説明

苗移植機

【課題】簡単な構成で、しかも迅速に複数の予備苗載せ台をほぼ直線状に前後方向に並べた展開状態と、上下方向に平面視で重複した積層状態にする作業の切り替えが自動的にできる予備苗載部を備えた苗移植機を提供すること。
【解決手段】 走行車体2に苗箱を載置する複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)と該予備苗載せ部材をそれぞれ回動自在に連結する複数の移動リンク部材(39a,39b,39c)を取り付けて、移動リンク部材の回動により複数の予備苗載せ部材を展開状態と積層状態に切り替え自在する切替駆動装置70を設け、該切替駆動装置70は切替ギヤ70aと切替ギヤ70aを駆動する電動モータ71と該電動モータ71により回転して回動ギヤ70aを回動させると共に回動ギヤ70aが回動不能になると電動モータ71を停止させる駆動切替機構83を含む構成とし、切替駆動装置70の作動と停止を切り替える切替スイッチ73を設けた苗移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行装置を有する機体の側部に予備の苗載せ台を備えた苗移植機などの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置が機体後部に備えた苗移植機において、機体の側部に、複数の予備の苗載せ台からなる予備苗載部を備えた苗移植機が知られている。
下記特許文献1には、苗移植機では、予備苗枠の上下方向に複数の予備苗載せ台を設けている。
【0003】
また、下記特許文献2には、複数の予備苗載せ台が上下多段となって平面視で重複した積層状態と、前記複数の予備苗載せ台が前後向きに略一直線状になって展開した展開状態とに、前記複数の予備苗載せ台を切り替え可能に構成した苗移植機が開示されている。この切り替え機構は、1本の長い移動リンク部材と2本の短い移動リンク部材からなる平行リンク機構に複数の予備苗載台を取り付け、平行リンク機構の回動によって上下方向に重なり合う状態(平面視で重なる積層状態)と前後方向に略一直線上に並ぶ状態(水平方向に並ぶ展開状態)とに予備苗載せ台の状態を切り替え可能な構成である。
【0004】
そして、積層状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して展開状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が展開状態に切り替えられ、逆に、展開状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して積層状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が重複状態に切り替えられる構成である。
したがって、特許文献2記載の構成は複数の予備苗載せ台の状態の切り替えを簡易迅速に行うことができ、複数の予備苗載せ台の状態の切り替え作業性を従来技術より向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−228705号公報
【特許文献2】特開2009−232809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、苗移植機は予備苗枠の上下方向に複数の予備苗載せ台を設けているが、この予備苗載せ台は姿勢を変更することができないため、圃場の端で補助作業者が苗を積み込む際、圃場端に用水路等があると補助作業者と予備苗載せ台との距離が長くなるため、苗の積み込み作業の能率が低下する問題がある。
また、特許文献2記載の構成からなる苗移植機では、予備苗載せ台が収容可能な苗の数よりも植付部の条数が多い場合や、圃場が広く何度も苗の補充に戻る必要がある場合、苗補充に多くの時間を費やすことになり、作業能率が低下する問題がある。
【0007】
また、予備苗載せ台の作業状態は手作業で切り替える構成であるため、苗を積載して重量が増加すると作業者は余分な労力を費やして切り替え操作を行なわねばならないという問題がある。
そこで、本発明の課題は、簡単な構成で、しかも迅速に複数の予備苗載せ台をほぼ直線状に前後方向に並べた展開状態と、上下方向に平面視で重複した積層状態にする作業の切り替えが自動的にでき、かつ展開状態と積層状態では、それぞれの状態を確実に保持し、負荷による破損を防止するのに有効な予備苗載部を備えた苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記構成によって達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(2)の後側に圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、走行車体(2)に操縦部(33)を設け、さらに走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱を載置する複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)と前記複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)をそれぞれ回動自在に連結する複数の移動リンク部材(39a,39b,39c)を取り付け、該移動リンク部材(39a,39b,39c)の回動により複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が前後方向に並ぶ展開状態と複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が上下方向に並ぶ積層状態に切り替え自在に構成した苗移植機において、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の前記展開状態と積層状態の切替駆動装置(70)を支持機枠(49)に設け、切替駆動装置(70)は、回動部材(切替ギヤ)(70a)と、切替アクチュエータ(電動モータ)(71)と該切替アクチュエータ(71)により回転して回動部材(70a)を回動させると共に回動部材(70a)が回動不能になると切替アクチュエータ(71)を停止させる駆動切替機構(83)を含む構成とし、操縦部(33)に切替駆動装置(70)の作動と停止を切り替える切替操作部材(切替スイッチ)(73)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0009】
請求項2に係る発明は、切替駆動装置(70)に回動部材(70a)と切替アクチュエータ(71)と駆動切替機構(83)を内装する切替部カバー(70b)を設け、駆動切替機構83は、切替アクチュエータ(71)の出力軸(図示せず)からの伝動で駆動する太陽ギヤ(84)と該太陽ギヤ(84)に噛合して回転する複数の遊星ギヤ(85)を回転自在に設けた遊星ディスク(88)と、該遊星ディスク(88)に隣接した位置に、複数の遊星ギヤ(85)と噛合して回転する内歯(86a)と前記回動部材(70a)に噛合して回動する外歯(86b)を有する切替駆動ギヤ(86)を備え、遊星ディスク(88)に切替アクチュエータ(71)の駆動を停止させる停止スイッチ(90)と該停止スイッチ(90)に接触する停止ピン(91)を設け、該停止ピン(91)と切替部カバー(70b)とに亘って遊星ディスク(88)の回転を規制する規制制部材(規制スプリング)(92)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0010】
請求項3に係る発明は、切替アクチュエータ(71)を正逆転モータとし、停止スイッチ(90)に停止ピン(91)が接触すると、切替アクチュエータ(電動モータ)71を所定時間(例えば、0.5〜1.5秒)逆回転させ、その後、停止させ、切替操作装置(73)の操作後、所定時間以上(例えば5秒以上)してから停止スイッチ(90)に停止ピン(91)が接触した場合は、逆回転せずに切替アクチュエータ(71)を停止させる制御構成を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0011】
請求項4に係る発明は、植付部(4)を走行車体(2)に対して昇降させる昇降リンク機構(3)を設け、該昇降リンク機構(3)の上昇または下降を検知する苗補充検知部材(苗補充検知センサ)(昇降リンク機構(3)が一定高さ(例えば、40〜50cm)上昇または下降するとオンになるセンサ)(95)を昇降リンク機構(3)に設け、制御装置(100)は、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の切替操作装置(73)が操作されると、苗補充検知部材(95)がオンになるまで植付部(4)を上昇または下降させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0012】
請求項5に係る発明は、苗の減少を検知する苗減少検知部材(苗減少検知センサ)(94)を植付部(4)の下部に設け、さらに圃場端での旋回(Uターン)を検知するステアリングセンサ(96)をハンドル操作部に設けておき、ステアリングセンサ(96)の旋回操作回数(x)をカウントするカウンタ(99)(例えば、ステアリングセンサ(96)の近傍に設ける。)を設け、さらに走行車体(2)の後進を検知する後進検知部材(バックセンサ)(97)(後輪回転センサが後進方向の回転を検出する方法でも良い)を設けておき、前記苗減少検知部材(94)が苗の減少を検知している状態で、走行車体(2)の後進を後進検知部材(97)が検知した状態で、前記カウンタ(99)でカウントされた旋回操作回数(x)が所定回転数(圃場面積や植付条件によって変わる。)に到達している状態で後進検知部材(97)が機体の後進を検知すると、制御装置(100)は切替駆動装置(83)の切替アクチュエータ(71)を作動させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【0013】
請求項6に係る発明は、軽トラック等の本苗移植機でない設備に、苗貯留部に距離情報受信部材(102)を設け、走行車体(2)に距離情報送信部材(103)を設け、走行操作レバー(45)の操作位置が「中立」位置にあることを検知する中立検知部材(ニュートラルセンサ=ポテンショメータ)(105)を設け、制御装置(100)は距離情報受信部材(102)と距離情報送信部材(103)が所定距離内にあることを検知し、中立検知部材(105)が「中立」を検知すると、駆動切替機構(83)の切替アクチュエータ(71)を自動的に作動させる制御構成を有することを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、切替駆動装置70の操作により複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cを自動的に展開状態と積層状態に切り替えることができるので、作業者が手作業で切り替えを行う必要がなく、作業能率が従来より向上する。また駆動切替機構83を設けたことにより、複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの作業状態が完全に切り替わり、回動部材(切替ギヤ)70aが回動不能になると、自動的に切替アクチュエータ(電動モータ)71を停止させることができるので、作業者が切替駆動装置70を操作して停止させる必要が無く、作業者は苗の補充等の他の作業を行え、作業能率が従来より向上する。
【0015】
また、複数の移動リンク部材39a,39b,39cにものや腕が挟まり回動部材(切替ギヤ)70aが回動しなくなると、駆動切替機構83が自動的に切替アクチュエータ(電動モータ)71を停止させるので、挟んだものを壊すことあるいは作業者が怪我することを防止でき、作業の安全性が向上する。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、遊星ディスク88の回転を停止ピン91と切替部カバー70bの間に亘って設ける規制部材92で規制することにより、切替アクチュエータ71を作動させて太陽ギヤ84を回転させると遊星ギヤ85だけを回転させることができるので、遊星ギヤ85の回転により切替駆動ギヤ86を回転させて回動部材70aを経由して複数の移動リンク部材39a,39b,39cを回動操作することができる。
【0017】
また、複数の移動リンク部材39a,39b,39cにものが挟まるなどして複数の移動リンク部材39a,39b,39cが動かなくなると、切替駆動ギヤ86と回動部材70aとが噛み合い部分がロックして動かなくなる構成としたことにより、遊星ギヤ85が太陽ギヤ84の周囲を公転して遊星ディスク88を回転させる構成となるため、停止ピン91を停止スイッチ90に接触させて切替アクチュエータ71を停止させることができるので、複数の移動リンク部材39a,39b,39cに挟んだものや複数の移動リンク部材39a,39b,39cが破損することが防止される。
特に、複数の移動リンク部材39a,39b,39cに挟んだものが作業者の身体である場合は、怪我をすることを防止できるので、作業の安全性が向上する。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、停止ピン91が停止スイッチ90に接触すると切替アクチュエータ71が逆回転する構成としたことにより、複数の移動リンク部材39a,39b,39cに挟まったものを自動的に開放することができるので、複数の移動リンク部材39a,39b,39cに挟まったものや複数の移動リンク部材39a,39b,39cが破損することが防止される。
【0019】
また、複数の移動リンク部材39a,39b,39cの切替操作から所定時間以上(例えば5秒以上;複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの作業状態の切替には、操作開始から少なくとも5秒かかる。)が経過した状態、即ち複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの作業状態が問題なく切り替わったときには切替アクチュエータ71を逆回転させずに停止させる構成としたことにより、複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの切替が自動的に行われるため、作業能率が従来より向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて切替操作装置73を操作して複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの作業状態を切り替えると、植付部4が自動的に所定高さまで移動(上昇または下降)する構成としたことにより、苗を補充する際に苗が積み込みやすく、作業能率が従来より向上する。
なお、昇降リンク機構3に設けている苗補充検知部材95の検出値から、植付部3の現在高さが苗補充検知部材95の検知高さよりも上方にあるか下方にあるかを判断し、昇降リンク機構3の昇降油圧シリンダ46のバルブの送油方向を決定することができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて植付部4に積載された苗の量が少ない状態で、苗移植機が苗補充のために圃場端に近づいて苗の補充位置に機体を移動させると、自動的に各予備苗載せ台38a,38b,38cの作業状態が切り替わるので、苗の積載作業を速やかに行うことができ、作業能率が従来より向上する。
なお、後進検知部材97が後輪回転センサの場合、所定回転数(1〜2回転)を検知すると複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cを積載状態に切り替えるように切替アクチュエータ71を作動させる構成とすると、複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cの操作を忘れたまま植付作業を行うことがなく、展開状態の複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cが圃場端の人や物に接触することが防止され、作業の安全性が従来より向上すると共に、積載した苗が滑り落ちにくく、落下した苗を拾う必要が無く、作業能率が従来より向上する。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて軽トラック等の本苗移植機でない設備に設けた苗の貯留部に苗移植機の走行車体2が近接し、停止状態になると自動的に複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が展開状態に切り替わる構成としたことにより、苗の積載作業をいっそう能率的に行うことができ、作業能率が向上する。
【0023】
また、中立検知部材97が非検知状態となると、あるいは距離情報受信部材(距離情報レシーバ)102と距離情報送信部材(距離情報トランスミッタ)103が非検知状態となると、複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cが積載状態に切り替わる構成としたことにより、植付作業時に複数の予備苗載せ部材38a,38b,38cを積載状態に変更する操作を忘れることが無いので、作業の安全性が従来より向上すると共に、苗の落下が防止されるので、落下した苗を拾う必要が無く、作業能率が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面図である。
【図4】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
【図5】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を同一平面に配置した場合(展開状態)の平面図である。
【図6】予備苗載せ台の作動制御装置を中心とした図1の乗用型田植機の制御ブロック図である。
【図7】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の駆動切替機構の通常時の平面図(図7(a))とリンクに物などが挟まったときの平面図(図7(b))である。
【図8】図7の駆動切替機構の遊星ディスクへの遊星ギヤの取付け状態を示す斜視図(図8(a))と平面図(図8(b))である。
【図9】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の駆動切替用の制御を行うフローチャートである。
【図10】図1の乗用型田植機の苗植付部への苗補充検知の有無により植付部の昇降制御をするフローチャートである。
【図11】図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の駆動切替機構の一例を示す平面図(図11(a))と内部構造図(図11(b):図11(a)の下方から見た図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の苗移植機の典型例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレータが乗用型田植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0026】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11(走行装置)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0027】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(HST)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0028】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられており、この領域を操縦部33とする。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0029】
昇降リンク装置3は平行リンク機構であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0030】
メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧式シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ75(図1)等を備えている。
【0031】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧式シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0032】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体76(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0033】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗載せ台38,38が機体の前後に張り出す位置と上下に並んだ位置とに回動可能に設けられている。
【0034】
一方の機体側面にある第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cを上下三段に配置した場合の側面図を図3に示す。また、第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cを同一平面に配置した場合の側面図を図4に示す。
予備苗載せ台38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持機枠49に支持され、移動リンク部材39a,39b,39cを介してそれぞれ上下三段に構成され、第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cからなっている。
【0035】
これら第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cの底面にはそれぞれ一体的に第1支持枠体37a、第2支持枠体37b及び第3支持枠体37cが取り付けられており、第1支持枠体37aの中央部と第2支持枠体37bの前端部には第1移動リンク部材39aの両端の回動軸39a1,39a2がそれぞれ回動自在に連結し、第1支持枠体37aの後端部と第3支持枠体37cの前端部には第2移動リンク部材39bの両端の回動軸39b1,39b2がそれぞれ回動自在に連結し、さらに第2支持枠体37bの後端部と第3支持枠体37cの中央部には第3移動リンク部材39cの両端の回動軸39c1,39c2とが回動自在に連結している。
【0036】
回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の外周部は、支持枠体37a,37b,37cにそれぞれ溶接して取り付けてられている。そして、支持枠体37a,37b,37cにそれぞれ溶着された回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の挿入部(図示せず)に、移動リンク部材39a,39b,39cの支持片(図示せず)を挿し込んで装着する。
また、第2移動リンク部材39bのほぼ中央部と第2支持枠体37bのほぼ中央部には回動支点37b1が設けられ、互いに回動自在となっている。
【0037】
また支持機枠49には前後2つの分岐支柱49a,49bが設けられ、分岐支柱49a,49bの頂部は第2支持枠体37bの下面近くまで達している。そして前側分岐支柱49aの頂部付近には第2移動リンク部材39bの中央部付近に設けられた回動軸39b3が設けられ、該回動軸39b3を中心として第2移動リンク部材39bが前側分岐支柱49aの周りを回動自在となっている。前記回動軸39b3は回動支点37b1より下側の第2移動リンク部材39bに設けられている。また後側分岐支柱49bの頂部付近には第3移動リンク部材39cの後端部付近に設けられた回動軸39c3が設けられ、該回動軸39c3を中心として第3移動リンク部材39bが後側分岐支柱49bの周りを回動自在となっている。前記回動軸39c3は回動軸39c1より下側の第3移動リンク部材39cに設けられている。
【0038】
第2予備苗載せ台38bは機体部材である前側分岐支持機枠49aと後側支持機枠49bに固定されておらず、第2移動リンク部材39bが図3に示す状態から回動支点39b3を中心に回動して図4に示す状態になる場合には回動支点39b3が第2予備苗載せ台38bの中央部側面の回動軸37b1より下方にあるため、図3に示す位置より前寄りに第2予備苗載せ台38bが配置される。このとき、第3移動リンク部材39cも図3に示す状態から回動支点39c3を中心に回動して図4に示す状態になる場合には同様に第2予備苗載せ台38cも図3に示す位置より前寄りに配置される。
【0039】
したがって、図5の平面図に示すように第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cをほぼ同一平面上に展開形態とすると、広い苗箱(図示せず)などの載置平面を得ようとする場合にはこれら3つの予備苗載せ台38a,38b,38cが従来より前寄りに移動して、機体前側端部を圃場の外に突出させることができるので、例えば、畦際でトラックなどから苗を予備苗載せ台38a,38b,38c上に積載する作業が容易となる。
【0040】
また図5の平面図に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの前側両端部に前方に向かって突出する一対の前側突出部38a1,38b1,38c1をそれぞれ形成し、後側端部中央に後方に向かって突出する後側突出部38a2,38b2,38c2をそれぞれ形成している。したがって第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開形態にした場合に、機体前側に位置する予備苗載せ台38a,38bの後部突出部38a2,38b2が機体後側に位置する予備苗載せ台38b,38cの前側突出部38b1,38c1と側面視で重複する位置に配置されることになる。このため第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開形態にあるときには、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを前後方向に部分的に嵌め込み状態で並べることができるので、予備苗載せ台38a,38b,38cに積み込む苗箱を円滑に後側に移動させることができ、作業能率が従来より向上する。
【0041】
また図3、図4の側面図に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの前側突出部38a1,38b1,38c1を後上り傾斜形状(後上り傾斜部)にし、該傾斜形状の上面を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くしている。また第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの後側突出部38a2,38b2,38c2を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くし、且つ前側突出部38a1,38b1,38c1の上面と同じか又は前記上面より低くしている。
【0042】
このように前側突出部38a1,38b1,38c1を後上り傾斜部としたので、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態にしたとき、前側の予備苗載せ台38a,38bから後側の予備苗載せ台38b,38cに苗箱などを移動させるときに、後上り傾斜部に載り上げて後方に移動することができるので、苗箱などの移動が容易となり、作業能率が従来より向上する。また、前側突出部38a1,38b1,38c1と後側突出部38a2,38b2,38c2の上面を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くしたことにより、第1〜第3予備苗載せ台38a,38b,38cを収納形態にしたときに、前側突出部38a1,38b1,38c1と後側突出部38a2,38b2,38c2で各予備苗載せ台38a,38b,38cに載置した苗箱などの前後移動を防止することができるので、各予備苗載せ台38a,38b,38cから苗箱等が下方に落下することが防止され、落下した苗箱等を拾う必要が無くなり、作業能率が従来より向上する。
【0043】
各予備苗載せ台38a,38b,38cの一対の前側突出部38a1,38b1,38c1の左右間で、且つ当該予備苗載せ台38a,38b,38cの底部に前側の予備苗載せ台38a,38bの後側突出部38a2,38b2などを受けるための受け部材38a3,38b3,38c3をそれぞれ設け、該受け部材38a3,38b3,38c3は一対の前側突出部38a1,38b1,38c1同士の間の空間部に突出して形成している。
【0044】
こうして、各予備苗載せ台38b,38cの前側突出部38b1,38c1の左右間に受け部材38b3,38c3で、それぞれの前側の予備苗載せ台38a,38bの後側突出部38a2,38b2を受け止めることができるので、各予備苗載せ台38a,38b,38cが下がり過ぎることがなく、展開状態の各予備苗載せ台38a,38b,38cが確実にほぼ同一平面上に並ぶ姿勢となるため、苗箱などの積み込み作業が容易となり、作業能率が従来より向上する。
【0045】
また、予備苗載せ台38a,38b,38cの底部に受け部材38a3,38b3,38c3を設けたことにより、後側突出部38a2,38b2,38c2の上端部は前側突出部38a1,38b1,38c1の上端部と略同じ高さ、または下側に位置するので、後上り傾斜部を有する前側突出部38a1,38b1,38c1に載り上げる苗箱などの移動が円滑に行われるため、作業能率が従来より向上する。
【0046】
また、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの左右側面の前後の合計4箇所に苗箱などの落下を防ぐ第1,第2,第3仕切壁38a4,38b4,38c4をそれぞれ配置している。
また、第2移動リンク部材39bの回動支点39b3を第2予備苗載せ台38bの回動軸37b1と同軸上に設けても良い。この場合は、中央の第2予備苗載せ台38bが前後に移動しない。
【0047】
上述のように、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動(回動)により、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開状態と各予備苗載せ台38a,38b,38cが上下方向に並ぶ積層状態とに切り替えられるが、この切り替えは、電動モータ71で駆動する切替駆動装置70によって行うことができる。図3に示すように、切替駆動装置70には電動モータ71の図示しない回転軸に取り付けられた駆動切替機構83の駆動ギヤ83xが移動リンク部材39bの回動軸39b3と一体回転する円形状の切替ギヤ70aと噛合するように設けられている。
【0048】
該切替ギヤ70aは前側分岐支柱49aに設けられた移動リンク部材39bの回動軸39b3と同心円状に設けられ、該回動軸39b3と一体回転するので、電動モータ71の駆動で回動軸39b3が回動し、同時に該回動軸39b3と一体の第2移動リンク部材39bが回動することで、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが積層状態と展開状態に切り替えられる。
なお、図6に予備苗載せ台38a,38b,38cの作動制御を中心とした制御ブロック図を示す。
切替駆動装置70により予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態と積層状態とに切り替え操作する切替操作手段として切替スイッチ73(ボタン、レバーでもよい)(図1)を座席31近傍に設けている。
切替ギヤ70aと電動モータ71と該電動モータ71により回転して切替ギヤ70aを回動させると共に、切替ギヤ70aが回動不能になると電動モータ71を停止させる駆動切替機構83を切替駆動装置70に設けた。
【0049】
図7には図3に示す駆動切替機構83とは別の駆動切替機構83を示す。図7の平面図に示すように本実施例の駆動切替機構83は遊星歯車機構からなり、回動軸81を備えている扇状切替ギヤ70aと電動モータ71と共に切替部カバー70b内に配置され、駆動切替機構83は、電動モータ71の出力軸(図示せず)からの伝動で駆動する太陽ギヤ84と該太陽ギヤ84に噛合して回転する3つの遊星ギヤ85をロッド88aに回転自在に設けた遊星ディスク88から成る。図8(a)の斜視図と図8(b)の平面図に遊星ディスク88を示す。なお、太陽ギヤ84等の回転方向を示す図を図7(b)に示す。
【0050】
該遊星ディスク88に隣接した位置に、3つの遊星ギヤ85と噛合しながら回転する内歯86aと切替ギヤ70aに噛合して回動させる外歯86bを有する切替駆動ギヤ86を備え、遊星ディスク88に電動モータ71の駆動を停止させる停止スイッチ90と該停止スイッチ90に接触する停止ピン91を設け、さらに該停止ピン91に一端が係止され、他端が切替部カバー70bに係止されるスプリング92が配置されている。
【0051】
遊星ディスク88の回転を停止ピン91と切替部カバー70bの間に亘って設けたスプリング92で規制することにより、電動モータ71を作動させて太陽ギヤ84を回転させると、前記遊星ディスク88を回転させること無く遊星ギヤ85だけを回転させることができるので、遊星ギヤ85の回転により切替駆動ギヤ86が回転しても、切替ギヤ70aを経由して移動リンク部材39a,39b,39cが回動操作されない構成となる。
【0052】
また、移動リンク部材39a,39b,39cに物が挟まるなどして移動リンク部材39a,39b,39cが動かなくなると、切替駆動ギヤ86と切替ギヤ70aの噛み合い部分がロックして動かなくなる構成としたことにより、遊星ギヤ85が太陽ギヤ84の周囲を公転して遊星ディスク88を回転させる構成となるため、停止ピン91を停止スイッチ90に接触させて、停止スイッチ90が電動モータ71を停止させる。こうして移動リンク部材39a,39b,39cに挟んだ物や移動リンク部材39a,39b,39c自体が破損することが防止される。
特に、移動リンク部材39a,39b,39cに挟んだものが作業者の身体である場合は、怪我をすることを防止できるので、作業の安全性が向上する。
【0053】
上記した構成により切替駆動装置70の操作により各予備苗載せ台38a,38b,38cを自動的に展開状態と積層状態に切り替えることができるので、作業者が手作業で切り替えを行う必要がなく、作業能率が従来より向上する。また駆動切替機構83を設けたことにより、各予備苗載せ台38a,38b,38cの作業状態が完全に切り替わり、切替ギヤ70aが回動不能になると、自動的に電動モータ71をギヤ70aとのロックにより停止させることができるので、作業者が切替駆動装置70を操作して停止させる必要が無く、作業者は苗の補充等の他の作業を行え、作業能率が従来より向上する。
【0054】
また、移動リンク部材39a,39b,39cに物や腕が挟まり切替ギヤ70aが回動しなくなると、駆動切替機構83が自動的に電動モータ71を停止させるので、挟んだものを壊したり、作業者が怪我したりすることを防止でき、作業の安全性が向上する。
【0055】
また、前記電動モータ71を正逆転モータとしておけば、制御装置100が停止スイッチ90に停止ピン91が接触すると、電動モータ71を所定時間(例えば、0.5〜1.5秒間)逆回転させ、その後、停止させる制御構成としても良い。ただし、切替スイッチ73の操作後、例えば5秒以上してから停止スイッチ90に停止ピン91が接触した場合は、制御装置100は逆回転せずに電動モータ71を停止させる制御ができるようにしても良い。この場合の制御フローを図9に示す。
【0056】
このように、停止ピン91が停止スイッチ90に接触すると電動モータ71が逆回転する構成としたことにより、移動リンク部材39a,39b,39cに挟まった物を自動的に開放することができるので、前記挟まった物や移動リンク部材39a,39b,39c自体の破損を防止することができる。
【0057】
また、移動リンク部材39a,39b,39cの切替操作から所定時間以上(例えば操作開始から5秒以上)が経過した状態、即ち各予備苗載せ台38a,38b,38cの作業状態が問題なく切り替わったときには電動モータ71を逆回転させずに停止させる構成としたことにより、各予備苗載せ台38a,38b,38cの切替が自動的に行われるため、作業能率が従来より向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0058】
また、本実施例の田植機1には植付部4を走行車体2に対して昇降させる昇降リンク機構3を設けているので、苗補充検知センサ95(昇降リンク機構3が一定高さ(例えば、40〜50cm)に移動(上昇または下降)するとオンになる)を操縦部33に設けておけば、制御装置100は各予備苗載せ台38a,38b,38cの作動の切替スイッチ73が操作されると、苗補充検知センサ95がオンになるまで、植付部4を昇降油圧シリンダ46で上昇または下降させる制御を実行することができる。この場合の制御のフローチャートを図10に示す。
【0059】
上記制御により、切替スイッチ73を操作して各予備苗載せ台38a,38b,38cの作業状態を切り替えると、植付部4が自動的に所定高さまで移動(上昇または下降)するので、苗を補充する際に苗が積み込みやすく、作業能率が従来より向上する。
【0060】
また、植付部4の下部に苗の減少を検知する苗減少検知センサ94を設け、さらに圃場端での旋回(Uターン)を検知するステアリングセンサ96をハンドル操作部に設けておき、ステアリングセンサ96の旋回操作回数(x)をカウンタするカウンタ99を設け、さらに走行車体2の後進を検知する後進を検知するバックセンサ97(後輪回転センサが後進方向の回転を検出する方法でも良い)を設けておき、前記苗減少検知センサ94が苗の減少を検知している状態で、走行車体2の後進をバックセンサ97が検知した状態で、前記カウンタ99でカウントされた旋回操作回数(x)が所定回転数(圃場面積や植付条件によって変わる。)に到達している状態でバックセンサ97が機体の後進を検知すると、制御装置(100)は切替駆動装置83の電動モータ71を作動させる制御構成を備えている。
【0061】
上記制御構成により、植付部4に積載された苗の量が少ない状態で、苗移植機が補充のために圃場端に近づいて苗の補充位置に機体を移動させると、自動的に各予備苗載せ台38a,38b,38cの作業状態が切り替わるので、苗の積載作業を速やかに行うことができ、作業能率が従来より向上する。
【0062】
なお、バックセンサ97が後輪回転センサの場合、所定回転数(1〜2回転)を検知すると各予備苗載せ台38a,38b,38cを積載状態に切り替えるよう、電動モータ71を作動させる構成とすると、各予備苗載せ台38a,38b,38cの操作を忘れたまま植付作業を行うことがなく、展開状態の各予備苗載せ台38a,38b,38cが圃場端の人や物に接触することが防止され、作業の安全性が向上すると共に、積載した苗が滑り落ちにくく、落下した苗を拾う必要が無く、作業能率が従来より向上する。
【0063】
さらに、軽トラック等の本苗移植機でない設備の、苗貯留部に距離情報レシーバ102を設け、本実施例の走行車体2に距離情報トランスミッタ103を設け、操縦部33に配置したHST23などの変速装置を操作する走行操作レバー45の操作位置が変速装置の「中立」にあることを検知する中立検知部材(ニュートラルセンサ=ポテンショメータ)105を設けておき、制御装置100が距離情報レシーバ(距離情報受信センサ)102と距離情報トランスミッタ(距離情報送信センサ)103が所定距離内にあることを検知し、中立検知部材105が「中立」を検知すると、駆動切替機構83の電動モータ71を自動的に作動させる制御を実行する。
【0064】
こうして、軽トラック等の本苗移植機でない設備に設けた苗の貯留部に苗移植機の走行車体2が近接し、停止状態になると自動的に各予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態に切り替わる構成としたことにより、苗の積載作業をいっそう能率的に行うことができ、作業能率が向上する。
【0065】
また、中立検知センサ105が非検知状態となる、あるいは距離情報レシーバ102と距離情報トランスミッタ103が非検知状態となると、各予備苗載せ台38a,38b,38cが積載状態に切り替わる構成としたことにより、植付作業時に各予備苗載せ台38a,38b,38cを積載状態に変更する操作を忘れることが無いので、作業の安全性が向上すると共に、苗の落下が防止されるので、落下した苗を拾う必要が無く、作業能率が向上する。
【0066】
さらに電動モータ71のコイル部を鉄板カバーに密着させてモータ71の発熱を鉄板カバーに放熱する構成とすることができる。
切替駆動装置70の一実施例を図11(a)の平面図と図11(b)の内部構造図に示す。本実施例では切替駆動装置70を構成するカバープレート70bに第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cを動かす扇状切替ギヤ70aの回動軸81とは位相をずらして電動モータ71の駆動切替機構83の回動軸83aを設けた補助プレート79を装着する。そして、カバープレート70bと補助プレート79に亘ってモータ取付プレート(保持プレート)80を装着し、さらに保持プレート80に前記回動ギヤ70aを回動させる電動モータ71を装着する構成を採用している。
【0067】
ところで、図3に示すように、予備苗載せ台38a,38b,38cを停止させる停止プレート73a1,73a2を第2予備苗載せ台38bと第3予備苗載せ台38cの側面にそれぞれ設けている。停止プレート73a1は、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態になると、停止プレート73a1に第2移動リンク部材39bが当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材であり、停止プレート73a2は予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態になると第2移動リンク部材39bに当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材である。
【0068】
上記構成からなる切替駆動装置70では、カバープレート70bと補助プレート79に亘って保持プレート80を設け、この保持プレート80に電動モータ71を装着しているので第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが停止プレート73a1,73a2に接触して負荷がかかる際、電動モータ71が逃げる力が保持プレート80に加えられ、その力をカバープレート70bが受けるので、保持プレート80が曲がりにくくなる。
また、前記負荷により電動モータ71には力が掛からないので、電動モータ71の逃げを防止し、電動モータ71と切替ギヤ70aの距離が離れることが防止されるので、切替駆動装置70の調整作業が省略され、作業者の労力が軽減される。
【0069】
また、保持プレート80を金属で構成し、この保持プレート80を電動モータ71のコイル部に密着させる構成としたことにより、電動モータ71の作動に伴いコイル部が発熱しても、保持プレート80を通じて排熱が行われるため、過熱による電動モータ71の停止が防止され、作業能率が向上する。
さらに、冷却風を取り入れる空間部をカバープレート70bに形成する必要がないので、水や泥土が電動モータ71に付着することが防止され、電動モータ71が破損することが防止される。
なお、保持プレート80は、熱伝導性が高い金属で構成する、あるいは熱伝導の高い金属を鍍金処理すると、電動モータ71から熱を奪いやすくなり、電動モータ71の配熱効率が一層向上する。
【0070】
第2移動リンク部材39bの回動軸39b3にトルクスプリング(図示せず)を配置することで、第2移動リンク部材39bの電動モータ71による回動時のアシストを行うことができる。該トルクスプリングは、予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態から回転をはじめて、第2移動リンク部材39bが地面に垂直になるとトルクスプリングは作用をはじめ、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態に近付くにつれて徐々にトルクスプリングの作用力が大きくなり、前記展開状態となったときにトルクスプリングのトルクが最大になる取り付け方としている。
【0071】
従って、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態では揺れが少なくなり、予備苗載せ台38a,38b,38c上の苗箱が安定する。
また、電動モータ71の駆動力を弱めていても予備苗載せ台38a,38b,38cの積層状態から展開状態に確実に切り替えることができるので、電動モータ71が負荷で破損することが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の苗移植機は、田植機に限らず、野菜苗などのその他の苗を植え付ける苗移植機として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0073】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 ベルト伝動装置 23 油圧無段変速装置(HST)
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27(27a,27b) ロータ(第1ロータ,第2ロータ)
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
33 操縦部 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37a,37b,37c 第1〜第3支持枠体
37b1 回動軸
38a,38b,38c 第1〜第3予備苗載せ台
38a1,38b1,38c1 前側突出部
38a2,38b2,38c2 後側突出部
38a3,38b3,38c3 受け部材
38a4,38b4,38c4 第1〜第3仕切壁
39a,39b,39c 第1〜第3移動リンク部材
39a1,39a2,39b1,39b2 回動軸
39c1,39c2,39b3,39c3 回動軸
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 45 走行操作レバー
46 昇降油圧式シリンダ
49(49a,49b) 支持機枠(分岐支柱)
50 伝動ケース 51 苗載せ台
51a 苗取出口 51b 苗送りベルト
52 苗植付装置 53 ブロア用電動モータ
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 65 支持枠体
65a 支持ローラ 70 切替駆動装置
70a 切替ギヤ 70b 切替部カバー
71 電動モータ 73 切替スイッチ
73a1,73a2 停止プレート 75 線引きマーカ
76 作溝体 79 補助プレート
80 モータ取付プレート(保持プレート)
81 回動軸
83 駆動切替機構(電動モータ駆動用)
83a 回動軸 83x 駆動ギヤ
84 太陽ギヤ 85 遊星ギヤ
86 切替駆動ギヤ 86a 内歯
86b 外歯 88 遊星ディスク
88a ロッド 90 停止スイッチ
91 停止ピン 92 スプリング
94 苗減少検知センサ 95 苗補充検知センサ
96 ステアリングセンサ 97 バックセンサ
99 旋回操作回数カウンタ 100 制御装置
102 距離情報レシーバ
103 距離情報トランスミッタ
105 中立検知部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後側に圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、走行車体(2)に操縦部(33)を設け、さらに走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱を載置する複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)と前記複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)をそれぞれ回動自在に連結する複数の移動リンク部材(39a,39b,39c)を取り付け、該移動リンク部材(39a,39b,39c)の回動により複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が前後方向に並ぶ展開状態と複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)が上下方向に並ぶ積層状態に切り替え自在に構成した苗移植機において、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の前記展開状態と積層状態の切替駆動装置(70)を支持機枠(49)に設け、
切替駆動装置(70)は、回動部材(70a)と、切替アクチュエータ(71)と該切替アクチュエータ(71)により回転して回動部材(70a)を回動させると共に回動部材(70a)が回動不能になると切替アクチュエータ(71)を停止させる駆動切替機構(83)を含む構成とし、操縦部(33)に切替駆動装置(70)の作動と停止を切り替える切替操作部材(73)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
切替駆動装置(70)に回動部材(70a)と切替アクチュエータ(71)と駆動切替機構(83)を内装する切替部カバー(70b)を設け、駆動切替機構83は、切替アクチュエータ(71)の出力軸(図示せず)からの伝動で駆動する太陽ギヤ(84)と該太陽ギヤ(84)に噛合して回転する複数の遊星ギヤ(85)を回転自在に設けた遊星ディスク(88)と、該遊星ディスク(88)に隣接した位置に、複数の遊星ギヤ(85)と噛合して回転する内歯(86a)と前記回動部材(70a)に噛合して回動する外歯(86b)を有する切替駆動ギヤ(86)を備え、遊星ディスク(88)に切替アクチュエータ(71)の駆動を停止させる停止スイッチ(90)と該停止スイッチ(90)に接触する停止ピン(91)を設け、該停止ピン(91)と切替部カバー(70b)とに亘って遊星ディスク(88)の回転を規制する規制制部材(92)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
切替アクチュエータ(71)を正逆転モータとし、停止スイッチ(90)に停止ピン(91)が接触すると、切替アクチュエータ71を所定時間(例えば、0.5〜1.5秒)逆回転させ、その後、停止させ、切替操作装置(73)の操作後、所定時間以上してから停止スイッチ(90)に停止ピン(91)が接触した場合は、逆回転せずに切替アクチュエータ(71)を停止させる制御構成を有する制御装置(100)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
植付部(4)を走行車体(2)に対して昇降させる昇降リンク機構(3)を設け、該昇降リンク機構(3)の上昇または下降を検知する苗補充検知部材(95)を昇降リンク機構(3)に設け、制御装置(100)は、複数の予備苗載せ部材(38a,38b,38c)の切替操作装置(73)が操作されると、苗補充検知部材(95)がオンになるまで植付部(4)を上昇または下降させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項5】
苗の減少を検知する苗減少検知部材(94)を植付部(4)の下部に設け、さらに圃場端での旋回を検知するステアリングセンサ(96)をハンドル操作部に設けておき、ステアリングセンサ(96)の旋回操作回数(x)をカウントするカウンタ(99)を設け、さらに走行車体(2)の後進を検知する後進検知部材(97)を設けておき、前記苗減少検知部材(94)が苗の減少を検知している状態で、走行車体(2)の後進を後進検知部材(97)が検知した状態で、前記カウンタ(99)でカウントされた旋回操作回数(x)が所定回転数に到達している状態で後進検知部材(97)が機体の後進を検知すると、制御装置(100)は切替駆動装置(83)の切替アクチュエータ(71)を作動させる制御構成を備えたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項6】
軽トラック等の本苗移植機でない設備に、苗貯留部に距離情報受信部材(102)を設け、走行車体(2)に距離情報送信部材(103)を設け、走行操作レバー(45)の操作位置が「中立」位置にあることを検知する中立検知部材(105)を設け、制御装置(100)は距離情報受信部材(102)と距離情報送信部材(103)が所定距離内にあること検知し、中立検知部材(105)が「中立」を検知すると、駆動切替機構(83)の切替アクチュエータ(71)を自動的に作動させる制御構成を有することを特徴とする請求項3記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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