説明

製紙用密度低下剤、当該製紙用密度低下剤を用いた製紙方法及び当該製紙用密度低下剤を含有した紙

【課題】製紙工程において紙の密度を低下させることのできる薬剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)を製紙用密度低下剤として用いる。この熱可塑性重合体(A)は、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体であることが好ましく、酸化ポリエチレンワックスまたは酸変性ポリエチレンワックスが好ましい。酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックスとしては、密度(g/cm)0.85〜1.0、酸価(KOHmg/g)1〜100、融点50〜200℃、軟化点50〜200℃、分子量(粘度法)500〜10000であるものが好ましい。本発明の製紙用密度低下剤は、上記の熱可塑性重合体(A)と、特定の脂肪族アミドアミン系化合物(B)を含有するものであってもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工程において紙質を向上させることのできる薬剤(製紙用密度低下剤)、当該製紙用密度低下剤を用いた製紙方法及び当該製紙用密度低下剤を含有した紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境、資源の問題からパルプ原料の軽くても従来の紙厚を維持した紙製品が注目されている。一方で従来の紙製品と重量が同じでも、紙厚の高く、白色度、不透明度、平滑性、柔軟性等に優れた紙製品が注目されている。例えば書籍用紙の場合、従来の紙製品と比較して、低密度化されることにより、ページ数を減少させ、読者の達成感を増加させる効果がある。家庭紙の場合、柔軟性、ボリューム感、平滑性に優れた高品質な製品が求められている。これらを性能を得る手段として、パルプ繊維間に無機物等の充填物を満たしたり(例えば下記の特許文献1等)、空隙をもたらす等の方法(例えば下記の特許文献2等)があるが、著しく紙力が低下し、現実的ではない。
【特許文献1】特開平3−124895号公報
【特許文献2】特開平5−230798号公報
【0003】
また薬剤を使用する方法として塩基性アミド類を使用する方法(下記の特許文献3)があるが、紙力の低下が大きい。また高級アルコールのEOPO付加物を使用する方法(下記の特許文献4)、多価アルコールと脂肪酸のEOPO付加物を使用する方法(下記の特許文献5)、高級脂肪酸エステルのEOPO付加物を使用する方法(下記の特許文献6)があるが、密度低下性に乏しい。
【特許文献3】特開昭61−252400号公報
【特許文献4】国際公開WO98/03730
【特許文献5】特開平11−350380号公報
【特許文献6】特開平11−200284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の従来における問題点を解決し、製紙工程において紙質を向上させることのできる薬剤、当該製紙用密度低下剤を用いた製紙方法及び当該製紙用密度低下剤を含有した紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題等について検討した結果、特定の熱可塑性重合体を製紙工程において紙又はパルプに添加することで、得られたシートが紙力及びサイズ度を大きく低下させずに、密度低下性、平滑性、白色度、不透明度、印刷適正等を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。また熱可塑性重合体と脂肪族アミドアミン系化合物を予め配合した紙質向上剤をパルプスラリーに添加した場合、さらに優れた密度低下性、平滑性、白色度、不透明度を有することを予想外に見出した。
【0006】
第一の発明は、下記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)からなる製紙用密度低下剤を提供するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
第二の発明は、前記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)がα−オレフィンの単独重合体又は共重合体であることを特徴とする製紙用密度低下剤を提供するものである。α−オレフィンの単独重合体又は共重合体は、一般的には水不溶性、水非膨潤性であり、水和性の官能基であるカルボキシル基、ヒドロキシル基等を含まない樹脂であり、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘプセン、1−へキセン、1−デセン、1−ドデセン等が代表的である。但し、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体は一般的に水に不溶であるが、以下の特殊な方法で水分散体とする事ができる。押出機中で、(i)疎水性の熱可塑性重合体、(ii)重合体鎖に結合したカルボン酸塩の基を該重合体1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含むか、もしくは塩基処理によって前記基を濃度が前記範囲内となるように生成し得るカルボン酸誘導体を含む水不溶性の熱可塑性重合体、及び(iii)必要に応じてアニオン界面活性剤または、ノニオン界面活性剤、有機溶媒及び油から成る群から選ばれた少なくとも1種、の溶融物に(iv)水及び(v)塩基処理を必要とする熱可塑性重合体もしくは塩基性物質を背圧を受ける状態で連続して添加し、続いて溶融混練し、樹脂固形分を水性分散体に転相させることで得られる。その際の水分量は0.5重量%以上3重量%未満という少量で処理を行う必要があり、したがって得られた熱可塑性樹脂は見掛け上固体である。この見掛け上固体の熱可塑性樹脂は水が連続相、重合体が分散粒子相となっており油中水型(W/O型)となっているが、更に水を添加し転相を起こすと水中油型(O/W型)となり見掛け上液体の分散体となる。
【0009】
第三の発明は、前記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)が酸化ポリエチレンワックスまたは酸変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする製紙用密度低下剤である。酸化ポリエチレンワックスは(i)ラジカル触媒により高圧高温下でエチレン重合する方法(ii)チーグラー触媒により低圧でエチレン重合する方法(iii)一般成型用ポリエチレンを熱分解により低分子量化する方法(iv)一般成型用ポリエチレンを製造する際に副生する低分子量ポリエチレンを分離精製して利用する方法の主に4つの方法で得られたポリエチレンワックスを空気酸化等の酸化法で酸化して、カルボキシル基やヒドロキシル基やカルボニル基等を付加したもの、または(v)一般成型用ポリエチレンを酸化する方法で製造されたものを指す。酸化ポリエチレンワックスは、諸性質(分子量、密度、酸価等)によって分類される。密度はJIS K6760、分子量は粘度法、酸価はJIS K5902、融点はDSC法、軟化点はJIS K2207、硬度(針入度)はJIS K2207、溶融粘度はブルックフィールド型粘度計(140℃)にて測定される。酸化ポリエチレンワックスは一般的に、密度0.96以上の高密度タイプ、密度0.94〜0.95の中密度タイプ、密度0.93以下の低密度タイプに大別される。
【0010】
本発明における前記酸化ポリエチレンワックスまたは酸変性ポリエチレンワックスは、密度が0.85〜1.0g/cmで、酸価が1〜100(KOHmg/g)で、融点が50〜200℃で、軟化点が50〜200℃で、粘度法による分子量が500〜10000であることが好ましい。
【0011】
酸化ポリエチレンワックスの種類としては、乾燥工程で溶融し、紙に均一に拡散させるため、乾燥ドライヤーの表面温度以下のものが好ましい。また酸価が高すぎると紙の耐水性が低下し、サイズ剤の効力を低下させるため、100以下が好ましい。
また酸化ポリエチレンワックスは通常粉体または固体状であるため、製紙工場において容易に取り扱いができるように水系エマルジョンの状態にする必要がある。乳化に際しては、樹脂の酸価により適量の苛性ソーダ又は苛性カリウム等の鹸化剤を使用し、アニオン系、ノニオン系界面活性剤を乳化剤として使用する。また鹸化剤を使用せず、カチオン活性剤のみで乳化を行う。乳化剤としては好ましくは、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、高級アルキルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、α‐オレフィンスルフォン酸のアルカリ金属塩、高級アルコール、高級アミン、脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、第4級アンモニウム塩等が挙げられ、さらに好ましくはオレイン酸、ステアリン酸等のアルカリ金属塩、高級アミンのエチレンオキサイド2〜30モル付加物、高級アルコールのエチレンオキサイド2〜30モル付加物、トリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアンモニウムクロライド等が好ましい。酸化ポリエチレンワックスとこれらの乳化剤の比率は、酸化ポリエチレンワックス/乳化剤=99/1〜50/50(重量比)好ましくは95/5〜70/30である。その他、重合防止剤、消泡剤等を適宜添加できる。本発明の熱可塑性樹脂である酸変性ポリエチレンワックスは上記(i)〜(iv)の方法で得られたポリエチレンワックスを無水マレイン酸、アクリル酸等の酸化剤で酸変性して得られる。
【0012】
第四の発明は熱可塑性重合体(A)及び脂肪族アミドアミン系化合物(B)を含有することを特徴とする製紙用密度低下剤である。さらに熱可塑性重合体と脂肪族アミドアミン系化合物を特定の割合で予め配合、又は同時に加圧乳化し得られた製紙用密度低下剤をパルプスラリーに添加した場合、熱可塑性重合体、脂肪族アミドアミン系化合物をそれぞれ単独で添加した場合と比較して、紙力を大きく低下させずに優れた密度低下性を示し、効率良く密度低下することができる。また同時に平滑度、白色度、不透明度が大きく向上することを見出した。脂肪族アミド系化合物としては、炭素数8〜22の直鎖脂肪族アミドを有する化合物が好ましく、さらに好ましくは炭素数14〜22の直鎖脂肪族アミドが好ましい。前記熱可塑性重合体(A)と前記脂肪族アミドアミン系化合物(B)の配合率は(A)/(B)=1/99〜99/1であるが、さらに好ましくは(A)/(B)=30/70〜70/30である。酸化ポリエチレンワックスは通常、鹸化剤を併用して乳化を行うが、脂肪族アミドアミン系化合物を併用する場合は、鹸化剤を使用しなくても乳化可能である。一般的な鹸化剤である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等は中性抄紙時に併用される炭酸カルシウム等の無機物と反応するため、注意が必要である。
【0013】
本発明の製紙用密度低下剤に含有される脂肪族アミドアミン系化合物(B)としては、下記の一般式(2)〜(7)で示される化合物が挙げられ、このうちの少なくとも1種が含有されていれば良い。尚、一般式(2)の化合物において、好ましいXの対イオンは、ハライドイオン、モノアルキル硫酸エステルイオン等が挙げられ、さらに好ましくはCl-、CHSO-である。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の製紙用密度低下剤の添加場所は製紙工程全て可能である。パルプスラリーに添加する方法(内添法)、サイズプレス、コーティング工程で添加する方法(外添)が一般的である。パルプスラリーに添加する方法では、晒しクラフトパルプ以外にも、機械パルプ、古紙パルプ、未晒しパルプ等あらゆるパルプにも適用できる。抄紙時にはロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、無水アルケニルコハク酸等のサイズ剤、炭酸カルシウム、カオリン等の無機填料、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤等を併用しても良い。
【0016】
本発明の製紙方法においては、前述の製紙用密度低下剤が使用され、この製紙用密度低下剤は、パルプスラリー中に絶乾パルプに対して0.05〜5.0重量%添加されてもよく、あるいは、抄紙後のパルプシートに対して0.05〜5.0重量%添加されてもよい。
本発明の紙は、このような製紙方法によって製造されたものであり、前記の製紙用密度低下剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製紙用密度低下剤を用いることによって、得られたシートが紙力及びサイズ度を大きく低下させずに、密度低下性、平滑性、白色度、不透明度、印刷適正等を向上できる。また熱可塑性重合体と脂肪族アミドアミン系化合物を予め配合した製紙用密度低下剤をパルプスラリーに添加した場合、さらに優れた密度低下性、平滑性、白色度、不透明度を有する紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
本発明におけるα‐オレフィン重合体として、下記の表1に記載される構成成分より成るものを準備し、各重合体についての物性値(軟化点、密度、分子量、硬度、溶融粘度)を測定した。その結果を、以下の表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
又、2種類の酸化ポリエチレンワックスと、1種類の酸変性ポリエチレンワックスを準備し、それぞれについて物性値(軟化点、融点、酸価、密度、分子量、硬度、溶融粘度)を測定した。その結果を、以下の表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
上記表1及び表2に記載される熱可塑性樹脂と、下記の表3に記載される脂肪族アミドアミン系化合物を用いて水溶性エマルジョンを調製し、下記に記載される評価方法により各エマルジョンの性能を評価した。
【0024】
【表3】

【0025】
尚、主なエマルジョンの調製方法は下記の通りである。
【0026】
〔実施例2〕
プロピレンと1−ブテンの割合が65:35(重合比)の熱可塑性共重合物(化合物(1)−1)の水性分散体(40%)155.7部に、脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(2)R:C1735)の10%希釈水溶液を306.9部加え、さらにラウリルアルコールEO10モル付加物の20%希釈水溶液を35部、蒸留水502.4部加え、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0027】
〔実施例13〕
酸化ポリエチレンワックス(化合物(1)−4)100部、50%KOH3.6部、ラウリルアルコールEO10モル付加物25部、無水重亜硫酸ソーダ1部、蒸留水870.4部を順次オートクレーブに仕込み、130℃で30分撹拌後、冷却し、酸化ポリエチレンワックスの10%水溶性エマルジョンを得た。
【0028】
〔実施例14〕
酸化ポリエチレンワックス(化合物(1)−4)62.3部、脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(2)R:C1735)30.7部、ラウリルアルコールEO10モル付加物7部、蒸留水900部を順次オートクレーブに仕込み、130℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0029】
〔実施例17〕
酸化ポリエチレンワックス(化合物(1)−4)46.5部、脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(4)R:C1735 m=4)46.5部、酢酸(90%水溶液)3.6部、ラウリルアルコールEO10モル付加物7部、蒸留水897.5部を順次オートクレーブに仕込み、130℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0030】
〔比較例1〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(2)R:C1735)100部、蒸留水900部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0031】
〔比較例2〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(3)R:C1735)100部、酢酸(90%水溶液)15部、蒸留水885部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0032】
〔比較例3〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(4)R:C1735 l=4)100部、酢酸(90%水溶液)7.8部、蒸留水892.2部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0033】
〔比較例4〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(5)R〜R:C1735 m=10)100部、酢酸(90%水溶液)8.4部、蒸留水891.6部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0034】
〔比較例5〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(6)R及びR:C1735)100部、酢酸(90%水溶液)17.5部、蒸留水882.5部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0035】
〔比較例6〕
脂肪族アミドアミン系化合物(化合物(7)R及びR:C1735 n=2)100部、酢酸(90%水溶液)9.1部、蒸留水890.9部をビーカーに仕込み、85℃で30分撹拌後、40℃まで冷却し、10%水溶性エマルジョンを得た。
【0036】
〔抄紙方法〕
広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を、カナディアンスタンダードフリーネスが460mlになるように叩解して、濃度を3.0%に調製した。坪量60g/mになるように量りとってから、硫酸バンドを添加しpH6.0になるように調製し、5分間撹拌後にカチオン化デンプン(CATO304、日本NSC製)をパルプに対して純分0.5重量%添加し、5分間撹拌後AKDサイズ剤をパルプに対して純分0.2重量%添加し、5分間撹拌後に密度低下剤をパルプに対して純分1重量%添加し、その後5分間撹拌を継続し紙料を調製した。
角型シートマシンにて80メッシュを用いて抄紙し、0.2MPaで3分間プレスし、ドラムドライヤーにて105℃で120秒乾燥し、パルプシートを得た。
【0037】
〔評価方法〕
得られたパルプシートを標準状態(23℃ 湿度50%)で24時間調湿した後、以下の項目について測定した。
【0038】
〔密度〕
調湿されたシートの坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し、密度(g/cm)を求めた。
計算式 (密度)=(坪量)/(厚み)×0.001
紙厚測定は、JIS P 8118(紙及び板紙―厚さと密度の試験方法)に従って測定した。測定値は10回の平均値である。
【0039】
〔密度低下率(%)〕
{(製紙用密度低下剤未添加時の密度−製紙用密度低下剤添加時の密度)/(製紙用密度低下剤未添加時の密度)}×100
【0040】
〔内部結合強度〕
5cm巾のセロハンテープを紙表面に貼り、セロハンテープと紙の間に空気がはいらないように密着させる。さらに反対面に表面に貼ったテープと同一箇所に同様にしてセロハンテープを貼り、セロハンテープと紙の間に空気がはいらないように密着させる。さらに2.5cm×5cmに切断し、さらに一方のサンプルの端を0.5cm切断し、2.5cm×4.5cmのサンプルとし、切断した端からテープを剥がす。その際、紙の層間中央部で剥がす。剥いだテープの端をオートグラフ(AGS−500A、島津製作所(株)社製)の上下の掴みに装着し、掴み間の距離を20mmに設定し、スピード100mm/秒で上側の掴みを上昇させる。その時の加重を内部結合強度とする。
【0041】
〔内部結合強度低下率(%)〕
{(製紙用密度低下剤未添加時の密度−製紙用密度低下剤添加時の密度)/(製紙用密度低下剤未添加時の密度)}×100
【0042】
〔平滑度〕
ガーレーヒル S-P-S テスターによる平滑度測定。50ccの空気が漏洩するまでの時間(秒)を測定する。値が大きいほど平滑性が高いことを示す。
【0043】
〔ハンター白色度〕
JIS 8123に従って測定した。
【0044】
〔不透明度〕
JAPAN TAPPI No.69 A法に従って測定した。
【0045】
〔RI印刷テスト〕
タックグレード15のブラックインク1.2gを用いてRI印刷機において印刷を行い、転写を3回行う。紙表面の剥離度合い、着肉性等を総合的に目視判定する。
印刷適正を次の5段階で判定した。
5:非常に良好
4:良好
3:やや良好
2:やや不良
1:不良
【0046】
〔ステキヒトサイズ度〕
JIS P
8122に従って測定した。
【0047】
【表4】

【0048】
上記表4の実験結果から、本発明の製紙用密度低下剤を用いた場合には、得られるシートの紙力及びサイズ度が大きく低下せずに、密度低下性、平滑性、白色度、不透明度、印刷適正等が向上することがわかる。また熱可塑性重合体と脂肪族アミドアミン系化合物を予め配合した製紙用密度低下剤をパルプスラリーに添加した場合、さらに優れた密度低下性、平滑性、白色度、不透明度が達成できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)を含有することを特徴とする製紙用密度低下剤。
【化1】

【請求項2】
前記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)がα−オレフィンの単独重合体又は共重合体であることを特徴とする請求項1記載の製紙用密度低下剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される熱可塑性重合体(A)が酸化ポリエチレンワックスまたは酸変性ポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項1記載の製紙用密度低下剤。
【請求項4】
前記酸化ポリエチレンワックスまたは酸変性ポリエチレンワックスが、密度(g/cm)0.85〜1.0、酸価(KOHmg/g)1〜100、融点50〜200℃、軟化点50〜200℃、分子量(粘度法)500〜10000であることを特徴とする請求項3記載の製紙用密度低下剤。
【請求項5】
前記熱可塑性重合体(A)と、脂肪族アミドアミン系化合物(B)とを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の製紙用密度低下剤。
【請求項6】
前記熱可塑性重合体(A)と、下記の一般式(2)〜(7)で示される脂肪族アミドアミン系化合物(B)の少なくとも1種とを含有することを特徴とする請求項5記載の製紙用密度低下剤。
【化2】

【請求項7】
前記熱可塑性重合体(A)と脂肪族アミドアミン系化合物(B)の配合率が(A)/(B)=1/99〜99/1であることを特徴とする請求項5又は6記載の製紙用密度低下剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製紙用密度低下剤を用いた製紙方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製紙用密度低下剤をパルプスラリー中に絶乾パルプに対して0.05〜5.0重量%添加して抄紙を行い、及び/又は抄紙後の紙に請求項1〜7のいずれか一項に記載の製紙用密度低下剤を絶乾パルプに対して0.05〜5.0重量%添加することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項の製紙用密度低下剤を含有することを特徴とする紙。

【公開番号】特開2007−197855(P2007−197855A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16083(P2006−16083)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(591018051)明成化学工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】