茎稈細断装置の切断刃
【課題】刈刃駆動軸に対する茎稈の巻き付きを防止し易い構造のものでありながら、凹入刃部による茎稈の掻き込み性能を良好に保ち易い構造の茎稈細断装置の切断刃を提供する。
【解決手段】凹入刃部53の前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ1が鋭角で、かつ、前側刃縁fe2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ2よりも後側刃縁re2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ3が大きな角度であるように形成され、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の形状が前傾した波形に形成され、凹入刃部53の前側刃縁fe2はその回転方向前方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成され、後側刃縁re2はその回転方向後方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成されている。
【解決手段】凹入刃部53の前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ1が鋭角で、かつ、前側刃縁fe2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ2よりも後側刃縁re2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ3が大きな角度であるように形成され、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の形状が前傾した波形に形成され、凹入刃部53の前側刃縁fe2はその回転方向前方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成され、後側刃縁re2はその回転方向後方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置された茎稈細断装置の切断刃に関する。
【背景技術】
【0002】
茎稈細断装置の切断刃としては、従来より下記[1],[2]に記載した構造のものが知られている。
[1] 円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する刃縁が凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、かつ、凹入刃部の刃縁を、円盤状ディスクの回転円に対する接線に対して緩やかな角度の前側刃縁と、接線に対してほぼ垂直な程度に急角度で形成された後側刃縁とを備えた構造としたもの(特許文献1参照)。
[2] 円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する刃縁が凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、かつ、凹入刃部の刃縁を略「へ」字状の鈍角に形成して、後側刃縁に比較的大きな後退角を設け、後側刃縁で切断されなかった茎稈を円盤状ディスクの回転円の外側に押し出し可能な程度の傾斜を有した刃縁構造としたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭57−10686号公報(第1頁第2欄、第1図)
【特許文献2】特開平10−295171号公報(段落〔0009〕、図4、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の切断刃を用いる茎稈細断装置では、互いに平行で、かつ逆方向に回転駆動される一対の刈刃駆動軸を備え、一方の刈刃駆動軸の軸線方向での複数箇所に切断刃を装着した回転カッターと、他方の刈刃駆動軸の軸線方向での複数箇所に供給刃を装着した回転供給体とによって、茎稈を稈身方向での複数箇所で切断するように構成されている。
上記[1]に示す技術によれば、凹入刃部の後側刃縁が摩耗すると、切断されなかった茎稈が後側刃縁で折り曲げられ、所定の寸法よりも極端に長く切断されたり、切断されずに刈刃駆動軸に巻き付いてしまう虞が生じやすいという問題がある。
【0005】
上記[2]に示す技術によれば、凹入刃部の後側刃縁に比較的大きな後退角を設けて、後側刃縁が摩耗しても、切断されなかった茎稈を円盤状ディスクの回転円の外側に押し出し可能に構成したものであるから、上記[1]に示すような刈刃駆動軸への茎稈の巻き付きなどの問題を回避する上では有効である。
しかしながら、この構造のものでは、上述のような茎稈巻き付きなどの問題を回避する上では有用である反面、上記[1]に示すような構造のものに比べて、凹入刃部による掻き込み性能が劣り、切断されずに円盤状ディスクの回転円の外側に押し出された茎稈が多く存在する状態で、新たに供給される茎稈量が増大すると、茎稈細断装置内で停滞する茎稈がワラ詰まりを生じてしまうという新たな問題がある。
【0006】
本発明の目的は、刈刃駆動軸に対する茎稈の巻き付きを防止し易い構造のものでありながら、凹入刃部による茎稈の掻き込み性能を良好に保ち易い構造の茎稈細断装置の切断刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の茎稈細断装置の切断刃における技術手段は、請求項1に記載のように、円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、前記凹入刃部が、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように形成され、前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成され、前記凹入刃部の前側刃縁はその回転方向前方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁はその回転方向後方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成されていることである。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の茎稈細断装置の切断刃では、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように前記凹入刃部が形成されているので、この凹入刃部が鈍角で形成されたものに比べると、凹入刃部内に把持された茎稈の周方向でのずれ動きを制限し易くなり、その結果、前記鈍角に形成された凹入刃部を備えるものよりも掻き込み性能が優れたものとなる。
【0009】
そして、鋭角の凹入刃部は、円盤状ディスクの外周部で半径方向の内外に凹凸するように形成された波形の鋸刃状刃部の刃縁の延長線に沿って形成されているので、その凹入刃部においても、外周の鋸刃状刃部における切断性能と同様な切断機能を確保し易い。したがって、凹入刃部が鋭角で、個々の凹入刃部内における掻き込み茎稈量が、鈍角の凹入刃部に比べれば比較的少ないことと相俟って、凹入刃部での切断性能を良好に発揮させられる。
【0010】
また、前記凹入刃部は、前述のように前側刃縁と後側刃縁との夾角が鋭角に形成されてはいるが、その凹入刃部の刃縁は、前述した鋸刃状刃部の刃縁の延長線に沿って波形に形成されている。このため、凹入刃部の刃縁の摩耗によって切れ味が低下して切断されない場合があっても、その切断されなかった茎稈を波形に沿った刃縁によって後方側へ案内し、後続の鋸刃状刃部の切断性能に託すことができ、切断されないままの茎稈を引っ掛けて刈刃駆動軸に巻き付けてしまうような可能性は少ない。
【0011】
さらに、前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成されているので、この鋸刃状刃部においても、前後の底部の中央位置を頂部とする波形のものに比べて、茎稈が切断箇所から逃げ出す方向への移動をある程度制限しながら、つまりある程度の掻き込み機能を有した状態で切断作用が行われることになる。
しかも、前傾した波形の鋸刃状刃部の波形は、そのまま延長線が凹入刃部の波形と合致した状態で形成されるので、鋸刃状刃部と凹入刃部との間における切断対象茎稈の摺接抵抗の大きな変化が無く、鋸刃状刃部と凹入刃部との間における形状変化箇所で局部的な摩耗が進行する虞も少ない。
したがって、切断刃全体の掻き込み性能の向上とともに、耐久性の向上をも図り得た切断刃を得られる利点がある。
【0012】
〔解決手段2〕
本発明の茎稈細断装置の切断刃における第2の解決手段は、請求項2の記載のように、円盤状ディスクの鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されている点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の茎稈細断装置の切断刃では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、鋸刃状刃部も凹入刃部も、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されているので、鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向においても切断対象茎稈との摺接抵抗や切断性能に大きな変化が無く、凹入刃部と鋸刃状刃部との何れにおいても全体に良好な切断性能を維持し易い利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように、左右一対のクローラ式走行装置10によって自走し、かつ、運転座席11を有した運転部などを備えた自走機体の機体フレーム1の前端部に、刈取前処理装置2の前処理フレーム20の基端側を回動自在に連結し、前記機体フレーム1に脱穀装置12及び穀粒タンク13を設けるとともに、脱穀装置12の後部に排ワラ処理部3を設けて、本発明の茎稈細断装置4を適用したコンバインを構成してある。
【0015】
このコンバインは、稲・麦などの穀粒を収穫するものであり、前記前処理フレーム20に連結しているリフトシリンダ2aによって前処理フレーム20を機体フレーム1に対して上下に揺動操作可能に構成してある。この前処理フレーム20の上下揺動操作によって、刈取前処理装置2が圃場面の近くにまで下降した作業位置と、圃場面から上昇側へ離間した非作業位置とに、前処理フレーム20の対地姿勢を変更自在に構成されている。
刈取前処置装置12を下降作業位置にして自走機体を走行させると、刈取前処理装置2が複数条の植立穀稈を引起装置21によって引起し処理するとともにバリカン型の刈取り装置22で刈取って、刈取穀稈を搬送装置23によって機体後方側に搬送していく。
【0016】
脱穀装置12が前記搬送装置23から供給された刈取穀稈を、脱穀装置12の扱口側に配設されている脱穀フィードチェーン12aで挟持搬送しながら扱胴(図外)で脱穀処理し、脱穀粒を穀粒タンク13に供給して、穀粒タンク13内の穀粒を、上下軸心y1周りで回動自在に構成された穀粒搬出用オーガ14を用いて機外へ取り出し可能に構成してあり、脱穀排ワラは、排ワラ処理部3で細断して放出する状態と、長ワラのままで放出する状態に選択して処理される。
【0017】
〔排ワラ処理部の構成〕
排ワラ処理部3は、図3、図4に示すように、脱穀装置12の機枠内の後部に設けた株元側無端回動チェーン31及び穂先側無端回動ベルト32を有した排ワラ搬送装置30、ならびに脱穀装置12の後部に位置するカッターケース40を有した茎稈細断装置4を備えて構成されている。
【0018】
前記排ワラ搬送装置30は、脱穀フィードチェーン12aの搬送終端部の横側近くに搬送始端部が位置し、搬送終端部が前記搬送始端部より自走機体後方側で、かつ、脱穀フィードチェーン12aが設けられた扱口側とは反対側に位置するように、自走機体の前後方向に対して傾斜した状態に配置された前記株元側無端回動チェーン31と、前記株元側無端回動チェーン31より搬送排ワラの穂先側で前記株元側無端回動チェーン31と平行に配置された穂先側無端回動ベルト32とを備えて構成されている。
【0019】
株元側無端回動チェーン31は、図6に示す如くリンクプレートに設けた茎稈挟持搬送突起を備えており、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラの株元側を受け継ぎ、搬送ガイド杆31aとの協働により挟持して自走機体後方側に向けて、かつ、扱口側とは反対側の横側に向けて搬送する。
穂先側無端回動ベルト32は、その長手方向での複数箇所から株元側無端回動チェーン31の搬送突起よりも長く突出している茎稈係止搬送突起32a(図3及び図4参照)を備えており、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラの穂先側を前記搬送突起32aによって係止させて自走機体後方向きで扱口とは反対側に搬送する。
【0020】
図1、図3、及び図6に示すように、茎稈細断装置4は、排ワラ搬送装置30の搬送終端部の下方に排ワラ受け入れ口40aが位置するように配置して脱穀機体の後側壁の外面側に取付けた前記カッターケース40と、このカッターケース40の内部に自走機体の前後方向に並べて駆動回動自在に設けた回転カッター41と、回転供給体42とを備えて構成してある。
【0021】
図8乃至図12で示すように、回転カッター41は、六角軸で成る切断軸43の軸芯方向での複数箇所に円盤形の切断刃5を取付け、切断刃5どうしの間に切断刃間隔を設定間隔に保つとともに切断軸43のワラ屑が巻き付くことを抑制するための筒状のスペーサ44を設けて構成してある。各切断刃5は、切断軸43の六角形状による係合によって切断軸43と一体回転するようになっている。
【0022】
図5、及び図8乃至図12に示すように、回転供給体42は、供給軸45の軸芯方向での複数箇所に円盤形の供給刃46を一体回転自在に取付けて構成してある。供給刃46は、排ワラの株元側に作用する部位では、一枚の前記切断刃5に対して一枚の供給刃46が対応し、これよりも排ワラの穂先側に作用する部位では、一枚の切断刃5に対して供給刃46が二枚ずつ対応するように配置してある。
【0023】
カッターケース40は、図6、及び図17乃至図20に示すように、前記排ワラ受け入れ口40aを開閉自在な蓋体47を備え、この蓋体47は、基端側の回動支点軸47aまわりで揺動して排ワラ受け入れ口40aを開放した起立開き姿勢と、排ワラ受け入れ口40aを閉じた倒伏閉じ姿勢とに切り換え自在に構成してある。したがって、前記蓋体47を、前記起立開き姿勢とすることにより脱穀排ワラを細断して圃場に放出する細断処理や、倒伏閉じ姿勢とすることにより脱穀排ワラを長ワラのままで圃場に放出する長ワラ処理を行なえるように構成されている。
【0024】
すなわち、排ワラ処理部3では、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラを株元側無端回動チェーン31と穂先側無端回動ベルト32によって受け継いで横架姿勢で穂先側に寄せながら自走機体後方向きに搬送し、搬送ガイド杆31aから外れた搬送終端に至ると、株元側無端回動チェーン31による挟持を解除して落下させる。
【0025】
このとき、蓋体47を起立開き姿勢にしてあると、株元側無端回動チェーン31及び、穂先側無端回動ベルト32からの脱穀排ワラをカッターケース40の排ワラ受け入れ口40aから回転供給体42と回転カッター41の間の上に横架姿勢で落下させ、その排ワラを回転供給体42が供給刃46によって回転カッター41との間に供給して回転供給体42の排ワラ稈身方向に並んでいる前記複数枚の供給刃46と、回転カッター41の排ワラ稈身方向に並んでいる前記複数枚の切断刃5によって切断して稈身方向に細断し、細断ワラを回転供給体42と回転カッター41の間から落下させてカッターケース40の下方の排出口(図外)から圃場に落下させる。
前記蓋体47を倒伏閉じ姿勢にしてあると、株元側無端回動チェーン31及び、穂先側無端回動ベルト32からの脱穀排ワラを蓋体47の上面側に横架姿勢で落下させ、この蓋体47の上面上を後方側に滑落させてカッターケース40の後側から圃場に落下させることになる。
【0026】
前記茎稈細断装置4の回転カッター41と、回転供給体42とに対する駆動力の伝達は次のようにして行われる。
図3、図6、及び図8に示すように、脱穀装置12側の駆動力を取り出す出力プーリ12bと、切断軸43の端部に設けたカッター駆動プーリ43aとを、伝動ベルト33aとテンションプーリ33bとを備えたベルト伝動機構33を介して連動連結してある。前記テンションプーリ33bは、図6に示すようにコイルスプリング33cによって常時緊張側に付勢されている。
【0027】
カッター駆動プーリ43aを設けた切断軸43には、出力用の小径の駆動スプロケット43bが六角形状の切断軸43に外嵌して一体回転するように設けてあり、この駆動スプロケット43bと、カッターケース40の横側壁40b部分に固定された中継軸34に相対回転自在に軸支された中継部材35の大径の中継スプロケット35aとの間に動力伝達用の伝動チェーン36を介装してある。
そして、前記中継部材35には伝動用の小径ギヤ35bが一体形成されており、この小径ギヤ35bが供給軸45の軸端に一体回転自在に装着された伝動用の大径ギヤ45aと係合している。これによって、前記切断軸43に伝えられた駆動力が、減速されて供給軸45に伝達されるように構成してある。
【0028】
前記茎稈細断装置4の前記カッターケース40は、図3及び図4に示すように、自走機体の横幅方向における前記脱穀フィードチェーン12aが位置している側とは反対側の機体フレーム1上に立設した支柱15に支持させて、上下方向軸芯y2まわりで回動可能に構成してある。
すなわち、前記支柱15には、穀粒搬出用オーガ14の縦筒部分14aが連結されており、この支柱15の剛性によって、穀粒搬出用オーガ14の縦筒部分14aを支えるように機体フレーム1に立設されたものであるが、これと同時に、茎稈細断装置4を支持して回動操作するための上下方向軸心y2の支点取付部としての役割も果たしている。
【0029】
前記カッターケース40を上下方向軸芯y2まわりで回動操作する際は、前記伝動ベルト33を前記カッター駆動プーリ43aから取り外しておく。
このようにして、カッターケース40を上下方向軸芯y2まわりで回動操作可能に構成すると、前記茎稈細断装置4や脱穀装置12の内部を点検するとか清掃するなどの作業を行なう際、図4に示すように、茎稈細断装置4を前記上下方向軸芯y2まわりで自走機体に対して後方に回動操作して、遊端側が脱穀装置12から後方に離間した開き位置にすることにより、機体の後部やカッターケース40の前部側を開放して作業が行いやすくなる。
【0030】
〔細断長さ調節について〕
前記供給刃46を備える供給軸45は、切断刃5を備える切断軸43との間隔を、次に示すような軸間変更機構6によって変更可能に構成してある。
すなわち、この軸間変更機構6は、図8乃至図15に示すように、前記カッターケース40の一方の横側壁40b部分に設けられた中継軸34、及び、その中継軸34と同心でカッターケース40の他方の横側壁40bに固定された補助中継軸37とのそれぞれに枢支された左右一対のL字形のアーム部材60と、その各アーム部材60,60の前記枢支された側とは反対側の端部で相対回動自在に両端側を枢支されたカム軸61と、そのカム軸61のカム部62を案内するカム受け部材63と、前記中継軸34に一端側を枢支されたカム操作部材64とで構成されている。
【0031】
図8及び図9に示すように、前記アーム部材60は、その中間位置に供給軸45をベアリングを介して枢支しているとともに、前記中継軸34と補助中継軸37との共通軸心P1周りで揺動可能に構成してある。このため、アーム部材60の中間位置に枢支された前記供給軸45とアーム部材60の他端側に枢支されたカム軸61も、それぞれアーム部材60とともに揺動する揺動移動することになるので、カッターケース40の両横側壁40b、40bに対して相対移動することになる。
この相対移動を許容するために、図13に示すように、前記カッターケース40の両横側壁40b、40bを貫通する前記供給軸45が挿通された状態で揺動可能な、前記共通軸心P1周りの円弧状の第1長孔40cをカッターケース40の両横側壁40b、40bに形成してある。前記カム軸61は、その一端側が前記カッターケース40の横側壁40bを貫通し、他端側は横側壁40bの内面側に接当した状態で支持されており、前記貫通する側の横側壁40bに、前記カム軸61が挿通された状態で揺動することを許容するように、前記共通軸心P1周りの円弧状に形成された第2長孔40dを設けてある。
【0032】
前記カム軸61は、両端にカム部62を一体に備えた筒軸部61Aと、その筒軸部61Aの一端側に挿通され、かつ止めボルトで一体化された軸杆部61Bとの組み合わせで構成され、その軸杆部61Bの端部に、前記カム操作部材64に連係された操作アーム部65が一体に設けてある。この操作アーム部65は、カム軸61の軸心P2から離れた位置に軸心P3を有したガイドピン66を設けてあり、このガイドピン66がカム操作部材64のガイド孔67に入り込んで、カム操作部材64の前記共通軸心P1周りの揺動操作をカム軸61の回転運動として伝えるように構成されている。
【0033】
また、左右両端のカム部62は、前記カッターケース40の両横側壁40b、40bの内側面に設けたカム受け部材63の凹入ガイド溝63Aに入り込んだ状態で設けてあり、図13及び図14に示すように、カム操作部材64の揺動操作に連動して、カム軸61とともに自転し、これに伴ってカム軸61の軸心P2の位置を、図14(a)に示す位置から、図14(b)に示す位置まで、凹入ガイド溝63A内で移動させる。
その結果、カム軸61を支持するアーム部材60も前記軸心P2の移動量に相当する角度分だけ、前記共通軸心P1周りで揺動作動され、このアーム部材60に支持されている供給軸45が、図13(a)に示す位置から図13(b)に示す位置にまで、第1長孔40c内を移動する。これによって、供給軸45の前記第1長孔40c内での移動量に相当する量だけ、切断軸43に対する供給軸45の軸間距離を変更することができる。
【0034】
図8及び図13に示すように、前記ガイドピン66とカム操作部材64とは、引っ張りバネ68で互いに近接する側へ付勢してあり、ガイドピン66がガイド孔67内の案内縁に摺接しながら移動可能であるように、かつ最近接位置で安定位置するように構成してある。
【0035】
前記カム受け部材63には、カッターケース40の横側壁40bから内面側へ突設形成された係止ピン40eに係入する係合凹部63aと、横側壁40bに累入された止めボルト63Bに係入するだるま孔63bとが形成され、この係止ピン40e及び止めボルト63Bとの係合によって前記横側壁40bに固定されている。
図14では、前記だるま孔63bの図中左側の孔部分に止めボルト63Bが係入されている状態を示しているが、この止めボルト63Bを図中の右側の孔部分に係入すれば、カム受け部材63の全体を図中の左方へ移動させた状態で固定することができる。このように止めボルト63Bの位置を変更すれば、カム受け部材63と横側壁40bに形成されている第2長孔40dとの相対的な位置関係が変化して、前記供給軸45の位置を、変更されたカム受け部材63の位置に対応させて調節することができる。
【0036】
上記のように軸間変更機構6を用いて、切断軸43と供給軸45との軸間距離を変更すると、図10乃至図12に示すように、切断刃5と供給刃46との、軸心方向での重合代が変化する。
その結果、図12(a)に示すように重合代が少ない状態では、図11に示すように、切断刃5の内の大径刃50が供給刃46に対向する箇所でのみ切断刃5と供給刃46が重合して茎稈が切断され、小径刃51が供給刃46に対向する箇所では、切断刃5と供給刃46が重合せず、この箇所で切断が行われないため、茎稈の切断長が長い状態で切断されることになる。
図12(b)に示すように重合代が大きい状態では、図10に示すように、切断刃5の内の大径刃50と小径刃51が共に供給刃46と重合して茎稈が切断されるので、茎稈の切断長が短い状態で切断されることになる。
【0037】
〔茎稈供給方向切換構造〕
茎稈細断装置4における茎稈供給方向を、切断用経路側と排出用経路側とに切り換えるための切換操作体、及びその切換操作体を駆動するための構造は次のように構成されている。
【0038】
すなわち、図6、図17、及び図18に示すように、脱穀装置12側から供給される茎稈を、切断箇所であるカッターケース40内へ供給するための切断用経路R1側と、切断箇所から外れた箇所であるカッターケース40の外へ送り出す排出用経路R2側とに、茎稈供給方向を切換可能な切換操作体としてカッターケース40の上部側の蓋体47を用いている。
そして、この蓋体47を上記の茎稈供給方向の切換のために操作するための切換操作体駆動装置7は、カッターケース40の前記上下方向軸心y2が存在する側とは反対側の横側壁40bに対して取り付けられた電動モータ70と、その電動モータ70の動力を前記蓋体47に伝達する連係機構としての蓋体操作機構71とから構成されている。
【0039】
前記電動モータ70は、図6、図7、図16、及び図17に示すように、前記上下方向軸心y2が存在する側とは反対側の横側壁40bと、その横側壁40bとの間に所定間隔を隔てて固定した機器取付板24との間に位置させて、前記横側壁40bに固定してある。
そして、この電動モータ70の出力軸に固定された出力用ピニオン70aが後述する蓋体操作機構71のセクトギヤ72に噛み合って、電動モータ70の動力で前記セクトギヤ72を回動操作できるように取り付けてある。
【0040】
前記電動モータ70に対する電源は、図5乃至図7に示すように、カッターケース40の両横側壁40bにわたって、その両横側壁40bを貫く状態で連設された断面矩形のパイプフレーム49の内部を通して、カッターケース40の一端側から他端側へ配設された電線ハーネス25から導くように構成してある。
したがって、カッターケース40の前記上下方向軸心y2が存在する側の横側壁40b側からパイプフレーム49内を通して電線ハーネス25を配設することによって、前記上下方向軸心y2が存在する側の横側壁40bとは反対側の横側壁40bに取り付けられている電動モータ70に対して、カッターケース40の前後や上下などのケース外空間を通す必要なく電源線を導くことができる。
【0041】
前記蓋体操作機構71は、前記電動モータ70の出力用ピニオン70aと噛合するセクトギヤ72、蓋体47と同軸上で一体回転する回動部材73、及び前記セクトギヤ72と回動部材73との間に介装した動作伝達バネ74の組み合わせで構成されている。
【0042】
前記セクトギヤ72は、図16乃至図18に示すように、前記蓋体47の回動支点軸47aに外嵌して相対回動自在に支持された扇形の歯部を有する扇形ギヤ部72aと、その扇形ギヤ部72aと一体に形成されたスイッチ取付部材72bとを備えている。そしてさらに、前記扇形ギヤ部72aの外向き面から外側へ立設されたリンク連結ピン72cと、前記スイッチ取付部材72bの内向き面から内側に向けて立設されたバネ受けピン72dと、前記扇形ギヤ部72a及びスイッチ取付部材72bを貫いて、カッターケース40の横側壁40bに形成されているガイド孔40fに挿入された動作範囲規制ピン72eとを備えている。
【0043】
前記回動部材73は、前記蓋体47の回動支点軸47aに一体に連結されていて、蓋体47とともに姿勢変化変化するように構成されている。この回動部材73には、その外向きの面にバネ受けピン73aと、前記スイッチ取付部材72bに装着されたスイッチ75と接触してスイッチ操作するための接触操作ピン73bとが設けてある。
【0044】
前記動作伝達バネ74は、その両端側が前記セクトギヤ72側のバネ受けピン72dと、回動部材73側のバネ受けピン73aとのそれぞれに連結されている。
そして、この動作伝達バネ74の弾性は、電動モータ70で蓋体47を駆動する際にセクトギヤ72側のバネ受けピン72dが蓋体47を開放する側、もしくは閉塞する側へ移動を始めても、図18に示すように、前記両バネ受けピン72d,73a同士の間隔Lが殆ど変化せずに回動部材73側のバネ受けピン73aに操作力を伝達し得るようにバネ力を設定してある。
そして、図19に示すように、茎稈供給方向を切断用経路R1側とするように蓋体47を開放姿勢とした状態で、切断箇所でのワラ詰まりが生じると、蓋体47が図中の仮想線の状態から実線の状態に姿勢変化することを許容するように、つまり、前記両バネ受けピン72d,73a同士の間隔Lが、前記蓋体47に対するワラ詰まりによる押圧作用が働く側、この場合には前記間隔Lが圧縮されて狭くなる側に弾性変形されるように、そのバネ力を設定してある。
【0045】
上記のように、動作伝達バネ74が圧縮された図19に示す状態では、蓋体47は、その横側部から突出させた掛け止めピン47bが、手動係止金具48の係止部48aに引っ掛けられて、図中の実線の状態を保っているものであるが、この手動係止金具48を、図20に示すように上方側へ持ち上げると、手動係止金具48と前記掛け止めピン47bとの係合が外れ、蓋体47を大きく後方側へ開放された姿勢とすることができる。
このとき、回動支点軸47aの軸心P4から、セクトギヤ72側のバネ受けピン72dの軸心P5までの距離r1と、回動支点軸47aの軸心P4から回動部材73側のバネ受けピン73aの軸心P6までの距離r2とは、前者が後者よりも大きく設定されていて、前記軸心P4と軸心P5とを結ぶ仮想線分をデッドポイント線DPとして、軸心P6がその前後に移動できるようになっているので、動作伝達バネ74は、図19に示す状態から図20に示す状態に変化する途中でデッドポイント線DPを越えて移動する。
【0046】
前記セクトギヤ72の扇形ギヤ部72aの外向き面側に立設されたリンク連結ピン72cには、リンク部材76を介して角度検出器としてのポテンショメータ77が連結されており、前記電動モータ70で駆動されるセクトギヤ72の角度変位量を検出するように構成されている。
この場合、図17に示す蓋体47の閉塞姿勢時の位置と、図18に示す出力用ピニオン70aで駆動されたセクトギヤ72と対応する蓋体47の開放姿勢位置は前記ポテンショメータ77で検出できるが、図19に示す詰まりワラで押圧された状態の蓋体47の姿勢、及び図20における詰まり解除用の蓋体47の開放姿勢は検出することができない。
【0047】
しかしながら、上記の状態、つまり、図19に示すような詰まりワラで押圧された状態の蓋体47の姿勢、及び図20に示す詰まり解除用の蓋体47の開放姿勢は、前記スイッチ取付部材72bに取り付けられた検出スイッチ75が回動部材73の接触操作ピン73bとの接触によるスイッチ入り状態を解かれたことを検出するので、この検出結果が制御装置(図外)で判別されるように構成されている。
【0048】
前記電動モータ70による蓋体47の姿勢切換は、図示しないが操縦部に設けたスイッチ操作具などにより、制御装置に開閉操作の指令信号を出力し、電動モータ70の制御を行うように構成されている。そして、蓋体47の前記電動モータ70による開閉作動範囲は前記ポテンショメータ77で検出して制御装置にフィードバックし、その検出結果を適宜表示装置(図外)で表示するように構成してあり、電動モータ70による開閉動作以外の、前述した切断箇所でのワラ詰まりが生じたことによる蓋体47の開き側への動作や、手動係止金具48による係止を解除しての人為操作による開放作動は、前記検出スイッチ75で検出して制御装置にフィードバックし、エンジン(図外)に対する停止指令を出力する等の制御を行うように構成されている。
【0049】
前記茎稈細断装置4の、前記支柱15によって上下方向軸芯y2まわりで回動可能に支持された側とは反対側の横側面である左側面は、前述の電動モータ70や各種伝動機構等を含めた各種作動装置とともに、脱穀装置12の前記脱穀フィードチェーン12aが存在する側を覆う一連の脱穀部カバー16によって覆われている。
したがって、茎稈細断装置4のメンテナンスなどで、前述の電動モータ70等点検したい場合には、茎稈を送り込む側の脱穀装置12の伝動系についても同時的に点検することが必要となることが多いので、前記脱穀部カバー16を取り外すだけで、脱穀装置12側と茎稈細断装置4側との両方のメンテナンス関連作業を簡素化し易い。
【0050】
〔切断刃の構成〕
前記茎稈細断装置4の回転カッター41に用いられる個々の切断刃5は次のように構成されている。
ここでいう切断刃5は、前述の大径刃50も小径刃51も、その径寸法の違いがあるだけの同一形状のものであるため、特に大径刃50と小径刃51とを区別せず、共通した切断刃5として説明する。
図21及び図22に示すように、切断刃5は円盤状ディスク5Aの外周部に、鋸刃状刃部52と凹入刃部53とを周方向で隣接配置して構成されている。図21では、円盤状ディスクの周方向を3等分した120度ごとに凹入刃部53が形成され、それらの各凹入刃部53同士の間を繋ぐ状態で鋸刃状刃部52が形成されている。
この切断刃5は、切削工具鋼等の好適な素材からなる円盤状ディスク5Aを、外周部のプレス加工、及び切削加工を経て所期の形状とした後、TD−VC処理などの適宜表面処理を施して高硬度のものに仕上げられる。
【0051】
前記円盤状ディスク5Aの外周部は、図22、図24、及び図25に示すように、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の刃先角度α(例えば、約18度)で傾斜した面となるように、外周部の全体を円盤状ディスク5Aの厚さ方向で一方の面側から他方の面側に屈曲させた皿状にプレス加工されている。
そして、前記傾斜した外周部の板面は、その傾斜した面の厚さ方向で凹凸する波板状となるようにプレス加工が施され、プレス加工によって前記傾斜した外周部の板面部分には、円盤状ディスク5Aの板面に沿い、かつ半径方向での所定長さを有した多数の凸条部52aと凹条部52bとが、周方向で交互に形成される。
【0052】
上記の凸条部52aと凹条部52bが形成された後に、円盤状ディスク5Aの多数の凸条部52aと凹条部52bとが交互に形成された傾斜した外周部の板面とは反対側の板面において、前記外周部分が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工される。
つまり、前述したように、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の角度α(例えば、約18度)で傾斜した面となり、かつその傾斜面に形成された多数の凸条部52aと凹条部52bの外周側が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工されることによって、円盤状ディスク5Aの外周部分に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁e1が形成された鋸刃状刃部52が設けられることになる。
【0053】
この鋸刃状刃部52の前記半径方向の内外に凹凸する波形刃縁e1は、その波形の頂部が、回転方向で後方側に位置する底部よりも前方側に位置する底部の近くに位置するように前傾した波形に形成されている。つまり、図21及び図23に示すように、円盤状ディスク5Aの外周部に形成される鋸刃状刃部52の前記凸条部52aは、その稜線54が円盤状ディスク5Aの回転軸心xからの放射方向の線分aに対して、外周側ほど回転方向の前方側に位置するように、前傾角度β(約15度)だけ前傾した姿勢で形成されている。
このように前傾していることによって、前記円盤状ディスク5Aの回転軸心方向視における鋸刃状刃部52の半径方向の内外に凹凸する波形刃縁e1の刃先角度γは約60度であるから、この鋸刃状刃部52の前記波形刃縁e1では、その波形の一つの頂部が前記回転軸心xからの放射方向の線分a上に位置する状態で、前記放射方向の線分aに対して、回転方向の前方側へ約15度の傾き角度γ1、後方側へ約45度の傾き角度γ2を有した波形となる。
【0054】
前記円盤状ディスク5Aの外周部には、前記鋸刃状刃部52と同時に凹入刃部53もプレス加工、及び切削加工で形成される。
この凹入刃部53は、図21に示すように、約120度ずつの間隔を持って外周部の3箇所に均等配分され、この凹入刃部53同士の間を繋ぐように前記鋸刃状刃部52が配備されている。
この凹入刃部53部分では、図21及び図23に示すように、前記円盤状ディスク5Aが前記鋸刃状刃部52よりも半径方向での中心側寄りの位置から、円盤状ディスク5Aの厚さ方向で一方側から他方側に向けて部分的に屈曲され、前記鋸刃状刃部52と同様に、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の角度α(例えば、約18度)で傾斜した面が形成される。
上記のように円盤状ディスク5Aの外周部分で回転軸心xに直交する面に対して前記所定の角度αで傾斜した面が形成された後に、その傾斜した板面部分とは反対側の板面において、前記反対側の板面部分が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工される。これによって、円盤状ディスク5Aの外周部分に、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁e2が形成された凹入刃部53が設けられることになる
【0055】
前記凹入刃部53は、回転方向前方側に位置する前側刃縁fe2と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁re2とを連続させて形成されたものであり、図21及び図23に示すように、凹入した凹曲刃縁e2のうちの前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ1が鋭角(約70度)に形成されている。そして、前記凹入刃部53の前側刃縁fe2はその回転方向前方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁re2はその回転方向後方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成されている。
その結果、前記鋸刃状刃部52の波形刃縁e1が前述したように前傾した姿勢であるため、その波形刃縁e1に沿う凹入刃部53の凹曲刃縁e2は、前側刃縁fe2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ2よりも、後側刃縁re2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ3が大きな角度であるように形成される。
【0056】
このようにして形成された凹入刃部53には、図21に仮想線で示すように、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の3ピッチ分に相当する周方向長さの開口が形成され、その凹入刃部53の凹曲刃縁e2の凹入深さは鋸刃状刃部52の半径方向長さと同程度に形成されている。
【0057】
〔別実施形態の1〕
凹入刃部53の前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ3は、最良の実施形態で例示したように、約70度程度の鋭角であるのが望ましいが、必ずしもこの角度に限られるものではなく、所期の掻き込み作用や非切断茎稈の逃げが可能であるなどの機能を発揮し得る範囲での、ある程度の幅をもって、例えば60度〜80度程度の鋭角に設定することもできる。
【0058】
〔別実施形態の2〕
円盤状ディスク5Aの外周部に設ける凹入刃部53の個数は、最良の実施形態で説明した3箇所であるに限らず、任意の個数を設けることができる。また、その凹入刃部53の開口部分の周方向長さや凹入深さに関しても、切断対象や切断条件に応じて適宜の大きさに設定すればよい。
【0059】
〔別実施形態の3〕
鋸刃状刃部52の前傾角度βは、最良の実施形態で示したような約15度であるに限らず、所期の掻き込み機能や切断性能を発揮し得る範囲で適宜に設定することができる。
【0060】
〔別実施形態の4〕
本発明による切断刃5は、脱穀排ワラを処理対象物とする細断装置の他、各種の茎稈を処理対象物とする細断装置にも適用できる。従って、排ワラ細断装置やその他の細断装置を総称して茎稈細断装置と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】排ワラ処理部の平面図
【図4】排ワラ処理部の平面図
【図5】茎稈細断装置の平面図
【図6】排ワラ処理部の側面図
【図7】茎稈細断装置の側面図
【図8】茎稈細断装置の断面図
【図9】茎稈細断装置の断面図
【図10】回転カッター及び回転供給体の断面図
【図11】回転カッター及び回転供給体の断面図
【図12】回転カッター及び回転供給体の側面図
【図13】軸間変更機構の動作状態を示す側面図
【図14】軸間変更機構のカム部の動作状態を示す側面図
【図15】軸間変更機構の分解斜視図
【図16】切換操作体駆動装置を示す一部切り欠き平面図
【図17】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図18】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図19】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図20】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図21】切断刃の正面図
【図22】切断刃の断面図
【図23】切断刃の凹入刃部付近の拡大正面図
【図24】図23におけるZ1−Z1線での断面図
【図25】図23におけるZ2−Z2線での断面図
【符号の説明】
【0062】
3 排ワラ処理部
4 茎稈細断装置
5 切断刃
52 鋸刃状刃部
53 凹入刃部
e1 波形刃縁
e2 凹曲刃縁
fe2 前側刃縁
re2 後側刃縁
θ1 前側刃縁と後側刃縁との夾角
θ2 外周接線と前側刃縁との夾角
θ3 外周接線と後側刃縁との夾角
α 刃先角度
β 前傾角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置された茎稈細断装置の切断刃に関する。
【背景技術】
【0002】
茎稈細断装置の切断刃としては、従来より下記[1],[2]に記載した構造のものが知られている。
[1] 円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する刃縁が凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、かつ、凹入刃部の刃縁を、円盤状ディスクの回転円に対する接線に対して緩やかな角度の前側刃縁と、接線に対してほぼ垂直な程度に急角度で形成された後側刃縁とを備えた構造としたもの(特許文献1参照)。
[2] 円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する刃縁が凹入する掻き込み用凹縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、かつ、凹入刃部の刃縁を略「へ」字状の鈍角に形成して、後側刃縁に比較的大きな後退角を設け、後側刃縁で切断されなかった茎稈を円盤状ディスクの回転円の外側に押し出し可能な程度の傾斜を有した刃縁構造としたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭57−10686号公報(第1頁第2欄、第1図)
【特許文献2】特開平10−295171号公報(段落〔0009〕、図4、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の切断刃を用いる茎稈細断装置では、互いに平行で、かつ逆方向に回転駆動される一対の刈刃駆動軸を備え、一方の刈刃駆動軸の軸線方向での複数箇所に切断刃を装着した回転カッターと、他方の刈刃駆動軸の軸線方向での複数箇所に供給刃を装着した回転供給体とによって、茎稈を稈身方向での複数箇所で切断するように構成されている。
上記[1]に示す技術によれば、凹入刃部の後側刃縁が摩耗すると、切断されなかった茎稈が後側刃縁で折り曲げられ、所定の寸法よりも極端に長く切断されたり、切断されずに刈刃駆動軸に巻き付いてしまう虞が生じやすいという問題がある。
【0005】
上記[2]に示す技術によれば、凹入刃部の後側刃縁に比較的大きな後退角を設けて、後側刃縁が摩耗しても、切断されなかった茎稈を円盤状ディスクの回転円の外側に押し出し可能に構成したものであるから、上記[1]に示すような刈刃駆動軸への茎稈の巻き付きなどの問題を回避する上では有効である。
しかしながら、この構造のものでは、上述のような茎稈巻き付きなどの問題を回避する上では有用である反面、上記[1]に示すような構造のものに比べて、凹入刃部による掻き込み性能が劣り、切断されずに円盤状ディスクの回転円の外側に押し出された茎稈が多く存在する状態で、新たに供給される茎稈量が増大すると、茎稈細断装置内で停滞する茎稈がワラ詰まりを生じてしまうという新たな問題がある。
【0006】
本発明の目的は、刈刃駆動軸に対する茎稈の巻き付きを防止し易い構造のものでありながら、凹入刃部による茎稈の掻き込み性能を良好に保ち易い構造の茎稈細断装置の切断刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の茎稈細断装置の切断刃における技術手段は、請求項1に記載のように、円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、前記凹入刃部が、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように形成され、前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成され、前記凹入刃部の前側刃縁はその回転方向前方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁はその回転方向後方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成されていることである。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の茎稈細断装置の切断刃では、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように前記凹入刃部が形成されているので、この凹入刃部が鈍角で形成されたものに比べると、凹入刃部内に把持された茎稈の周方向でのずれ動きを制限し易くなり、その結果、前記鈍角に形成された凹入刃部を備えるものよりも掻き込み性能が優れたものとなる。
【0009】
そして、鋭角の凹入刃部は、円盤状ディスクの外周部で半径方向の内外に凹凸するように形成された波形の鋸刃状刃部の刃縁の延長線に沿って形成されているので、その凹入刃部においても、外周の鋸刃状刃部における切断性能と同様な切断機能を確保し易い。したがって、凹入刃部が鋭角で、個々の凹入刃部内における掻き込み茎稈量が、鈍角の凹入刃部に比べれば比較的少ないことと相俟って、凹入刃部での切断性能を良好に発揮させられる。
【0010】
また、前記凹入刃部は、前述のように前側刃縁と後側刃縁との夾角が鋭角に形成されてはいるが、その凹入刃部の刃縁は、前述した鋸刃状刃部の刃縁の延長線に沿って波形に形成されている。このため、凹入刃部の刃縁の摩耗によって切れ味が低下して切断されない場合があっても、その切断されなかった茎稈を波形に沿った刃縁によって後方側へ案内し、後続の鋸刃状刃部の切断性能に託すことができ、切断されないままの茎稈を引っ掛けて刈刃駆動軸に巻き付けてしまうような可能性は少ない。
【0011】
さらに、前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成されているので、この鋸刃状刃部においても、前後の底部の中央位置を頂部とする波形のものに比べて、茎稈が切断箇所から逃げ出す方向への移動をある程度制限しながら、つまりある程度の掻き込み機能を有した状態で切断作用が行われることになる。
しかも、前傾した波形の鋸刃状刃部の波形は、そのまま延長線が凹入刃部の波形と合致した状態で形成されるので、鋸刃状刃部と凹入刃部との間における切断対象茎稈の摺接抵抗の大きな変化が無く、鋸刃状刃部と凹入刃部との間における形状変化箇所で局部的な摩耗が進行する虞も少ない。
したがって、切断刃全体の掻き込み性能の向上とともに、耐久性の向上をも図り得た切断刃を得られる利点がある。
【0012】
〔解決手段2〕
本発明の茎稈細断装置の切断刃における第2の解決手段は、請求項2の記載のように、円盤状ディスクの鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されている点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の茎稈細断装置の切断刃では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、鋸刃状刃部も凹入刃部も、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されているので、鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向においても切断対象茎稈との摺接抵抗や切断性能に大きな変化が無く、凹入刃部と鋸刃状刃部との何れにおいても全体に良好な切断性能を維持し易い利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように、左右一対のクローラ式走行装置10によって自走し、かつ、運転座席11を有した運転部などを備えた自走機体の機体フレーム1の前端部に、刈取前処理装置2の前処理フレーム20の基端側を回動自在に連結し、前記機体フレーム1に脱穀装置12及び穀粒タンク13を設けるとともに、脱穀装置12の後部に排ワラ処理部3を設けて、本発明の茎稈細断装置4を適用したコンバインを構成してある。
【0015】
このコンバインは、稲・麦などの穀粒を収穫するものであり、前記前処理フレーム20に連結しているリフトシリンダ2aによって前処理フレーム20を機体フレーム1に対して上下に揺動操作可能に構成してある。この前処理フレーム20の上下揺動操作によって、刈取前処理装置2が圃場面の近くにまで下降した作業位置と、圃場面から上昇側へ離間した非作業位置とに、前処理フレーム20の対地姿勢を変更自在に構成されている。
刈取前処置装置12を下降作業位置にして自走機体を走行させると、刈取前処理装置2が複数条の植立穀稈を引起装置21によって引起し処理するとともにバリカン型の刈取り装置22で刈取って、刈取穀稈を搬送装置23によって機体後方側に搬送していく。
【0016】
脱穀装置12が前記搬送装置23から供給された刈取穀稈を、脱穀装置12の扱口側に配設されている脱穀フィードチェーン12aで挟持搬送しながら扱胴(図外)で脱穀処理し、脱穀粒を穀粒タンク13に供給して、穀粒タンク13内の穀粒を、上下軸心y1周りで回動自在に構成された穀粒搬出用オーガ14を用いて機外へ取り出し可能に構成してあり、脱穀排ワラは、排ワラ処理部3で細断して放出する状態と、長ワラのままで放出する状態に選択して処理される。
【0017】
〔排ワラ処理部の構成〕
排ワラ処理部3は、図3、図4に示すように、脱穀装置12の機枠内の後部に設けた株元側無端回動チェーン31及び穂先側無端回動ベルト32を有した排ワラ搬送装置30、ならびに脱穀装置12の後部に位置するカッターケース40を有した茎稈細断装置4を備えて構成されている。
【0018】
前記排ワラ搬送装置30は、脱穀フィードチェーン12aの搬送終端部の横側近くに搬送始端部が位置し、搬送終端部が前記搬送始端部より自走機体後方側で、かつ、脱穀フィードチェーン12aが設けられた扱口側とは反対側に位置するように、自走機体の前後方向に対して傾斜した状態に配置された前記株元側無端回動チェーン31と、前記株元側無端回動チェーン31より搬送排ワラの穂先側で前記株元側無端回動チェーン31と平行に配置された穂先側無端回動ベルト32とを備えて構成されている。
【0019】
株元側無端回動チェーン31は、図6に示す如くリンクプレートに設けた茎稈挟持搬送突起を備えており、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラの株元側を受け継ぎ、搬送ガイド杆31aとの協働により挟持して自走機体後方側に向けて、かつ、扱口側とは反対側の横側に向けて搬送する。
穂先側無端回動ベルト32は、その長手方向での複数箇所から株元側無端回動チェーン31の搬送突起よりも長く突出している茎稈係止搬送突起32a(図3及び図4参照)を備えており、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラの穂先側を前記搬送突起32aによって係止させて自走機体後方向きで扱口とは反対側に搬送する。
【0020】
図1、図3、及び図6に示すように、茎稈細断装置4は、排ワラ搬送装置30の搬送終端部の下方に排ワラ受け入れ口40aが位置するように配置して脱穀機体の後側壁の外面側に取付けた前記カッターケース40と、このカッターケース40の内部に自走機体の前後方向に並べて駆動回動自在に設けた回転カッター41と、回転供給体42とを備えて構成してある。
【0021】
図8乃至図12で示すように、回転カッター41は、六角軸で成る切断軸43の軸芯方向での複数箇所に円盤形の切断刃5を取付け、切断刃5どうしの間に切断刃間隔を設定間隔に保つとともに切断軸43のワラ屑が巻き付くことを抑制するための筒状のスペーサ44を設けて構成してある。各切断刃5は、切断軸43の六角形状による係合によって切断軸43と一体回転するようになっている。
【0022】
図5、及び図8乃至図12に示すように、回転供給体42は、供給軸45の軸芯方向での複数箇所に円盤形の供給刃46を一体回転自在に取付けて構成してある。供給刃46は、排ワラの株元側に作用する部位では、一枚の前記切断刃5に対して一枚の供給刃46が対応し、これよりも排ワラの穂先側に作用する部位では、一枚の切断刃5に対して供給刃46が二枚ずつ対応するように配置してある。
【0023】
カッターケース40は、図6、及び図17乃至図20に示すように、前記排ワラ受け入れ口40aを開閉自在な蓋体47を備え、この蓋体47は、基端側の回動支点軸47aまわりで揺動して排ワラ受け入れ口40aを開放した起立開き姿勢と、排ワラ受け入れ口40aを閉じた倒伏閉じ姿勢とに切り換え自在に構成してある。したがって、前記蓋体47を、前記起立開き姿勢とすることにより脱穀排ワラを細断して圃場に放出する細断処理や、倒伏閉じ姿勢とすることにより脱穀排ワラを長ワラのままで圃場に放出する長ワラ処理を行なえるように構成されている。
【0024】
すなわち、排ワラ処理部3では、脱穀フィードチェーン12aからの脱穀排ワラを株元側無端回動チェーン31と穂先側無端回動ベルト32によって受け継いで横架姿勢で穂先側に寄せながら自走機体後方向きに搬送し、搬送ガイド杆31aから外れた搬送終端に至ると、株元側無端回動チェーン31による挟持を解除して落下させる。
【0025】
このとき、蓋体47を起立開き姿勢にしてあると、株元側無端回動チェーン31及び、穂先側無端回動ベルト32からの脱穀排ワラをカッターケース40の排ワラ受け入れ口40aから回転供給体42と回転カッター41の間の上に横架姿勢で落下させ、その排ワラを回転供給体42が供給刃46によって回転カッター41との間に供給して回転供給体42の排ワラ稈身方向に並んでいる前記複数枚の供給刃46と、回転カッター41の排ワラ稈身方向に並んでいる前記複数枚の切断刃5によって切断して稈身方向に細断し、細断ワラを回転供給体42と回転カッター41の間から落下させてカッターケース40の下方の排出口(図外)から圃場に落下させる。
前記蓋体47を倒伏閉じ姿勢にしてあると、株元側無端回動チェーン31及び、穂先側無端回動ベルト32からの脱穀排ワラを蓋体47の上面側に横架姿勢で落下させ、この蓋体47の上面上を後方側に滑落させてカッターケース40の後側から圃場に落下させることになる。
【0026】
前記茎稈細断装置4の回転カッター41と、回転供給体42とに対する駆動力の伝達は次のようにして行われる。
図3、図6、及び図8に示すように、脱穀装置12側の駆動力を取り出す出力プーリ12bと、切断軸43の端部に設けたカッター駆動プーリ43aとを、伝動ベルト33aとテンションプーリ33bとを備えたベルト伝動機構33を介して連動連結してある。前記テンションプーリ33bは、図6に示すようにコイルスプリング33cによって常時緊張側に付勢されている。
【0027】
カッター駆動プーリ43aを設けた切断軸43には、出力用の小径の駆動スプロケット43bが六角形状の切断軸43に外嵌して一体回転するように設けてあり、この駆動スプロケット43bと、カッターケース40の横側壁40b部分に固定された中継軸34に相対回転自在に軸支された中継部材35の大径の中継スプロケット35aとの間に動力伝達用の伝動チェーン36を介装してある。
そして、前記中継部材35には伝動用の小径ギヤ35bが一体形成されており、この小径ギヤ35bが供給軸45の軸端に一体回転自在に装着された伝動用の大径ギヤ45aと係合している。これによって、前記切断軸43に伝えられた駆動力が、減速されて供給軸45に伝達されるように構成してある。
【0028】
前記茎稈細断装置4の前記カッターケース40は、図3及び図4に示すように、自走機体の横幅方向における前記脱穀フィードチェーン12aが位置している側とは反対側の機体フレーム1上に立設した支柱15に支持させて、上下方向軸芯y2まわりで回動可能に構成してある。
すなわち、前記支柱15には、穀粒搬出用オーガ14の縦筒部分14aが連結されており、この支柱15の剛性によって、穀粒搬出用オーガ14の縦筒部分14aを支えるように機体フレーム1に立設されたものであるが、これと同時に、茎稈細断装置4を支持して回動操作するための上下方向軸心y2の支点取付部としての役割も果たしている。
【0029】
前記カッターケース40を上下方向軸芯y2まわりで回動操作する際は、前記伝動ベルト33を前記カッター駆動プーリ43aから取り外しておく。
このようにして、カッターケース40を上下方向軸芯y2まわりで回動操作可能に構成すると、前記茎稈細断装置4や脱穀装置12の内部を点検するとか清掃するなどの作業を行なう際、図4に示すように、茎稈細断装置4を前記上下方向軸芯y2まわりで自走機体に対して後方に回動操作して、遊端側が脱穀装置12から後方に離間した開き位置にすることにより、機体の後部やカッターケース40の前部側を開放して作業が行いやすくなる。
【0030】
〔細断長さ調節について〕
前記供給刃46を備える供給軸45は、切断刃5を備える切断軸43との間隔を、次に示すような軸間変更機構6によって変更可能に構成してある。
すなわち、この軸間変更機構6は、図8乃至図15に示すように、前記カッターケース40の一方の横側壁40b部分に設けられた中継軸34、及び、その中継軸34と同心でカッターケース40の他方の横側壁40bに固定された補助中継軸37とのそれぞれに枢支された左右一対のL字形のアーム部材60と、その各アーム部材60,60の前記枢支された側とは反対側の端部で相対回動自在に両端側を枢支されたカム軸61と、そのカム軸61のカム部62を案内するカム受け部材63と、前記中継軸34に一端側を枢支されたカム操作部材64とで構成されている。
【0031】
図8及び図9に示すように、前記アーム部材60は、その中間位置に供給軸45をベアリングを介して枢支しているとともに、前記中継軸34と補助中継軸37との共通軸心P1周りで揺動可能に構成してある。このため、アーム部材60の中間位置に枢支された前記供給軸45とアーム部材60の他端側に枢支されたカム軸61も、それぞれアーム部材60とともに揺動する揺動移動することになるので、カッターケース40の両横側壁40b、40bに対して相対移動することになる。
この相対移動を許容するために、図13に示すように、前記カッターケース40の両横側壁40b、40bを貫通する前記供給軸45が挿通された状態で揺動可能な、前記共通軸心P1周りの円弧状の第1長孔40cをカッターケース40の両横側壁40b、40bに形成してある。前記カム軸61は、その一端側が前記カッターケース40の横側壁40bを貫通し、他端側は横側壁40bの内面側に接当した状態で支持されており、前記貫通する側の横側壁40bに、前記カム軸61が挿通された状態で揺動することを許容するように、前記共通軸心P1周りの円弧状に形成された第2長孔40dを設けてある。
【0032】
前記カム軸61は、両端にカム部62を一体に備えた筒軸部61Aと、その筒軸部61Aの一端側に挿通され、かつ止めボルトで一体化された軸杆部61Bとの組み合わせで構成され、その軸杆部61Bの端部に、前記カム操作部材64に連係された操作アーム部65が一体に設けてある。この操作アーム部65は、カム軸61の軸心P2から離れた位置に軸心P3を有したガイドピン66を設けてあり、このガイドピン66がカム操作部材64のガイド孔67に入り込んで、カム操作部材64の前記共通軸心P1周りの揺動操作をカム軸61の回転運動として伝えるように構成されている。
【0033】
また、左右両端のカム部62は、前記カッターケース40の両横側壁40b、40bの内側面に設けたカム受け部材63の凹入ガイド溝63Aに入り込んだ状態で設けてあり、図13及び図14に示すように、カム操作部材64の揺動操作に連動して、カム軸61とともに自転し、これに伴ってカム軸61の軸心P2の位置を、図14(a)に示す位置から、図14(b)に示す位置まで、凹入ガイド溝63A内で移動させる。
その結果、カム軸61を支持するアーム部材60も前記軸心P2の移動量に相当する角度分だけ、前記共通軸心P1周りで揺動作動され、このアーム部材60に支持されている供給軸45が、図13(a)に示す位置から図13(b)に示す位置にまで、第1長孔40c内を移動する。これによって、供給軸45の前記第1長孔40c内での移動量に相当する量だけ、切断軸43に対する供給軸45の軸間距離を変更することができる。
【0034】
図8及び図13に示すように、前記ガイドピン66とカム操作部材64とは、引っ張りバネ68で互いに近接する側へ付勢してあり、ガイドピン66がガイド孔67内の案内縁に摺接しながら移動可能であるように、かつ最近接位置で安定位置するように構成してある。
【0035】
前記カム受け部材63には、カッターケース40の横側壁40bから内面側へ突設形成された係止ピン40eに係入する係合凹部63aと、横側壁40bに累入された止めボルト63Bに係入するだるま孔63bとが形成され、この係止ピン40e及び止めボルト63Bとの係合によって前記横側壁40bに固定されている。
図14では、前記だるま孔63bの図中左側の孔部分に止めボルト63Bが係入されている状態を示しているが、この止めボルト63Bを図中の右側の孔部分に係入すれば、カム受け部材63の全体を図中の左方へ移動させた状態で固定することができる。このように止めボルト63Bの位置を変更すれば、カム受け部材63と横側壁40bに形成されている第2長孔40dとの相対的な位置関係が変化して、前記供給軸45の位置を、変更されたカム受け部材63の位置に対応させて調節することができる。
【0036】
上記のように軸間変更機構6を用いて、切断軸43と供給軸45との軸間距離を変更すると、図10乃至図12に示すように、切断刃5と供給刃46との、軸心方向での重合代が変化する。
その結果、図12(a)に示すように重合代が少ない状態では、図11に示すように、切断刃5の内の大径刃50が供給刃46に対向する箇所でのみ切断刃5と供給刃46が重合して茎稈が切断され、小径刃51が供給刃46に対向する箇所では、切断刃5と供給刃46が重合せず、この箇所で切断が行われないため、茎稈の切断長が長い状態で切断されることになる。
図12(b)に示すように重合代が大きい状態では、図10に示すように、切断刃5の内の大径刃50と小径刃51が共に供給刃46と重合して茎稈が切断されるので、茎稈の切断長が短い状態で切断されることになる。
【0037】
〔茎稈供給方向切換構造〕
茎稈細断装置4における茎稈供給方向を、切断用経路側と排出用経路側とに切り換えるための切換操作体、及びその切換操作体を駆動するための構造は次のように構成されている。
【0038】
すなわち、図6、図17、及び図18に示すように、脱穀装置12側から供給される茎稈を、切断箇所であるカッターケース40内へ供給するための切断用経路R1側と、切断箇所から外れた箇所であるカッターケース40の外へ送り出す排出用経路R2側とに、茎稈供給方向を切換可能な切換操作体としてカッターケース40の上部側の蓋体47を用いている。
そして、この蓋体47を上記の茎稈供給方向の切換のために操作するための切換操作体駆動装置7は、カッターケース40の前記上下方向軸心y2が存在する側とは反対側の横側壁40bに対して取り付けられた電動モータ70と、その電動モータ70の動力を前記蓋体47に伝達する連係機構としての蓋体操作機構71とから構成されている。
【0039】
前記電動モータ70は、図6、図7、図16、及び図17に示すように、前記上下方向軸心y2が存在する側とは反対側の横側壁40bと、その横側壁40bとの間に所定間隔を隔てて固定した機器取付板24との間に位置させて、前記横側壁40bに固定してある。
そして、この電動モータ70の出力軸に固定された出力用ピニオン70aが後述する蓋体操作機構71のセクトギヤ72に噛み合って、電動モータ70の動力で前記セクトギヤ72を回動操作できるように取り付けてある。
【0040】
前記電動モータ70に対する電源は、図5乃至図7に示すように、カッターケース40の両横側壁40bにわたって、その両横側壁40bを貫く状態で連設された断面矩形のパイプフレーム49の内部を通して、カッターケース40の一端側から他端側へ配設された電線ハーネス25から導くように構成してある。
したがって、カッターケース40の前記上下方向軸心y2が存在する側の横側壁40b側からパイプフレーム49内を通して電線ハーネス25を配設することによって、前記上下方向軸心y2が存在する側の横側壁40bとは反対側の横側壁40bに取り付けられている電動モータ70に対して、カッターケース40の前後や上下などのケース外空間を通す必要なく電源線を導くことができる。
【0041】
前記蓋体操作機構71は、前記電動モータ70の出力用ピニオン70aと噛合するセクトギヤ72、蓋体47と同軸上で一体回転する回動部材73、及び前記セクトギヤ72と回動部材73との間に介装した動作伝達バネ74の組み合わせで構成されている。
【0042】
前記セクトギヤ72は、図16乃至図18に示すように、前記蓋体47の回動支点軸47aに外嵌して相対回動自在に支持された扇形の歯部を有する扇形ギヤ部72aと、その扇形ギヤ部72aと一体に形成されたスイッチ取付部材72bとを備えている。そしてさらに、前記扇形ギヤ部72aの外向き面から外側へ立設されたリンク連結ピン72cと、前記スイッチ取付部材72bの内向き面から内側に向けて立設されたバネ受けピン72dと、前記扇形ギヤ部72a及びスイッチ取付部材72bを貫いて、カッターケース40の横側壁40bに形成されているガイド孔40fに挿入された動作範囲規制ピン72eとを備えている。
【0043】
前記回動部材73は、前記蓋体47の回動支点軸47aに一体に連結されていて、蓋体47とともに姿勢変化変化するように構成されている。この回動部材73には、その外向きの面にバネ受けピン73aと、前記スイッチ取付部材72bに装着されたスイッチ75と接触してスイッチ操作するための接触操作ピン73bとが設けてある。
【0044】
前記動作伝達バネ74は、その両端側が前記セクトギヤ72側のバネ受けピン72dと、回動部材73側のバネ受けピン73aとのそれぞれに連結されている。
そして、この動作伝達バネ74の弾性は、電動モータ70で蓋体47を駆動する際にセクトギヤ72側のバネ受けピン72dが蓋体47を開放する側、もしくは閉塞する側へ移動を始めても、図18に示すように、前記両バネ受けピン72d,73a同士の間隔Lが殆ど変化せずに回動部材73側のバネ受けピン73aに操作力を伝達し得るようにバネ力を設定してある。
そして、図19に示すように、茎稈供給方向を切断用経路R1側とするように蓋体47を開放姿勢とした状態で、切断箇所でのワラ詰まりが生じると、蓋体47が図中の仮想線の状態から実線の状態に姿勢変化することを許容するように、つまり、前記両バネ受けピン72d,73a同士の間隔Lが、前記蓋体47に対するワラ詰まりによる押圧作用が働く側、この場合には前記間隔Lが圧縮されて狭くなる側に弾性変形されるように、そのバネ力を設定してある。
【0045】
上記のように、動作伝達バネ74が圧縮された図19に示す状態では、蓋体47は、その横側部から突出させた掛け止めピン47bが、手動係止金具48の係止部48aに引っ掛けられて、図中の実線の状態を保っているものであるが、この手動係止金具48を、図20に示すように上方側へ持ち上げると、手動係止金具48と前記掛け止めピン47bとの係合が外れ、蓋体47を大きく後方側へ開放された姿勢とすることができる。
このとき、回動支点軸47aの軸心P4から、セクトギヤ72側のバネ受けピン72dの軸心P5までの距離r1と、回動支点軸47aの軸心P4から回動部材73側のバネ受けピン73aの軸心P6までの距離r2とは、前者が後者よりも大きく設定されていて、前記軸心P4と軸心P5とを結ぶ仮想線分をデッドポイント線DPとして、軸心P6がその前後に移動できるようになっているので、動作伝達バネ74は、図19に示す状態から図20に示す状態に変化する途中でデッドポイント線DPを越えて移動する。
【0046】
前記セクトギヤ72の扇形ギヤ部72aの外向き面側に立設されたリンク連結ピン72cには、リンク部材76を介して角度検出器としてのポテンショメータ77が連結されており、前記電動モータ70で駆動されるセクトギヤ72の角度変位量を検出するように構成されている。
この場合、図17に示す蓋体47の閉塞姿勢時の位置と、図18に示す出力用ピニオン70aで駆動されたセクトギヤ72と対応する蓋体47の開放姿勢位置は前記ポテンショメータ77で検出できるが、図19に示す詰まりワラで押圧された状態の蓋体47の姿勢、及び図20における詰まり解除用の蓋体47の開放姿勢は検出することができない。
【0047】
しかしながら、上記の状態、つまり、図19に示すような詰まりワラで押圧された状態の蓋体47の姿勢、及び図20に示す詰まり解除用の蓋体47の開放姿勢は、前記スイッチ取付部材72bに取り付けられた検出スイッチ75が回動部材73の接触操作ピン73bとの接触によるスイッチ入り状態を解かれたことを検出するので、この検出結果が制御装置(図外)で判別されるように構成されている。
【0048】
前記電動モータ70による蓋体47の姿勢切換は、図示しないが操縦部に設けたスイッチ操作具などにより、制御装置に開閉操作の指令信号を出力し、電動モータ70の制御を行うように構成されている。そして、蓋体47の前記電動モータ70による開閉作動範囲は前記ポテンショメータ77で検出して制御装置にフィードバックし、その検出結果を適宜表示装置(図外)で表示するように構成してあり、電動モータ70による開閉動作以外の、前述した切断箇所でのワラ詰まりが生じたことによる蓋体47の開き側への動作や、手動係止金具48による係止を解除しての人為操作による開放作動は、前記検出スイッチ75で検出して制御装置にフィードバックし、エンジン(図外)に対する停止指令を出力する等の制御を行うように構成されている。
【0049】
前記茎稈細断装置4の、前記支柱15によって上下方向軸芯y2まわりで回動可能に支持された側とは反対側の横側面である左側面は、前述の電動モータ70や各種伝動機構等を含めた各種作動装置とともに、脱穀装置12の前記脱穀フィードチェーン12aが存在する側を覆う一連の脱穀部カバー16によって覆われている。
したがって、茎稈細断装置4のメンテナンスなどで、前述の電動モータ70等点検したい場合には、茎稈を送り込む側の脱穀装置12の伝動系についても同時的に点検することが必要となることが多いので、前記脱穀部カバー16を取り外すだけで、脱穀装置12側と茎稈細断装置4側との両方のメンテナンス関連作業を簡素化し易い。
【0050】
〔切断刃の構成〕
前記茎稈細断装置4の回転カッター41に用いられる個々の切断刃5は次のように構成されている。
ここでいう切断刃5は、前述の大径刃50も小径刃51も、その径寸法の違いがあるだけの同一形状のものであるため、特に大径刃50と小径刃51とを区別せず、共通した切断刃5として説明する。
図21及び図22に示すように、切断刃5は円盤状ディスク5Aの外周部に、鋸刃状刃部52と凹入刃部53とを周方向で隣接配置して構成されている。図21では、円盤状ディスクの周方向を3等分した120度ごとに凹入刃部53が形成され、それらの各凹入刃部53同士の間を繋ぐ状態で鋸刃状刃部52が形成されている。
この切断刃5は、切削工具鋼等の好適な素材からなる円盤状ディスク5Aを、外周部のプレス加工、及び切削加工を経て所期の形状とした後、TD−VC処理などの適宜表面処理を施して高硬度のものに仕上げられる。
【0051】
前記円盤状ディスク5Aの外周部は、図22、図24、及び図25に示すように、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の刃先角度α(例えば、約18度)で傾斜した面となるように、外周部の全体を円盤状ディスク5Aの厚さ方向で一方の面側から他方の面側に屈曲させた皿状にプレス加工されている。
そして、前記傾斜した外周部の板面は、その傾斜した面の厚さ方向で凹凸する波板状となるようにプレス加工が施され、プレス加工によって前記傾斜した外周部の板面部分には、円盤状ディスク5Aの板面に沿い、かつ半径方向での所定長さを有した多数の凸条部52aと凹条部52bとが、周方向で交互に形成される。
【0052】
上記の凸条部52aと凹条部52bが形成された後に、円盤状ディスク5Aの多数の凸条部52aと凹条部52bとが交互に形成された傾斜した外周部の板面とは反対側の板面において、前記外周部分が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工される。
つまり、前述したように、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の角度α(例えば、約18度)で傾斜した面となり、かつその傾斜面に形成された多数の凸条部52aと凹条部52bの外周側が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工されることによって、円盤状ディスク5Aの外周部分に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁e1が形成された鋸刃状刃部52が設けられることになる。
【0053】
この鋸刃状刃部52の前記半径方向の内外に凹凸する波形刃縁e1は、その波形の頂部が、回転方向で後方側に位置する底部よりも前方側に位置する底部の近くに位置するように前傾した波形に形成されている。つまり、図21及び図23に示すように、円盤状ディスク5Aの外周部に形成される鋸刃状刃部52の前記凸条部52aは、その稜線54が円盤状ディスク5Aの回転軸心xからの放射方向の線分aに対して、外周側ほど回転方向の前方側に位置するように、前傾角度β(約15度)だけ前傾した姿勢で形成されている。
このように前傾していることによって、前記円盤状ディスク5Aの回転軸心方向視における鋸刃状刃部52の半径方向の内外に凹凸する波形刃縁e1の刃先角度γは約60度であるから、この鋸刃状刃部52の前記波形刃縁e1では、その波形の一つの頂部が前記回転軸心xからの放射方向の線分a上に位置する状態で、前記放射方向の線分aに対して、回転方向の前方側へ約15度の傾き角度γ1、後方側へ約45度の傾き角度γ2を有した波形となる。
【0054】
前記円盤状ディスク5Aの外周部には、前記鋸刃状刃部52と同時に凹入刃部53もプレス加工、及び切削加工で形成される。
この凹入刃部53は、図21に示すように、約120度ずつの間隔を持って外周部の3箇所に均等配分され、この凹入刃部53同士の間を繋ぐように前記鋸刃状刃部52が配備されている。
この凹入刃部53部分では、図21及び図23に示すように、前記円盤状ディスク5Aが前記鋸刃状刃部52よりも半径方向での中心側寄りの位置から、円盤状ディスク5Aの厚さ方向で一方側から他方側に向けて部分的に屈曲され、前記鋸刃状刃部52と同様に、円盤状ディスク5Aの回転軸心xに直交する面に対して所定の角度α(例えば、約18度)で傾斜した面が形成される。
上記のように円盤状ディスク5Aの外周部分で回転軸心xに直交する面に対して前記所定の角度αで傾斜した面が形成された後に、その傾斜した板面部分とは反対側の板面において、前記反対側の板面部分が前記回転軸心xに直交する面に沿って切削加工される。これによって、円盤状ディスク5Aの外周部分に、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁e2が形成された凹入刃部53が設けられることになる
【0055】
前記凹入刃部53は、回転方向前方側に位置する前側刃縁fe2と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁re2とを連続させて形成されたものであり、図21及び図23に示すように、凹入した凹曲刃縁e2のうちの前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ1が鋭角(約70度)に形成されている。そして、前記凹入刃部53の前側刃縁fe2はその回転方向前方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁re2はその回転方向後方側の鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の延長線に沿って形成されている。
その結果、前記鋸刃状刃部52の波形刃縁e1が前述したように前傾した姿勢であるため、その波形刃縁e1に沿う凹入刃部53の凹曲刃縁e2は、前側刃縁fe2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ2よりも、後側刃縁re2と円盤状ディスク5Aの回転円に対する接線sとの夾角θ3が大きな角度であるように形成される。
【0056】
このようにして形成された凹入刃部53には、図21に仮想線で示すように、鋸刃状刃部52の波形刃縁e1の3ピッチ分に相当する周方向長さの開口が形成され、その凹入刃部53の凹曲刃縁e2の凹入深さは鋸刃状刃部52の半径方向長さと同程度に形成されている。
【0057】
〔別実施形態の1〕
凹入刃部53の前側刃縁fe2と後側刃縁re2との夾角θ3は、最良の実施形態で例示したように、約70度程度の鋭角であるのが望ましいが、必ずしもこの角度に限られるものではなく、所期の掻き込み作用や非切断茎稈の逃げが可能であるなどの機能を発揮し得る範囲での、ある程度の幅をもって、例えば60度〜80度程度の鋭角に設定することもできる。
【0058】
〔別実施形態の2〕
円盤状ディスク5Aの外周部に設ける凹入刃部53の個数は、最良の実施形態で説明した3箇所であるに限らず、任意の個数を設けることができる。また、その凹入刃部53の開口部分の周方向長さや凹入深さに関しても、切断対象や切断条件に応じて適宜の大きさに設定すればよい。
【0059】
〔別実施形態の3〕
鋸刃状刃部52の前傾角度βは、最良の実施形態で示したような約15度であるに限らず、所期の掻き込み機能や切断性能を発揮し得る範囲で適宜に設定することができる。
【0060】
〔別実施形態の4〕
本発明による切断刃5は、脱穀排ワラを処理対象物とする細断装置の他、各種の茎稈を処理対象物とする細断装置にも適用できる。従って、排ワラ細断装置やその他の細断装置を総称して茎稈細断装置と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】排ワラ処理部の平面図
【図4】排ワラ処理部の平面図
【図5】茎稈細断装置の平面図
【図6】排ワラ処理部の側面図
【図7】茎稈細断装置の側面図
【図8】茎稈細断装置の断面図
【図9】茎稈細断装置の断面図
【図10】回転カッター及び回転供給体の断面図
【図11】回転カッター及び回転供給体の断面図
【図12】回転カッター及び回転供給体の側面図
【図13】軸間変更機構の動作状態を示す側面図
【図14】軸間変更機構のカム部の動作状態を示す側面図
【図15】軸間変更機構の分解斜視図
【図16】切換操作体駆動装置を示す一部切り欠き平面図
【図17】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図18】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図19】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図20】切換操作体駆動装置の作動状態を示す説明図
【図21】切断刃の正面図
【図22】切断刃の断面図
【図23】切断刃の凹入刃部付近の拡大正面図
【図24】図23におけるZ1−Z1線での断面図
【図25】図23におけるZ2−Z2線での断面図
【符号の説明】
【0062】
3 排ワラ処理部
4 茎稈細断装置
5 切断刃
52 鋸刃状刃部
53 凹入刃部
e1 波形刃縁
e2 凹曲刃縁
fe2 前側刃縁
re2 後側刃縁
θ1 前側刃縁と後側刃縁との夾角
θ2 外周接線と前側刃縁との夾角
θ3 外周接線と後側刃縁との夾角
α 刃先角度
β 前傾角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、
前記凹入刃部が、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように形成され、
前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成され、
前記凹入刃部の前側刃縁はその回転方向前方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁はその回転方向後方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成されている茎稈細断装置の切断刃。
【請求項2】
円盤状ディスクの鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されている請求項1記載の茎稈細断装置の切断刃。
【請求項1】
円盤状ディスクの外周部に、半径方向の内外に凹凸する多数の波形刃縁が形成された鋸刃状刃部と、その鋸刃状刃部の波形刃縁よりも回転中心側へ凹入する凹曲刃縁が形成された凹入刃部とが周方向で隣接配置され、
前記凹入刃部が、凹曲刃縁のうちの回転方向前方側に位置する前側刃縁と、回転方向での後方側に位置する後側刃縁との夾角が鋭角で、かつ、前側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角よりも後側刃縁と円盤状ディスクの回転円に対する接線との夾角が大きな角度であるように形成され、
前記鋸刃状刃部の波形刃縁の形状は、その波形の頂部が回転方向で後方側の底部よりも前方側の底部に近く位置するように前傾した波形に形成され、
前記凹入刃部の前側刃縁はその回転方向前方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成され、前記後側刃縁はその回転方向後方側の鋸刃状刃部の波形刃縁の延長線に沿って形成されている茎稈細断装置の切断刃。
【請求項2】
円盤状ディスクの鋸刃状刃部と凹入刃部とは、その厚さ方向での断面における刃先角度が同一又はほぼ同一の傾斜角度に設定されている請求項1記載の茎稈細断装置の切断刃。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−99027(P2010−99027A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274233(P2008−274233)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]