説明

複合光学素子の製造装置及び製造方法並びに単レンズ及びその成形型

【課題】本発明は、単レンズの表面に樹脂層を形成する際に、単レンズと樹脂層との光軸のずれを小さくした複合光学素子の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】吸引ノズル22bを有し、単レンズを吸引、保持する吸引保持型22と、単レンズを支持する単レンズ支持部材23と、紫外光を透過可能で樹脂層をプレス成形する樹脂層成形型24と、小径孔25aを上部に、小径孔25aよりも径の大きい大径孔25bを下部に有し、これらが1つの貫通孔として形成され、小径孔25aの下側開口部が、単レンズの傾斜面と同じ角度で、単レンズの傾斜面と輪環状に接触可能な対応傾斜面25cとされ、かつ、小径孔25aと大径孔25bの軸が一致して設けられている胴型25と、樹脂層のプレス成形時に、下方から樹脂層成形型24を透過させて樹脂層に紫外線を照射する紫外線照射手段26と、を有する複合光学素子の製造装置21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製の単レンズの表面に樹脂層を形成した複合光学素子の製造装置及び製造方法並びに単レンズ及びその成形型に係り、特に、単レンズと樹脂層との光軸のずれを抑制するのに有用な複合光学素子の製造装置及び製造方法並びにその製造方法に用いる単レンズ及びその成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクとして、Blu−ray(商品名、以下、BDと称する)、DVD、CDが幅広く普及している。これらBD,DVD,CDは、記録及び再生に用いる光の波長等が異なっている。具体的には、BDは、基板の厚さ(カバー層の厚さ)が0.1mmの情報記録媒体に、波長405nmの光源から出射された光をNA(開口数)が0.85の対物レンズにより集光させて情報の記録及び再生を行う。DVDは、基板の厚さ(カバー層の厚さ)が0.6mmの情報記録媒体に、波長660nmの光源から出射された光をNAが0.65の対物レンズにより集光させて情報の記録及び再生を行う。CDは、基板の厚さ(カバー層の厚さ)が1.2mmの情報記録媒体に、波長780nmの光源から出射された光をNAが0.45の対物レンズにより集光させて情報の記録及び再生を行う。
【0003】
上述したBD,DVD,CDにおける光ディスクにおいて、1つの対物レンズにより各々の光ディスクに使用する波長の光を集光する場合、各々の光ディスクのカバー層の厚さの違いに起因する球面収差を補正でき、各光ディスクへの良好な集光特性が得られるような構成とする必要がある。また、各々の光の光軸方向に平行に移動する対物レンズが、光ディスクの表面との接触を防ぐため、対物レンズと光ディスクとの間に一定の距離を確保しながら、各光ディスクへの良好な集光特性が得られるようにする必要がある。
【0004】
これに対応するため、DVDやCDに対応する各々の波長の光に対しても対物レンズとしての機能を有するように、これら波長の光に対して回折作用を示す回折光学素子を光学系中に配置して、1つの回折光学素子を用いて3つの異なる規格の光ディスクにおける情報の記録及び再生を行う光ピックアップ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような特許文献1に開示されている方法は、DVDやCDの各々の波長の光に対して独立に回折作用を与えられるため、各々の波長の光に対し好適な発散角とし、また、球面収差を補正するような位相分布をさらに付加できるので、CD用の光学系における対物レンズと光ディスクの間の距離を確保しながら、記録及び再生に用いられる光の波長の異なる光ディスクに対して好適に光を集光させられる。
【0006】
このような方法では、回折光学素子を対物レンズとは別個に設置する必要があり、対物レンズ等に対し精密に位置合わせを行う必要があるため、量産性が低くなるという問題点を有していた。また、CD用の光を回折させるために断面が矩形状となるバイナリー格子を用いており、そのため±1次回折光のうち一方の回折光のみの利用であるため光の利用効率が低いという問題がある。
【0007】
このような問題を解消するため、単レンズの表面に樹脂層を形成し、回折光学素子等の位置合わせを行う必要がなく、光の利用効率を高め、異なる規格の光ディスクに対しても各々好適に光の集光させる複合光学素子が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3966303号公報
【特許文献2】国際公開第2011/004827号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2において単レンズの表面に樹脂層を形成するには、単レンズを予めプレス成形により作成しておき、図6に示したような上型52、下型53、胴型54からなる樹脂層成形用の成形型51を使用し、単レンズの表面に樹脂層をプレス成形して複合光学素子としている。このプレス成形により形成される樹脂層は、単レンズを上型52、下型53間に配置し、単レンズと下型53の間に設けられた樹脂層形成用の所定の厚さの隙間を樹脂で埋めることで形成される。このとき、所定の厚さの隙間は、樹脂層のプレス成形時に、下型53と単レンズのフランジ部分との接触部分が水平になるように、かつ、フランジ部分と上型52との接触部分が互いに対応する形状(水平面に対して所定角度傾斜させる等)として、上下型52,53と単レンズとの光軸が合うようにしてプレス成形している。
【0010】
しかしながら、位置合わせに使用するフランジ部分において、単レンズのプレス成形時(主に冷却時)に収縮による平行度のバラツキが生じ、樹脂層成形型の中で傾いて固定されてしまい、樹脂成形型と単レンズの光軸を合わせるのが困難で、光軸の傾きやずれが大きくなってしまう場合があった。そのため、偏心性能をより向上させた複合光学素子が求められている。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、単レンズの表面に樹脂を形成する際、単レンズと樹脂層の光軸のずれの抑制を可能とする複合光学素子の製造装置及び製造方法並びにその製造方法に用いる単レンズ及びその成形型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複合光学素子の製造装置は、一方の面の有効径外に、光軸と直交する円環状の平面部及び該平面部の外周に円錐台状の傾斜面を有するガラス製の単レンズを用い、該単レンズの他方の面に樹脂層を形成する複合光学素子の製造装置であって、下方に突出し先端に吸引口を開口させた円筒状の吸引ノズルを有し、前記単レンズの円環状の平面部に前記吸引ノズルの先端を接触させて単レンズを吸引、保持する吸引保持型と、前記単レンズの前記平面部を上方に向けて下方から支持する前記吸引保持型より大径の円柱状の単レンズ支持部材と、紫外光を透過可能な材料から形成され、前記単レンズ支持部材と前記樹脂層をプレス成形により形成する前記単レンズ支持部材と同径の円柱状の樹脂層成形型と、円筒状の部材であって、その上部が前記吸引保持型を上部から摺動させつつ挿抜可能な小径孔とされ、下部が前記単レンズ支持部材及び前記樹脂層成形型の一方を下方から摺動させつつ挿抜可能な大径孔とされ、前記小径孔の前記大径孔に接続される下側開口部が、前記単レンズの傾斜面と同じ角度で、前記単レンズの傾斜面と輪環状に接触可能な対応傾斜面として設けられており、かつ、前記小径孔及び大径孔が前記吸引保持型の下方に同軸的に配置されるように設けられた胴型と、前記吸引保持型を前記胴型の小径孔に挿入した状態で、先端を大径孔の所定の位置まで進退させる駆動手段と、前記樹脂層成形型を前記胴型の大径孔に挿入した状態で、下方から前記樹脂層成形型を透過させて前記樹脂層に紫外線を照射する紫外線照射手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の複合光学素子の製造方法は、上記本発明の複合光学素子の製造装置を用いてガラス製の単レンズの表面に樹脂層を形成する複合光学素子の製造方法であって、前記胴型の小径孔に挿入した吸引保持型の吸引ノズルの先端と前記胴型の大径孔に導入した単レンズ支持部材に支持された単レンズの平面部とを接触させて吸引し、単レンズを吸引保持型で保持する吸引保持工程と、前記吸引保持型に保持された単レンズを吸引保持型に吸引したまま上昇させ、前記単レンズの傾斜面と前記胴型の対応傾斜面とを接触させて単レンズを前記小径孔の下側開口部に吸引保持させた後、前記吸引保持型を下降させて前記単レンズと前記吸引ノズルを再度接触させ、前記大径孔の軸と前記単レンズの光軸とのずれを小さくする調心工程と、前記調心工程で調心された単レンズに、成形面に樹脂組成物が滴下された前記樹脂層成形型を下方から接近させ、プレスして前記単レンズの表面に樹脂層を形成するプレス工程と、前記プレス工程で形成された樹脂層に対し、前記樹脂層成形型を介して紫外線を照射し、前記樹脂層を硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の単レンズは、一方の面の有効径外に、輪環状に、かつ、単レンズの光軸に対して垂直に交わるように形成された平面部と、該平面部の外周に、前記平面部に対して所定の角度で傾斜するように円錐台状に形成された傾斜面と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の単レンズ用の成形型は、単レンズの上側の光学面を形成する上型と単レンズの下側の光学面を形成する下型とを有し、前記上型及び下型を用いたプレス成形により単レンズを成形する単レンズ用の成形型であって、前記上型及び下型の少なくとも一方において、そのプレス成形により形成される光学面の有効径外に、輪環状に、かつ、前記単レンズの光軸に対して垂直に交わるように形成される平面部を転写可能な平面部転写面と、該平面部の外周に、前記平面部に対して所定の角度で傾斜するように円錐台状に形成される傾斜面を転写可能な傾斜面転写面と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合光学素子の製造装置及び製造方法によれば、単レンズとその表面に形成される樹脂層の光軸のずれ(ディセンタ及びチルト)を抑制でき、偏心性能の高い複合光学素子を製造できる。
【0017】
また、本発明の単レンズ及びその成形型によれば、ここで得られる単レンズは上記製造方法を実施する際に必須の形状を有しており、この単レンズの使用によって、初めて本発明の複合光学素子の製造方法が実施可能となる。すなわち、この単レンズは、偏心性能の高い複合光学素子を形成する材料として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一例である単レンズの概略形状を示した側断面図である。
【図2】図1の単レンズのプレス成形型の概略構成を示した側断面図である。
【図3】本発明の複合光学素子の製造装置の概略構成を示した側断面図である。
【図4A】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの吸着保持工程を説明する図である。
【図4B】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの吸着保持工程を説明する図である。
【図4C】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの吸着保持工程を説明する図である。
【図4D】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの調心工程を説明する図である。
【図4E】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの調心工程を説明する図である。
【図4F】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズのプレス工程を説明する図である。
【図4G】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズのプレス工程を説明する図である。
【図4H】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの硬化工程を説明する図である。
【図4I】本発明の複合光学素子の製造方法における、単レンズの取出し工程を説明する図である。
【図5A】本発明の複合光学素子の一構成例を示した側断面図である。
【図5B】本発明の複合光学素子の他の構成例を示した側断面図である。
【図6】従来の複合光学素子の成形型を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明の複合光学素子の製造装置及び製造方法で用いるガラス製の単レンズは、その形状に特徴を有しており、まず単レンズの形状について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一例である単レンズの概略形状を示した側断面図である。この単レンズ1の有効径内には、その光学機能を発揮する光学面が両面に形成され、有効径外には本発明のレンズの特徴とする平面部等が形成されている。単レンズの光学面は、従来公知のレンズ形状とすればよく、特に限定されるものではない。図1には、両凸形状のレンズを示したが、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス、凹メニスカスのいずれの形状も使用できる。また、この光学面としては球面、非球面のいずれの形状としてもよい。
【0022】
そして、本発明の単レンズ1は、その樹脂層を形成する光学面とは反対側の光学面における有効径外に、平面部1aが形成されており、さらにその平面部1aの外周には、平面部1aに対して所定の角度で傾斜する傾斜面1bが円錐台状に形成されている。
【0023】
ここで平面部1aは、単レンズ1の有効径外に輪環状に、かつ、単レンズ1の光軸に対して垂直に交わる面として形成されている。この平面部1aは後述する樹脂層の成形時には、水平面と一致するように保持され、単レンズと樹脂層との光軸を合わせるのに重要な機能を発揮する部分である。
【0024】
また、傾斜面1bは、上記平面部1aのさらに外周に輪環状に、平面部1aに対して所定の角度を有して形成されている。このときの傾斜角度は、その単レンズの光軸を通る断面において、上記平面部1aに対して厚さ方向に傾斜する角度であり、単レンズの外周側からのこの角度αは35〜60度が好ましい。この角度αを基準テーパー角度という。
【0025】
この単レンズ1はプレス成形により製造でき、このとき用いる単レンズ用の成形型11は、図2に示したように、例えば上型12、下型13、内胴14及び外胴15で構成される。このときのプレス成形は、通常の単レンズのプレス成形の条件で行われる。そして、ここで用いる成形型11は、上記単レンズ1の形状を形成するために、上型12には、形成する単レンズの有効径外に、平面部及びその外周に形成される傾斜面を転写可能な転写面を有する。
【0026】
すなわち、これら転写面は、そのプレス成形により形成される光学面の有効径外に、輪環状に、かつ、単レンズの光軸に対して垂直に交わるように形成される平面部を転写可能な平面部転写面と、該平面部の外周に、平面部に対して所定の角度で傾斜するように円錐台状に形成される傾斜面を転写可能な傾斜面転写面と、からなる。
【0027】
また、ここで得られる単レンズ1は、従来公知の光学ガラス用の硝材から形成されるものであれば特に限定されるものではなく、ここで用いる硝材としては、例えば、M−BACD12(HOYA社製、商品名),L−BAL42(オハラ社製、商品名)、A−BAR12(旭硝子社製、商品名;バリウムシリケートガラス)等が挙げられる。
【0028】
図2では、上型12側に、平面部転写面と傾斜面転写面とを有する成形型を例示しているが、これらの転写面は、上型及び下型の少なくとも一方に有していればよく、下型のみに有する場合や、上型及び下型の両方に有する場合も本発明の単レンズを成形可能な成形型である。
【0029】
次に、得られた単レンズ1を用いた、複合光学素子の製造装置及び製造方法を説明する。図3には、本発明の複合光学素子の製造装置の概略構成の断面図を、図4には、図3の装置を用いた複合光学素子の製造方法について説明する図を示した。
【0030】
図3に示したように、本発明の複合光学素子の製造装置21は、吸引保持型22、単レンズ支持部材23、樹脂層成形型24、胴型25、紫外線照射手段26、スペーサー27、上プレート28及び下プレート29から構成されている。
【0031】
ここで、吸引保持型22は、本体22aと、本体22aから下方に突出し先端に吸引口を開口させた円筒状の吸引ノズル22bを有し、単レンズ1の平面部1aと吸引ノズル22bの吸引口を接触させて単レンズ1を吸引、保持するものである。吸引ノズル22bの吸引口は下端に設けられ、吸引口から吸引ノズル22bの内部には気体の通路が設けられ、この気体の通路は吸引保持型22内を通り、図示していない吸引ポンプに接続されている。
【0032】
吸引ノズル22bの吸引口は、単レンズ1の平面部1aと接触し、光学面とは接触しない形状であり、その接触部分が平坦な円環状に形成されている。このとき、吸引用の気体の通路から接触部分に向かって、通路の径が拡大するように吸引口(内部側)を円錐状に形成するのが好ましい。このようにすれば、気体の通路は吸引するのに十分な径で形成し、吸引口においては、単レンズ1の光学面と接触せずに平面部1aとのみ接触するようにできるため、光学機能を損ねずに済む。また、このとき接触部分は、単レンズ1の平面部1aとの接触面積をできるだけ大きく設けると、吸引、保持が安定するため好ましい。
【0033】
また、この吸引保持型22は、図示していない駆動手段により上下動が可能となっており、後述する調心工程の際に、ノズル先端が胴型の小径孔25a内部を移動できるようになっている。また、後述するプレス成形時には吸引ノズル22bの先端(吸引口)が大径孔25bまで達する構造となっている。言い換えれば、本体22aから突出する吸引ノズル22bの長さは、スペーサー27の厚さと胴型25の小径孔25aの軸方向長さとを合わせたものよりも長く設ける。これが短いと吸引口が小径孔25aの内部で止まってしまい、単レンズ1を吸引保持できなくなってしまう。
【0034】
単レンズ支持部材23は、単レンズ1の平面部1aが上方に向くように下方から支持する円柱状の部材である。単レンズ1を下方から支持するため、単レンズ支持部材23の上面は、単レンズ1のフランジ部分と接触して保持できるようになっている。この単レンズ支持部材23は、単レンズ1の光学面とは接触してもしなくてもよいが、接触しない方が、光学面を傷つける等の不具合が生じないため好ましい。
【0035】
単レンズ支持部材23は、円柱状の部材であって、後述する胴型25の大径孔25bに摺動させつつ挿抜可能になっている。単レンズ支持部材23は、胴型内に挿入して、その上面に支持する単レンズ1を小径孔25aの下側開口部近傍まで移動可能とする。また、単レンズ支持部材23は、該移動により、小径孔25aの下側開口部から下方に突出している吸引ノズル22bの吸引口と単レンズ1の平面部1aとを接触できるだけの十分な高さを有している。
【0036】
樹脂層成形型24は、紫外線を透過可能な材料から形成され、プレス成形により単レンズ1の表面に樹脂層を形成するための円柱状の部材である。基本的な形状は単レンズ支持部材23と同様であり、胴型25の大径孔25bに摺動させつつ挿抜可能な形状である。この樹脂層成形型24の上面は、所望の樹脂層の形状を転写可能な成形面が形成されている。
【0037】
樹脂層成形型24の材質は、波長360nm近傍の紫外線を透過するものであれば公知のものを使用でき、その目的とする紫外線の透過率が50%以上の材質が好ましい。この材質としては、例えば、石英ガラス、アクリル樹脂等の公知の材質が挙げられる。
【0038】
また、この樹脂層成形型24の成形面の外周に、プレス成形時に余分な樹脂を収容する空間を形成可能な樹脂ポケット形状を設けておけば、プレス成形時に成形される樹脂層に対して樹脂量が多い場合でも、余剰の樹脂が樹脂ポケットに収容され、プレス成形を円滑、確実に行える。具体的には、成形面外周に樹脂ポケット分の溝を形成すればよい。
【0039】
胴型25は、中空の円筒状部材であり、中空部分の上部が吸引ノズル22bを摺動させつつ挿抜可能な小径孔25aとされ、その下部が単レンズ支持部材23及び樹脂層成形型24を摺動させつつ挿抜可能な大径孔25bとされている。大径孔25bは小径孔25aよりも径の大きいものである。
【0040】
小径孔25aの下側開口部(大径孔との接続部)は、単レンズ1の傾斜面1bと同じ角度で、単レンズ1の傾斜面1bと輪環状に接触可能な対応傾斜面25cとして設けられている。この対応傾斜面25cは、単レンズ1の傾斜面1bと接触可能に設けられており、この対応傾斜面に単レンズ1を吸引して保持できるようにもなっている。ここに吸引保持する場合は、吸引ノズル22bは上昇させ、吸引口が小径孔25a内部に入り込むようにして、吸引保持型22の吸引動作を継続し、吸引状態を保持すればよい。
【0041】
また、小径孔25aと大径孔25bの軸はそれぞれ一致するように設けられている。これを一致するようにしておくと、対応傾斜面25cに保持される単レンズ1と、樹脂層成形型24で形成される樹脂層の光軸とのずれを小さくできる。すなわち、この対応傾斜面25cは、調心用の傾斜面として機能する。
【0042】
紫外線照射手段26は、樹脂層のプレス成形時に、下方から樹脂層成形型24を透過させて形成する樹脂層にまで紫外線を照射可能なものである。この紫外線照射手段26は、使用する樹脂を硬化可能な紫外線を照射できればよく、公知の紫外線照射手段を使用できる。例えば、樹脂としてアクリル樹脂を使用した場合には波長が367nmの紫外線を照射可能とすればよい。
【0043】
スペーサー27は、吸引保持型22と胴型25との相対的な位置を決めるために設けられ、吸引ノズル22bを一番深くまで挿入したときに、吸引口が胴型25の大径孔25bまで到達する所定の位置となるように調節する部材であり、このときの位置は、プレス成形時の配置でもある。
【0044】
上プレート28及び下プレート29は、単レンズ1の表面に樹脂層を形成する際に用いる部材で、吸引保持型22の上部を上プレート28により押し下げ、樹脂層成形型24の下部を下プレート29により押し上げ、吸引保持型22と樹脂層成形型24を所定の位置に固定して所望の樹脂層を形成するものである。このとき、吸引保持型22で保持された単レンズ1と樹脂層成形型24とで形成される空間が樹脂で満たされると、単レンズ1の表面に所望の形状の樹脂層が形成される。ここで、下プレート29には、樹脂層成形型24を載置する位置に開口部29aが設けられており、この開口部29aを通じて紫外光を樹脂層に照射可能としている。なお、この開口部29aに、硬化用の紫外線を透過する素材で作製された透明板を設けてもよい。このように透明板を用いると樹脂層成形型24の載置及びプレス時の胴型及び樹脂層成形型24の押圧が安定し、プレス工程、紫外線照射工程を安全、確実に実施でき好ましい。
【0045】
次に、複合光学素子の製造装置1を用いた場合を例にして、本発明の複合光学素子の製造方法を説明する。図4A〜4Iは、この複合光学素子の製造方法の各工程を説明する図であり、図4A〜4Cは吸引保持工程を、図4D〜4Eは調心工程を、図4F〜4Gはプレス工程を、図4Hは硬化工程を、図4Iは上記工程が終了した後の複合光学素子を取出した状態を、それぞれ示した図である。
【0046】
本発明における吸引保持工程は、吸引保持型の吸引ノズルと単レンズの平面とを接触させて吸引し、単レンズを吸引保持型で保持する工程である。具体的な操作は、図4A〜4Cに示した。
【0047】
まず、吸引保持型25の下方に、中空部分の上部が小径孔25a、下部が大径孔25bとなるように、かつ、吸引保持型25の吸引ノズル22bとこれら小径孔25a及び大径孔25bとが同軸的になるように胴型25を配置し、小径孔25aに吸引保持型22の吸引ノズル22bを摺動させつつ深く挿入しておく。このとき、胴型25と吸引保持型22とは、スペーサー27を介して密接に配置されている。そして、単レンズ支持部材23に単レンズ1を平面部1aが上を向くように載置する(図4A)。
【0048】
次に、単レンズ1を支持した単レンズ支持部材23を、胴型25の大径孔25bに下方から挿入し、単レンズ1と吸引ノズル22bの吸引口が接触するまで上昇させる。単レンズ1と吸引ノズル22bの吸引口が接触した状態で、吸引ポンプを駆動させて吸引ノズル22bに単レンズ1を吸引保持する(図4B)。単レンズ支持部材23を下降させて大径孔25bから抜いても単レンズ1は吸引ノズル22bに保持された状態を維持する(図4C)。
【0049】
本発明における調心工程は、吸引保持型に保持された単レンズを吸引保持型に吸引したまま上昇させ、単レンズの傾斜面と胴型の対応傾斜面とを接触させて単レンズを小径開口部に保持し、小径の軸と単レンズの光軸とのずれを小さくする工程である。具体的な操作は、図4D〜4Eに示した。
【0050】
吸引保持工程の後、吸引保持型22に単レンズ1を保持したまま上昇させる。すると、胴型25の小径孔25aは、吸引ノズル22bと摺動するように形成されており、一方、単レンズ1は、平面部1aの外周に傾斜面1bが形成されており、吸引ノズル22bの直径よりも単レンズ1の外径の方が大きくなっているため、単レンズ1aは小径孔25aの開口部に接触し、小径孔25a内部には移動しない。
【0051】
吸引保持型22への吸引状態を維持したまま、さらに上昇させると、吸引ノズル22bの吸引口と単レンズ1とは離間する。ここで、単レンズ1の傾斜面1bは小径孔25aの下側開口部に接触するが、このとき、下側開口部は、傾斜面1bと同じ角度で、輪環状に接触可能な対応傾斜面25cとして形成されているため、この対応傾斜面25cと傾斜面1bとが隙間がないように接触する。単レンズ1は、吸引保持型22による吸引状態が解除されないため、そのまま対応傾斜面25cに保持される。そして、このとき、開口部に設けられた対応傾斜面25cは輪環状に形成されており、その中心は円柱状に形成された大径孔25bの軸と一致するようになっている。したがって、開口部に保持される単レンズ1は、その傾斜面1bが対応傾斜面25cに合うように保持され、このとき、単レンズ1の光軸も大径孔25bの軸と一致する(図4D)。
【0052】
再度、吸引保持型22を下降させ、吸引ノズル22bで単レンズ1を保持する状態とすると、単レンズの光軸位置が所望の位置に保持された状態とできる(図4E)。
【0053】
なお、この図4D〜4Eの操作は1回でもよいが、2以上の複数回繰り返すことが、より光軸のずれを小さくさせる観点から好ましい。繰り返す回数は3〜5回程度が好ましい。
【0054】
本発明におけるプレス工程は、調心された単レンズに、その成形面に樹脂組成物が滴下された樹脂層成形型を下方から接近させ、プレスして単レンズの表面に樹脂層を形成する工程である。具体的な操作は、図4F〜4Gに示した。
【0055】
単レンズ1に対して、その上面に樹脂層を形成するための成形面を有する樹脂層成形型24をプレート29上に載置し、その成形面に樹脂組成物30を滴下する(図4F)。そのまま樹脂層成形型24を上昇させ、胴型25の大径孔25bに摺動させつつ挿入する。上プレート28と下プレート29とで圧力をかけ、吸引保持型22と樹脂層成形型24により単レンズ1の表面に所定形状の樹脂層を形成する(図4G)。なお、ここで用いる樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物である。
【0056】
本発明における硬化工程は、プレス工程で所望の形状の樹脂層に対し、樹脂層成形型を介して紫外線を照射し、樹脂層を硬化させる工程である。具体的な操作は、図4Hに示した。
【0057】
プレス工程で形成した層状になった樹脂組成物30に対して、紫外線照射手段26から紫外線を照射し、樹脂組成物を硬化させて、単レンズ1の表面に樹脂層を固着させる(図4H)。下プレート29には、紫外線照射を妨げないよう紫外線透過孔29aが設けられている。また、樹脂層成形型24は、上記のように硬化用の紫外線を透過する材質で形成されており、紫外線照射手段26の紫外線が単レンズ1表面の樹脂組成物にまで到達するようになっている。
【0058】
上記硬化工程により単レンズ1の表面に樹脂層が固着して複合光学素子が得られるが、得られた複合光学素子は、樹脂層成形型24を胴型25から抜き出し(図4I)、その成形面上にある複合光学素子を樹脂層成形型24と離型させればよい。
【0059】
このようにして得られる複合光学素子は、図5Aに示したように、単レンズ1の光学面表面に樹脂層30が形成されたもので、単レンズ1の光軸と樹脂層30の光軸のずれが改善されたものである。
【0060】
また、複合光学素子としては、図5Bに示したように、樹脂層31と樹脂層32という複数の樹脂層を積層して形成することもでき、これは、上記図4F〜4Hで示したプレス工程を、それぞれの樹脂層の形成に対して連続して行えばよい。そのとき、プレス工程で用いる樹脂層成形型の成形面形状を回折格子用のものとすれば樹脂層31のような形状とでき、異なる規格の光ディスクに対しても各々好適に光を集光させることが可能な複合光学素子が得られる。
【0061】
なお、図5Bのように2種類の樹脂層を積層して設ける場合、単レンズ1の光学面側に低アッベ材、その上に高アッベ材の樹脂層とするのが好ましい。
【0062】
このような低アッベ材としては、芳香族系炭化水素を含む樹脂材料やTiO、Nb等の低アッベ数の無機微粒子を含有した樹脂が用いられる。芳香族系炭化水素は紫外線の波長領域において吸収を有する場合があり、波長が405nm近傍において急峻な屈折率分散が得られる。しかしながら、405nmの波長の光が照射された際に、劣化しやすい傾向にあり、これを避けるためにフェニルシラン構造等の405nmの波長に対して劣化耐性のある構造を含むものが好ましい。
【0063】
また、高アッベ材としては、脂肪族系炭化水素、フッ素系炭化水素、硫黄系炭化水素が用いられる。また、これらの樹脂にZrO、SiO,Al、La等の高アッベ数の無機微粒子を含有した樹脂が用いられる。脂肪族系炭化水素は緩やかな屈折率分散が得られるが、屈折率が低くなる傾向にあるため、アダマンタン構造やジアマンタン構造等の材料を含めることにより屈折率を高めて、低アッベ数材料との屈折率の調整を行うことが好ましい。
【0064】
また、必要に応じて、樹脂層31のように、ブレーズ形状等の凹凸を形成し、入射する波長に応じて屈折率を調整することが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。
【0066】
(例1)
[単レンズの製造;実施例]
単レンズ1の材料としてはプレス成形用光学ガラスA−BAR12(旭硝子社製、商品名;バリウムシリケートガラス)を用い、図2で示した構成の成形型11により上型12、下型13を共に570℃にまで加熱し、荷重1kNで45秒間プレスした後、冷却して図1に示した両凸形状の単レンズ1を製造した。
ここで得られた単レンズの形状は、厚さ1.664mm、樹脂層形成面球欠1.41mm、樹脂層形成面光学直径3.02mm、フランジ直径3.821mm、非樹脂層形成面球欠0.018mm、非樹脂層形成面光学直径2.6mm、その外周に平面部が幅0.2mmの輪環状に設けられ、さらにその外周に円錐台状に基準テーパー角度αが45度で傾斜面が形成されたものであった。
【0067】
(例2)
[複合光学素子の製造;実施例]
図3の複合光学素子の製造装置21を用い、以下の通り複合光学素子を製造した。なお、ここで使用した装置は、以下の部材から構成されている。
〔吸引保持型〕
真鍮製の直径20mm、高さ9mmの円柱状の本体と、該本体から下方に突出した直径3mm、長さ13.8mm、内部に直径1mmの気体の通路を有する円筒状であって、吸引口の内部形状が入口直径2.801mm、角度45度の円錐状の吸引ノズルと、を有する吸引保持型。
〔単レンズ支持部材〕
合成石英製、直径6mm、高さ15mmの円柱状で、その上面に直径3.33mm、深さ1.483mm、単レンズの樹脂層形成面と同じ形状の非球面形状である単レンズ支持部を有する単レンズ支持部材。
〔樹脂層成形型〕
合成石英製、直径6mm、高さ15mmの円柱状で、その上面に直径3.33mm、深さ1.483mm、所定の樹脂層用非球面形状の成形面を有する樹脂層成形型。
〔胴型〕
超硬合金製、直径16mm、高さ26mm、小径孔の直径3mm、高さ10.4mm、大径孔の直径6mm、高さ15.6mm、小径孔の大径孔に接続される下側開口部の傾斜角度45度で、小径孔及び大径孔の軸は同軸となるように形成されている胴型。
〔スペーサー〕
ステンレス製、直径16mm、高さ3mmで、中央部に直径3.4mmの孔が形成されている円環状のスペーサー。
〔上プレート〕
ステンレス製、幅90mm、長さ130mm、厚さ25mmの上プレート。
〔下プレート〕
ステンレス製、幅90mm、長さ130mm、厚さ15mm、中央に紫外線透過用の直径4mmの開口部を有し、開口部の上面はプレートの上面と同じ高さにした合成石英製の板ガラスを設けた下プレート。
〔紫外線照射装置〕
紫外線照射装置(浜松ホトニクス社製、商品名:LC6)である。
【0068】
まず、胴型25の上方から吸引保持型22を下降させて、小径孔25aに吸引ノズル22bを摺動させつつ挿入し、吸引ノズル22bの吸引口が大径孔25bに達するまで下降させた。次に、例1で得られた単レンズを単レンズ支持部材23の上面で支持させ、そのまま単レンズ支持部材23を下プレート29に載置した。下プレート29を上昇させ、単レンズ支持部材23を胴型25の下方から大径孔25bに摺動させつつ挿入し、単レンズ1の平面部1aが吸引ノズル22bの先端に接触するまで上昇させた。
接触したところで、吸引ノズルの吸引ポンプを作動させ、単レンズ1を吸引ノズル22bで吸引保持した。単レンズ支持部材23は下プレート29の下降により大径孔23bから抜き去った。
【0069】
次に、単レンズ1を吸引保持した吸引ノズル22bをそのまま上昇させ、単レンズ1の傾斜面1bを胴型25の対応傾斜面25cに接触させ、吸引ノズル22bは吸引状態を維持したままさらに上昇させた。このとき、単レンズ1は小径孔25aの下側開口部である対応傾斜面25cで保持され、単レンズ1の光軸が対応傾斜面25cの軸とずれが小さくなるように修正される。次いで、吸引保持型22を下降させて、再度、単レンズ1と接触させ、吸引保持型22により吸引保持された状態に戻す。
上記した、吸引保持型の上昇、下降を5回繰り返し、単レンズ1の光軸が対応傾斜面25cの軸とできるだけ重なるようにした。
【0070】
次いで、下プレート29上の単レンズ支持部材23を樹脂層成形型24と入れ替え、樹脂層成形型24の成形面に50℃に加熱したアクリル樹脂組成物を滴下した。下プレート29を上昇させ樹脂層成形型24を胴型25の下方から大径孔25bに摺動させつつ挿入し、プレス位置にまで上昇させた。これと同時に、吸引保持型22の上方から上プレート28を下降させ、吸引保持型を押圧し、プレス位置にまで下降させた。上プレート28及び下プレート29で0.1MPaの圧力を120秒間かけ、プレスを行った。これにより、単レンズ1の表面には樹脂組成物が樹脂層成形型の成形面形状に広がり、樹脂層が形成された。
そのプレス状態のまま保持しながら、下プレート29の開口部から樹脂層成形型を介して、365nmの紫外線を120秒間照射し、樹脂層を硬化させた。
樹脂の硬化後、吸引ポンプの動作を止め、単レンズ1の吸引状態を解除した。下プレート29を下降させ、樹脂層成形型24を大径孔25bから抜き去り、樹脂層成形型24の成形面から複合光学素子を離型させ、本発明の複合光学素子を得た。
【0071】
(例3)
[複合光学素子の製造;比較例]
単レンズとして例1で得られた単レンズを使用し、図6に示した成形型51を用いて、以下の通り、複合光学素子を製造した。
ここで使用した成形型51は、合成石英製、径6mm、高さ9.4mmで、プレス時に単レンズ1の傾斜面1bと接触により位置合わせを可能とする上型52と、ステンレス製、直径6mm、高さ8.8mmで、プレス時に単レンズ1のフランジ部分を下方から水平に支持する下型53と、ステンレス製、外径10mm、内径6mm、高さ15.6mmの胴型と、で構成される。
なお、本例では、単レンズ1は下型53とフランジ部分で接触し、位置合わせをするが、ここで用いているのは、単レンズ1の平面部1aの反対面側のフランジ部分である。しかしながら、この下型53との接触面であるフランジ部分も設計上は光軸に対して垂直面として形成している。
【0072】
まず、下型53の成形面上に、50℃に加熱したアクリル樹脂組成物を滴下した。その上から、単レンズ1を成形面上に載置し、上下プレートで挟持することで上型52及び下型53により0.1MPaの圧力を120秒間かけ、プレス成形を行った。
そのプレス状態を保持しながら、下プレートの開口部から下型を介して、365nmの紫外線を120秒間照射し、樹脂層を硬化させた。
樹脂の硬化後、上プレート及び上型52を上昇させ、下型53の成形面上に形成された複合光学素子を離型させ、本発明の複合光学素子を得た。
【0073】
(試験例)
例2及び例3で得られた複合光学素子について、単レンズ1とその表面に形成された樹脂層の光軸のずれ(シフト及びチルト)をUA3P(パナソニック社製、商品名)を用いて調べたところ、表1の結果が得られた。
【0074】
【表1】

【0075】
以上の結果より、本発明の複合光学素子の製造装置及び製造方法が、偏心性能を向上させた複合光学素子を製造するのに有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の複合光学素子の製造装置及び製造方法並びに単レンズは、プレス成形による複合光学素子の製造に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1…単レンズ、11…成形型、12…上型、13…下型、14…内胴、15…外胴、21…複合光学素子の製造装置、22…吸引保持型、23…単レンズ支持部材、24…樹脂層成形型、25…胴型、26…紫外線照射手段、27…スペーサー、28…上プレート、29…下プレート、30,31,32…樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の有効径外に、光軸と直交する円環状の平面部及び該平面部の外周に円錐台状の傾斜面を有するガラス製の単レンズを用い、該単レンズの他方の面に樹脂層を形成する複合光学素子の製造装置であって、
下方に突出し先端に吸引口を開口させた円筒状の吸引ノズルを有し、前記単レンズの円環状の平面部に前記吸引ノズルの先端を接触させて単レンズを吸引、保持する吸引保持型と、
前記単レンズの前記平面部を上方に向けて下方から支持する前記吸引保持型より大径の円柱状の単レンズ支持部材と、
紫外光を透過可能な材料から形成され、前記単レンズ支持部材と前記樹脂層をプレス成形により形成する前記単レンズ支持部材と同径の円柱状の樹脂層成形型と、
円筒状の部材であって、その中空の上部が前記吸引保持型を上部から摺動させつつ挿抜可能な小径孔とされ、下部が前記単レンズ支持部材及び前記樹脂層成形型の一方を下方から摺動させつつ挿抜可能な大径孔とされ、前記小径孔の前記大径孔に接続される下側開口部が、前記単レンズの傾斜面と同じ角度で、前記単レンズの傾斜面と輪環状に接触可能な対応傾斜面として設けられており、かつ、前記小径孔及び大径孔が前記吸引保持型の下方に同軸的に配置されるように設けられた胴型と、
前記吸引保持型を前記胴型の小径孔に挿入した状態で、先端を大径孔の所定の位置まで進退可能な駆動手段と、
前記樹脂層成形型を前記胴型の大径孔に挿入した状態で、下方から前記樹脂層成形型を透過させて前記樹脂層に紫外線を照射する紫外線照射手段と、
を有することを特徴とする複合光学素子の製造装置。
【請求項2】
前記吸引保持型の吸引ノズルの吸引口が円錐状に形成されている請求項1記載の複合光学素子の製造装置。
【請求項3】
前記対応傾斜面の傾斜角度が、前記小径孔の軸を通る断面において、水平面に対して前記大径孔方向に傾斜する角度を表すものであって、該角度が40〜60度である請求項1又は2記載の複合光学素子の製造装置。
【請求項4】
前記対応傾斜面の傾斜角度が、前記単レンズについて、光軸を通る断面において、前記平面部に対して厚さ方向に前記傾斜面が傾斜する角度であって、前記単レンズの外周側からの角度と同じ角度である請求項3記載の複合光学素子の製造装置。
【請求項5】
前記樹脂層成形型が、前記単レンズの表面に形成する樹脂層毎に複数個用意されており、前記単レンズの表面に2以上の樹脂層を積層して形成できる請求項1乃至4のいずれか1項記載の複合光学素子の製造装置。
【請求項6】
前記樹脂層成形型の成形面の外周に、プレス成形時に余分な樹脂を収容する空間を形成可能な樹脂ポケット形状が設けられている請求項1乃至5のいずれか1項記載の複合光学素子の製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の複合光学素子の製造装置を用いてガラス製の単レンズの表面に樹脂層を形成する複合光学素子の製造方法であって、
前記胴型の小径孔に挿入した吸引保持型の吸引ノズルの先端と前記胴型の大径孔に導入した単レンズ支持部材に支持された単レンズの平面部とを接触させて吸引し、単レンズを吸引保持型で保持する吸引保持工程と、
前記吸引保持型に保持された単レンズを吸引保持型に吸引したまま上昇させ、前記単レンズの傾斜面と前記胴型の対応傾斜面とを接触させて単レンズを前記小径孔の下側開口部に吸引保持させた後、前記吸引保持型を下降させて前記単レンズと前記吸引ノズルを再度接触させ、前記大径孔の軸と前記単レンズの光軸とのずれを小さくする調心工程と、
前記調心工程で調心された単レンズに、成形面に樹脂組成物が滴下された前記樹脂層成形型を下方から接近させ、プレスして前記単レンズの表面に樹脂層を形成するプレス工程と、
前記プレス工程で形成された樹脂層に対し、前記樹脂層成形型を介して紫外線を照射し、前記樹脂層を硬化させる硬化工程と、
を有することを特徴とする複合光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記調心工程において、前記単レンズの前記吸引保持型の上昇及び下降を2回以上繰り返す請求項7記載の複合光学素子の製造方法。
【請求項9】
請求項5又は6記載の複合光学素子の製造装置を用いてガラス製の単レンズの表面に樹脂層を形成する複合光学素子の製造方法であって、前記複数個の樹脂層成形型のそれぞれに対し、前記プレス工程及び硬化工程を繰り返して行う請求項7又は8記載の複合光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記光学素子の表面に、低アッベ材の樹脂層と、該低アッベ材よりもアッベ数の高い高アッベ材の樹脂層を、その順番に積層して形成した請求項9記載の複合光学素子の製造方法。
【請求項11】
一方の面の有効径外に、輪環状に、かつ、単レンズの光軸に対して垂直に交わるように形成された平面部と、該平面部の外周に、前記平面部に対して所定の角度で傾斜するように円錐台状に形成された傾斜面と、を有することを特徴とする単レンズ。
【請求項12】
前記単レンズの傾斜面の傾斜角度が、前記単レンズの光軸を通る断面において、前記平面部に対して厚さ方向に傾斜する、前記単レンズの外周側からの角度を表すものであって、該角度が40〜60度である請求項11記載の単レンズ。
【請求項13】
単レンズの上側の光学面を形成する上型と単レンズの下側の光学面を形成する下型とを有し、前記上型及び下型を用いたプレス成形により単レンズを成形する単レンズ用の成形型であって、
前記上型及び下型の少なくとも一方において、そのプレス成形により形成される光学面の有効径外に、輪環状に、かつ、前記単レンズの光軸に対して垂直に交わるように形成される平面部を転写可能な平面部転写面と、該平面部の外周に、前記平面部に対して所定の角度で傾斜するように円錐台状に形成される傾斜面を転写可能な傾斜面転写面と、を有することを特徴とする単レンズ用の成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図4H】
image rotate

【図4I】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−107794(P2013−107794A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254088(P2011−254088)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】