説明

複層ガラスサッシ

【課題】引き違い障子や開閉障子等の可動障子において、ほぼ完全なフレームレス化を進め、デザインの向上を図る。
【解決手段】室外側ガラスGと室内側ガラスGとが周方向に沿って配設されたスペーサを介し所定幅の空間が形成された状態で組み合わされ、四周縁部に前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの保持枠6〜9を備えた複層ガラスサッシ3A、3Bにおいて、前記保持枠6〜9は実質的に前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスGの背面側に設置されることにより、室外側から隠蔽されるとともに、下保持枠9にサッシ用機能部材として戸車17が設けられ、該戸車17が前記室外側ガラスGによって室外側から隠蔽された構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外側に框などのフレームを露出させないようにした複層ガラスサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅や低層ビル等では、騒音対策や結露対策のために、複層ガラスを採用したサッシが多く使用されるようになってきた。複層ガラスを框によって支持する方法としては、框の内方面側に形成された凹部に複層ガラスを呑み込ませるとともに、グレージングチャンネル又はシール材によって固定する方法(特許文献1の図18、図19参照)が一般的であった。
【0003】
近年は、複層ガラスの支持方法についても幾つかの改良が提案されている。下記特許文献1では、フレームレスな意匠性を出すために、複層ガラスを保持枠に取り付けてなる複層ガラス障子において、複層ガラスは、短寸板ガラス50と長寸板ガラス51がその周辺部に配されているスペーサ52を介在して、かつ、スペーサ52の外部側に長寸板ガラス51が短寸板ガラス50に対して突出板ガラス部分を有するようにして配置されて空気層が形成され、保持枠は、短寸板ガラスに面一になるように形成された面保護部53と、長寸板ガラスの端面に連なって形成される第1端面に接着されていて、面保護部に垂直方向に形成されている端保護部54と、複層ガラスを保持している保持部55を有してなる複層ガラス障子が開示されている。
【特許文献1】特開平9−228748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサッシ構造は、室外側から障子の框が見えるのが当然であったが、近年は居住者のデザイン志向が高まりによって、上記特許文献1記載の発明のように、極力框を見せないようにすることによりデザイン性を与えたものが好まれる傾向にある。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1記載の複層ガラス障子を開閉窓として使用する場合は、図6に示されるように、開閉支持金物が室外側ガラスよりも外側に存在し、外部から見えてしまう問題があった。また、仮に障子として使用する場合には、下框の下面に別途戸車を配設する必要があり、この戸車が外から見えないようにするためには、窓枠側に工夫が必要になるなどの問題があった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、引き違い障子や開閉障子等の可動障子において、ほぼ完全なフレームレス化を進め、デザインの向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、室外側ガラスと室内側ガラスとが周方向に沿って配設されたスペーサを介し所定幅の空間が形成された状態で組み合わされ、四周縁部に前記室外側ガラスと室内側ガラスとの保持枠を備えた複層ガラスサッシにおいて、
前記保持枠は、前記室外側ガラスと室内側ガラスとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスの背面側に設置されることにより、実質的に室外側から隠蔽されるとともに、前記保持枠にサッシ用機能部材が設けられ、該サッシ用機能部材が前記室外側ガラスによって室外側から隠蔽されていることを特徴とする複層ガラスサッシが提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明においては、保持枠は、前記室外側ガラスと室内側ガラスとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスの背面側に設置される。従って、前記保持枠は実質的に室外側から隠蔽されるようになる。また、サッシには戸車、開閉支持金具等のサッシ用機能部材が設けられるが、更にこのサッシ用機能部材が前記室外側ガラスによって隠蔽された構造とするものである。従って、ほぼ完全なフレームレス化が実現でき、意匠性が向上する。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記サッシ用機能部材が戸車、開閉支持金具、外れ止め機構、引寄せ金物のいずれかである請求項1記載の複層ガラスサッシが提供される。該請求項2記載の発明はサッシ用機能部材の例を列挙したものである。
【0010】
請求項3に係る本発明として、前記サッシ用機能部材が戸車であり、該戸車が前記保持枠の空間内に収納され、かつ保持枠より下側に突出した戸車部分が前記室外側ガラスによって室外側から隠蔽されている請求項1記載の複層ガラスサッシが提供される。該請求項3記載の発明は、特にサッシ用機能部材が戸車である場合の構造を具体化したものである。
【0011】
なお、上記請求項1〜3記載の発明において「実質的に」とは、例えば保持枠Kのガラス支持フランジの端面が外部に露出する程度は許容する意味である。
【発明の効果】
【0012】
以上詳説のとおり本発明によれば、引き違い障子や開閉障子等の可動障子において、ほぼ完全なフレームレス化が可能になるため、デザインの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図1は本発明に係る複層ガラスサッシを適用した引違い窓1の内観姿図、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。
【0015】
引違い窓1は、躯体開口部Hの周囲に、上枠2A、下枠2B及び左右側枠2C、2Dからなる窓枠2を固定し、この窓枠2内に本発明に係る室外側複層ガラスサッシ3Aと、室内側複層ガラスサッシ3Bを建込んだ構造の窓である。
【0016】
前記複層ガラスサッシ3A、3Bは、室外側ガラスGと室内側ガラスGとが周方向に沿って配設されたスペーサ4を介し所定幅の空間が形成された状態で組み合わされ、四周縁部に前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの保持枠Kを備えるもので、前記保持枠Kは実質的に前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスGの背面側に設置されることにより、室外側から隠蔽されるとともに、前記保持枠Kにサッシ用機能部材、図示例では戸車17が設けられ、該戸車17が前記室外側ガラスGによって室外側から隠蔽されている構造の引違いサッシである。なお、前記スペーサ4の内部は一般的に乾燥剤が充填されている(図示せず)。
【0017】
以下、更に上記室外側複層ガラスサッシ3Aを図4に基づいて、前記室内側複層ガラスサッシ3Bを図5に基づいて詳述する。
【0018】
前記相対的に室外側に位置する複層ガラスサッシ3Aは、詳細には図4に示されるように、室外側ガラスGと室内側ガラスGとが周方向に沿って配設されたスペーサ4を介し所定幅の空間Aが形成された状態で組み合わされる。前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間であって、前記スペーサ4の外周側にシール材5が充填されるとともに、さらにその外側の周縁部には上保持枠8、下保持枠9、左右保持枠6、7からなる保持枠Kが設けられている。
【0019】
前記保持枠6〜9は、実質的に前記室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスGの背面側に設置されることにより、室外側から隠蔽されるようになっている。ここで、左右保持枠6,7及び上保持枠8が室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に挿入状態で設置されることにより室外側から隠蔽された枠材であり、前記下保持枠9が室外側ガラスGの背面側に設置されることにより室外側から隠蔽された枠材である。
【0020】
前記左保持枠6は、引き違いサッシの戸先側となる枠材である。室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に位置する中空部6aから側方に延在して室内外に夫々、断面L字状のガラス支持フランジ6b、6cを備えた形材であって、室外側に屈曲するガラス支持フランジ6bによって、中間にシール材12を介して室外側ガラスGが支持され、室内側に屈曲するガラス支持フランジ6cによって、中間にシール材12を介して室内側ガラスGが支持されているとともに、前記室外側ガラスG、室内側ガラスGは、左保持枠6との接触部分において接着剤によって接合されている。一方、前記ガラス支持フランジ6b、6cの間に形成された凹部6d内には、レインバリヤ7が設けられるとともに、ウインドバリヤ8が設けられている。
【0021】
前記右保持枠7は、引き違いサッシの室外側召合せとなる枠材である。室外側ガラスGと室内側ガラスGとの間に位置する中空部7aの外側端部より室外側に突出するガラス支持フランジ7bを備えるとともに、室内側ガラスGとの間に面状の空間を形成するように断面L字状を成すガラス支持フランジ7cを備え、かつ前記ガラス支持フランジ7cに煙返し7dが設けられた形材であって、前記ガラス支持フランジ7bによって、中間にシール材12を間に介して室外側ガラスGが支持され、前記ガラス支持フランジ7c部によって室内側ガラスGが支持される。該室内側ガラスGの支持は、ガラス端部を前記ガラス支持フランジ7cによって形成された空間内に挿入し、室内側ガラスGとガラス支持フランジ7cとの間に固形シール材13を挟入することによって支持されている。また、前記室外側ガラスG、室内側ガラスGは、右保持枠7との接触部分において接着剤によって接合されている。一方、前記ガラス支持フランジ7cには、クレセント錠の受け金具14が取り付けられているとともに、前記煙返し7dの室内側面には室内側複層ガラスサッシ3Bの召合せ保持枠16に接触するシール材19が設けられている。
【0022】
前記上保持枠8は、上枠2Aに設けられた垂下片レール30が嵌入される枠材である。断面U字状部8aの上部端から室外側に延在するガラス支持フランジ8bを備えるとともに、室内側に延在するガラス支持フランジ8cを備える形材であって、室外側に延在するガラス支持フランジ8bによって、中間にシール材12を介して室外側ガラスGが支持され、室内側に延在するガラス支持フランジ8cによって、中間にシール材12を介して室内側ガラスGが支持されているとともに、前記室外側ガラスG、室内側ガラスGは、上保持枠8との接触部分において接着剤によって接合されている。また、前記断面U字状部8aの凹部内には、端部にU字状の切欠きが形成された小口板8dが設けられているとともに、上枠2Aに設けられた垂下片レール30を跨いで両側に夫々バリヤシール15が設けられている。
【0023】
前記下保持枠9は、下枠2Bに設けられた起立レールを走行する戸車が設けられる枠材である。室内側に段状部を有する中空部9aから室外側に屈曲する断面L字状のガラス支持フランジ9b、9cを備えた形材である。室外側に位置するガラス支持フランジ9bによって、中間にシール材12を介して室外側ガラスGが支持され、前記中空部9aの段状部によって、中間にシール材12を介して室内側ガラスGが支持されている。
【0024】
前記下保持枠9の中空部9aには、サッシ用機能部材となる戸車17が収納されており、かつ前記中空部9aより下側に突出した戸車部分17が前記室外側ガラスGによって室外側から隠蔽された構造となっている。
【0025】
一方、相対的に室内側に位置する複層ガラスサッシ3Bは、詳細には図5に示されるように、召合せ保持枠16のみが前記室外側の複層ガラスサッシ3Aと異なり、他の保持枠は同様であるため、前記召合せ保持枠16について説明を行い、他の保持枠については同符合を付して説明を省略する。なお、前記召合せ保持枠16は、室外側複層ガラス3Aによって隠蔽されるため、フレームレスが要求されない部位である。
【0026】
前記召合せ保持枠16は、引き違いサッシの室内側召合せとなる枠材である。室内側に段状部を有する第1中空部16aと、引き手となる第2中空部16bとが連設され、室外側に断面L字状の煙返し16dが設けられた形材である。前記煙返し16dの室外側には、シール材21が設けられている。前記第1中空部16aと第2中空部16bとの間の凹部16cに室内側ガラスGが挿入され、バックアップ材22,シール材23によって支持されている。また、室外側ガラスGは、前記煙返し16d内に充填されたシール材20によって支持されているとともに、召合せ保持枠16との接触部分において接着剤によって接合されている。。前記召合せ保持枠16の外側面は平面とされ、クレセント錠18が設けられ、室内側複層ガラスサッシ3Aに設けられた受け金具14にクレセントを係合させることにより施錠が成されるようになっている。
【0027】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、サッシ用機能部材が戸車17の例について説明したが、前記サッシ用機能部材としては他に、開き窓とした場合の開閉支持金具、スライド障子における外れ止め機構や引寄せ金物などがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る複層ガラスサッシを適用した引違い窓1の内観姿図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】室外側複層ガラスサッシ3Aを示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図5】室内側複層ガラスサッシ3Bを示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図6】フレームレスデザインの複層ガラス障子を開閉窓として使用した場合の開閉支持部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…引違い窓、2A…上枠、2B…下枠、2C・2D…側枠、3A…室外側複層ガラスサッシ、3B…室内側複層ガラスサッシ、4…スペーサ、5…シール材、6…左保持枠、7…右保持枠、8…上保持枠、9…下保持枠、16…召合せ保持枠、17…戸車、G…室外側ガラス、G…室内側ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側ガラスと室内側ガラスとが周方向に沿って配設されたスペーサを介し所定幅の空間が形成された状態で組み合わされ、四周縁部に前記室外側ガラスと室内側ガラスとの保持枠を備えた複層ガラスサッシにおいて、
前記保持枠は、前記室外側ガラスと室内側ガラスとの間に挿入状態で設置されるか、前記室外側ガラスの背面側に設置されることにより、実質的に室外側から隠蔽されるとともに、前記保持枠にサッシ用機能部材が設けられ、該サッシ用機能部材が前記室外側ガラスによって室外側から隠蔽されていることを特徴とする複層ガラスサッシ。
【請求項2】
前記サッシ用機能部材が戸車、開閉支持金具、外れ止め機構、引寄せ金物のいずれかである請求項1記載の複層ガラスサッシ。
【請求項3】
前記サッシ用機能部材が戸車であり、該戸車が前記保持枠の空間内に収納され、かつ保持枠より下側に突出した戸車部分が前記室外側ガラスによって室外側から隠蔽されている請求項1記載の複層ガラスサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−63746(P2008−63746A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240217(P2006−240217)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】