説明

表示パネルの洗浄方法

【課題】配線・端子上の乾燥ムラを抑制することができる表示パネルの洗浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる表示パネルの洗浄方法は、第1基板20と第2基板10とがシール材30を介在させて重ね合わせられ、第1基板20が第2基板10から突出した突出領域51に端子群27を有する液晶表示パネル100の突出領域51を洗浄する表示パネルの洗浄方法であって、端子群27に対して、蒸気洗浄を行う工程と、端子群27に対して液体を滴下し、蒸気洗浄によって端子群27に付着した蒸気の液滴を含む液膜80を形成する工程と、液膜80に気体を噴きつけることにより、液膜80が第1基板20表面に接触した状態で、突出領域51の端部に向けて移動させ、端部から液膜80を排出する工程とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの洗浄方法に関し、詳しくは、表示パネルの端子群を洗浄・乾燥させる表示パネルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは、ガラスなどからなる一対の基板と、両基板間に挟持された液晶とを備える。ここで、各基板の互いに対向する面には、液晶を駆動するための電極パターンがそれぞれ形成されている。また、一対の基板のうち、一方の基板は、他方の基板よりも平面寸法が大きく形成されおり、突出するように配置される。この突出した突出領域には、両基板上に形成された電極に電気的に接続される複数の端子が形成されている。これらの端子には、FPCあるいはドライバICなどの電子部品が実装される。このドライバICは、外部から入力される表示信号等に基づいて、画像の表示に必要な各種の制御信号、走査電圧及び表示電圧等を出力し、液晶表示パネルを駆動させる。
【0003】
液晶表示パネルの端子に電子部品を実装する際に、液晶表示パネルの端子上に、液晶表示パネルに不要な液晶材料や異物が残っていると、半導体素子等の接続不良や、配線間ショート等を生じて、誤作動を起こす場合がある。このため、液晶表示パネルの端子に電子部品を実装する前に、液晶表示パネルに付着した液晶材料や塵埃等を除去するための洗浄を行う。このような洗浄方法としては、例えば蒸気洗浄を用いることができる。蒸気洗浄では、ノズルから端子に向けて高温の蒸気を吹き付けて、端子に付着した人体分泌物などの異物等を除去する(特許文献1参照)。
【0004】
このように、端子を蒸気洗浄した後、端子を自然乾燥させる。蒸気洗浄は、高温の蒸気を吹き付けるため、突出領域が熱くなっている。このため、突出領域の熱によって、蒸気洗浄の際に付着した水滴は、速やかに蒸発し、自然乾燥される。しかし、速やかに乾燥させると、端子上に乾燥ムラが多数発生してしまう。これは、水滴が蒸発する際に、水滴中の塵埃等の異物が端子領域に再付着し、水滴の跡が残ってしまうためである。このような乾燥ムラがITO等によって形成される配線・端子上に存在すると、接続不良が起こったり、ITOが腐食(電蝕)したりしてしまい、表示特性が劣化する。
【特許文献1】特開2006−128442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みるためになされたものであり、配線・端子上の乾燥ムラを抑制することができる表示パネルの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる表示パネルの洗浄方法は、第1基板と、前記第1基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された端子群と、前記端子部を露出させるように前記第1基板上にシール材を介して接着された第2基板とを有する表示パネルの洗浄方法であって、前記端子群に対して、蒸気洗浄を行う工程と、前記蒸気洗浄の直後に前記端子群に対して液体を滴下し、この滴下した液体と、前記蒸気洗浄によって前記端子群に付着した蒸気の液滴とを含む液膜を形成する工程と、前記液膜に気体を噴きつけることにより、前記液膜を前記第1基板表面に接触した状態で、前記端子部の端部に向けて移動させ、当該端部から前記液膜を排出する工程とを備えるものである。これにより、配線・端子上の乾燥ムラを抑制することができる。
【0007】
また、上記の表示パネルの洗浄方法であって、前記液膜を排出する工程では、噴きつける気体の噴射圧力が0.05kPa〜0.8kPaであることが好ましい。これにより、液膜が分裂することなく、液膜を移動させることができる。
【0008】
そして、上記の表示パネルの洗浄方法であって、前記液膜を形成する工程では、滴下する液体が水であることが好ましい。これにより、液膜を除去する前に、液膜が蒸発することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線・端子上の乾燥ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態.
まず、表示装置について説明する。ここでは、一例として液晶表示装置について図1を用いて説明する。図1は、液晶表示装置300の構成を示す断面模式図である。また、図2は、液晶表示装置300に用いられる液晶表示パネル100の構成を示す平面模式図である。本実施の形態においては、液晶表示パネル100の一例として、STN型のパッシブマトリクス方式の液晶表示パネルについて説明する。
【0011】
図1に示すように、液晶表示装置300は、表示パネルとしての液晶表示パネル100、バックライトユニット200を備えている。液晶表示パネル100は、入力される表示信号に基づいて画像表示を行う。バックライトユニット200は、液晶表示パネル100の反視認側に配置されており、液晶表示パネル100の背面側から光を照射する。
【0012】
図1及び図2に示すように、液晶表示パネル100は、第1基板20、第2基板10、シール材30、液晶31、スペーサ32、第1電極21、配向膜33、第2電極11、偏光板34を備えている。図1に示すように、液晶表示パネル100は、第1基板20と、第1基板20に対向配置される第2基板10と、両基板を接着するシール材30との間の空間に液晶31を封入した構成を有している。両基板の間は、スペーサ32によって、所定の間隔となるように維持されている。第1基板20及び第2基板10としては、例えば、光透過性のあるガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの絶縁性基板が用いられる。
【0013】
また、液晶表示パネル100を構成する第1基板20、第2基板10のうち、第1基板20は、第2基板10よりも平面寸法が大きく形成されている。従って、第1基板20は、第2基板10から突出するように配置される。液晶表示パネル100の第1基板20が第2基板10から突出して露出した端子部(以下、突出領域51と称する)には、第1基板20及び第2基板10上に形成された電極へ表示信号などを伝送する配線やドライバIC40と接続されるIC接続端子(不図示)、FPC26と接続される外部接続端子28等の端子群27が形成されている。
【0014】
図2に示すように、第2基板10には、垂直方向に形成された複数の第2電極11と、それぞれの第2電極11に接続された第2引回し配線12が形成されている。第2電極11及び第2引回し配線12としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性薄膜から形成される。第2引回し配線12は表示領域50の下端から延設され、端部には第2トランスファーパッド13が形成されている。第2トランスファーパッド13は、後述する第1基板20に形成される第1トランスファーパッド23と接続される。
【0015】
一方、第1基板20には、水平方向に形成された複数の第1電極21と、それぞれの第1電極21と接続された第1引回し配線22が形成されている。第1引回し配線22は表示領域50の右端又は左端から第1基板20の下側まで延設されている。なお、突出領域51における第1引回し配線22を外部接続配線25とする。外部接続配線25の端部には、ドライバIC40と接続するためのIC接続端子(不図示)が形成されている。第1電極21としては、例えば、ITOなどの透明導電性薄膜から形成される。また、第1引回し配線22は、配線抵抗を極力小さくするために、ITOなどの透明導電膜とAlからなる低抵抗金属膜の積層構造としている。垂直方向に形成される第2電極11と、水平方向に形成される第1電極21の交差する箇所が、画素35となる。表示領域50は、マトリクス状に配置された複数の画素35から構成される。
【0016】
また、第1基板20には、第2基板10の第2トランスファーパッド13に接続するための第1トランスファーパッド23が形成されている。第1トランスファーパッド23は、第2基板10と第1基板20とを対向配置したときに、第2トランスファーパッド13に対向するように形成されている。また、第1トランスファーパッド23から第1基板20の下側に延在するように、補助配線24が形成されている。補助配線24としては、第2引回し配線12と同一のITOなどの透明導電膜を用いることができる。
【0017】
補助配線24の端部には、ドライバIC40と接続するためのIC接続端子(不図示)が形成されている。また、補助配線24の端部に形成されたIC接続端子には、紫外線硬化型や熱硬化型の異方性導電接着材(不図示)を介してドライバIC40が接続される。ドライバIC40は、COG(Chip On Glass)方式によって第1基板20上に直接に設けられている。
【0018】
液晶表示パネル100は、外部から入力される表示信号等に基づいて、画像の表示に必要な各種の制御信号、走査電圧及び表示電圧等を出力するドライバIC40によって駆動される。なお、ドライバIC40を実装したフレキシブル基板(FPC; Flexible Printed Circuit)を液晶表示パネル100に接続する場合もある。
【0019】
また、突出領域51には、複数の外部接続配線25が形成されている。外部接続配線25の一端には、IC接続端子(不図示)が形成されている。このIC接続端子には、上述した異方性導電接着材を介してドライバIC40が接続される。また、突出領域51には、外部接続端子28が形成されている。外部接続端子28は、ITOなどの透明導電膜で形成されている。図2に示すように、外部接続端子28には、ドライバIC40及びFPC26が異方性導電接着材(不図示)を介して接続される。すなわち、FPC26は、第1基板20のドライバIC40が設けられた一辺側に接着される。このように、突出領域51には、外部接続配線25、IC接続端子、外部接続端子28等の種々の端子又は配線が形成されている。以下、突出領域51に形成されたこれらの配線又は端子を端子群27とする。
【0020】
なお、FPC26には、図示しない制御回路等が実装されている。制御回路には、ドライバIC40に表示信号、各種の制御信号などを供給するコントローラや、電源電圧、基準電圧などを供給する電源回路などが設けられる。従って、制御回路などが、FPC26を介して第1基板20接続される。制御回路等から出力される表示信号や各種の制御信号は、外部接続端子28、IC接続端子を介してドライバIC40に入力される。ドライバIC40は、入力される表示信号や制御信号に基づいて、表示領域の各電極に所定のタイミングで電圧を供給する。
【0021】
図1に示すように、第2基板10において、上述した各電極及び配線等の上には配向膜33が形成されている。一方、第1基板20の第2基板10に対向する面には、カラーフィルタ(不図示)、第1電極21、配向膜33が順次積層形成されている。また、第2基板10及び第1基板20の外側の面にはそれぞれ、偏光板34が貼着されている。
【0022】
液晶表示パネル100の背面には、バックライトユニット200が備えられている。液晶表示パネル100の反視認側から当該液晶表示パネル100に対して光を照射する。バックライトユニット200としては、例えば、光源、導光板、反射シート、拡散シート、プリズムシート、反射偏光シートなどを備えた一般的な構成のものを用いることができる。
【0023】
ここで、上述の液晶表示装置300の動作について説明する。各第2電極11には、ドライバIC40から表示電圧が供給される。一方、各第1電極21には、ドライバIC40から走査電圧が供給される。第2電極11と第1電極21の電位差に応じて、各画素を構成する第2電極11と第1電極21との間の液晶の配列が変化する。これにより、バックライトユニット200からの光の透過率が変化して、表示を行うことができる。
【0024】
次に、本発明の洗浄方法を実施するための一つの例の洗浄処理装置について図3を用いて説明する。図3は、洗浄処理装置の構成を示す概略図である。本実施の形態にかかる洗浄処理装置は、上記の液晶表示パネル100の端子群27を洗浄・乾燥させることができる。
【0025】
洗浄処理装置は、洗浄槽70、蒸気洗浄ノズル74、滴下ノズル75、及び気体噴射ノズル76を備える。洗浄槽70は、搬入口71及び搬出口72を有し、被洗浄物である液晶表示パネル100をコロ等のパネル保持装置78により、図3の矢印方向に搬入・搬出することができる。さらに、洗浄槽70は、排気口73を有し、余分な洗浄液等を排出することができる。蒸気洗浄ノズル74は、端子群27に高温の蒸気(例えば水蒸気)を噴き付け、塵埃、不要な液晶、人体分泌物などの異物を除去する。すなわち、蒸気洗浄ノズル74によって蒸気洗浄を行うことができる。滴下ノズル75は、蒸気洗浄によって液晶表示パネル100に付着した蒸気の液滴が蒸発する前に、当該液滴に対して液体を滴下する。これにより、蒸気洗浄によって端子群27に付着した液滴と滴下ノズル75から滴下される液体が一体となり、液膜、液滴、又は液膜と液滴の混在膜(以下、これらを液膜と称する)を形成する。また、滴下ノズル75から滴下する液量は、ある程度の大きさを有する液膜が形成でき、突出領域51から液体がこぼれない程度とする。
【0026】
気体噴射ノズル76は、微風の気体を噴射する。すなわち、気体噴射ノズル76は、気体の噴射圧力が低く設定されている。この気体噴射ノズル76から乾燥した空気などの気体を噴射して、液膜を突出領域51の端部に向けて移動させる。そして、突出領域51の端部から液膜を排出する。これにより、蒸気洗浄によって端子群27に付着した液滴も液膜と一体となった状態で排出され、突出領域51を乾燥させることができる。それぞれのノズルは、図示しない保持機構によって保持される。そして、それぞれのノズルは、例えば、所定の間隔を隔てて、液晶表示パネル100に対する相対的なノズルの進行方向前方側から、蒸気洗浄ノズル74、滴下ノズル75、気体噴射ノズル76の順で配置された状態で保持される。また、それぞれのノズルは、保持機構によって、所定のタイミング、速度で移動させる。全てのノズルの進行方向は略同じであり、各ノズルは、突出領域51側の第2基板10の端辺に沿って、突出領域51の一端から他端に向けて移動させる。これにより、蒸気洗浄ノズル74による洗浄、滴下ノズル75による液膜形成、気体噴射ノズル76による液膜排出を順次行うことができる。
【0027】
また、滴下ノズル75によって滴下される液体は、揮発性の低い液体であることが好ましい。これにより、滴下された液体が蒸発する前に、気体噴射ノズル76によって液膜を移動させて他端から除去することができる。もちろん、上記のようにノズルを移動させてもよいし、液晶表示パネル100を移動させてもよい。洗浄処理装置は、以上のように構成される。このような洗浄処理装置によって、洗浄・乾燥させることにより、液滴が端子群27上に残ることを低減でき、乾燥ムラを抑制することができる。また、気体の噴射圧力を低圧にすることから、気体の使用量を低減させることができ、環境に優しい工程設計をすることができる。
【0028】
次に、本実施の形態にかかる表示パネルの洗浄方法について図4を用いて説明する。ここでは、一例として、上記の液晶表示パネル100への適用例について説明する。図4は、液晶表示パネル100の洗浄方法の工程、及びその前後の工程を示すフローチャート図である。
【0029】
まず、図2に示されるように、基板10、20上にITO等の透明導電膜を成膜し、当該透明導電膜をパターニングする。これにより、第1基板20に第1電極21等、第2基板10に第2電極11等が形成される(ステップS1)。
【0030】
そして、第1基板20の電極形成面と第2基板10の電極形成面とを対向配置させ、シール材30により貼り合せる。ここでは、第1基板20上の一辺側に形成された突出領域51を露出させるように、シール材30を介して、第1基板20と第2基板10とを接着させる。その後、各基板間に液晶31を封入して、液晶セルを形成する。そして、液晶セルの外面に偏光板34を貼り付けて液晶表示パネル100を形成する(ステップS2)。
【0031】
液晶表示パネル100は、図2に示されるように、第1基板20が第2基板10から突出し、この突出領域51に、種々の端子・配線(端子群27)が形成されている。この端子群27にドライバIC40、FPC26等の電子部品を実装する前に、端子群27の洗浄を行う(ステップS3)。これは、液晶表示パネル100に不要な液晶材料や異物が残っていると、半導体素子等の接続不良や、配線間ショート等を生じて、誤作動を起こす場合があるためである。ここで、ステップS3から後の工程であるステップS5までを図3に示される洗浄処理装置によって行う。ステップS3の洗浄方法としては、ウェット洗浄を用いることができる。本実施の形態では、蒸気洗浄によって端子群27を洗浄する。
【0032】
このような洗浄は、偏光板34等が貼付された液晶表示パネル100の端子群27に対して行われる。偏光板34は、高温・高湿下における耐久性が乏しい。このため、偏光板34は、高温・高湿環境下では劣化し、偏光性能が急激に低下する。従って、上記のような洗浄方法を用いる場合、端子群27以外の領域を遮蔽板によって遮蔽し、水分の浸入を防ぐ必要がある。そして、遮蔽板を配置した状態で、端子群27に対して、蒸気洗浄ノズル74から高温の蒸気(例えば水蒸気)を噴射する。これにより、液晶表示パネル100の端子群27に付着した液晶材料や塵埃及び人体分泌物等を除去する。
【0033】
次に、蒸気洗浄を行った直後の端子群27に、滴下ノズル75から純水または超純水などの液体を滴下する(ステップS4)。このように、端子群27に対して液体を滴下して、この滴下した液体と蒸気洗浄によって端子群27に付着した蒸気の液滴等とを含む液膜を形成する。これにより、蒸気洗浄によって端子群27に付着した蒸気の液滴が蒸発するのが抑制される。ここでの液膜は、ある程度の大きさ、例えば端子群27中の少なくとも1つの端子を覆うような大きさを有し、図5に示されるように、突出領域51からこぼれない程度にする。図5は、端子群27に液膜80が形成された状態を示す側面模式図である。この液膜80は、表面張力によって形成される。表面張力は、液膜80の拡張と反対方向に働く力(単位長さ当たり)であり、分子間力に起因する。表面張力は、滴下する液体の種類、温度によって異なり、それぞれの条件に応じて滴下する量、速度を設定する。また、第1基板20や端子群27の材料、滴下する液体によって接触角(濡れ性)が変わるので、これらを考慮して滴下するのが好ましい。
【0034】
ここでは、揮発性が低い水(純水)を滴下する。例えば、アルコール等の揮発性が高い液体を滴下すると、すぐ揮発するため残渣ができてしまい、好ましくない。この工程は、蒸気洗浄を行うステップS3が全突出領域51に対して完了した後に行ってもよいが、ステップS3における蒸気洗浄が行われた端子の箇所から順次液体を滴下することが好ましい。なお、滴下ノズル75から滴下される液体は、蒸気洗浄ノズル74から蒸気となって噴射される洗浄液との親和性がよい物質、例えば水を選択するのが好ましい。これにより、後の工程(ステップS5)で液膜を除去する際に、蒸気洗浄によって端子群27に付着した蒸気の液滴も液膜80と一体となった状態で除去することができる。
【0035】
次に、端子群27領域における液膜80の排出を行う(ステップS5)。ここでは、気体噴射ノズル76によって、液膜80に対して微風の気体を噴射する。これにより、液膜80を突出領域51の一端から他端に向けて、第1基板20表面に接触したまま液膜80が一体となった状態で移動させる。そして、他端から蒸気洗浄によって端子群27に付着した蒸気の液滴を含む液膜80を排出する。ここでは、それぞれの相(固相、蒸気相、液相)の界面における界面張力(表面張力を含む)とのバランスを保つような噴射圧力で気体を噴射する。具体的には噴射圧力は、0.05kPa〜0.8kPa程度が好ましい。噴射圧力が弱すぎると、端子群27上の液膜80を移動させることができない。反対に、噴射圧力が強すぎると、液膜80が端子群27上で液膜80が分裂する。そして、端子群27上に飛散して残り、残渣が発生してしまう。
【0036】
本実施の形態では、図6に示されるように、突出領域51の長辺方向の一端から他端に向けて、液膜80を移動させる。図6は、端子群27の乾燥方法を示す斜視模式図である。なお、ここでは端子群27を簡略化して表している。このように、突出領域51の一端から他端、すなわち図6の中抜き矢印方向に、気体噴射ノズル76を移動させることにより、液膜80も中抜き矢印方向に移動する。これにより、突出領域51の一端から液膜80が排出され、順次乾燥され、突出領域51の略全面を乾燥させることができる。
【0037】
ここで、気体噴射ノズル76から噴射される気体としては、空気、乾燥空気、その他の気体等を用いることができ、浮遊異物の少ないクリーンな気体が好ましい。本実施の形態では、気体噴射ノズル76から噴射される気体として、常温の乾燥空気を用いる。
【0038】
なお、第1基板20の突出領域51表面は、ITO等の端子群27が形成された箇所と、端子群27が形成されておらず、ガラス等が露出している箇所が混在しており、それぞれの箇所に応じて滴下する液体の接触角が変化する。すなわち、液体の拡張する度合いが異なる。しかし、このようなそれぞれの部材に対する接触角の違いは、液膜80の移動にはほとんど影響しない。また、図7に示されるように、突出領域51には、端子群27による凹凸が存在する。図7は、端子群27の乾燥方法を示す断面模式図である。ここで、本実施の形態のように、低圧でゆっくり(液膜80を移動させる好ましい速度は、1mm/sec〜10mm/sec)と液膜80を移動させることにより、凹凸による液体残りはほとんど生じない。すなわち、図7に示されるように、端子群27による凹凸が存在していても液膜80を移動させることができ、液膜80が分裂せず一体となって送り出される。また、液膜80をゆっくりと移動させるため、凹凸があっても突出領域51の略全ての表面に液膜80を接触させることができる。これにより、突出領域51上に液滴が残ることを抑制することができる。すなわち、第1基板20表面と接触した状態のまま、液膜80が移動する。
【0039】
上記のように、ステップS3〜ステップS5までは、図3に示された洗浄装置を用いることができる。ここで、ステップS3〜ステップS5について図8を用いて説明する。図8は、端子群27の洗浄・乾燥の様子を示す斜視模式図である。図8に示されるように、ノズルの進行方向側から、蒸気洗浄ノズル74、滴下ノズル75、気体噴射ノズル76を所定の間隔を隔てて配置する。図8においては、中抜き矢印方向がノズルの進行方向となる。そして、蒸気洗浄ノズル74によって、蒸気洗浄された直後、蒸気洗浄された箇所から滴下ノズル75によって順次液体を滴下する。そして、液体を滴下することにより、ある程度の大きさを有する液膜80が形成されたら、気体噴射ノズル76によって、液膜80を中抜き矢印方向に移動させる。まず、これらのノズルは、それぞれの箇所に対して、洗浄、滴下、排出、乾燥という順番になっていれば、移動させるタイミングは適宜変更可能である。例えば、まず蒸気洗浄ノズル74及び滴下ノズル75を並行に移動させ、突出領域51全面に液膜80を形成した後、気体噴射ノズル76を移動させて乾燥を行ってもよい。
【0040】
また、全てのノズルを並行に移動してもよい。この場合、形成された液膜80に、蒸気洗浄の蒸気の蒸発する前の蒸気の液滴を吸収させることができれば、所望の大きさの液膜80を形成した後は、滴下ノズル75からの液量を制限してもよい。これにより、処理時間を短くすることができ、作業性を向上させることができる。さらに、滴下する液体の量を少なくすることができ、コストを削減することができる。
【0041】
次に、乾燥させた端子群27にドライバIC40及びFPC26を実装する(ステップS6)。その後、バックライトユニット200等を配置することにより、液晶表示装置300が製造される。
【0042】
上記のような液晶表示パネル100の洗浄方法により、乾燥残渣を低減することができ、端子群27の乾燥ムラを抑制することができる。これにより、ITO等によって形成される端子群27の腐食(電蝕)を抑制することができ、液晶表示装置300の表示特性が良好となる。
【0043】
実施例.
液晶表示パネル100の端子群27に高温の水蒸気を噴き付け蒸気洗浄した。そして、蒸気洗浄した直後であって端子群27に付着した蒸気の水滴が蒸発する前に、常温の純水を滴下し、液膜80(水膜)を形成した。そして、気体噴射ノズル76から常温(周囲の温度と同じ)の乾燥空気を噴射した。ここでの噴射圧力は、0.05kPaの微風エアーとした。この微風エアーによって、突出領域51の一端から他端に向けて水の液膜80を移動させ、他端から水の液膜80を除去した。その後、顕微鏡で端子群27上の残渣を観察したところ、残渣がほとんどなかった。
【0044】
比較例.
液晶表示パネル100の端子群27に高温の水蒸気を噴き付け蒸気洗浄した。そして、端子群27に付着した蒸気の水滴を高圧エアーによって、一気に吹き飛ばして乾燥させた。顕微鏡で端子群27上の残渣を観察したところ、実施例より残渣が多数発生していた。
【0045】
なお、上記のような洗浄処理装置及び表示パネルの洗浄方法は、液晶表示パネルのみならず、他の表示パネル、例えば有機EL表示パネルに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態にかかる液晶表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図2】実施の形態にかかる液晶表示パネルの構成を示す平面模式図である。
【図3】実施の形態にかかる洗浄処理装置の構成を示す概略図である。
【図4】実施の形態にかかる液晶表示パネルの洗浄方法の工程及びその前後の工程を示すフローチャート図である。
【図5】実施の形態にかかる端子群に液膜が形成された状態を示す側面模式図である。
【図6】実施の形態にかかる端子群の乾燥方法を示す斜視模式図である。
【図7】実施の形態にかかる端子群の乾燥方法を示す断面模式図である。
【図8】実施の形態にかかる端子群の洗浄・乾燥の様子を示す斜視模式図である。
【符号の説明】
【0047】
10 第2基板、11 第2電極、12 第2引回し配線、
13 第2トランスファーパッド、20 第1基板、21 第1電極、
22 第1引回し配線、23 第1トランスファーパッド、24 補助配線、
25 外部接続配線、26 FPC、27 端子群、28 外部接続端子、
30 シール材、31 液晶、32 スペーサ、33 配向膜、34 偏光板、
35 画素、40 ドライバIC、50 表示領域、51 突出領域、
70 洗浄槽、71 搬入口、72 搬出口、73 排気口、
74 蒸気洗浄ノズル、75 滴下ノズル、76 気体噴射ノズル、
78 パネル保持装置、80 液膜、100 液晶表示パネル、
200 バックライトユニット、300 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された端子群と、前記端子部を露出させるように前記第1基板上にシール材を介して接着された第2基板とを有する表示パネルの洗浄方法であって、
前記端子群に対して、蒸気洗浄を行う工程と、
前記蒸気洗浄の直後に、前記端子群に対して液体を滴下し、この滴下した液体と前記蒸気洗浄によって前記端子群に付着した蒸気の液滴とを含む液膜を形成する工程と、
前記液膜に気体を噴きつけることにより、前記液膜を前記第1基板表面に接触した状態で、前記端子部の端部に向けて移動させ、当該端部から前記液膜を排出する工程とを備える表示パネルの洗浄方法。
【請求項2】
前記液膜を排出する工程では、噴きつける気体の噴射圧力が0.05kPa〜0.8kPaである請求項1に記載の表示パネルの洗浄方法。
【請求項3】
前記液膜を形成する工程では、滴下する液体が水である請求項1又は2に記載の表示パネルの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−242291(P2008−242291A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85536(P2007−85536)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】