説明

触針浄化装置

【課題】 触針の汚損物を除去する際に、触針が曲がることが無く、かつ汚損物が他の触針に再付着することがなく、しかも各触針を均一な圧力で浄化する。
【解決手段】 内部に高圧流体がパイプ32を介して供給される中空の容器20において、底板24に容器20の内外を連通するように孔34が一列に形成されている。各孔34内に、容器20の外部から一列に配置された複数の触針4をそれらの先端が容器20内に非突出となるように昇降装置40が、触針4が取り付けられている基台6を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などが実装されたプリント基板の検査等に使用する触針の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の検査等に使用する触針は、複数のものが絶縁体製の基台に植設されており、これら触針を検査装置に接続し、これら触針の先端部をプリント基板の所定位置に接触させることによって、検査が行われる。プリント基板に触針の先端部を接触させることによって、プリント基板にあるフラックスの残渣や金属酸化物等の汚損物が付着して蓄積される。これらの汚損物で触針の先端部が覆われると、正常に検査装置によって検査が行えなくなる。そのため、汚損物を除去するために、例えば特許文献1、2に開示されているような技術がある。
【0003】
特許文献1、2の技術では、容器内に各触針を一列に配置し、これら触針の列の一方の端から流体を吹きかけるように容器内に流体を供給して、汚損物を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−197556号公報
【特許文献2】特開2002−66470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラックスなどの汚損物は粘度が高く、触針から除去しにくいので、非常に高い圧力で流体を触針に吹き付ける必要がある。しかし、特許文献1、2の技術では、流体の圧力を高めると、比較的長い触針全体が高圧に晒されるので、触針が曲がる可能性がある。また、高圧流体の吹き出し位置に近い位置にある触針から剥離された汚損物が、流体の吹き出し位置から離れた位置にある触針に再付着する可能性がある。また、高圧流体の流れは、各触針によって阻害されるので、流体の吹き出し位置から離れた位置にある触針に接触する高圧流体の圧力が低下し、汚損物が正常に除去されない可能性がある。
【0006】
本発明は、触針が曲がることが無く、汚損物が再付着することがなく、均一な圧力で各触針が浄化される触針の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の触針浄化装置は、高圧流体が内部に供給される中空の容器を有している。容器は、種々の形状のものを使用することができ、例えば中空の箱型のものや円盤状のもの等を使用することができる。高圧流体は、容器の特定の壁部に設けた供給手段から供給することができる。この容器の前記高圧流体の供給位置とは異なる位置にある壁部に、前記容器の内外を連通するように複数の孔が一列に形成され、これら孔を前記高圧流体が前記容器内から通過して外部に流出する。孔が形成される壁部は、例えば容器が箱形のものであり、高圧流体が容器の端壁から供給されるなら、その端壁と異なる壁部、例えば底壁、上壁、側壁等に設けることができる。前記各孔内に、前記容器の外部から一列に配置された複数の触針をそれらの先端部が前記容器内に非突出となるように、挿通手段が挿通する。
【0008】
このように構成された触針浄化装置では、容器内に供給された高圧流体は、容器に形成された孔を通過して外部に流出する。この孔内に触針の先端部が容器内に非突出の状態で位置しているので、流体は触針の長さ方向に沿って流れ、触針全体が高圧に晒されることがなく、先端部に付着している汚損物を除去することができる上に、触針が曲がることはない。また、各触針の先端は孔内に位置するので、触針の先端から除去された汚損物は孔から排出されるので、他の孔に位置する触針に汚損物が再付着することはない。また、各触針の先端は、各孔内に位置するので、容器内を通過する高圧流体が各孔に到達するまでにその圧力を低下させるような障害物が存在せず、各触針は同一の圧力で汚損物の除去が行われる。
【0009】
前記孔は前記高圧流体が前記孔内を前記容器側から外部に直進する大きさに形成することができる。例えば触針の横断面積よりもかなり大きな横断面積の孔を形成すると、孔に流入した流体の速度が低下し、汚損物を確実に除去することができない可能性があるが、孔の横断面積を、触針の横断面積よりも幾分大きい程度とすると、流体は孔内を高速で直進して容器の外部に流出するので、触針に付着している汚損物を確実に除去することができる。
【0010】
更に、前記触針は、その先端が、前記孔の内外方向のほぼ中央に位置するように前記挿通手段によって挿通されるものとすることができる。例えば触針全体を容器内に突出させた場合、触針の列の高圧流体の供給位置から離れた位置にあるものに対する流体の洗浄圧力が低くなる可能性があるが、触針の先端を孔の略中央に位置するようにしておけば、触針の先端が容器内に突出することがないため、触針の先端が曲がることはないし、各触針は同一の圧力で浄化される。
【0011】
前記各触針は、基台に支持され、前記各孔と前記基台との間に、前記各孔を通過した高圧流体を排気する排気手段を有するものとすることができる。排気手段としては、例えば前記基台にほぼ接触するように壁を設け、この壁の前記孔と基台との間に1つまたは複数の排出口を設けることができる。或いは、前記基台の両端に接触するように壁を設け、基台の両側を開放して、排気手段とすることもできる。このように排気手段を設けることにより、各孔を各高圧流体が通過し、確実に汚損物を除去することができる。
【0012】
前記各触針は、基台に支持され、前記各触針の近傍の前記基台に、前記各孔を通過した前記高圧流体の通過用の貫通孔が形成されているものとすることができる。この場合、基台の前記容器と反対側は、前記高圧流体の圧力よりも低圧とする。例えば大気圧とする。このように構成すると、各触針の近傍の基台に貫通孔を形成してあるので、前記孔を通過した流体が貫通孔を通過し、低圧側に移動する。従って、孔から比較的短い距離にある貫通孔まで高圧流体が移動するので、流体の流れを阻害する要因が無く、円滑に高圧流体が流れ、触針の汚損物が確実に取り除かれる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、触針の汚損物を除去する際に触針が曲がることが無く、かつ汚損物が他の触針に再付着することがなく、しかも各触針を均一な圧力で浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の浄化装置の縦断側面図である。
【図2】図1の浄化装置において孔に触針が挿通されている状態の部分省略平面図と底板部分の拡大縦断側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の浄化装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態の触針浄化装置は、図1に示す触針治具2に取り付けられている触針4を浄化する。触針治具2は、絶縁体製の基台6に触針4を所定の間隔をおいて一列に植設したものである。
【0016】
この触針治具2の各触針4を浄化する浄化装置は、図1に示すように容器20を有している。容器20は、内部が中空の密閉型箱状に形成され、所定の間隔をおいて互いに対向する壁部、例えば天板22と底板24とを有している。これら天板22と24とは、基台6よりもわずかに長い長さ寸法を有する長方形状に形成されている。これら天板22と底板24との両側は、間隔をおいて対向する1対の壁部、例えば長方形状の側板26によって繋がれている。同様に天板22と底板24との一方の端は、壁部、例えば長方形状の端板28によって繋がれ、天板22と底板24の他方の端も、壁部、例えば長方形状の端板30によって繋がれている。
【0017】
端板28には、高圧流体供給手段、例えばパイプ32が取り付けられており、これは図示していない高圧流体源に接続されている。高圧流体としては、例えば大気圧よりも圧力が高い高圧気体、具体的には圧縮空気を使用することができる。或いは圧力を大気圧よりも高めた不活性ガスや洗剤を含む液体を使用することもできる。このパイプ32を介して容器2内には矢印で示すように高圧流体が供給される。
【0018】
底板24には、触針治具2における触針4の間隔と同じ間隔で、内外に貫通する複数の孔34が穿設されている。これら孔34は、図2(a)に示すように、触針4の直径よりも幾分大きい直径を有するものである。
【0019】
この容器20は、支持体36によって床38から浮いた状態で支持されている。支持体36は、その平面形状がロ字状のもので、底板24の周縁部にその上端が位置し、下端が床38に接しており、容器20とは分離可能なものである。
【0020】
この支持体36の内部に、上述した触針治具2が配置されている。この触針治具2は、各触針4が、各孔34に対応する位置にあるように配置されている。基台6の両端部、即ち端板28、30側の端部の近傍にそれぞれ配置された挿通手段、例えば昇降装置40、40が、触針治具2を、底板24から離れた状態から底板24に接近した状態に移動させる。底板24に接近した状態において、触針治具2の各触針4が孔34内に挿通され、各触針4の先端を図2(b)に示すように孔34の高さ方向(床38から底板24に向かう方向)のほぼ中間に位置させた状態で、昇降装置40、40は停止する。なお、昇降装置40の構成は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
パイプ32が設けられている端板28と対向する端板30の下方にある支持台36の壁部42には、排気手段、例えば排気口44が穿設されている。この排気口44は、基台6を底板24に接近させた状態において、基台6よりも底板24に近い位置に、支持台36の内外を貫通するように形成されている。
【0022】
このように構成された浄化装置では、容器20を支持体36から分離した状態において、触針治具2を昇降装置40、40間に取り付け、容器20を支持体36上に配置する。この状態で、昇降装置40、40を駆動して、図1に示すように各触針4を各孔34に挿入する。この挿入状態において、パイプ32を介して高圧流体を容器20内に導入すると、高圧流体は、各孔34を通過して排気口44から外界に放出される。図2(b)に示すように孔34に入るとき、その横断面積は容器20の横断面積よりも小さいので、高速となり、触針4の先端に付着している汚損物を良好に除去することができる。しかも、各触針4は、その先端が各孔34内に位置しているので、高圧流体は図2(b)に示すように触針4の長さ方向に沿って移動するので、触針4の長さ方向に直交する用に圧力がかかることがなく、触針4が折れ曲がることがない。また、各孔34内に触針4の先端が位置するので、触針4の先端から除去された汚損物は、そのまま排気口42から排出され、他の触針4に汚損物が再度付着することはない。また、パイプ32から供給された高圧流体は、障害物に当たることなく、各孔34に入るので、各孔34内の触針4にかかる圧力はほぼ均一となり、パイプ32から離れた位置にある孔34内の触針4にかかる圧力が小さくなることはない。
【0023】
なお、上記の実施形態では、支持体36はロ字状の枠体を使用したが、これに限ったものではなく、例えば端板28、30の下方にこれらを支持するように配置された台状のものを支持体として使用することもできる。この場合、底板24の両側(図1の表裏方向)が開放されているので、排気口44を設ける必要はない。或いは支持体36は、その平面形状がコ字状のものを使用し、その開放部分が壁部42の位置にあるように構成することもできる。
【0024】
本発明の第2の実施形態の浄化装置を図3に示す。この実施形態では、容器20の1対の側板26、端板28、30が底板24よりも床38側に延長されている。その延長は、触針4が孔34内に挿通されるように基台6が底板24に近づけられた状態において、基台6の上面に、対の側板26、端板28、30の延長端が一致するように行われている。支持体36aは、端板28、30の下方に位置する1対の支持台46、48のみからなり、容器20の1対の側板26の方向(図3の表裏方向)は開放されている。この開放部分が排気手段となる。また、触針治具2の基台6には、触針4に接近して複数の貫通孔50が形成されている。これら貫通孔50は、1つの触針4の両側(各触針4の配列方向の両側)にそれぞれ1つずつ設けることもできるし、1つの触針4を包囲するように触針4の周囲に複数個設けることもできる。いずれにしても、各貫通孔50は、底板24の孔34に接近した位置に配置されている。他の構成は、第1の実施形態の浄化装置と同一であるので、同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
この浄化装置では、パイプ32から供給された高圧流体は、各孔34及び貫通孔50を通過して、容器20の1対の側板26側の開放部から大気中に流れる。この際、第1の実施形態の浄化装置と同様な効果をそうしながら、触針4の先端の汚損物を除去する。更に、孔34を通過した高圧流体は、その近傍にある貫通孔を通過するので、孔34から貫通孔50までの短い距離だけ高圧流体は移動するので、流体の流れを阻害するものが存在せず、円滑に排気が行われる。
【0026】
上記の両実施形態では、容器20は箱型のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば天板と底板とを有する円板型のものを使用することもできる。また、上記の実施形態では、孔34は底板24に設けたが、これに限ったものではなく、例えば1対の側板26の一方または天板22に形成することもできる。上記の実施形態では、触針4の先端は、孔34のほぼ中間位置まで挿入したが、孔34から非突出であれば、更に底板24の上面付近まで挿入することもできる。
【符号の説明】
【0027】
2 触針治具
4 触針
6 基台
20 容器
32 パイプ(高圧流体供給手段)
34 孔
40 昇降装置(挿入手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体が内部に供給される中空の容器と、
この容器の前記高圧流体の供給位置とは異なる位置にある壁部に、前記容器の内外を連通するように一列に形成され、前記高圧流体が前記容器内から通過して外部に流出する複数の孔と、
前記各孔内に、前記容器の外部から一列に配置された複数の触針をそれらの先端が前記容器内に非突出となるように挿通する挿通手段とを、
具備する触針浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の触針浄化装置において、前記各孔は前記高圧流体が前記孔内を前記容器側から外部に直進する大きさに形成されている触針浄化装置。
【請求項3】
請求項2記載の触針浄化装置において、前記触針は、その先端が、前記孔の内外方向のほぼ中央に位置するように前記挿通手段によって挿通される触針浄化装置。
【請求項4】
請求項3記載の触針浄化装置において、前記各触針は、基台に支持され、前記各孔と前記基台との間に、前記各孔を通過した高圧流体を排気する排気手段を有する触針浄化装置。
【請求項5】
請求項3記載の触針浄化装置において、前記各触針は、基台に支持され、前記各触針の近傍の前記基台に、前記各孔を通過した前記高圧流体の通過用の貫通孔が形成され、前記基台の前記容器とは反対側は、前記高圧流体の圧力よりも低圧である触針浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122889(P2011−122889A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279597(P2009−279597)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】