説明

蓄電池用充放電装置

【課題】バス電圧を一定電圧に制御する制御部を一つの制御部で構成することにより、蓄電池の出力電流アンバランスを防止し、且つ調停回路などを不要とする蓄電池用充放電装置を提供する。
【解決手段】蓄電池用充放電装置は、各電圧源ユニットに設けられ、各電圧源ユニット流れる電池電流を検出する複数の電流センサと、複数の電流センサで検出した各電池電流の平均値又は加算値を求める電池電流演算部と、バス電圧と予め設定したバス電圧指令値との差に対応する値と前記各電池電流の平均値又は加算値とを比較し、この値に基づいて前記双方向チョッパを駆動するためのPWM信号を生成するPWM発生部と、前記PWM信号を前記双方向チョッパのそれぞれに分配するPWM分配部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個の蓄電池セルを直列接続した蓄電池群に双方向チョッパを接続し、この双方向チョッパを制御することにより、蓄電池群の充放電を行う、蓄電池用充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の蓄電池セルを直列接続した蓄電池群に双方向チョッパを接続した蓄電池用充放電装置は、例えば、発電機と電力系統を並列接続して負荷に電力を供給する電源システムに適用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に示される電源システムでは蓄電池として蓄熱部を使用しているが、今日では大型リチウム電池などの蓄電池群が直並列接続されることがある。
【0004】
図1は、特許文献1に示すような従来の電源システムにおいて、各々が蓄電池群を含む3個の電圧源ユニットU1〜U3を並列接続し、これらを双方向インバータINVを介して電力系統に接続した蓄電池用充放電装置を含む電源システムを示している。この電源システムでは、ソーラ発電装置G1、ディーゼル発電装置G2、風力発電装置G3などの発電装置と蓄電池用充放電装置と電力系統とが並列接続され、これらが連係して電力需要家Fに対して電力を供給する。
【0005】
図1の電源システムでは、発電装置群からの電力と電力系統からの電力との和に余剰電力があるときは、その余剰分をインバータINVを介して蓄電池群に蓄える。電力不足の場合は、逆に蓄電池群から不足分の電力を供給する。このようにすることで、電力系統への逆潮流を防止しつつ送電線の電力を一定にすることができ、それにより系統側負荷で消費される電力が増加しても、送配電線の増設工事をしなくてもすむ。
【0006】
電力平準化制御装置CNT0は、電力線に流れる電流(方向も)を検出することにより、蓄電池群B1〜B3から電力需要家F(負荷)に供給するべき電力、又は蓄電池群B1〜B3に充電するべき電力を検出する。この検出した電力の指令値を交流電力指令値と称する。
【0007】
蓄電池用充放電装置の各電圧源ユニットU1〜U3は、複数個の蓄電池セルを直列接続した蓄電池群B1〜B3とこれに直列接続した双方向チョッパC1〜C3とで構成されている。インバータINVは、その出力側にリアクトルを接続し、リアルトルの系統側電圧に対してリアクトルのインバータアーム側電圧の振幅を交流電力指令値に基づいて調整することにより、電力を生成して系統側に出力したり、逆に系統側から電力を入力(吸収)する。電力を生成して系統側に出力するときは蓄電池群B1〜B3から放電し、系統側から電力を入力(吸収)するときは蓄電池群B1〜B3を充電する。
【0008】
ここで、電力不足時にインバータINVから負荷に電力を供給するためには、必要とされる交流電力を迅速且つ正確に生成する必要がある。そのため、インバータINVの入力電圧を一定に維持する必要がある。そこで、双方向チョッパC1〜C3は、バスに接続されている電圧安定化用のコンデンサCの電圧、すなわちバス電圧が一定値になるように電池電流を調整して充放電量を制御する。双方向チョッパC1〜C3は、このバス電圧が一定の値よりも上昇しようとすると電池電流を減少させ、バス電圧が一定の値よりも下降しようとすると電池電流を増加させる。これにより、不足電力の供給(放電)には、一定の値に維持されたバス電圧を直流電源として、インバータINVから負荷が必要とする不足電力を供給することができる。また、余剰電力の吸収(充電)時には、バス電圧が一定の値になるように双方向チョッパC1〜C3を制御して、蓄電池群B1〜B3の電池電流(充電電流)を制御し、全ての蓄電池群B1〜B3の蓄積エネルギーが一致するようにする。なお、双方向チョッパC1〜C3は、全て同一方向(充電電流方向又は放電電流方向)に電流が流れるように制御される。また、双方向チョッパC1〜C3は、それぞれ独立してひとつのバス電圧を一定にするように作動する。
【0009】
図2は、制御回路CNTの具体的構成を含む蓄電池用充放電装置の構成図である。
【0010】
制御回路CNTは、制御部CNT1〜CNT3で構成され、それぞれの出力(ゲートパルス信号)は、双方向チョッパC1〜C3に入力する。また、蓄電池群B1〜B3と双方向チョッパC1〜C3との接続ラインには電池電流センサIS1〜IS3が配置されており、この電流センサIS1〜IS3での検出値は各々制御部CNT1〜CNT3に入力される。また、双方向チョッパC1〜C3の出力と双方向インバータINVとの接続ライン(バス)BSにはバス電圧安定化のためのコンデンサCが接続されている。
【0011】
制御部CNT1は、バス電圧一定制御部A1と電池電流一定制御部B1とで構成される。バス電圧一定制御部A1は、バス電圧と予め設定されているバス電圧指令値とを比較し、制御部A1での誤差増幅演算値を電池電流一定制御部B1に入力する。この誤差増幅演算値は電池電流指令値である。電池電流一定制御部B1は、電池電流指令値と電流センサIS1の検出値とを比較し、その誤差増幅演算値に対応するゲートパルス(PWM信号)を生成して双方向チョッパC1に入力する。双方向チョッパC1は、充電時、放電時それぞれにおいて、スイッチングのための素子を切り替え、ゲートパルスの長さに応じて該素子をスイッチングする。
【0012】
すなわち、充電時、放電時それぞれにおいて、制御部CNT1のバス電圧一定制御部A1は、バス電圧が充電時と放電時それぞれにおいて設定したバス電圧指令値に一致するように電池電流指令値を生成し、電池電流一定制御部B1は、電流センサIS1の検出値が電池電流生成値に一致するようにゲートパルスを生成する。これにより、バス電圧が、充電時と放電時それぞれにおいて設定した電圧指令値に一致するようにゲートパルスが制御されることになる。
【0013】
他の制御部CNT2、3においても同様な制御を行う。なお、制御部CNT1〜CNT3にそれぞれ設定されているバス電圧指令値は同じ値である。
【0014】
以上の構成から、各電圧源ユニットU1〜U3は、それぞれ独立して、バス電圧が予め設定されているバス電圧指令値に一致するように、充放電動作する。また、インバータINVは、双方向チョッパから供給される蓄電池群からのエネルギーによって、不足電力を生成し、双方向チョッパから蓄電池に充電電流を供給して、余剰電力を蓄電池群に吸収(充電)させる制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2007/066707号国際公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記の蓄電池用充放電装置では、各双方向チョッパC1〜C3が、各々独立してバス電圧を一定にしようと動作するために、バス電圧の上下動が生じやすくなる。また、各電圧源ユニットU1〜U3にそれぞれ双方向チョッパを備えて、これらを個別の制御部で制御しているために、各ユニット毎の出力電流を精密に一定に制御することは困難であった。すると、インバータINVが迅速且つ正確に、必要とされる電力を生成することができないおそれがあった。
【0017】
これを解決するためには、各制御部CNT1〜CNT3の操作量を調停するための回路が別途必要であり、回路構成が複雑化する不都合があった。
【0018】
そこで、双方向チョッパではなく、インバータINVがこのバス電圧を一定にするように動作することが考えられる。しかし、インバータINVでバス電圧を一定にさせるには、全体として応答遅れが生じやすい問題がある。特に、バスには電圧安定化のためのコンデンサCが接続されているため、この容量による応答遅れが生じやすく、その結果、余剰電力時に、余剰分が系統側に逆に流れる逆潮流が発生したり、電力不足時に、必要とされる電力供給に時間がかかり、負荷の急変に対応することができないといった問題があった。
【0019】
また、図2の例では、複数の制御部で独立して各蓄電池群の充電(放電)電流を制御しているため、回路要素のばらつきや、上述のバス電圧の変動の影響などにより、蓄電池群B1〜B3の充電(放電)電流がばらばらになり、蓄電池に蓄積されるエネルギーに差ができることがある。すると、放電時には何れか一つの蓄電池郡が放電完了したときに、充電時には何れか一つの蓄電池群が充電完了したときに、全ての双方向コンバータC1〜C3を停止させて、充放電を終了させることになる。そうすると、まだ充電又は放電可能な蓄電池群が存在するため、複数の蓄電池群からなる電源としての能力を十分に発揮することができないことがあった。
【0020】
この発明の目的は、複数の充放電装置が、互いに緩衝することなく単一のバス電圧を一定に制御することができる蓄電池用充放電装置を提供することにある。
【0021】
また、この発明の他の目的は、バス電圧を一定電圧に制御する制御部を一つの制御部で構成することにより、各電圧源ユニットの出力電流がアンバランスとなるのを防止し、且つ調停回路などを不要とする蓄電池用充放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
蓄電池用充放電装置は、複数個の電圧源ユニットと、複数の電圧源ユニットの各出力電圧をバス電圧として合成するコンデンサと、バス電圧が入力され、交流電源に接続される双方向インバータとを備えている。双方向インバータは、外部から入力される交流電力指令値に対応する電力を出力し、又は入力させる。
【0023】
各電圧源ユニットは、複数個の蓄電池セルを直列接続した蓄電池群に双方向チョッパを接続して構成される。
【0024】
上記の構成の蓄電池用充放電装置において、この発明は、
前記各電圧源ユニットに設けられ、各電圧源ユニット流れる電池電流を検出する複数の電流センサと、
前記複数の電流センサで検出した各電池電流の平均値又は加算値を求める電池電流演算部と、
前記バス電圧と予め設定したバス電圧指令値との差に対応する値と前記各電池電流の平均値又は加算値とを比較し、この値に基づいて前記双方向チョッパを駆動するためのPWM信号を生成するPWM発生部と、
前記PWM信号を前記双方向チョッパのそれぞれに分配するPWM分配部と、
を備えている。
【0025】
双方向チョッパは、前記PWM信号に基づいて動作するだけであって、インバータから電流方向を決める充放電信号に基づいて電流方向を決めるように制御されない。したがって、双方向チョッパは、バス電圧を一定にする動作に専念する。また、双方向インバータは、バス電圧が一定になるように制御されるのではなく、交流電力指令値に対応する電力を系統側に出力するよう、又は系統側から入力するように制御される。双方向インバータは、双方向チョッパによって一定値に制御されたバス電圧に基づいて、交流電力指令値に対応する電力を出力又は入力(吸収)することに専念する。このように、双方向チョッパは、バス電圧を一定にする動作に専念し、双方向インバータは、交流電力指令値に対応する電力を出力又は入力(吸収)することに専念することから、バス電圧の変動による応答遅れがなくなり、それ故、応答性を向上することができる。
【0026】
また、電池電流演算部は、各電圧源ユニットの電池電流の変位が現れる、それらの電池電流の平均値又は加算値(以下、平均値等)を検出しているため、バス電圧を一つの制御部で制御出来る。これにより、各ユニットに制御部を設ける従来の構成に比較して制御部間の調停回路が不要となる。
【0027】
また、この発明の別の態様では、各電圧源ユニット列の電池電流の平均値等から生成したPWM信号を、各電池電流の大小に応じて台形波により微調整する。これにより、各電圧源ユニット列の電池電流が一致する精度を高めることができる。
【0028】
また、この発明のさらに別の態様では、各電圧源ユニット列の電池電圧と、その平均値等との電池電圧差分を検出し、この差分に基づいて、前記電池電流の平均値等を補正することにより、前記電池電流差分を補正する。これにより、各電圧源ユニット列の充電電圧が一致する精度を高めることが出来る。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、応答性を向上することができ、また、バス電圧を一つの制御部で制御出来るため、各電圧源ユニットに制御部を設ける従来の構成に比較して制御部間の調停回路が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】蓄電池用充放電装置の基本構成例を示す。
【図2】従来の蓄電池用充放電装置のブロック図を示す。
【図3】この発明の第1の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図を示す。
【図4】この発明の第2の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図を示す。
【図5】矩形波/台形波変換部の動作を示す図
【図6】この発明の第3の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図を示す。
【図7】第3の実施形態の蓄電池用充放電装置の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図3は、この発明の第1の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図である。
【0032】
この蓄電池用充放電装置は、3つの電圧源ユニット1〜3と、これらのユニット1〜3の各出力電圧をバス電圧として合成し、且つバス電圧を安定化するためのコンデンサ4と、バス電圧が入力され、交流電源5に接続される双方向インバータ6とを備えている。双方向インバータ6は、電力平準化制御装置CNT0が接続されている。電力平準化制御装置CNT0は、インバータ6に対して交流電力指令値を出力し、インバータ6は、この指令値に基づいて電力を系統側に放出(出力)し、又は、系統側から電力を吸収(入力)する。電力平準化制御装置CNT0は、電力線に流れる電流(方向も)を検出することにより、蓄電池群B1〜B3から電力需要家F(負荷)に供給するべき電力、又は蓄電池群B1〜B3に充電するべき電力を検出する。なお、図示はしていないが、図1と同様に、発電機群が系統に並列的に接続されている。
【0033】
電圧源ユニット1〜3は、それぞれ、複数個のリチウム電池セルを直列接続したリチウム電池群100、200、300と、それらのリチウム電池群に直列に接続した双方向チョッパ101、201、301とを備えている。双方向チョッパ101、201、301は、双方向に電力変換することができる回路で構成される。この回路は、例えば、直列接続された2つのスイッチング素子と、各スイッチング素子に逆並列接続されたフライホイールダイオードと、2つのスイッチング素子の接続点に接続されたインダクタンス成分とで構成される。
【0034】
充電時は、第1のスイッチング素子をオン、第2のスイッチング素子をオフするPWM信号により、第1のスイッチング素子のオン期間において、交流電源側からインダクタンスを介してリチウム電池群に対して充電を行う。放電時は、第1のスイッチング素子をオフ、第2のスイッチング素子をオンするPWM信号により、第2のスイッチング素子のオン期間において、リチウム電池群から第2のスイッチング素子に対しての放電を行い、第2のスイッチング素子のオフ期間において、放電時にインダクタンスに蓄積されていたエネルギーを第1のスイッチング素子に接続されているフライホイールダイオードを介して交流電源側に回生する。このような構成の双方向チョッパについては、上記特許文献1に詳細に記述されているように周知技術である。
【0035】
双方向インバータ6も、上記双方向チョッパと同様にスイッチング素子と、これに逆並列接続されたフライホイールダイオードと、エネルギー蓄積用のインダクタンスとの組み合わせで構成される。これについての詳細の動作説明についてはここでは省略する(上記特許文献1に詳細に記述されているように周知技術である)。
【0036】
電圧源ユニット1〜3は、さらに、各ユニットに流れる電池電流を検出する電流センサ102、202、302を備えている。これらの電流センサは、それぞれ、リチウム電池群100、200、300に流れる充電電流及び放電電流を検出する。
【0037】
蓄電池用充放電装置は、さらに、電池電流演算部7を構成する平均電流値演算部70と、制御部8と、PWM分配部9を構成する分配部90とを備える。
【0038】
平均電流値演算部70は、電圧源ユニット1〜3の各電流センサ102、202、302で検出した各電池電流i1〜i3の平均値である平均電流iAVEの演算を行う。この演算部7は、各電池電流i1〜i3の平均値を演算する。平均値に代えて、各電池電流i1〜i3の変位量が反映される他の信号値、例えば電池電流i1〜i3の加算値を演算して出力するものであっても良い。
【0039】
制御部8は、双方向チョッパ101等をオンオフ制御するためのゲートパルスであるPWM信号を生成する。
【0040】
この制御部8は、バス電圧誤差増幅部80と、平均電流誤差増幅部81と、PWM発生部82とで構成される。バス電圧誤差増幅部80は、バス電圧Vcと予め設定したバス電圧指令値Vmとの差(誤差)を検出し、これを電池電流平均指令値Imとして平均電流誤差増幅部81に入力する。平均電流誤差増幅部81は、上記電池電流平均指令値Imと上記平均電流iAVEとを比較し、その値(誤差)をPWM発生部82に入力する。PWM発生部82は、誤差に応じてパルス幅が異なるPWM信号を生成して分配部90に入力する。分配部90は、PWM信号を同一タイミングですべての双方向チョッパ101等にゲートパルスとして供給する。なお、充電モード時は、第1のスイッチング素子に対してPWM信号を供給し、第2のスイッチング素子はオフする。放電モード時は、第2のスイッチング素子に対してPWM信号を供給し、第1のスイッチング素子はオフする。
【0041】
上記の構成で、平均電流誤差増幅部81は、充電モード時及び放電モード時において、平均電流iAVEと電池電流平均指令値Imの差(誤差)がゼロとなるまでPWM発生部82を制御する。
【0042】
一方、バス電圧誤差増幅部80においても、バス電圧Vcとバス電圧指令値Vmとの差(誤差)がゼロとなるまで電池電流平均指令値Imを制御する。バス電圧指令値Vmは、充電モード時及び放電モード時で同じ値に設定される。
【0043】
したがって、制御部8は、バス電圧Vcがバス電圧指令値Vmに一致するように双方向チョッパ101、201、301を同時に制御する。このようにして、一つの制御部8で、バス電圧Vcが一定の電圧になるように制御することが出来る。
【0044】
インバータ6は、図1の従来の装置において採用されていないような各双方向チョッパ101、201、301に対する制御を行っていない。すなわち、双方向チョッパ101、201、301の充電又は放電を行うための充放電制御信号を各双方向チョッパ101、201、301に出力しない。また、インバータ6は、電力平準化制御装置CNT0から入力される交流電力指令値に一致する電力を負荷側(一般電力需要家F側)の線路に出力し(電力不足時)、又は線路から電力を吸収する(電力余剰時)。したがって、インバータ6は、交流電力指令値に対応する交流電力を生成することに専念し、双方向チョッパ101、201、301はバス電圧を一定にすることに専念する。双方向チョッパ101、201、301は、インバータ6からの充放電制御信号により電流方向を制御するではなく(同信号は双方向チョッパに入力されていない)、インバータ6の上記の動作によりバス電圧が変動しようとしたときに、その電圧を一定にするように電流方向が決まる。したがって、インバータ6がバス電圧を一定にするように制御しないので、インバータ6による応答遅れは生じない。
【0045】
また、一つの制御部8で、バス電圧Vcが一定の電圧になるように制御するから、この装置では調停回路などが不要である。したがって、全体として部品点数を削減でき、小型化、コストダウン化を行うことが出来る。
【0046】
上記第1の実施形態の装置では、PWM信号を各ユニットに供給するための制御系の伝達特性に差があるため、電池電流i1〜i3にバラツキが生じてしまう。この電池電流i1〜i3の電流差が僅かであったとしても、長時間異なる充電電流で各電池セルを充電した場合、充電が完了した電池群とそうでない電池群とが混在してしまい、そのまま充電を継続すると先に充電を完了した電池群は過充電となって発火等を起こす可能性がある。また、放電時では、過放電になった電池群は寿命が短くなってしまう。このような問題を解決する一つの手法は、過充電及び過放電を避けるための保護回路を設けることである。例えば、各電池群の電池電圧を監視し、いずれかの電池群の充電(又は放電)が完了したことを検出すると、双方向チョッパを完全オフして、電池群への充電(放電)を完全停止して保護する。しかし、このような保護回路では、満充電になっていない電池群は十分にその性能を発揮できなくなる不都合がある。
【0047】
図4は、上記の不都合を改善することの出来る、この発明の第2の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図である。
【0048】
構成において、図3の装置と相違する点は、電池電流演算部7の構成と、PWM分配部9の構成である。
【0049】
電池電流演算部7は、平均電流値演算部70と、電池電流誤差増幅部71〜73とで構成される。平均電流値演算部70は、第1の実施形態と同様に電池電流i1〜i3の平均値である平均電流iAVEを求め、電池電流誤差増幅部71は電池電流i1と上記平均電流iAVEとの差(電池電流差分。厳密には誤差増幅値)i1−iAVEを求め、電池電流誤差増幅部72は電池電流i2と上記平均電流iAVEとの差(電池電流差分。厳密には誤差増幅値)i2−iAVEを求め、電池電流誤差増幅部73は電池電流i3と上記平均電流iAVEとの差(電池電流差分。厳密には誤差増幅値)i3−iAVEを求める。
【0050】
また、PWM分配部9は、矩形波/台形波変換部90と、PWMコンパレータ91〜93とで構成される。
【0051】
矩形波/台形波変換部90は、矩形波のPWM信号を台形波に変換し、PWMコンパレータ91〜93は、台形波と電池電流差分(厳密には誤差増幅値)i1−iAVE〜i3−iAVEとを比較し、台形波を電池電流差分(厳密には誤差増幅値)i1−iAVE〜i3−iAVEで切った位置での矩形波をPWM微調整信号として出力する。
【0052】
電池電流i1に関しての動作を説明する。
【0053】
平均電流値演算部70で求めた平均電流iAVEは、電池電流誤差増幅部71に入力され、電池電流誤差増幅部71において平均電流iVAEと電池電流i1とが比較され、その差である電池電流差分(厳密には誤差増幅値)i1−iAVEがPWMコンパレータ91に出力される。実施形態1と同様に、PWM発生部82は、平均電流iAVEと電池電流平均指令値Imとの誤差をゼロにするような矩形波状のPWM信号を生成してPWM分配部9に出力するが、この矩形波状のPWM信号は、PWM分配部9の矩形波/台形波変換部90において台形波に変換される。
【0054】
本実施形態では、上記PWM信号の矩形波の幅が、台形波の高さが2分の1のときの波形幅に一致するように波形変換を行う。図5はこの変換の内容を示している。図示のように、電池電流差分i1−iAVE=0のときは、PWM信号(幅)=PWM微調整信号(幅)となる。したがって、電池電流差分i1−iAVE>0のときは、PWM信号(幅)>PWM微調整信号(幅)となる。
【0055】
また、電池電流差分i1−iAVE<0のときは、PWM信号(幅)<PWM微調整信号(幅)となる。
【0056】
PWM信号の微調整を行うPWM分配部9は、平均電流iVAEと電池電流i1とが同じであるときは、PWM信号の微調整を行う必要がないため、PWM信号(幅)=PWM微調整信号(幅)とする。電池電流i1が平均電流iVAEよりも大きいときは、電池電流i1を下げることが望ましい。そこで、PWM信号(幅)>PWM微調整信号(幅)となるように台形波の傾きを利用して微調整を行う。反対に、電池電流i1が平均電流iVAEよりも小さいときは、電池電流i1を上げることが望ましい。そこで、PWM信号(幅)<PWM微調整信号(幅)となるように台形波の傾きを利用して微調整を行う。
【0057】
そして、上記の微調整は、各電圧源ユニット毎に独立して行われる。
【0058】
このように、各電圧源ユニットの電池電流の平均値(平均電流)から生成したPWM信号を、各ユニットの電池電流の大小に応じて台形波によって微調整することで、各ユニットの電池電流を一致させることが出来る。
【0059】
本実施形態では、PWM信号を左右対称な台形波を用いて微調整しているが、台形波は左右非対称であっても良いし、台形波に代えて三角波や鋸歯状波を用いることも出来る。すなわち、波形に傾きを持つものであればどのようなものでも良い。しかし、台形波は他の波形に比べて傾きが相対的に緩やかとなるため、微調整を行う観点からは台形波を用いるのが望ましい。
【0060】
上記第2の実施形態の装置では、各電圧源ユニットの電池電流が同じになるように制御されても、電池セルの個体差や、初期の電池充電量の差により、長時間の充電を行った後に各電池群の電池電圧が揃わなくなる可能性がある。したがって、第1の実施形態と同様な問題を起こす可能性がある。
【0061】
図6は、上記の不都合を解消することの出来る、この発明の第3の実施形態の蓄電池用充放電装置のブロック図である。
【0062】
構成において、図4の装置と相違するのは、電池電流演算部7の構成が異なる点と、電池電圧演算部11を新たに設けた点である。
【0063】
電池電圧演算部11は、平均電圧値演算部110と、電池電圧誤差増幅部11〜113とで構成される。電池電圧誤差増幅部111〜113は、電池電圧差分検出部を構成する。
【0064】
平均電圧値演算部110は、各電圧源ユニット1〜3の電池電圧v1〜v3の平均値である平均電圧vAVEを求める。この演算部110も、平均電流値演算部70と同様に、平均値ではなく加算値(加算電圧)を演算するようにしても良い。
【0065】
電池電圧誤差増幅部111は電池電圧v1と上記平均電圧vAVEとの差(電池電圧差分)Δv1を求め、電池電圧誤差増幅部112は電池電圧v2と上記平均電圧vAVEとの差(電池電圧差分)Δv2を求め、電池電圧誤差増幅部113は電池電圧v3と上記平均電圧vAVEとの差(電池電圧差分)Δv3を求める。
【0066】
電池電流演算部7は、図4の構成に対して、さらに補正部である加算部74〜76を備えている。加算部74は、上記電池電圧誤差増幅部111の出力である電池電圧差分Δv1の値を平均電流iAVEに加算する。すなわち、平均電流iAVEに電池電圧差分Δv1を加算することにより、PWM信号を微調整するための操作量(電池電流差分i1−iAVE)を電池電圧差分Δv1の分だけさらに微調整する。加算部75、76についても同様である。
【0067】
なお、図6では、加算部74〜76において、平均電流iAVEと電池電圧差分Δv1〜v3とをそれぞれ加算して電池電流誤差増幅部71〜73に入力しているが、これに代えて、図7に示すように、加算部74〜76において、入力電流i1〜i3と電池電圧差分Δv1〜v3とをそれぞれ加算して電池電流誤差増幅部71〜73に入力するようにしても良い。いずれの場合も、電池電圧差分Δv1〜v3に基づいて、電池電流差分i1−iAVE〜i3−iAVEの操作量を補正することになる。
【0068】
このように、各電圧源ユニットの電池電圧の大小に応じた操作量を加味してPWM信号を微調整するため、各ユニットの電池電圧の一致を図ることが出来る。このとき、電池電圧の大小に応じた操作量が平均電流値iAVEに加算されるから、各ユニットの電池電流の一致に優先して電池電圧の一致が図られる。このため、例えば、初期の充電電圧が異なる電池群を充電する場合でも、徐々に各電池群の電池電圧が一致していく。したがって、すべての電池群の電池電圧を等しくすることができ、蓄えられたエネルギーを有効活用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1〜3−電圧源ユニット
100、200、300−リチウム電池群
101、201、301−双方向チョッパ
102、202、302−電流センサ
6−双方向インバータ
7−電池電流演算部
8−制御部
9−PWM分配部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の蓄電池セルを直列接続した蓄電池群に双方向チョッパを接続した複数個の電圧源ユニットと、
前記複数個の電圧源ユニットの各出力が接続されるバスと、
前記バスに接続され、前記複数の電圧源ユニットの各出力電圧をバス電圧として合成するコンデンサと、
前記バスと電力系統間に接続され、外部から入力される交流電力指令値に対応する電力を電力系統側に出力し、又は電力系統側から入力させる双方向インバータと、
前記各電圧源ユニットに設けられ、各電圧源ユニットに流れる電池電流を検出する複数の電流センサと、
前記複数の電流センサで検出した各電池電流の平均値又は加算値を求める電池電流演算部と、
前記バス電圧と予め設定したバス電圧指令値との差に対応する値と前記各電池電流の平均値又は加算値とを比較し、この値に基づいて前記双方向チョッパを駆動するためのPWM信号を生成する制御部と、
前記PWM信号を前記双方向チョッパのそれぞれに分配するPWM分配部と、
を備えてなる蓄電池用充放電装置。
【請求項2】
前記電池電流演算部は、前記各電池電流の平均値又は加算値と前記電流センサにより検出された電池電流との差に対応する電池電流差分を検出する電池電流差分検出部を備え、
前記PWM分配部は、
前記PWM信号が入力され、該PWM信号を台形波信号に変換する波形変換部と、
前記台形波信号を、電池電流差分に対応する値に基づいて微調整されたPWM微調整信号に変換し、この信号を前記双方向チョッパのそれぞれに分配するPWM微調整部と、を備える、請求項1記載の蓄電池用充放電装置。
【請求項3】
前記波形変換部は、PWM信号の矩形波の幅が、台形波の高さが2分の1のときの波形幅に一致するように波形変換を行う、請求項2記載の蓄電池用充放電装置。
【請求項4】
前記波形変換部は、前記PWM信号を台形波信号に代えて三角波信号に変換し、
前記PWM微調整部は、前記三角波信号を、電池電流差分に対応する値に基づいて微調整されたPWM微調整信号に変換し、この信号を前記双方向チョッパのそれぞれに分配する、請求項2記載の蓄電池用充放電装置。
【請求項5】
前記複数の電圧源ユニットの各電池電圧の平均値又は加算値を求める電池電圧演算部を備え、
前記電池電圧演算部は、前記各電池電圧の平均値又は加算値と前記各電池電圧との差に対応する電池電圧差分を検出する電池電圧差分検出部を備え、
前記電池電流演算部は、前記電池電圧差分に基づいて、前記電池電流差分を補正する補正部、を備える請求項2記載の蓄電池用充放電装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記電池電圧差分に基づいて、前記各電池電圧の平均値又は加算値を補正する請求項5記載の蓄電池用充放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10502(P2012−10502A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144835(P2010−144835)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】