説明

複数の液体の温度調節装置

【課題】 制御回路の負荷を軽減でき、ヒーターの一部が故障してもシステムを継続して使用できるようにする。
【解決手段】 プリンタプロセッサの水洗槽13〜16に、水洗液の循環系60〜64を設ける。第1及び第2ヒータ70,71には水洗槽14,15の水洗液が流れる通路を個別に形成する。循環系60,61は、循環パイプ60a,61aをそれぞれ有し、循環ポンプ60b,61bにより水洗槽13,14の水洗液を第1ヒータ70と第2ヒータ71との間で循環させる。流路切替え弁60c,60d,61c,60dは、水洗槽13,14の水洗液が第1ヒーター70又は第2ヒーター71をそれぞれ循環する流路に選択的に切替えるから、一方のヒーターが故障しても継続して水温調節が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器とヒータ又はクーラ等の温度調節器との間で液体を循環させ、容器内の液体を所定の温度に調節する複数の液体の温度調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真現像所で使用されるプリンタプロセッサは、印画紙(カラーペーパー)などの感光材料に画像を露光記録する露光部と、露光済みの感光材料に現像処理を施す現像処理部と、現像処理後の感光材料を乾燥させる乾燥部とを備えている。現像処理部には、発色現像用、漂白定着用、水洗用の各処理液の入った複数の処理槽が設けられており、感光材料を各処理液の中に順次通過させることによって現像処理を行う。各処理槽には、ヒータを有する循環装置が設けられ、液温を一定の範囲に保っている。
【0003】
プリンタプロセッサは、例えば特許文献1に記載されているように、各槽の液温調整にそれぞれ専用のヒータを用い、電源投入後の立ち上げ時と一定温度範囲に達した後の温度調節とを行っている。したがって、液温が一定範囲に達した後の保温時も、立ち上げ用のヒータを使用するため、保温時はヒータのオン時間が短く、オンオフ回数が多くなり、制御回路に負荷がかかっていた。ヒータの容量は液温を一定温度域まで上げる立ち上げ時を基準にして決定されているため、容量の大きなヒータとなり、保温時には省エネ的に不利である。
【0004】
また、従来のプリンタプロセッサは、部品故障等のトラブルが生じた場合、システムの制御部がエラーを検知して、システム全体の動作を中止させる。このため、システムの大部分が正常であってもプリンタプロセサを使用できなくなる不便な点があった。そこで、特許文献2に記載されたプリンタプロセサは、エラーの種類ごとに、システムの即時停止、警告確認後にシステム作動、エラー情報の表示のみ、等のエラーレベルを設定できるようにしている。これにより、重大なエラーの発生時以外にプリンタプロセッサが停止しないようにすることで稼働率の向上を図っている。
【特許文献1】特開2003−68425号公報
【特許文献2】特開平11−143501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を用いてプリンタプロセッサの稼働率を高める場合、システムを停止させるべき重大なエラーと、システムを継続して稼動させることを許容する軽微なエラーとを予め区別する必要がある。従来のプリンタプリンタプロセッサは、各水洗槽に専用のヒータを使用しているため、1つのヒータが故障すると特定の水洗槽の水温調節が全く行えなくなる。すなわち、ヒータの故障が重大なエラーとなり、プリンタプロセッサの稼働率向上を阻害する要因となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を考慮してなされたもので、ヒータの制御に要する負担を軽減し、保温時の熱効率が高められ、水洗槽等の処理液槽のヒータに異常が発生した場合でも、プリンタプロセッサを停止させることなく継続して稼動させることができる温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、液体を収容する複数の容器と、前記液体が個別に通過する複数の通路を有し各液体の温度を調節する複数の温度調節器と、前記複数の容器のうちの一つの容器の液体を、前記複数の温度調節器の一つの通路に選択的に循環させるために前記容器毎に設けられる複数の循環手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記各液体を所定の温度にする際には、前記容器と前記温度調節器とを個別に接続して温度調節器毎に各容器の液体の温度を調節し、前記各液体が所定の温度に達した後は、この温度を一定範囲内に維持するために、一つの温度調節器により各容器の液体の温度を調節することを特徴とする。
【0009】
また、前記各温度調節器の故障を検知する故障検知手段を有し、この故障検知手段で故障を検知した温度調節器の代わりに正常な温度調節器の通路を用いて故障を検知した温度調節器に対応する容器の液体を温度調節することを特徴とする。
【0010】
また、前記液体は感光材料を水洗する液体であり、前記各容器内には前記感光材料を液体中で搬送させる感光材料搬送手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体を収容した複数の容器に対して、温度調節器が複数設けられており、容器と温度調節器との間で液体を循環させる経路を変更でき、一つの容器に対して一つの温度調節器を使用する場合と、複数の容器に対して一つの温度調節器を使用する場合とを選択できる。これにより、加熱量が大きい立ち上げ時と加熱量が小さい保温時とで液体の循環経路を適宜切替え、複数の容器の液体を容器数より少ない数の温度調節器によって温度調節する。したがって、温度調節器を短い作動時間で細かくオンオフする必要がなく、制御回路等にかかる負担を小さくできるとともに、熱効率を高くすることができる。また、一部の温度調節器が故障しても、正常な温度調節器を使用して液温調節が継続して行え、プリンタプロセッサを即時停止させる必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、プリンタプロセッサ10には、露光部10a、現像処理部10b、乾燥部10cとが設けられている。現像処理部10bには、上流側より順に、発色現像槽11、漂白定着槽12、4つの水洗槽13,14,15,16が設けられている。水洗槽13〜16は、下流側の槽を溢れさせて上流側の槽に水洗用の水を供給するカスケード方式が採用されている。
【0013】
発色現像槽11,漂白定着槽12の槽内には処理ラック20に軸支された搬送ローラ対21が設けられており、それぞれ発色現像液22、漂白定着液23に漬浸されている。これらの搬送ローラ対21により印画紙(カラーペーパー)25が各液中を通過して現像処理される。
【0014】
発色現像槽11の上流側にはガイドローラ26が設けられており、露光部10a内で画像が露光記録された印画紙25が発色現像槽11に案内される。発色現像槽11と漂白定着槽12との間には、スクイズローラ27が設けられている。スクイズローラ27は、発色現像槽11から引き上げられた印画紙25を漂白定着槽12に案内する。また、漂白定着槽12と水洗槽13との間にスクイズローラ28が設けられ、漂白定着槽12から引き上げられた印画紙25が水洗槽13へ案内される。スクイズローラ27,28は、印画紙25に付着した余分な処理液を除去し、槽内に異なる処理液が多量に混入することを防止する。
【0015】
水洗槽13〜16には、それぞれ水洗水29が貯溜されている。水洗槽13〜16の各槽の間には第1〜第3の隔壁30,31,32が設けられており、各槽が仕切られている。第1〜第3の隔壁30〜32には、印画紙25を水中で搬送可能とする搬送通路33が形成されている。搬送通路33は、ブレード34により水密に仕切られており、感光材料25の通過を許容し、水洗水29の通水を阻止する構成とされている。水洗槽13〜16には、搬送ラック37,38,39,40が挿入されている。ラック37〜40には、各槽内で印画紙25を搬送するための搬送ローラ41が取り付けられている。
【0016】
第1及び第4の水洗槽13,16では、搬送ラック37,40により印画紙25が鉛直方向に搬送される。第2及び第3の水洗槽14,15では、ラック38,39により印画紙25が水平方向に搬送される。水洗槽13〜16の各水洗水29の容量は、印画紙25の搬送経路の長さに比例して異なっている。水洗槽13〜16で水洗処理された印画紙25は、排出ローラ42によって乾燥部10cへ搬送される。
【0017】
図2において、第1〜第4の水洗槽13〜16には、それぞれサブタンク43,44,45,46が設けられている。サブタンク43〜46は、流出口43a,44a,45a,46aを介して各水洗槽13〜16と接続されている。第1〜第4の水洗槽13〜16には、取水口52aが設けられている。なお、水洗槽16は、サブタンク46に取水口52aが設けられている。取水口52aにはフィルタ53が配置され、取水口52aに水洗水29のゴミ等の異物が進入することが防止される。
【0018】
各水洗槽13〜16には、循環系60,61,62,63が設けられている。循環系60は、循環パイプ60a,循環ポンプ60bとを備えている。循環パイプ60aは、水洗槽13の取水口52aと、排出口52bとにそれぞれ接続されている。排出口52bは、水洗槽13のサブタンク43に設けられており、取水口52aから取り入れた水洗水29を循環ポンプ60bによって排出口52bから排出し、流出口43aを介して水洗槽13内に循環流を形成する。循環系61,62,63についても同様の構成であり、循環パイプ61a〜63a、循環ポンプ61b〜63bを備え、水洗槽14〜16の内部でそれぞれ水洗水29の循環流を形成する。なお、水洗槽16は、サブタンク46に取水口52aが設けられている。
【0019】
水洗槽13〜16には、槽内の水温を測定するサーミスタ66がそれぞれ設けられている。サーミスタ66の水温測定信号は、コントローラ67に送られる。循環系60〜63には、それぞれ第1ヒータ70,第2ヒータ71,第3ヒータ72,第4ヒータ73が設けられている。第1ヒータ70〜第4ヒータ73は、鋳込みヒータから構成され、各循環系60〜63を循環する水洗水29をそれぞれ加熱して水温を調節する。第1ヒータ70〜第4ヒータ73は、発熱量が一定であり、コントローラ67によりオンとオフが制御される。
【0020】
コントローラ67は、プリンタプロセッサ10の各部を電気的に制御するもので、現像処理部10bにおいては、搬送ローラ21及び41や排出ローラ42等の搬送装置、サーミスタ66、第1ヒータ70〜第4ヒータ73、循環ポンプ60b〜63b、各流路切替え弁60c〜63c,60d〜63dの作動を管理する。アラーム68は、コントローラ67によりプリンタプロセッサ10の内部で異常が検知された際、警告音を発生してエラーをオペレータ等に報知する。
【0021】
図3において、循環系60,61の循環パイプ60a,61aは、ともに第1ヒータ70,第2ヒータ71に接続されている。すなわち、第1ヒータ70を単体で使用して循環系60及び61を循環する水洗水29の水温調節が可能である。また、循環パイプ60a,61aは、ともに第2ヒータ71に接続されており、第2ヒータ71によって循環系60及び61を循環する水洗水29の水温調節が可能である。循環系60には、第1ヒータ70の上流側と下流側に流路切替え弁60c,60dがそれぞれ設けられている。同様に、循環系61には、第2ヒータ71の上流側と下流側に流路切替え弁61c,61dが設けられている。
【0022】
第1ヒータ70は、循環パイプ60a,61aとそれぞれ接続された水管70a,70bを内部に有している。また、第2ヒータ71は、循環パイプ61a,60aとそれぞれ接続された水管71a,71bを有している。循環系60は、流路切替え弁60c,60dを作動させることにより、水洗槽13の水洗水29の流路を、第1ヒータ70を通過する流路、第2ヒータ71を通過する流路とに切替えることができる。同様に、循環系61は、流路切替え弁61c,61dを作動させることにより、水洗槽14の水洗水29の流路を、第1ヒータ70を通過する流路、第2ヒータ71を通過する流路とに切替えることができる。なお、循環系62及び第3ヒータ72,循環系63及び第4ヒータ73についても同様の構成である。
【0023】
プリンタプロセッサ10は電源がオンされることで立ち上げ処理が行われ、この立ち上げ処理の中で、水洗槽13〜16の水温測定が行われる。コントローラ67は、4つのサーミスタ66からの信号を受けて、水洗槽13〜16の水温を検知し、予め設定されている目標温度と現在の水温とを比較する。また、循環系60〜63の循環ポンプ60b〜63bを作動させ、水洗槽13〜16の水洗水29を循環させる。コントローラ67は、水温と目標温度との差が一定値以上である場合に低温であると判断し、水温を上昇させる加熱処理を開始する。また、各水洗槽13〜16の水量が不足していれば、水洗槽16に補充タンク(図示なし)から一定量の水が補給され、カスケード方式による各水洗槽13〜16の水量調節が行われる。
【0024】
循環系60,61の動作について説明する。なお、循環系62,63の動作は同じであるので説明は省略する。図4において、コントローラ67は、水洗槽13,14の水温を検知した結果、2つの槽が低温であることを判断すると、内部に組み込まれた時計回路を参照して現在時刻を検知する。コントローラ67には、プリンタプロセッサ10の使用開始時刻が予め設定されており、現在時刻から使用開始時刻までの時間を算出する。この時間が規定時間、例えば5時間以下であれば、第1ヒータ70及び第2ヒータ71を使用する急速加熱モードに設定され、規定時間以上であれば第1ヒータ70と第2ヒータ71のいずれか一方を使用する低速加熱モードに設定される。
【0025】
急速加熱モードでは、コントローラ67が流路切替え弁60c及び60dを作動させ、第1ヒータ70内の水管70aと循環パイプ60aとを導通させ、水管70bと循環パイプ61aとを遮断する。また、流路切替え弁61c,61dを作動させ、第2ヒータ71内の水管71aと循環パイプ61aとを導通させ、水管71bと循環パイプ60aとを遮断する。すなわち、循環系60では水洗槽13と第1ヒータ70との間で水洗水29が循環され、循環系61では水洗槽14と第2ヒータ71との間で水洗水29が循環されるので、水洗槽13,水洗槽14の水洗水29は第1ヒータ70と第2ヒータ71によりそれぞれ加熱される。
【0026】
コントローラ67は、第1ヒータ70と第2ヒータ71とを駆動させ、水洗槽13と水洗槽14のサーミスタ66からの信号によりそれぞれの槽内の水温を監視する。コントローラ67は、水温の変化を検出し、この変化の度合いから第1ヒータ70と第2ヒータ71が正常に駆動しているか否かを判断する。各槽の水温変化の度合いに異常が認められなければ、そのまま加熱が行われる。やがて、水温が目標温度に達すると、コントローラ67では急速加熱モードが解除され、保温モードに設定される。
【0027】
保温モードでは、コントローラ67により、第1ヒータ70と第2ヒータ71のいずれか一方が選出され、選出された方がオンされ、他方はオフされる。例えば、第1ヒータ70が選出された場合、コントローラ67は、流路切替え弁60c及び60dを作動させ、第1ヒータ70内の水管70aと循環パイプ60aとを導通させるとともに、水管70bと循環パイプ61aとを導通させる。また、流路切替え弁61c,61dを作動させ、第2ヒータ71内の水管71aと循環パイプ61aとを遮断するとともに、水管71bと循環パイプ60aとを遮断する。
【0028】
使用するヒータを選出するにあたっては、コントローラ67により第1ヒータ70と第2ヒータ71のそれぞれの総稼働時間をカウントし、総稼働時間の少ない方を選出する。なお、いずれを使用するかは、1日又は半日等のように一定時間おきに交互に変更してもよく、あるいは、長時間使用した場合の総稼働時間が均等になるように無作為に決定するようにしてもよい。これにより、第1ヒータ70と第2ヒータ71の稼働時間が偏らず、一方のヒータの寿命が短くなることを防止できる。
【0029】
コントローラ67は、サーミスタ66の信号に基づいて水洗槽13と水洗槽14の水温を常時監視し、水温が目標温度に対して例えば上下3度の範囲内に保たれるように第1ヒータ70を制御する。コントローラ67は、保温中に、一方の水洗槽、例えば、水洗槽13の水温が上昇しすぎると、流路切替え弁60c及び60dを作動させ、循環パイプ60aと水管70aとを遮断し、循環パイプ60aと水管71bを導通させる。これにより、水洗槽13の水洗水29は、オフされている第2ヒータ71との間で循環が継続され、温度上昇が抑えられるとともに、水洗槽13が攪拌されて水温が均一に保たれる。
【0030】
水洗槽14の水温のみが上昇しすぎた場合は、流路切替え弁61c,61dが作動し、水洗槽14の水洗水29は、オフされている第2ヒータ71との間で循環する。また、水洗槽13及び14の両方の水温が上昇しすぎた場合には、第1ヒータ70がオフされる。コントローラ67は、水洗槽13及び14の水温を監視しながら、第1ヒータ70又は第2ヒータ71のオンオフ制御と、流路切替え弁60c,60d,61c,61dによる流路の切替えとを適宜行い、各槽の水温を所定の許容範囲内に保つ。なお、水温が目標温度に対する許容範囲から外れ、例えば水温が大幅に下がった場合等には急速加熱モードに設定される。また、緊急時には、第1ヒータ70と第2ヒータ71とによって一つの水洗槽の水洗水をさらに急速に加熱できるようにしてもよい。
【0031】
低速加熱モードでは、コントローラ67は、保温モードと同様にして使用するヒータを選出し、選出されたヒータにより水洗槽13及び水洗槽14を加熱する。急速加熱モードに比べて加熱速度は緩やかになり、プリンタプロセッサ10の使用開始時刻前までに水温が目標温度に達するようにする。なお、周辺気温が低い等の理由で加熱速度が低下する場合を考慮して、水温が使用開始時刻までに目標温度に達することが不可能と判断されたときは急速加熱モードに再設定されるようにしてもよい。低速加熱モードでは、長時間を費やして緩やかな温度調節を行い、急速加熱モードに比べて熱効率が高くなる。
【0032】
急速加熱モード及び低速加熱モードにおいて、加熱中に各槽の水温変化がコントローラ67により検知されなかった場合、コントローラ67は該当するヒータの故障を検知する。コントローラ67は、温度変化に異常があると判断された水洗槽に対応するヒータを特定し、アラーム68によりプリンタプロセッサ10の内部に異常が発生したことを外部のオペレータ等に報知する。コントローラ67は、故障が検知されたヒータによる水温調節を停止し、正常に駆動しているヒータを使用して、水洗槽13及び水洗槽14の温度調節を開始する。これにより、プリンタプロセッサ10は継続して稼動することができる。なお、第1ヒータ70及び第2ヒータ71がともに故障した場合には、プリンタプロセッサ10の稼動が停止する。
【0033】
以上のようにして、水洗槽13及び水洗槽14は、保温時やプリンタプロセッサ10の使用開始までの時間が長い場合、一方のヒータが故障した場合には、一つのヒータによって水温調節が行われる。特に保温モードでは、水温の小さい変動に伴ってヒータをオンオフさせる必要をなくし、コントローラ67の負荷を軽減し、熱効率を高めて電力の節約が可能となる。また、2つのヒータの一方が故障した場合には、正常なヒータにより水温調節を行えるようにすることで、プリンタプロセッサ10を即時停止させずに済み、稼動率が高められる。
【0034】
なお、本発明は、プリンタプロセッサ10の水洗槽13〜16の水温調節に使用することに限られず、発色現像槽11や漂白定着槽12の液温調節に使用してもよい。この場合、図5に示すように、発色現像槽11の温度調節を行う循環系80と漂白定着槽12の温度調節を行う循環系81とが設けられる。循環系80は、循環パイプ80a,循環ポンプ80b,上流側の流路切替え弁80c,下流側の流路切替え弁80dを有している。同様に循環系81は、循環パイプ81a,循環ポンプ81b,上流側の流路切替え弁81c,下流側の流路切替え弁81dを有している。循環系81には、漂白定着液23の循環する液量を調節する流量制御弁81eが設けられている。
【0035】
循環系80に設けられたヒータ82は、循環パイプ80aに接続された液管82aと、循環系81の循環パイプ81aに接続された液管82bとが設けられている。循環系81に設けられたヒータ83は、循環パイプ81aに接続された液管83aと、循環系80の循環パイプ80aに接続された液管83bとが設けられている。液管82aは液管82bより管径が大きく、循環系80を循環する発色現像液22に対して伝熱効率が高くなるようにしている。また、液管83bは液管83aより管径が大きく、同様にして循環系81を循環する発色現像液22に対して伝熱効率が高くなるようにしている。
【0036】
発色現像槽11に貯溜される発色現像液22は、その液温が、例えば45度から誤差0.3度の範囲内に保たれる必要がある。漂白定着槽12に貯溜される漂白定着液23は、その液温が例えば水洗水29と同じ40度から誤差2度の範囲内に保たれる必要がある。このため、高温かつ高精度に保温する必要のある発色現像液22が循環する液管82aと液管83bとを太くし、伝熱効率を高めている。また、許容幅の広い低温域に保温される漂白定着液23が循環する液管82bと液管83aとを細くし、さらに、流量制御弁81eによって循環液量が制限されるようにしている。
【0037】
ヒータ82,ヒータ83がいずれも正常に駆動している場合には、流路切替え弁80c,80d,81c,81dにより、発色現像液22は循環系80を循環し、漂白定着液23は循環系81を循環する。ヒータ82,ヒータ83のいずれかが故障した場合には流路の切替えが行われ、正常なヒータにより発色現像液22と漂白定着液23の保温が行われる。漂白定着液23は、流量制御弁81eにより循環する液量が適宜調節され、液温が上昇しすぎることがないように制御される。
【0038】
また、本発明は、プリンタプロセッサ10に限られず、給湯器等の一般設備の水温調節に利用できる。また、温度調節器としては冷却により温度調節を行う冷却器も含む。また、液温調節に加えて、乾燥部10cの乾燥器等に適用して空気等の気体の温度調節を行ってもよい。液体や気体以外の流体として粉末状の固体のように流動性を有するものに対する温度調節を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】プリンタプロセッサを示す概略図である。
【図2】各水洗槽と循環系を示す平面図である。
【図3】循環系の模式図である。
【図4】ヒータと循環系の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態の循環系を示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
10 プリンタプロセッサ
11 発色現像槽
12 漂白定着槽
13,14,15,16 水洗槽
22 発色現像液
23 漂白定着液
29 水洗水
52a 取水口
52b 排出口
60,61,62,63,80,81 循環系
60a,61a,62a,63a,80a,81a 循環パイプ
60b,61b,62b,63b,80b,81b 循環ポンプ
60c,60d,61c,61d,62c,62d,63c,63d,80c,80d,81c,81d 流路切替え弁
66 サーミスタ
67 コントローラ
68 アラーム
70 第1ヒータ
71 第2ヒータ
72 第3ヒータ
73 第4ヒータ
70a,70b,71a,71b 水管
81e 流量制御弁
82,83 ヒータ
82a,82b,83a,83b 液管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する複数の容器と、
前記液体が個別に通過する複数の通路を有し各液体の温度を調節する複数の温度調節器と、
前記複数の容器のうちの一つの容器の液体を、前記複数の温度調節器の一つの通路に選択的に循環させるために前記容器毎に設けられる複数の循環手段とを有することを特徴とする複数の液体の温度調節装置。
【請求項2】
前記各液体を所定の温度にする際には、前記容器と前記温度調節器とを個別に接続して温度調節器毎に各容器の液体の温度を調節し、
前記各液体が所定の温度に達した後は、この温度を一定範囲内に維持するために、一つの温度調節器により各容器の液体の温度を調節することを特徴とする請求項1記載の複数の液体の温度調節装置。
【請求項3】
前記各温度調節器の故障を検知する故障検知手段を有し、この故障検知手段で故障を検知した温度調節器の代わりに正常な温度調節器の通路を用いて故障を検知した温度調節器に対応する容器の液体を温度調節することを特徴とする請求項1又は2記載の複数の液体の温度調節装置。
【請求項4】
前記液体は感光材料を水洗する液体であり、前記各容器内には前記感光材料を液体中で搬送させる感光材料搬送手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の複数の液体の温度調節装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−71944(P2006−71944A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254819(P2004−254819)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】