説明

蝶番

【課題】パネル体から食み出ることなく、そして汎用性があり、しかも、取付けの作業性に優れ、さらに、開扉された扉を自動的に閉扉することができるようにした蝶番を提供する。
【解決手段】この蝶番は、一定の間隔をあけて配置される一対の転動体22,22と、該各転動体22,22の転動によって往復動する可動駒21と、前記一対の転動部22a,22aを転動自在に連結する連結体24とを備えている。前記連結体には収納部24dが設けられている。この収納部24dは、転動体22および可動駒21との対向する部分に、転動体22の回転中心を中心として環状に一対形成される。この収納部24d内に中立位置から変位した前記可動駒21を中立位置に復帰させるバネ25が収納されている。このバネ25は、例えば渦巻きバネ25であり、一端が前記転動体に固定され、他端が前記連結体24に固定され、前記連結体24に設けられた収容部内に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、折戸のように2枚の扉を連結するための蝶番に関し、詳しくは、開扉した扉が自動的に閉扉するようにした蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の扉を連結するための蝶番が各種提供されているが、扉の開閉に際して、閉扉時の仕切り性を優れたものとした蝶番が特許文献1に開示されている。
【0003】
この蝶番は、図42ないし図44に示すように、2枚の扉100,100が突き合う側端面に取り付けられている。各扉100は、矩形板状の中実なパネル体101と、このパネル体101の一端(壁)側に固定されたフレーム102とを有し、他端(内)側に支柱体111が固定されている。
【0004】
このような扉100に取り付けられる蝶番110は、前記支柱体111と、図43に示すように、この支柱体111それぞれの上端および下端に固着された平歯車112と、付き合わされて対向する一対の平歯車112,112同士を噛合させる連結板113とを備えている。
【0005】
また、各支柱体111がパネル体101と接合する取付け面には、図44に示すように、2本の突起条111a,111aが鉛直方向に突設され、パネル体101が支柱体111と接合する取付け面には、2本の溝101a,101aが形成されている。この2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが嵌合し、さらに支柱体111からパネル体101にビス103がねじ込まれることにより、両者111,101が固定される。こうすることにより、パネル体101が木製で湿気などによって収縮しても、各平歯車112が捩れることなくスムーズに噛合するようにされている。
【0006】
【特許文献1】特許第2728642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された蝶番110は、開扉したときに、2枚のパネル体101が完全に重なり合うようにするため、平歯車112の外径がパネル体101の板厚よりも大きく、歯が食み出ている。しかし、平歯車112の歯がパネル体101から食み出ることにより、塵埃などが一対の平歯車112,112の間に入り、扉100,100がスムーズに開閉できなくなることがある。また、平歯車112は、耐久性に優れているとはいえず、折戸のように重量のある扉100,100が長期間開閉されていると、疲労し、破壊することもある。
【0008】
加えて、特許文献1に開示された蝶番110は、支柱体111を構成要件としている。支柱体111は、パネル体101の高さや幅と一致するように個別に製造される。したがって、この蝶番110は、汎用性がなく、コストダウンを図ることが困難である。
【0009】
さらに、支柱体111とパネル体101とには、2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが形成されている。しかし、これら111a,101aを形成する作業が面倒であるだけでなく、両者111a,101aを嵌合しなければならないなど容易に取り付けることができない。
【0010】
そして、特許文献1に開示された蝶番110は、扉100,100が開けられると、開扉した状態が維持される。しかし、場所によっては、開扉した扉100,100が自動的に閉扉するようにしたい場合がある。一般的なドアクローザに備えられた自閉機能をこの特許文献1に開示されたような蝶番に備えることは、構成が全く異なることから困難である。したがって、特許文献1に開示された蝶番110は、改良して、自動的に閉扉させるようにすることができない。
【0011】
そこで、本発明は、パネル体から食み出ることなく、そして汎用性があり、しかも、取付けの作業性に優れ、さらに、開扉された扉を自動的に閉扉することができるようにした蝶番を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る蝶番は、先端に転動部が設けられ、該転動部が一定の間隔をあけて配置された一対の転動体と、該一対の転動体の転動部に挟まれ、該転動部が転動することによって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とを備え、前記連結体に収納部が設けられ、該収納部内に中立位置から変位した前記可動駒を中立位置に復帰させるバネが収納されていることを特徴としている。
【0013】
この蝶番によれば、一対の転動体は、バネを収納する収納部を設けた連結体に連結され、一定の間隔に維持された状態で、転動部が可動駒の各側面上を転動する。例えば、一方の転動体が一方の扉に固定され、他方の転動体が他方の扉に固定されて使用される蝶番において、両方の扉の一方の同じ面同士が対峙して重なり合って開扉しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を一端側で挟み、両方の扉が一直線に並んで閉扉しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を中間で挟み、両方の扉の他方の同じ面同士が対峙して重なり合って前記と反対方向に開示しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を他端側で挟む。換言すれば、可動駒が一対の転動体の転動部の間を移動することにより、転動体が揺動し、扉が開閉する。
【0014】
あるいは、一方の転動体が扉に固定され、他方の転動体が壁に固定されて使用される蝶番において、扉が壁の一方の面と対峙して重なり合って開扉しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を一端側で挟み、扉が壁と同じ方向に並んで閉扉しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を中間で挟み、扉が扉の他方の面と対峙して重なり合って開扉しているときは、一対の転動体の転動部が可動駒を他端側で挟む。したがって、この場合は、壁に固定された転動体上を可動駒が公転し、この可動駒上を扉に固定された転動体が360°公転する。
【0015】
いずれにしても、可動駒が外力を加えられて中立位置から変位することにより、連結体に設けられた収納部内のバネが変形する。この中立位置から変位した可動駒は、外力が加えられなくなることにより、バネが元の状態に戻ろうとする復元力によって中立位置に復帰する。可動駒が中立位置に復帰するときに、転動体の転動部が可動駒上を転動するため、転動体が初期の位置に戻る。転動体に扉が固定されている場合において、力が加えられて開扉した扉は、力が加えられなくなることによって自動的に閉扉する。なお、この蝶番は、扉だけでなく、小物入れや家具などにも使用することができる。
【0016】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記連結体に設けられた収納部は、前記転動体および可動駒と対向する部分に、転動体の各回転中心を中心として環状に一対形成され、前記バネは、前記収容部内に収納される渦巻きバネであり、一端が前記転動体に固定され、他端が前記連結体に固定されていることが好ましい。
【0017】
この蝶番によれば、バネが渦巻きバネによって構成され、連結体に備えられた収納部内に収納され、そして、一端が転動体に固定され、他端が連結体に固定されて両端が拘束されている。したがって、可動駒を挟んで一直線に並んでいる転動体に外力が加えられ、可動駒が中立位置から変位したときに、渦巻きバネは締められ、または緩められる。そして、転動体に外力が加えられなくなると、渦巻きバネの復元力により、可動駒には中立位置に戻そうとする力が加えられ、転動体の転動部が可動駒上を転動することにより、一対の転動体は可動駒を挟んで自動的に一直線に並んだ状態に戻る。
【0018】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記連結体に設けられた収納部は、前記可動駒の相対面と対向するほぼ中央部に、可動駒の移動方向と同じ方向に直線状に一対形成され、前記可動駒は、前記収納部内に突出した突出片を移動方向の中間に備え、前記バネは、前記突出片を挟んで前記各収容部内に一対ずつ収納される圧縮バネまたは引張りバネであってもよい。
【0019】
この蝶番によれば、バネが一対ずつの圧縮バネまたは引張りバネによって構成され、可動駒に備えられた突出片を挟んで連結体に形成された収容部内に収納されている。したがって、可動駒を挟んで一直線上に並んでいる転動体に外力が加えられ、可動駒が移動して中立位置から変位したときに、突出片が一方の圧縮バネを圧縮し、または、突出片が一方の引張りバネを引っ張る。そして、転動体に外力が加えられなくなると、このバネの復元力により、突出片には中立位置に戻そうとする力が加えられ、転動体の転動部が可動駒上を転動することにより、一対の転動体は可動駒を挟んで自動的に一直線に並んだ状態に戻る。
【0020】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記連結体に設けられた収納部は、前記転動体と対向する面両端部に、転動体の回転中心を中心として円弧状に一対形成され、前記各転動体は、前記収納部内に突出した突出片を揺動方向の中間に備え、前記バネは、前記突出片を挟んで前記各収容部内に一対ずつ収納される圧縮バネまたは引張りバネであってもよい。
【0021】
この蝶番によれば、バネが一対ずつの圧縮バネまたは引張りバネによって構成され、各転動体に備えられた突出片を挟んで連結体に形成された収容部内に収納されている。したがって、可動駒を挟んで一直線上に並んでいる転動体に外力が加えられ、転動体が転動して中立位置から変位したときに、突出片が一方の圧縮バネを圧縮し、または、突出片が一方の引張りバネを引っ張る。そして、転動体に外力が加えられなくなると、このバネの復元力により、突出片には中立位置に戻そうとする力が加えられ、転動体の転動部が可動駒上を転動することにより、一対の転動体は可動駒を挟んで自動的に一直線に並んだ状態に戻る。
【0022】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記各転動体の転動部には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることが好ましい。
【0023】
この蝶番によれば、可動駒に形成されたラックと転動体の転動部に形成されたピニオンとが噛合することにより、転動体は可動駒上を滑ることなく転動し、また、可動駒は転動体間を滑ることなく往復動する。
【0024】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記連結体は、両端部が前記可動駒の両側面から突出し、かつ、中間部が該可動駒の相対面と当接するように設けられた一対の連結板と、前記転動体を支持し、かつ、前記連結板の両端部を連結する一対のピンとを備えてなることが好ましい。
【0025】
この蝶番によれば、可動駒が一対の連結体の連結板に挟まれ、この一対の連結板は、中間部が可動駒の相対面と当接し、両端部が可動駒の両側面から突出する。この連結板の両端部は、転動体を支持するピンによって連結される。したがって、転動体は、安定した状態で可動駒の側面上を転動する。
【0026】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることが好ましい。
【0027】
この蝶番によれば、可動駒と連結体の連結板の各接合面に設けられた嵌合部が嵌合することにより、可動駒がこの嵌合部に案内されながら連結体間を相対的に移動するだけでなく、一方の転動体から可動駒に加えられる荷重は、一旦、嵌合部に加えられ、嵌合部が緩衝材となり、他方の転動体には小さな荷重が加えられる。このため、転動体の外周面にピニオンが形成されていても、ピニオンには大きな衝撃力が加えられず、破損しないようにすることができる。なお、前記嵌合部は、1本または複数本の突条と溝とによって構成されてなることが好ましい。
【0028】
また、前記本発明に係る蝶番において、前記転動体は、前記転動部を先端部に設けた支持部と、該支持部の基端部に設けられたフランジ部とが一体に成形されたものであることが好ましい。
【0029】
この蝶番によれば、転動体は支持部の先端に転動部を設けたものとしたことにより、それぞれの支持部が衝突することなく、一対の転動体は転動したときに支持部が対峙する。なお、フランジ部は、扉の端面などに固定される。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る蝶番によれば、可動駒の両側面上を転動する転動部を先端に設けた一対の転動体が連結体によって連結され、そして、中立位置から変位した可動駒を中立位置に復帰させるバネが転動体および/または可動駒と連結体との間に備えられていることにより、一直線上に並んだ状態の一対の転動体は、力が加えられると、バネが変形して、可動駒を介して揺動し、重なり合うように対峙した状態となり、力が加えられなくなると、バネの復元力によって、一直線上に並んだ状態に自動的に戻る。したがって、転動体が扉などに固定されると、開扉した扉などを自動的に閉扉することができ、扉などの利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に係る蝶番の実施形態について図1から図12を参照しながら説明する。この蝶番20は、例えば図1に示す折戸のような2枚の扉11,12を連結するために使用される。2枚の扉11,12は、鉛直姿勢に立設された2本の縦枠1,1と、この縦枠1,1の上端部に水平姿勢に架け渡された上枠2で囲まれた枠内を開閉する。上枠2の下面には、吊りレール3が固定されている。
【0032】
扉11,12は、開閉しやすいように、幅の比が1:2とされている。ただし、使用状況に応じて、扉11,12の幅の比は1:1であってもよい。いずれにしても、各扉11,12は、図4に示すように、1枚の板状のパネル体10によって構成され、対向側端面10aが樋形状に成形され、上下両端部の2か所(上端部のみ図示する。)に蝶番20が取り付けられている。この蝶番20は、必要に応じて中間部にも取り付けられる。また、蝶番20は、図示したような上下両端縁ではなく、上下両端縁から中間寄りに取り付けられてもよい。
【0033】
そして、扉11,12が突き合う対向側端面10a,10aの間には、間隔があけられ、この間隔が遮蔽体40によって塞がれている。この遮蔽体40は、扉11,12との間に指などが巻き込まれないようにするためのもので、樋形状に形成された対向側端面10aに嵌る一対の円筒体または円柱体41,41を接合し、平面視が8字形状に形成されている。一対の円筒体または円柱体41,41は、溶接などによって一体化されていてもよいし、分離可能に当接しているだけであってもよい。
【0034】
いずれにしても、円柱体41,41が接合した部分は、括れた形状となっている。さらに、円柱体41,41の端面には、蝶番20に連結される軸42,42が各扉11,12の回転中心の位置に突設され、円環状に突出した嵌合部43,43が外周に設けられている。
【0035】
そして、図1に示すように、幅の狭い扉(以下、「小扉」という。)11の基端側は、軸受4,4によって一方の縦枠1に揺動自在に取り付けられている。また、幅の広い扉(以下、「大扉」という。)12は、前記吊りレール3に吊り下げられる。そのため、大扉12の上端面のほぼ中心に吊り車14が取り付けられている。吊り車14には、大扉12の上端面に固定された軸14aと、この軸14aの上端に回動自在に取り付けられたローラ14bが備えられている。
【0036】
また、大扉12には、ハンドル15が取り付けられている。そして、このハンドル15が押されまたは引かれると、吊り車14の軸14aが回転軸となって、図2または図3に示すように、大扉12が平面視で傾きながら小扉11を押すように移動し、小扉11を押すことにより、小扉11が大扉12と同じ側に平面視で傾く。完全に開扉されると、一方の縦枠1側で大扉12と小扉11とが重なり合った状態となる。
【0037】
両扉11,12がこのように開閉するようにするため、両扉11,12に取り付けられた「第1の実施形態」における蝶番20は、図4ないし図7に示すように、可動駒21、転動体22、そして連結体24を備えている。
【0038】
可動駒21は、両側面21a,21aおよび両相対面21b,21b(図面において上面と下面)が平行な直方体形状または立方体形状、または図示しないが、両側面21a,21aがハ字形状で両相対面21b,21bが平行な台形状とされている。また、両側面21a,21aにはラックが形成されている。
【0039】
そして、転動体22は、前記可動駒21の両側に配置される一対で構成されている。各転動体22は、フランジ部22fと支持部22gとをT字形に一体成形したもので、支持部22gの先端に、前記可動駒21の各側面21a上を回転しながら両方向に移動する半円筒状の転動部22aが設けられている。
【0040】
フランジ部22fの支持部22gを突出していない側の面には、樋形状にされた扉11,12の対向側端面10aに接合するほぼ半円形の膨出部22c,22cが上下に分離して設けられている。各膨出部22cには、パネル体10を固定するための小孔22e,22e…が形成され、ネジ30によって転動体22が扉11,12に固定される。
【0041】
そして、各転動部22aの外周面には、前記可動駒21の側面に形成されたラックと噛合するピニオンが形成され、各転動部22aの回転中心には連通孔22hが形成されている。なお、可動駒21が台形状に形成されているときは、転動部22aは、かさ歯車のように円錐台形状に形成される。
【0042】
そして、連結体24は、前記転動部22aを転動自在に連結するもので、中間部が可動駒21の両相対面21b,21bに当接し、両端部が可動駒21の両側面21a,21aから突出する一対の8字形状の連結板24a,24aを備えている。連結板24a,24aの中間部は、遮蔽体40の端面形状と同じく括れており、中立位置の可動駒21の両端が露出している。連結板24a,24aの両端部は、転動体22の膨出部22cの周縁がわずかに食み出るようにフランジ部22fと重なり合っている。
【0043】
そして、連結板24aの両端部には、転動体22の連通孔22hと連通する連通孔24hが形成されている。この両連通孔22h,24hには、前記遮蔽体40に突設された軸42,42が挿入され、両連結板24a,24aと転動体22とが連結される。
【0044】
また、遮蔽体40と接合する側の連結板24aには、遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入する円環状の嵌合部24b,24bが設けられている。すなわち、連結板24aに設けられた嵌合部24b,24bが遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入することによっても、連結板24aと遮蔽体40とが連結される。
【0045】
そして、可動駒21の相対面21bと連結体24の連結板24aとの各接合面には、スライド自在な嵌合部23が設けられている。この嵌合部23は、例えば、可動駒21の各相対面21bに形成された突条23aと、この突条23aを嵌入するように連結板24aに形成された溝23bとによって構成されている。逆に、可動駒21の各相対面21bに溝23bが形成され、連結体24の連結板24aに突条23aが形成されてもよい。いずれにしても、突条23aと溝23bは、可動駒21の両相対面21b,21bの中心軸または偏心して可動駒21の移動方向に1本または複数本形成される。
【0046】
そして、前記可動駒21および転動体22と連結板24aとの間には、開扉した扉11,12を自動的に閉扉させるためのバネ25が備えられている。そのため、連結体24には、バネ25を収納するための収納部24dが設けられている。
【0047】
第1の実施形態の収納部24dは、図4ないし図6に示すように、連結板24aの内面に突設された突出部24eと外周壁24sとによって環状に一対設けられている。突出部24eは、連通孔24hを形成するように突設される。したがって、収納部24dは、転動体22の回転中心を中心として環状に形成される。
【0048】
この収納部24dに収納されるバネ25は、捩りバネが使用される。捩りバネの各端部は、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24k内に挿入され、動きが規制されている。なお、小孔22k,24kは、上下に連続する場合を図示しているが、バネ25の両端部に連続するように連続しない位置に形成される場合もある。
【0049】
第1の実施形態における蝶番20はこのように構成され、2つの転動体22,22は、可動駒21を支点とし、図5および図6に示すように直線状に並んだ状態から斜交いの向きになった状態を経由して、対峙した状態とに向きが変えられる。このような蝶番20は、ドアを構成している小扉11と大扉12とを連結して使用されるため、次に、扉11,12を開閉するドアの使用態様について図7ないし図12を参照しながら説明する。
【0050】
前記のように、各扉11,12の樋形状に形成された対向側端面10aに、蝶番20の転動体22に設けられた膨出部22cがネジ30によって固定され、さらに、遮蔽体40の端面に突設された軸42,42が蝶番20の両連結板24a,24aの連通孔24h,24hと両転動部22a,22aの連通孔22h,22hとに挿通され、かつ、遮蔽体40の嵌合部43と蝶番20の連結体24の一方の連結板24aに設けられた嵌合部24bとが連結されることにより、遮蔽体40が蝶番20に連結され、両扉11,12間を塞ぐ状態とされている。
【0051】
そして、蝶番20によって連結された両扉11,12が図1および図2の実線に示すように閉扉しているときは、図7および図8に示すように、一対の転動体22,22と可動駒21とが1列に並んだ状態となっている。また、各転動体22,22に設けられた転動部22a,22aは、可動駒21の各側面21a,21aの中立位置に位置している。
【0052】
このとき、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24kは、図6に示すように上下に並び、両小孔22k,24k内に両端部が挿入されたバネ25には、何らの力も作用していない。また、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、両扉11,12の外側から内側が覗かれることはなく、また、臭いなどが漏出しないようにされている。
【0053】
そして、開扉するため、大扉12に取り付けられたハンドル15が押されると、図2の一点鎖線、図9および図10に示すように、大扉12が吊り車14の軸14aを回転軸として図面において時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中立位置から一端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0054】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を中立位置から一端側へ転動する。すると、この他方の転動体22が図面において反時計方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として図面において反時計方向に傾く。
【0055】
このとき、両扉11,12の対向側端面10a,10aの各端縁が遮蔽体40の括れている中間部分および連結体24の括れている中間部分内に食い込むようになる。したがって、開扉している途中において、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、指などが巻き込まれることがない。
【0056】
また、転動体22が連結体24に対して傾斜した姿勢となるため、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24kは、図10に示すように連続していない状態となる。したがって、両小孔22k,24k内に両端部が挿入されたバネは、捩られた状態となる。
【0057】
このようにして、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図2の一点鎖線、図9および図10に示すように、屈曲し、一方の縦枠1側に近寄る。さらに、ハンドル15が押されると、図2の二点鎖線、図11および図12に示すように、大扉12と小扉11とが重ね合わされ、完全に開扉される。このとき、両小孔22k,24kは最大限離隔し、バネ25は、最大限に捩られた状態となる。
【0058】
そして、ハンドル15が押されていた状態から開放されると、換言すれば、力が加えられなくなると、バネ25の復元力により、バネ25の両端部が挿入されている両小孔22k,24kには、連続した状態に戻ろうとする力が加えられる。したがって、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21一方の側面21a上を一端側から中立位置へ転動し、同時に、小扉11を固定した他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を一端側から中立位置へ転動する。このようにして、一対の転動体22,22と可動駒21とが1列に並ぶことにより、両扉11,12は自動的に閉扉する。
【0059】
この一連の動作において、可動駒21の側面21aに形成されたラックと他方の転動体22の転動部22aの外周面に形成されたピニオンとが噛合していることから、この転動部22aは、可動駒21上を滑ることなく転動し、両扉11,12はスムーズに開閉される。
【0060】
加えて、一方の転動体22の転動部22aから可動駒21に加えられる荷重は、嵌合部23が緩衝材となり、小さくされて他方の転動体22へ加えられる。すなわち、可動駒21の相対面21b,21bに形成された突条23a,23aが連結体24の連結板24a,24aに形成された溝24c,24cに嵌入していることから、一方の転動体22からの荷重が連結体24にも加えられ、この荷重が小さくされて他方の転動体22の転動部22aに加えられる。よって、ドアが長期間、開閉されても、ラックやピニオンは破損することがない。
【0061】
また、このドアは、ハンドル15を引くことによって、前記と反対方向にも開扉することができる。すなわち、ハンドル15を引くと、図3の一点鎖線に示すように、大扉12が吊り車14の軸を回転軸として図面において反時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の一方の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中立位置から他端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0062】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の面上を中立位置から他端側へ転動する。すると、この他方の転動部22aを設けた他方の転動体22が、前記と反対方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として前記と反対方向に傾く。
【0063】
さらにハンドル15が引かれると、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図3の二点鎖線に示すように重ね合わされた状態となって開扉される。このとき、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24kは、前記と逆方向に連続していない状態となる。したがって、両小孔22k,24k内に両端部が挿入されたバネは、前記と逆方向に捩られた状態となる。この反対方向への開扉に際しても、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれた状態が継続され、指などが巻き込まれることがない。
【0064】
そして、ハンドル15が引かれた状態から開放されると、換言すれば、力が加えられなくなると、バネ25の復元力により、両小孔22k,24kには、上下に連続した状態になろうとする力が加えられる。したがって、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21一方の側面21a上を他端側から中立位置へ転動し、同時に、小扉11を固定した他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を他端側から中立位置へ転動する。このようにして、一対の転動体22,22と可動駒21とが1列に並ぶことにより、両扉11,12は自動的に閉扉する。
【0065】
このように、第1の実施形態におけるドアは、両方向に開扉され、自動的に閉扉することができる。また、開扉した大扉12と小扉11とは、完全に重なり合った状態とすることができるため、このドアが例えば病院のトイレで採用されると、車椅子の使用者がトイレ内で倒れても救出することができる。
【0066】
次に、本発明に係る蝶番20の「第2の実施形態」について、図13および図14を参照しながら説明する。この蝶番20は、下側の連結体24の収納部24dを第1の実施形態よりも深くし、この収納部24d内に収納されるバネ25を第1の実施形態よりも長くしたことを特徴としている。バネ25は、長くなることにより、扉11,12の開閉の際に歪みが小さくなり、疲労しにくくなることから、度重なる使用にも耐えられるようになる。
【0067】
この第2の実施形態の蝶番20に固定された扉11,12も、力が加えられることによって開扉されると、第1の実施形態と同じようにバネ25が捩られ、力が加えられなくなることによってバネ25の復元力によって自動的に閉扉する。なお、図示しないが、上側の連結体24の収納部24dも第1の実施形態よりも長くし、両連結体24,24の収納部24d,24dに収納されるバネ25,25とも第1の実施形態よりも長いものとしてもよい。
【0068】
次に、本発明に係る蝶番20の「第3の実施形態」について、図15および図16を参照しながら説明する。この蝶番20は、第2の実施形態と同様、バネ25が第1の実施形態よりも長くしたものであり、バネ25の収納部24dを連結体24の連結板24aと遮蔽体40との間に設けたことを特徴としている。
【0069】
したがって、この遮蔽体40は、円筒体41によって構成されているときは端縁から奥まって端板44が備えられ、円柱体41によって構成されているときは端部に奥まった凹陥部形成されている。この端板44には、バネ25の一端部を挿入するための小孔44kが形成されている。ただし、円筒体41の端縁からスリットを形成し、スリットの奥端部を折曲することによってバネ25の一端部を係止するようにしてもよい。
【0070】
いずれにしても、遮蔽体40は、前記のように回転しないため、バネ25の一端部が小孔44k内に挿入されることにより、遮蔽体40に拘束された状態となる。また、バネ25の他端部は、転動体22のフランジ部22fに形成された小孔22k内に挿入される。したがって、このバネ25の他端部は、一端部よりも長く形成されている。また、バネ25の他端部が転動体22の揺動によって移動できるように、遮蔽体40と対向する連結体24の連結板24aには、半円形の貫通孔24nが形成されている。
【0071】
そして、扉11,12は、力が加えられることによって開扉して、転動体22が転動することによってバネ25が捩られる。このとき、バネ25の他端部は、連結体24に形成された貫通孔24n内を移動する。そして、力が加えられなくなると、第1の実施形態と同じように、バネ25の復元力によって自動的に閉扉する。このときも、バネ25の他端部は当然、連結体24に形成された貫通孔24n内を移動する。このようなバネ25は、第1の実施形態よりも長くされ、歪みが小さくなることから、疲労しにくく、長寿命化が図られる。
【0072】
次に、本発明に係る蝶番20の「第4の実施形態」について、図17ないし図21を参照しながら説明する。この蝶番20は、前記の第1ないし第3の実施形態と異なり、図17および図18に示すように、両扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれないドアに使用されるもので、両連結体24,24がトラック形状とされている。ただし、各連結体24が可動駒21および転動体22と接合する内側には、第1ないし第3の実施形態と同じく、バネ25を収納する収納部24dが突出部24eと周壁24sとの間に設けられ、バネ25の一端部を挿入する小孔24kが形成されている。
【0073】
また、この蝶番20は、遮蔽体40の嵌合部43と連結するための嵌合部が形成されず、両連結体24,24と転動体22とは、ピン24bによって連結されている。そして、転動体22のフランジ部22fがネジ30によって各扉11,12の対向側端面10a,10aに固定される。
【0074】
この転動体22を固定する部分の扉11,12の対向側端面10a,10aが樋形状であれば、フランジ部22fには半円形の膨出部が設けられるが、図示したように扉11,12の対向側端面10a,10aが平坦であれば、フランジ部22fは膨出部が設けられないで平坦な形状とされている。そして、各扉11,12の対向側端面10a,10aには、半円筒状のカバー10b,10bが取り付けられ、各扉11,12間に隙間が生じないようにされている。
【0075】
このようなドアであっても、開扉した扉11,12は自動的に閉扉される。すなわち、両扉11、12は、図19に示すように閉扉した状態から大扉12が押されることにより、図20に示すように両扉11,12が傾斜し、図21に示すように両扉11,12が重なり合って完全に開扉する。また、図示しないが、大扉12が引かれることによっても、両扉11、12は傾斜して完全に開扉する。
【0076】
いずれにしても、開扉することによって、小孔24k,24kが連続しなくなることから、バネ25は第1の実施形態において説明したように捩られた状態となる。したがって、大扉12が押されなくなり、または引かれなくなると、バネ25の復元力によって、自動的に閉扉する。
【0077】
なお、第4の実施形態においても、第2の実施形態において説明したように、連結体24の収納部を前記よりも深くし、前記よりも長いバネ25を収納することにより、バネ25の長寿命化を図るようにしてもよい。
【0078】
次に、本発明に係る蝶番20の「第5の実施形態」について図22ないし図26を参照しながら説明する。この蝶番20は、第1の実施形態と同様、両扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれるドアに使用されるが、バネ25が圧縮バネまたは引張りバネとされる。このバネ25は、連結体24に設けられた収納部24d内に一対ごと、すなわち2本が直列に配置されて収納されている。
【0079】
収納部24dは、図22および図23に示すように、可動駒21の相対面21bに対向する連結体24のほぼ中央部に一対設けられる。この収納部24dは、突出部24eが幅方向に直線状に突設されることにより、この突出部24eと周壁24sとの間に長方形状に形成される。したがって、収納部24dは、各連結体24の各片面に2か所ずつ、両連結体24,24で合計4か所に設けられ、バネ25は合計8本備えられる。なお、バネ25が引張りバネである場合は、バネ25の両端部が引っ掛けられる係止部(図示せず)が連結体24に設けられる。
【0080】
また、可動駒21の相対面21bには、前記収納部24d内に入り込む突出片21mが突設されている。この突出片21mは、相対面21bの幅方向の中心に突設され、一対のバネ25の間に挟み込まれる状態とされる。このような突出片21mは、各相対面21bに2か所、両相対面21b,21bで4か所に備えられる。
【0081】
そして、連結体24は、8字形状に形成され、下側の連結体には、遮蔽体40の嵌合部43,43を嵌入するための円環状の嵌合部24b,24bが設けられている。このような連結体24と転動体22の連通孔24h,22hに遮蔽体40の軸42が挿入されることにより、連結体24と転動体22とが連結される。
【0082】
そして、蝶番20の転動体22のフランジ部22fに設けられた膨出部22cが各扉11,12の樋形状に形成された対向側端面10a,10aにネジ30によって固定され、ドアとして使用される。
【0083】
このドアは、図24に示すように閉扉している状態において、両扉11,12および両転動体22が可動駒21を挟んで一列に並んでいる。この状態において、可動駒21に突設された各突出片21mは、各収納部24d内の中心に位置しており、各バネ25は、圧縮も引張りもされていない。
【0084】
そして、大扉12が押されると、図25に示すように、両扉11,12が傾斜する。このとき、各突出片21mが収納部24d内を両扉11,12の拡開側(図面において下側)へ移動する。すると、バネ25が圧縮バネであると、下側のバネ25が圧縮され、上側のバネ25が拘束されない状態となる。また、バネ25が引張りバネであると、上側のバネ25が引っ張られ、下側のバネ25が拘束されない状態となる。
【0085】
そして、大扉12がさらに押されて完全に開扉すると、図26に示すように両扉11,12が重なり合う。このとき、各突出片21mは、収納部24d内を図面において最大限下側へ移動する。すると、バネ25が圧縮バネであると、下側が最大限圧縮され、バネ25が引張りバネであると、上側が最大限引っ張られる。
【0086】
そして、大扉12が押されなくなると、バネ25の復元力により、突出片21mには元の中立位置に押し戻すような力が加えられる。突出片21mが可動駒21に突設され、しかも、可動駒21の側面21aと転動体22の転動部22aとが噛合していることから、突出片21mが押し戻されることによって、転動体22が転動する。そして、可動駒21が中立位置に戻ると、両転動体22,22と可動駒21とが可動駒21を挟んで直線状に並び、両扉11,12は完全に閉扉する。このようにして、開扉した扉11,12は自動的に閉扉される。
【0087】
また、大扉12が引かれることによって、前記と逆方向に開扉する場合は、突出片21mが前記と逆方向に移動し、バネ25が逆方向に圧縮され、または引っ張られる。そして、大扉12が引かれなくなると、前記と同様、開扉した両扉11,12がバネ25の復元力によって閉扉する。
【0088】
いずれにしても、閉扉した状態から開扉し、閉扉するまでの一連の状態において、両扉11,12間には、遮蔽体40が塞がれており、遮蔽体40が動かないことから、両扉11,12間に指などが巻き込まれることがない。
【0089】
次に、本発明に係る蝶番20の「第6の実施形態」について、図27ないし図31を参照しながら説明する。この蝶番20は、第5の実施形態で説明したような圧縮バネまたは引張りバネのようなバネ25を備え、第4の実施形態で説明したような両扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれないドアに使用される。
【0090】
したがって、この蝶番20は、図27および図28に示すように、両連結体24,24がトラック形状とされ、片側の連結体24には遮蔽体40の嵌合部43を連結する嵌合部が形成されず、両連結体24,24と転動体22とは、ピン24bによって連結される。また、両連結体24,24が可動駒21の相対面21bと対向するほぼ中央部には、バネ25を収納する収納部24dが直線状に一対設けられている。この収納部24dは、突出部24eと周壁24sとの間に設けられている。そして、可動駒21の相対面21bには、前記収納部24d内に入り込む突出片21mが幅方向の中心に突設されている。
【0091】
また、転動体22のフランジ部22fがネジ30によって各扉11,12の対向側端面10a,10aに固定される。この転動体22を固定する部分の扉11,12の対向側端面10a,10aが樋形状であれば、フランジ部22fには半円形の膨出部が設けられるが、図示したように扉11,12の対向側端面10a,10aが平坦であれば、フランジ部22fは平坦な形状とされている。そして、各扉11,12の対向側端面10a,10aには、半円筒状のカバー10b,10bが取り付けられ、各扉11,12間に隙間が生じないようにされている。
【0092】
このようなドアであっても、図29に示すように両扉11,12が閉扉した状態においては、各突出片21mが収納部24d内の中心に位置し、バネ25には圧縮も引張りもされていない。そして、大扉12が押されると、図30に示すように両扉11,12が傾斜し、さらに、図31に示すように両扉11,12が重なり合って完全に開扉される。
【0093】
このとき、各突出片21mが収容部内を両扉11,12の拡開側(図面において下側)へ移動する。すると、バネ25が圧縮バネであると、下側のバネ25が圧縮され、上側のバネ25が拘束されない状態となる。また、バネ25が引張りバネであると、上側のバネ25が引っ張られ、下側のバネ25が拘束されない状態となる。
【0094】
そして、大扉12が押されなくなると、バネ25の復元力により、突出片21mには元の中立位置に押し戻すような力が加えられる。そして、両転動体22,22が転動することによって、両転動体22,22と可動駒21とが直線状に並ぶと、両扉11,12は閉扉した状態となる。
【0095】
また、大扉12が引かれることによって開扉する場合は、突出片21mが前記と逆方向に移動し、バネ25が逆方向に圧縮され、または引っ張られる。そして、大扉12が引かれなくなると、開扉した両扉11,12がバネ25の復元力によって転動体22が転動し、両転動体22,22と可動駒21とが直線状に並ぶことによって、両扉11,12が閉扉した状態となる。
【0096】
次に、本発明に係る蝶番20の「第7の実施形態」について、図32ないし図36を参照しながら説明する。この蝶番20は、第5の実施形態と同様、両扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれるドアに使用され、バネ25として圧縮バネまたは引張りバネが使用される。
【0097】
ただし、収納部24dは、図32に示すように、第5の実施形態と異なり、転動体22と重なる連結体24の両端部に転動体22の回転中心を中心として円弧状に一対設けられている。この収納部24dは、円弧状に突設された突出部24eと周壁24sとによって間仕切られ、バネ25が円弧状に撓曲されて収納されている。この収納部24dは、各連結体24に2か所、両連結体24,24で合計4か所に設けられ、バネ25は合計8本備えられる。なお、バネ25が引張りバネである場合は、バネ25の両端部が引っ掛けられる係止部(図示せず)が連結体24に設けられる。
【0098】
また、転動体22の支持部22gには、前記収納部24d内に入り込む突出片22mが突設されている。この突出片22mは、転動体22が転動部22aを中心に揺動することによって、収納部24d内で揺動する。また、各突出片22mは、各収納部24d内の一対のバネ25,25の間に挟み込まれる状態となる。なお、バネ25が引張りバネである場合は、バネ25の両端部が引っ掛けられる係止部(図示せず)が連結体24に設けられる。
【0099】
また、連結体24は、8字形状に形成され、下側の連結体には、遮蔽体40の嵌合部43,43を嵌入するための円環状の嵌合部24b,24bが設けられている。そして、連結体24と転動体22の連通孔24h,22hに遮蔽体40の軸42が挿入されることにより、連結体24と転動体22とが連結される。
【0100】
そして、蝶番20の転動体22のフランジ部22fに設けられた膨出部22cが各扉11,12の樋形状に形成された対向側端面10a,10aにネジ30によって固定され、ドアとして使用される。
【0101】
すなわち、ドアは、図34に示すように、閉扉している状態において、両扉11,12および両転動体22が一列に並んでいる。この状態において、転動体22に突設された各突出片22mは、各収納部24d内の中心に位置しており、各バネ25は、圧縮も引張りもされていない。
【0102】
そして、大扉12が押されると、図35に示すように、両扉11,12が傾斜する。このとき、転動体22も傾斜するため、突出片22mが収納部24d内を両扉11,12の近接側(図面において上側)へ移動する。すると、バネ25が圧縮バネであると、上側のバネ25が圧縮され、下側のバネ25が拘束されない状態となる。また、バネ25が引張りバネであると、下側のバネ25が引っ張られ、上側のバネ25が拘束されない状態となる。
【0103】
そして、大扉12がさらに押されて完全に開扉すると、図36に示すように両扉11,12が重なり合う。このとき、各突出片22mは、収納部24d内を図面において最大限上側へ移動し、バネ25が最大限圧縮され、または引っ張られる。
【0104】
そして、大扉12が押されなくなると、バネ25の復元力により、突出片22mには元の中立位置に押し戻すような力が加えられる。突出片22mは、転動体22の支持部22gに突設され、しかも、可動駒21の側面21aと転動体22の転動部22aとが噛合していることから、突出片22mが押し戻されることによって、転動体22が転動する。そして、突出片22mが中立位置に戻ると、両転動体22,22と可動駒21とが可動駒21を挟んで直線状に並び、開扉した扉11,12は自動的に閉扉される。
【0105】
また、大扉12が引かれることによって、前記と逆方向に開扉する場合は、突出片22mが前記と逆方向に移動し、バネ25が逆方向に圧縮され、または引っ張られる。そして、大扉12が引かれなくなると、前記と同様、開扉した両扉11,12がバネ25の復元力によって閉扉する。
【0106】
いずれにしても、閉扉した状態から開扉し、閉扉するまでの一連の状態において、両扉11,12間には、遮蔽体40が塞がれており、遮蔽体40が動かないことから、両扉11,12間に指などが巻き込まれることがない。
【0107】
次に、本発明に係る蝶番20の「第8の実施形態」について、図37ないし図41を参照しながら説明する。この蝶番20は、第7の実施形態で説明したような圧縮バネまたは引張りバネのようなバネ25を備え、第4および第6の実施形態で説明したような両扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれないドアに使用される。
【0108】
したがって、この蝶番20は、図37および図38に示すように、両連結体24,24がトラック形状とされ、片側の連結体24には遮蔽体40の嵌合部43を連結する嵌合部が形成されず、両連結体24,24と転動体22とは、ピン24bによって連結される。また、収納部24dは、転動体22と重なる連結体24の両端部に円弧状に設けられている。この収納部24dは、突設された突出部24eと周壁24sとの間に一対設けられ、バネ25が円弧状に撓曲して収納される。
【0109】
そして、転動体22の支持部22gには、前記収納部24d内に入り込む突出片22mが突設されている。この突出片22mは、転動体22が転動部22aを中心に揺動することによって、収納部24d内で揺動する。また、各突出片22mは、各収納部24d内の一対のバネ25,25の間に挟み込まれる。
【0110】
そして、転動体22のフランジ部22fがネジ30によって各扉11,12の対向側端面10a,10aに固定される。この転動体22を固定する部分の扉11,12の対向側端面10a,10aが樋形状であれば、フランジ部22fには半円形の膨出部が設けられるが、図示したように扉11,12の対向側端面10a,10aが平坦であれば、フランジ部22fは平坦な形状とされている。そして、各扉11,12の対向側端面10a,10aには、半円筒状のカバー10b,10bが取り付けられ、各扉11,12間に隙間が生じないようにされている。
【0111】
このようなドアであっても、図39に示すように両扉11,12が閉扉した状態においては、各突出片22mが収納部24d内の中心に位置し、バネ25には圧縮も引張りもされていない。そして、大扉12が押されると、図40に示すように両扉11,12が傾斜し、さらに、図41に示すように両扉11,12が重なり合って完全に開扉される。
【0112】
このとき、各突出片22mが収容部内を両扉11,12の近接側(図面において上側)へ移動する。すると、バネ25が圧縮バネであると、上側のバネ25が圧縮され、下側のバネ25が拘束されない状態となる。また、バネ25が引張りバネであると、下側のバネ25が引っ張られ、上側のバネ25が拘束されない状態となる。
【0113】
そして、大扉12が押されなくなると、バネ25の復元力により、突出片22mには元の中立位置に押し戻すような力が加えられる。突出片22mは、転動体22の支持部22gに突設され、しかも、可動駒21の側面21aと転動体22の転動部22aとが噛合していることから、突出片22mが押し戻されることによって、転動体22が転動する。そして、突出片22mが中立位置に戻ると、両転動体22,22と可動駒21とが可動駒21を挟んで直線状に並び、両扉11,12は自動的に閉扉される。
【0114】
また、大扉12が引かれることによって、前記と逆方向に開扉する場合は、突出片22mが前記と逆方向に移動し、バネ25が逆方向に圧縮され、または引っ張られる。そして、大扉12が引かれなくなると、前記と同様、開扉した両扉11,12がバネ25の復元力によって閉扉する。
【0115】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲内において種々変更することができる。例えば、蝶番20は、可動駒21の両側面21aと転動部22aの外周面をゴムや粗面その他の摩擦係数の大きな材質とすることにより、可動駒21の両面にラックを形成せず、転動部22aの外周面にラックを形成しないようにしてもよい。
【0116】
また、連結体24は、連結板24a,24aとピン24b,24bとの組合せではなく、両端部が回動軸を貫通するコ字形のシャフトなどによって構成してもよい。さらに、蝶番20は、折戸の例で説明した五角形状の転動体22と、T字形状またはL字形状の転動体22とを組み合わせたものとしてもよい。
【0117】
また、蝶番20は、前記のように2枚の扉11,12を連結するだけでなく、1枚の扉と壁とを連結する場合にも使用することができる。この場合も、開扉した扉は自動的に閉扉される。さらに蝶番20は、扉以外に、小物入れや家具などの蓋、間仕切りなどを構成している各種のパネル体に取り付けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係る蝶番は、折戸や自在戸のようなドアだけでなく、2枚のパネル体が山折となって開くような蓋、靴箱や箪笥などの扉、大部屋を小部屋に仕切るための間仕切りなどとして有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施形態に係る蝶番を含むドアの一部断面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る蝶番を含むドアの一部断面平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蝶番を含むドアの一部断面平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るドアの分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る蝶番の斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの平面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る蝶番を含むドアの平面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図22】本発明の第5の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図25】本発明の第5の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図27】本発明の第6の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図28】本発明の第6の実施形態に係る蝶番の断面正面図である。
【図29】本発明の第6の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図30】本発明の第6の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図31】本発明の第6の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図32】本発明の第7の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図33】本発明の第7の実施形態に係る蝶番の断面正面である。
【図34】本発明の第7の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図35】本発明の第7の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図36】本発明の第7の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図37】本発明の第8の実施形態に係る蝶番の分解斜視図である。
【図38】本発明の第8の実施形態に係る蝶番の断面正面である。
【図39】本発明の第8の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図40】本発明の第8の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図41】本発明の第8の実施形態に係る蝶番の平面図である。
【図42】従来のドアを含む正面図である。
【図43】従来の蝶番を含むドアの一部断面平面である。
【図44】従来のドアの断面平面である。
【符号の説明】
【0120】
20……蝶番
21……可動駒
21a…側面
21b…相対面
21m…突出片
22……転動体
22c…取付板
22a…転動部
22m…突出片
22f…フランジ部
23……嵌合部
24……連結体
24a…連結板
24b…ピン
24d…収納部
25……バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に転動部が設けられ、該転動部が一定の間隔をあけて配置された一対の転動体と、該一対の転動体の転動部に挟まれ、該転動部が転動することによって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とを備え、
前記連結体に収納部が設けられ、該収納部内に中立位置から変位した前記可動駒を中立位置に復帰させるバネが収納されていることを特徴とする蝶番。
【請求項2】
前記連結体に設けられた収納部は、前記転動体および可動駒と対向する部分に、転動体の各回転中心を中心として環状に一対形成され、
前記バネは、前記収容部内に収納される渦巻きバネであり、一端が前記転動体に固定され、他端が前記連結体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の蝶番。
【請求項3】
前記連結体に設けられた収納部は、前記可動駒の相対面と対向するほぼ中央部に、可動駒の移動方向と同じ方向に直線状に一対形成され、
前記可動駒は、前記収納部内に突出した突出片を移動方向の中間に備え、
前記バネは、前記突出片を挟んで前記各収容部内に一対ずつ収納される圧縮バネまたは引張りバネであることを特徴とする請求項1に記載の蝶番。
【請求項4】
前記連結体に設けられた収納部は、前記転動体と対向する面両端部に、転動体の回転中心を中心として円弧状に一対形成され、
前記各転動体は、前記収納部内に突出した突出片を揺動方向の中間に備え、
前記バネは、前記突出片を挟んで前記各収容部内に一対ずつ収納される圧縮バネまたは引張りバネであることを特徴とする請求項1に記載の蝶番。
【請求項5】
前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記各転動体の転動部には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の蝶番。
【請求項6】
前記連結体は、両端部が前記可動駒の両側面から突出し、かつ、中間部が該可動駒の相対面と当接するように設けられた一対の連結板と、前記転動体を支持し、かつ、前記連結板の両端部を連結する一対のピンとを備えてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の蝶番。
【請求項7】
前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の蝶番。
【請求項8】
前記転動体は、前記転動部を先端部に設けた支持部と、該支持部の基端部に設けられたフランジ部とが一体に成形されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2007−332633(P2007−332633A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164834(P2006−164834)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(597000216)杉田エース株式会社 (9)
【出願人】(391037353)
【Fターム(参考)】