説明

製紙用添加剤並びに紙および板紙の製造方法

【課題】比較的少ない紙料への添加量で、従って、製品の地合低下やコストアップの問題を引き起こすことなく、歩留性、濾水性を飛躍的に改善することができるポリマーよりなる製紙用添加剤を提供する。
【解決手段】カチオン性モノマーと親水性ノニオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られる構造修飾ポリマーを含む製紙用添加剤。この構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーである。この製紙用添加剤を紙料に添加する工程と、前記工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程とを含む紙および板紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用添加剤と、この製紙用添加剤を用いる紙および板紙の製造方法に関するものであり、特に、古紙主体の高灰分原料を用いる紙および板紙の製造において、その歩留性、濾水性を飛躍的に改善することができる製紙用添加剤と、この製紙用添加剤を用いた紙および板紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製紙業界では、廃棄物削減への対応、地球温暖化対策の観点から、古紙利用率が上昇しているが、古紙の利用により原料事情は悪化し、歩留や品質の低下が問題となっている。
【0003】
これらの課題に対して、様々な歩留向上剤が提案されている。例えば、米国特許4,388,150号公報には、カチオン性スターチおよびコロイドシリカを脱水前の紙料に添加して歩留を改善する方法が記載されている。また、特開昭62−191598号公報では、濾水性、歩留性、乾燥および地合特性を改善すべく、特定の剪断ステップの前に第1の合成カチオン性ポリマーを加え、かつその剪断ステップの後でベントナイトを加える方法が開示され、商業化されている。また、特開平4−241197号公報には、カチオン性ポリマーとアニオン性高分子微粒子を紙料中に含有させる歩留改善方法が開示されている。
【特許文献1】米国特許4,388,150号公報
【特許文献2】特開昭62−191598号公報
【特許文献3】特開平4−241197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の方法では、歩留改善効果、特に填料の歩留の改善において十分に満足し得る効果が得られていない。
【0005】
紙料に添加するポリマー量を増やすと、歩留性の改善効果の向上が得られるものの、この場合には、製品の地合低下やコストアップの課題がある。
また、ベントナイトを用いる場合、ベントナイトは沈降性が高いために大掛かりな薬注装置が必要となり、ポリマー等の薬注と比較するとハンドリングに難点がある。
また、コロイダルイシリカを用いる場合には、有効成分の濃度が低いため、輸送コストが高くなることや、添加ポイントでシリカスケールが発生し、紙品質が低下するという課題がある。
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決し、比較的少ない添加量で、従って、製品の地合低下やコストアップの問題を引き起こすことなく、歩留性、濾水性を飛躍的に改善することができる製紙用添加剤と、この製紙用添加剤を用いて、高品質の紙および板紙を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、適量の構造修飾剤を用いて得られた、構造修飾剤を使用しない場合よりも溶液粘度の高いポリマーは、高い凝集効果を示し、濾水性、歩留性の改善に有効であることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて完成されたものであり、以下を要旨とする。
【0008】
本発明(請求項1)の製紙用添加剤は、カチオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られるカチオン性構造修飾ポリマーを含む製紙用添加剤であって、前記構造修飾ポリマーは、前記構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項2)の製紙用添加剤は、カチオン性モノマーと親水性ノニオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られる構造修飾ポリマーを含む製紙用添加剤であって、前記構造修飾ポリマーは、前記構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の製紙用添加剤は、請求項1または2において、前記構造修飾剤の使用量が、前記必須単量体のモノマーに対して0.001〜0.5mmol%であることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項4)の紙および板紙の製造方法は、請求項1ないし3のいずれかに記載の製紙用添加剤を紙料に添加する工程と、前記工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製紙用添加剤は、凝集効果に優れ、比較的少ない紙料への添加量で、従って、製品の地合低下やコストアップの問題を引き起こすことなく、歩留性、濾水性を飛躍的に改善することができる。
【0013】
このような本発明の製紙用添加剤を用いる本発明の紙および板紙の製造方法によれば、古紙主体の高灰分原料を用いる場合であっても、高品質の紙および板紙を効率的に製造することができる。
【0014】
本発明の製紙用添加剤が高い凝集効果を示す理由の詳細は明らかではないが、次のように推定される。
【0015】
即ち、適量の構造修飾剤を使用することにより、構造修飾剤を使用しない場合に比べて得られるポリマーの溶液粘度を高くすることができ、この溶液粘度の上昇の際にポリマー水溶液中においては、大きな抵抗が生じており、ポリマー分子同士が強く相互作用しているものと考えられる。このことより、構造修飾剤を使用した構造修飾ポリマーの方が、構造修飾剤を使用しない非修飾ポリマーよりも、複数のポリマー分子が絡み合って構成される集合体が占める空間が大きいと考えられ、これが高い凝集効果を示す理由と推定される。
【0016】
なお、構造修飾剤の使用量が少な過ぎると、上記効果を十分に得ることができないが、逆に多すぎると、ポリマー分子がより緻密となり、一分子が占める空間が小さくなるため、凝集力が低下するものと推定される。従って、本発明において、前記構造修飾剤の使用量は、構造修飾ポリマーの必須単量体としてのモノマーに対して0.001〜0.5mmol%とすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
なお、本発明において、溶液粘度とは、25℃にて、30rpmの攪拌下に0.2重量%ポリマー水溶液について測定した粘度であり、塩粘度とは4重量%食塩水中において、25℃にて、60rpmの攪拌下に0.5重量%ポリマー水溶液について測定した粘度である。ここで、粘度測定方法はJIS K 7117−2に基づく。
【0019】
本発明の製紙用添加剤は、カチオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られるカチオン性構造修飾ポリマーを含み、この構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、この構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする。
【0020】
ここで、構造修飾ポリマーを構成するカチオン性モノマーとしては特に制限はないが、例えば、アクリル酸ジエチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなアクリル酸ジアルキルアミノアルキル及びメタクリル酸ジアルキルアミノアルキル、及びそれらの4級塩又は酸塩(アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルスルホン酸メチル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルスルホン酸塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルスルホン酸メチル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルスルホン酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩があるが、それらに限られない。)、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドスルホン酸メチル4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドスルホン酸塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドスルホン酸メチル4級塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドスルホン酸塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド塩酸塩のようなジアルキルアミノアルキルアクリルアミド又はジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、及びそれらの4級塩及び酸塩が含まれる。さらには、塩化ジアリルジエチルアンモニウム及び塩化ジアリルジメチルアンモニウムのようなハロゲン化ジアリルジアルキルアンモニウムが挙げられる。上記アルキル基はの炭素数は通常1〜4である。
【0021】
一方、構造修飾剤は、ポリマーの構造および溶解特性を制御するために、カチオン性モノマーと共重合されるものであり、架橋剤(または分岐剤)および連鎖移動剤からなる群から選ばれる。
【0022】
このうち、連鎖移動剤は、フリーラジカル重合に用いられ、ポリマーラジカルと反応して失活ポリマーと新しいラジカルを形成するいずれかの分子であり、連鎖移動剤を共重合系に添加すると、鎖の破壊およびそれに伴なって重合鎖の大きさの減少をもたらす。従って、連鎖移動剤の添加で調製されるポリマーの分子量が制限される。
【0023】
代表的な連鎖移動剤には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブチルアルコール、およびグリセロールなどのようなアルコール、アルキルチオール、チオウレア、亜硫酸塩および二硫化物のようなスルホン酸化合物といった硫黄化合物、ギ酸およびリンゴ酸のようなカルボン酸およびそれらの塩、および次亜リン酸ナトリウムのようなリン酸塩、およびそれらの組み合わせが含まれる。これらのうち、アルコールとして好ましいものは、2−プロパノールである。また硫黄化合物として好ましいものは、エタンチオール、チオウレア、および重亜硫酸ナトリウムである。また、カルボン酸およびその塩として好ましいものは、ギ酸およびその塩である。特に好ましい連鎖移動剤は、次亜リン酸ナトリム、ギ酸ナトリウムである。
【0024】
架橋剤(または分岐剤)は、重合するモノマーまたは複数のモノマーに添加されると、一つのポリマー分子からの一分岐または多分岐が他のポリマー分子に結合した架橋ポリマーをもたらす多官能モノマーであり、好ましい架橋剤は、ポリエチレン性の不飽和モノマーである。
【0025】
代表的な好ましい架橋剤としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−メチレンビスメタクリルアミド、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニルアクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、アクロレイン、グリオキサールや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリヘキシルオキシシラン、ビニルメトキシジヘキシルオキシシラン、ビニルジメトキシオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジオクチルオキシシラン、ビニルトリオクチルオキシシラン、ビニルメトキシジラウリルオキシシラン、ビニルジメトキシラウリルオキシシラン、ビニルメトキシジオレイルオキシシラン、ビニルジメトキシオレイルオキシシランのようなビニルトリアルコキシシランが挙げられる。ビニルアルコキシシランモノマーとしては、特にビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0026】
これらの構造修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0027】
前述の如く、構造修飾剤の使用量は多過ぎても少な過ぎても凝集効果の改善効果が低減することから、構造修飾剤の使用量は、カチオン性構造修飾ポリマーを構成する構造修飾剤以外の必須単量体のモノマー成分に対して0.001〜0.5mmol%、特に0.01〜0.5mmol%、とりわけ0.03〜0.3mmol%とすることが好ましい。
【0028】
このカチオン性構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示す。この構造修飾ポリマーと非修飾ポリマーとの溶液粘度の差は、前述の複数のポリマー分子が絡み合って構成される集合体を形成しやすいことから、30mPa・s以上、特に50mPa・s以上、とりわけ100mPa・s以上であることが好ましい。なお、この構造修飾ポリマー自体の溶液粘度は400〜600mPa・sであることが好ましい。
【0029】
本発明の製紙用添加剤はまた、カチオン性モノマーと親水性ノニオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られる構造修飾ポリマーを含み、この構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、この構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、低い塩粘度を示し、かつ高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする。
【0030】
ここで、カチオン性モノマー、構造修飾剤としては、上記カチオン性構造修飾ポリマーの説明で例示したものが挙げられる。
【0031】
親水性ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の水溶性であるN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられる。また、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アルキルアクリレート、ヒドロキシアクリレート、酢酸ビニル等であっても良く、親水性ノニオン性モノマーはこれらの1種または2種以上を併用することができる。
【0032】
カチオン性モノマーと親水性ノニオン性モノマーとの使用割合には特に制限はなく、カチオン性モノマー:親水性ノニオン性モノマー=5:95〜50:50(モル比)とすることが好ましい。この範囲よりもカチオン性モノマーが多いと適度な溶液粘度を確保することが困難であり、少ないと填料、繊維との十分な反応性が得にくくなる。
【0033】
また、前述のカチオン性構造修飾ポリマーと同様に、構造修飾剤の使用量は多過ぎても少な過ぎても凝集効果の改善効果が低減することから、構造修飾剤の使用量は、構造修飾ポリマーを構成する構造修飾剤以外の必須単量体のモノマー成分に対して0.001〜0.5mmol%、特に0.01〜0.5mmol%、とりわけ0.03〜0.3mmol%とすることが好ましい。
【0034】
この構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示す。この構造修飾ポリマーと非修飾ポリマーとの溶液粘度の差は、前述の複数のポリマー分子が絡み合って構成される集合体を形成しやすいことから、30mPa・s以上、特に50mPa・s以上、とりわけ100mPa・s以上であることが好ましい。なお、この構造修飾ポリマー自体の溶液粘度は400〜600mPa・sであることが好ましい。
【0035】
また、この構造修飾ポリマーは、構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、低い塩粘度を示す。なお、この構造修飾ポリマー自体の塩粘度は50〜500mPa・s程度であることが好ましい。
【0036】
なお、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られる構造修飾ポリマーであって、構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示す構造修飾ポリマーも、製紙用添加剤として、良好な凝集効果を示す。
【0037】
この場合、カチオン性モノマー、構造修飾剤としては、上記カチオン性構造修飾ポリマーの説明で例示したものが挙げられる。
【0038】
また、アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メチルプロペンスルホン酸およびこれらの塩などの1種または2種以上が挙げられ、構造修飾剤は、構造修飾剤以外の必須単量体のモノマー成分に対して0.001〜0.5mmol%、特に0.01〜0.5mmol%、とりわけ0.03〜0.3mmol%とすることが好ましい。
【0039】
本発明にかかる構造修飾ポリマーを製造する方法としては、ラジカル重合であれば特に限定はない。ラジカル重合において使用する重合開始剤は、特に制限はないが、水溶性のものが好ましい。重合開始剤として、過硫酸塩系、過酸化物系では、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。この場合、重合開始剤は1種を単独で使用する方が好ましいが、還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤として使用してもよい。この場合、還元剤としては、例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルトなどの低次イオン価の塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にはアルドース、ケトース等の還元糖などを挙げることができる。
【0040】
また、アゾ化合物も本発明に使用可能な開始剤であり、その具体例としては、例えば2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)−プロパン及びその塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸及びその塩等を使用することができる。更に、上記した重合開始剤を2種以上併用することも可能である。
【0041】
前記したモノマーを用いた重合方法として、全モノマーを反応容器に一括で仕込み、重合する回分(バッチ)重合法、モノマーの一部もしくは全部を反応容器中に滴下しながら重合する半回分(セミバッチ)重合法、モノマーの組成を変えて、多段に滴下しながら重合する多段滴下重合法、モノマー等を連続的に供給し、得られたポリマーを連続的に抜き出す連続法、のいずれであってもよい。
【0042】
重合開始剤は、重合器に予め又は重合時に一括添加しても、重合中に連続的又は間欠的に供給してもよい。重合時に供給する場合は必要に応じて添加速度を変更することができる。
【0043】
本発明におけるポリマーの重合温度は単一重合開始剤の場合には、一般に30〜100℃であり、レドックス系重合開始剤の場合はより低く、一般に5〜90℃である。重合温度は重合中一定に保っても変動させてもよく、必要に応じて冷却、加熱を実施することができる。
【0044】
重合容器内の雰囲気は特に制限はないが、重合を速やかに行わせるには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方が好ましい。
【0045】
ポリマーの製造において、重合pHも特に制限はなく、所定のpHに調整して重合することができ、必要に応じて重合中pHを変動させることもできる。その場合、使用可能なpH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ化剤、リン酸、硫酸、塩酸等の鉱酸、蟻酸、酢酸等の有機酸等が挙げられる。
【0046】
本発明の紙および板紙の製造方法は、このような構造修飾ポリマーを含む本発明の製紙用添加剤を紙料に添加し、その後脱水、乾燥を行うものである。
【0047】
この場合、紙料への本発明の製紙用添加剤の添加量は、紙料の性状、製紙用添加剤中の構造修飾ポリマーの種類等に応じて適宜決定されるが、通常の場合、有効成分の構造修飾ポリマー量として、絶乾パルプ1tに対して50〜800g、特に100〜400gとすることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下に、製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0049】
製造例1:ポリマーの製造
仕込みモノマーとしてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DAA)(分子量193.5)15モル、アクリルアミド(AAm)(分子量71)85モルを用い、構造修飾剤(架橋剤)としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBA)(分子量140)を、仕込みモノマーに対して表1に示す添加量になるように添加して共重合させることにより、各ポリマーを製造した。
得られたポリマーについて、JIS K 7117−2に基いて測定した溶液粘度(0.2重量%ポリマー水溶液について、25℃で30rpmの攪拌下に測定した溶液粘度)と塩粘度(4重量%食塩水中における25℃、60rpm攪拌下での0.5重量%ポリマー水溶液の粘度)を表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜9、比較例1〜6
カナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)350mLに叩解した広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を絶乾重量が0.64重量%になるように添加して試料を調製した。この試料1000mLを歩留試験装置「DFS(ダイナミック フィルトレーション システム、ミューテック社製)に投入し、硫酸アルミニウムを0.8重量%(対絶乾原料)、両性澱粉(Cato3212、NSC社製)を0.2重量%(対絶乾原料)、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP121、奥多摩工業社製)を20重量%(対絶乾原料)、表2に示すポリマーを表2に示す量添加して濾過し、濾液を採取した。
なお、DFSの設定条件はミューテック社の推奨方法を用いた。
また、各添加薬剤は、上記の順で10秒間隔で添加し、ポリマーを添加して25秒後に濾過を開始した。
上記歩留試験結果を表2に示す。なお表2には、ポリマー無添加の場合の試験結果もブランクとして併記した。
【0052】
表2より明らかなように、本発明に係る構造修飾ポリマーを用いた実施例1〜9は、比較例1〜6よりも、添加量に対するSS、灰分歩留率が上昇した。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例10〜15、比較例7〜12
実機新聞原料を白水で希釈して濃度1重量%として試料を調製した。この試料160mLに表3に示すポリマーを表3に示す量添加し、ハンドミキサー(1000rpm)で20秒間攪拌した。攪拌後のスラリーを速やかに濾水テスターに移し、バルブを開けてから10秒間の濾液量を測定した。
上記濾水試験結果を表3に示す。なお表3には、ポリマー無添加の場合の試験結果もブランクとして併記した。
【0055】
表3より明らかなように、本発明に係る構造修飾ポリマーを用いた実施例10〜15は、比較例7〜12よりも、添加量に対して同等以上の濾水性を示した。
【0056】
【表3】

【0057】
実施例16〜22、比較例13〜17
実施例2と同様に調製した試料を用い、実施例1と同様の方法で歩留試験を行い、結果を表4に示した。
なお、表4には、ポリマー無添加の場合の試験結果もブランクとして併記した。
【0058】
表4より明らかなように、本発明に係る構造修飾ポリマーを用いた実施例16〜22は、比較例13〜17よりも、添加量に対するSS、灰分歩留率が上昇した。
【0059】
【表4】

【0060】
以上の結果より、本発明によれば、紙原料の微細繊維・灰分の上昇によるポリマー添加量の増加を抑え、効率的な製紙を行って高品質の製品を得ることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られるカチオン性構造修飾ポリマーを含む製紙用添加剤であって、前記構造修飾ポリマーは、前記構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする製紙用添加剤。
【請求項2】
カチオン性モノマーと親水性ノニオン性モノマーと構造修飾剤とを必須単量体として重合させて得られる構造修飾ポリマーを含む製紙用添加剤であって、前記構造修飾ポリマーは、前記構造修飾剤を用いないこと以外は、該構造修飾ポリマーと同一組成で重合させて得られる非修飾ポリマーと比べて、高い溶液粘度を示すポリマーであることを特徴とする製紙用添加剤。
【請求項3】
請求項1または2において、前記構造修飾剤の使用量が、前記必須単量体のモノマーに対して0.001〜0.5mmol%であることを特徴とする製紙用添加剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の製紙用添加剤を紙料に添加する工程と、前記工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程とを含む紙および板紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−326952(P2007−326952A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158772(P2006−158772)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(305013356)三井化学アクアポリマー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】