説明

草刈機

【課題】左右一対の後車輪を支持する後輪駆動ケースと、エンジンの駆動力を左右一対の後車輪に伝達する静油圧式無段変速装置と、草刈装置からの刈り草を搬送するよう左右一対の後車輪の間を通る搬送ダクトとを備えた草刈機において、静油圧式無段変速装置への伝動を有利に行いながら、後輪駆動ケースの最低地上高さを高くし、搬送ダクトの横幅を大にすることを可能にする。
【解決手段】後輪駆動ケース51に、後車輪2を下端部で支持するとともに搬送ダクト6の両横外側に分散した左右一対の後輪伝動ケース部51b、51bと、左右一対の後輪伝動ケース部51b,51bの上端部に連なるとともに搬送ダクト6の上方に位置する入力ケース部51aとを備えてある。静油圧式無段変速装置52を、油圧ポンプPが油圧モータMよりも低い配置高さに位置する状態で入力ケース部51aの前部に連設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に設けたエンジンと、左右一対の後車輪を駆動自在に支持するよう車体後部に設けた後輪駆動ケースと、前記エンジンからの駆動力を前進駆動力と後進駆動力とに変換して前記左右一対の後車輪に伝達する静油圧式無段変速装置と、草刈装置からの刈り草を車体後方側に搬送するよう前記左右一対の後車輪の間を通る搬送ダクトとを備えた草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の草刈機として、従来、たとえば特許文献1に記載された草刈機があった。
特許文献1に記載された草刈機では、伝動ケース14(後輪駆動ケースに相当)、静油圧式無段変速装置15、ダクト11(搬送ダクトに相当)を備えている。
伝動ケース14は、後車輪2を支持するとともにダクト11の両横側に分散した左右一対の支持部20,21と、前記左右一対の支持部20,21に連なる中間部22とを備えている。中間部22は、搬送ダクト11の下方に位置している。
静油圧式無段変速装置15は、左の支持部21の後部分に連結されている。(各符号は、公報に記載された符号である。)
【0003】
【特許文献1】特開2006−6168号公報(段落〔0020〕−〔0024〕、図1−5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術を採用した場合、後輪駆動ケースの搬送ダクトの下方に位置する部分のために、後輪駆動ケースの最低地上高さが低くなっていた。また、後車輪と搬送ダクトとの間に位置する静油圧式無段変速装置のために、搬送ダクトの横幅が小さくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、エンジン駆動力の静油圧式無段変速装置への伝達を有利に行えるようにしながら、上記した問題点を改善できる草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、車体前部に設けたエンジンと、左右一対の後車輪を駆動自在に支持するよう車体後部に設けた後輪駆動ケースと、前記エンジンからの駆動力を前進駆動力と後進駆動力とに変換して前記左右一対の後車輪に伝達する静油圧式無段変速装置と、草刈装置からの刈り草を車体後方側に搬送するよう前記左右一対の後車輪の間を通る搬送ダクトとを備えた草刈機において、
前記後輪駆動ケースに、前記後車輪を下端部で支持するとともに前記搬送ダクトの両横外側に分散して位置する左右一対の車体上下向きの後輪伝動ケース部と、前記左右一対の後輪伝動ケース部の上端部に連なるとともに前記搬送ダクトの上方に位置する車体左右向きの入力ケース部とを備え、
前記静油圧式無段変速装置を、油圧ポンプが油圧モータよりも低い配置高さに位置する状態で前記入力ケース部の前部に連設するとともに前記入力ケース部に出力するよう構成してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、入力ケース部が搬送ダクトの上方に位置するものだから、搬送ダクトの下方に位置するケース部分を備えなくとも左右一対の後輪伝動ケース部に動力伝達でき、後輪駆動ケースの最低地上高さを従来の後輪駆動ケースのそれよりも高くしながら左右の後車輪に動力伝達できる。
静油圧式無段変速装置を入力ケース部の前部に連設したものだから、後車輪と搬送ダクトとの間に後輪伝動ケース部を設けるだけで済ませて搬送ダクトの横幅を従来のそれよりも大にしながら静油圧式無段変速装置による左右後輪の駆動を行える。
静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが油圧モータよりも低い配置高さに位置するものだから、静油圧式無段変速装置の入力軸の配置高さを低くしてエンジン側と静油圧式無段変速装置との間の回転軸の前後傾斜を無くしたり少なく済ませたりしながらエンジン駆動力を静油圧式無段変速装置に伝達できる。
【0008】
したがって、静油圧式無段変速装置への伝動を騒音が発生しにくいなど有利な状態で行なうことができるものでありながら、後輪駆動ケースの接地を回避しやすくできるとともに多量の刈り草でも搬送ダクトによる搬送をスムーズに行わせることができる。
【0009】
本第2発明は、前記左右一対の後輪伝動ケース部が、車体側面視で上端側ほど車体前方側に位置した傾斜姿勢になっている。
【0010】
本第2発明の構成によると、本第1発明の構成による作用を発揮するに加え、次の作用を発揮する。
搬送ダクトが後上がりの傾斜姿勢になるとか、搬送ダクトの車体上下方向での幅が車体後方側ほど大になるなど、搬送ダクトの上壁が車体後方側ほど高い配置高さに位置する場合であっても、かつ、後車輪を車体後方側に位置させて前後輪間隔を大にしても、後輪伝動ケース部の上端側が下端側よりも車体前方側に位置して後輪駆動ケースの上端の配置高さを低く済ませることができる。
【0011】
したがって、後輪駆動ケースの接地を回避しやすくできるとともに多量の刈り草もスムーズに搬送させることができるのに加え、搬送ダクトの上壁が後上がりであっても、前後輪間隔が大であるとともに地上最高高さが低くて安定よく走行できる状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る草刈機の全体側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る草刈機は、左右一対の操向操作自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走するよう構成され、かつ車体後部に設けた運転座席3が装備された運転部を有した乗用型の自走車を備え、この自走車の車体フレーム4の前後輪間にリンク機構10を介して連結された草刈装置20を備え、前記自走車の車体フレーム4の後部に支持フレーム31を介して支持される集草容器32が装備された刈草回収装置30を備えている。
【0013】
この草刈機は、芝や草を刈り込む草刈り作業を行う。
すなわち、前記自走車は、車体前部に設けたエンジン5と、このエンジン5の下方に設けた動力取り出し機構40とを備えている。前記動力取り出し機構40は、前記エンジン5の出力を、伝動ベルト42を介して入力軸41に入力し、入力軸41の駆動力を油圧操作式の作業クラッチ45を介して動力取り出し軸43に伝達し、この動力取り出し軸43の駆動力を、回転軸46を介して前記草刈装置20の刈り刃駆動機構22に伝達する。
【0014】
前記リンク機構10は、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の前揺動リンク11,11と、車体フレーム4に上下揺動自在に支持された左右一対の後揺動リンク12,12と、左右一対の連動リンク13,13とを備えている。
【0015】
前記左右一対の前揺動リンク11,11の先端部は、草刈装置20の刈り刃ハウジング21の前部に位置する前連結部材23に連結されている。前記左右一対の後揺動リンク12,12の先端部は、前記刈り刃ハウジング21の後部に位置する後連結部材24に連結されている。前記左側の連動リンク13は、前記左側の前揺動リンク11と後揺動リンク12とを連動させ、前記右側の連動リンク13は、前記右側の前揺動リンク11と後揺動リンク13とを連動させている。前記左右一対の前揺動リンク11,11の一方にリフトシリンダ15が連動されている。
【0016】
つまり、前記リンク機構10は、前記リフトシリンダ15によって一方の前揺動リンク11が揺動操作されると、左右一対の前揺動リンク11,11が回転支軸14による連動のために一体に揺動することによって車体フレーム4に対して上下に揺動操作され、草刈装置20を刈り刃ハウジング21の前後側に支持された接地ゲージ輪25が地面に接地した下降作業状態と、前記各接地ゲージ輪25が地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
【0017】
前記草刈装置20を下降作業状態にして自走車を走行させると、草刈装置20は、前記刈り刃ハウジング21の内部に刈り刃ハウジング横方向に並んで位置する二枚の刈り刃26を前記刈り刃駆動機構22によって刈り刃ハウジング上下向きの軸芯まわりに回転駆動して前記各刈り刃26によって草刈りを行い、刈り草を前記刈り刃26の回転によって発生した風によって刈り刃ハウジング21の上部に位置する刈り草排出ダクト27から排出する。
【0018】
前記刈り草排出ダクト27から排出された刈り草は、前記刈り刃26からの風による搬送作用と、自走車に前記左右一対の後車輪2,2の間を車体前後方向に通して設けてある搬送ダクト6による案内作用とによって前記集草容器32に送り込まれ、この集草容器32によって回収されて貯留される。
【0019】
図1に示すように、前記刈草回収装置30は、前記支持フレーム31の左右側から車体後方向きに上下揺動自在に延出した上下一対の昇降リンク33a,33bと、各昇降リンク33a,33bの遊端側に連結された容器支持体33cとを有したリンク機構33によって支持フレーム31の上端部と集草容器32の後端部とを連結している。この刈草回収装置30は、前記集草容器32の両横側に設けた昇降シリンダ34と、前記集草容器32の後部の下方に設けた一つのダンプシリンダ35とを備えている。
【0020】
つまり、前記刈草回収装置30は、前記左右一対の昇降シリンダ34,34によって前記リンク機構33を昇降操作して集草容器32を支持フレーム31に対して昇降操作し、前記ダンプシリンダ35によって集草容器32を回転支軸36の軸芯まわりに前記容器支持体33cに対して上下に揺動操作する。これにより、集草容器32は、車体の後方箇所に車体前後向き姿勢で位置するとともに前記搬送ダクト6に連通して搬送ダクト6からの刈り草を回収する下降回収状態と、車体の後方上方箇所に車体上下向き姿勢で位置するとともに排出口蓋32aが開閉リンク37の作用によって開き操作されて貯留していた刈り草を落下排出する上昇排出状態とに切り換え操作される。
【0021】
図2(a)は、前記自走車に設けた走行伝動装置50の側面図である。図2(b)は、前記走行伝動装置50の平面図である。これらの図と図1とに示すように、前記走行伝動装置50は、車体後部に設けた後輪駆動ケース51と、この後輪駆動ケース51の上端部に位置する入力ケース部51aの前部に連設された静油圧式無段変速装置52(以下、HST52と略称する。)と、前記エンジン5の出力軸の駆動力を取り出すようにエンジン5の後部に連設されたクラッチハウジング53と、このクラッチハウジング53の出力軸53aを前記HST52の入力軸としてのポンプ軸52aに一体回転自在に連結している回転軸54とを備えている。
【0022】
前記回転軸54と前記ポンプ軸52aとは、冷却ファン56を有した連結具57を介して連結されている。前記冷却ファン56は、前記HST52に冷却風を供給する。
【0023】
図5は、前記後輪駆動ケース51の縦断後面図である。この図と図2(a)、(b)とに示すように、前記後輪駆動ケース51は、前記入力ケース部51aを備える他、前記入力ケース部51aの車体左側の端部に上端部が連なっている車体上下向きの後輪伝動ケース部51bと、前記入力ケース部51aの車体右側の端部に上端部が連なっている車体上下向きの後輪伝動ケース部51bとを備えて構成してある。
【0024】
前記後輪駆動ケース51は、前記入力ケース部51aが前記搬送ダクト6の上方に車体左右向きに位置し、前記左右一対の後輪伝動ケース部51b,51bが前記搬送ダクト6の両横側に分散して位置する状態で車体フレーム4の左右一対のメインフレーム4aに支持されている。
【0025】
図1、図2(a)に示すように、前記左右一対の後輪伝動ケース部51b,51bは、車体側面視で上端側ほど車体前方側に位置した傾斜姿勢になっている。
つまり、前記搬送ダクト6は、これの車体上下方向高さが車体後方側に至るほど大になり、かつ搬送ダクト6の上壁6aが車体後方側に至るほど高い配置高さに位置した形体を備えている。後輪伝動ケース部51bは、前記傾斜姿勢により、搬送ダクト6の前記形体にかかわらず、かつ後車輪2の車体前後方向での配置にかかわらず、後輪駆動ケース51の上端側を低い配置高さに位置させている。
【0026】
図4,5に示すように、前記入力ケース部51aは、前記HST52のモータ軸52bに入力ギヤ60が連結している減速機構61と、この減速機構61の出力軸62に入力ギヤ63aが連動している差動機構63とを備えている。差動機構63の一方の出力軸63bに、デフロック部材64がスプライン構造により一体回転及びスライド自在に外嵌されている。デフロック部材64を差動機構63のケース部に咬合させることにより、差動機構63をデフロック状態とすることができ、デフロック部材64を差動機構63のケース部から離すことにより、差動機構63をデフ差動状態とすることができる。
【0027】
図2(b)、図5に示すように、前記各後輪伝動ケース部51bは、これの下端部に回転自在に設けた後車軸2aを備え、この後車軸2aを介して前記後車輪2を回転自在に支持している。前記各後輪伝動ケース部51bは、前記差動機構63の出力軸63bの端部に一体回転自在に設けた入力スプロケット65と、前記後車軸2aに一体回転自在に設けた後輪駆動スプロケット66と、この後輪駆動スプロケット66を前記入力スプロケット65に連動させている伝動チェーン67とを備えている。
【0028】
図3に示すように、前記HST52は、前記ポンプ軸52aを有したアキシャルプランジャ形でかつ可変容量形の油圧ポンプPと、この油圧ポンプPからの圧油によって駆動されるとともに前記モータ軸52bを有したアキシャルプランジャ形の油圧モータMとを備えて構成してある。このHST52は、前記油圧ポンプPが前記油圧モータMよりも低い配置高さに位置して前記回転軸54の前後傾斜を無くす取り付け姿勢で前記入力ケース部51aに支持されている。
【0029】
つまり、走行伝動装置50は、エンジン5の駆動力をクラッチハウジング53が備える主クラッチ機構と、前記回転軸54とを介してHST52のポンプ軸52aに伝達してこのHST52によって前進駆動力と後進駆動力とに変換し、かつ前進駆動力と後進駆動力とのいずれにおいても無段階に変速してモータ軸52bから出力し、この出力を後輪駆動ケース51の入力ケース部51aに入力ギヤ60によって入力し、入力した駆動力を差動機構63の左右の出力軸63b,63bに伝達し、左側の出力軸63bの駆動力を左側の後輪伝動ケース部51bによって左側の後車軸2aに伝達して左側の後車輪2を駆動し、右側の出力軸63bの駆動力を右側の後輪伝動ケース部51bによって右側の後車軸2aに伝達して右側の後車輪2を駆動する。
【0030】
図3に示すように、前記HST52は、このHST52におけるポートブロック52cに組み込まれたバイパスバルブ55を備えている。
【0031】
前記バイパスバルブ55は、前記ポートブロック52cから車体上方向きに突出した操作具55aによって開き状態と閉じ状態とに切り換え操作される。このバイパスバルブ55は、開き状態に切り換えられると、HST52における油圧ポンプPと油圧モータMとを接続する高圧側の駆動回路から低圧側の駆動回路に圧油が短絡して流れるように高圧側の駆動回路と低圧側の駆動回路とを連通させる。
【0032】
図6は、前記HST52を操作する変速操作装置70の側面図である。図7は、前記変速操作装置70の平面図である。これらの図に示すように、前記変速操作装置70は、運転部に設けた変速ペダル71と、この変速ペダル71を連結板72を介して支持する回転支軸73に一体回転自在に設けた連動部材74と、この連動部材74にジョイント75を介して前端側が連結された車体前後向きの連動ロッド76と、この連動ロッド76の後端側にジョイント77を介して連結された変速アーム78とを備えている。
【0033】
前記変速アーム78は、HST52の回転操作軸52dに一体回転自在に連結されている。この変速アーム78は、車体フレーム4に一端側が支持されたダンパー79の他端側に連結されている。
【0034】
つまり、変速操作装置70は、変速ペダル71が回転支軸73の軸芯まわりに中立位置N(図9(b)参照)から車体前方側あるいは車体後方側に踏み込み操作されることによってHST52を変速操作する。
【0035】
すなわち、変速ペダル71が車体前方側に踏み込み操作されると、連動部材74が回転支軸73の軸芯まわり変速ペダル71と共に車体前方側に揺動して連動ロッド76を引っ張り操作し、変速アーム78が変速操作軸52dの軸芯まわりに車体前方側に揺動操作されて変速操作軸52dを前進側に回転操作する。これによってHST52が前進側の駆動状態に変速操作される。
【0036】
変速ペダル71が車体後方側に踏み込み操作されると、連動部材74が回転支軸73の軸芯まわりに変速ペダル71と共に車体後方側に揺動して連動ロッド76を押し操作し、変速アーム78が変速操作軸52dの軸芯まわりに車体後方側に揺動操作されて変速操作軸52dを後進側に回転操作する。これによってHST52が後進側の駆動状態に変速操作される。
【0037】
図3に示すように、前記HST52のケーシング内の前部に、走行ブレーキ81が組み込まれている。この走行ブレーキ81は、前記モータ軸52bに摩擦制動力を付与することにより、左右一対の後車輪2,2にブレーキを掛ける。
【0038】
図6は、前記走行ブレーキ81を操作するブレーキ操作装置80の側面図である。図7は、前記ブレーキ操作装置80の平面図である。これらの図に示すように、前記ブレーキ操作装置80は、運転部に設けたブレーキペダル82と、このブレーキペダル82の回転支軸83に一体回転自在に設けた連動部材84と、この連動部材84に前端側が連結された車体前後向きの連動ロッド85と、この連動ロッド85の後端側にペダル側アーム86aが連結された連動リンク86と、この連動リンク86のブレーキ側アーム86bを挿通した車体上下向きの連動ロッド87と、この連動ロッド87の下端側に装着された連動バネ88と、前記連動ロッド87の上端側に連結されたブレーキ操作リンク89とを備えている。
【0039】
図3,7に示すように、前記ブレーキ操作リンク89の中間部は、前記走行ブレーキ81の回転操作軸81aに一体回転自在に連結されている。前記ブレーキ操作リンク89の前記連動ロッド87が連結している側とは反対側の端部にリターンバネ90が連結されている。
【0040】
つまり、ブレーキ操作装置80は、ブレーキペダル82が回転支軸83の軸芯まわりに踏み込み操作されることにより、走行用ブレーキ81を入り状態に切り換え操作する。
すなわち、ブレーキペダル82が踏み込み操作されると、連動部材84が回転支軸83の軸芯まわりにブレーキペダル82と共に車体前方側に揺動して連動ロッド85を引っ張り操作し、連動リンク86のブレーキ側アーム86bが回転支軸86cの軸芯まわりに下降側に揺動操作されて連動バネ88とバネ受け体91とを介して連動ロッド87を下降操作し、ブレーキ操作リンク89が回転操作軸81aの軸芯まわりに揺動操作されて回転操作軸81aをブレーキ入り側に回転操作する。これによって走行ブレーキ81が入り状態に切り換え操作される。
【0041】
図6,7に示すように、前記ブレーキ操作装置80は、前記連動部材84の近くで車体部分に回転支軸93を介して上下揺動自在に支持されたブレーキ維持アーム94と、前記回転支軸93の前記ブレーキ維持アーム94が連結している側とは反対側の端部に設けたロックレバー95とを備えている。
図8は、前記ブレーキ維持アーム94の作用状態での側面図である。この図に示すように、ブレーキペダル82を踏み込み操作した状態で、前記ロックレバー95によって前記回転支軸93を回転操作してブレーキ維持アーム94をリターンバネ96に抗して下降揺動操作する。すると、ブレーキ維持アーム94のフック部94aが、前記連動部材84に設けた丸棒形のロック部材97に係合してブレーキペダル82をこれのブレーキ切り位置への復元力に抗して踏み込み状態に維持する。これにより、ブレーキ維持アーム94は、走行ブレーキ81を入り状態に維持し、走行ブレーキ81を駐車ブレーキとして左右後輪2,2に作用させる。
前記ブレーキ維持アーム94は、前記ロックレバー95が解除側に揺動操作されることにより、上昇側に揺動操作されて前記ロック部材97から外れ、走行ブレーキ81の入り維持を解除する。
【0042】
図6,7に示すように、前記ブレーキ操作装置80は、前記連動部材84と前記回転支軸73とにわたって設けた中立操作機構100を備え、HST52が中立状態に復帰していないうちにブレーキペダル82による走行ブレーキ81の入り状態への切り換え操作が行われた場合、前記中立操作機構100によってHST52を中立状態に強制的に戻し操作する。
【0043】
すなわち、図6,7に示すように、前記中立操作機構100は、前記ロック部材97と、前記回転支軸73の端部に一体回転自在に設けた連係部材101とを備えて構成してある。
【0044】
前記連係部材101は、この連係部材101の前記回転支軸73の軸芯まわりでの回転方向に沿った長孔に近い融通孔部102と、この融通孔部102の長手方向に交差する方向に長いカム孔部103とを有した貫通孔104を備えている。前記ロック部材97は、前記貫通孔104を挿通した状態で前記連動部材84に支持されている。
【0045】
図9(a)は、前記ブレーキペダル82がブレーキ切り位置にあり、前記変速ペダル71が前進位置Fに踏み込み操作された状態での前記中立操作機構100の側面図である。図9(b)は、前記ブレーキペダル82がブレーキ切り位置にあり、前記変速ペダル71が中立位置Nに位置した状態での前記中立操作機構100の側面図である。図9(c)は、前記ブレーキペダル82がブレーキ切り位置にあり、前記変速ペダル71が後進位置Rに踏み込み操作された状態での前記中立操作機構100の側面図である。これらの図に示すように、ブレーキペダル82がブレーキ切り位置に位置している場合、ロック部材97が融通孔部102に位置して連係部材101の回転支軸73の軸芯まわりでの揺動を許容し、変速ペダル71によるHST52の変速操作を許容する。
【0046】
図9(d)は、ブレーキペダル82が踏み込み操作された状態での前記中立操作機構100の側面図である。この図に示すように、ブレーキペダル82が踏み込み操作されると、連動部材84の回転支軸83の軸芯まわりでの揺動のために、ロック部材97がカム孔部103に移動する。このとき、変速ペダル71が中立位置にまだ戻っていないと(前進側や後進側の踏み込み位置に位置していると)、ロック部材97がカム孔部103の内壁部に摺接して連係部材101を揺動操作し、これによって変速ペダル71を中立位置に強制的に戻し操作する。すなわち、HST52を中立状態に強制的に戻し操作する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】草刈機の全体側面図
【図2】(a)は、走行伝動装置の側面図、(b)は、走行伝動装置の平面図
【図3】静油圧式無段変速装置の縦断側面図
【図4】減速機構の平面図
【図5】後輪駆動ケースの縦断後面図
【図6】変速操作装置とブレーキ操作装置の側面図
【図7】変速操作装置とブレーキ操作装置の平面図
【図8】ブレーキ維持アームの作用状態での側面図
【図9】(a)は、ブレーキペダルがブレーキ切り位置で、変速ペダルが前進位置での中立操作機構の側面図、(b)は、ブレーキペダルがブレーキ切り位置で、変速ペダルが中立位置での中立操作機構の側面図、(c)は、ブレーキペダルがブレーキ切り位置で、変速ペダルが後進位置での中立操作機構の側面図、(d)は、ブレーキペダルが踏み込み状態での中立操作機構の側面図、
【符号の説明】
【0048】
2 後車輪
5 エンジン
6 搬送ダクト
20 草刈装置
51 後輪駆動ケース
51a 入力ケース部
51b 後輪伝動ケース部
52 静油圧式無段変速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に設けたエンジンと、左右一対の後車輪を駆動自在に支持するよう車体後部に設けた後輪駆動ケースと、前記エンジンからの駆動力を前進駆動力と後進駆動力とに変換して前記左右一対の後車輪に伝達する静油圧式無段変速装置と、草刈装置からの刈り草を車体後方側に搬送するよう前記左右一対の後車輪の間を通る搬送ダクトとを備えた草刈機であって、
前記後輪駆動ケースに、前記後車輪を下端部で支持するとともに前記搬送ダクトの両横外側に分散して位置する左右一対の車体上下向きの後輪伝動ケース部と、前記左右一対の後輪伝動ケース部の上端部に連なるとともに前記搬送ダクトの上方に位置する車体左右向きの入力ケース部とを備え、
前記静油圧式無段変速装置を、油圧ポンプが油圧モータよりも低い配置高さに位置する状態で前記入力ケース部の前部に連設するとともに前記入力ケース部に出力するよう構成してある草刈機。
【請求項2】
前記左右一対の後輪伝動ケース部が、車体側面視で上端側ほど車体前方側に位置した傾斜姿勢になっている請求項1記載の草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−4748(P2010−4748A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164523(P2008−164523)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】