蛍光ランプおよびその製造方法
【課題】石英ガラスからなる発光管と、励起されることにより紫外光を放射する蛍光体層とを備えた蛍光ランプにおいて、製造時に焼成工程を減らして1回で済むようにして、製造にかかるコストおよび時間を低く抑えつつ、発光管に蛍光体層を強固に安定的に保持・形成することができる蛍光ランプの構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光体層が、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むものであり、好ましくは、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、該蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であり、更に好ましくは、前記シリカ粒子の平均粒径が10〜50nmである。また、蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子とシリカ粒子などと有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製し、これを石英ガラスからなる管に塗布し、乾燥および焼成する。
【解決手段】蛍光体層が、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むものであり、好ましくは、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、該蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であり、更に好ましくは、前記シリカ粒子の平均粒径が10〜50nmである。また、蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子とシリカ粒子などと有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製し、これを石英ガラスからなる管に塗布し、乾燥および焼成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蛍光ランプおよびその製造方法に関するものであり、特に、紫外光を放射する蛍光ランプおよびその製造方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近時、光触媒や、広義の樹脂硬化、除菌、美容、医療などの様々な分野で、波長300nm付近の紫外光が利用されている。このような光の光源としては、波長250〜380nm近傍に強度ピークを有する蛍光体が発光管内面に塗布された蛍光ランプが使用される。
このような紫外光を放射する蛍光ランプにおいては、発光管内において放電によって比較的短波長、例えば200nm以下、の紫外光を得て、この紫外光を蛍光体層に照射して該蛍光体を励起させ所定波長領域、例えば前記250〜380nm、の光に変換するものであって、こうして得られた所定波長領域の紫外光は、蛍光体層および発光管を透過して、外部に放射されるものであり、原理的には可視光を得る蛍光ランプと同様である。
【0003】
ところで、紫外光を放射する蛍光ランプのなかでも、例えば前記した波長250〜380nm付近の比較的短波長の紫外光を放射する蛍光ランプにおいては、発光管を構成するガラスの材質によっては、該紫外光が吸収されてしまうことから、当該紫外光を効率よく放射させるためには発光管を石英ガラスで構成することが望ましい。
しかしながら、石英ガラスは軟化点が高いことから、蛍光体を石英ガラスからなる発光管に安定的に保持させることが難しいという問題がある。
そこで、例えば特開2010−056007号公報(特許文献1)や特開2010−153054号公報(特許文献2)に開示される技術のように、石英ガラス上に薄い低融点のガラス層を形成して、蛍光体と石英ガラスとの密着性を高める技術が採用されている。
このうち、特許文献1に記載の技術は、蛍光体を塗布する前段階で発光管の内周面上に低融点ガラス粉末の薄い層を焼成・形成し、その後、蛍光体スラリーを塗布してこれを焼成する構造としたものである。この構造により、蛍光体の焼成温度を低く抑えることができて、石英ガラス製の発光管に安定的に保持させようとするものであり、図10、図11を参照して、この技術を説明する。
【0004】
図10は、従来技術にかかる蛍光ランプ20を、管軸に対して垂直方向に切断した断面図であり、(A)は全体断面図、(B)はそのX部の拡大断面図である。発光管21は石英ガラスからなり、その内面上に低融点ガラス粉末の層22が形成され、この上に蛍光体層23が積層されて構成される。そして、発光管21の外壁には対向する一対の外部電極24、24が設けられる。
このような蛍光ランプは、概ね図11で示す製造工程のフローチャートの手順に従って作製される。
図11に示すように、先ず、(1)ガラス粉末スラリー液を調製し、(2)これを石英ガラス管内面に塗布、乾燥する。(3)ガラス粉末層を石英ガラス管に定着させるために高温で焼成し、冷却する。この焼成の条件は約500〜1000℃であり、所定温度に到達したのち0.2〜1h保持する。
次いで、(4)蛍光体スラリー液を調製し、(5)低融点ガラス粉末層を形成した石英ガラス管に塗布し、乾燥させる。その後、(6)焼成し、冷却する。この焼成温度は約500〜800℃であり、0.2〜1h保持する。こうして、(7)発光管を形成した後、発光管内部を排気し希ガスなどの所定の封入物を封入し、封止する。そして、(8)発光管外部に電極を形成して、蛍光ランプが完成する。
【0005】
このように、上記の技術においては、石英ガラス製の発光管内面に低融点ガラス層を形成する段階で発光管を高温に加熱する工程と、後続する蛍光体の焼成工程との併せて2回の加熱処理工程が必要となり、製造工程で大きな熱量と作業時間がかかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−056007号公報
【特許文献2】特開2010−153054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、石英ガラスからなる発光管と、励起されることにより紫外光を放射する蛍光体層とを備えた蛍光ランプにおいて、製造時に焼成工程を減らして1回で済むようにして、製造にかかるコストおよび時間を低く抑えつつ、発光管に蛍光体層を強固に安定的に保持・形成することができる蛍光ランプの構造およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、上記課題を解決するために、発光管内面に形成する蛍光体層を、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むものから構成したことを特徴とするものである。
また、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、前記蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることを特徴とする。
更には、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする。
また、本発明の紫外線を放射する蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子とシリカ粒子と有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製する工程と、前記蛍光体塗布液を石英ガラスからなる管に塗布する工程と、前記蛍光体塗布液を乾燥させたのち後、蛍光体およびシリカ粒子を焼成する工程とを含むことを特徴とする。
また、前記蛍光体塗布液を調製する工程において、シランカップリング剤による表面処理を施したシリカ粒子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の蛍光ランプによれば、蛍光体層が蛍光体粒子とシリカ粒子とから構成されているので、その製造工程において低融点ガラス層を形成するために加熱焼成する工程を経ることなく、蛍光体層を直接発光管に塗布し焼成するという一度の工程で、十分な結着性をもって発光管に安定的に付着させることができ、低熱量で生産性が良好な蛍光ランプを提供することができる。
そして、シリカ粒子の平均粒径が10〜100nmであり、蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることで、上記結着性の改善に加えて、シリカ粒子による紫外光の拡散を少なくでき、従来技術より以上の、或いはそれと同等程度の強度で紫外光を放射することができ、更に好ましくは、平均粒径を10〜50nmとすることによって、従来技術以上の紫外光強度を得ることができる。
この発明の蛍光ランプの製造方法によれば、石英ガラスからなる発光管を備えた紫外光を放射する蛍光ランプにおいて、製造時に焼成工程を減らして1回で済むようにして、製造にかかるコストおよび時間を低く抑えつつ、発光管に蛍光体層を強固に安定的に保持・形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蛍光ランプの全体斜視図。
【図2】図1の横断面図。
【図3】図2のA部の拡大断面図。
【図4】本発明の蛍光ランプの製造方法を示すフローチャート。
【図5】本発明の他の実施例の断面図。
【図6】図5のB部の拡大断面図。
【図7】本発明の効果を示す実験結果を表す表。
【図8】本発明の蛍光ランプの結着性を測定するための装置例。
【図9】本発明の蛍光ランプの紫外光の照度測定をするための装置例。
【図10】従来例の断面図。
【図11】従来例の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の蛍光ランプの全体を示す斜視図、図2はその横断面図、図3は図2のA部拡大断面図である。
図において、蛍光ランプ1は、略矩形箱状の放電空間を備えてなるものであり、石英ガラスなどの紫外光透過性を有する誘電体よりなる発光管2の上面と下面に一対の外部電極3、4を備えて構成されたものである。
発光管2内には、エキシマ放電用のガスが所定の封入量で封入され、例えば放電ガスとしてキセノンガスが10〜70kPa封入される。もちろん他の希ガスと混合してもよい。
発光管2における上面と下面に形成された電極3、4は、例えば、アルミニウム等の金属を、印刷、蒸着或いは箔状にして貼着して形成したものであり、放電空間内で生成された紫外光が透過できるよう、例えば網目状に構成されている。
なお、発光管2において光を放射しない側に形成される電極は、光透過性が不要であって、アルミテープなどのいわゆるベタ状電極であってもよいが、この例では製造上の簡便さから同図に示すように両方ともに透光性を備えるよう構成としている。
【0012】
そして、発光管2内には蛍光体層5が形成されていて、図3に示すように、この蛍光体層5は、蛍光体粒子6中に、該蛍光体粒子7よりも粒子径の小さなシリカ粒子7を混入して製作したものであり、蛍光体粒子6の間隙にシリカ粒子7が充填された状態で蛍光体層が構成されている。
蛍光体層5の蛍光体粒子6相互の間隙にシリカ粒子7が充填されることで、該蛍光体粒子6相互の結着性が良くなり、蛍光体層5の強度が増すため、該蛍光体層5の剥離が抑制される。
ここで、蛍光体粒子6は一般に使用される蛍光体を使用することができ、粒径として一例を挙げると粒径が1〜20μmであり、平均粒径が2〜10μmである。
蛍光体層5に含まれるシリカ粒子7は、前記蛍光体粒子6よりも粒径が小さいものが使用され、例えば粒径が数nm〜200nmであり、平均粒径が10〜100nmである。
なお、本明細書において、粒径とは粒子の一次粒子径であり、平均粒径とは、累積重量百分率が50%となる粒径(すなわち、メディアン径)である。
なお、上記図2においては、蛍光体層5を発光管2の全内周面に形成したものを示したが、これに限られず、発光管2の周方向の一部において該蛍光体層5を形成せずに、その領域をアパーチャ部として該部分から紫外光を取り出す構成としてもよい。
また、発光管2の形状を断面扁平の4角形状としたが、これに限らず、例えば、断面円形状であってもよい。
【0013】
前記シリカ粒子7の好ましい平均粒径の範囲としては10〜100nmであり、蛍光体層5に含まれるシリカ粒子7の割合としては、2〜20wt%の範囲であることが好ましい。この理由は次の通りである。まず、シリカ粒子7の割合を2wt%以上の範囲とすることで、従来の蛍光ランプ(低融点ガラス層を備えた蛍光ランプ)と比較した場合に蛍光体層5と発光管2の内壁との結着力を同等以上の蛍光ランプとすることができる。一方、シリカ粒子7の含有割合が多くなると、該シリカ粒子7による拡散反射の影響が大きくなって光取り出し部から放射される光が少なくなる傾向があるため、ランプとして実用的な効率を維持することができるよう20wt%以下とすることが好ましい。
なお、紫外光の放射効率は、シリカの粒径(平均粒径)にも依存しており、これが大きくなり過ぎると光放射面において紫外線の出力効率が低下する傾向がある。そこで、更に好ましくは平均粒径として10〜50nmのシリカ粒子を用いることで、従来の蛍光ランプ(低融点ガラス層を備えた蛍光ランプ)と比較した場合に同等以上の紫外光の放射効率を実現することができるようになる。
【0014】
この発明の蛍光ランプの製造方法を図4に示すフローチャートにより説明する。
(1)蛍光体粒子とシリカ粒子とを所定の割合となるように混合し、これらの粉末を例えばニトロセルロース、酢酸ブチルからなる有機溶媒に混合し、十分に撹拌して蛍光体スラリー(塗布液)を製作する。この際、シリカ粒子が十分に拡散するために、シリカ粒子表面には例えばシランカップリング剤処理の表面処理が施されていることが好ましい。
(2)発光管用のガラス管に蛍光体スラリー(塗布液)を塗布し、乾燥させる。
(3)乾燥後、蛍光体層を約500〜800℃、0.2〜2h焼成し、冷却する。
(4)発光管内部を排気して所定の封入物(希ガスなど)を封入し、チップオフ(封止)する。
(5)次いで、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル等の材質を真空蒸着、スクリーン印刷等の手段で形成することにより電極を形成し、蛍光ランプが完成する。なお電極としては、アルミテープなどを用いることもできる。
【0015】
このように、本発明に係る蛍光ランプによれば、従来技術に係る製法(図11参照)と比較して、低融点ガラス層を形成するために必要な焼成工程を省略することができるので、生産性が良好な蛍光ランプを提供することができる。
【0016】
図5および図6は、本発明の他の実施例に係る蛍光ランプを説明する図である。
図5では管軸に対して垂直に切断した横断面図を示している。この蛍光ランプは、発光管2の下側が光を放射する側の面となっている。効率よく下側から光を取り出すために、光取り出し部9を除いて紫外光反射層8が発光管2と蛍光体層5との間に形成されている。
図6に示すように、このような紫外光反射層8は、上記特許文献2に開示されるものを使用することができ、シリカ粒子、又はシリカ粒子とアルミナ粒子の混合粒子などによって構成されるものである。シリカ粒子のみを使用する場合、平均粒径としては例えば0.1〜0.6μm、膜厚が約10〜30μmの層からなる。
このような構成とすることにより、蛍光体層5により生成された紫外光が該反射層8によって反射されて、下部の光取り出し部9から効率的に放射される。
【0017】
次いで、本発明による効果を実証するための試験を行った。
<試料の作製>
シリカ粒子の粒径、混合割合を種々異ならせることにより、本発明に係る蛍光ランプの試料を製作した。まず、蛍光体粒子とシリカ粒子を所定の割合で有機溶媒に混合し、蛍光体の塗布液を調製した。
調製した塗布液は全部で20種類あり、図7に示すように、試料1〜試料5は平均粒径が10nm、試料6〜試料10は平均粒径が15nm、試料11〜試料15は平均粒径が50nm、試料16〜試料20は平均粒径が100nmのシリカ粒子を用い、更に、それぞれ同一平均粒径のシリカ粒子を用いたものにおいて、蛍光体層に含まれるシリカ粒子の混合比を1wt%、2wt%、5wt%、10wt%、20wt%と変えて製作した。
使用したシリカ粒子は予めシランカップリング剤の表面処理を施したものを用いたものであり、溶剤としてビニルシランシを使用したものである。このようにシリカ粒子を予めシランカップリング剤により表面処理することで、塗布液中にシリカ粒子を均等に分散させることができる。この塗布液を、外径10mm、厚み1mmの試料のガラス管内に塗布し、乾燥したのち、600℃で焼成して蛍光体層とした。
また、比較例としてガラス層と蛍光体層(シリカ粒子の含有なし)からなる従来技術にかかる試料(以下、従来技術試料1という)を製作し、更に、ガラス管の内面に低融点ガラス層を10μm形成した後、シリカ粒子を含まない蛍光体層を15μmの膜厚で形成した、別の従来技術に係る試料(以下、従来技術試料2という)を製作した。
なお、全ての試料における蛍光体には、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al:Ce)を用いており、粒子径2〜15μm、平均粒径5.5μmであった。
【0018】
<耐衝撃性試験>
蛍光体の付着状態を検証するため、耐衝撃性試験を行った。
試験は、蛍光体を塗布した石英ガラスからなるガラス管を垂直に立て、厚み10mmの樹脂製(例えばフェノール樹脂)の平らな板の表面に、ガラス管を落下させて行った。落下距離は50mmであって。これを10回繰り返した後、蛍光体層が剥れているかどうか、目視で確認した。
図7の耐衝撃性試験の欄に示されるように、耐衝撃性試験の結果、○は、蛍光体層の剥がれが認められなかったものであり、×は、蛍光体層の剥がれが確認できたものである。この試験によれば、従来技術試料1においては、蛍光体層が剥がれてしまい、蛍光ランプを構成するに至らなかった。
【0019】
<結着性試験>
続いて、蛍光体層の発光管に対する結着性の程度を検証した。
図8に示す構成に基づき、蛍光体層5を形成したガラス管2の内部に、内径2mmの空気ノズル10を挿入し、ノズルから空気を吹き付けた。吹き付ける空気圧を徐々に上げて蛍光体層5が剥離するノズル10の空気圧を測定した。
この結果を、図7の結着性試験の欄に示す。この実験で分かるように、シリカ粒子の混合比が1wt%程度と極めて少ないと、求められる発光管への結着機能が発揮されず、蛍光体層の結着力が不足するが、2wt%以上になるとその結着力が従来技術試料2と同等もしくはそれ以上となる。
なお、表中で0.50(MPa)以上としたものは、0.50MPaでは蛍光体層の剥がれがなく、それ以上の圧力では実験をしていないことを意味する。
また、従来技術試料1については、上記耐衝撃性試験においてすでに蛍光体層が剥がれているので、この結着性試験、および後述の紫外光強度試験は不実施としている。
【0020】
<紫外光強度試験>
上記結果に基づき、従来技術試料2及び本発明に係る試料1〜試料16の試料から、実際に蛍光ランプを構成し、高周波電圧を印加してランプの点灯実験を行った。製作した蛍光ランプは、外観としては図1に示すものであり、発光管内部は図5で示した構成である。
図9で示すように、この蛍光ランプ1の光取り出し部9に照度計を配置して、照度測定を行った。発光管の寸法は、いずれも、全体の大きさが14×42×650mmであり、発光管を構成する石英ガラスの厚みは2mmであった。
なお、この実験においては、光取り出し部9となる発光管2の長辺面を除いた部分の発光管内表面に紫外光反射層8を設けた。この紫外光反射層8はシリカ粒子により形成したものであり、粒子径0.1〜0.6μm、平均粒径0.25μmであり、紫外光反射層の厚みは30μmであった。
蛍光体は、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al:Ce)を用いており、粒子径2〜15μm、平均粒径5.5μmであった。蛍光体の塗布液を上述した方法と同様の工程で調製して、発光管内面に塗布し、乾燥、焼成して形成した。最終的な蛍光体層の厚みは15μmであった。
このように発光管内面に紫外光反射層および蛍光体層を形成した後、発光管内部に発光ガスとしてキセノンを53kPa封入し、発光管の外表面に格子状の金属からなる電極を設置した。電極の寸法は32×500mmであった。
【0021】
上記構成において、下記手順に従い紫外光照度を測定した。
まず、光出射部の中央部に対向する位置において、ランプ1表面から5mm離して分光器受光部11を固定した。分光器受光部11はファイバーにより分光器(いずれも不図示)と接続した。ランプの電極間に交流高電圧を印加することで、放電容器内部に放電を発生させ、格子状電極4を通して光取り出し部9から放射される紫外光を測定した。
ランプ入力は250Wとした。
分光器の測定スペクトルから300〜400nmの照度を積算した値を用いて、紫外光強度を比較した。
ガラス層と蛍光体層(シリカ粒子の含有なし)を備えた、従来技術試料2に係るランプの紫外光照度を100としたときの相対値を用いて、試料1〜20のランプの紫外光照度の測定結果を図7の紫外光強度の欄に示す。
この結果、蛍光体層に含まれるシリカ粒子の平均粒径が10nm以上であると、従来技術ランプよりも紫外光強度が概ね従来ランプを上回ることが判明した。ただ、平均粒径が100nm以上になると僅かに紫外光強度が低くはなるが、実用上問題になるほどのものではない。
【0022】
以上説明したように、本発明の蛍光ランプでは、蛍光体層を蛍光体粒子とシリカ粒子とによって構成したことによって、蛍光体層を発光管に形成する際に、蛍光体層を焼成する工程1回で済み、従来のように、低融点ガラス層の焼結と蛍光体層の焼結の2回の焼結工程に比べてその作業工程が大幅に改善される。
しかも、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子の平均粒径を10〜100nmとし、混合比を2〜20wt%とすることによって、蛍光体層の発光管への結着力が改善され、更に好ましくは、平均粒径を10〜50nmとすることによって、上記結着力に加えて紫外光強度も従来技術より大きなものが得られるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0023】
1 蛍光ランプ
2 発光管
3、4 外部電極
5 蛍光体層
6 蛍光体
7 シリカ粒子
8 紫外光反射層
9 光取り出し部
10 空気ノズル
11 分光器受光部
【技術分野】
【0001】
この発明は蛍光ランプおよびその製造方法に関するものであり、特に、紫外光を放射する蛍光ランプおよびその製造方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近時、光触媒や、広義の樹脂硬化、除菌、美容、医療などの様々な分野で、波長300nm付近の紫外光が利用されている。このような光の光源としては、波長250〜380nm近傍に強度ピークを有する蛍光体が発光管内面に塗布された蛍光ランプが使用される。
このような紫外光を放射する蛍光ランプにおいては、発光管内において放電によって比較的短波長、例えば200nm以下、の紫外光を得て、この紫外光を蛍光体層に照射して該蛍光体を励起させ所定波長領域、例えば前記250〜380nm、の光に変換するものであって、こうして得られた所定波長領域の紫外光は、蛍光体層および発光管を透過して、外部に放射されるものであり、原理的には可視光を得る蛍光ランプと同様である。
【0003】
ところで、紫外光を放射する蛍光ランプのなかでも、例えば前記した波長250〜380nm付近の比較的短波長の紫外光を放射する蛍光ランプにおいては、発光管を構成するガラスの材質によっては、該紫外光が吸収されてしまうことから、当該紫外光を効率よく放射させるためには発光管を石英ガラスで構成することが望ましい。
しかしながら、石英ガラスは軟化点が高いことから、蛍光体を石英ガラスからなる発光管に安定的に保持させることが難しいという問題がある。
そこで、例えば特開2010−056007号公報(特許文献1)や特開2010−153054号公報(特許文献2)に開示される技術のように、石英ガラス上に薄い低融点のガラス層を形成して、蛍光体と石英ガラスとの密着性を高める技術が採用されている。
このうち、特許文献1に記載の技術は、蛍光体を塗布する前段階で発光管の内周面上に低融点ガラス粉末の薄い層を焼成・形成し、その後、蛍光体スラリーを塗布してこれを焼成する構造としたものである。この構造により、蛍光体の焼成温度を低く抑えることができて、石英ガラス製の発光管に安定的に保持させようとするものであり、図10、図11を参照して、この技術を説明する。
【0004】
図10は、従来技術にかかる蛍光ランプ20を、管軸に対して垂直方向に切断した断面図であり、(A)は全体断面図、(B)はそのX部の拡大断面図である。発光管21は石英ガラスからなり、その内面上に低融点ガラス粉末の層22が形成され、この上に蛍光体層23が積層されて構成される。そして、発光管21の外壁には対向する一対の外部電極24、24が設けられる。
このような蛍光ランプは、概ね図11で示す製造工程のフローチャートの手順に従って作製される。
図11に示すように、先ず、(1)ガラス粉末スラリー液を調製し、(2)これを石英ガラス管内面に塗布、乾燥する。(3)ガラス粉末層を石英ガラス管に定着させるために高温で焼成し、冷却する。この焼成の条件は約500〜1000℃であり、所定温度に到達したのち0.2〜1h保持する。
次いで、(4)蛍光体スラリー液を調製し、(5)低融点ガラス粉末層を形成した石英ガラス管に塗布し、乾燥させる。その後、(6)焼成し、冷却する。この焼成温度は約500〜800℃であり、0.2〜1h保持する。こうして、(7)発光管を形成した後、発光管内部を排気し希ガスなどの所定の封入物を封入し、封止する。そして、(8)発光管外部に電極を形成して、蛍光ランプが完成する。
【0005】
このように、上記の技術においては、石英ガラス製の発光管内面に低融点ガラス層を形成する段階で発光管を高温に加熱する工程と、後続する蛍光体の焼成工程との併せて2回の加熱処理工程が必要となり、製造工程で大きな熱量と作業時間がかかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−056007号公報
【特許文献2】特開2010−153054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、石英ガラスからなる発光管と、励起されることにより紫外光を放射する蛍光体層とを備えた蛍光ランプにおいて、製造時に焼成工程を減らして1回で済むようにして、製造にかかるコストおよび時間を低く抑えつつ、発光管に蛍光体層を強固に安定的に保持・形成することができる蛍光ランプの構造およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、上記課題を解決するために、発光管内面に形成する蛍光体層を、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むものから構成したことを特徴とするものである。
また、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、前記蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることを特徴とする。
更には、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする。
また、本発明の紫外線を放射する蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子とシリカ粒子と有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製する工程と、前記蛍光体塗布液を石英ガラスからなる管に塗布する工程と、前記蛍光体塗布液を乾燥させたのち後、蛍光体およびシリカ粒子を焼成する工程とを含むことを特徴とする。
また、前記蛍光体塗布液を調製する工程において、シランカップリング剤による表面処理を施したシリカ粒子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の蛍光ランプによれば、蛍光体層が蛍光体粒子とシリカ粒子とから構成されているので、その製造工程において低融点ガラス層を形成するために加熱焼成する工程を経ることなく、蛍光体層を直接発光管に塗布し焼成するという一度の工程で、十分な結着性をもって発光管に安定的に付着させることができ、低熱量で生産性が良好な蛍光ランプを提供することができる。
そして、シリカ粒子の平均粒径が10〜100nmであり、蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることで、上記結着性の改善に加えて、シリカ粒子による紫外光の拡散を少なくでき、従来技術より以上の、或いはそれと同等程度の強度で紫外光を放射することができ、更に好ましくは、平均粒径を10〜50nmとすることによって、従来技術以上の紫外光強度を得ることができる。
この発明の蛍光ランプの製造方法によれば、石英ガラスからなる発光管を備えた紫外光を放射する蛍光ランプにおいて、製造時に焼成工程を減らして1回で済むようにして、製造にかかるコストおよび時間を低く抑えつつ、発光管に蛍光体層を強固に安定的に保持・形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蛍光ランプの全体斜視図。
【図2】図1の横断面図。
【図3】図2のA部の拡大断面図。
【図4】本発明の蛍光ランプの製造方法を示すフローチャート。
【図5】本発明の他の実施例の断面図。
【図6】図5のB部の拡大断面図。
【図7】本発明の効果を示す実験結果を表す表。
【図8】本発明の蛍光ランプの結着性を測定するための装置例。
【図9】本発明の蛍光ランプの紫外光の照度測定をするための装置例。
【図10】従来例の断面図。
【図11】従来例の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の蛍光ランプの全体を示す斜視図、図2はその横断面図、図3は図2のA部拡大断面図である。
図において、蛍光ランプ1は、略矩形箱状の放電空間を備えてなるものであり、石英ガラスなどの紫外光透過性を有する誘電体よりなる発光管2の上面と下面に一対の外部電極3、4を備えて構成されたものである。
発光管2内には、エキシマ放電用のガスが所定の封入量で封入され、例えば放電ガスとしてキセノンガスが10〜70kPa封入される。もちろん他の希ガスと混合してもよい。
発光管2における上面と下面に形成された電極3、4は、例えば、アルミニウム等の金属を、印刷、蒸着或いは箔状にして貼着して形成したものであり、放電空間内で生成された紫外光が透過できるよう、例えば網目状に構成されている。
なお、発光管2において光を放射しない側に形成される電極は、光透過性が不要であって、アルミテープなどのいわゆるベタ状電極であってもよいが、この例では製造上の簡便さから同図に示すように両方ともに透光性を備えるよう構成としている。
【0012】
そして、発光管2内には蛍光体層5が形成されていて、図3に示すように、この蛍光体層5は、蛍光体粒子6中に、該蛍光体粒子7よりも粒子径の小さなシリカ粒子7を混入して製作したものであり、蛍光体粒子6の間隙にシリカ粒子7が充填された状態で蛍光体層が構成されている。
蛍光体層5の蛍光体粒子6相互の間隙にシリカ粒子7が充填されることで、該蛍光体粒子6相互の結着性が良くなり、蛍光体層5の強度が増すため、該蛍光体層5の剥離が抑制される。
ここで、蛍光体粒子6は一般に使用される蛍光体を使用することができ、粒径として一例を挙げると粒径が1〜20μmであり、平均粒径が2〜10μmである。
蛍光体層5に含まれるシリカ粒子7は、前記蛍光体粒子6よりも粒径が小さいものが使用され、例えば粒径が数nm〜200nmであり、平均粒径が10〜100nmである。
なお、本明細書において、粒径とは粒子の一次粒子径であり、平均粒径とは、累積重量百分率が50%となる粒径(すなわち、メディアン径)である。
なお、上記図2においては、蛍光体層5を発光管2の全内周面に形成したものを示したが、これに限られず、発光管2の周方向の一部において該蛍光体層5を形成せずに、その領域をアパーチャ部として該部分から紫外光を取り出す構成としてもよい。
また、発光管2の形状を断面扁平の4角形状としたが、これに限らず、例えば、断面円形状であってもよい。
【0013】
前記シリカ粒子7の好ましい平均粒径の範囲としては10〜100nmであり、蛍光体層5に含まれるシリカ粒子7の割合としては、2〜20wt%の範囲であることが好ましい。この理由は次の通りである。まず、シリカ粒子7の割合を2wt%以上の範囲とすることで、従来の蛍光ランプ(低融点ガラス層を備えた蛍光ランプ)と比較した場合に蛍光体層5と発光管2の内壁との結着力を同等以上の蛍光ランプとすることができる。一方、シリカ粒子7の含有割合が多くなると、該シリカ粒子7による拡散反射の影響が大きくなって光取り出し部から放射される光が少なくなる傾向があるため、ランプとして実用的な効率を維持することができるよう20wt%以下とすることが好ましい。
なお、紫外光の放射効率は、シリカの粒径(平均粒径)にも依存しており、これが大きくなり過ぎると光放射面において紫外線の出力効率が低下する傾向がある。そこで、更に好ましくは平均粒径として10〜50nmのシリカ粒子を用いることで、従来の蛍光ランプ(低融点ガラス層を備えた蛍光ランプ)と比較した場合に同等以上の紫外光の放射効率を実現することができるようになる。
【0014】
この発明の蛍光ランプの製造方法を図4に示すフローチャートにより説明する。
(1)蛍光体粒子とシリカ粒子とを所定の割合となるように混合し、これらの粉末を例えばニトロセルロース、酢酸ブチルからなる有機溶媒に混合し、十分に撹拌して蛍光体スラリー(塗布液)を製作する。この際、シリカ粒子が十分に拡散するために、シリカ粒子表面には例えばシランカップリング剤処理の表面処理が施されていることが好ましい。
(2)発光管用のガラス管に蛍光体スラリー(塗布液)を塗布し、乾燥させる。
(3)乾燥後、蛍光体層を約500〜800℃、0.2〜2h焼成し、冷却する。
(4)発光管内部を排気して所定の封入物(希ガスなど)を封入し、チップオフ(封止)する。
(5)次いで、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル等の材質を真空蒸着、スクリーン印刷等の手段で形成することにより電極を形成し、蛍光ランプが完成する。なお電極としては、アルミテープなどを用いることもできる。
【0015】
このように、本発明に係る蛍光ランプによれば、従来技術に係る製法(図11参照)と比較して、低融点ガラス層を形成するために必要な焼成工程を省略することができるので、生産性が良好な蛍光ランプを提供することができる。
【0016】
図5および図6は、本発明の他の実施例に係る蛍光ランプを説明する図である。
図5では管軸に対して垂直に切断した横断面図を示している。この蛍光ランプは、発光管2の下側が光を放射する側の面となっている。効率よく下側から光を取り出すために、光取り出し部9を除いて紫外光反射層8が発光管2と蛍光体層5との間に形成されている。
図6に示すように、このような紫外光反射層8は、上記特許文献2に開示されるものを使用することができ、シリカ粒子、又はシリカ粒子とアルミナ粒子の混合粒子などによって構成されるものである。シリカ粒子のみを使用する場合、平均粒径としては例えば0.1〜0.6μm、膜厚が約10〜30μmの層からなる。
このような構成とすることにより、蛍光体層5により生成された紫外光が該反射層8によって反射されて、下部の光取り出し部9から効率的に放射される。
【0017】
次いで、本発明による効果を実証するための試験を行った。
<試料の作製>
シリカ粒子の粒径、混合割合を種々異ならせることにより、本発明に係る蛍光ランプの試料を製作した。まず、蛍光体粒子とシリカ粒子を所定の割合で有機溶媒に混合し、蛍光体の塗布液を調製した。
調製した塗布液は全部で20種類あり、図7に示すように、試料1〜試料5は平均粒径が10nm、試料6〜試料10は平均粒径が15nm、試料11〜試料15は平均粒径が50nm、試料16〜試料20は平均粒径が100nmのシリカ粒子を用い、更に、それぞれ同一平均粒径のシリカ粒子を用いたものにおいて、蛍光体層に含まれるシリカ粒子の混合比を1wt%、2wt%、5wt%、10wt%、20wt%と変えて製作した。
使用したシリカ粒子は予めシランカップリング剤の表面処理を施したものを用いたものであり、溶剤としてビニルシランシを使用したものである。このようにシリカ粒子を予めシランカップリング剤により表面処理することで、塗布液中にシリカ粒子を均等に分散させることができる。この塗布液を、外径10mm、厚み1mmの試料のガラス管内に塗布し、乾燥したのち、600℃で焼成して蛍光体層とした。
また、比較例としてガラス層と蛍光体層(シリカ粒子の含有なし)からなる従来技術にかかる試料(以下、従来技術試料1という)を製作し、更に、ガラス管の内面に低融点ガラス層を10μm形成した後、シリカ粒子を含まない蛍光体層を15μmの膜厚で形成した、別の従来技術に係る試料(以下、従来技術試料2という)を製作した。
なお、全ての試料における蛍光体には、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al:Ce)を用いており、粒子径2〜15μm、平均粒径5.5μmであった。
【0018】
<耐衝撃性試験>
蛍光体の付着状態を検証するため、耐衝撃性試験を行った。
試験は、蛍光体を塗布した石英ガラスからなるガラス管を垂直に立て、厚み10mmの樹脂製(例えばフェノール樹脂)の平らな板の表面に、ガラス管を落下させて行った。落下距離は50mmであって。これを10回繰り返した後、蛍光体層が剥れているかどうか、目視で確認した。
図7の耐衝撃性試験の欄に示されるように、耐衝撃性試験の結果、○は、蛍光体層の剥がれが認められなかったものであり、×は、蛍光体層の剥がれが確認できたものである。この試験によれば、従来技術試料1においては、蛍光体層が剥がれてしまい、蛍光ランプを構成するに至らなかった。
【0019】
<結着性試験>
続いて、蛍光体層の発光管に対する結着性の程度を検証した。
図8に示す構成に基づき、蛍光体層5を形成したガラス管2の内部に、内径2mmの空気ノズル10を挿入し、ノズルから空気を吹き付けた。吹き付ける空気圧を徐々に上げて蛍光体層5が剥離するノズル10の空気圧を測定した。
この結果を、図7の結着性試験の欄に示す。この実験で分かるように、シリカ粒子の混合比が1wt%程度と極めて少ないと、求められる発光管への結着機能が発揮されず、蛍光体層の結着力が不足するが、2wt%以上になるとその結着力が従来技術試料2と同等もしくはそれ以上となる。
なお、表中で0.50(MPa)以上としたものは、0.50MPaでは蛍光体層の剥がれがなく、それ以上の圧力では実験をしていないことを意味する。
また、従来技術試料1については、上記耐衝撃性試験においてすでに蛍光体層が剥がれているので、この結着性試験、および後述の紫外光強度試験は不実施としている。
【0020】
<紫外光強度試験>
上記結果に基づき、従来技術試料2及び本発明に係る試料1〜試料16の試料から、実際に蛍光ランプを構成し、高周波電圧を印加してランプの点灯実験を行った。製作した蛍光ランプは、外観としては図1に示すものであり、発光管内部は図5で示した構成である。
図9で示すように、この蛍光ランプ1の光取り出し部9に照度計を配置して、照度測定を行った。発光管の寸法は、いずれも、全体の大きさが14×42×650mmであり、発光管を構成する石英ガラスの厚みは2mmであった。
なお、この実験においては、光取り出し部9となる発光管2の長辺面を除いた部分の発光管内表面に紫外光反射層8を設けた。この紫外光反射層8はシリカ粒子により形成したものであり、粒子径0.1〜0.6μm、平均粒径0.25μmであり、紫外光反射層の厚みは30μmであった。
蛍光体は、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al:Ce)を用いており、粒子径2〜15μm、平均粒径5.5μmであった。蛍光体の塗布液を上述した方法と同様の工程で調製して、発光管内面に塗布し、乾燥、焼成して形成した。最終的な蛍光体層の厚みは15μmであった。
このように発光管内面に紫外光反射層および蛍光体層を形成した後、発光管内部に発光ガスとしてキセノンを53kPa封入し、発光管の外表面に格子状の金属からなる電極を設置した。電極の寸法は32×500mmであった。
【0021】
上記構成において、下記手順に従い紫外光照度を測定した。
まず、光出射部の中央部に対向する位置において、ランプ1表面から5mm離して分光器受光部11を固定した。分光器受光部11はファイバーにより分光器(いずれも不図示)と接続した。ランプの電極間に交流高電圧を印加することで、放電容器内部に放電を発生させ、格子状電極4を通して光取り出し部9から放射される紫外光を測定した。
ランプ入力は250Wとした。
分光器の測定スペクトルから300〜400nmの照度を積算した値を用いて、紫外光強度を比較した。
ガラス層と蛍光体層(シリカ粒子の含有なし)を備えた、従来技術試料2に係るランプの紫外光照度を100としたときの相対値を用いて、試料1〜20のランプの紫外光照度の測定結果を図7の紫外光強度の欄に示す。
この結果、蛍光体層に含まれるシリカ粒子の平均粒径が10nm以上であると、従来技術ランプよりも紫外光強度が概ね従来ランプを上回ることが判明した。ただ、平均粒径が100nm以上になると僅かに紫外光強度が低くはなるが、実用上問題になるほどのものではない。
【0022】
以上説明したように、本発明の蛍光ランプでは、蛍光体層を蛍光体粒子とシリカ粒子とによって構成したことによって、蛍光体層を発光管に形成する際に、蛍光体層を焼成する工程1回で済み、従来のように、低融点ガラス層の焼結と蛍光体層の焼結の2回の焼結工程に比べてその作業工程が大幅に改善される。
しかも、前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子の平均粒径を10〜100nmとし、混合比を2〜20wt%とすることによって、蛍光体層の発光管への結着力が改善され、更に好ましくは、平均粒径を10〜50nmとすることによって、上記結着力に加えて紫外光強度も従来技術より大きなものが得られるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0023】
1 蛍光ランプ
2 発光管
3、4 外部電極
5 蛍光体層
6 蛍光体
7 シリカ粒子
8 紫外光反射層
9 光取り出し部
10 空気ノズル
11 分光器受光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなる発光管と、励起されることにより紫外光を放射する蛍光体層とを備えた蛍光ランプにおいて、
前記蛍光体層は、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、前記蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
紫外線を放射する蛍光ランプの製造方法であり、
蛍光体粒子とシリカ粒子と有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製する工程と、
前記蛍光体塗布液を石英ガラスからなる管に塗布する工程と、
前記蛍光体塗布液を乾燥させたのち後、蛍光体およびシリカ粒子を焼成する工程と、
を含むことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体塗布液を調製する工程において、シランカップリング剤による表面処理を施したシリカ粒子を用いることを特徴とする請求項4記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項1】
石英ガラスからなる発光管と、励起されることにより紫外光を放射する蛍光体層とを備えた蛍光ランプにおいて、
前記蛍光体層は、蛍光体粒子とシリカ粒子を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜100nmであり、前記蛍光体層に含まれる割合が2〜20wt%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体層に含まれるシリカ粒子は、平均粒径が10〜50nmであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
紫外線を放射する蛍光ランプの製造方法であり、
蛍光体粒子とシリカ粒子と有機溶媒とを混合して蛍光体塗布液を調製する工程と、
前記蛍光体塗布液を石英ガラスからなる管に塗布する工程と、
前記蛍光体塗布液を乾燥させたのち後、蛍光体およびシリカ粒子を焼成する工程と、
を含むことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記蛍光体塗布液を調製する工程において、シランカップリング剤による表面処理を施したシリカ粒子を用いることを特徴とする請求項4記載の蛍光ランプの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−123960(P2012−123960A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272219(P2010−272219)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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