苗移植機
【課題】機上の作業スペースを損なうことなく、多条植の苗補給に対応することができる予備苗枠を備えた苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、圃場を走行するための前輪及び後輪を備えた走行車体と、この走行車体の後部で補給苗により複数条の苗株を植付ける植付部と、走行車体の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠とを設けて構成され、上記予備苗枠の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたものである。
【解決手段】苗移植機は、圃場を走行するための前輪及び後輪を備えた走行車体と、この走行車体の後部で補給苗により複数条の苗株を植付ける植付部と、走行車体の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠とを設けて構成され、上記予備苗枠の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部に補給するための補給苗を格納積載する苗載置部材を多段の格納棚状に構成した予備苗枠を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、植付部に補給するためのマット状の補給苗を格納積載する苗載置部材を三段の格納棚状に構成した予備苗枠を運転台の左右位置に備えた苗移植機が知られている。これら左右の予備苗枠は、それぞれ、苗載置部材を姿勢維持しつつ前後移動させる展開支持機構で可動支持することにより、複数段の格納配置の苗載置部材を機体の前後方向に直列状に展開動作することができる。この予備苗枠を圃場端における補給苗の積込みの際に前後に直列展開することにより、機上の作業スペースを損なうことなく、畦位置から容易に補給苗を搬入することができ、多段格納配置に戻した上で圃場内を植付け走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記予備苗枠は、収容可能な補給苗の数が上下3段の苗載置部材の範囲に限られていることから、植付条数が7条以上の田植機の場合、例えば、10条植の苗移植機にあっては、4条分の補給苗が不足するので、不足分を運転台脇の床面等に積載せざるを得ず、走行機体の揺れ等によって補給苗が圃場に落下する問題のみならず、幅広い作業スペースを要する植付部への苗補給操作の支障となって多くの時間を費やすことになり、作業能率が低下する問題がある。
一方、苗載置部材の段数増加や拡張による場合は、展開支持機構の構成の複雑化を招き、製造コスト、メンテナンス、耐久性の問題を解決する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、機上の作業スペースを損なうことなく、多条植の苗補給に対応することができる予備苗枠を備えた苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、圃場を走行するための前輪(2a)及び後輪(2b)を備えた走行車体(2)と、この走行車体(2)の後部で補給苗(M)により複数条の苗株を植付ける植付部(4)と、走行車体(2)の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠(5)とを設けた苗移植機において、上記予備苗枠(5)の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記予備苗枠は、複数条の苗株を植付部によって植付けつつ走行する走行車体の側部に支持され、展開支持機構によって前後に直列展開可能な複数段の苗載置部材について、その1以上の苗載置部材から支柱を介して補給苗積載用の補助載置部材を設けることによって増設段が形成される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5a)および補助載置部材(16b)の側面視によるそれぞれの全長(A)の後半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
直列展開時の最前位置の苗載置部材の上方に補助載置部材を配置することにより増設段が形成され、苗載置部材の後半部の支柱に及ぶ開放空間が形成される。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最後位置に直列展開される苗載置部材(5b)からその下方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5b)および補助載置部材(16b)の側面視による全長(A)の前半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
直列展開時の最後位置の苗載置部材の下方に補助載置部材を配置することにより増設段が形成され、補助載置部材の前半部の支柱に及ぶ開放空間が形成される。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、複数の苗載置部材(5a,5b)をそれぞれ2支点(11a)で所定の姿勢で展開位置まで移動可能に支持する複合リンク(12,12a,12b)によって構成し、該複合リンク(12,12a,12b)の2支点(11a)の中間位置に前記支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
上記複合リンクが支持する苗載置部材の2支点の中間位置に配置した支柱により、増設段の補助載置部材の負荷が2支点から均等に複合リンクに作用する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成において、前記予備苗枠(5)は、前後展開移動可能な苗載置部材(5a,5b)の間に第三の苗載置部材(5c)を備え、この第三の苗載置部材(5c)からその上下の側にそれぞれ支柱(16a)を介して補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設け、これら上下の補助載置部材(16b)は、多段格納配置の苗載置部材(5a,5b)の間の範囲に設けたことを特徴とする。
前後に展開動作する多段配置の苗載置部材の間に設けた第三の苗載置部材と上下の補助載置部材とにより、展開状態及び収納状態のいずれでも、補給苗が中央部に集中積載される。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、同苗載置部材(5a)の前端より所定距離(D)を後退して配置したことを特徴とする。
直列展開時の最前位置の苗載置部材は、その前端から補助載置部材が後退して位置する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)および補助載置部材(16b)の外側に配置したことを特徴とする。
展開支持機構が外側から多段格納構成の複数の苗載置部材および補助載置部材を支持することから、複数の苗載置部材および補助載置部材の内側に操作域が確保される。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)の内側に配置し、これら多段格納構成の最上段の苗載置部材(5a)の外側位置からその上方に支柱(16a)を介して補助載置部材(16b)を配置したことを特徴とする。
上段格納位置の苗載置部材は、その外側位置の支柱によって上方の補助載置部材を支持することから、上段格納位置の苗載置部材についての操作域が確保される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明の構成により、予備苗枠は、複数条の苗株を植付部によって植付けつつ走行する走行車体の側部に支持され、展開支持機構によって前後に直列展開可能な複数段の苗載置部材について、その1つ以上の苗載置部材から支柱を介して設けた補給苗積載用の補助載置部材によって補助載置段が形成されることから、苗載置部材の直列展開動作を確保しつつ、補助載置段を加えた多段格納構成によって機上の作業スペースを確保した上で補給苗の格納量を増やし、多条植付作業を行う際、苗を補充しに戻る頻度が減少するため、植付作業が中断されることが無く、作業能率が向上する。
【0016】
請求項2の発明の構成により、請求項1の効果に加え、直列展開時の最前位置の苗載置部材の上方に補助載置部材を配置することにより補助載置段が形成されることから、直列展開による前端の苗載置部材の前方から補給苗を積込む際に、苗載置部材の上段に配置した補助載置部材にも苗載置部材と同様の積込作業を行うことができるので、補助載置段の支柱が、苗載置部材および補助載置部材の側面視による全長の後半部の範囲であることから、補給苗の積込口が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の積込みを妨げることなく、効率よく補給苗を積込むことができる。
【0017】
請求項3の発明の構成により、請求項1または請求項2の効果に加え、直列展開時の最後位置の苗載置部材の下方に補助載置部材を配置することにより、補助載置段が形成されるため、直列展開による後端の苗載置部材から後方に補給苗を取出す際に、苗載置部材の下段の補助載置部材からも容易に取出すことができると共に、補助載置段の支柱を、苗載置部材および補助載置部材の側面視による全長の前半部の範囲に配置したことにより、補給苗の取出口が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の取出しを妨げることなく効率よく補給苗を植付部に補給することができるため、作業能率が向上する。
【0018】
請求項4の発明の構成により、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の効果に加え、苗載置部材を支持する複合リンクの2支点の中間位置に配置した支柱により、補助載置段の補助載置部材の負荷が2支点から均等に複合リンクに作用するので、複合リンクによる展開支持機構の安定動作が可能となる。
【0019】
請求項5の発明の構成により、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の効果に加え、前後に展開動作する多段配置の苗載置部材の間に設けた第三の苗載置部材と上下の補助載置部材とにより、展開状態及び格納状態のいずれでも、補給苗を中央部に集中積載できるので、補給苗の積載量が増えても予備苗枠の前後バランスが崩れにくく、機体の走行姿勢や植付精度が安定する。
【0020】
請求項6の発明の構成により、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の効果に加え、直列展開時の最前位置の苗載置部材は、その前端から後退して補助載置部材が位置することから、苗載置部材の上方からの投入操作によって能率良く補給苗の積込みが可能となるので、苗の積込作業の能率が向上する。
【0021】
請求項7の発明の構成により、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の効果に加え、展開支持機構が多段格納構成の複数の苗載置部材および補助載置部材を外側から支持することから、複数の苗載置部材および補助載置部材の内側に操作域が確保されるので、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を向上することができ、作業性が向上する。
【0022】
請求項8の発明の構成により、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の効果に加え、最上段の苗苗載置部材は、その外側位置の支柱によって上方の補助載置部材を支持することから、最上段の苗載置部材についての補給苗の操作域が確保されるので、補給苗の格納量の増加を図りつつ、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を確保することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の適用対象の8条植え苗移植機の平面図
【図2】多段格納配置の予備苗枠の要部側面図
【図3】増設段構成例1の展開状態の要部側面図
【図4】増設段構成例2の展開状態の要部側面図
【図5】増設段構成例3の展開状態の要部側面図
【図6】増設段構成例4の展開時と格納時の動作側面図
【図7】増設段構成例5の展開時と格納時の動作側面図
【図8】増設段構成例6の展開状態の側面図
【図9】増設段構成例7の予備苗枠の正面図
【図10】増設段構成例8の予備苗枠の正面図
【図11】増設段構成例9の展開状態の要部側面図
【図12】増設段構成例10の多段格納配置の側面図
【図13】増設段構成例11の展開時と格納時の動作側面図
【図14】増設段構成例12の展開時と格納時の動作側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記技術思想に基づいて具体的に構成した発明の実施形態について、以下に図面に沿って詳細に説明する。
図1は8条植苗移植機の平面図である。この苗移植機1は、圃場を走行するための前輪2a,2a及び後輪2b,2bを備えた走行車体3と、この走行車体3の後部で植付条別の苗タンク4aに受けた補給苗により複数条の苗株を植付ける植付部4と、走行車体3の両側部に支持した補給苗格納用の苗載置部材である複数の予備苗載せ台5a,5b,5cを上下に3段格納構成した予備苗枠5と、操向ハンドル6a、操縦席6b等の操縦機器を備える運転台6その他を設けて構成される。
【0025】
予備苗枠5は、図2の拡大側面図に示すように、補給苗格納用の複数の予備苗載せ台5a,5b,5cと、これら予備苗載せ台5a,5b,5cをそれぞれの側方で支持する展開支持機構11とによって構成し、この展開支持機構11は、複数の予備苗載せ台5a,5b,5cを上下に多段格納構成するとともに、中段配置の予備苗載せ台5cを中心に上段配置の予備苗載せ台5aを前端位置に、下段配置の予備苗載せ台5bを後端位置に前後展開可能に可動支持する複合リンクをベースフレーム13に支持することにより構成する。
【0026】
詳細には、各予備苗載せ台5a,5b,5cに支点11a…を設け、全予備苗載せ台5a,5b,5cとそれぞれ連結する作用リンク12と、中段の予備苗載せ台5cに対して上段の予備苗載せ台5aの姿勢を相対規制する規制リンク12aと、中段の予備苗載せ台5cに対して下段の予備苗載せ台5bの姿勢を相対規制する規制リンク12bとによって複合リンクを構成し、ベースフレーム13に設けた2支点13a,13aに作用リンク12および一方の規制リンク12bを軸支する。作用リンク12には扇型ギヤ14を一体に設けて前後方向に直列する展開位置までの範囲で電動制御可能に構成するとともに、規制リンク12b等にスプリング15を連結して可動部を付勢拘束する。
【0027】
また、1つ以上の予備苗載せ台5a,5b,5cについて、支柱16aを介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材である補助苗載せ台16bを設けて増設段を形成する。例えば、最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aからその上方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを配置する。
【0028】
上記のように予備苗枠5を構成することにより、植付部4によって複数条の苗株を植え付け走行する走行車体3の両側部に支持される予備苗枠5,5において、それぞれ3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cが展開支持機構11によって前後に直列展開可能となり、これら3段の予備苗載せ台5a,5b,5cについて、支柱16aを介して補給苗積載用の補助苗載せ台16bを設けることによって増設段が形成されることから、予備苗載せ台5a,5b,5cの直列展開動作を確保しつつ、補助苗載せ台16bを加えた4段の格納構成により、機上の作業スペースを確保した上で補給苗の格納量を増やして8条植え等の多条植付けに対応することができる。
【0029】
また、直列展開時の最前位置の予備苗載せ台5aの上方に増設段の補助苗載せ台16bを配置したことから、直列展開による前端の予備苗載せ台5aの前方から補給苗を積込む際に、予備苗載せ台5aの上段に配置の補助苗載せ台16bにも予備苗載せ台5aと同様に積込むことができる。
【0030】
この場合において、増設段構成例1として、図3の展開状態の要部側面図に示すように、予備苗載せ台5aおよび補助苗載せ台16bの側面視によるそれぞれの全長Aの後半部の範囲に支柱16aを配置することにより、予備苗載せ台5aの前方Fからの補給苗の積込み操作範囲Bが支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の積込みを妨げることなく、効率よく補給苗を積込むことができる。また、増設段構成例2として、図4の展開状態の要部側面図に示すように、予備苗載せ台5aの全長Aの中央位置に支柱16aを配置することにより、バランス良く積載支持することができる。
【0031】
次に、増設段構成例3として、図5の展開状態の要部側面図に示すように、増設段の支柱16aを予備苗載せ台5aの2支点11a,11a間距離Cの中間位置に配置することにより、増設段の補助苗載せ台16bの負荷が2支点11a,11aから均等に作用リンク12と規制リンク12aに作用するので、展開支持機構11の安定動作が可能となる。
【0032】
次に、増設段構成例4として、図6の展開時と格納時の動作側面図に示すように、3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aの増設段に加え、最後位置に直列展開される予備苗載せ台5bからその下方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを設けて増設段を構成する。
【0033】
上記のように予備苗枠5を構成することにより、増設段の補助苗載せ台16bが直列展開時の最後位置の予備苗載せ台5bの下方に配置されることから、直列展開による後端の予備苗載せ台5bから後方に補給苗を取出す際に、予備苗載せ台5bの下段の補助苗載せ台からも容易に取出すことができる。
【0034】
この場合において、予備苗載せ台5bおよび補助苗載せ台16bの側面視による全長の前半部の範囲に支柱16aを配置することにより、予備苗載せ台5bの後方からの補給苗の取出し範囲が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の取出しを妨げることなく、効率よく補給苗を取出して植付部4に補給することができる。また、予備苗載せ台5bの全長の中央位置に支柱16aを配置することにより、バランス良く積載支持することができる。
【0035】
次に、増設段構成例5として、図7の展開時と格納時の動作側面図に示すように、予備苗枠5は、前後に展開動作する予備苗載せ台5a,5bの間に中段の予備苗載せ台5cを備え、この予備苗載せ台5cからその上下の側にそれぞれ支柱16a,16aを介して補給苗積載用の補助苗載せ台16b,16bを設け、これら上下の補助苗載せ台16b,16bは、上下の格納段の予備苗載せ台5a,5bの間の範囲に設けて中間部の上下の増設段を形成する。
【0036】
上記構成により、前後に展開動作する三段格納構成の上下の予備苗載せ台5a,5bおよび中段の予備苗載せ台5cと、該中段の予備苗載せ台5cについての上下の補助苗載せ台16b,16bとにより、展開状態及び格納状態のいずれについても、補給苗を中央部に集中積載できるので、補給苗の積載量が増えても全体の前後バランスが崩れにくく、機体の走行姿勢や植付精度の安定を確保することができる。
【0037】
次に、増設段構成例6として、図8の展開状態の側面図に示すように、最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aからその上方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを設け、この補助苗載せ台16bを同予備苗載せ台5aの前端より所定寸法Dを後退して配置することにより、直列展開時の最前位置の予備苗載せ台5aは、その前端から後退して増設段の補助苗載せ台16bが位置することから、予備苗載せ台5aの上方からの補給苗Mの投入操作によって積込み作業を能率良く進めるが可能となる。
【0038】
なお、予備苗載せ台5aとその上方の増設段の補助苗載せ台16bについて、両者の先端位置を揃えて構成することにより、直列展開状態における前方の空間および、多段格納配置における後方の空間が形成されることから、直列展開状態における前方からの補給苗の積込み時と、多段格納配置における後方からの補給苗の取出し時において、それぞれの操作性を確保することができる。
【0039】
次に、増設段構成例7として、図9の予備苗枠の正面図に示すように、上段格納配置の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上位の増設段を構成した場合に、3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの外側を展開支持機構11によって支持することにより、直列展開時の補給苗の取出しおよび補給苗の積込みを容易化することができると共に、多段格納時において複数の予備苗載せ台5a,5b,5cおよび補助苗載せ台16bの内側に操作域が確保されるので、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を向上することができる。
【0040】
次に、増設段構成例8として、図10の予備苗枠の正面図に示すように、上段格納配置の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上位の増設段を構成した場合に、三段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの内側を展開支持機構11によって支持するとともに、最上段の増設段の支柱16aを外側に配置することにより、最上段の増設段についての補給苗Mの積込みおよび取出しが容易となる。
【0041】
(別構成例)
次に、増設段構成例9として、図11の展開状態の要部側面図に示すように、増設段の補助苗載せ台16bをその下面の前後の2つの支柱16a,16aによって上段格納配置の予備苗載せ台5aに支持することにより、支持剛性を確保して補助苗載せ台16bのねじれを防止することができる。
【0042】
次に、増設段構成例10として、図12の多段格納配置の側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bの下面には、展開移動可能な上段の予備苗載せ台5aに取付けるための第一の支柱16aを設けるとともに、展開支持機構11のベースフレーム13に取付けるための第二の支柱16cを設け、取付け位置を選択可能に構成する。
【0043】
上記第一の支柱16aを使用して補助苗載せ台16bを移動式に切換えた場合は、直列展開時は補給苗の積込み作業が容易となり、多段格納時は補給苗を安定積載できるとともに補給苗の取出し作業が容易となり、また、第二の支柱16cを使用して補助苗載せ台16bを固定式に切換えた場合は、補給苗の落下を抑えて安定積載を確保しつつ植付け走行が可能となる。
【0044】
次に、増設段構成例11として、図13の展開時と格納時の動作側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bをその後端支点16dで前上がりに傾斜可能に構成する。上段の予備苗載せ台5aを最前位置に直列展開して前方の畦から補給苗を積込む場合において、補助苗載せ台16bを前上がりに傾斜させて前側を大きく開口することにより、予備苗載せ台5aに対する苗Mの積込みが容易となる。
【0045】
次に、増設段構成例12として、図14の展開時と格納時の動作側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bをその前端支点16eで後上がりに傾斜可能に構成する。
【0046】
上記構成により、多段格納配置の上段の予備苗載せ台5aから苗Mを取出して後方の植付部4に補給する場合において、補助苗載せ台16bを後上がりに傾斜させて後側を大きく開口することができるので、取出した苗Mの植付部4への補給操作が容易となる。
【符号の説明】
【0047】
1 苗移植機
3 走行車体
4 植付部
5 予備苗枠
5a 予備苗載せ台(苗載置部材)
5b 予備苗載せ台(苗載置部材)
5c 予備苗載せ台(苗載置部材)
6 運転台
11 展開支持機構
11a 支点
12 作用リンク
12a 規制リンク
12b 規制リンク
13 ベースフレーム
13a 支点
16a 支柱
16b 補助苗載せ台(補助載置部材)
A 全長
B 積込み範囲
C 支点間距離
D 後退距離
M 補給苗
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部に補給するための補給苗を格納積載する苗載置部材を多段の格納棚状に構成した予備苗枠を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、植付部に補給するためのマット状の補給苗を格納積載する苗載置部材を三段の格納棚状に構成した予備苗枠を運転台の左右位置に備えた苗移植機が知られている。これら左右の予備苗枠は、それぞれ、苗載置部材を姿勢維持しつつ前後移動させる展開支持機構で可動支持することにより、複数段の格納配置の苗載置部材を機体の前後方向に直列状に展開動作することができる。この予備苗枠を圃場端における補給苗の積込みの際に前後に直列展開することにより、機上の作業スペースを損なうことなく、畦位置から容易に補給苗を搬入することができ、多段格納配置に戻した上で圃場内を植付け走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記予備苗枠は、収容可能な補給苗の数が上下3段の苗載置部材の範囲に限られていることから、植付条数が7条以上の田植機の場合、例えば、10条植の苗移植機にあっては、4条分の補給苗が不足するので、不足分を運転台脇の床面等に積載せざるを得ず、走行機体の揺れ等によって補給苗が圃場に落下する問題のみならず、幅広い作業スペースを要する植付部への苗補給操作の支障となって多くの時間を費やすことになり、作業能率が低下する問題がある。
一方、苗載置部材の段数増加や拡張による場合は、展開支持機構の構成の複雑化を招き、製造コスト、メンテナンス、耐久性の問題を解決する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、機上の作業スペースを損なうことなく、多条植の苗補給に対応することができる予備苗枠を備えた苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、圃場を走行するための前輪(2a)及び後輪(2b)を備えた走行車体(2)と、この走行車体(2)の後部で補給苗(M)により複数条の苗株を植付ける植付部(4)と、走行車体(2)の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠(5)とを設けた苗移植機において、上記予備苗枠(5)の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記予備苗枠は、複数条の苗株を植付部によって植付けつつ走行する走行車体の側部に支持され、展開支持機構によって前後に直列展開可能な複数段の苗載置部材について、その1以上の苗載置部材から支柱を介して補給苗積載用の補助載置部材を設けることによって増設段が形成される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5a)および補助載置部材(16b)の側面視によるそれぞれの全長(A)の後半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
直列展開時の最前位置の苗載置部材の上方に補助載置部材を配置することにより増設段が形成され、苗載置部材の後半部の支柱に及ぶ開放空間が形成される。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最後位置に直列展開される苗載置部材(5b)からその下方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5b)および補助載置部材(16b)の側面視による全長(A)の前半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
直列展開時の最後位置の苗載置部材の下方に補助載置部材を配置することにより増設段が形成され、補助載置部材の前半部の支柱に及ぶ開放空間が形成される。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、複数の苗載置部材(5a,5b)をそれぞれ2支点(11a)で所定の姿勢で展開位置まで移動可能に支持する複合リンク(12,12a,12b)によって構成し、該複合リンク(12,12a,12b)の2支点(11a)の中間位置に前記支柱(16a)を配置したことを特徴とする。
上記複合リンクが支持する苗載置部材の2支点の中間位置に配置した支柱により、増設段の補助載置部材の負荷が2支点から均等に複合リンクに作用する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成において、前記予備苗枠(5)は、前後展開移動可能な苗載置部材(5a,5b)の間に第三の苗載置部材(5c)を備え、この第三の苗載置部材(5c)からその上下の側にそれぞれ支柱(16a)を介して補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設け、これら上下の補助載置部材(16b)は、多段格納配置の苗載置部材(5a,5b)の間の範囲に設けたことを特徴とする。
前後に展開動作する多段配置の苗載置部材の間に設けた第三の苗載置部材と上下の補助載置部材とにより、展開状態及び収納状態のいずれでも、補給苗が中央部に集中積載される。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構成において、前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、同苗載置部材(5a)の前端より所定距離(D)を後退して配置したことを特徴とする。
直列展開時の最前位置の苗載置部材は、その前端から補助載置部材が後退して位置する。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)および補助載置部材(16b)の外側に配置したことを特徴とする。
展開支持機構が外側から多段格納構成の複数の苗載置部材および補助載置部材を支持することから、複数の苗載置部材および補助載置部材の内側に操作域が確保される。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の構成において、前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)の内側に配置し、これら多段格納構成の最上段の苗載置部材(5a)の外側位置からその上方に支柱(16a)を介して補助載置部材(16b)を配置したことを特徴とする。
上段格納位置の苗載置部材は、その外側位置の支柱によって上方の補助載置部材を支持することから、上段格納位置の苗載置部材についての操作域が確保される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明の構成により、予備苗枠は、複数条の苗株を植付部によって植付けつつ走行する走行車体の側部に支持され、展開支持機構によって前後に直列展開可能な複数段の苗載置部材について、その1つ以上の苗載置部材から支柱を介して設けた補給苗積載用の補助載置部材によって補助載置段が形成されることから、苗載置部材の直列展開動作を確保しつつ、補助載置段を加えた多段格納構成によって機上の作業スペースを確保した上で補給苗の格納量を増やし、多条植付作業を行う際、苗を補充しに戻る頻度が減少するため、植付作業が中断されることが無く、作業能率が向上する。
【0016】
請求項2の発明の構成により、請求項1の効果に加え、直列展開時の最前位置の苗載置部材の上方に補助載置部材を配置することにより補助載置段が形成されることから、直列展開による前端の苗載置部材の前方から補給苗を積込む際に、苗載置部材の上段に配置した補助載置部材にも苗載置部材と同様の積込作業を行うことができるので、補助載置段の支柱が、苗載置部材および補助載置部材の側面視による全長の後半部の範囲であることから、補給苗の積込口が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の積込みを妨げることなく、効率よく補給苗を積込むことができる。
【0017】
請求項3の発明の構成により、請求項1または請求項2の効果に加え、直列展開時の最後位置の苗載置部材の下方に補助載置部材を配置することにより、補助載置段が形成されるため、直列展開による後端の苗載置部材から後方に補給苗を取出す際に、苗載置部材の下段の補助載置部材からも容易に取出すことができると共に、補助載置段の支柱を、苗載置部材および補助載置部材の側面視による全長の前半部の範囲に配置したことにより、補給苗の取出口が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の取出しを妨げることなく効率よく補給苗を植付部に補給することができるため、作業能率が向上する。
【0018】
請求項4の発明の構成により、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の効果に加え、苗載置部材を支持する複合リンクの2支点の中間位置に配置した支柱により、補助載置段の補助載置部材の負荷が2支点から均等に複合リンクに作用するので、複合リンクによる展開支持機構の安定動作が可能となる。
【0019】
請求項5の発明の構成により、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の効果に加え、前後に展開動作する多段配置の苗載置部材の間に設けた第三の苗載置部材と上下の補助載置部材とにより、展開状態及び格納状態のいずれでも、補給苗を中央部に集中積載できるので、補給苗の積載量が増えても予備苗枠の前後バランスが崩れにくく、機体の走行姿勢や植付精度が安定する。
【0020】
請求項6の発明の構成により、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の効果に加え、直列展開時の最前位置の苗載置部材は、その前端から後退して補助載置部材が位置することから、苗載置部材の上方からの投入操作によって能率良く補給苗の積込みが可能となるので、苗の積込作業の能率が向上する。
【0021】
請求項7の発明の構成により、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の効果に加え、展開支持機構が多段格納構成の複数の苗載置部材および補助載置部材を外側から支持することから、複数の苗載置部材および補助載置部材の内側に操作域が確保されるので、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を向上することができ、作業性が向上する。
【0022】
請求項8の発明の構成により、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の効果に加え、最上段の苗苗載置部材は、その外側位置の支柱によって上方の補助載置部材を支持することから、最上段の苗載置部材についての補給苗の操作域が確保されるので、補給苗の格納量の増加を図りつつ、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を確保することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の適用対象の8条植え苗移植機の平面図
【図2】多段格納配置の予備苗枠の要部側面図
【図3】増設段構成例1の展開状態の要部側面図
【図4】増設段構成例2の展開状態の要部側面図
【図5】増設段構成例3の展開状態の要部側面図
【図6】増設段構成例4の展開時と格納時の動作側面図
【図7】増設段構成例5の展開時と格納時の動作側面図
【図8】増設段構成例6の展開状態の側面図
【図9】増設段構成例7の予備苗枠の正面図
【図10】増設段構成例8の予備苗枠の正面図
【図11】増設段構成例9の展開状態の要部側面図
【図12】増設段構成例10の多段格納配置の側面図
【図13】増設段構成例11の展開時と格納時の動作側面図
【図14】増設段構成例12の展開時と格納時の動作側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記技術思想に基づいて具体的に構成した発明の実施形態について、以下に図面に沿って詳細に説明する。
図1は8条植苗移植機の平面図である。この苗移植機1は、圃場を走行するための前輪2a,2a及び後輪2b,2bを備えた走行車体3と、この走行車体3の後部で植付条別の苗タンク4aに受けた補給苗により複数条の苗株を植付ける植付部4と、走行車体3の両側部に支持した補給苗格納用の苗載置部材である複数の予備苗載せ台5a,5b,5cを上下に3段格納構成した予備苗枠5と、操向ハンドル6a、操縦席6b等の操縦機器を備える運転台6その他を設けて構成される。
【0025】
予備苗枠5は、図2の拡大側面図に示すように、補給苗格納用の複数の予備苗載せ台5a,5b,5cと、これら予備苗載せ台5a,5b,5cをそれぞれの側方で支持する展開支持機構11とによって構成し、この展開支持機構11は、複数の予備苗載せ台5a,5b,5cを上下に多段格納構成するとともに、中段配置の予備苗載せ台5cを中心に上段配置の予備苗載せ台5aを前端位置に、下段配置の予備苗載せ台5bを後端位置に前後展開可能に可動支持する複合リンクをベースフレーム13に支持することにより構成する。
【0026】
詳細には、各予備苗載せ台5a,5b,5cに支点11a…を設け、全予備苗載せ台5a,5b,5cとそれぞれ連結する作用リンク12と、中段の予備苗載せ台5cに対して上段の予備苗載せ台5aの姿勢を相対規制する規制リンク12aと、中段の予備苗載せ台5cに対して下段の予備苗載せ台5bの姿勢を相対規制する規制リンク12bとによって複合リンクを構成し、ベースフレーム13に設けた2支点13a,13aに作用リンク12および一方の規制リンク12bを軸支する。作用リンク12には扇型ギヤ14を一体に設けて前後方向に直列する展開位置までの範囲で電動制御可能に構成するとともに、規制リンク12b等にスプリング15を連結して可動部を付勢拘束する。
【0027】
また、1つ以上の予備苗載せ台5a,5b,5cについて、支柱16aを介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材である補助苗載せ台16bを設けて増設段を形成する。例えば、最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aからその上方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを配置する。
【0028】
上記のように予備苗枠5を構成することにより、植付部4によって複数条の苗株を植え付け走行する走行車体3の両側部に支持される予備苗枠5,5において、それぞれ3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cが展開支持機構11によって前後に直列展開可能となり、これら3段の予備苗載せ台5a,5b,5cについて、支柱16aを介して補給苗積載用の補助苗載せ台16bを設けることによって増設段が形成されることから、予備苗載せ台5a,5b,5cの直列展開動作を確保しつつ、補助苗載せ台16bを加えた4段の格納構成により、機上の作業スペースを確保した上で補給苗の格納量を増やして8条植え等の多条植付けに対応することができる。
【0029】
また、直列展開時の最前位置の予備苗載せ台5aの上方に増設段の補助苗載せ台16bを配置したことから、直列展開による前端の予備苗載せ台5aの前方から補給苗を積込む際に、予備苗載せ台5aの上段に配置の補助苗載せ台16bにも予備苗載せ台5aと同様に積込むことができる。
【0030】
この場合において、増設段構成例1として、図3の展開状態の要部側面図に示すように、予備苗載せ台5aおよび補助苗載せ台16bの側面視によるそれぞれの全長Aの後半部の範囲に支柱16aを配置することにより、予備苗載せ台5aの前方Fからの補給苗の積込み操作範囲Bが支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の積込みを妨げることなく、効率よく補給苗を積込むことができる。また、増設段構成例2として、図4の展開状態の要部側面図に示すように、予備苗載せ台5aの全長Aの中央位置に支柱16aを配置することにより、バランス良く積載支持することができる。
【0031】
次に、増設段構成例3として、図5の展開状態の要部側面図に示すように、増設段の支柱16aを予備苗載せ台5aの2支点11a,11a間距離Cの中間位置に配置することにより、増設段の補助苗載せ台16bの負荷が2支点11a,11aから均等に作用リンク12と規制リンク12aに作用するので、展開支持機構11の安定動作が可能となる。
【0032】
次に、増設段構成例4として、図6の展開時と格納時の動作側面図に示すように、3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aの増設段に加え、最後位置に直列展開される予備苗載せ台5bからその下方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを設けて増設段を構成する。
【0033】
上記のように予備苗枠5を構成することにより、増設段の補助苗載せ台16bが直列展開時の最後位置の予備苗載せ台5bの下方に配置されることから、直列展開による後端の予備苗載せ台5bから後方に補給苗を取出す際に、予備苗載せ台5bの下段の補助苗載せ台からも容易に取出すことができる。
【0034】
この場合において、予備苗載せ台5bおよび補助苗載せ台16bの側面視による全長の前半部の範囲に支柱16aを配置することにより、予備苗載せ台5bの後方からの補給苗の取出し範囲が支柱位置まで広く確保されるので、補給苗の取出しを妨げることなく、効率よく補給苗を取出して植付部4に補給することができる。また、予備苗載せ台5bの全長の中央位置に支柱16aを配置することにより、バランス良く積載支持することができる。
【0035】
次に、増設段構成例5として、図7の展開時と格納時の動作側面図に示すように、予備苗枠5は、前後に展開動作する予備苗載せ台5a,5bの間に中段の予備苗載せ台5cを備え、この予備苗載せ台5cからその上下の側にそれぞれ支柱16a,16aを介して補給苗積載用の補助苗載せ台16b,16bを設け、これら上下の補助苗載せ台16b,16bは、上下の格納段の予備苗載せ台5a,5bの間の範囲に設けて中間部の上下の増設段を形成する。
【0036】
上記構成により、前後に展開動作する三段格納構成の上下の予備苗載せ台5a,5bおよび中段の予備苗載せ台5cと、該中段の予備苗載せ台5cについての上下の補助苗載せ台16b,16bとにより、展開状態及び格納状態のいずれについても、補給苗を中央部に集中積載できるので、補給苗の積載量が増えても全体の前後バランスが崩れにくく、機体の走行姿勢や植付精度の安定を確保することができる。
【0037】
次に、増設段構成例6として、図8の展開状態の側面図に示すように、最前位置に直列展開される予備苗載せ台5aからその上方に支柱16aを介して補助苗載せ台16bを設け、この補助苗載せ台16bを同予備苗載せ台5aの前端より所定寸法Dを後退して配置することにより、直列展開時の最前位置の予備苗載せ台5aは、その前端から後退して増設段の補助苗載せ台16bが位置することから、予備苗載せ台5aの上方からの補給苗Mの投入操作によって積込み作業を能率良く進めるが可能となる。
【0038】
なお、予備苗載せ台5aとその上方の増設段の補助苗載せ台16bについて、両者の先端位置を揃えて構成することにより、直列展開状態における前方の空間および、多段格納配置における後方の空間が形成されることから、直列展開状態における前方からの補給苗の積込み時と、多段格納配置における後方からの補給苗の取出し時において、それぞれの操作性を確保することができる。
【0039】
次に、増設段構成例7として、図9の予備苗枠の正面図に示すように、上段格納配置の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上位の増設段を構成した場合に、3段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの外側を展開支持機構11によって支持することにより、直列展開時の補給苗の取出しおよび補給苗の積込みを容易化することができると共に、多段格納時において複数の予備苗載せ台5a,5b,5cおよび補助苗載せ台16bの内側に操作域が確保されるので、機体内側の運転台側からの補給苗の操作性を向上することができる。
【0040】
次に、増設段構成例8として、図10の予備苗枠の正面図に示すように、上段格納配置の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上位の増設段を構成した場合に、三段格納構成の予備苗載せ台5a,5b,5cの内側を展開支持機構11によって支持するとともに、最上段の増設段の支柱16aを外側に配置することにより、最上段の増設段についての補給苗Mの積込みおよび取出しが容易となる。
【0041】
(別構成例)
次に、増設段構成例9として、図11の展開状態の要部側面図に示すように、増設段の補助苗載せ台16bをその下面の前後の2つの支柱16a,16aによって上段格納配置の予備苗載せ台5aに支持することにより、支持剛性を確保して補助苗載せ台16bのねじれを防止することができる。
【0042】
次に、増設段構成例10として、図12の多段格納配置の側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bの下面には、展開移動可能な上段の予備苗載せ台5aに取付けるための第一の支柱16aを設けるとともに、展開支持機構11のベースフレーム13に取付けるための第二の支柱16cを設け、取付け位置を選択可能に構成する。
【0043】
上記第一の支柱16aを使用して補助苗載せ台16bを移動式に切換えた場合は、直列展開時は補給苗の積込み作業が容易となり、多段格納時は補給苗を安定積載できるとともに補給苗の取出し作業が容易となり、また、第二の支柱16cを使用して補助苗載せ台16bを固定式に切換えた場合は、補給苗の落下を抑えて安定積載を確保しつつ植付け走行が可能となる。
【0044】
次に、増設段構成例11として、図13の展開時と格納時の動作側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bをその後端支点16dで前上がりに傾斜可能に構成する。上段の予備苗載せ台5aを最前位置に直列展開して前方の畦から補給苗を積込む場合において、補助苗載せ台16bを前上がりに傾斜させて前側を大きく開口することにより、予備苗載せ台5aに対する苗Mの積込みが容易となる。
【0045】
次に、増設段構成例12として、図14の展開時と格納時の動作側面図に示すように、上段の予備苗載せ台5aの上側に補助苗載せ台16bを設けて最上部に増設段を構成した場合に、補助苗載せ台16bをその前端支点16eで後上がりに傾斜可能に構成する。
【0046】
上記構成により、多段格納配置の上段の予備苗載せ台5aから苗Mを取出して後方の植付部4に補給する場合において、補助苗載せ台16bを後上がりに傾斜させて後側を大きく開口することができるので、取出した苗Mの植付部4への補給操作が容易となる。
【符号の説明】
【0047】
1 苗移植機
3 走行車体
4 植付部
5 予備苗枠
5a 予備苗載せ台(苗載置部材)
5b 予備苗載せ台(苗載置部材)
5c 予備苗載せ台(苗載置部材)
6 運転台
11 展開支持機構
11a 支点
12 作用リンク
12a 規制リンク
12b 規制リンク
13 ベースフレーム
13a 支点
16a 支柱
16b 補助苗載せ台(補助載置部材)
A 全長
B 積込み範囲
C 支点間距離
D 後退距離
M 補給苗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行するための前輪(2a)及び後輪(2b)を備えた走行車体(2)と、この走行車体(2)の後部で補給苗(M)により複数条の苗株を植付ける植付部(4)と、走行車体(2)の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠(5)とを設けた苗移植機において、
上記予備苗枠(5)の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5a)および補助載置部材(16b)の側面視によるそれぞれの全長(A)の後半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記補助載置部材(16b)は、最後位置に直列展開される苗載置部材(5b)からその下方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5b)および補助載置部材(16b)の側面視による全長(A)の前半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項4】
前記展開支持機構(11)は、複数の苗載置部材(5a,5b)をそれぞれ2支点(11a)で所定の姿勢で展開位置まで移動可能に支持する複合リンク(12,12a,12b)によって構成し、該複合リンク(12,12a,12b)の2支点(11a)の中間位置に前記支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項5】
前記予備苗枠(5)は、前後展開移動可能な苗載置部材(5a,5b)の間に第三の苗載置部材(5c)を備え、この第三の苗載置部材(5c)からその上下の側にそれぞれ支柱(16a)を介して補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設け、これら上下の補助載置部材(16b)は、多段格納配置の苗載置部材(5a,5b)の間の範囲に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項6】
前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、同苗載置部材(5a)の前端より所定距離(D)を後退して配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項7】
前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)および補助載置部材(16b)の外側に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項8】
前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)の内側に配置し、これら多段格納構成の最上段の苗載置部材(5a)の外側位置からその上方に支柱(16a)を介して補助載置部材(16b)を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項1】
圃場を走行するための前輪(2a)及び後輪(2b)を備えた走行車体(2)と、この走行車体(2)の後部で補給苗(M)により複数条の苗株を植付ける植付部(4)と、走行車体(2)の側部に展開支持機構(11)によって前後に直列展開可能に支持した補給苗格納用の複数の苗載置部材(5a,5b)を上下に多段格納配置に構成した予備苗枠(5)とを設けた苗移植機において、
上記予備苗枠(5)の1以上の苗載置部材(5a,5b)から支柱(16a)を介してその上下又はいずれかの側に補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5a)および補助載置部材(16b)の側面視によるそれぞれの全長(A)の後半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記補助載置部材(16b)は、最後位置に直列展開される苗載置部材(5b)からその下方に支柱(16a)を介して配置するとともに、苗載置部材(5b)および補助載置部材(16b)の側面視による全長(A)の前半部の範囲に支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項4】
前記展開支持機構(11)は、複数の苗載置部材(5a,5b)をそれぞれ2支点(11a)で所定の姿勢で展開位置まで移動可能に支持する複合リンク(12,12a,12b)によって構成し、該複合リンク(12,12a,12b)の2支点(11a)の中間位置に前記支柱(16a)を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項5】
前記予備苗枠(5)は、前後展開移動可能な苗載置部材(5a,5b)の間に第三の苗載置部材(5c)を備え、この第三の苗載置部材(5c)からその上下の側にそれぞれ支柱(16a)を介して補給苗積載用の補助載置部材(16b)を設け、これら上下の補助載置部材(16b)は、多段格納配置の苗載置部材(5a,5b)の間の範囲に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項6】
前記補助載置部材(16b)は、最前位置に直列展開される苗載置部材(5a)からその上方に支柱(16a)を介して配置するとともに、同苗載置部材(5a)の前端より所定距離(D)を後退して配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項7】
前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)および補助載置部材(16b)の外側に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項8】
前記展開支持機構(11)は、上下に多段格納構成の複数の苗載置部材(5a,5b)の内側に配置し、これら多段格納構成の最上段の苗載置部材(5a)の外側位置からその上方に支柱(16a)を介して補助載置部材(16b)を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−223148(P2012−223148A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94678(P2011−94678)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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