説明

角度調整金具

【課題】ヘッドレスト、肘掛け部、フットレスト等のレスト部が起立方向に揺動するのを防止し、最終傾倒状態を確実に保持する角度調整金具を提供する。
【解決手段】リクライニングするレスト部3を備えたソファーに用いられ、レスト部3の起立方向Aへの揺動を可能としつつ傾倒方向Bへの揺動を多段階で阻止して所望の傾斜角度で保持する角度調整金具に於て、レスト部3の起立方向Aへの揺動を抑制する回転抵抗モーメントMを付与する弾発部材2を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソファーに用いる角度調整金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソファーに設けられたヘッドレスト、肘掛け、フットレスト等を、リクライニング可能とする角度調整金具が広く使用されている。
本発明者は、特許文献1記載のように、リクライニング箇所の起立方向への揺動を可能としつつ傾倒方向への揺動を阻止してリクライニング箇所を所定多段階の傾斜角度で保持できる角度調整金具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4296223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の角度調整金具は、ヘッドレスト等の傾倒方向への揺動を多段階に規制してリクライニング箇所の姿勢を保持する構造であるため、逆の起立方向へはカチカチと音をたてつつ、極めて軽く揺動する。そのため、ソファーに腰掛ける人の荷重を受けて座部の表皮が沈み、背もたれ部の表皮が下方へ引きずられると、表皮の張力によりヘッドレスト等が起き上がる方向に引っ張られて不意に起立してしまい、所望の最終傾倒状態が保持できない欠点があった。
また、ソファーの製造段階や張り替え作業の際に、表皮を引っ張るとリクライニング箇所が起立方向に揺動してしまい、最終傾倒状態を保持しながら作業を行うことができないため、表皮に皺が生じないような十分に大きい張力をもって表皮を外装することが至難であった。
【0005】
そこで、本発明は、ヘッドレスト、肘掛け部、フットレスト等のレスト部が起立方向に揺動するのを防止し、最終傾倒状態を確実に保持する角度調整金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るソファー用の角度調整金具は、リクライニングするレスト部を備えたソファーに用いられ、該レスト部の起立方向への揺動を可能としつつ傾倒方向への揺動を多段階で阻止して所望の傾斜角度で保持する角度調整金具に於て、上記レスト部の起立方向への揺動を抑制する回転抵抗モーメントを付与する弾発部材を設けたものである。
【0007】
また、上記レスト部に取着される揺動片部と、上記ソファーの固定側に固着される取付片部と、該取付片部に非回転状に組立てられると共に上記揺動片部と該取付片部とを枢結した枢結ピン部材とを、備え、上記弾発部材を渦巻きばねとして、該渦巻きばねの外端部を、上記揺動片部の一部に止着し、かつ、上記渦巻きばねの内端部を、上記枢結ピン部材に止着したものである。
また、上記レスト部に取着される揺動片部と、上記ソファーの固定側に固着される取付片部と、上記揺動片部と該取付片部とを枢結した枢結ピン部材とを、備え、上記弾発部材をねじりコイルばねとして、該ねじりコイルばねを上記枢結ピン部材に巻設し、かつ、上記ねじりコイルばねの一端部を、上記揺動片部の一部に止着し、かつ、他端部を、上記取付片部の一部に止着したものである。
【0008】
また、上記揺動片部の揺動軸心を中心として円形状に形成される一対の平行な壁部と、該壁部の各々に上記揺動軸心を対称軸として回転対称位置に配設された偶数のくさび形窓部と、該くさび形窓部内にて移動可能とすると共に上記揺動軸心を中心として180度の回転対称位置に配設されかつ一面側に歯面を有する一対の浮動くさび部材と、上記壁部の間に設けられると共に上記揺動軸心を中心として上記歯面に噛合可能な外歯状に形成される一対の円弧状ギヤ部と、上記浮動くさび部材を上記ギヤ部に常時弾発付勢するバネ線材と、を具備したものである。
また、上記壁部と、上記くさび形窓部と、上記浮動くさび部材と、上記ギヤ部と、上記バネ線材を、上記揺動軸心方向から取付けられる一対の円盤状カバー部材間に収納して組立てられる枢結部が構成され、該枢結部の厚さ寸法に対して、上記弾発部材の厚さ寸法を15%〜100%の大きさに設定しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の角度調整金具によれば、回転抵抗モーメントによりレスト部がソファーの表皮に引っ張られて起立方向へ揺動するのを防止でき、レスト部を最終傾倒状態としたままソファーを使用したい時に、レスト部が思いがけずに起き上がることなく安定して姿勢を保持できる。また、最終傾倒状態までレスト部を倒した姿勢を保持しながら表皮に適当な張力をもたせて張設することができ、レスト部を起立状態として使用する際にも、表皮に皺を生じたり、弛むことがなく、見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の角度調整金具の使用箇所の例を示した簡略斜視図である。
【図2】本発明に係る角度調整金具の実施の一形態を示した一部破断正面図である。
【図3】角度調整金具を示した一部破断側面図である。
【図4】角度調整金具を示した底面図である。
【図5】本発明の角度調整金具を使用したソファーの斜視説明図である。
【図6】角度調整金具を例示した断面正面図である。
【図7】角度調整金具を例示した断面正面図である。
【図8】角度調整金具の作用を説明する要部拡大正面図である。
【図9】本発明の角度調整金具の他の実施形態を示した斜視図である。
【図10】角度調整金具の他の実施形態を示した正面図である。
【図11】角度調整金具の他の実施形態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1及び図5に示すように、本発明の角度調整金具は、リクライニングするレスト部3を備えたソファーSに用いられる。角度調整金具1…は、ソファーSに複数個取付けられ、ソファーSの固定側に複数のレスト部3…を揺動自在として取着している。図1及び図5に例示するソファーSは、脚部42,42にて支持され、脚部42,42に固定された座部41と背もたれ部40を有している。また、ソファーSは、レスト部3…として、背もたれ部40の上端にヘッドレスト部30を、座部41の前端にフットレスト部31を、座部41の両側に肘掛け部32,32を、角度調整金具1,1をもって取り付けている。ソファーSは、固定側からレスト部3…にわたって連続状の表皮Eで外装している。表皮Eは、レスト部3…を可動域限界まで傾倒方向Bへ揺動させた最終傾倒状態に於て、レスト部3…が起立姿勢となった際に生じる皺が少ないように、適当な張力をもって張設されている。
角度調整金具1,1は、レスト部3を起立方向Aへ揺動可能とし、かつ、傾倒方向Bへの揺動を多段階で阻止して所望の傾斜角度で保持できるように構成されている。
【0012】
そして、図2に示すように、角度調整金具1は、レスト部3の起立方向Aへの揺動を抑制する回転抵抗モーメントMを付与する弾発部材2を設けている。弾発部材2は、後述のように、ソファーSの表皮Eが何らかの荷重を受けて、最終傾倒状態のレスト部3に作用する張力に対抗して、レスト部3を最終傾倒状態にて保持できる程度の抵抗力をもって起立方向Aへの揺動を抑制している。
なお、本発明に於て、「揺動を多段階で阻止する」とは、レスト部3を最終傾倒状態から起立方向Aに揺動させて最終起立状態とする範囲で、等ピッチで10段階以上の姿勢保持角度を設定し、起立方向Aに揺動したレスト部3が傾倒方向Bに戻らないように段階的に規制することを意味する。
これを、ヘッドレスト部30を例として、具体的に説明すれば、ヘッドレスト部30を水平姿勢とした最終傾倒状態から鉛直姿勢とする範囲で、等ピッチで例えば16段階の姿勢保持角度を設定し、前方(起立方向A)に揺動したヘッドレスト部30が後方(傾倒方向B)に戻らないように段階的に規制している。あるいは、フットレスト部31を例として、具体的に説明すれば、フットレスト部31を鉛直姿勢とした最終傾倒状態から水平姿勢とする範囲で、等ピッチで例えば16段階の姿勢保持角度を設定し、上方(起立方向A)に揺動したフットレスト部31が下方(傾倒方向B)に戻らないように段階的に規制している。
【0013】
さらに、詳しく説明すると、図2〜図4に示すように、レスト部3に取着される揺動片部11と、ソファーSの固定側に固着される取付片部12と、取付片部12に非回転状に組立てられると共に揺動片部11と取付片部12とを枢結した枢結ピン部材13とを、備えている。枢結ピン部材13は、取付片部12に嵌合しつつ、揺動片部11を揺動軸心X廻りに揺動自在として枢着している。枢結ピン部材13は、一端を大径のヘッド33とし、このヘッド33に揺動軸心X方向に直交状の係止溝13aを形成している。枢結ピン部材13の他端は、小径として、組立状態でカシメ等によって抜止めされている。
弾発部材2は、渦巻き状の金属製ゼンマイばねから成る渦巻きばね20であって、くの字状に折り曲げた外端部22を、揺動片部11の基端部寄りに突設した係止部11aに止着し、かつ、略直角に折り曲げた内端部21を、枢結ピン部材13の係止溝13aに止着している。渦巻きばね20は、最終傾倒状態のレスト部3に於て、緊張状態の表皮Eがさらに荷重を受けても、揺動片部11の起立方向Aへの揺動を抑制して、レスト部3が起立しない程度の抵抗力を回転抵抗モーメントMとして弾発的に揺動片部11に付与している。
【0014】
図2、図6及び図7に示すように、角度調整金具1は、揺動軸心Xを中心として円形状に形成される一対の平行な壁部12a,12aと、壁部12a,12aの各々に揺動軸心Xを対称軸として回転対称位置に配設された4つのくさび形窓部5,5,5,5と、くさび形窓部5内にて移動可能とすると共に揺動軸心Xを中心として180度の回転対称位置に配設されかつ一面側に歯面4aを有する一対の浮動くさび部材4,4と、壁部12a,12aの間に設けられると共に揺動軸心Xを中心として歯面4aに噛合可能な外歯状に形成される一対の円弧状ギヤ部11b,11bと、浮動くさび部材4,4をギヤ部11b,11bに常時弾発付勢するバネ線材6,6と、を具備している。
壁部12a,12aは、取付片部12に延設され、ギヤ部11b,11bを内装可能な対面板状に形成され揺動軸心Xと同心状の中心孔を貫設している。
くさび形窓部5は、揺動軸心X寄りの内方側を円弧面5bとし、外方側に円弧状のくさび面5aを形成している。各くさび面5aは、揺動軸心Xと偏心し、かつ、揺動軸心Xを対称軸として90度毎の回転対称位置となる誘導軸心Yを順次中心として形成されている。つまり、図6に於ける時計廻り方向に近づくにつれて、くさび面5aとギヤ部11bの間が次第に小さくなる(縮小する)ように形成されている。また、内方側の円弧面5bから突設し、浮動くさび部材4を誘導する浮動段付部8を形成している。また、ギヤ部11bと噛合していない状態(噛合解除状態)の浮動くさび部材4を収納可能な退避空間部9を有している。
【0015】
一対の浮動くさび部材4,4は、180度の回転対称位置に配設されたくさび形窓部5,5に、各々挿通されている。浮動くさび部材4は、壁部12a,12aの間隙寸法よりも僅かに大きく形成され、くさび形窓部5に挿通した状態で、壁部12a,12aの外側面から両側端部を突出している。浮動くさび部材4は、一面側を歯面4aとし、かつ、他面側にくさび面5aに当接する円弧状の当接面4bを形成している。浮動くさび部材4は、浮動段付部8に当接して、ギヤ部11bから離間する方向に自らを誘導する誘導勾配面14を有している。誘導勾配面14は、歯面4aの後縁部に形成されている。
一対のギヤ部11b,11bは、壁部12a,12aの間にて揺動軸心X廻りに揺動可能に枢結されている。ギヤ部11b,11bは、揺動片部11に貫設され浮動くさび部材4を挿通可能な逃がし窓部18,18に、揺動軸心Xを対称軸として180度の回転対称位置に外歯状に形成されている。ギヤ部11b,11bは、揺動片部11の基端部に応力集中が発生しにくい形状となっている。また、ギヤ部11bは、一端部側(噛合終点部側)に、浮動くさび部材4を退避空間部9へ押圧する押込突部15が形成され、他端部側(噛合始点部側)に、退避空間部9に収納された浮動くさび部材4を押し出す押出突部16が形成されている。
バネ線材6は、所定長さに切断され、一文字状に形成されている。バネ線材6は、一方端を直線状とし、他方端を鉤状乃至円形状に曲げ加工して支持部17に外嵌している。バネ線材6は、当接面4bに接触して円弧状に弾性変形しており、浮動くさび部材4に復元力を常に弾発付勢している。
ギヤ部11bが揺動し、歯面4aがギヤ部11bに噛合して浮動くさび部材4が移動した際に、当接面4bは、くさび面5aに案内され、浮動くさび部材4をギヤ部11bとくさび面5aの間にくさび状に配設させるように形成している。つまり、浮動くさび部材4は、歯面4aがギヤ部11bに噛合し、かつ、当接面4bがくさび面5aに当接し、ギヤ部11b(揺動片部11)が、一方向(傾倒方向B)へ揺動するのを規制している。
【0016】
壁部12a,12aは、薄型円形状(円盤状)のカバー部材7,7によって揺動軸心X方向から挟まれている。枢結ピン部材13は、壁部12a,12aと、ギヤ部11b,11bと、カバー部材7,7とを、同心状に枢着している。つまり、壁部12a,12aと、くさび形窓部5,5,5,5と、浮動くさび部材4,4と、ギヤ部11b,11bと、バネ線材6,6とを、組立てて、カバー部材7,7間に収納して、枢結部10が構成されている。
弾発部材2の厚さ寸法dは、枢結部10の厚さ寸法Wに対して、15%〜100%の大きさに設定している(図3参照)。弾発部材2の厚さ寸法dが、枢結部10の厚さ寸法Wの15%より小さいと、弾発部材2の十分な強度及び剛性を確保できず、レスト部3の最終傾倒状態を安定して保持できない。また、弾発部材2の厚さ寸法dが、枢結部10の厚さ寸法Wの100%より大きいと、角度調整金具1の幅寸法が過大となり、ソファーSへの取付けが制限される虞れがある。
なお、角度調整金具1は、(図示省略するが)爪とギヤ歯との噛合によるラチェット機構を有するものでもよく、本発明の要旨を変更しない程度であれば設計の変更が可能である。
【0017】
上述した本発明の角度調整金具の使用方法(作用)について説明する。
まず、図1及び図5に示すソファーSを製作する工程、又は、表皮Eの張り替え作業に於て、ソファーSの固定側からレスト部3にかけて表皮Eを張設する。この際、レスト部3をソファーSの固定側に取り付ける角度調整金具1,1は、弾発部材2による回転抵抗モーメントMをもってレスト部3の起立方向Aへの揺動を抑制する。レスト部3が最終傾倒状態を保持しつつ、表皮Eに適度な緊張状態を与えて張るため、レスト部3を起立して使用する際に、表皮Eに余裕が生じても殆ど皺を生じない。
【0018】
次に、レスト部3を傾倒方向Bへ可動域限界まで、つまり、最終傾倒状態に揺動させたソファーSに於て、人が腰掛けて座部41及び背もたれ部40に荷重がかかると、座部41の表皮Eが人の荷重により沈み込み、又は、背もたれ部40の表皮Eが下方へ引きずられ、レスト部3に作用する張力が増大する。この際、弾発部材2は、回転抵抗モーメントMを抵抗力としてレスト部3の起立方向Aへの揺動を抑制し、確実に最終傾倒状態にて保持する。
【0019】
その後、図6及び図8(a)に示す最終傾倒状態からレスト部3を回転抵抗モーメントMに反して起立方向Aに起き上がらせていく。図8(a)に於て、浮動くさび部材4は、歯面4aがギヤ部11bに噛合し、かつ、当接面4bがくさび面5aに当接している。図8(b)に示すように、起立方向Aにギヤ部11bを揺動させると、浮動くさび部材4の当接面4bは、くさび面5aから離れて僅かな間隙gを生じる。図8(c)に示すように、さらに起立方向Aにレスト部3を揺動させると、浮動くさび部材4の誘導勾配面14がくさび形窓部5の浮動段付部8に当接し、歯面4aとギヤ部11bとの噛合が解除され、歯面4aがギヤ部11bに弾かれるようにカチカチと音を立てつつ乗り越える。レスト部3の揺動を所望の位置で停止すると、バネ線材6によって、浮動くさび部材4がギヤ部11bに押し付けられ、歯面4aがギヤ部11bに噛合する。くさび作用によりレスト部3の傾倒方向Bへの揺動は規制され、所望の傾斜角度をもって保持される。
【0020】
図7に示すように、レスト部3を所定量揺動させて最終起立状態とすると、図8(d)に示すように、押込突部15が浮動くさび部材4に当接し、浮動くさび部材4を押圧する。図8(e)に示すように、さらに起立方向Aにレスト部3を揺動させると、浮動くさび部材4は、誘導勾配面14をくさび形窓部5の浮動段付部8に摺接しつつ退避空間部9に案内(誘導)される。浮動くさび部材4が退避空間部9に収納されると、歯面4aとギヤ部11bの噛合は解除され、傾倒方向Bへの揺動が自由になる。そして、図8(f)に示すように、レスト部3を傾倒方向Bへ揺動し、最終傾倒状態まで復元すると、押出突部16が浮動くさび部材4に当接し、浮動くさび部材4を退避空間部9から押し出す。このようにして、再び図8(a)に示す状態として、歯面4aがギヤ部11bに噛合し、レスト部3の傾倒方向Bへの揺動を規制する。
【0021】
次に、角度調整金具の他の実施形態について説明する。
図9〜図11に示すように、弾発部材2は、揺動軸心X周りに同心状に巻回したねじりコイルばね23とするも良い。この場合、ねじりコイルばね23は、枢結ピン部材13のヘッド33に巻設されている。また、ねじりコイルばね23は、くの字状に折り曲げた一端部24を、揺動片部11の係止部11aに止着し、かつ、略J字状に折り曲げたねじりコイルばね23の他端部25を、カバー部材7を貫通し取付片部12に固着された突出部19に止着している。コイルばね23は、最終傾倒状態のレスト部3に於て、緊張状態の表皮Eがさらに荷重を受けても、揺動片部11の起立方向Aへの揺動を抑制して、レスト部3が起立しない程度の抵抗力を回転抵抗モーメントMとして弾発的に揺動片部11に付与している。なお、ねじりコイルばね23を用いる場合には、枢結ピン部材13が取付片部12に非回転状とされている必要はなく、揺動片部11と取付片部12とを枢結するものであればよい。
【0022】
以上のように、本発明は、リクライニングするレスト部3を備えたソファーSに用いられ、レスト部3の起立方向Aへの揺動を可能としつつ傾倒方向Bへの揺動を多段階で阻止して所望の傾斜角度で保持する角度調整金具に於て、レスト部3の起立方向Aへの揺動を抑制する回転抵抗モーメントMを付与する弾発部材2を設けたので、回転抵抗モーメントMによりレスト部3がソファーSの表皮Eに引っ張られて起立方向Aへ揺動するのを防止でき、レスト部3を最終傾倒状態としてソファーSを使用する際にも、レスト部3が不意に起き上がることがなく、安定して姿勢を保持できる。また、最終傾倒状態までレスト部3を倒した姿勢を保持しながら表皮Eに適当な張力をもたせて張設することができ、レスト部3を起立状態として使用する際にも、表皮Eが不要に弛むことがなく見栄え良く製作できる。
【0023】
また、レスト部3に取着される揺動片部11と、ソファーSの固定側に固着される取付片部12と、取付片部12に非回転状に組立てられると共に揺動片部11と取付片部12とを枢結した枢結ピン部材13とを、備え、弾発部材2を渦巻きばね20として、渦巻きばね20の外端部22を、揺動片部11の一部に止着し、かつ、渦巻きばね20の内端部21を、枢結ピン部材13に止着したので、部品数を増加させずに簡単な構造で渦巻きばね20を付設でき、回転抵抗モーメントMを確実に揺動片部11に与えることができる。さらに、コンパクト化が図られ、ソファーSの内部に付設し易い。
【0024】
また、レスト部3に取着される揺動片部11と、ソファーSの固定側に固着される取付片部12と、揺動片部11と取付片部12とを枢結した枢結ピン部材13とを、備え、弾発部材2をねじりコイルばね23として、ねじりコイルばね23を枢結ピン部材13に巻設し、かつ、ねじりコイルばね23の一端部24を、揺動片部11の一部に止着し、かつ、他端部25を、取付片部12の一部に止着したので、部品数を増加させずに簡単な構造でねじりコイルばね23を付設でき、回転抵抗モーメントMを確実に揺動片部11に与えることができる。さらに、コンパクト化が図られ、ソファーSの内部に付設し易い。
【0025】
また、揺動片部11の揺動軸心Xを中心として円形状に形成される一対の平行な壁部12a,12aと、壁部12a,12aの各々に揺動軸心Xを対称軸として回転対称位置に配設された偶数のくさび形窓部5,5と、くさび形窓部5,5内にて移動可能とすると共に揺動軸心Xを中心として180度の回転対称位置に配設されかつ一面側に歯面4aを有する一対の浮動くさび部材4,4と、壁部12a,12aの間に設けられると共に揺動軸心Xを中心として歯面4aに噛合可能な外歯状に形成される一対の円弧状ギヤ部11b,11bと、浮動くさび部材4,4をギヤ部11b,11bに常時弾発付勢するバネ線材6,6と、を具備したので、ギヤ部11b,11bや浮動くさび部材4,4にかかる力(荷重)を均等に分散させることができ、全体を小型・薄型にできる。浮動くさび部材4,4がギヤ部11b,11bに挟持状に接触し、バランスよく揺動を抑制でき、均等に荷重がかかるので確実に姿勢を維持できる。
【0026】
また、壁部12a,12aと、くさび形窓部5,5と、浮動くさび部材4,4と、ギヤ部11b,11bと、バネ線材6,6を、揺動軸心X方向から取付けられる一対の円盤状カバー部材7,7間に収納して組立てられる枢結部10が構成され、枢結部10の厚さ寸法Wに対して、弾発部材2の厚さ寸法dを15%〜100%の大きさに設定しているので、弾発部材2の十分な強度及び剛性を確保できる。また、適度な抵抗力を付与しつつ全体を比較的薄型に構成でき、ソファーSの内部への取付が容易である。
【符号の説明】
【0027】
2 弾発部材
3 レスト部
4 浮動くさび部材
4a 歯面
5 くさび形窓部
6 バネ線材
7 カバー部材
S ソファー
A 起立方向
B 傾倒方向
M 回転抵抗モーメント
d 厚さ寸法
厚さ寸法
10 枢結部
11 揺動片部
11b ギヤ部
12 取付片部
12a 壁部
13 枢結ピン部材
20 渦巻きばね
21 内端部
22 外端部
23 ねじりコイルばね
24 一端部
25 他端部
X 揺動軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングするレスト部(3)を備えたソファー(S)に用いられ、該レスト部(3)の起立方向(A)への揺動を可能としつつ傾倒方向(B)への揺動を多段階で阻止して所望の傾斜角度で保持する角度調整金具に於て、
上記レスト部(3)の起立方向(A)への揺動を抑制する回転抵抗モーメント(M)を付与する弾発部材(2)を設けたことを特徴とする角度調整金具。
【請求項2】
上記レスト部(3)に取着される揺動片部(11)と、上記ソファー(S)の固定側に固着される取付片部(12)と、該取付片部(12)に非回転状に組立てられると共に上記揺動片部(11)と該取付片部(12)とを枢結した枢結ピン部材(13)とを、備え、
上記弾発部材(2)を渦巻きばね(20)として、該渦巻きばね(20)の外端部(22)を、上記揺動片部(11)の一部に止着し、かつ、上記渦巻きばね(20)の内端部(21)を、上記枢結ピン部材(13)に止着した請求項1記載の角度調整金具。
【請求項3】
上記レスト部(3)に取着される揺動片部(11)と、上記ソファー(S)の固定側に固着される取付片部(12)と、上記揺動片部(11)と該取付片部(12)とを枢結した枢結ピン部材(13)とを、備え、
上記弾発部材(2)をねじりコイルばね(23)として、該ねじりコイルばね(23)を上記枢結ピン部材(13)に巻設し、かつ、上記ねじりコイルばね(23)の一端部(24)を、上記揺動片部(11)の一部に止着し、かつ、他端部(25)を、上記取付片部(12)の一部に止着した請求項1記載の角度調整金具。
【請求項4】
上記揺動片部(11)の揺動軸心(X)を中心として円形状に形成される一対の平行な壁部(12a)(12a)と、該壁部(12a)(12a)の各々に上記揺動軸心(X)を対称軸として回転対称位置に配設された偶数のくさび形窓部(5)(5)と、該くさび形窓部(5)(5)内にて移動可能とすると共に上記揺動軸心(X)を中心として180度の回転対称位置に配設されかつ一面側に歯面(4a)を有する一対の浮動くさび部材(4)(4)と、上記壁部(12a)(12a)の間に設けられると共に上記揺動軸心(X)を中心として上記歯面(4a)に噛合可能な外歯状に形成される一対の円弧状ギヤ部(11b)(11b)と、上記浮動くさび部材(4)(4)を上記ギヤ部(11b)(11b)に常時弾発付勢するバネ線材(6)(6)と、を具備した請求項2又は3記載の角度調整金具。
【請求項5】
上記壁部(12a)(12a)と、上記くさび形窓部(5)(5)と、上記浮動くさび部材(4)(4)と、上記ギヤ部(11b)(11b)と、上記バネ線材(6)(6)を、上記揺動軸心(X)方向から取付けられる一対の円盤状カバー部材(7)(7)間に収納して組立てられる枢結部(10)が構成され、
該枢結部(10)の厚さ寸法(W)に対して、上記弾発部材(2)の厚さ寸法(d)を15%〜100%の大きさに設定している請求項4記載の角度調整金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−244985(P2011−244985A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120096(P2010−120096)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【特許番号】特許第4624479号(P4624479)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(503315654)
【Fターム(参考)】