回動させることができる。この苗押え具(130)の回動により、植付作業終了時等に、苗押え具(130)と苗載台(80)の苗載面(80c)との間に残った苗を、苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に取り出すことができる。また、苗押え具(130)を回動して前記固定部(133a)を別の取付孔に挿入することにより、苗載面(80c)に対する接触部(131,132)の位置あるいは角度を変更することができ、マット苗の床部の厚みや強度等の違いに応じて苗押え具(130)の位置あるいは角度を調節し、苗送りベルト(79)の苗送り抵抗が過大にならずに苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧することができる。更には、固定部(133a)を取付孔から抜いて外すと共に前側部(134)を切り欠き部(136a)から外すことにより、苗載台(80)から苗押え具(130)を取り外すことができ、苗載台(80)上に残った苗を容易に取り出せることはもとより、苗載台(80)や苗植付部(4)のメンテナンスを苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に行える。尚、固定部(133a)を取付孔から抜くときは、苗押え具(130)(主として後側部(133))を撓ませながら抜くようになっている。
【0039】
後側部(133)の左右両端部には、上側へ延びる苗受け止め具取付部(137)を溶接により固着して設けている。この苗受け止め具取付部(137)に苗受け止め具(138)を引っ掛けて装着できる構成となっている。前記苗受け止め具(138)は、各条の苗載部(80b)毎に設けられ、当該苗載部(80b)上の苗がその自重により苗取出口(78)側に移動しないように受け止めるものである。この苗受け止め具(138)により、苗送りベルト(79)の作動に拘らず、苗取出口(78)へ確実に苗が供給されないようにでき、一部の植付条で苗を植え付けずに他の植付条のみで部分的に苗の植付作業を行うことができる。
【0040】
各々の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)の上端と後側部(133)とが交差する部分には、苗載台(80)上の苗が苗載面(80c)あるいは横枠(81)から浮き上がるのを防止すると共に、苗載台(80)の左右移動で左右方向へずれるのを防止する苗浮き上がり防止具(139)を取り付けている。この苗浮き上がり防止具(139)は、合成樹脂製であり、上部に苗押え具(130)の後側部(133)が嵌る上部切り欠き溝(140)を備え、側面に上下方向に向く苗押え具(130)の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る側部切り欠き溝(141)を備え、下部にマット苗の床部の上面に当たって該苗を押圧する浮き上がり防止作用部(142)を備えている。尚、この苗浮き上がり防止具(139)は、上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)により、苗押え具(130)に着脱できる。前記上部切り欠き溝(140)は、苗浮き上がり防止具(139)の上側から切り欠いた構成となっており、前記後側部(133)が嵌る嵌合部となる断面円形の部分(140a)を上下に複数(2個)連ねて設けている。前記側部切り欠き溝(141)は、機体の左側から切り欠いた構成となっており、前記接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る断面半円形状の部分が上下方向に貫通した構成となっている。この側部切り欠き溝(141)の上下の適宜の位置には、苗浮き上がり防止具(139)が前記苗押え具(130)から外れにくいように該溝(141)側に突出する突出部(141a)が設けられている。前記浮き上がり防止作用部(142)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)と同じ左右方向の位置で且つ前記接触部(131,132)より後側に配置され、斜め後下方に向く鋭角状の頂点部(142a)を備えた側面視三角形状であり、この下辺部(142b)に苗の床部の上面が接触することになる。前記下辺部(142b)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の接触面部分より苗載面(80c)側に位置し、苗載台(80)の苗送り下手側(下側、後側又は苗取出口(78)側)へいくほど苗載面(80c)に近づくように苗載面(80c)に対して斜めに構成されている。前記頂点部(142a)は、苗載台(80)の苗載面(80c)の後端と対向する位置に配置されている。また、浮き上がり防止作用部(142)の左右方向の幅は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の左右方向の幅より狭くなっている。
【0041】
苗植付部(4)の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート(100)、左右それぞれ最外2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート(101)及びセンターフロート(100)とサイドフロート(101)との間で残り1条分の苗植付位置を整地するミッドフロート(102)が設けられている。これらフロート(100,101,102)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート(100,101,102)が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置(37)により苗が植付けられる。各フロート(100,101,102)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート(100)の前部の上下動が上下動検出機構(103)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ(76)を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部(4)を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。尚、上下動検出機構(103)の検出により、各フロート(100,101,102)が土壌面に対して浮き気味である(フロート(100,101,102)の前後傾斜姿勢が前下がり傾向にある)と判断されるときは、DFIによる電子燃料噴射制御によりエンジン回転数を低下させて走行速度を低下させる構成としている。これにより、土壌面に対して苗植付部(4)が浮き気味になって植付が乱れるのを極力抑えることができる。尚、走行速度を減速させる手段としては、電子燃料噴射制御によるエンジン回転数の低下の他、エンジンスロットルによりエンジン回転数を低下させる手段や変速装置を低速側に作動制御する手段等を採用できる。尚、各フロート(100,101,102)が土壌面に対して浮き気味であることを判断する手段としては、センターフロート(100)の上下動検出機構(103)の検出に基づくものの他、左右のサイドフロート(101)の上下動を検出する格別のセンサの検出に基づくものとしてもよい。尚、前記センサは、リミットスイッチ式のセンサとしてもよい。
【0042】
施肥装置(5)は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)(110)に貯留されている肥料(粉粒体)を各条の肥料繰出部(粉粒体繰出部)(63)によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)(111)でフロート(100,101,102)に取り付けた施肥ガイド(112)まで導き、施肥ガイド(112)の前側に設けた作溝体(113)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。電動モータ(114)で駆動のブロア(115)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ(116)を経由して肥料移送ホース(111)内に吹き込み、肥料移送ホース(111)内の肥料を苗植付部(4)側の肥料吐出口(施肥ガイド(112))へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド(112)及び作溝体(113)の後方でフロート(100,101,102)に取り付けた覆土板(117)により覆土される。
【0043】
各条の施肥ガイド(112)及び作溝体(113)は、対応する苗植付装置(37)との位置関係(距離)を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置(機体側面視で同じ位置)に配置される。同様に、各条の覆土板(117)も対応する施肥ガイド(112)、作溝体(113)及び苗植付装置(37)との位置関係を(距離)を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0044】
施肥伝動機構により施肥装置(5)へ伝動される動力は、左右方向に延びる施肥駆動軸に伝動され、該施肥駆動軸から各条の繰出用ギヤを介して各条の肥料繰出部(63)へ伝動される。前述ではブロア(115)を電動モータ(114)で駆動する構成について説明したが、施肥駆動軸からブロア用伝動機構を介してブロア(115)を駆動する構成とすれば、電動モータ(114)が不要になってコストダウンが図れると共に、電動モータ(114)を使用しないことで電装系の故障を削減することもできる。このとき、エアチャンバ(116)内にブロア(115)をその駆動軸が左右方向に向く状態で配置する構成とすれば、例えばプーリ及び伝動ベルト等により施肥駆動軸からブロア(115)へ伝動でき、ブロア用伝動機構の構成を簡単にできる。更に望ましくは、エアチャンパ(116)を左右に分割すると共に、その分割位置である左右のエアチャンパの端部に左右各々のブロア(115)を配置すれば、ブロア(115)への伝動のために施肥駆動軸を延ばす必要もなく、またエアチャンパ(116)内に設けるためにブロア(115)が小型で能力の低いものとなっても、エアチャンパ(116)を左右に分割して左右各々のブロア(115)を設けるので、所望の風圧を得ることができ、尚、共通の伝動ベルト(ブロア用伝動機構)により左右のブロア(115)へ伝動する構成とすれば、コストダウンが図れる。特に、4条仕様の田植機の場合、エアチャンパ(116)を左右に2条分ずつに分割すれば、エアチャンパ(116)内の小型のブロア(115)でも各々2条分で必要な風圧を十分に得ることができる。
【0045】
前述の施肥装置(5)は粒状肥料を施肥する構成であるが、施肥装置としてペースト状肥料を施肥する構成とすることもできる。このとき、肥料繰出部は、ペースト状肥料を送り出すポンプとなる。肥料貯留タンクにペースト状肥料を貯留することとなるが、ポンプにより良好に繰り出すためにペースト状肥料を攪拌して流動性を高める攪拌装置を、肥料貯留タンク内に設けている。攪拌装置は、駆動モータにより回転駆動する構成であり、駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が大きいときは駆動モータが正転と逆転を交互に繰り返し、肥料の種類や気温変化等の環境変化によりペースト状肥料の粘性が高い状態でも良好な流動性を得られるようにしている。駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が小さいときは駆動モータの回転速度を低下させ、電力の消費を抑える。また、駆動モータの駆動抵抗の検出に基づいて駆動抵抗が極端に小さいとき、肥料貯留タンク内のペースト状肥料の貯留量が減少したと判断し、肥料補給を促す警報を発する。これにより、格別の肥料減少センサが不要であり、コストダウンが図れる。
以上により、この乗用型の田植機(1)は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成としている。
よって、作業者は、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を案内させながら苗載台(80)を上側に移動し、機体側のフック(170)に苗載台(80)側の中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持できるので、苗受枠(81)と苗載台(80)との間に空間を容易に作ることができ、また、移動状態において、苗載台(80)が、通常状態と略同じ前後傾斜角度で、通常状態から苗載台(80)の前後傾斜方向に沿って上側へ移動した位置となるため、苗載台(80)の下端が苗受枠(81)の前後位置に近く、苗載台(80)の下端が後方に移動しないため、苗載台(80)の下端が邪魔で苗受枠(81)と苗載台(80)との間の空間に手を入れて作業を行いにくいことがなく、移動状態の苗載台(80)はフック(170)と連結部材(83)の連結溝(169)とで確実に保持され、更には従来のようなスタンドが無いから、伝動ケース(77)、苗送りベルト(79)、該苗送りベルト(79)への伝動機構、苗載台(80)を左右移動させる機構、及び苗受枠(81)を上下移動させて苗植付装置(37)による苗の掻き取り量を調節する機構等の苗載台(80)の前側に位置する部材のメンテナンス作業の容易化が図れると共に、メンテナンス作業の安全性も向上する。
また、連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通している。
よって、苗載台(80)が、苗受枠(81)に接する通常状態から、機体の振動等により不意に移動状態に移行しにくくなり、通常植付作業時に苗載台(80)が連結溝(169)により移動して植付精度が低下するようなことを防止できる。また、通常溝部(169a)と移動溝部(169b)とは連通しているので、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
【0046】
また、苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持されているので、苗載台(80)の移動において支持部材(122)及び苗受枠(81)が障害とならず、苗載台(80)の通常状態と移動状態との間の移動を容易に行え、メンテナンス作業の容易化が図れる。
【0047】
また、移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(停止連動用ワイヤ)(172)を設けているので、苗載台(80)の移動状態で誤って苗植付装置(37)及び苗載台(80)を含む苗植付部(4)が作動することがなく、移動状態で苗載台(80)が左右移動して破損するのを防止すると共に、メンテナンスを行う作業者が怪我をするようなことを防止でき、メンテナンス作業の安全性が向上する。
【0048】
尚、苗載台(80)への苗補給作業を容易にするため、苗載台(80)の直前となる肥料貯留タンク(110)の上方に補給用苗載台(173)を設けることができる。この補給用苗載台(173)は、植付条数に合わせて左右に8枚の苗を搭載する構成であり、傾動用シリンダ(174)の作動により前部の回動軸(175)回りの回動で後ろ下がりに傾斜して苗載台(80)へ苗補給を行う。この苗補給時、苗載台(80)を左右中央位置に左右移動させて補給用苗載台(173)の左右位置に合わせる。補給用苗載台(173)の下方には、該補給用苗載台(173)と一体で回動する補給用肥料タンク(176)を設けている。この補給用肥料タンク(176)の後部下側には肥料排出口(177)を備え、この肥料排出口(177)を開閉する開閉蓋(177a)を設けている。従って、肥料貯留タンク(110)の蓋(110a)を開けた状態で、補給用肥料タンク(176)の開閉蓋(177a)を開け、補給用苗載台(173)及び補給用肥料タンク(176)を後ろ下がり姿勢に回動させることにより、苗載台(80)への苗補給と肥料貯留タンク(110)への肥料補給とを同時に行え、補給作業を能率良く行えると共に、苗補給及び肥料補給を共通の傾動用シリンダ(174)で行う構成として構造の簡略化が図れる。
【0049】
また、田植機(1)で田植作業をした後、路上走行するときに、前輪(6)及び後輪(7)に付着した泥が路上に落下し、路面を汚してしまうことがあり、田植後に汚した路面を清掃するのが手間がかかり面倒である。そこで、乗用型の田植機(1)において昇降リンク装置(3)を苗植付部(4)ごと走行車体(2)から外し、代わりに路面の泥を集める集泥装置(178)を装着できる構成としている。この集泥装置(178)は、路面に接する掬い部(179)を前端に備える集泥枠(180)と、該集泥枠(180)に設けた左右の遊転車輪(181)と、走行車体(2)のリンクベースフレーム(72)から集泥枠(180)を上下動自在に牽引する左右の牽引リンク(182)と、集泥枠(180)の後側に設けたスコップ(183)を保持する保持枠(184)とを備えている。従って、田植作業後に田植機(1)を路上走行させた後、洗車場等で田植機(1)を洗車し、その後、昇降リンク装置(3)を苗植付部(4)ごと走行車体(2)から外し、代わりに走行車体(2)に集泥装置(178)を装着し、田植作業後に走行した路上を再度走行することにより、掬い部(179)が路面に追従して接地しながら路上の泥を掬い上げ、泥が集泥枠(180)に集められる。よって、集泥装置(178)により、容易に路面を清掃することができ、清掃作業の容易化が図れる。
【0050】
尚、この発明の実施の形態は乗用型の田植機(1)について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1:乗用型の田植機、37:苗植付装置、78:苗取出口、79:苗送りベルト、80:苗載台、81:横枠、83:連結部材、89:中継軸、122:支持ローラ、168:連結軸、169:連結溝、169a:通常溝部、169b:移動溝部、170:フック、172:停止連動用ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)に設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした苗移植機。
【請求項2】
連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通した請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持された請求項1又は請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(172)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項1】
苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、左右移動する連結部材(83)により前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗載台(80)の左右移動終端で該苗載台(80)上の苗を苗受枠(81)側に移送する苗送りベルト(79)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、連結部材(83)の連結溝(169)に苗載台(80)側の連結軸(168)を挿入して上下移動可能に苗載台(80)を連結し、苗送りベルト(79)へ伝動する中継軸(89)を苗載台(80)に設け、フック(170)を機体側に設け、該フック(170)に中継軸(89)を掛けることで苗載台(80)を上側へ移動した移動状態で保持する構成とした苗移植機。
【請求項2】
連結溝(169)は、苗載台(80)が苗受枠(81)に接する通常状態で連結軸(168)が挿入される通常溝部(169a)と、苗載台(80)の移動状態で連結軸(168)が挿入される移動溝部(169b)とを交差させて連通した請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
苗載台(80)は、苗載台(80)の上部を左右移動可能に支持する支持部材(122)と、苗受枠(81)とに、上側へ移動自在に支持された請求項1又は請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
移動状態への苗載台(80)の移動に連動して、苗植付装置(37)の作動を強制的に停止させる停止連動装置(172)を設けた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−177050(P2011−177050A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42173(P2010−42173)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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