説明

表示パネルの異常点灯防止装置

【課題】保護フィルムを捲って剥離するときに剥離帯電が生じたとしても、それによって異常点灯が生じないようにして、表示パネルの外観検査時間を短縮する。
【解決手段】表示パネル1に貼着されているフィルム材7の剥離時に発生する静電気による異常点灯を防止する表示パネルの異常点灯防止装置で、表示パネル1が載置されるパネル載置台10と、パネル載置台10に載置されている表示パネル1の端子部4に対して進退可能な移動台20とを備え、移動台20に、端子部4に形成されている複数の電極端子に直接もしくは電極端子に取り付けられている端子ピン9を介して接触して、複数の電極端子を同電位とする弾性を有する導電接触手段24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの異常点灯防止装置に関し、さらに詳しく言えば、表示パネルに貼着されているフィルム材の剥離時に発生する静電気による異常点灯を防止する表示パネルの異常点灯防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示パネルには、液晶表示パネル,有機ELパネルおよびプラズマディスプレイなどがあるが、ここでは図3により液晶表示パネルについて説明する。
【0003】
液晶表示パネル1は、それぞれ内面に例えばITO材からなる表示電極(透明電極)が形成された一対の透明基板2,3を図示しない周辺シール材を介して貼り合わせて液晶セルとし、その液晶セル内に所定の液晶物質を封入することにより作製される。
【0004】
通常の機種では、一方の透明基板(この例では、透明基板3側)に端子部4が側方に張り出すように連設され、この端子部4に上記表示電極に連なる複数の電極端子5が形成されている。なお、COG(Chip On Glass)機種では、端子部4に液晶駆動用のベアチップなどのチップ部品が実装される。
【0005】
この場合、透明基板3側の表示電極は、周辺シール材を潜る引き回し配線を介して端子部4上の所定の電極端子5と直接的に接続され、透明基板2側の表示電極は、周辺シール材に含まれている導電粒子などのトランスファ材を介して端子部4上の所定の電極端子5に接続される。
【0006】
透明基板2,3の外表面には、光学フィルムとして例えば偏光膜6が貼着されるが、この種の光学フィルムは傷付きやすいため、ユーザーの手元に届くまでは、偏光膜6上に保護フィルム7を貼着するようにしている。
【0007】
ところで、工場から製品を出荷する前の製品検査のひとつとして、実際の表示状態を検査する点灯検査や、偏光膜6などの光学フィルム表面に傷などの欠陥がないかどうかを検査する外観検査がある。
【0008】
通常、保護フィルム7は無色透明であるが、保護フィルム7上に汚れや傷などがあると、外観検査で偏光膜などの光学フィルムの欠陥を見落とす危険性がある。
【0009】
そこで、外観検査では、保護フィルム7を捲って剥離し、偏光膜6などを直接的に視認して、その不良の有無を検査するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、保護フィルム7を捲って剥離するときに剥離帯電が発生し、その剥離帯電による電圧が印加された表示電極は擬似的な点灯状態(異常点灯)となり、その異常点灯した部分は、外観検査の妨げになる。
【0011】
そのため、従来では、剥離帯電による電荷が自然放電により消滅するのを待って外観検査を行うようにしているが、剥離帯電による電荷の自然放電には時間がかかるため、その分、検査時間が長くなり生産性向上の観点から好ましくない。
【0012】
そこで、本発明の課題は、保護フィルムを捲って剥離するときに剥離帯電が生じたとしても、それによって異常点灯が生じないようにして、表示パネルの外観検査時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載されているように、表示パネルに貼着されているフィルム材の剥離時に発生する静電気による異常点灯を防止する表示パネルの異常点灯防止装置であって、上記表示パネルが載置されるパネル載置台と、上記パネル載置台に載置されている上記表示パネルの端子部に対して進退可能な移動台とを備え、上記移動台には、上記端子部に形成されている複数の電極端子に直接もしくは上記電極端子に取り付けられている端子ピンを介して接触して、上記複数の電極端子を同電位とする弾性を有する導電接触手段が設けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、請求項2に記載されているように、上記導電接触手段として、導電ゴムが用いられることが好ましい。
【0015】
また、請求項3に記載されているように、上記導電接触手段が接地されていることがより好ましい。
【0016】
また、請求項4に記載されているように、上記パネル載置台には、バックライトが設けられていることが好ましい。
【0017】
また、請求項5に記載されているように、上記導電接触手段は、上記複数の電極端子もしくは上記複数の端子ピンに同時に接触することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば偏光膜上に貼着されている保護フィルムを捲る前に、導電接触手段を端子部に形成されている複数の電極端子に直接もしくはその電極端子に取り付けられている端子ピンを介して接触させて、すべての電極端子を同電位とすることにより、保護フィルムの捲りにより剥離帯電が発生したとしても、液晶分子に電位差が生じないため、異常点灯の発生が防止され、外観検査を短時間ですませることができる。
【0019】
この場合、導電接触手段として導電ゴムを用いることにより、電極端子もしくはその端子ピンに対して接触傷などを付けることなく、接触を確実なものとすることができる。
【0020】
また、導電接触手段を接地に接続することにより、剥離帯電による電荷を素早く消滅させることができ、より確実に異常点灯を防止することができる。
【0021】
また、パネル載置台にバックライトを設けて、その照明光をパネル載置台に載置されている表示パネルを反検査面側から照射することにより、検査面側の傷の有無などを容易に検査することができる。
【0022】
また、導電接触手段を複数の電極端子もしくは上記複数の端子ピンに同時に接触させることにより、迅速かつ確実に、すべての電極端子を同電位とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明による表示パネルの異常点灯防止装置を示す模式的な側面図,図2は上記異常点灯防止装置の移動台をパネル載置台側から見た正面図である。
【0024】
なお、この実施形態における被検査表示パネルは、先の図3で説明した液晶表示パネル1であるが、この場合、その端子部4には各電極端子5ごとに端子ピン9が取り付けられている。端子ピン9は、クリップ部9aと、クリップ部9aから引き出されたピン本体9bとを備え、ピン本体9bが端子部4を含む平面に対してほぼ直交するように、クリップ部9aを介して端子部4に装着される。
【0025】
図1に示すように、本発明による表示パネルの異常点灯防止装置は、液晶表示パネル1が載置されるパネル載置台10と、パネル載置台10に載置された液晶表示パネル1の端子部4に対して進退する移動台20とを備えている。
【0026】
この例において、パネル載置台10は、液晶表示パネル1の反端子部4側を支持する第1の支持部材11aと、液晶表示パネル1の端子部4側を支持する第2の支持部材11bと、端子ピン9のピン本体9bに沿って配置される側板11cとを備えている。
【0027】
好ましくは、第1の支持部材11a,第2の支持部材11bおよび側板11cは、図示しない幕板によって一体的に連結され、第1の支持部材11aと第2の支持部材11bとの間にバックライト12が設けられる。
【0028】
第1の支持部材11aと第2の支持部材11bの各上端面に、負圧源と接続される負圧吸着孔(ともに図示しない)を設けて、保護フィルム7の剥離時に液晶表示パネル1を負圧吸着により固定することが好ましい。
【0029】
なお、変形例として、側板11cにて端子ピン9のクリップ部9aを支持するようにようにして、第2の支持部材11bを省略することもできる。すなわち、第1の支持部材11aと側板11cとにより、液晶表示パネル1を支持するようにしてもよい。
【0030】
図2を併せて参照して、移動台20は、上記側板11cと対向した位置に配置される基台21にすべり案内手段22を介して往復動可能に支持されている。その移動方向は、図1において左右方向(図2において紙面と直交する方向)であり、以下の説明で、パネル載置台10側への移動方向を「前進」方向,パネル載置台10から離れる方向を「後退」方向ということがある。
【0031】
この例において、すべり案内手段22には、移動台20側に形成された案内キー20aと、基台21側に形成された案内溝21aとの組み合わせが採用されているが、これ以外のすべり案内手段が用いられてもよい。
【0032】
図示しないが、基台21内には移動台20の駆動手段が設けられている。移動台20の駆動手段には、油圧シリンダもしくは空圧シリンダや、可逆回転可能なモータに連結された送りねじ軸などが用いられてよい。
【0033】
移動台20上には、回路基板23が固定されている。回路基板23には、移動台20の移動に伴って、各端子ピン9のピン本体9bに対してほぼ同時に接触,離反し得る導電接触手段24が取り付けられている。
【0034】
導電接触手段24に金属電極を用いてもよいが、この例では、接触の確実性の観点から、導電接触手段24に板状の導電ゴム24aが用いられており、導電ゴム24aは押さえ部材25により回路基板23上に固定されている。
【0035】
回路基板23上には、導電ゴム24aと接触する図示しないグランドパターンが配線されており、グランドパターンはリード線26を介して接地されている。すなわち、導電ゴム24aは上記グランドパターンおよびリード線26を介して接地されている。
【0036】
本発明の表示パネルの異常点灯防止装置によれば、次のようにして液晶表示パネル1の外観検査が行われる。
【0037】
まず、各端子ピン9のピン本体9bが側板11cに沿うようにして、液晶表示パネル1をパネル載置台10上に載置して、好ましくは上記した負圧吸着により固定する。
【0038】
次に、移動台20を前進させて、導電ゴム24aを各端子ピン9のピン本体9bに押し付け、側板11cと導電ゴム24aとの間で各端子ピンのピン本体9bを挟む。これにより、端子部4の各電極端子5は、端子ピン9,導電ゴム24a,回路基板23の上記グランドパターンおよびリード線26を介して接地に落とされる。
【0039】
しかるのち、図1に示すように、好ましくは保護フィルム7の端縁に接着(粘着)テープ8を貼り付け、接着テープ8をタブとして保護フィルム7を捲って偏光膜6から剥離する。
【0040】
この剥離時に剥離帯電として静電気が発生するが、端子部4の各電極端子5は、上記したように、端子ピン9,導電ゴム24a,回路基板23の上記グランドパターンおよびリード線26を介して接地されていることにより、異常点灯は発生しない。
【0041】
したがって、保護フィルム7を剥離したのち、静電気の自然放電を待つことなく、即座に偏光膜6などに傷があるかどうかの外観検査(バックライト12を点灯しての透過検査を含む)を行うことができる。
【0042】
外観検査後は、保護フィルム7を貼り直したのち移動台20を後退させるか、もしくは移動台20を後退させたのち、保護フィルム7を貼り直す。
【0043】
実際に、従来の外観検査時間と、本発明による外観検査時間とを対比したところ、本発明によれば、30〜50%程度の外観検査の効率向上が見られた。
【0044】
以上、図1,2により、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、異常点灯が発生しないようにするためには、各電極端子5が同電位とされればよく、したがって、導電ゴム24a(導電接触手段24)は、必ずしも接地されることを要しない。
【0045】
また、回路基板23を省略して、導電ゴム24a(導電接触手段24)を移動台20上に直接的に設けてもよい。さらには、端子部4に端子ピン9が取り付けられていない機種の場合には、移動台20を端子部4を含む平面に対して垂直となる方向に移動可能とし、導電ゴム24a(導電接触手段24)を各電極端子5に接触,離反させるようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の表示パネルの異常点灯防止装置は、液晶表示パネルのほかに、有機ELパネルやプラズマディスプレイなどの外観検査にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による表示パネルの異常点灯防止装置を示す模式的な側面図。
【図2】上記異常点灯防止装置の移動台をパネル載置台側から見た正面図。
【図3】液晶表示パネルを示す斜視図。
【符号の説明】
【0048】
1 液晶表示パネル
2,3 透明基板
4 端子部
5 電極端子
6 偏光膜
7 保護フィルム
9 端子ピン
9a クリップ部
9b ピン本体
10 パネル載置台
11a,11b 支持部材
11c 側板
20 移動台
21 基台
22 すべり案内手段
23 回路基板
24 導電接触手段
24a 導電ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルに貼着されているフィルム材の剥離時に発生する静電気による異常点灯を防止する表示パネルの異常点灯防止装置であって、
上記表示パネルが載置されるパネル載置台と、上記パネル載置台に載置されている上記表示パネルの端子部に対して進退可能な移動台とを備え、上記移動台には、上記端子部に形成されている複数の電極端子に直接もしくは上記電極端子に取り付けられている端子ピンを介して接触して、上記複数の電極端子を同電位とする弾性を有する導電接触手段が設けられていることを特徴とする表示パネルの異常点灯防止装置。
【請求項2】
上記導電接触手段として、導電ゴムが用いられることを特徴とする請求項1に記載の表示パネルの異常点灯防止装置。
【請求項3】
上記導電接触手段が接地されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネルの異常点灯防止装置。
【請求項4】
上記パネル載置台には、バックライトが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示パネルの異常点灯防止装置。
【請求項5】
上記導電接触手段は、上記複数の電極端子もしくは上記複数の端子ピンに同時に接触することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示パネルの異常点灯防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58710(P2009−58710A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225270(P2007−225270)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000167783)広島オプト株式会社 (95)
【Fターム(参考)】