説明

茎葉刈取機

【課題】 畝上に伏した茎葉を漏れなく刈刃に誘導するとともに、刈り残しなく刈り取ることができるようにする。
【解決手段】 本発明の茎葉刈取機1は、機体左右方向に延びる回転軸16の軸周に取り付けられた刈刃17と、該回転軸16の下方から機体前方向における畝U上面に向かって斜め下方へ突設されたデバイダー21とを備え、機体4の機体前方向への進行に伴ってデバイダー21により畝U上に伏した茎葉を引き起こし、該茎葉を刈刃17により刈り取るように構成されている。そして、デバイダー21は、刈刃17の先端17aの下死点位置P2の近傍を経由するとともに、該近傍から斜め下方へ突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植えられた作物の茎葉を刈り取るため茎葉刈取機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の茎葉刈取機として、特許文献1に記載されたモア装置81を例示する。このモア装置81は、図4に示すように、水平方向に延びる回転軸89の軸周に多数の刈刃90が装着されている。この種のモア装置81で、馬鈴薯等の畝上面に倒伏した茎葉を刈り取る場合、機体の進行方向である畝長さ方向へ突設されたデバイダーを設け、該デバイダーにより畝上に伏した茎葉を引き起こして、該茎葉を刈刃90により刈り取る構成が採用される。このとき、デバイダーと刈刃90との干渉を避けるため、刈刃90の移動経路から充分に距離をおいてデバイダーが設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−253725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の茎葉刈取機の構成では、つぎの課題がある。
(1)刈刃90先端とデバイダーとの隙間が茎の太さより広いと、引き起こした茎が隙間に入り切断できなかったり、切断できなかった茎がデバイダー上に堆積してきて、畝を削ったり崩したりする。
(2)デバイダー先端が剛体のため、畝表土を崩さないためには表土から先端を離して作業する必要があり、茎の引き起こし漏れで刈り残しとなる。
(3)デバイダーが茎の根元から離れた位置にあると、茎がデバイダーで引き起こされる途中で落ち、刈刃90まで誘導されず刈り残しとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明の茎葉刈取機は、
機体左右方向に延びる回転軸の軸周に取り付けられた刈刃と、
該回転軸の下方から機体前方向における畝上面に向かって斜め下方へ突設されたデバイダーとを備え、
前記機体の機体前方向への進行に伴って前記デバイダーにより畝上に伏した茎葉を引き起こし、該茎葉を前記刈刃により刈り取るように構成された茎葉刈取機であって、
前記デバイダーは、前記刈刃先端の下死点位置の近傍を経由するとともに、該近傍から斜め下方へ突設されている。
【0006】
この構成によれば、前記デバイダーは、前記刈刃が茎葉を切断可能な最も低い位置である前記下死点位置の近傍を経由するように構成されているので、茎葉の引き起こしを最低限で済ますことができる。このため、引き起こす途中の茎葉が前記デバイダーから落ち難く、引き起こした茎葉を漏れなく前記刈刃に誘導することができる。また、前記デバイダーは、前記刈刃先端の近傍を経由するように構成されているので、該デバイダーに載った該茎葉を前記刈刃により刈り残しなく刈り取ることができる。
【0007】
第2の発明の茎葉刈取機としては、前記第1の発明において、
前記デバイダーは、正面視で前記下死点位置から機体左右方向にずれた位置を経由するように構成された態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、前記刈刃の衝突力に加え、前記デバイダー及び前記刈刃によるせん断力によっても茎葉を切断することができる。
【0009】
第3の発明の茎葉刈取機としては、前記第2の発明において、
前記回転軸には、その軸長さ方向における複数箇所に前記刈刃が取り付けられており、
畝上面における茎葉を刈り取るために設けられた前記刈刃は、その先端の下死点位置が、前記デバイダーにおける該下死点位置の側方部位の底面と略同じ、又は該底面よりも低位置となるように構成された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、畝上面における茎葉を刈り取るために設けられた前記刈刃の先端の下死点位置を、畝上面に近づけることができ、畝上面に伏した茎葉の刈り残しを低減することができる。
【0011】
第4の発明の茎葉刈取機としては、前記第1〜3のいずれかの発明において、
前記デバイダーは、先端に弾性体が装備された態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記デバイダーの先端に装備された前記弾性体が畝表土に接触しても、その弾性により畝表土を崩すことを防止できる。このため、前記デバイダーの先端を畝表面に近づけることができ、畝上に伏した茎葉を漏れなく掬い上げるようにすることができる。
【0013】
第5の発明の茎葉刈取機としては、前記第1〜4のいずれかの発明において、
前記デバイダーは、畝上面における畝幅方向縁部よりも内側寄りの位置で茎葉を引き起こすように配設された態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、前記デバイダーにより、茎の根元に近い位置で茎を引き起こすことができ、茎が引き起こされる途中で落ちて刈り残しとなることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る茎葉刈取機によれば、畝上に伏した茎葉を漏れなく刈刃に誘導するとともに、刈り残しなく刈り取ることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態の茎葉刈取機を示している。本例の茎葉刈取機1は、乗用型であり、図1に示すように、前後の車輪2,3により支持された機体4と、該前後の車輪2,3間に配置されて、圃場Hの畝Uに植えられた作物の茎葉を刈り取る刈取装置5と、該刈取装置5を機体4に昇降可能に支持する支持部6と、機体4に対して刈取装置5が左右へ傾斜しないようにするローリング防止部7とを備えている。なお、各図において、矢印Fは機体前方向を指し示している。
【0017】
刈取装置5は、図2及び図3に示すように、1行程で2つの畝Uにおける茎葉を刈り取るもので、機体左右方向に延出する装置フレーム15を備えている。装置フレーム15の下側には、機体左右方向に水平に延びる回転軸16が回転自在に支持されている。回転軸16の軸長さ方向の複数箇所(本例では各畝Uに対してそれぞれ7箇所)には、3つの刈刃17(本例ではフレール刃)が軸周に等間隔をおいて取り付けられている。装置フレーム15の上側には、原動機としてのエンジン18が設置されており、動力伝動機構19を介して回転軸16を回転駆動するようになっている。また、装置フレーム15の機体左右方向の複数箇所(本例では各畝Uに対してそれぞれ2箇所)には、それぞれ回転軸16の下方から機体前方向における畝U上面に向かって斜め下方へ突設されたデバイダー21が支持されている。そして、この刈取装置5は、刈刃17が畝U上面付近までくるように、支持部6により下降された状態(図2及び図3の状態)にされ、機体4の機体前方向への進行に伴ってデバイダー21により畝U上に伏した茎葉を引き起こし、該茎葉を刈刃17によりアップカットで刈り取るようになっている。
【0018】
各刈刃17は、図3に示すように、先端17aが機体左右方向へ二股に分かれている。また、同図に示すように、各畝U毎に配設された7箇所の刈刃17のうち、左右両側の刈刃17は、畝U側面における茎葉を刈り取るように、回転軸16の径方向に長く延設されている。これら両刈刃17の内側に配設された5箇所の刈刃17は、畝U上面における茎葉を刈り取るようになっている。これら5箇所の刈刃17において、デバイダー21に隣接しない刈刃先端17aの下死点位置P1は、デバイダー21における該下死点位置P1の側方部位21aの底面と略同じ位置となるように構成されている。また、同刈刃17において、デバイダー21に隣接する刈刃先端17aの下死点位置P2は、デバイダー21における該下死点位置P2の側方部位21aの上面の少し上方位置となるように構成されている。
【0019】
各畝U毎に配設された一対のデバイダー21は、図3に示すように、畝U上面用の5箇所の刈刃17において、機体左右両側から1番目の刈刃17と2番目の刈刃17との間をそれぞれ経由して、機体前方向かつ斜め下方向の畝U上面へと延設されることにより、畝U上面における畝U幅方向縁部よりも内側寄りの位置で茎葉を引き起こすように配設されている。各デバイダー21は、装置フレーム15に対し、筒穴22aが機体前方向かつ斜め下方向へ向くように取り付けられた筒状のホルダ部22と、ホルダ部22に対するスライド位置調節可能に筒穴22a内に装着され、先端が刈刃17の下死点位置P2近傍まで延びるように突設された腕部23と、該腕部23の先端に取り付けられ、機体前方向かつ斜め下方向の畝U上面へと突設された爪部24と、該爪部24の先端に取り付けられた弾性体25とを備えている。デバイダー21の腕部23の先端部は、機体4の正面視で、デバイダー21に隣接する刈刃先端17aの下死点位置P2から機体左右方向にずれた位置に配設されている。このずれの程度としては、特に限定されないが、機体4の正面視でデバイダー21の腕部23の先端部と、該デバイダー21に隣接する刈刃先端17aとの隙間が刈取対象の茎の太さより小さいことが好ましく、具体的には約1cm以下にすることを例示する。なお、ホルダ部22に対する腕部23のスライド位置を調節することにより、刈刃17とデバイダー21の相対位置を適宜調節することが可能になっている。
【0020】
以上のように構成された本例の茎葉刈取機1によれば、デバイダー21は、刈刃17が茎葉を切断可能な最も低い位置である下死点位置P2の近傍を経由するように構成されているので、茎葉の引き起こしを最低限で済ますことができる。このため、引き起こす途中の茎葉がデバイダー21から落ち難く、引き起こした茎葉を漏れなく刈刃17に誘導することができる。また、デバイダー21は、刈刃先端17aの近傍を経由するように構成されているので、該デバイダー21に載った該茎葉を刈刃17により刈り残しなく刈り取ることができる。
【0021】
また、デバイダー21は、正面視で刈刃先端17aの下死点位置P2から畝U幅方向にずれた位置を経由するように構成されているので、刈刃17の衝突力に加え、デバイダー21及び刈刃17によるせん断力によっても茎葉を切断することができる。
【0022】
また、畝U上面における茎葉を刈り取るために設けられた刈刃17は、その先端の下死点位置P1が、デバイダー21における該下死点位置P1の側方部位21aの底面と略同じ位置となるように構成されているので、畝U上面における茎葉を刈り取るために設けられた刈刃17の先端17aの下死点位置P1を、畝U上面に近づけることができ、畝U上面に伏した茎葉の刈り残しを低減することができる。
【0023】
また、デバイダー21は、先端に弾性体25が装備されているので、弾性体25が畝U表土に接触しても、その弾性により畝U表土を崩すことを防止できる。このため、デバイダー21の先端を畝U表面に近づけることができ、畝U上に伏した茎葉を漏れなく掬い上げるようにすることができる。
【0024】
また、デバイダー21は、畝U上面における畝U幅方向縁部よりも内側寄りの位置で茎葉を引き起こすように構成されているので、該デバイダー21により、畝U上面における畝U幅方向中央部にある茎の根元に近い位置で茎を引き起こすことができ、茎が引き起こされる途中で落ちて刈り残しとなることを防止できる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)デバイダー21の畝U幅方向における位置や、デバイダー21の高さを調節可能に構成すること。
(2)機体左右方向における腕部23の先端の幅が異なるデバイダー21を数種類用意しておき、これらを適宜交換することにより、機体4の正面視でデバイダー21の腕部23の先端と、該デバイダー21に隣接する刈刃先端17aとの隙間を調節すること。
(3)デバイダー21の設置数を適宜増減すること。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る茎葉刈取機の側面図である。
【図2】同茎葉刈取機における刈取装置の要部を示す側断面図であり、図3のII−II線断面図である。
【図3】同刈取装置の要部を示す正断面図であり、図2のIII−III線断面図である。
【図4】従来の茎葉刈取機としてのモア装置を示す背面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 茎葉刈取機
4 機体
5 刈取装置
15 装置フレーム
16 回転軸
17 刈刃
17a 刈刃先端
18 エンジン
19 動力伝動機構
21 デバイダー
22 ホルダ部
22a 筒穴
23 腕部
24 爪部
25 弾性体
F 機体前方向
H 圃場
P1 下死点位置
P2 下死点位置
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体左右方向に延びる回転軸の軸周に取り付けられた刈刃と、
該回転軸の下方から機体前方向における畝上面に向かって斜め下方へ突設されたデバイダーとを備え、
前記機体の機体前方向への進行に伴って前記デバイダーにより畝上に伏した茎葉を引き起こし、該茎葉を前記刈刃により刈り取るように構成された茎葉刈取機であって、
前記デバイダーは、前記刈刃先端の下死点位置の近傍を経由するとともに、該近傍から斜め下方へ突設された茎葉刈取機。
【請求項2】
前記デバイダーは、正面視で前記下死点位置から機体左右方向にずれた位置を経由するように構成された請求項1記載の茎葉刈取機。
【請求項3】
前記回転軸には、その軸長さ方向における複数箇所に前記刈刃が取り付けられており、
畝上面における茎葉を刈り取るために設けられた前記刈刃は、その先端の下死点位置が、前記デバイダーにおける該下死点位置の側方部位の底面と略同じ、又は該底面よりも低位置となるように構成された請求項2記載の茎葉刈取機。
【請求項4】
前記デバイダーは、先端に弾性体が装備された請求項1〜3のいずれか一項に記載の茎葉刈取機。
【請求項5】
前記デバイダーは、畝上面における畝幅方向縁部よりも内側寄りの位置で茎葉を引き起こすように配設された請求項1〜4のいずれか一項に記載の茎葉刈取機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−136295(P2006−136295A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331090(P2004−331090)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】