説明

設備内におけるセメントクリンカの製造方法及びそのようなセメントクリンカ製造設備

【課題】大気中への二酸化炭素の排出を制限でき、経済的に実現性があり、更に、セメントクリンカの製造用に従来から使用されている設備と技術的に近い設備で実施できるセメントクリンカの製造方法により、従来の製造方法および製造設備の問題点を解消する。
【解決手段】プレか焼反応炉(4)に、該反応炉(4)の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス(9)を供給し、サイクロンプレヒータ(3)から出たガスの一部分(8a)を設備内でリサイクルして、該プレヒータ内での材料の浮遊に必要な適切な流を得るようにし、一方では、二酸化炭素が豊富な、前記サイクロンプレヒータ(3)から出たガスの他の部分(8b)は、特に隔離などのような、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備におけるセメントクリンカの製造方法及びそのようなセメントクリンカ製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造には、その大部分で、焼成材料であるクリンカを使用し、クリンカは主成分が炭酸カルシウムである鉱物から製造される。クリンカの作製には、焼成作業を行うが、その焼成作業では、作業に必要な燃料の燃焼によっても、炭酸カルシウムの分解によっても、大量の二酸化炭素が発生する。
【0003】
例えば、いわゆるポルトランドセメント1トンの製造には、処理される材料に由来するCO2約530kg、及び燃料に由来するCO2250〜300kgの放出が伴う。この二酸化炭素は、30%未満の濃度で排ガスに放出され、そのような排ガスの主成分は窒素である。この状態では、大気中へのCO2排出を制限する目的で、分離、特に隔離することは困難である。
【0004】
セメントクリンカの製造には、あらかじめ粉砕した原料を回転炉でか焼する、いわゆる乾式焼成法が最も多く使用される。作業に必要とされるエネルギーを削減するために、回転炉の上流及び下流に熱交換器が加えられており、材料及び回転炉から出た排ガスに含まれている熱を直接回収する。
【0005】
上流には、浮遊状の原料を予熱し、部分的に二酸化炭素を除去するサイクロンプレヒータがある。下流には、焼成した材料を冷気送風によって冷却するクリンカクーラがある。いわゆる乾式で作動する設備の大部分は、プレか焼炉(precalcinateur)と呼ばれる、プレヒータの下方の燃焼反応装置を備え、そのプレか焼炉内に焼成装置によって消費される大量の燃料が供給され、浮遊状の原料に含まれる炭酸カルシウムの二酸化炭素除去反応の大部分がそのプレか焼炉内で行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる経済的に実現性のあるセメントクリンカの製造方法を提案して、前述の問題点を解消することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、セメントクリンカの製造用に従来から使用されている設備と技術的に近い設備で実施できるセメントクリンカの製造方法を提案することである。
【0008】
本発明のまた別の目的は、そのような設備そのものを提案することである。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明から明らかになるものであるが、これらの説明は例として挙げたものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、まず、
‐原料を予熱するためのサイクロンプレヒータ、
‐サイクロンプレヒータに熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉であって、該回転炉の排ガスがプレか焼反応炉及び/またはサイクロンプレヒータの方へ運ばれる回転炉、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ、
を備える設備におけるセメントクリンカの製造方法であって、
‐前記サイクロンプレヒータ及び/または前記プレか焼反応炉において、原料を予熱し、その二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラにおいて、前記回転炉から出たクリンカを冷却する
方法に関するものである。
【0011】
本発明によると、
‐プレか焼反応炉に、該反応炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガスを供給し、
‐前記サイクロンプレヒータから出たガスの一部分を設備内でリサイクルして、前記プレヒータ内での材料の浮遊(suspension)に必要な適切な流(flux)を得るようにし、一方では、二酸化炭素の豊富な、前記サイクロンプレヒータから出たガスの他の部分は、特に隔離などのような、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させる。
【0012】
本発明は、また、特に前記の方法を実施することのできるセメントクリンカの製造設備であって、
‐原料を予熱するためのサイクロンプレヒータ、
‐サイクロンプレヒータに熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉であって、該回転炉からの排ガスがプレか焼反応炉、さらに前記プレヒータの方へ運ばれる回転炉、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ、
を備える設備に関するものである。
【0013】
本発明によると、その設備は、さらに、
‐プレか焼反応炉に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源、
‐前記サイクロンプレヒータから出るガスの一部分を設備内でリサイクルするための導管、
を備える。
【0014】
本発明は、添付図面を参照して行う下記の説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による第一の実施態様のセメントクリンカの製造方法及びその関連設備の実施例を概略的に示したものである。
【図2】図2は、本発明による第二の実施態様のセメントクリンカの製造方法及びその関連設備を示したものである。
【図3】図3は、本発明による第三の実施態様のセメントクリンカの製造方法及びその関連設備を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、また、設備におけるセメントクリンカの製造方法に関するものである。
【0017】
この設備は、
‐原料2を予熱するためのサイクロンプレヒータ3、
‐サイクロンプレヒータ3に熱(高温ガス)を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉4、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉1であって、該回転炉1の排ガスがプレか焼反応炉4及び/またはサイクロンプレヒータ3の方へ運ばれる回転炉、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉1の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ5、
を備える。
【0018】
したがって、従来技術の設備と同様に、サイクロンプレヒータ、プレか焼反応炉、回転炉及びクリンカクーラを備える設備に関する。
【0019】
本発明の方法によると、
‐前記サイクロンプレヒータ3及び/または前記プレか焼反応炉4において、原料を予熱し、その二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラ5において、回転炉1から出たクリンカを冷却する。
【0020】
本発明によると、
‐プレか焼反応炉4に、該反応炉4の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス9を供給し、
‐前記サイクロンプレヒータ3から出たガス8の一部分8aを設備内でリサイクルして、該プレヒータ3内での材料の浮遊に必要な適切な流を得るようにし、一方では、二酸化炭素の豊富な、該サイクロンプレヒータ3から出たガス8の他の部分8bは特に隔離などのような大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させる。
【0021】
本発明は、プレか焼反応炉4の位置で、燃焼用空気の代わりに、純酸素、または窒素含有量が空気に比べると大幅に削減された少なくとも一つの酸素化ガス(gaz oxygene)を使用することからなる。
【0022】
したがって、生成される排ガスの量は、従来より少なく、材料を浮遊状に維持し、サイクロンプレヒータの正常な空気力学的機能を確保するためには不十分である。
【0023】
本発明によると、適切なガス流を維持するのに十分な量のプレヒータから出た排ガスをリサイクルすることによって、この不均衡を回復する。このようにして生成されたガスは二酸化炭素が豊富であり、窒素が少なく、したがって、特に隔離などのような大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させたものである。
【0024】
より正確には、一実施態様によると、前記サイクロンプレヒータ3から出たガスの部分8aをリサイクルして、処理される材料と排ガスとの間の質量流量比が0.5kg/kg〜2kg/kgの範囲になるようにする。
【0025】
特に図1の実施例によって示した本発明の方法の一実施態様によると、サイクロンプレヒータ3から出たガス8の一部分8aをリサイクルして、その部分を再加熱した後、プレか焼反応炉4、さらにサイクロンプレヒータ3の方へ直接送る。例えば、クリンカクーラ5によって生成される高温ガスの一部分6によってリサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0026】
ここでは、特に図1の実施例について記載する。
【0027】
この実施例では、クリンカクーラ5の冷却ガスは空気であり、したがって、窒素をかなりの割合で含む。
【0028】
クリンカクーラ5によって生成される高温の空気(air chaud)は、三つの流に分割される。クーラ内で生成される高温の空気の一部分60、いわゆる二次流は回転炉1の方へ送られ、回転炉内で燃焼空気として使用される。
【0029】
750℃以上の温度と定義される、クリンカクーラ内で生成される高温ガスの第二の部分6、いわゆる三次流は、第一の部分60とは別に、熱交換器11まで運ばれ、リサイクルされるガスの部分8aを再加熱する。
【0030】
さらに、温度が三次流の温度より低い第三の部分7は抽出され、力学的エネルギー、さらに電気の生成に使用できる。
【0031】
場合によっては、熱交換器11の下流で、三次流6aに含まれる残留熱は、エネルギー、特に電気の生成に使用できる。同様に、場合によっては、プレヒータ3の排ガスのリサイクルされない部分8bに含まれる残留熱をエネルギーの生成に使用することもある。
【0032】
この実施例では、リサイクルされる部分8aが前記プレか焼反応炉4、さらにサイクロンプレヒータ3の方へ直接送られることに注目すべきである。ガスがプレか焼反応炉4の方へ送られるとき、反応炉4内の燃焼ガスは、酸素の豊富なガス9及び二酸化炭素の豊富なリサイクルされた部分8aの混合物である。このように、有利には、燃焼ガスの酸素濃度が高くなりすぎないようにし、そうすることで、反応炉4内で、該反応炉を劣化させるおそれのある大きすぎる炎が生じることのないようにしている。
【0033】
場合によっては、直接リサイクルされない、二酸化炭素の豊富なガスの部分8bを、固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、サイクロンプレヒータ及び/またはクリンカクーラの空気圧清掃(nettoyage pneumatique)流体として少なくとも部分的に使用することができる。
【0034】
特に図2または図3に示した別の実施態様によると、
‐回転炉1のバーナに、回転炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス10を供給し、
‐プレヒータから出たガスの部分8aをリサイクルし、その部分を熱交換器13、15によって冷却し、冷却ガスとして使用されるように前記クリンカクーラの方へ送る。
【0035】
図2の実施例による本発明の方法を以下に詳細に記載する。
【0036】
この実施例では、クリンカクーラ5に供給される冷却ガスはリサイクルされるガスから生じ、該リサイクルされるガスのうち、部分8aはプレヒータ3から出るガスに由来し、他の部分は前記クリンカクーラ5によって生成される高温ガスの一部分に由来する。回転炉の一つまたは複数のバーナには、その回転炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス10が供給される。プレか焼反応炉4の一つまたは複数のバーナには、その反応炉4の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス9が供給される。
【0037】
したがって、冷却ガスは二酸化炭素が豊富である。クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの一部分60、いわゆる二次流は、回転炉1の方へ送られる。より正確には、この部分60は酸素の豊富なガス10と混じり合い、そのようにして燃焼ガスの酸素濃度を制限し、それによって、回転炉のバーナで、該回転炉を劣化させるおそれのある大きすぎる炎が生じないようにする。
【0038】
750℃以上の温度と定義されており、同様に二酸化炭素の豊富な、クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの第二の部分6、いわゆる三次流は、第一の部分とは別にプレか焼反応炉4の方へ運ばれる。この反応炉内では、二酸化炭素の豊富なこのガスの部分6が酸素の豊富なガス9と混じり合い、そのようにして燃焼ガスの酸素濃度を制限し、それによって、反応炉4のバーナで、該反応炉を劣化させるおそれのある大きすぎる炎が生じないようにする。
【0039】
クリンカクーラ5内で生成される高温ガスの第三の部分7は、熱交換器14内で冷却され、リサイクルされて、クリンカクーラ5に冷却ガスを供給する。
【0040】
場合によっては、プレヒータの排ガスのリサイクルされない部分8bに含まれる残留熱をエネルギーの生成に使用することもある。場合によっては、直接リサイクルされない、二酸化炭素の豊富なガスの部分8bを、固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、サイクロンプレヒータ3及び/またはクリンカクーラ5の空気圧清掃流体として少なくとも部分的に使用することもできる。
【0041】
図3に示した設備は、図2に示した設備とほぼ同様であるが、リサイクルされるガスの部分8aの流れ上に配置された熱交換器15が原料の粉砕乾燥装置によって構成されている点が異なる。
【0042】
図1、図2及び図3の設備では、酸素の豊富なガス9または10の窒素含有量は5%未満であり得る。
【0043】
本発明は、また、そのようなセメントクリンカ製造設備に関するものでもある。
【0044】
この設備は、
‐原料2を予熱するためのサイクロンプレヒータ3、
‐サイクロンプレヒータ3に熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉4、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉1であって、該回転炉の排ガスがプレか焼反応炉4、さらに前記プレヒータ3の方へ運ばれる回転炉1、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉1の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ5、
を備える。
【0045】
本発明によると、設備は、また、少なくとも、
‐プレか焼反応炉4に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源9、
‐前記サイクロンプレヒータ3から出たガス8の一部分8aを設備内でリサイクルするための導管80、81、82
を備える。特に、本発明による方法の実施を可能にする、前記の、図1、図2及び図3に示した設備に関する。
【0046】
一実施態様によると、少なくとも一つの熱交換器11は、クリンカクーラ5によって生成される高温ガスの一部分6と協働して、リサイクルされるガスの部分8aを再加熱し、リサイクル用導管80はプレか焼反応炉4、さらにサイクロンプレヒータ3に直接供給する。
【0047】
特に図2または図3に示された別の実施態様によると、
‐酸素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源が、回転炉1のバーナに供給され、
‐少なくとも一つの熱交換器13、15はリサイクルされるガスの部分8aと協働して、その部分を冷却し、前記リサイクル用導管81、82は前記クリンカクーラ5に冷却ガスを供給する。
【0048】
この実施態様によると、場合によっては、熱交換器14によって、クリンカクーラにより生成される高温ガスの一部分7を冷却することができ、その部分をリサイクルして、前記クリンカクーラ5に冷却ガスを供給することができる。
【0049】
ここで、従来技術の設備の性能、続いて、前述の図1に示した設備の期待される性能、さらに前述の図2に示した設備の性能について記載する。
【0050】
従来技術
ここで考察する設備は、現在使用されている多数の装置の能力の代表である平均的なサイズのクリンカ製造装置であり、本発明を実施せずに、1時間当たり337トンの原料供給量から1日当たり5000トンのクリンカを生産するものである。
【0051】
この設備は、62.8%がプレか焼反応炉の位置に導入される燃料の形態で供給されて、生産するクリンカ1トンにつき3000MJを消費する。燃料が石油コークスであり、その真発熱量が34300kJ/kgであり、窒素含有量が2%である場合を考察する。
【0052】
クリンカクーラは、とりわけ、プレか焼反応炉の燃焼に供給される890℃の三次空気117000Nm3/時、及び245℃の排気(過剰空気)210000Nm3/時を生成する。サイクロンプレヒータの排ガスは、温度320℃で流量286200Nm3/時である。供給される原料とプレヒータの排ガスとの間の質量流量の比は0.82である。
【0053】
生成され、プレヒータから出る排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素3.6%
‐水7.1%
‐二酸化炭素29.6%
‐窒素59.7%
【0054】
回転炉の排ガスの流量は86200Nm3/時、温度は1160℃である。それらの排ガスは、サイクロンプレヒータで使用される。回転炉で生成された排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素3.2%
‐水5.9%
‐二酸化炭素21.5%
‐窒素69.4%
【0055】
これらの条件では、二酸化炭素の総量の78.1%がプレヒータ内で生成され、21.9%だけが回転炉内で生成される。
【0056】
本発明による実施例1
ここで考察する設備は従来技術の設備に匹敵するが、今回は、本発明の図1に示した実施例によって二酸化炭素の濃縮を実施する。
【0057】
製造されるクリンカ1トンにつき1972MJとして、プレか焼反応炉に燃料を供給する。回転炉の作動は変更されておらず、クリンカ1トンにつき1117MJを消費する。プレか焼炉の燃焼に必要な酸素量は、27650Nm3/時である。
【0058】
このように、プレヒータの出口で325℃の排ガス274100Nm3/時が生成され、そのうち、104200Nm3/時がリサイクルされ、169900Nm3/時が抽出されて、その二酸化炭素が処理される。供給される原料とプレヒータの排ガスとの間の質量流量の比は、0.79である。
【0059】
生成され、プレヒータから出るこれらの排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素4.2%
‐水10.7%
‐二酸化炭素49.8%
‐窒素35.3%
‐乾燥した排ガスにおけるCO255.8%
【0060】
クーラから890℃の三次空気117000Nm3/時が取り出され、熱交換器を通過して運搬され、そのエネルギーがプレヒータのリサイクルされる排ガスに伝達されて、該三次空気は350℃まで冷却される。そのようにして、前記プレヒータの排ガスは、温度を810℃に上げられ、その後、プレか焼反応炉に導入される。
【0061】
本発明による実施例2
ここで考察する設備は、図2に示した実施例のものである。
【0062】
クリンカ製造装置は、製造されるクリンカ1トンにつき3000MJの燃料を消費し、その62.8%はプレか焼反応炉の位置に導入される。燃焼に必要な酸素は、プレか焼反応炉においても回転炉においても純酸素によって確保される。必要な酸素の総量は、42060Nm3/時である。
【0063】
このように、プレヒーターの出口で320℃の排ガス238600Nm3/時が生成され、そのうち、129600Nm3/時がリサイクルされ、109000Nm3/時が抽出されて、その二酸化炭素が処理される。供給される原料とプレヒータの排ガスとの間の質量流量の比は、0.81である。
【0064】
生成され、プレヒータから出るこれらの排ガスの組成は、下記のとおりである。
‐酸素6.5%
‐水15.6%
‐二酸化炭素77.7%
‐窒素0.22%
‐乾燥した排ガスにおけるCO292.0%
【0065】
抽出される排ガスは、二酸化炭素流量166.36t/時に対応する。
【0066】
リサイクルされる排ガスは、一連の熱交換器内に運搬され、135℃まで冷却され、その後、クリンカクーラ内で送風のために使用される。クーラの過剰なガス、いわゆる排気流は同様に135℃まで冷却された後、それ自体、クリンカクーラの方へ運搬される。
【0067】
このように、クーラを介して135℃のガスを流量275800Nm3/時で送風する。ガスは材料と接触して加熱され、三つの部分に分けられるが、それら三つの部分とは、すなわち、回転炉の燃焼区域の方に送られるいわゆる二次流である1180℃で48100Nm3/時の部分、プレか焼反応炉の方に別に送られるいわゆる三次流である890℃で81500Nm3/時の部分、及び、いわゆる排気流または過剰流である370℃で146200Nm3/時の部分である。回転炉及びプレヒータでリサイクルされるガスの流量、すなわち最初の二つの流の合計は129600Nm3/時である。クリンカは、温度が205℃まで冷却される。
【0068】
以下の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲を逸脱することなく、当業者がその他の実施態様を企図することが可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0069】
1 回転炉
2 原料
3 サイクロンプレヒータ
4 プレか焼反応炉
5 クリンカクーラ
11、13、14、15 熱交換器
80、81、82 リサイクル用導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐原料(2)を予熱するためのサイクロンプレヒータ(3)、
‐サイクロンプレヒータ(3)に熱を供給する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉(4)、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉(1)であって、該回転炉(1)からの排ガスがプレか焼反応炉(4)及び/またはサイクロンプレヒータ(3)の方へ運ばれる回転炉(1)、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉(1)の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ(5)、
を備える設備におけるセメントクリンカの製造方法であって、
‐前記サイクロンプレヒータ(3)及び/または前記プレか焼反応炉(4)において、原料を予熱し、その二酸化炭素を除去し、
‐前記クリンカクーラ(5)において、回転炉(1)から出たクリンカを冷却する
方法において、
‐プレか焼反応炉(4)に、該反応炉(4)の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス(9)を供給し、
‐前記サイクロンプレヒータ(3)から出たガスの一部分(8a)を設備内でリサイクルして、前記プレヒータ内での材料の浮遊に必要な適切な流を得るようにし、一方では、二酸化炭素が豊富な、該サイクロンプレヒータ(3)から出たガスの他の部分(8b)は、例えば、隔離などのような、大気中への二酸化炭素の排出を制限することのできる処理に適応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サイクロンプレヒータ(3)から出たガス(8)の前記部分(8a)をリサイクルして、処理される材料と排ガスとの間の質量流量比が0.5kg/kg〜2kg/kgの範囲になるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイクロンプレヒータ(3)から出たガス(8)の前記部分(8a)をリサイクルして、その部分を再加熱した後、プレか焼反応炉(4)、さらにサイクロンプレヒータ(3)の方へ直接送ることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの一部分(6)によって、リサイクルされるガスの部分(8a)を再加熱することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記回転炉のバーナに、回転炉の唯一の酸素源を構成する、窒素含有量が30%未満の、酸素の豊富なガス(10)を供給し、前記プレヒータ(3)から出るガスの部分(8a)をリサイクルし、その部分を少なくとも一つの熱交換器(13、15)によって冷却し、前記クリンカクーラ(5)の方へ冷却ガスとして使用されるように送ることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
リサイクルされるガスの部分(8a)を冷却するための熱交換器(15)として原料乾燥装置を使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの過剰な部分(7)をリサイクルし、その部分を熱交換器(14)によって冷却し、前記クーラに冷却ガスを供給することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の酸素の豊富なガス(9及び/または10)の窒素含有量が、5%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記プレヒータの排ガスのリサイクルされない部分(8b)に含まれる残留熱を、エネルギーの生成のために使用することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
固体燃料の空気輸送用流体及び/または液体燃料の噴霧用流体として、及び/または、サイクロンプレヒータ(3)及び/またはクリンカクーラの空気圧清掃流体として、二酸化炭素の豊富なガスの前記部分(8b)を使用することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
セメントクリンカの製造設備であって、
‐原料(2)を予熱するためのサイクロンプレヒータ(3)、
‐サイクロンプレヒータ(3)に熱を供与する、一つまたは複数のバーナを備えるプレか焼反応炉(4)、
‐燃料を供給されるバーナを備える回転炉(1)であって、該回転炉(1)からの排ガスがプレか焼反応炉(4)、さらに前記プレヒータの方へ運ばれる回転炉(1)、
‐高温ガスを生成する、前記回転炉(1)の出口の位置の、冷却ガスの送風によるクリンカクーラ(5)、
を備える製造設備において、さらに、少なくとも、
‐プレか焼反応炉(4)に供給される、窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源(9)、
‐前記サイクロンプレヒータ(3、3a)から出たガスの一部分(8a)を設備内でリサイクルするための導管(80、81、82)、
を備えることを特徴とする設備。
【請求項12】
少なくとも一つの熱交換器(11)が、前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温の空気の一部分(6)と協働して、リサイクルされるガスの部分(8a)を再加熱し、リサイクル用導管(80)がプレか焼反応炉(4)、さらにサイクロンプレヒータ(3)に直接供給することを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項13】
窒素含有量が30%未満の酸素の豊富なガス源が回転炉(1)のバーナに供給され、少なくとも一つの熱交換器(13、15)が、リサイクルされるガスの部分(8a)と協働して、その部分を冷却し、前記リサイクル用導管(81、82)が前記クリンカクーラ(5)に冷却ガスを供給することを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項14】
熱交換器(14)によって前記クリンカクーラ(5)によって生成される高温ガスの一部分(7)を冷却し、該クリンカクーラ(5)に冷却ガスを供給することができることを特徴とする、請求項13に記載の設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−529844(P2011−529844A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520540(P2011−520540)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000883
【国際公開番号】WO2010/012880
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(509140467)
【氏名又は名称原語表記】FIVES FCB
【Fターム(参考)】