裏面異物検出方法及び裏面異物検出装置及び塗布装置
【課題】浮上方式のスピンレス塗布法においてスリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある有害な裏面異物を精度よく確実に検出すること。
【解決手段】このレジスト塗布装置は、裏面異物検出装置50を備えることより、有害な(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物Qをスリットノズル14よりも基板搬送方向(X方向)の上流側で確実に検出することが可能である。そして、裏面異物検出装置50がそのような有害裏面異物Qを検出したときに発生する警報信号WSに応答して、主制御部52がノズル昇降機構36を通じてスリットノズル14を即時に上昇移動させることにより、スリットノズル14は基板Gの盛り上がり部分GQをかわす(摺接または衝突を避ける)ことができ、スリットノズル14の損傷が防止される。
【解決手段】このレジスト塗布装置は、裏面異物検出装置50を備えることより、有害な(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物Qをスリットノズル14よりも基板搬送方向(X方向)の上流側で確実に検出することが可能である。そして、裏面異物検出装置50がそのような有害裏面異物Qを検出したときに発生する警報信号WSに応答して、主制御部52がノズル昇降機構36を通じてスリットノズル14を即時に上昇移動させることにより、スリットノズル14は基板Gの盛り上がり部分GQをかわす(摺接または衝突を避ける)ことができ、スリットノズル14の損傷が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上ステージ上で被処理基板に処理液を塗布する塗布装置に係わり、特に基板の裏面に付着している望ましくない異物を検出するための裏面異物検出方法および裏面異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺形のスリットノズルを用いて被処理基板(ガラス基板等)上にレジスト液を塗布するスピンレスの塗布法がよく用いられている。
【0003】
このようなスピンレス塗布法の一形式として、基板を支持するためのステージに基板浮上機構を組み込み、この浮上ステージ上で基板を空中に浮かせて水平な一方向(ステージ長手方向)に搬送し、搬送途中の所定位置でステージ上方に設置したスリットノズルより直下を通過する基板に向けてレジスト液を帯状に吐出させることにより、基板上の一端から他端までレジスト液を塗布するようにした浮上方式が知られている。
【0004】
かかる浮上方式のスピンレス塗布法において、基板上にレジスト液の塗布膜を設定通りの膜厚で均一に形成するには、スリットノズルの吐出口と基板との間に設ける通常100μm前後の微小なギャップを精確に設定値またはその付近に維持することが要求される。
【0005】
この要求条件を満たすために、浮上方式のスピンレス塗布法を採用するレジスト塗布装置は、浮上ステージの略全域に高圧または正圧の気体たとえばエアを噴出する噴出口を所定の密度で多数設けるだけでなく、浮上ステージ上でスリットノズルの直下およびその前後のエリアとして設定される塗布領域には、負圧でエアを吸い込む吸引口を噴出口に混在させている。そして、該塗布領域内では、そこを通過する基板に対して、噴出口より加えられる垂直上向きの圧力と吸引口より加えられる垂直下向きの圧力とのバランスをとって、基板に与える浮上圧力を精細に制御し、基板の浮上高を設定値(通常50μm以下)に合わせるようにしている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−190483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような浮上方式のスピンレス塗布法においても、他のスピンレス塗布法と同様に、塗布処理を受ける直前の基板に異物が付着していることがあり、スリットノズルの先端(吐出口)に異物または基板の上面が擦ると、スリットノズルが損傷を受けることがある。スリットノズルの吐出口に少しでも傷が付くと、帯状吐出流が不均一になって、塗布膜の膜質低下に直結する。スリットノズルは非常に高価であり、その部品交換を低コストで簡便に行えるものではないので、基板に付着する異物の早期検出は重要な課題となっている。
【0008】
基板上の異物には、基板の表面(上面)に付着する表面異物と、基板の裏面(下面)に付着する裏面異物の2種類がある。このうち、表面異物は、基板の上面を掠めるように光ビームを横断させる光センサを用いて、光ビームの遮光分または受光量減少分の大きさから有害な(つまり、スリットノズルを直接擦って傷を付けるおそれのある)異物を容易に検出できる。したがって、従来の異物検出装置で対応することができる。
【0009】
しかし、裏面異物は、浮上方式のスピンレス塗布法においては、やっかいなものになっている。すなわち、基板をステージに載置して吸着固定する方式のスピンレス塗布法であれば、裏面異物による基板の盛り上がりを表面異物と同視して、上記のような光ビームの遮光分または受光量減少分を所定のしきい値にかけて、有害な(つまり、スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)異物を容易に検出することができる。
【0010】
ところが、浮上方式のスピンレス塗布法では、基板の浮上搬送による基板のぶれや周囲の振動に起因するノイズ成分が光センサの出力信号に殆ど1に近いSN比で混じるため、光ビームの遮光分または受光量減少分を所定のしきい値にかける従来技術の技法によっては、有害な(スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物を精度良く抽出(検出)することはできない。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、浮上方式のスピンレス塗布法においてスリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある有害な裏面異物を精度よく確実に検出できる裏面異物検出方法、裏面異物検出装置およびこれを用いる塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の裏面異物検出方法は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板上に処理液を供給して前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出方法であって、前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部と受光部との間で、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を取得する第1の工程と、前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する第2の工程とを有する。
【0013】
本発明の裏面異物検出装置は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板に向けて処理液を供給して、前記基板上に前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出装置であって、前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部および受光部を有し、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを前記投光部と前記受光部との間で送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を出力する光センサと、前記光センサより出力される前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する信号処理部とを有する。
【0014】
本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置によれば、光センサより得られる光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とするので、受光量信号に含まれるノイズ成分の影響を受けずに、当該逆さ山形プロファイルの元になっている裏面異物がスリットノズルに対して有害な(つまり、スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)異物であるか否かを的確に判別することができる。
【0015】
本発明の塗布装置は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた第1の浮上領域を有する浮上ステージと、前記浮上ステージ上で空中に浮く前記基板を保持して前記第1の浮上領域を通過するように搬送する搬送機構と、前記第1の浮上領域の上方に配置されるスリットノズルを有し、前記第1の浮上領域を通過する前記基板上に前記スリットノズルより処理液を供給する処理液供給部と、基板搬送方向において前記スリットノズルより上流側の位置で、前記第1の浮上領域を通過する前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を検出するための本発明の裏面異物検出装置とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置によれば、上記のような構成および作用により、浮上方式のスピンレス塗布法においてスリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある有害な裏面異物を精度よく確実に検出することができる。
【0017】
また、本発明の塗布装置によれば、本発明の裏面検出装置を備えることにより、スリットノズルの損傷を確実に防止することができるだけでなく、裏面異物に起因した塗布処理動作の不必要な中断を回避できるので、メンテナンスコストの低減と塗布処理効率の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置の適用可能なレジスト塗布装置の主要な構成を示す略平面図である。
【図2】上記レジスト塗布装置における塗布処理動作を模式的に示す正面図である。
【図3】上記レジスト塗布装置において裏面異物が問題になるときの葉面を説明するための図である。
【図4】上記レジスト塗布装置において裏面異物が問題になるときの葉面を説明するための図である。
【図5】上記レジスト塗布装置における裏面異物検出装置の作用を説明するための図である。
【図6】実施形態における裏面異物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態の裏面異物検出装置における光センサの配置構成を示す側面図である。
【図8】裏面異物による基板の盛り上がりと上記光センサの作用を示す部分拡大正面図である。
【図9】上記光センサにおいて得られる光ビーム受光量の波形を示す図である。
【図10】上記裏面異物検出装置におけるA/D変換器の作用を示す図である。
【図11】上記裏面異物検出装置の信号処理部における演算部の構成を示すブロック図である。
【図12】上記信号処理部の演算部に含まれるサンプル値抽出部の作用を説明するための図である。
【図13】上記信号処理部の演算部に含まれる減少分演算部および積算部の作用を説明するための図である。
【図14】上記信号処理部の作用(適用例)を示す図である。
【図15】一変形例における信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図16】上記変形例による信号処理部の作用(適用例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図1に、本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置を適用できるレジスト塗布装置の主要な構成を示す。
【0021】
このレジスト塗布装置は、浮上方式のスピンレス塗布法を採用しており、図1に示すように、被処理基板たとえばFPD用のガラス基板Gを気体の圧力によって空中に浮かす浮上ステージ10と、この浮上ステージ10上で空中に浮いている基板Gを浮上ステージ長手方向(X方向)に搬送する搬送機構12と、浮上ステージ10上を搬送される基板Gの上面にレジスト液を供給するスリットノズル14とを備えている。
【0022】
浮上ステージ10の上面は、基板搬送方向(X方向)に沿って3つの領域つまり搬入領域MIN、塗布領域MCOTおよび搬出領域MOUTに区画されている。このうち、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTには、噴出口16のみが所定の密度で多数設けられており、塗布領域MCOTには噴出口16と吸引口18とが所定の密度で多数混在して設けられている。
【0023】
搬入領域MINには、塗布処理前の基板Gを前段の外部装置からソータ機構(図示せず)により平流し搬送で、あるいは搬送ロボット(図示せず)からの受け渡しで搬入するための基板搬入部(図示せず)が設けられている。搬出領域MOUTには、塗布処理の済んだ基板Gを後段の外部装置へソータ機構(図示せず)により平流しの搬送で、あるいは搬送ロボット(図示せず)への受け渡しで搬出するための基板搬出部(図示せず)が設けられている。
【0024】
塗布領域MCOTには、ステージ上方に、スリットノズル14が昇降移動可能に設けられるとともに、塗布処理の合間にスリットノズル14をリフレッシュするノズルリフレッシュ部24が基板搬送方向(X方向)と平行に水平移動可能に設けられている。
【0025】
搬送機構12は、図1に示すように、浮上ステージ10を挟んでX方向に延びる一対のガイドレール26A,26Bと、これらのガイドレール26A,26Bに沿って往復移動可能な一対のスライダ28と、浮上ステージ10上で基板Gの両側端部を着脱可能に保持するようにスライダ28に設けられた吸着パッド等の基板保持部材(図示せず)とを備えており、直進移動機構(図示せず)によりスライダ28を基板搬送方向(X方向)に移動させることによって、浮上ステージ10上で搬入領域MINから塗布領域MCOTを通って搬出領域MOUTまで基板Gの浮上搬送を行うように構成されている。
【0026】
スリットノズル14は、浮上ステージ10の上方を基板搬送方向と直交する水平方向(Y方向)に横断し、その直下を通過する基板Gの上面(被処理面)に対してスリット状の吐出口よりレジスト液Rを帯状に吐出するようになっている。また、スリットノズル14は、浮上ステージ10をスリットノズル14と平行に(Y方向に)跨いで設置される門形フレーム30に取り付けられるたとえばボールネジ機構やガイド部材等を含むノズル昇降機構36により、このノズル14を支持するノズル支持部材38と一体に鉛直方向(Z方向)に移動(昇降)可能に構成されている。また、スリットノズル14は、レジスト液容器や送液ポンプ等からなるレジスト供給機構40(図2、図5)にレジスト供給管42を介して接続されている。
【0027】
ここで、このレジスト塗布装置におけるレジスト塗布動作を説明する。先ず、前段の基板処理装置(図示せず)より基板Gがソータ機構または搬送ロボットを介して浮上ステージ10の搬入領域MINに搬入され、そこで待機していたスライダ28が基板Gを保持して受け取る。浮上ステージ10上で基板Gは噴出孔16より噴射されるエアの圧力(揚力)によって空中に浮く。
【0028】
こうして基板Gが浮上ステージ10上で水平に浮上したまま搬送機構12により基板搬送方向(X方向)に搬送され、ステージ中央部の塗布領域MCOTを通過する際に、スリットノズル14が基板Gに向けてレジスト液Rを所定の流量で帯状に吐出することにより、図2に示すように基板Gの前端側から後端側へ向かって膜厚の均一なレジスト液の塗布膜RMが形成されていく。
【0029】
基板Gの後端がスリットノズル14の下を通過すると、基板一面にレジスト塗布膜RMが形成される。次いで、基板Gは、その後もスライダ28により浮上ステージ10上で浮上搬送され、浮上ステージ10の後端に設定された搬出領域MOUTよりソータ機構または搬送ロボットを介して後段のユニット(図示せず)へ送られる。
【0030】
図2に示すように、浮上ステージ10の搬入領域MINおよび搬出領域MOUTにおける搬入用および搬出用の浮上高HIN,HOUTは、特に高い精度を必要とせず、たとえば250〜350μmの範囲内に保たれればよい。
【0031】
これに対して、浮上ステージ10の塗布領域MCOTは、基板Gがここを通過する際に上方のスリットノズル14からレジスト液Rの供給を受ける場所である。塗布領域MCOTにおける浮上高HCOTは、スリットノズル14の下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップK(たとえば100μm)を規定する。
【0032】
この塗布ギャップKはレジスト塗布膜RMの膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域MCOTのステージ上面には、基板Gを所望の浮上高HCOTで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口16と負圧で空気を吸い込む吸引口18とを混在させて設けている(図1)。そして、基板Gの塗布領域MCOT内を通過している部分に対して、噴出口16から高圧空気による垂直上向きの力を加えると同時に吸引口18より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することで、塗布領域MCOTにおける浮上高HCOTを高い精度で設定値(たとえば40μm)付近に維持するようにしている。
【0033】
なお、基板搬送方向(X方向)における塗布領域MCOTのサイズは、スリットノズル14の直下に上記のような狭い塗布ギャップKを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板Gのサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/4程度でよい。
【0034】
ここで、図2〜図4につき、このレジスト塗布装置において、基板Gの裏面に付着している異物が問題になる場面を説明する。
【0035】
例として、浮上ステージ10に搬入された基板Gの裏面に異物Qが付着していて、その異物Qの高さ方向のサイズHQが搬入領域MINの浮上高HIN(250〜350μm)よりも小さくて塗布領域MCOTの浮上高HCOT(40μm)よりも大きい場合を考える。
【0036】
図2に示すように、この裏面異物Qが搬入領域MINに在る間は、基板Gは異物Qから何の影響も受けずにそのまま浮上搬送される。しかし、図3に示すように、この裏面異物Qは塗布領域MCOTに入ると基板Gの裏面と浮上ステージ10の上面との間に挟まり、それによって基板Gの上面が裏面異物Qの付着している箇所GQで盛り上がる。この盛り上がりGQの大きさ(上昇分)は、裏面異物Qの高さ方向のサイズHQと浮上高HCOT(40μm)との差分(HQ−HCOT)に相当する。したがって、この差分(HQ−HCOT)が塗布ギャップK(100μm)以上の大きさである場合は、つまり裏面異物Qの高さ方向のサイズHQが140μm以上である場合は、裏面異物Qがスリットノズル14の直下を通過する際に、その上方で基板Gの盛り上がり部分GQがスリットノズル14の吐出口を擦ることになる。そうなると、スリットノズル14の吐出口が損傷して、スリットノズル14は相当な確率で使い物にならなくなる。
【0037】
この実施形態では、図5に示すように、本発明の裏面異物検出装置50を備えることより、後述するように、上記のような有害な(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物Qをスリットノズル14よりも基板搬送方向(X方向)の上流側で確実に検出することが可能である。そして、裏面異物検出装置50がそのような有害裏面異物Qを検出したときに発生する警報信号WSに応答して、主制御部52がノズル昇降機構36を通じてスリットノズル14を即時に上昇移動させることにより、スリットノズル14は基板Gの盛り上がり部分GQをかわす(摺接または衝突を避ける)ことができ、スリットノズル14の損傷が防止される。
【0038】
なお、上記警報信号WSに応答して、主制御部52が、レジスト供給機構40を制御してスリットノズル14のレジスト吐出動作を停止させるのが好ましく、さらには搬送機構12を制御して基板Gの搬送をいったん停止させてもよい。
【0039】
また、この実施形態では、後述するように、有害裏面異物Qよりも高さ方向サイズの小さな実質的に無害の(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせるおそれのない)裏面異物qに対しては、裏面異物検出装置50が上記警報信号WSを発生しないようになっている。これによって、実行中の塗布処理動作を不必要に中断する事態を回避し、裏面異物に起因する装置稼働率の低下を極力避けるようにしている。
【0040】
以下、図5〜図16につき、本発明の一実施形態における裏面異物検出装置50の構成および作用を詳細に説明する。
【0041】
図5および図6に示すように、この実施形態における裏面異物検出装置50は、基板搬送方向(X方向)においてスリットノズル14の上流側に配置される光センサ54と、この光センサ54より出力される受光量信号ASに基づいて、基板Gに付着している有害裏面異物Qを所定の信号処理によって検出する信号処理部56とを有している。
【0042】
光センサ54は、投光部58および受光部60を有する。図5および図7に示すように、投光部58および受光部60は、スリットノズル14から基板搬送方向(X方向)の上流側に適当な距離(たとえば60〜80mm)を隔てて浮上ステージ10(塗布領域MCOT)の両側に対向して配置される。
【0043】
投光部58は、1個のLD(半導体レーザ)でもよいが、好ましくは多数のLDを縦横マトリクス状に配置してなる2次元LDアレイからなり、発光駆動回路(図示せず)より駆動電流の供給を受けて発光し、たとえば縦1mm・横5mmのビーム断面サイズを有する光ビームLBを出射する。この際、投光部58より出射された光ビームLBの下端部が基板Gの一側面で進路を断たれ、基板Gの上面よりも高い空間を水平に伝播するビーム部分だけが受光部60の受光面に到達するように、ビーム光路の高さ位置を設定または調整してよい。
【0044】
受光部60は、一定サイズ(たとえば縦1mm・横5mm)の全受光エリアの中に多数の受光セルを縦横マトリクス状に配置してなる2次元CCD(Charge-Coupled Device)からなり、一定サイクルの周期で、各々の受光セル毎に受光した光を光電変換してその受光量AEを表す信号電荷またはアナログの受光量信号ASを生成し、所定の転送方法で受光量信号ASを時系列でシリアルに出力するようになっている。
【0045】
図8に示すように、有害裏面異物Q(または無害裏面異物q)が光センサ54を通過する時は、基板Gの盛り上がり部GQ(Gq)によって光ビームLBの遮光分が増大し、つまり受光部60における光ビームLBの受光量が減少し、受光量AEの波形には図9に示すように逆さ山状(すり鉢状)のプロファイルAEQ(AEq)が現れる。
【0046】
図6において、信号処理部56は、アナログ−ディジタル(A/D)変換器62、受光量データメモリ64、演算処理部66、設定部68および出力部70を有している。このうち、受光量データメモリ64、演算処理部66、設定部68および出力部70は、たとえばマイクロコンピュータにより構成される。
【0047】
A/D変換器62は、図10に示すように、光センサ54(受光部60)からの受光量信号ASを所定の周期Δt(たとえば1.5msec)でディジタル信号つまり受光量データ・・A0,A1,A2,・・に変換する。受光量データメモリ64は、A/D変換器62より出力された受光量データ・・A0,A1,A2,・・を現時点から一定時間前までの分(一定データ量)だけ上書き方式で一時的に格納する。
【0048】
演算部66は、図11に示すように、サンプル値抽出部72、減少分演算部74、積算部76および判定部78を備えている。
【0049】
図12につき、サンプル値抽出部72の作用を説明する。図中、[1],[2],[3],[4]は抽出点を表わす。サンプル値抽出部72は、受光量データメモリ64に格納されている受光量データの中から、一定時間(p*Δt)置きの複数(n)個たとえば4個の受光量データ(Ai-3p,Ai-2p,Ai-p,Ai)を抽出する。たとえば、p=10とすると、受光量データメモリ64に受光量データA30が格納された直後に、サンプル値抽出部72は、その受光量データA30と、それよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA20と、さらにそれよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA10と、さらにそれよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA0とを同時に抽出する。
【0050】
そして、受光量データA30の次の受光量データA31が受光量データメモリ64に格納されると、その直後にサンプル値抽出部72は上記と同様の仕方で一定時間(10Δt分)置きの4個の受光量データ(A1,A11,A21,A31)を抽出する。そして、受光量データA31の次の受光量データA32が受光量データメモリ64に格納されると、その直後にサンプル値抽出部72はやはり上記と同様の仕方で一定時間(10Δt分)置きの4個の受光量データ(A2,A12,A22,A32)を抽出するようになっている。
【0051】
なお、サンプル値抽出部72で用いる抽出点の個数n(好ましくは3以上)および間隔pは、判定部68(図6)より与えられる。
【0052】
図13につき、減少分演算部74の作用を説明する。減少分演算部74は、サンプル値抽出部72により抽出された4個の受光量データ(Ai-3p,Ai-2p,Ai-p,Ai)についてそれぞれ受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を求める。ここで、δi-3p=N−Ai-3p,δi-2p=N−Ai-2p,δi-p=Ai-p,δi=NAE−Aiであり、NAEは受光量基準値である。したがって、たとえば時間t30で得られる受光量減少分(δ0,δ10,δ20,δ30)は、δ0=NAE−A0,δ10=NAE−A10、δ20=NAE−A20,δ30=NAE−A30である。
【0053】
受光量基準値NAEは、好ましくは、基板搬送方向(X方向)において基板Gの先頭部分が光センサ54を通過した際に受光部60で得られた光ビーム受光量の値でよく、あるいは4個の抽出点[1],[2],[3],[4]の中で最も時間的に古いもの[4]よりも一定時間前(たとえば10msec)に受光部60で得られた光ビーム受光量の値に相当し、100%の値に設定される。
【0054】
減少分演算部74は、受光量データ(A2,A12,A22,A32)を%表示で正規化して、受光量減少分(δ0,δ10,δ20,δ30)を%表示で求める。したがって、たとえば(A2,A12,A22,A32)=(100,98,95,97)のときは、(δ0,δ10,δ20,δ30)=(0,2,5,3)となる。
【0055】
積算部76は、減少分演算部74より一括的または1フレーム(枠)FLで出力される4個の受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算して、演算結果Iiを出力する。たとえば、減少分演算部74より出力された(δ0,δ10,δ20,δ30)が(0,2,5,3)の場合、0*2*5*3の乗算が行われ、演算結果として、Ii=0が出力される。
【0056】
判定部78は、積算部76より出力される演算結果Iiを設定部68(図6)からの判定しきい値ISと比較して、それらの大小関係を判定し、Ii≦ISのときは判定出力信号Wをたとえば論理値Lとし、Ii>ISのときは判定出力信号Wをたとえば論理値Hとする。判定部78より論理値Hの判定出力信号Wが出力されると、出力部70(図6)より警報信号WSが出力されるようになっている。
【0057】
上記のように、信号処理部56においては、サンプル値抽出部72および減少分演算部74により、時間軸上に所定の間隔(p*Δt)を置いて設定される複数(n)個たとえば4個の抽出点[1],[2], [3],[4]で所定の受光量基準値NAEに対する光ビーム受光量AEの減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を求める第1の演算が行われる。そして、積算部76により、それら複数の抽出点[1],[2], [3],[4]よりそれぞれ得られた受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算する第2の演算が行われる。最後に、判定部78において、受光量減少分の積算値Iiを所定のしきい値ISと比較して、積算値Iiが上記しきい値ISを超えたときに、論理値Hの判定結果Wを出す第3の演算が行われる。
【0058】
ここで、判定部78が論理値Hの判定結果Wを出すということは、この裏面異物検出装置50が光ビーム受光量AEの波形の中に基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定したことを意味している。
【0059】
ここで、抽出点[1],[2], [3],[4]の先頭[1]から末尾[4]までの時間幅TSおよび上記しきい値ISは、有害裏面異物Qの高さ方向のサイズHQが下限値(つまり浮上高HCOTと塗布ギャップKとを足し合わせた値)のときに受光量AEの波形に現れる逆さ山形プロファイルの基準サイズ(直径サイズDQ、受光量減少ピーク値δQ)に応じて、最適または適度な値に設定される。
【0060】
たとえば、基板Gの厚さTGが700μm、浮上高HCOTが40μm、塗布ギャップKが100μmの場合、高さ方向のサイズHQが140μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着していると、基板Gの盛り上がり部GQがスリットノズル14の吐出口の高さになる。このとき、受光量AEの波形に現れる逆さ山形プロファイルの直径サイズは70μm、受光量減少ピーク値δQは7%である。これらの値(70μm,7%)は、実験から得られる。
【0061】
なお、基板搬送速度vは一定であるから、受光量信号ASまたは受光量AEの波形における時間軸tは一定の比例関係(X=vt)で基板搬送方向のX軸に置き換えることができる。
【0062】
したがって、理論的には、たとえば5%〜7%のしきい値にかければ、殆どの有害裏面異物Qを検出できるはずではある。しかし、実際には、光センサ54より出力される受光量信号ASには浮上搬送中の基板Gのゆれや光センサ54自体の振動等により殆ど1に近いSN比でノイズ成分が混じっているため、そのような判定法は有効ではない。
【0063】
そこで、この実施形態では、上記のように複数(n)個の抽出点[1],[2], [3],[4]よりそれぞれ得られる1フレームFLの受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算(または加算)し、その演算結果(積算値)Iiによって逆さ山形プロファイルの大きさを計るようにしている。
【0064】
この手法では、抽出点の全体時間幅TSが距離換算DTSで基準(下限)の直径サイズDQ(70μm)よりも適度(好ましくは1/2DQ<DTS<DQ)に小さいことが重要であり、たとえばDTS=60μmに設定される。これによって、逆さ山形プロファイルのうち、直径サイズがDTSよりも小さいものは、積算値Iiが常に零またはその付近の値をとるため、確実に有害裏面異物Qではないと判定することができる。また、逆さ山形プロファイルのうち、直径サイズがTSよりも大きいものは、その逆さ山形プロファイルの大きさが積算値Iiに反映されるので、適度な値の上記しきい値ISによって有害裏面異物Qであることを確実に判別することができる。
【0065】
たとえば、上記のように高さ方向のサイズHQが140μmの最小有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着しているときに、受光量AEの波形に図14の(a)に示すような逆さ山形プロファイルが現れた場合、積算値Iiは1*4.5*6*2.5=67.5になる。この積算値Iiはノイズ成分の影響を殆ど受けない当該逆さ山形プロファイル固有の属性値である。したがって、上記しきい値ISをたとえば60に設定することで、当該裏面異物が有害裏面異物Qであることを的確かつ確実に判別することができる。
【0066】
因みに、高さ方向のサイズHQが190μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着している場合、受光量AEの波形には図14の(b)に示すような逆さ山形プロファイルが現れる。この場合、積算値Iiは8.5*9*5*2=675になり、上記しきい値IS(60)を優に超えるので、やはり確実に有害裏面異物Qであると判定することができる。
【0067】
また、高さ方向のサイズHQが100μmの実質的無害裏面異物qが基板Gの裏面に付着している場合、受光量AEの波形には図14の(c)に示すような逆さ山形プロファイルが現れる。この場合、積算値Iiは0*1*3*0.2=0になり、当該裏面異物が有害裏面異物Qではないと明確に判定することができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形または変更が可能である。
【0069】
たとえば、図15に示すように、信号処理部56の演算部66を、サンプル値抽出部72、パターン比較部80および判定部82で構成することができる。ここで、パターン比較部80は、図16に示すように、時間軸上で光ビーム受光量の波形に基準サイズ(基準直径サイズDQ、基準受光量減少ピーク値δQ)またはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンMPを定規として当てて、複数箇所(たとえば5箇所)[1]〜[5]で逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)とモデルパターンMPとを比較して、その大小関係を+/−の2値で出力する。なお、モデルパターンMPのデータは設定部68(図6)より与えられる。
【0070】
たとえば、高さ方向のサイズHQが140μmの最小有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着しているときは、図16の(a)のようになり、比較箇所[1]〜[5]のすべてにおいて逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを上回っているので、パターン比較部80より(+,+,+,+,+)の比較結果出力が得られる。この場合、判定部82は、比較結果出力がすべて+なので、有害裏面異物Qが検出された旨の論理値Hの判定結果Wを出す。
【0071】
また、高さ方向のサイズHQが190μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着している場合は、図16の(b)のようになり、やはり比較箇所[1]〜[5]のすべてにおいて逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを上回っているので、パターン比較部80より(+,+,+,+,+)の比較結果出力が得られ、判定部82は有害裏面異物Qが検出された旨の論理値Hの判定結果Wを出力する。
【0072】
しかし、高さ方向のサイズHQが100μmの実質的無害裏面異物qが基板Gの裏面に付着している場合は、図16の(c)のようになり、比較箇所[4],[5]では逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p)がモデルパターンMPを上回っているものの、比較箇所[1],[2],[3]では逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを下回っている。この場合、パターン比較部80より(+,+,−,−,−)の比較結果出力が得られる。これにより、判定部82は、比較結果出力の一部が"−"であるから、有害裏面異物Qではない旨の論理値Lの判定結果Wを出力する。
【0073】
本発明の塗布装置における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、各種薬液、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。本発明の裏面異物検出方法および裏面異物検出装置は、特に平流し方式の塗布装置に好適に適用できるが、平流し方式を採る他の種類の基板処理装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 浮上ステージ
12 搬送機構
14 スリットノズル
16 噴出口
18 吸引口
40 レジスト供給機構
50 裏面異物検出装置
52 光センサ
54 信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上ステージ上で被処理基板に処理液を塗布する塗布装置に係わり、特に基板の裏面に付着している望ましくない異物を検出するための裏面異物検出方法および裏面異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺形のスリットノズルを用いて被処理基板(ガラス基板等)上にレジスト液を塗布するスピンレスの塗布法がよく用いられている。
【0003】
このようなスピンレス塗布法の一形式として、基板を支持するためのステージに基板浮上機構を組み込み、この浮上ステージ上で基板を空中に浮かせて水平な一方向(ステージ長手方向)に搬送し、搬送途中の所定位置でステージ上方に設置したスリットノズルより直下を通過する基板に向けてレジスト液を帯状に吐出させることにより、基板上の一端から他端までレジスト液を塗布するようにした浮上方式が知られている。
【0004】
かかる浮上方式のスピンレス塗布法において、基板上にレジスト液の塗布膜を設定通りの膜厚で均一に形成するには、スリットノズルの吐出口と基板との間に設ける通常100μm前後の微小なギャップを精確に設定値またはその付近に維持することが要求される。
【0005】
この要求条件を満たすために、浮上方式のスピンレス塗布法を採用するレジスト塗布装置は、浮上ステージの略全域に高圧または正圧の気体たとえばエアを噴出する噴出口を所定の密度で多数設けるだけでなく、浮上ステージ上でスリットノズルの直下およびその前後のエリアとして設定される塗布領域には、負圧でエアを吸い込む吸引口を噴出口に混在させている。そして、該塗布領域内では、そこを通過する基板に対して、噴出口より加えられる垂直上向きの圧力と吸引口より加えられる垂直下向きの圧力とのバランスをとって、基板に与える浮上圧力を精細に制御し、基板の浮上高を設定値(通常50μm以下)に合わせるようにしている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−190483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような浮上方式のスピンレス塗布法においても、他のスピンレス塗布法と同様に、塗布処理を受ける直前の基板に異物が付着していることがあり、スリットノズルの先端(吐出口)に異物または基板の上面が擦ると、スリットノズルが損傷を受けることがある。スリットノズルの吐出口に少しでも傷が付くと、帯状吐出流が不均一になって、塗布膜の膜質低下に直結する。スリットノズルは非常に高価であり、その部品交換を低コストで簡便に行えるものではないので、基板に付着する異物の早期検出は重要な課題となっている。
【0008】
基板上の異物には、基板の表面(上面)に付着する表面異物と、基板の裏面(下面)に付着する裏面異物の2種類がある。このうち、表面異物は、基板の上面を掠めるように光ビームを横断させる光センサを用いて、光ビームの遮光分または受光量減少分の大きさから有害な(つまり、スリットノズルを直接擦って傷を付けるおそれのある)異物を容易に検出できる。したがって、従来の異物検出装置で対応することができる。
【0009】
しかし、裏面異物は、浮上方式のスピンレス塗布法においては、やっかいなものになっている。すなわち、基板をステージに載置して吸着固定する方式のスピンレス塗布法であれば、裏面異物による基板の盛り上がりを表面異物と同視して、上記のような光ビームの遮光分または受光量減少分を所定のしきい値にかけて、有害な(つまり、スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)異物を容易に検出することができる。
【0010】
ところが、浮上方式のスピンレス塗布法では、基板の浮上搬送による基板のぶれや周囲の振動に起因するノイズ成分が光センサの出力信号に殆ど1に近いSN比で混じるため、光ビームの遮光分または受光量減少分を所定のしきい値にかける従来技術の技法によっては、有害な(スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物を精度良く抽出(検出)することはできない。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、浮上方式のスピンレス塗布法においてスリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある有害な裏面異物を精度よく確実に検出できる裏面異物検出方法、裏面異物検出装置およびこれを用いる塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の裏面異物検出方法は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板上に処理液を供給して前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出方法であって、前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部と受光部との間で、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を取得する第1の工程と、前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する第2の工程とを有する。
【0013】
本発明の裏面異物検出装置は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板に向けて処理液を供給して、前記基板上に前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出装置であって、前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部および受光部を有し、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを前記投光部と前記受光部との間で送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を出力する光センサと、前記光センサより出力される前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する信号処理部とを有する。
【0014】
本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置によれば、光センサより得られる光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とするので、受光量信号に含まれるノイズ成分の影響を受けずに、当該逆さ山形プロファイルの元になっている裏面異物がスリットノズルに対して有害な(つまり、スリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)異物であるか否かを的確に判別することができる。
【0015】
本発明の塗布装置は、多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた第1の浮上領域を有する浮上ステージと、前記浮上ステージ上で空中に浮く前記基板を保持して前記第1の浮上領域を通過するように搬送する搬送機構と、前記第1の浮上領域の上方に配置されるスリットノズルを有し、前記第1の浮上領域を通過する前記基板上に前記スリットノズルより処理液を供給する処理液供給部と、基板搬送方向において前記スリットノズルより上流側の位置で、前記第1の浮上領域を通過する前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を検出するための本発明の裏面異物検出装置とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置によれば、上記のような構成および作用により、浮上方式のスピンレス塗布法においてスリットノズルに基板の上面を擦らせて傷を付けるおそれのある有害な裏面異物を精度よく確実に検出することができる。
【0017】
また、本発明の塗布装置によれば、本発明の裏面検出装置を備えることにより、スリットノズルの損傷を確実に防止することができるだけでなく、裏面異物に起因した塗布処理動作の不必要な中断を回避できるので、メンテナンスコストの低減と塗布処理効率の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置の適用可能なレジスト塗布装置の主要な構成を示す略平面図である。
【図2】上記レジスト塗布装置における塗布処理動作を模式的に示す正面図である。
【図3】上記レジスト塗布装置において裏面異物が問題になるときの葉面を説明するための図である。
【図4】上記レジスト塗布装置において裏面異物が問題になるときの葉面を説明するための図である。
【図5】上記レジスト塗布装置における裏面異物検出装置の作用を説明するための図である。
【図6】実施形態における裏面異物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態の裏面異物検出装置における光センサの配置構成を示す側面図である。
【図8】裏面異物による基板の盛り上がりと上記光センサの作用を示す部分拡大正面図である。
【図9】上記光センサにおいて得られる光ビーム受光量の波形を示す図である。
【図10】上記裏面異物検出装置におけるA/D変換器の作用を示す図である。
【図11】上記裏面異物検出装置の信号処理部における演算部の構成を示すブロック図である。
【図12】上記信号処理部の演算部に含まれるサンプル値抽出部の作用を説明するための図である。
【図13】上記信号処理部の演算部に含まれる減少分演算部および積算部の作用を説明するための図である。
【図14】上記信号処理部の作用(適用例)を示す図である。
【図15】一変形例における信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図16】上記変形例による信号処理部の作用(適用例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図1に、本発明の裏面異物検出方法または裏面異物検出装置を適用できるレジスト塗布装置の主要な構成を示す。
【0021】
このレジスト塗布装置は、浮上方式のスピンレス塗布法を採用しており、図1に示すように、被処理基板たとえばFPD用のガラス基板Gを気体の圧力によって空中に浮かす浮上ステージ10と、この浮上ステージ10上で空中に浮いている基板Gを浮上ステージ長手方向(X方向)に搬送する搬送機構12と、浮上ステージ10上を搬送される基板Gの上面にレジスト液を供給するスリットノズル14とを備えている。
【0022】
浮上ステージ10の上面は、基板搬送方向(X方向)に沿って3つの領域つまり搬入領域MIN、塗布領域MCOTおよび搬出領域MOUTに区画されている。このうち、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTには、噴出口16のみが所定の密度で多数設けられており、塗布領域MCOTには噴出口16と吸引口18とが所定の密度で多数混在して設けられている。
【0023】
搬入領域MINには、塗布処理前の基板Gを前段の外部装置からソータ機構(図示せず)により平流し搬送で、あるいは搬送ロボット(図示せず)からの受け渡しで搬入するための基板搬入部(図示せず)が設けられている。搬出領域MOUTには、塗布処理の済んだ基板Gを後段の外部装置へソータ機構(図示せず)により平流しの搬送で、あるいは搬送ロボット(図示せず)への受け渡しで搬出するための基板搬出部(図示せず)が設けられている。
【0024】
塗布領域MCOTには、ステージ上方に、スリットノズル14が昇降移動可能に設けられるとともに、塗布処理の合間にスリットノズル14をリフレッシュするノズルリフレッシュ部24が基板搬送方向(X方向)と平行に水平移動可能に設けられている。
【0025】
搬送機構12は、図1に示すように、浮上ステージ10を挟んでX方向に延びる一対のガイドレール26A,26Bと、これらのガイドレール26A,26Bに沿って往復移動可能な一対のスライダ28と、浮上ステージ10上で基板Gの両側端部を着脱可能に保持するようにスライダ28に設けられた吸着パッド等の基板保持部材(図示せず)とを備えており、直進移動機構(図示せず)によりスライダ28を基板搬送方向(X方向)に移動させることによって、浮上ステージ10上で搬入領域MINから塗布領域MCOTを通って搬出領域MOUTまで基板Gの浮上搬送を行うように構成されている。
【0026】
スリットノズル14は、浮上ステージ10の上方を基板搬送方向と直交する水平方向(Y方向)に横断し、その直下を通過する基板Gの上面(被処理面)に対してスリット状の吐出口よりレジスト液Rを帯状に吐出するようになっている。また、スリットノズル14は、浮上ステージ10をスリットノズル14と平行に(Y方向に)跨いで設置される門形フレーム30に取り付けられるたとえばボールネジ機構やガイド部材等を含むノズル昇降機構36により、このノズル14を支持するノズル支持部材38と一体に鉛直方向(Z方向)に移動(昇降)可能に構成されている。また、スリットノズル14は、レジスト液容器や送液ポンプ等からなるレジスト供給機構40(図2、図5)にレジスト供給管42を介して接続されている。
【0027】
ここで、このレジスト塗布装置におけるレジスト塗布動作を説明する。先ず、前段の基板処理装置(図示せず)より基板Gがソータ機構または搬送ロボットを介して浮上ステージ10の搬入領域MINに搬入され、そこで待機していたスライダ28が基板Gを保持して受け取る。浮上ステージ10上で基板Gは噴出孔16より噴射されるエアの圧力(揚力)によって空中に浮く。
【0028】
こうして基板Gが浮上ステージ10上で水平に浮上したまま搬送機構12により基板搬送方向(X方向)に搬送され、ステージ中央部の塗布領域MCOTを通過する際に、スリットノズル14が基板Gに向けてレジスト液Rを所定の流量で帯状に吐出することにより、図2に示すように基板Gの前端側から後端側へ向かって膜厚の均一なレジスト液の塗布膜RMが形成されていく。
【0029】
基板Gの後端がスリットノズル14の下を通過すると、基板一面にレジスト塗布膜RMが形成される。次いで、基板Gは、その後もスライダ28により浮上ステージ10上で浮上搬送され、浮上ステージ10の後端に設定された搬出領域MOUTよりソータ機構または搬送ロボットを介して後段のユニット(図示せず)へ送られる。
【0030】
図2に示すように、浮上ステージ10の搬入領域MINおよび搬出領域MOUTにおける搬入用および搬出用の浮上高HIN,HOUTは、特に高い精度を必要とせず、たとえば250〜350μmの範囲内に保たれればよい。
【0031】
これに対して、浮上ステージ10の塗布領域MCOTは、基板Gがここを通過する際に上方のスリットノズル14からレジスト液Rの供給を受ける場所である。塗布領域MCOTにおける浮上高HCOTは、スリットノズル14の下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップK(たとえば100μm)を規定する。
【0032】
この塗布ギャップKはレジスト塗布膜RMの膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域MCOTのステージ上面には、基板Gを所望の浮上高HCOTで浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口16と負圧で空気を吸い込む吸引口18とを混在させて設けている(図1)。そして、基板Gの塗布領域MCOT内を通過している部分に対して、噴出口16から高圧空気による垂直上向きの力を加えると同時に吸引口18より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することで、塗布領域MCOTにおける浮上高HCOTを高い精度で設定値(たとえば40μm)付近に維持するようにしている。
【0033】
なお、基板搬送方向(X方向)における塗布領域MCOTのサイズは、スリットノズル14の直下に上記のような狭い塗布ギャップKを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板Gのサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/4程度でよい。
【0034】
ここで、図2〜図4につき、このレジスト塗布装置において、基板Gの裏面に付着している異物が問題になる場面を説明する。
【0035】
例として、浮上ステージ10に搬入された基板Gの裏面に異物Qが付着していて、その異物Qの高さ方向のサイズHQが搬入領域MINの浮上高HIN(250〜350μm)よりも小さくて塗布領域MCOTの浮上高HCOT(40μm)よりも大きい場合を考える。
【0036】
図2に示すように、この裏面異物Qが搬入領域MINに在る間は、基板Gは異物Qから何の影響も受けずにそのまま浮上搬送される。しかし、図3に示すように、この裏面異物Qは塗布領域MCOTに入ると基板Gの裏面と浮上ステージ10の上面との間に挟まり、それによって基板Gの上面が裏面異物Qの付着している箇所GQで盛り上がる。この盛り上がりGQの大きさ(上昇分)は、裏面異物Qの高さ方向のサイズHQと浮上高HCOT(40μm)との差分(HQ−HCOT)に相当する。したがって、この差分(HQ−HCOT)が塗布ギャップK(100μm)以上の大きさである場合は、つまり裏面異物Qの高さ方向のサイズHQが140μm以上である場合は、裏面異物Qがスリットノズル14の直下を通過する際に、その上方で基板Gの盛り上がり部分GQがスリットノズル14の吐出口を擦ることになる。そうなると、スリットノズル14の吐出口が損傷して、スリットノズル14は相当な確率で使い物にならなくなる。
【0037】
この実施形態では、図5に示すように、本発明の裏面異物検出装置50を備えることより、後述するように、上記のような有害な(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせて傷を付けるおそれのある)裏面異物Qをスリットノズル14よりも基板搬送方向(X方向)の上流側で確実に検出することが可能である。そして、裏面異物検出装置50がそのような有害裏面異物Qを検出したときに発生する警報信号WSに応答して、主制御部52がノズル昇降機構36を通じてスリットノズル14を即時に上昇移動させることにより、スリットノズル14は基板Gの盛り上がり部分GQをかわす(摺接または衝突を避ける)ことができ、スリットノズル14の損傷が防止される。
【0038】
なお、上記警報信号WSに応答して、主制御部52が、レジスト供給機構40を制御してスリットノズル14のレジスト吐出動作を停止させるのが好ましく、さらには搬送機構12を制御して基板Gの搬送をいったん停止させてもよい。
【0039】
また、この実施形態では、後述するように、有害裏面異物Qよりも高さ方向サイズの小さな実質的に無害の(つまり、スリットノズル14に基板Gの上面を擦らせるおそれのない)裏面異物qに対しては、裏面異物検出装置50が上記警報信号WSを発生しないようになっている。これによって、実行中の塗布処理動作を不必要に中断する事態を回避し、裏面異物に起因する装置稼働率の低下を極力避けるようにしている。
【0040】
以下、図5〜図16につき、本発明の一実施形態における裏面異物検出装置50の構成および作用を詳細に説明する。
【0041】
図5および図6に示すように、この実施形態における裏面異物検出装置50は、基板搬送方向(X方向)においてスリットノズル14の上流側に配置される光センサ54と、この光センサ54より出力される受光量信号ASに基づいて、基板Gに付着している有害裏面異物Qを所定の信号処理によって検出する信号処理部56とを有している。
【0042】
光センサ54は、投光部58および受光部60を有する。図5および図7に示すように、投光部58および受光部60は、スリットノズル14から基板搬送方向(X方向)の上流側に適当な距離(たとえば60〜80mm)を隔てて浮上ステージ10(塗布領域MCOT)の両側に対向して配置される。
【0043】
投光部58は、1個のLD(半導体レーザ)でもよいが、好ましくは多数のLDを縦横マトリクス状に配置してなる2次元LDアレイからなり、発光駆動回路(図示せず)より駆動電流の供給を受けて発光し、たとえば縦1mm・横5mmのビーム断面サイズを有する光ビームLBを出射する。この際、投光部58より出射された光ビームLBの下端部が基板Gの一側面で進路を断たれ、基板Gの上面よりも高い空間を水平に伝播するビーム部分だけが受光部60の受光面に到達するように、ビーム光路の高さ位置を設定または調整してよい。
【0044】
受光部60は、一定サイズ(たとえば縦1mm・横5mm)の全受光エリアの中に多数の受光セルを縦横マトリクス状に配置してなる2次元CCD(Charge-Coupled Device)からなり、一定サイクルの周期で、各々の受光セル毎に受光した光を光電変換してその受光量AEを表す信号電荷またはアナログの受光量信号ASを生成し、所定の転送方法で受光量信号ASを時系列でシリアルに出力するようになっている。
【0045】
図8に示すように、有害裏面異物Q(または無害裏面異物q)が光センサ54を通過する時は、基板Gの盛り上がり部GQ(Gq)によって光ビームLBの遮光分が増大し、つまり受光部60における光ビームLBの受光量が減少し、受光量AEの波形には図9に示すように逆さ山状(すり鉢状)のプロファイルAEQ(AEq)が現れる。
【0046】
図6において、信号処理部56は、アナログ−ディジタル(A/D)変換器62、受光量データメモリ64、演算処理部66、設定部68および出力部70を有している。このうち、受光量データメモリ64、演算処理部66、設定部68および出力部70は、たとえばマイクロコンピュータにより構成される。
【0047】
A/D変換器62は、図10に示すように、光センサ54(受光部60)からの受光量信号ASを所定の周期Δt(たとえば1.5msec)でディジタル信号つまり受光量データ・・A0,A1,A2,・・に変換する。受光量データメモリ64は、A/D変換器62より出力された受光量データ・・A0,A1,A2,・・を現時点から一定時間前までの分(一定データ量)だけ上書き方式で一時的に格納する。
【0048】
演算部66は、図11に示すように、サンプル値抽出部72、減少分演算部74、積算部76および判定部78を備えている。
【0049】
図12につき、サンプル値抽出部72の作用を説明する。図中、[1],[2],[3],[4]は抽出点を表わす。サンプル値抽出部72は、受光量データメモリ64に格納されている受光量データの中から、一定時間(p*Δt)置きの複数(n)個たとえば4個の受光量データ(Ai-3p,Ai-2p,Ai-p,Ai)を抽出する。たとえば、p=10とすると、受光量データメモリ64に受光量データA30が格納された直後に、サンプル値抽出部72は、その受光量データA30と、それよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA20と、さらにそれよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA10と、さらにそれよりも10個分(10Δt分)前の受光量データA0とを同時に抽出する。
【0050】
そして、受光量データA30の次の受光量データA31が受光量データメモリ64に格納されると、その直後にサンプル値抽出部72は上記と同様の仕方で一定時間(10Δt分)置きの4個の受光量データ(A1,A11,A21,A31)を抽出する。そして、受光量データA31の次の受光量データA32が受光量データメモリ64に格納されると、その直後にサンプル値抽出部72はやはり上記と同様の仕方で一定時間(10Δt分)置きの4個の受光量データ(A2,A12,A22,A32)を抽出するようになっている。
【0051】
なお、サンプル値抽出部72で用いる抽出点の個数n(好ましくは3以上)および間隔pは、判定部68(図6)より与えられる。
【0052】
図13につき、減少分演算部74の作用を説明する。減少分演算部74は、サンプル値抽出部72により抽出された4個の受光量データ(Ai-3p,Ai-2p,Ai-p,Ai)についてそれぞれ受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を求める。ここで、δi-3p=N−Ai-3p,δi-2p=N−Ai-2p,δi-p=Ai-p,δi=NAE−Aiであり、NAEは受光量基準値である。したがって、たとえば時間t30で得られる受光量減少分(δ0,δ10,δ20,δ30)は、δ0=NAE−A0,δ10=NAE−A10、δ20=NAE−A20,δ30=NAE−A30である。
【0053】
受光量基準値NAEは、好ましくは、基板搬送方向(X方向)において基板Gの先頭部分が光センサ54を通過した際に受光部60で得られた光ビーム受光量の値でよく、あるいは4個の抽出点[1],[2],[3],[4]の中で最も時間的に古いもの[4]よりも一定時間前(たとえば10msec)に受光部60で得られた光ビーム受光量の値に相当し、100%の値に設定される。
【0054】
減少分演算部74は、受光量データ(A2,A12,A22,A32)を%表示で正規化して、受光量減少分(δ0,δ10,δ20,δ30)を%表示で求める。したがって、たとえば(A2,A12,A22,A32)=(100,98,95,97)のときは、(δ0,δ10,δ20,δ30)=(0,2,5,3)となる。
【0055】
積算部76は、減少分演算部74より一括的または1フレーム(枠)FLで出力される4個の受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算して、演算結果Iiを出力する。たとえば、減少分演算部74より出力された(δ0,δ10,δ20,δ30)が(0,2,5,3)の場合、0*2*5*3の乗算が行われ、演算結果として、Ii=0が出力される。
【0056】
判定部78は、積算部76より出力される演算結果Iiを設定部68(図6)からの判定しきい値ISと比較して、それらの大小関係を判定し、Ii≦ISのときは判定出力信号Wをたとえば論理値Lとし、Ii>ISのときは判定出力信号Wをたとえば論理値Hとする。判定部78より論理値Hの判定出力信号Wが出力されると、出力部70(図6)より警報信号WSが出力されるようになっている。
【0057】
上記のように、信号処理部56においては、サンプル値抽出部72および減少分演算部74により、時間軸上に所定の間隔(p*Δt)を置いて設定される複数(n)個たとえば4個の抽出点[1],[2], [3],[4]で所定の受光量基準値NAEに対する光ビーム受光量AEの減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を求める第1の演算が行われる。そして、積算部76により、それら複数の抽出点[1],[2], [3],[4]よりそれぞれ得られた受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算する第2の演算が行われる。最後に、判定部78において、受光量減少分の積算値Iiを所定のしきい値ISと比較して、積算値Iiが上記しきい値ISを超えたときに、論理値Hの判定結果Wを出す第3の演算が行われる。
【0058】
ここで、判定部78が論理値Hの判定結果Wを出すということは、この裏面異物検出装置50が光ビーム受光量AEの波形の中に基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定したことを意味している。
【0059】
ここで、抽出点[1],[2], [3],[4]の先頭[1]から末尾[4]までの時間幅TSおよび上記しきい値ISは、有害裏面異物Qの高さ方向のサイズHQが下限値(つまり浮上高HCOTと塗布ギャップKとを足し合わせた値)のときに受光量AEの波形に現れる逆さ山形プロファイルの基準サイズ(直径サイズDQ、受光量減少ピーク値δQ)に応じて、最適または適度な値に設定される。
【0060】
たとえば、基板Gの厚さTGが700μm、浮上高HCOTが40μm、塗布ギャップKが100μmの場合、高さ方向のサイズHQが140μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着していると、基板Gの盛り上がり部GQがスリットノズル14の吐出口の高さになる。このとき、受光量AEの波形に現れる逆さ山形プロファイルの直径サイズは70μm、受光量減少ピーク値δQは7%である。これらの値(70μm,7%)は、実験から得られる。
【0061】
なお、基板搬送速度vは一定であるから、受光量信号ASまたは受光量AEの波形における時間軸tは一定の比例関係(X=vt)で基板搬送方向のX軸に置き換えることができる。
【0062】
したがって、理論的には、たとえば5%〜7%のしきい値にかければ、殆どの有害裏面異物Qを検出できるはずではある。しかし、実際には、光センサ54より出力される受光量信号ASには浮上搬送中の基板Gのゆれや光センサ54自体の振動等により殆ど1に近いSN比でノイズ成分が混じっているため、そのような判定法は有効ではない。
【0063】
そこで、この実施形態では、上記のように複数(n)個の抽出点[1],[2], [3],[4]よりそれぞれ得られる1フレームFLの受光量減少分(δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)を乗算(または加算)し、その演算結果(積算値)Iiによって逆さ山形プロファイルの大きさを計るようにしている。
【0064】
この手法では、抽出点の全体時間幅TSが距離換算DTSで基準(下限)の直径サイズDQ(70μm)よりも適度(好ましくは1/2DQ<DTS<DQ)に小さいことが重要であり、たとえばDTS=60μmに設定される。これによって、逆さ山形プロファイルのうち、直径サイズがDTSよりも小さいものは、積算値Iiが常に零またはその付近の値をとるため、確実に有害裏面異物Qではないと判定することができる。また、逆さ山形プロファイルのうち、直径サイズがTSよりも大きいものは、その逆さ山形プロファイルの大きさが積算値Iiに反映されるので、適度な値の上記しきい値ISによって有害裏面異物Qであることを確実に判別することができる。
【0065】
たとえば、上記のように高さ方向のサイズHQが140μmの最小有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着しているときに、受光量AEの波形に図14の(a)に示すような逆さ山形プロファイルが現れた場合、積算値Iiは1*4.5*6*2.5=67.5になる。この積算値Iiはノイズ成分の影響を殆ど受けない当該逆さ山形プロファイル固有の属性値である。したがって、上記しきい値ISをたとえば60に設定することで、当該裏面異物が有害裏面異物Qであることを的確かつ確実に判別することができる。
【0066】
因みに、高さ方向のサイズHQが190μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着している場合、受光量AEの波形には図14の(b)に示すような逆さ山形プロファイルが現れる。この場合、積算値Iiは8.5*9*5*2=675になり、上記しきい値IS(60)を優に超えるので、やはり確実に有害裏面異物Qであると判定することができる。
【0067】
また、高さ方向のサイズHQが100μmの実質的無害裏面異物qが基板Gの裏面に付着している場合、受光量AEの波形には図14の(c)に示すような逆さ山形プロファイルが現れる。この場合、積算値Iiは0*1*3*0.2=0になり、当該裏面異物が有害裏面異物Qではないと明確に判定することができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形または変更が可能である。
【0069】
たとえば、図15に示すように、信号処理部56の演算部66を、サンプル値抽出部72、パターン比較部80および判定部82で構成することができる。ここで、パターン比較部80は、図16に示すように、時間軸上で光ビーム受光量の波形に基準サイズ(基準直径サイズDQ、基準受光量減少ピーク値δQ)またはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンMPを定規として当てて、複数箇所(たとえば5箇所)[1]〜[5]で逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)とモデルパターンMPとを比較して、その大小関係を+/−の2値で出力する。なお、モデルパターンMPのデータは設定部68(図6)より与えられる。
【0070】
たとえば、高さ方向のサイズHQが140μmの最小有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着しているときは、図16の(a)のようになり、比較箇所[1]〜[5]のすべてにおいて逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを上回っているので、パターン比較部80より(+,+,+,+,+)の比較結果出力が得られる。この場合、判定部82は、比較結果出力がすべて+なので、有害裏面異物Qが検出された旨の論理値Hの判定結果Wを出す。
【0071】
また、高さ方向のサイズHQが190μmの有害裏面異物Qが基板Gの裏面に付着している場合は、図16の(b)のようになり、やはり比較箇所[1]〜[5]のすべてにおいて逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p,δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを上回っているので、パターン比較部80より(+,+,+,+,+)の比較結果出力が得られ、判定部82は有害裏面異物Qが検出された旨の論理値Hの判定結果Wを出力する。
【0072】
しかし、高さ方向のサイズHQが100μmの実質的無害裏面異物qが基板Gの裏面に付着している場合は、図16の(c)のようになり、比較箇所[4],[5]では逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-4p,δi-3p)がモデルパターンMPを上回っているものの、比較箇所[1],[2],[3]では逆さ山形プロファイルの受光量減少分(δi-2p,δi-p,δi)がモデルパターンMPを下回っている。この場合、パターン比較部80より(+,+,−,−,−)の比較結果出力が得られる。これにより、判定部82は、比較結果出力の一部が"−"であるから、有害裏面異物Qではない旨の論理値Lの判定結果Wを出力する。
【0073】
本発明の塗布装置における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、各種薬液、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。本発明の裏面異物検出方法および裏面異物検出装置は、特に平流し方式の塗布装置に好適に適用できるが、平流し方式を採る他の種類の基板処理装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 浮上ステージ
12 搬送機構
14 スリットノズル
16 噴出口
18 吸引口
40 レジスト供給機構
50 裏面異物検出装置
52 光センサ
54 信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板上に処理液を供給して前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出方法であって、
前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部と受光部との間で、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を取得する第1の工程と、
前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する第2の工程と
を有する裏面異物検出方法。
【請求項2】
前記基準サイズは、高さ方向における基準の受光量減少ピーク値と、横方向における基準の直径サイズとを含む、請求項1に記載の裏面異物検出方法。
【請求項3】
前記基準の受光量減少ピーク値および前記基準の直径サイズは、前記基板の厚さ、前記浮上高および前記スリットノズルと前記基板との間の塗布ギャップに依存し、実験値を基に設定される、請求項2に記載の裏面異物検出方法。
【請求項4】
前記浮上高と前記塗布ギャップとを足し合わせた値を基準にして、前記有害裏面異物としての高さ方向のサイズの下限値を設定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、
時間軸上に所定の間隔を置いて設定される複数の抽出点で所定の受光量基準値に対する前記光ビーム受光量の減少分を求める第3の工程と、
前記複数の抽出点よりそれぞれ得られた受光量減少分を積算する第4の工程と、
前記受光量減少分の積算値を所定のしきい値と比較して、前記積算値が前記しきい値を超えたときに、前記光ビーム受光量の波形の中に前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定する第5の工程と
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項6】
前記第3の工程において前記光ビーム受光量の減少分をパーセント表示で求め、前記第4の工程において前記受光量減少分の積算を乗算によって行う、請求項5に記載の裏面異物検出方法。
【請求項7】
前記受光量基準値は、基板搬送方向において前記基板の先頭部分が前記投光部および前記受光部を通過した際に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項5または請求項6に記載の裏面異物検出方法。
【請求項8】
前記受光量基準値は、前記複数の抽出点の中で最も時間的に古いものよりも一定時間前に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項5または請求項6に記載の裏面異物検出方法。
【請求項9】
前記複数の抽出点の先頭から末尾までの時間幅は、前記基準の直径サイズよりは小さくて、前記基準の直径サイズの半分よりは大きい、請求項5〜8のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項10】
前記複数の抽出点を3箇所以上設ける、請求項5〜9のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項11】
前記第2の工程において、時間軸上で前記光ビーム受光量の波形に前記基準サイズまたはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンを定規として当てて、複数箇所で前記モデルパターンを上回る大きさの逆さ山形プロファイルが見つかれば、それは前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルであると判定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項12】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板に向けて処理液を供給して、前記基板上に前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出装置であって、
前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部および受光部を有し、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを前記投光部と前記受光部との間で送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を出力する光センサと、
前記光センサより出力される前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する信号処理部と
を有する裏面異物検出装置。
【請求項13】
前記基準サイズは、高さ方向における基準の受光量減少ピーク値と横方向における基準の直径サイズとを含む、請求項12に記載の裏面異物検出装置。
【請求項14】
前記信号処理部は、前記基板の厚さ、前記浮上高および前記スリットノズルと前記基板と間の塗布ギャップに依存して実験値に基づいて設定された前記基準の受光量減少ピーク値および前記基準の直径サイズを用いる、請求項13に記載の裏面異物検出装置。
【請求項15】
前記浮上高と前記塗布ギャップとを足し合わせた値を基準にして、前記有害裏面異物としての高さ方向サイズの下限値を設定する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項16】
前記信号処理部は、
時間軸上に所定の間隔を置いて設定される複数の抽出点で所定の受光量基準値に対する前記光ビーム受光量の減少分を求める第1の演算部と、
前記複数の抽出点よりそれぞれ得られた受光量減少分を積算する第2の演算部と、
前記受光量減少分の積算値を所定のしきい値と比較して、前記積算値が前記しきい値を超えたときに、前記光ビーム受光量の波形の中に前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定する第3の演算部と
を含む、請求項12〜15のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項17】
前記第1の演算部は前記光ビーム受光量の減少分をパーセント表示で求め、前記第2の演算部は前記受光量減少分の積算を乗算によって行う、請求項15に記載の裏面異物検出装置。
【請求項18】
前記受光量基準値は、基板搬送方向において前記基板の先頭部分が前記投光部および前記受光部を通過した際に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項16または請求項17に記載の裏面異物検出装置。
【請求項19】
前記受光量基準値は、前記複数の抽出点の中で最も時間的に古いものよりも一定時間前に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項16または請求項17に記載の裏面異物検出装置。
【請求項20】
前記複数の抽出点の先頭から末尾までの時間幅は、前記基準の直径サイズよりは小さくて、前記基準の直径サイズの半分よりは大きい、請求項16〜19のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項21】
前記複数の抽出点を3箇所以上設ける、請求項16〜20のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項22】
前記信号処理部は、時間軸上で前記光ビーム受光量の波形に前記基準サイズまたはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンを定規として当てて、複数箇所で前記モデルパターンを上回る大きさの逆さ山形プロファイルが見つかれば、それは前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルであると判定する演算部を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項23】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた第1の浮上領域を有する浮上ステージと、
前記浮上ステージ上で空中に浮く前記基板を保持して前記第1の浮上領域を通過するように搬送する搬送機構と、
前記第1の浮上領域の上方に配置されるスリットノズルを有し、前記第1の浮上領域を通過する前記基板上に前記スリットノズルより処理液を供給する処理液供給部と、
基板搬送方向において前記スリットノズルよりも上流側の位置で、前記第1の浮上領域を通過する前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を検出するための請求項12〜22のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置と
を有する塗布装置。
【請求項24】
前記スリットノズルを昇降移動させるための昇降機構を有し、前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記昇降機構を通じて前記スリットノズルを上昇移動させる、請求項23に記載の塗布装置。
【請求項25】
前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記処理液供給部における処理液吐出動作を停止させる、請求項23または請求項24に記載の塗布装置。
【請求項26】
前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記搬送機構における基板搬送動作を停止させる、請求項23〜25のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項27】
前記浮上ステージが、基板搬送方向において前記第1の浮上領域の上流側に前記基板を浮かせるための多数の噴出口を設けた第2の浮上領域を有する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項28】
前記第2の浮上領域内に、前記基板を搬入するための搬入部が設けられる、請求項27に記載の塗布装置。
【請求項29】
前記浮上ステージが、基板搬送方向において前記第1の浮上領域の下流側に前記基板を浮かせるための多数の噴出口を設けた第3の浮上領域を有する、請求項23〜28のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項30】
前記第3の浮上領域内に、前記基板を搬出するための搬出部が設けられる、請求項29に記載の塗布装置。
【請求項1】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板上に処理液を供給して前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出方法であって、
前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部と受光部との間で、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を取得する第1の工程と、
前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する第2の工程と
を有する裏面異物検出方法。
【請求項2】
前記基準サイズは、高さ方向における基準の受光量減少ピーク値と、横方向における基準の直径サイズとを含む、請求項1に記載の裏面異物検出方法。
【請求項3】
前記基準の受光量減少ピーク値および前記基準の直径サイズは、前記基板の厚さ、前記浮上高および前記スリットノズルと前記基板との間の塗布ギャップに依存し、実験値を基に設定される、請求項2に記載の裏面異物検出方法。
【請求項4】
前記浮上高と前記塗布ギャップとを足し合わせた値を基準にして、前記有害裏面異物としての高さ方向のサイズの下限値を設定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、
時間軸上に所定の間隔を置いて設定される複数の抽出点で所定の受光量基準値に対する前記光ビーム受光量の減少分を求める第3の工程と、
前記複数の抽出点よりそれぞれ得られた受光量減少分を積算する第4の工程と、
前記受光量減少分の積算値を所定のしきい値と比較して、前記積算値が前記しきい値を超えたときに、前記光ビーム受光量の波形の中に前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定する第5の工程と
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項6】
前記第3の工程において前記光ビーム受光量の減少分をパーセント表示で求め、前記第4の工程において前記受光量減少分の積算を乗算によって行う、請求項5に記載の裏面異物検出方法。
【請求項7】
前記受光量基準値は、基板搬送方向において前記基板の先頭部分が前記投光部および前記受光部を通過した際に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項5または請求項6に記載の裏面異物検出方法。
【請求項8】
前記受光量基準値は、前記複数の抽出点の中で最も時間的に古いものよりも一定時間前に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項5または請求項6に記載の裏面異物検出方法。
【請求項9】
前記複数の抽出点の先頭から末尾までの時間幅は、前記基準の直径サイズよりは小さくて、前記基準の直径サイズの半分よりは大きい、請求項5〜8のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項10】
前記複数の抽出点を3箇所以上設ける、請求項5〜9のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項11】
前記第2の工程において、時間軸上で前記光ビーム受光量の波形に前記基準サイズまたはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンを定規として当てて、複数箇所で前記モデルパターンを上回る大きさの逆さ山形プロファイルが見つかれば、それは前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルであると判定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の裏面異物検出方法。
【請求項12】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた浮上領域を所定の浮上高で通過するように被処理基板を搬送し、前記浮上領域の上方に配置されるスリットノズルよりその下を通過する前記基板に向けて処理液を供給して、前記基板上に前記処理液の塗布膜を形成する塗布装置において、前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を前記スリットノズルよりも基板搬送方向の上流側の位置で検出するための裏面異物検出装置であって、
前記浮上ステージを挟んでその両側に対向して配置される投光部および受光部を有し、前記浮上領域を通過する前記基板の上面を掠めて水平に横断する光ビームを前記投光部と前記受光部との間で送受させて、前記受光部より前記光ビームの受光量を表わす受光量信号を出力する光センサと、
前記光センサより出力される前記受光量信号に基づいて、前記光ビーム受光量の波形が時間軸上で逆さ山形になるプロファイルを監視対象とし、前記光ビーム受光量の波形の中に所定の基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルを検出したときに、前記有害裏面異物を検出した旨の警報信号を発生する信号処理部と
を有する裏面異物検出装置。
【請求項13】
前記基準サイズは、高さ方向における基準の受光量減少ピーク値と横方向における基準の直径サイズとを含む、請求項12に記載の裏面異物検出装置。
【請求項14】
前記信号処理部は、前記基板の厚さ、前記浮上高および前記スリットノズルと前記基板と間の塗布ギャップに依存して実験値に基づいて設定された前記基準の受光量減少ピーク値および前記基準の直径サイズを用いる、請求項13に記載の裏面異物検出装置。
【請求項15】
前記浮上高と前記塗布ギャップとを足し合わせた値を基準にして、前記有害裏面異物としての高さ方向サイズの下限値を設定する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項16】
前記信号処理部は、
時間軸上に所定の間隔を置いて設定される複数の抽出点で所定の受光量基準値に対する前記光ビーム受光量の減少分を求める第1の演算部と、
前記複数の抽出点よりそれぞれ得られた受光量減少分を積算する第2の演算部と、
前記受光量減少分の積算値を所定のしきい値と比較して、前記積算値が前記しきい値を超えたときに、前記光ビーム受光量の波形の中に前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルが含まれていると判定する第3の演算部と
を含む、請求項12〜15のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項17】
前記第1の演算部は前記光ビーム受光量の減少分をパーセント表示で求め、前記第2の演算部は前記受光量減少分の積算を乗算によって行う、請求項15に記載の裏面異物検出装置。
【請求項18】
前記受光量基準値は、基板搬送方向において前記基板の先頭部分が前記投光部および前記受光部を通過した際に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項16または請求項17に記載の裏面異物検出装置。
【請求項19】
前記受光量基準値は、前記複数の抽出点の中で最も時間的に古いものよりも一定時間前に前記受光部で得られた光ビーム受光量の値である、請求項16または請求項17に記載の裏面異物検出装置。
【請求項20】
前記複数の抽出点の先頭から末尾までの時間幅は、前記基準の直径サイズよりは小さくて、前記基準の直径サイズの半分よりは大きい、請求項16〜19のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項21】
前記複数の抽出点を3箇所以上設ける、請求項16〜20のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項22】
前記信号処理部は、時間軸上で前記光ビーム受光量の波形に前記基準サイズまたはそれより一回り小さなサイズを有する逆さ山形プロファイルのモデルパターンを定規として当てて、複数箇所で前記モデルパターンを上回る大きさの逆さ山形プロファイルが見つかれば、それは前記基準サイズを超える大きさの逆さ山形プロファイルであると判定する演算部を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置。
【請求項23】
多数の噴出口と多数の吸引口とが混在して設けられた第1の浮上領域を有する浮上ステージと、
前記浮上ステージ上で空中に浮く前記基板を保持して前記第1の浮上領域を通過するように搬送する搬送機構と、
前記第1の浮上領域の上方に配置されるスリットノズルを有し、前記第1の浮上領域を通過する前記基板上に前記スリットノズルより処理液を供給する処理液供給部と、
基板搬送方向において前記スリットノズルよりも上流側の位置で、前記第1の浮上領域を通過する前記基板の裏面に付着していて前記スリットノズルに対して有害な裏面異物を検出するための請求項12〜22のいずれか一項に記載の裏面異物検出装置と
を有する塗布装置。
【請求項24】
前記スリットノズルを昇降移動させるための昇降機構を有し、前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記昇降機構を通じて前記スリットノズルを上昇移動させる、請求項23に記載の塗布装置。
【請求項25】
前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記処理液供給部における処理液吐出動作を停止させる、請求項23または請求項24に記載の塗布装置。
【請求項26】
前記裏面異物検出装置より発生された前記警報信号に応答して、前記搬送機構における基板搬送動作を停止させる、請求項23〜25のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項27】
前記浮上ステージが、基板搬送方向において前記第1の浮上領域の上流側に前記基板を浮かせるための多数の噴出口を設けた第2の浮上領域を有する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項28】
前記第2の浮上領域内に、前記基板を搬入するための搬入部が設けられる、請求項27に記載の塗布装置。
【請求項29】
前記浮上ステージが、基板搬送方向において前記第1の浮上領域の下流側に前記基板を浮かせるための多数の噴出口を設けた第3の浮上領域を有する、請求項23〜28のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項30】
前記第3の浮上領域内に、前記基板を搬出するための搬出部が設けられる、請求項29に記載の塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−192697(P2011−192697A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55467(P2010−55467)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]