説明

親油性材料用包装体

本発明は、容器内部を取り囲む容器を含む包装体であって、前記容器内部と接している容器の少なくとも内面が、熱可塑性ポリマーならびに高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物を含有する組成物から製造されており、前記容器の少なくとも一部に親油性充填製品が充填されている包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器内部を取り囲む容器を含む包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)のような脆性硬質プラスチックに混合されて、可撓性および伸長性のような、加工時や使用時に望ましい特性を付与する物質である。工業的に適切な可塑剤およびそれらの使用については知られており、例えば、次の文献に記載されている:デービッド・F・キャドガン(David F.Cadogan)、クリストファー・J・ホーウィック(Christopher J.Howick)著:「可塑剤」、ウルマン工業化学百科事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)、電子版、第6版、第1〜6章、ワイリー・VCH(Wiley-VCH)発行、ヴァインハイム、2003年およびL・マイヤー(L.Meier)著:「可塑剤」、R・ゲヒター(R.Gachter)、H・ミュラー(H.Muller)編:プラスチック添加剤ハンドブック(Taschenbuch der Kunststoffadditive)、第3版、第341頁以降参照、ハンザー(Hanser)出版、ミュンヘン、1990年。
【0003】
PVC包装体の分野またはPVC製品が油またはガソリンと接触する分野において、油またはガソリンはPVC製品から可塑剤を溶解させることがある。これに関連して、例えば、積層体を基材とした包装容器の内層または全体がPVCから製造された包装容器には特有の問題が存在する。このような包装容器は内部の表面積が広いため、充填製品への可塑剤の移行が急速に起こり得る。充填製品への可塑剤のこのような移行を防止または最少化するために、高分子可塑剤が使用される。このような高分子可塑剤は通常、ジオール類とジカルボン酸類との高分子量ポリエステル類であり、移行する傾向が相対的に低いことにより特徴付けられるものである。しかしながら、高分子可塑剤の不都合は、高分子可塑剤が比較的高い粘度によって特徴付けられるために、加工性が劣悪なものにすぎないことである。非高分子であって低粘度の可塑剤の添加は高分子可塑剤の粘度を実際にある程度まで低下させるので、加工性を改善させるが、充填製品への当該可塑剤の移行が増加する。特に、充填製品が、例えば、包装体の中にある間に殺菌を目的としてオートクレーブ中、一般に約120℃で加熱される食品である場合、可塑剤が充填製品へこのように移行することが特に目立つ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】デービッド・F・キャドガン、クリストファー・J・ホーウィック著:「可塑剤」、ウルマン工業化学百科事典、電子版、第6版、第1〜6章、ワイリー・VCH発行、ヴァインハイム、2003年
【非特許文献2】L・マイヤー著:「可塑剤」、R・ゲヒター、H・ミュラー編:プラスチック添加剤ハンドブック、第3版、第341頁以降参照、ハンザー出版、ミュンヘン、1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、親油性材料用包装体、特に、内層(すなわち、充填製品と直接的に接触する層)の材料としてPVCを含み、充填製品として、例えば油またはガソリンのような親油性材料を収容できる包装体に関連して、先行技術で生じる不都合を克服することを目的としている。
【0006】
本発明は、頻繁にある比較的高い温度でも、親油性充填製品を可塑剤による汚染の危険なしに、長期の間、貯蔵できる方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に本発明は、容器内部を取り囲む容器を含む包装体であって、前記容器内部と接している容器の内面が熱可塑性ポリマー、好ましくはPVCから製造され、容器の最内層に含有される可塑剤が親油性充填製品に対する特に有利な移行特性により特徴付けられる包装体を提供することを目的とする。
【0008】
一般的には、独立請求項は、上記目的のうちの少なくとも1つを達成する。これらに従属する従属請求項は、それぞれの場合における本発明の好ましい実施態様である。
【0009】
上記した目的は以下に示す包装体により達成される:
容器内部を取り囲む容器を含む包装体であって、前記容器内部と接している容器の少なくとも内面が以下の成分:
熱可塑性ポリマー、および
高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物
を含有する組成物から製造されており、前記容器の少なくとも一部に親油性充填製品が充填されている包装体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
容器としては、当業者に既知のあらゆる容器形状のものが適切である。従って、容器は、例えば、缶、瓶、キャニスター、栓付きドラム缶(plugged drum)のようなドラム缶などであってもよい。しかし、非硬質の受け器、特に充填製品を少なくとも部分的に取り囲むインフレートフィルムも、本発明における「容器」として更に適切である。
【0011】
このような容器は親油性充填製品が少なくとも一部に、好ましくは少なくとも50体積%の範囲まで、特に好ましくは少なくとも75体積%の範囲まで、最も好ましくは少なくとも90体積%の範囲まで充填される(それぞれの値は当該容器が満たされ得る最大容積に基づいている)。親油性充填製品は20℃で液体の親油性物質であることが好ましい。本発明において適切な液状の親油性物質は水との混合物において2相系をもたらすあらゆる液体である。本発明において特に好ましい親油性物質は油、特に植物または動物由来の食用油、炭化水素または炭化水素混合物、例えばガソリンである。さらに適切な親油性充填製品は、脂肪含有食品であり、特に脂肪含有量が該食品の全重量に基づいて少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の食品である。言及されているこのような食品の具体例として、例えば、チーズ、肉またはソーセージが挙げられる。
【0012】
容器内部と接している容器ジャケット(container jacket)の少なくとも内面を製造する組成物は一つの成分として熱可塑性ポリマーを含有する。特に好ましい熱可塑性ポリマー類は次のものからなる群から選択されるポリマー類である:ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸エステル(PLA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン類、ポリエーテル類、ゴム、好ましくは硫黄によって架橋されたポリイソプレンの形態の天然ゴム、またはアクリロニトリルおよび1,3−ブタジエン(NBRゴム)、スチレンおよび1,3−ブタジエン、アクリル酸、スチレンおよびアクリル酸または酢酸ビニル、ポリブタジエン、上記ポリマー類の少なくとも2種のコポリマー類、特にポリエチレン/ポリプロピレンコポリマー類、を基剤とした合成ゴム、およびこれらのうち少なくとも2種の混合物。熱可塑性ポリマー類としては、PE、PP、PVC、PET、ゴムおよびPLAが特に好ましく、PVCおよびゴムが最も好ましい。
【0013】
PVCは塩化ビニルの単独重合により得られるものである。本発明の組成物中に含有されるPVCは、例えば、懸濁重合、マイクロ懸濁重合、乳化重合または塊状重合により製造できる。塩化ビニルの重合によるPVCの製造および可塑化PVCの製造および組成については、例えば、次の文献に記載されている:ベッカー/ブラウン(Becker/Braun)著、プラスチックハンドブック(Kunststoff-Handbuch)、第2/1巻、「ポリ塩化ビニル」、第2版、カール・ハンザー出版(Carl Hanser Verlag)、ミュンヘン。可塑剤およびPVCを含有する混合物の場合、可塑剤の含有量に応じて、硬質PVC(可塑剤0.1%未満)と可塑化PVC(可塑剤0.1%超)とに区別される。
【0014】
容器内部と接している容器ジャケットの少なくとも内面を製造する組成物は、一つの成分としての高分子可塑剤およびさらなる成分としてのポリオールエステルを含有する可塑剤組成物を一つの成分として含有する。
【0015】
高分子可塑剤はジカルボン酸および少なくとも1種のジオールのポリエステルが好ましく、当該ジカルボン酸はC−C20−ジカルボン酸が好ましく、当該ジオールはC−C20−ジオールが好ましい。本発明において、当該ポリエステルの末端基は単官能有機化合物とのエステルを含有することができる。このような末端基による停止(closing)は、例えば英国1173323または米国5,281,647に記載されているように、酸が過剰な場合はモノアルコールにより、またアルコールが過剰な場合はモノカルボン酸により、行うことができる。
【0016】
本発明において好ましいジカルボン酸は特に、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、トリデカン二酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、およびこれらのジカルボン酸の少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジカルボン酸類であり、好ましいジオールは特に、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量200〜1,000のポリエチレングリコール類、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコール類、ヒドロキシピバル酸モノネオペンチルグリコールエステル、およびこれらのジオールの少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジオール類である。
【0017】
上記したポリエステル可塑剤は、ジカルボン酸とジオールとを、任意に適切な停止基(closing groups)の存在下で、エステル化することによる、それ自体既知の方法で工業的に製造することができる。好ましい実施態様においては、例えば、アジピン酸および1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオールからなる群に由来する少なくとも1種のジオール、および任意のさらなるジオール類または停止基としてのモノカルボン酸類、ならびにエステル化触媒、例えばジアルキルチタネート類、メタンスルホン酸または硫酸、をはじめに反応槽へ導入し、混合物をまず、例えば100〜140℃に加熱し、撹拌することにより均一化する。その後、反応混合物を標準圧力下、例えば160〜190℃に加熱する。水を分離しながらエステル化を約150℃で開始する。形成された反応水は蒸留により蒸留塔を通じて分離する。その後、反応混合物を、例えば200〜250℃にさらに加熱し、例えば150〜300mbarの真空度を適用し、窒素の通過により、反応混合物から反応水をさらに除去する。反応混合物の酸価が15mgKOH/g未満の値に到達するまで、例えば200〜250℃で窒素を通過させながら、反応混合物を減圧下で撹拌する。反応混合物はその後、任意に、第2槽へポンプ輸送し、当該反応混合物の酸価が1.0mgKOH/g未満の値に到達するまで、例えば200〜250℃の温度で、例えば10〜150mbarの真空度下、増加させた窒素流の通過により残留水を除去しながら、撹拌して、遊離ヒドロキシル基のエステル化を好ましく行うことができる。その後、反応混合物を、例えば80〜140℃で濾過することも好ましい。このような工程は、例えばWO−A−2003/018686で詳細に説明されている。
【0018】
本発明においては、上記したポリエステル可塑剤は、ブルックフィールド法により20℃で測定される粘度が少なくとも500mPas、特に好ましくは少なくとも750mPas、最も好ましくは少なくとも1,000mPasであることがさらに好ましく、このようなポリエステルの粘度は通常、500〜20,000mPasの範囲内であり、好ましくは750〜15,000mPasの範囲内、最も好ましくは1,000〜5,000mPasの範囲内である。
【0019】
可塑剤組成物に含有されるポリオールエステルはC−C10−モノカルボン酸とジオール、トリオールまたはテトラオールとのエステルであることが好ましい。
【0020】
本発明においては、C−C10−モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸およびこれらのモノカルボン酸類のうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるモノカルボン酸であることが好ましく、ジオール、トリオールまたはテトラオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジグリセロールおよびこれらのトリオール類またはテトラオール類のうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるジオール、トリオールまたはテトラオールであることが好ましい。特に非常に好ましいポリオールエステル類はトリオール類またはテトラオール類のトリアセテート類およびトリプロピオネート類であり、ポリオールエステルとして最も好ましいのは、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、グリセロールトリプロピオネートまたはグリセロールトリアセテートおよびグリセロールトリプロピオネートの混合物である。
【0021】
ポリオールエステル類は、モノカルボン酸類およびトリオール類またはテトラオール類から、適切な触媒、例えばDE−A−3004660でトリアセチン用として記載されているもの、の存在下での単なるエステル化により製造される。DE−A−3004660によれば、トリアセチンは、グリセロールと酢酸との反応および無水酢酸による後アセチル化(post-acetylation)により連続的に得ることができる。本明細書中、グリセロールおよび酢酸は2.5:1〜5:1の比率で向流中、互いに反応し、例えば、0.2〜30barの圧力下、180〜250℃にて、複数のダブルバブルトレーを備えたエステル化カラム中、過熱酢酸蒸気の上昇流に対して向流で液体グリセロールを通過させる。反応混合物の対流時間は通常、少なくとも1時間である。OH価が600未満に到達したら、当該カラムの底または対応する後反応器において、下方に流れる混合物へ無水酢酸を、液体反応相に溶解されている水および存在するモノおよびジアセチンが定量的に反応して酢酸を与えることができるような量で添加する。ここでは、反応するべきグリセロール1molあたり0.1〜1.5molの無水酢酸が使用されることが好ましい。触媒、好ましくは0.01〜0.5重量%のp−トルエンスルホン酸、が存在する場合、圧力は0.2〜3barまで低下させることができ、反応温度は100〜180℃まで低下させることができる。
【0022】
本発明によれば、可塑剤組成物は、ブルックフィールド法により20℃で測定される粘度が8,000mPas未満、特に好ましくは6,000mPas未満、最も好ましくは4,000mPas未満であることがさらに好ましい。
【0023】
組成物は、熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物以外に、このような2種の成分とは異なる少なくとも1種の添加剤を含有することができる。ここで適切な添加剤は、特に、安定剤、潤滑剤、充填剤、顔料、難燃剤、光安定剤、発泡剤、高分子加工補助物質(polymeric processing auxiliary substances)、衝撃改良剤、蛍光増白剤、帯電防止剤または生物安定剤(biostabilizers)である。本発明において適切な安定剤、潤滑剤、充填剤、顔料、難燃剤、光安定剤、発泡剤、特に、例えば炭酸カルシウムのような炭酸塩を基剤とした発泡剤、高分子加工補助物質、衝撃改良剤、蛍光増白剤、帯電防止剤または生物安定剤として使用可能な添加剤としては、特に、WO−A−2003/018686において記載されている、このような成分が挙げられる。このような添加剤が好ましく使用される量もまた、WO−A−2003/018686において見つけることができる。
【0024】
本発明の包装体の好ましい実施態様においては、容器内部と接している容器ジャケットの少なくとも内面を製造する組成物は以下の成分:
I)該組成物の総重量に基づいて40〜90重量%、特に好ましくは45〜80重量%、最も好ましくは50〜70重量%の熱可塑性ポリマー;
II)該組成物の総重量に基づいて10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%、最も好ましくは30〜40重量%の可塑剤組成物;および
III)該組成物の総重量に基づいて0〜25重量%、特に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは2〜5重量%の、成分I)およびII)とは異なる添加剤少なくとも1種;
を含有し、該成分I)、II)およびIII)の量が合計100重量%になる。
【0025】
本発明の包装体の第1の特有の実施態様においては、容器は多層積層体であり、容器内部に面している容器の最内層は上記した組成物から製造されている。本発明において、当該最内層の層厚は10〜500μm、特に好ましくは20〜250μm、最も好ましくは50〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、包装用積層体としては、包装体、特に脂肪含有食品または油含有食品用包装体、の製造に常套的に使用されているあらゆる積層体が適切である。一般には、このような積層体は補強用基層(通常、紙、板紙または厚紙)を含有し、その2つの表面には、熱可塑性ポリマー層、例えば、ポリエチレン層、ポリプロピレン層、ポリエステル層またはポリアミド層が適用されている。気体の透過を抑えることができるバリア層、例えばアルミニウム箔、をさらに中間層として備えることもできる。容器ジャケットにおける、この積層体のような実施態様においては、当該積層体の最内層(すなわち、最後には食品と直接的に接触する層)は上記した組成物から製造されている。
【0027】
このような場合において、本発明の包装体は、例えば、以下の工程を含む方法により得ることができる:
a)積層体前駆体を供給する工程;
b)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、前記積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ適用する工程;
c)前記積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
d)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
e)このようにして得られた積層体から、工程b)で適用された層が容器内部に面するように、容器を形成する工程;
f)前記容器に親油性充填物質を充填する工程;
g)前記充填された容器を閉鎖する工程。
【0028】
工程a)においては、積層体前駆体を初めに提供する。このような積層体前駆体は、例えば、最内層が未だ適用されていない常套的な包装用積層体であってもよい。
【0029】
工程b)においては、その後、前記積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ、粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を適用する。工程b)において適用される組成物は、40℃で測定されるブルックフィールド粘度が1,000〜10,000mPas、特に好ましくは2,000〜8,000mPas、最も好ましくは3,000〜6,000mPasの範囲内にあるペースト状組成物が好ましい。
【0030】
このようなポリマーペースト、好ましくはこのようなPVCペーストの製造は当業者に既知の方法およびやり方により行うことができる。このような製造のためには、微細に分割された熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは粒径0.1〜100μm、特に好ましくは1〜30μmの粒子を、任意にさらなる添加剤、例えば充填材とともに、可塑剤組成物中に常套的に分散させる。可塑化熱可塑性ポリマー類、特に可塑化ポリ塩化ビニルの製造方法は、例えば、L.マイヤー(L.Meier)によって知られている:「可塑剤」、R・ゲヒター(R.Gachter)、H・ミュラー(H.Muller)(編):プラスチック添加剤ハンドブック(Taschenbuch der Kunststoffadditive)、第3版、第350〜357頁、ハンザー(Hanser)出版、ミュンヘン、1990年。特にPVCペーストの製造に関するさらに詳しい記載は以下の文献の7.3章「PVCペーストの製造」でも見つけることができる:「プラスチックハンドブック(Kunststoffhandbuch) ポリ塩化ビニル 第2/2巻」、ハンスK.フェルガー(Hans K.Felger)編、1986年、カール・ハンザー出版(Karl Hanser Verlag)、ミュンヘン/ウィーン。
【0031】
積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へのポリマーペーストの適用は、当業者がポリマーペーストを積層体ウェブへ適用するに際して適切と考えるあらゆる方法により実施することができる。ポリマーペーストは、積層体ウェブに対して、はけ塗りまたはロール塗りにより適用することが特に好ましい。
【0032】
本発明の方法における工程c)においては、積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する。ゲル化の間、熱可塑性ポリマー粒子、好ましくはPVC粒子は可塑剤組成物中に少なくとも部分的に溶解するため、均一かつ固形で、多かれ少なかれ弾性のある可塑化材料が得られる。熱可塑性ポリマーとしてPVCを用いる場合、ポリマーペーストが工程c)で加熱される温度は通常、160〜220℃である。
【0033】
本発明の方法における工程d)においては、ゲル化した組成物を、その後、冷却させる。
【0034】
冷却後、工程e)においては、このようにして得られた積層体から、工程b)で適用された層が容器内部に面するように、容器を形成する;容器の形成は、例えばDE2412447OSで記載されているように、初めに積層体の包装体用ブランクを型押しした後、折り重ねおよび封止して容器に加工することにより行うことができ、封止は好ましくは積層体の熱可塑性外層を介して常套的に行われる。
【0035】
工程f)においては、その後、このような容器に親油性充填物質を充填し、工程g)においては、このように充填された包装体を閉鎖する。包装体の閉鎖は同様に、積層体の好ましくは熱可塑性外層の封止により行うことが好ましい。
【0036】
本発明の包装体の第2の特有の実施態様においては、容器は多層積層体から形成されないが、本質的に上記した熱可塑性組成物から製造される。このことに関連して、容器は、該容器の総重量に基づいて少なくとも50重量%の範囲まで、特に好ましくは少なくとも75重量%の範囲まで、より好ましくは少なくとも95重量%の範囲まで、最も好ましくは100重量%まで、上記した熱可塑性組成物から製造されていることが特に好ましい。
【0037】
このような包装体は、例えば、以下の工程を含む方法により得ることができる:
A)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、容器を成形する射出成形用金型へ導入する工程;
B)前記射出成形用金型内の組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
C)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
D)前記射出成形用金型から容器を取り出す工程;
E)前記容器に親油性充填物質を充填する工程;
F)前記充填された容器を閉鎖する工程。
【0038】
工程A)においては、粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、容器を成形する射出成形用金型へ導入する。本実施態様において組成物としては、上記したPVCペーストを使用することも好ましい。PVCペーストから射出成形法により造形品を製造することは、例えばEP−A−442099から、当業者に知られている。工程B)において、このようにして導入された組成物のゲル化を目的とした加熱は、上記した条件下で行うことが好ましい。容器を射出成形用金型から取り出した後は、当該容器に親油性充填製品を充填し、その後、工程F)において閉鎖する。本実施態様においては、当業者に既知の閉鎖系、例えば、ねじ込みクロージャー、王冠コルクなどを使用することができる。ゲル化後に得られた射出成形体の工程C)における冷却は、もちろん、工程D)の前に、間にまたは後で行うことができる。
【0039】
上記した本発明の包装体の第2の特有の実施態様に係る包装体、特にインフレートフィルムに基づく包装体はさらに、以下の工程を含む方法により得ることができる:
i)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、インフレートフィルム製造装置へ導入する工程;
ii)前記インフレートフィルム製造装置内の組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
iii)前記ゲル化した組成物を環状ダイから押し出し、該ゲル化した組成物から形成されたチューブを空気により膨張させる工程;
iv)前記チューブを冷却し、インフレートフィルムを得る工程;
v)前記インフレートフィルムで親油性充填製品を包装する工程。
【0040】
このような方法において工程i)では、粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、初めに、インフレートフィルム製造装置へ導入し、工程ii)において、そこで該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する。
【0041】
このようなインフレートフィルム製造装置の最も重要な構成要素は押出機である。このような押出機は、本質的には、中で可塑化スクリューが回転する加熱式金属製バレルを含むものである。当該スクリューの目的は、組成物または下流で形成されるゲル化組成物を搬送すること、当該材料を剪断力(摩擦)によりゲル化させて均質化すること、およびゲル化した組成物を狭いダイギャップに強制的に通すのに必要な圧力を発生させることである。組成物は取り入れ領域でホッパーからスクリュー上に導入されることが好ましく、その後に押出機により搬送される間にゲル化され、混合される。
【0042】
工程iii)においては、その後、ゲル化した組成物を環状ダイに強制的に通す。形成された溶融チューブは空気により膨張させ、工程iv)において、冷却用空気により外側から、および任意に内側から冷却する。インフレートフィルムの幅および厚みはやはり本工程において特定される。
【0043】
このようにして得られたインフレートフィルムは、工程v)において親油性充填製品の包装に使用される前に、任意に予めしぼませた後、巻き上げておくこともできる。
【0044】
原則として、インフレートフィルムは幾つかの層を含むこともでき、当該層はインフレートフィルム押出ダイにおいて互いにすぐ続いて設けられるものである。しかしながら、本発明においては、多層インフレートフィルムにおける少なくとも、包装されるべき親油性充填物質と直接的に接触する層は上記した組成物から製造されることが好ましい。
【0045】
次に、限定されない実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
実施例1〜3
単に混合することにより、以下の4種の可塑剤組成物を調製する:
実施例1 エデノール(Edenol)TM1215(ポリオールエステルを基剤とした高分子可塑剤、エメリー・オレオケミカルズ・ヨーロッパ社製、デュッセルドルフ)−本発明の範囲外
実施例2 500gのエデノールTM1215+200gのトリアセチン−本発明の範囲内
実施例3 エデノールTM1234(ポリオールエステルを基剤とした高分子可塑剤、エメリー・オレオケミカルズ・ヨーロッパ社製、デュッセルドルフ)−本発明の範囲外
実施例4 500gのエデノールTM1234+200gのトリアセチン−本発明の範囲内
【0047】
4種の可塑剤組成物の粘度をブルックフィールド法により20℃で測定する。
【表1】

【0048】
実施例5〜8
実施例1〜4由来の可塑剤組成物を用いてワーナー・マティスAG(Werner Mathis AG)社製の溶解機によりPVCペーストを調製する(材料の量200g)。分散を室温(約20℃)および真空(約100mbar)中で行った。当該組成物を以下で説明する(実施例5〜8)。
実施例5:
PVCソルビン(Solvin)271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノール(Stabinol)VCZ2001/1 3重量部および実施例1由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲外;
実施例6:
PVCソルビン271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノールVCZ2001/1 3重量部および実施例2由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲内;
実施例7:
PVCソルビン271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノールVCZ2001/1 3重量部および実施例3由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲外;
実施例8:
PVCソルビン271PC 100重量部、エデノールD81 3重量部、スタビノールVCZ2001/1 3重量部および実施例4由来の可塑剤組成物70重量部−本発明の範囲内;
コグニス社(デュッセルドルフ)製エポキシ可塑剤
コグニス社(デュッセルドルフ)製Ca−Zn安定剤
【0049】
PVCペーストをマティス熱試験機(Mathis Thermotester)(ワーナー・マティスAG社製)でゲル化し、分出しした化合物(sheeted-out compounds)を得た(180℃、3分間)。可塑剤の移行特性を測定するために、このようにして得られた分出し化合物の重量変化を、i−オクタン中での貯蔵後に測定した。このために、試験片(3×10cm)を200mlのi−オクタン中、60℃で4時間貯蔵した。その後、試験片を最初に室温で12時間乾燥させた後、60℃で24時間乾燥させ、重量差を測定した。以下の値を測定した:
【0050】
【表2】

【0051】
測定結果より、短鎖モノカルボン酸のポリオールエステル(トリアセチン)により、高分子可塑剤エデノールTM1215およびエデノールTM1234の粘度を顕著に低下させることができるが(表1参照)、親油性溶剤i−オクタンへの移行特性は悪化しなかったことが示されている(表2参照)。このため、高分子可塑剤と短鎖モノカルボン酸のポリオールエステル(トリアセチン)との本発明の可塑剤の組み合わせは、親油性充填物質のための包装容器において、容器内部に面して親油性充填物質と接触することがある高分子層の製造に使用されるPVCペースト用可塑剤として特に適している。このような組成物は粘度が低いため、当該組成物は、特に簡便な方法において、例えばはけ塗りにより、一定密度により特徴付けられる均質層として適用することができるし、または容器を製造するための射出成形法において特に有利に使用することができる。このような組成物は、粘度が低いため、インフレートフィルムの製造に特に有利に使用することもできる。親油性物質に対する有利な移行特性のため、容器から、または容器の内層から、充填された製品へ移行する可塑剤はほんの僅かしかない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部を取り囲む容器を含む包装体であって、前記容器内部と接している容器の少なくとも内面が以下の成分:
熱可塑性ポリマー、および
高分子可塑剤およびポリオールエステルを含有する可塑剤組成物
を含有する組成物から製造されており、前記容器の少なくとも一部に親油性充填製品が充填されている包装体。
【請求項2】
前記容器が多層積層体であり、容器内部に面している容器の最内層が請求項1で規定された組成物から製造されている請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
以下の工程を含む方法により得ることができる、請求項2に記載の包装体:
a)積層体前駆体を供給する工程;
b)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物を混合することにより得ることができる組成物を、前記積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ適用する工程;
c)前記積層体前駆体の2つの表面のうちの少なくとも一方へ適用された組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
d)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
e)このようにして得られた積層体から、工程b)で適用された層が容器内部に面するように、容器を形成する工程;
f)前記容器に親油性充填物質を充填する工程;
g)前記充填された容器を閉鎖する工程。
【請求項4】
容器が、該容器の総重量に基づいて少なくとも50重量%の範囲まで請求項1で規定された組成物から製造されている請求項1に記載の包装体。
【請求項5】
以下の工程を含む方法により得ることができる、請求項4に記載の包装体:
A)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物を混合することにより得ることができる組成物を、容器を成形する射出成形用金型へ導入する工程;
B)前記射出成形用金型内の組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
C)前記ゲル化した組成物を冷却する工程;
D)前記射出成形用金型から容器を取り出す工程;
E)前記容器に親油性充填物質を充填する工程;
F)前記充填された容器を閉鎖する工程。
【請求項6】
以下の工程を含む請求項4に記載の方法:
i)粒状形態の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤組成物ならびに任意のさらなる上記添加剤少なくとも1種を混合することにより得ることができる組成物を、インフレートフィルム製造装置へ導入する工程;
ii)前記インフレートフィルム製造装置内の組成物を、該組成物のゲル化に十分な温度に加熱する工程;
iii)前記ゲル化した組成物を環状ダイから押し出し、該ゲル化した組成物から形成されたチューブを空気により膨張させる工程;
iv)前記チューブを冷却し、インフレートフィルムを得る工程;
v)前記インフレートフィルムで親油性充填製品を包装する工程。
【請求項7】
熱可塑性ポリマーがポリ塩化ビニル(PVC)である請求項1〜6のいずれかに記載の包装体。
【請求項8】
ポリオールエステルがC−C10−モノカルボン酸とトリオールまたはテトラオールとのエステルである請求項1〜7のいずれかに記載の包装体。
【請求項9】
ポリオールエステルがグリセロールトリアセテートである請求項1〜8のいずれかに記載の包装体。
【請求項10】
高分子可塑剤がジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとのポリエステルである請求項1〜9のいずれかに記載の包装体。
【請求項11】
高分子可塑剤が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸およびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ジペンタエリトリトールおよびこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される多官能アルコールとのエステルである請求項10に記載の包装体。
【請求項12】
容器内部と接している容器内面を製造する組成物が以下の成分:
I)該組成物の総重量に基づいて40〜90重量%の熱可塑性ポリマー;
II)該組成物の総重量に基づいて10〜60重量%の可塑剤組成物;および
III)該組成物の総重量に基づいて0〜25重量%の、成分I)およびII)とは異なる添加剤少なくとも1種;
を含有し、該成分I)、II)およびIII)の量が合計100重量%になる請求項1〜11のいずれかに記載の包装体。
【請求項13】
親油性充填製品が脂肪含有食品、油、炭化水素または炭化水素混合物である請求項1〜12のいずれかに記載の包装体。

【公表番号】特表2013−518775(P2013−518775A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551547(P2012−551547)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000481
【国際公開番号】WO2011/095333
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511133646)エメリー・オレオケミカルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】EMERY OLEOCHEMICALS GMBH
【Fターム(参考)】