説明

表皮角化正常化剤、及び、該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤、表皮正常化用外用剤、化粧料、表皮正常化用化粧料、医薬部外品、又は表皮正常化用医薬部外品

【課題】表皮の角化を正常化し得る表皮角化正常化剤を提供することなどを課題とする。
【解決手段】ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有する表皮角化正常化剤、該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤などを提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮角化正常化剤及び該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤、表皮正常化用外用剤、化粧料、表皮正常化用化粧料、医薬部外品、又は表皮正常化用医薬部外品に関する。具体的には、例えば、皮膚における表皮の角化を正常化することにより、乾燥肌、毛穴の目立ち、肌荒れ又はアトピー性皮膚炎等を軽減し得る表皮角化正常化剤、及び、該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤、表皮正常化用外用剤、化粧料、表皮正常化用化粧料、医薬部外品、又は表皮正常化用医薬部外品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の外方側にある表皮は、生体を防御したり、水分の過剰な蒸発を防いだりするバリア機能を有しており、最も内方側にある基底層と、該基底層から外方側へ向かって順に配置されている有棘層と顆粒層と角質層との4層で構成されている。また、表皮を構成する各層の細胞の大半は、基底層で生じた角化細胞に由来するものであり、該角化細胞は、基底層から外方側へ角化過程を経ながら押し出され、最外層の角質層を形成する角質細胞になる。
角質細胞は、ケラチン繊維とケラチン繊維の周囲にあるコーニファイドエンベロープ(以下、CEともいう)などとによって形成されている。そして、CEは、角化細胞の角化に伴い産生される、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリン等の複数のCE前駆体蛋白質が、トランスグルタミナーゼ−1などの酵素により架橋され不溶化することにより形成される。
また、角質細胞は、最終的には角質層から剥がれ落ちるが、一方で、表皮におけるバリア機能を維持するため、角化細胞が基底層で生じ角質層に至って角質細胞になって剥がれ落ちるという代謝のサイクルが、1サイクル約4週間をかけて繰り返されている。
【0003】
しかしながら、加齢、不規則な生活、又はストレスなどにより斯かる代謝のサイクルが正常に繰り返されなくなると、角化亢進や不全角化が起こり、乾燥肌、毛穴の目立ち、又は肌荒れなどの皮膚トラブルが発生し得る。
【0004】
従来、このような皮膚トラブルに対して、代謝のサイクルを整え表皮の角化を正常化し得る表皮角化正常化剤としては、様々なものが知られており、例えば、角化過程に関与している上記のごときCE前駆体蛋白質の産生を促進するものが知られている。
【0005】
この種の表皮角化正常化剤としては、具体的には、例えば、セイロンテツボクの種子抽出物を含み、インボルクリンの産生を促進することにより正常な角化を促し代謝のサイクルを整え得るものが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、斯かる表皮角化正常化剤は、インボルクリンの産生促進能が必ずしも十分なものではない。また、トランスグルタミナーゼ−1などの酵素蛋白質、フィラグリンやロリクリン等のCE前駆体蛋白質の産生能に優れるものでもない。従って、斯かる表皮角化正常化剤は、角化に関わる蛋白質の産生能に必ずしも優れるものではなく、表皮の角化を正常化する性能が十分なものではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−213187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点等に鑑み、表皮の角化を正常化し得る表皮角化正常化剤を提供することを課題とする。また、該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤、表皮正常化用外用剤、化粧料、表皮正常化用化粧料、医薬部外品、又は表皮正常化用医薬部外品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表皮角化正常化剤は、ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することを特徴としている。
本発明に係る表皮角化正常化剤は、ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することにより、表皮におけるフィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、又はトランスグルタミナーゼ−1をコードする遺伝子の発現を促進し得る。従って、これら蛋白質の産生を促進し、皮膚における表皮の角化を正常化させ得る。
【0010】
また、本発明に係る表皮角化正常化剤は、前記ポリグルタミン酸の酸沈殿物を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る表皮角化正常化剤は、Bacillus属の微生物が生成する粗ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することが好ましい。
また、前記Bacillus属の微生物がBacillus subtilis var chungkookjang,KCTC 0697BPであることが好ましい。
また、前記加水分解ポリグルタミン酸の平均分子量が400〜10万であることが好ましい。
これらの好ましい構成により、表皮の角化がより確実に正常化され得るという利点がある。
【0012】
本発明に係る皮膚外用剤、表皮正常化用外用剤、化粧料、表皮正常化用化粧料、医薬部外品、又は表皮正常化用医薬部外品は、前記表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表皮角化正常化剤は、表皮の角化を正常化し得るという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の表皮角化正常化剤の実施形態について説明する。
本実施形態の表皮角化正常化剤は、ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有するものである。また、本実施形態の表皮角化正常化剤は、前記加水分解ポリグルタミン酸又はその塩以外の成分が含まれ得るものである。
前記ポリグルタミン酸は、通常、グルタミン酸がγ−グルタミル結合で連結してなるγ−ポリグルタミン酸である。また、通常、水溶性であり、分子量が数10万〜数100万である。
また、前記ポリグルタミン酸としては、化学合成されたポリグルタミン酸、又は、Bacillus属などの微生物が生成した粗ポリグルタミン酸等が挙げられ、表皮角化正常化剤が表皮の角化を正常化し得る性能により優れるという点で、Bacillus属の微生物が生成した粗ポリグルタミン酸が好ましい。また、Bacillus属の微生物が生成した粗ポリグルタミン酸としては、表皮角化正常化剤が表皮の角化を正常化し得る性能により優れるという点で、Bacillus subtilis var chungkookjangが生成した粗ポリグルタミン酸が好ましい。
【0015】
前記Bacillus subtilis var chungkookjangは、詳しくは、枯草菌(Bacillus subtilis)の1種であるBacillus subtilis var chungkookjang(バチルス サブティリス チョングッチャン),KCTC 0697BP菌株である。なお、この菌株は、生命工学研究所遺伝子銀行(KCTC,大韓民国大田広域市儒域区魚隠洞52所在)に寄託されたものである。
【0016】
なお、前記Bacillus subtilis var chungkookjangは、チョングッチャン(清麹醤)から分離されたものに由来する。また、該菌株は、耐塩性を有し、胞子を形成しにくく、通常、菌株自体がプラスミドを含有していない。
【0017】
前記ポリグルタミン酸は、D体又はL体のグルタミン酸で構成されているものである。
前記ポリグルタミン酸としては、例えば、L体グルタミン酸及びD体グルタミン酸の両方で構成された混合型ポリグルタミン酸、L体のグルタミン酸のみで構成されたL体ポリグルタミン酸、D体のグルタミン酸のみで構成されたD体ポリグルタミン酸等が挙げられる。なかでも、表皮の角化の正常化性能がより優れたものになり得るというという点で、混合型ポリグルタミン酸が好ましい。なお、前記ポリグルタミン酸は、ラセミ体のものであってもよい。
【0018】
Bacillus属の微生物が生成した粗ポリグルタミン酸は、通常、混合型ポリグルタミン酸である。即ち、Bacillus属の微生物が生成した粗ポリグルタミン酸は、D体及びL体の両方で構成され得るものであり、Bacillus属の微生物の種類によってその構成比率及び配列パターンは異なる。また、Bacillus属の枯草菌(Bacillus subtilis)によって生成される粗ポリグルタミン酸は、菌種によってその構成比率及び配列パターンは異なり得る。
【0019】
前記粗ポリグルタミン酸は、例えば、Bacillus属の微生物を培養することにより得ることができる。Bacillus属の微生物の培養方法としては、ポリグルタミン酸が生成されるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、グルタミン酸の存在下でGS培地等において、30〜55℃で、適宜適当な時間培養する方法が挙げられる。なお、培地は、寒天などの固体状であっても、液体状であってもよい。
【0020】
前記加水分解処理は、前記粗ポリグルタミン酸などのポリグルタミン酸をより低分子のものにするために行うものである。前記加水分解処理の方法としては、塩酸などの無機酸若しくは有機酸等の存在下で行う化学的な加水分解処理方法、又は、γ−ポリグルタミン酸分解酵素による酵素的な加水分解処理方法などが挙げられる。なかでも、比較的簡便に行えるという点で、無機酸の存在下で行う化学的な加水分解処理方法が好ましい。
【0021】
前記加水分解ポリグルタミン酸は、塩の状態であってもよく、斯かる塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の無機金属塩、又はアンモニウム塩などが挙げられる。
【0022】
前記加水分解ポリグルタミン酸又はその塩としては、表皮の角化の正常化性能がより優れたものになり得るというという点で、Bacillus属の微生物によって生成された粗ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じたものが好ましい。
【0023】
前記加水分解ポリグルタミン酸は、分子量が特に限定されるものではないが、表皮の角化の正常化性能がより優れたものになり得るという点で、平均分子量が400〜10万であることが好ましく、800〜10000であることがより好ましく、1000〜2000であることがさらに好ましい。
前記平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めたものであり、詳しくは、後述する実施例に記載された方法によって測定されたものである。
【0024】
前記加水分解ポリグルタミン酸又はその塩は、前記表皮角化正常化剤における含有率が、特に限定されるものではない。加水分解ポリグルタミン酸が溶媒に溶解することにより表皮角化正常化剤が溶液状になっている場合などにおいては、凍結乾燥法などにより溶媒を除去したあとの固形物量を測定することにより、表皮角化正常化剤における加水分解ポリグルタミン酸又はその塩の含有率が求められる。なお、表皮角化正常化剤が溶液状であっても、加水分解ポリグルタミン酸又はその塩のみからなる固形状であっても、該溶液状のもの又は固形状のものを表皮角化正常化剤として用いることができる。
【0025】
前記表皮角化正常化剤は、前記加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を含むことから、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、又は酵素としてのトランスグルタミナーゼ−1といった角化に関わる各蛋白質をコードするmRNAの発現を促進し得る。そして、これら各蛋白質をコードするmRNAの発現が促進されることにより、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、又はトランスグルタミナーゼ−1の産生が促進され得る。その結果、皮膚における表皮の角化が正常化され得る。
【0026】
例えば、前記フィラグリンは、角質層の内方側にある顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒に含まれるタンパク質であり、プロフィラグリンから合成される。合成されたフィラグリンは、角化細胞の角化に伴い、角質層下層ではケラチン繊維同士をつなぎとめる役割を担い、角質層上層ではアミノ酸等へと加水分解されるものであることが知られている。即ち、フィラグリンは、角質層下層では表皮の皮膚粘弾性を保ち、表皮のハリや弾力を維持し、角質層上層では表皮の保湿の役割を担うアミノ酸を供給するものであることが知られている。
【0027】
また、インボルクリン、ロリクリン、又は酵素としてのトランスグルタミナーゼ−1も、角化細胞が角質細胞になる角化過程の各段階の反応を促す蛋白質であることが知られている。
【0028】
これらのことから、表皮におけるフィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ−1の産生量が減少すると、角質層の正常な形成が妨げられ、皮膚のバリア機能、保湿機能、又は粘弾性機能が低下し得る。そして、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚症状を呈したり、アトピー性皮膚炎、乾癬、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患を発症したりするようになり得る。また、毛穴が目立つ、又はハリや弾力が低下するといった美容上の問題が発生し得る。
これに対して、表皮における角化過程の各段階に関与するフィラグリン、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ−1、ロリクリンといった蛋白質の産生を促進することにより、角質層の正常な形成を促すことができる。そして、角質層の正常な形成を促し、表皮の角化を正常化することにより、毛穴の目立ち、乾燥肌、肌のハリの低下、肌荒れ、アトピー性皮膚炎等が軽減され得る。
【0029】
前記表皮角化正常化剤の製造方法としては、例えば、Bacillus subtilis var chungkookjang,KCTC 0697BP菌株などのBacillus属の微生物が産生する粗ポリグルタミン酸を含む培養液を限外ろ過膜にて分子量ごとに分画し、分画したものを酸により沈殿処理し、沈殿処理後の酸沈殿物(スラッジ)を水に懸濁して、さらに懸濁液状態でpH3〜4に調整して加水分解することにより、加水分解ポリグルタミン酸を得る方法を採用することができる。
前記表皮角化正常化剤の製造においては、表皮角化正常化剤が表皮の角化をより正常化し得るという点で、粗ポリグルタミン酸などのポリグルタミン酸を酸により沈殿処理した後の酸沈殿物(スラッジ)を加水分解すること、即ち、粗ポリグルタミン酸などのポリグルタミン酸の酸沈殿物を加水分解処理することが好ましい。
前記加水分解ポリグルタミン酸又はその塩は、そのまま表皮角化正常化剤として用いることもでき、さらに水などの溶媒を加えて、含有率を調整した表皮角化正常化剤として用いることもできる。製造された表皮角化正常化剤は、含まれている加水分解ポリグルタミン酸の平均分子量が実施例に記載されたGPCによる方法で測定される。
【0030】
なお、前記表皮角化正常化剤は、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ−1の各蛋白質をコードするmRNAの発現を促進することから、フィラグリン産生促進剤、インボルクリン産生促進剤、ロリクリン産生促進剤、又はトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤として用いることもできる。
【0031】
次に、本発明の皮膚外用剤の実施形態について説明する。本実施形態の皮膚外用剤は、前記表皮角化正常化剤を含むものである。
前記表皮角化正常化剤は、通常、加水分解ポリグルタミン酸又はその塩が0.001〜20重量%の含有率になるように、好ましくは、0.02〜10重量%、より好ましくは、0.05〜1.0重量%の含有率になるように前記皮膚外用剤に配合される。なお、該含有率は、表皮角化正常化剤が、加水分解ポリグルタミン酸を含んだ水溶液などである場合は、表皮角化正常化剤に含まれる加水分解ポリグルタミン酸又はその塩の上述した含有率を用いて、固形物換算により求める。固形物換算は、表皮角化正常化剤に含まれる溶媒を凍結乾燥により除去した後、加水分解ポリグルタミン酸又はその塩の固形物の量から算出により行う。
【0032】
前記皮膚外用剤は、例えば、表皮正常化用外用剤として用いられ得る。また、表皮正常化用化粧料などの化粧料(化粧品)、表皮正常化用医薬部外品などの医薬部外品、医薬品等の態様で用いられ得る。
【0033】
前記皮膚外用剤の具体的な態様としては、例えば、1)局所又は全身用の皮膚洗浄料又は皮膚塗布用化粧料類、2)頭皮や頭髪に適用する頭皮又は頭髪化粧料類、3)浴湯に投じて使用する浴用化粧料類、4)人体用の消臭防臭用化粧料、5)洗口剤等の口腔用化粧料類、6)皮膚貼付用シート、化粧用コットン、ウエットティッシュなどに担持されてなるシート状化粧料類が挙げられる。また、前記皮膚外用剤は、固形状、溶液状、ゲル状、エマルジョン状などの形態になり得るものであり、また、シート状担体、スプレー、アンプル、カプセル、粉末(パウダー)など利用上適宜適当な剤型に適用されて用いられ得る。
【0034】
皮膚塗布用化粧料類としては、具体的には、例えば、ローション、乳液、クリーム、スプレー、軟膏、ジェル、美容液、オイル、パック、ミストなどの基礎化粧料、ファンデーション、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラなどのメークアップ化粧料などが挙げられる。また、皮膚洗浄料類としては、洗顔料、クレンジングなどが挙げられ、頭髪化粧料類としては、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアートニック、育毛・養毛料などが挙げられる。
【0035】
前記皮膚外用剤には、一般的な化粧料等に配合されている成分が配合され得る。斯かる成分としては、例えば、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、セタノール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、流動パラフィン、スクワラン等の非極性油剤類、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル系油剤類、小麦胚芽油やオリーブ油等の植物油類、トリメチルシロキシケイ酸、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン化合物類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素化合物類等の液状油剤が挙げられる。
さらに、前記皮膚外用剤に配合され得る成分としては、例えば、水溶性高分子、保湿柔軟化剤、抗酸化剤、収斂剤、美白剤、抗菌剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤類、紫外線散乱剤、水溶性ビタミン類、油溶性ビタミン類、酵素等の医薬部外品原料規格、化粧品種別配合成分規格、化粧品原料基準、日本薬局方、食品添加物公定書規格等の成分等が挙げられる。
【0036】
前記皮膚外用剤にさらに配合され得る水溶性高分子としては、例えば、アラビアゴム、クインシード、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、アルギン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0037】
前記皮膚外用剤が乳化により調製された乳化物である場合は、該乳化物は、通常、液状油剤を乳化剤によって乳化して調製されてなる。液状油剤の具体的な例としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、パルミチン酸セチル、イソステアリン酸−2−ヘキシルデシル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸プロピレングリコール等のエステル系液状油剤やコメ油、コメヌカ油、月見草油、リノール酸、コムギ胚芽油、オリーブ油、ホホバ油、ブドウ種子油、カミツレ油、ローズマリ−油、ウイキョウ油等の植物系液状油、卵黄油などの動物系液状油が挙げられる。
【0038】
前記乳化物の調製に用いられる乳化剤としては、例えば、脂肪酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
前記皮膚外用剤は、さらにキチン、キトサン又はそれらの誘導体を含み得る。キチン、キトサン又はそれらの誘導体としては、特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン、キトサンのグリコール酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩等の塩類、部分ミリストイル化キトサンピロリドンカルボン酸(例えば、商品名「PM−キトサン」ピアス株式会社製)等の部分アシル化キトサン塩、部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン(例えば、商品名「MC−キトサン」ピアス株式会社製))等の部分アシル化カルボキシメチルキトサン等が挙げられる。
【0040】
なお、上記例示した化粧料などの前記皮膚外用剤は、従来公知の一般的な方法によって製造できる。また、前記表皮角化正常化剤は、該表皮角化正常化剤を含む皮膚外用剤を皮膚に塗布するなどして皮膚と接するように用いる化粧方法により使用することができる。
【0041】
本実施形態の表皮角化正常化剤及び皮膚外用剤は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の表皮角化正常化剤及び皮膚外用剤に限定されるものではない。また、本発明では、一般の表皮角化正常化剤及び皮膚外用剤において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
まず、以下に示すようにして、表皮角化正常化剤を製造した。その詳細について、説明する。
【0044】
(実施例1)
Bacillus subtilis var chungkookjang,KCTC 0697BP菌株を下記の培養条件で培養した。
培地:(L−グルタミン酸 4%、グルコース 3%、(NH42SO4 1%、
Na−citrate 1%、KH2PO4 0.27%、
Na2HPO4 0.42%、NaCl 0.05%、MgSO4 0.3%、
ビタミン溶液1ml/Lが添加されたGS培地、pH7.0)
培養:37℃で5日間
さらに、培養後の粗ポリグルタミン酸含有培養液を限外ろ過膜にて分画した。分画したものに対して塩酸を用いた酸沈殿処理を行い、その後、酸沈殿物(スラッジ)を水に懸濁し、塩酸水溶液によってpH3.5に調整し、懸濁液状態で加水分解処理を行った。
そして、加水分解処理により生じた加水分解ポリグルタミン酸を含む懸濁液を得て、該懸濁液に1重量%水酸化カリウム水溶液を加えて水溶液にし、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって、ポリグルタミン酸の平均分子量別に分画して、加水分解ポリグルタミン酸の平均分子量が400を示す水溶液(加水分解ポリグルタミン酸のカリウム塩を含む)を調製した。該水溶液に対して凍結乾燥を行って水などの溶媒を取り除き、固形物を得て、該固形物をそのまま表皮角化正常化剤とすることで表皮角化正常化剤を製造した。製造した表皮角化正常化剤は、後述する各種の評価に用いた。
【0045】
加水分解ポリグルタミン酸(PGA)の平均分子量は、以下のようにして求めた。即ち、カラムとしては、Viscotek社製「GMPWXL」(2本連結)を用い、溶離液としては、0.1M硝酸ナトリウムを用い、検出器としては、Viscotek社製「LR125 Laser Refractometer」を用い、40℃で示差屈折率により検出を行った。また、標準分子量物質としてポリエチレングリコール(American Polymer Standards社製)の分子量が350,700,1500,2500,5250,10225,14500の標準サンプルを用い、測定した結果に基づき検量線を作成し、この検量線から求めた値をポリエチレングリコール換算の平均分子量として求めた。
なお、平均分子量は、重量平均分子量(Mw)の値である。また、GPCチャートにおいて、ベースラインにより分割される複数のピークがあるときは、各ピークそれぞれについて平均分子量を求めたものを平均分子量の値として採用する。
【0046】
(実施例2〜4)
実施例1と同様な操作により、加水分解ポリグルタミン酸(PGA)の平均分子量が、それぞれ1000、2000、10000を示す加水分解水溶液から調製した固形状の表皮角化正常化剤を各実施例でそれぞれ製造した。
【0047】
(実施例5〜8)
実施例1と同様な操作により、加水分解ポリグルタミン酸(PGA)の平均分子量が、それぞれ800、900、1200、1500を示す加水分解水溶液から調製した固形状の表皮角化正常化剤を各実施例でそれぞれ製造した。
【0048】
(実施例9)
実施例1と同様な操作により、加水分解ポリグルタミン酸(PGA)の平均分子量が10万を示す加水分解水溶液から調製した固形状の表皮角化正常化剤を製造した。
【0049】
(比較例1)
実施例1で行った加水分解処理を行わず平均分子量が100万を示す水溶液を調製し、実施例1と同様な操作により該水溶液から調製したポリグルタミン酸(固形状)を製造した。
【0050】
次に、製造した表皮角化正常化剤等について、各種の評価を行った。その詳細を以下に説明する。
【0051】
<mRNAの発現促進作用の評価>
表皮角化正常化剤による、フィラグリン、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ−1、及びロリクリンをコードするmRNAの発現促進作用について、以下の方法によって評価した。
即ち、三次元ヒト皮膚モデル(東洋紡社製、「TESTSKIN−high」)の表面に、実施例1〜4,9の表皮角化正常化剤(0.05重量%、0.1重量%、又は1.0重量%濃度)の水溶液を50μl垂らし、37℃、5容量%CO2存在下で24時間培養した。
培養後、皮膚モデル表面を生理食塩水で10回洗浄し、RNA抽出試薬であるRNAiso Plus(TAKARA社製)を用いて、バイオプシンによって採取された皮膚組織から総RNAを抽出し評価用サンプルとした。
また、表皮角化正常化剤を配合していない精製水を垂らして培養した皮膚モデルから同様にRNAを抽出し、対照サンプルとした。さらに、比較例1のポリグルタミン酸を用いて同様に調製したサンプルも準備した。各サンプルにつき2.5μgのRNAからcDNAを定法に従い合成した。
【0052】
合成したcDNAをリアルタイムPCR装置「Real Time PCR System」又は「Power SYBR Green PCR Master Mix」(いずれもApplied Biosystems社製)を用いて、フィラグリン遺伝子、インボルクリン遺伝子、トランスグルタミナーゼ−1遺伝子、ロリクリン遺伝子、及び内部標準遺伝子としてのRPLP2遺伝子に対して、それぞれの遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR反応で増幅を行い、遺伝子発現量を測定した。なお、PCR反応温度条件は、酵素活性化及び初期変性として、50℃2分、95℃10分間の反応を行った後、95℃15秒のDNA変性反応と60℃1分間のアニーリング/伸長反応とを所定回数のサイクルで行った。用いた各プライマーの塩基配列を下記に示す。
【0053】
<プライマー(フィラグリン)>
Forward : 5’-atgagcaggcacgagacaa- 3’ (primer1)配列番号1
Reverse : 5’-tgtccacgaatggtgtcct- 3’ (primer2)配列番号2
【0054】
<プライマー(インボルクリン)>
Forward : 5’- tgcctcagccttactgtgagt- 3’ (primer3)配列番号3
Reverse : 5’- tcatttgctcctgatgggta- 3’ (primer4)配列番号4
【0055】
<プライマー(トランスグルタミナーゼ−1)>
Forward : 5’- ccccaagagactagcagtgg- 3’ (primer5)配列番号5
Reverse : 5’- aaggcgtgtcgtacttcatgt- 3’ (primer6)配列番号6
【0056】
<プライマー(ロリクリン)>
Forward : 5’- actcacccttcctggtgct- 3’ (primer7)配列番号7
Reverse : 5’- gggtgggctgctttttct- 3’ (primer8)配列番号8
【0057】
<プライマー(RPLP2)>
Forward : 5’- gacgaccggctcaacaag- 3’ (primer9)配列番号9
Reverse : 5’- ccccaccagcaggtacac- 3’ (primer10)配列番号10
【0058】
各蛋白質をコードする遺伝子の発現促進率は、表皮角化正常化剤を配合していない精製水を用いた対照サンプルにおける値を100%とする相対値で示した。即ち、例えば、発現促進率が150%を示した場合、遺伝子発現性が1.5倍に上昇していることを表す。なお、発現促進率は、2回又は3回の測定における平均値である。
それぞれの結果を表1〜表4に示す。なお、各表における濃度は、各皮膚外用剤におけるポリグルタミン酸(固形物)の濃度を表している。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表1〜表4から明らかなように、加水分解ポリグルタミン酸(PGA)を含む表皮角化正常化剤は、精製水と比較して、フィラグリンをコードする遺伝子、インボルクリンをコードする遺伝子、トランスグルタミナーゼ−1をコードする遺伝子、ロリクリンをコードする遺伝子の発現促進作用に優れていることが認識される。特に、分子量が400、800、1000、2000を示す表皮角化正常化剤は、1.0%濃度において、精製水を用いた場合に対して数倍の発現促進作用を示し、フィラグリン遺伝子の発現促進作用が非常に優れている。
従って、実施例の表皮角化正常化剤は、皮膚に適用することにより、フィラグリン、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ−1、及びロリクリンといった蛋白等の産生を促進し、正常な表皮形成、具体的には例えば正常な角質層形成を促すことが期待できる。
【0064】
続いて、毛穴目立ちの軽減作用、アトピー性皮膚炎の軽減作用、乾燥肌の軽減作用、肌のハリ・弾力の改善作用を評価すべく、皮膚外用剤としての美容液、スプレー型ローション、乳液、美容液をそれぞれ調製し、ヒトによる実用評価を行った。その詳細について以下に説明する。
【0065】
[毛穴目立ちの軽減作用の評価]
以下に示す処方及び以下に示す方法により、評価用美容液及び比較対照用美容液を調製した。
【0066】
「評価用美容液の処方」
配合比(重量%)
スクワラン 0.5
ポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタン 0.2
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
ヒアルロン酸 0.1
グリセリン 5.0
アロエエキス 0.5
メチルパラベン 0.1
実施例5の表皮角化正常化剤(PGA平均分子量:800) 0.3
精製水 残量(合計:100にする)
【0067】
美容液は、次のようにして調製した。即ち、油相成分であるスクワランと、界面活性剤としてのポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタンとを70℃で加熱しながら溶解させて混合した後、この混合物をヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸、及びグリセリン等を含む水相に徐々に添加し、ホモミキサー(5000rpm、2分処理)で均一に分散させた。次に、減圧下で30℃まで冷却し、ホモミキサー(3000rpm、2分処理)で均一に分散させた。そして、脱気、濾過することにより、白濁した美容液を得た。
また、実施例5の表皮角化正常化剤を配合しなかった点以外は同様にして比較対照用美容液を調製した。
【0068】
<調製した美容液のヒトによる実用評価(毛穴の目立ち)>
毛穴の目立ちを気にしている女性ボランティア9名が、左右頬部の一方に評価用美容液を、他方に比較対照用美容液を、1日に2回、6週間塗布した。そして、左右頬部の拡大接写写真像から、毛穴目立ちの程度を下記の通り5段階に分類し、その数値の平均値を求めた。
【0069】
1:毛穴が目立たない
2:毛穴がほとんど目立たない
3:毛穴がやや目立つ
4:毛穴が明らかに目立つ
5:毛穴が目立ち、開きや赤みも観察される
【0070】
評価用美容液においては、平均値が使用前は3.95点であり、使用後は2.15点であった。一方、比較対照用美容液においては、平均値が使用前は3.86点であり、使用後は3.43点であった。評価用美容液は、正常な角質層の形成に寄与し、毛穴目立ちを軽減するものであることが分かった。
【0071】
[アトピー性皮膚炎の軽減作用の評価]
以下に示す処方及び以下に示す方法により、評価用スプレー型ローション及び比較対照用スプレー型ローションを調製した。
【0072】
「評価用スプレー型ローションの処方」
配合比(重量%)
スクワラン 0.02
セラミド 0.01
ポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタン 0.07
グリセリン 3.0
シトルリン 0.1
メチルパラベン 0.1
実施例7の表皮角化正常化剤(PGA平均分子量:1200) 0.5
精製水 残量(合計:100にする)
【0073】
スプレー型ローションは、次のようにして調製した。即ち、油相成分であるスクワランと、界面活性剤としてのポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタンを70℃で加熱しながら溶解させて混合した後、この混合物をグリセリン等を含む水相に徐々に添加し、ホモミキサー(5000rpm、2分処理)で均一に分散させた。次に、減圧下で30℃まで冷却し、ホモミキサー(3000rpm、2分処理)で均一に分散させた。そして、脱気、濾過することにより、半透明のローションを得た。斯かるローションをスプレー容器に充填することにより、スプレー型ローションを調製した。
また、実施例7の表皮角化正常化剤を配合しなかった点以外は同様にして比較対照用スプレー型ローションを調製した。
【0074】
<調製したスプレー型ローションのヒトによる実用評価(アトピー性皮膚炎)>
ステロイド剤等の外用薬を使用していないが、アトピー性皮膚炎の乾燥や赤みを気にしているボランティア12名が、左右頬部又は左右前腕部の一方に評価用スプレー型ローションを、他方に比較対照用スプレー型ローションを、1日に2回、4週間使用した。そして、左右頬部や左右前腕部の拡大接写写真像から、アトピー性皮膚炎の症状の程度を4段階に分類し、その数値の平均値を求めた。
【0075】
1:アトピー性皮膚炎の症状は見られない
2:アトピー性皮膚炎の症状がやや見られる
3:アトピー性皮膚炎の症状が見られる
4:アトピー性皮膚炎の症状がかなり見られる
【0076】
評価用スプレー型ローションにおいては、平均値が使用前は3.12点であり、使用後は2.02点であった。一方、比較対照用スプレー型ローションにおいては、平均値が使用前は3.15点であり、使用後は2.93点であった。評価用スプレー型ローションは、正常な角質層の形成に寄与し、アトピー性皮膚炎の症状を軽減するものであることが分かった。
【0077】
[乾燥肌の軽減作用の評価]
以下に示す処方及び以下に示す方法により、評価用乳液及び比較対照用乳液を調製した。
【0078】
「評価用乳液の処方」
配合比(重量%)
流動パラフィン 0.8
セラミド1 0.2
ポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタン 0.9
レチノール 0.02
ビタミンA油 0.02
セタノール 0.7
ベヘニルアルコール 0.2
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン 0.2
ヒアルロン酸 0.1
グリセリン 8.0
ブチレングリコール 3.0
塩酸ピリドキシン 0.2
ポリグルタミン酸(平均分子量:40万) 0.2
メチルパラベン 0.1
実施例6の表皮角化正常化剤(PGA平均分子量:900) 1.0
精製水 残量(合計:100にする)
【0079】
乳液は、次のようにして調製した。即ち、油相成分である流動パラフィン、セタノール、セラミド1、ベヘニルアルコール等と、界面活性剤としてのポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタンとを70℃で加熱しながら溶解させて混合した後、この混合物をヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸、グリセリン等を含む水相に徐々に添加し、ホモミキサー(5000rpm、2分処理)で均一に分散させた。次に、減圧下で30℃まで冷却し、ホモミキサー(3000rpm、2分処理)で均一に分散させた。そして、脱気、濾過することにより、白濁した乳液を得た。
また、実施例6の表皮角化正常化剤を配合しなかった点以外は同様にして比較対照用乳液を調製した。
【0080】
<調製した乳液のヒトによる実用評価(乾燥肌)>
乾燥肌を気にしているボランティア13名が、左右頬部の一方に評価用乳液を、他方に比較対照用乳液を、1日に2回、4週間塗布した。そして、左右頬部の拡大接写写真像から、乾燥肌の程度を5段階に分類し、その数値の平均値を求めた。
【0081】
1:乾燥肌の症状がない
2:乾燥肌の症状がほとんど認められない
3:乾燥肌の症状がやや認められる
4:乾燥肌の症状が認められる
5:乾燥肌の症状がかなり認められる
【0082】
評価用乳液においては、平均値が使用前は4.23点であり、使用後は2.33点であった。一方、比較対照用乳液においては、平均値が使用前は4.21点であり、使用後は3.16点であった。評価用乳液は、正常な角質層の形成に寄与し、乾燥肌の症状を軽減するものであることが分かった。
【0083】
[肌のハリ・弾力の改善作用の評価]
以下に示す処方及び以下に示す方法により、評価用美容液及び比較対照用美容液を調製した。
【0084】
「評価用美容液の処方」
配合比(重量%)
スクワラン 0.8
ポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタン 0.4
酢酸トコフェロール 0.1
パルミチン酸レチノール 0.02
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
カルボキシメチルキトサン 0.2
キサンタンガム 0.1
ヒアルロン酸 0.1
グリセリン 5.0
メチルパラベン 0.1
実施例8の表皮角化正常化剤(PGA平均分子量:1500) 0.4
精製水 残量(合計:100にする)
【0085】
美容液は、次のようにして調製した。即ち、油相成分であるスクワランと、界面活性剤としてのポリオキシエチレン(20E.O)ステアリン酸ソルビタンとを70℃で加熱しながら溶解させて混合した後、この混合物をヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸、及びグリセリン等を含む水相に徐々に添加し、ホモミキサー(5000rpm、2分処理)で均一に分散させた。次に、減圧下で30℃まで冷却し、ホモミキサー(3000rpm、2分処理)で均一に分散させた。そして、脱気、濾過することにより、白濁した美容液を得た。
また、実施例8の表皮角化正常化剤を配合しなかった点以外は同様にして比較対照用美容液を調製した。
【0086】
<調製した美容液のヒトによる実用評価(肌のハリ、弾力)>
肌の弾力やハリの低下を気にしている女性ボランティア11名が、左右頬部の一方に評価用美容液を、他方に比較対照用美容液を、1日に2回、4週間塗布した。そして、終了後、本人評価により、肌の弾力やハリに対する効果について、4段階に分類し、その数値の平均値を求めた。
【0087】
1:肌の弾力やハリが明らかに改善した
2:肌の弾力やハリが改善した
3:肌の弾力やハリがやや改善した
4:変化は見られない
【0088】
評価用美容液においては、使用後の平均値は2.21点であった。一方、比較対照用美容液においては、使用後の平均値は3.73点であった。評価用美容液は、正常な角質層や表皮形成に付与し、肌の弾力やハリの低下を改善するものであることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする表皮角化正常化剤。
【請求項2】
前記ポリグルタミン酸の酸沈殿物を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有する請求項1記載の表皮角化正常化剤。
【請求項3】
Bacillus属の微生物が生成する粗ポリグルタミン酸を加水分解処理することにより生じた加水分解ポリグルタミン酸又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする請求項1又は2記載の表皮角化正常化剤。
【請求項4】
前記Bacillus属の微生物がBacillus subtilis var chungkookjang,KCTC 0697BPである請求項3記載の表皮角化正常化剤。
【請求項5】
前記加水分解ポリグルタミン酸の平均分子量が400〜10万である請求項1〜4のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする表皮正常化用外用剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする表皮正常化用化粧料。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする医薬部外品。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表皮角化正常化剤を含むことを特徴とする表皮正常化用医薬部外品。

【公開番号】特開2011−241188(P2011−241188A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115637(P2010−115637)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【出願人】(506010208)バイオリーダーズ コーポレーション (16)
【氏名又は名称原語表記】BIOLEADERS CORPORATION
【Fターム(参考)】