説明

試験装置

【課題】高速多値信号を試験可能な試験装置を提供する。
【解決手段】試験装置2は、DUT1から出力される被試験信号S1であって、その値に応じて電圧レベルが変化する被試験信号S1を試験する。パターン発生器PGは、I/O端子PIOに入力される被試験信号S1の期待値を示す期待値データEXPを発生する。しきい値電圧発生器10は、期待値データEXPを受け、当該期待値データEXPに応じた電圧レベルを有するしきい値電圧Vthを、被試験信号S1と同期して生成する。比較部12は、被試験信号S1の電圧レベルVDUTをそれと対応するしきい値電圧Vthと比較する。電圧変調器11は、しきい値電圧Vthを、所定の電圧範囲で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル有線通信は従来、時間分割多重(TDM)方式による2値伝送が主流であり、大容量伝送を行う場合は、パラレル伝送、高速伝送によって実現してきた。パラレル伝送の物理的な限界に直面すると、シリアル伝送つまり、高速インタフェース(I/F)回路による数Gbps〜10Gbps以上のデータレートでの高速伝送が行われる。しかしながら、データレートの高速化にも限界があり、伝送線路の高周波損失や反射によるBER(Bit Error Rate)の劣化が問題となる。
【0003】
一方、デジタル無線通信方式は、キャリア信号に多ビットの情報をのせて送受信する。つまり、データレートはキャリア周波数に直接的に制限されない。例えば、最も基本的な直交変復調方式であるQAM(Quadrature Amplitude Modulation)伝送方式は4値伝送を一つのチャネルで実現することが出来る。64QAMにいたっては、64値伝送がワンキャリアで実現できる。つまり、キャリア周波数を高めなくてもこのような多値変調方式によって、転送容量を向上させることが出来る。
【0004】
このような変復調方式は、無線通信に限らず有線通信でも可能であり、PAM(Pulse Amplitude Modulation)やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)あるいはDQPSK(Differential QPSK)方式として既に適用され始めている。特に、光通信分野においては、1本の光ファイバにどれだけ多くの情報をのせられるかがコスト的にも重要であり、2値TDMからこれらのデジタル変調を利用した伝送へと技術トレンドがシフトしている。
【0005】
近い将来、このようなデジタル変復調方式が、メモリやSoC(System On a Chip)をはじめとするデバイス間の有線インタフェースに適用される可能性があるところ、現状ではそのようなデバイスを量産試験できる多チャンネルの試験装置は存在しない。
【0006】
従来のRF信号の試験装置では、DUT(Device Under Test)から出力された信号をA/D(アナログデジタル)変換して、その結果得られる膨大なデータを信号処理(ソフトウェア処理も含む)することで期待値判定していた(特許文献1、2)。この方法では、被試験信号の電圧レベル数により分解能の高いA/Dコンバータが必要であり、高速インタフェースを試験するにはこの高分解能A/Dコンバータを高速に動作させる必要があるため、装置のコストが高くなるという問題がある。
【0007】
あるいは従来の別の試験装置では、しきい値の異なる複数の電圧コンパレータを並列に設け、各電圧コンパレータの出力を期待値と比較していた(特許文献3、4)。この方法では、比較レベル数に応じて電圧コンパレータの個数が増え、ハードウェアオーバーヘッドが大きくなる、あるいは複数の電圧コンパレータにより生じるノイズ等の影響により電圧比較精度が悪化するなどの問題がある。
【0008】
特許文献5には、液晶駆動用IC(ソースドライバ、データドライバ)を試験するための技術が開示される。液晶駆動用ICは、各画素の輝度を示す2値シリアル入力データを受け、複数のデータ線に対し、多値の駆動電圧を出力する。この液晶駆動用ICを試験するために、被試験信号である駆動電圧を、シリアル入力データに対応した比較電圧と比較する低速比較部を備える。この方法は、低速な液晶駆動用ICには適用できるが、近年の高速多値インタフェース信号には適用できない。
【0009】
液晶駆動用ICを試験するために、差分検出器、ウィンドウコンパレータ、多値基準電圧を発生する手段を用いた試験装置も提案されている(特許文献6)。しかしこの試験装置は、高速なD/Aコンバータと演算増幅器を必要とするため、高速多値インタフェース信号の試験への適用は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−98230号公報
【特許文献2】実開平5−87578号公報
【特許文献3】特開昭58−79171号公報
【特許文献4】米国特許第7162672号明細書
【特許文献5】特開平8−313592号公報
【特許文献6】特開平6−235754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
メモリやMPU(Micro Processing Unit)のようなデバイスのI/Oがすべて高速多値インタフェースに置き換わったとすれば、数十〜百チャネル以上のI/Oがひとつのデバイスに存在し、それを数百個同時に試験することが求められる。つまり、デジタル変復調信号の入出力を数千チャネル有する試験装置が必要であり、試験装置のCPUリソースにも限界があるので、全てハードウェアレベルでのリアルタイム試験が求められる。
【0012】
その他、振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、振幅偏移変調(ASK)、位相偏移変調(PSK)など、さまざまな方式で変調された試験信号をリアルタイムに試験できる試験装置が利用できれば、製造者にとって非常に有用である。
【0013】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、高速多値信号を試験可能な試験装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様は、被試験デバイスから出力される被試験信号を試験する試験装置に関する。被試験信号は、その値(シンボル)に応じて電圧レベルが変化する。試験装置は、被試験信号が入力される入力ピンと、入力ピンに入力される被試験信号の期待値を示す期待値データを発生するパターン発生器と、期待値データを受け、当該期待値データに応じた電圧レベルを有するしきい値電圧を、被試験信号と同期して生成するしきい値電圧発生器と、被試験信号の電圧レベルをそれと対応するしきい値電圧と比較する比較部と、期待値データに応じたしきい値電圧を、所定の電圧範囲で変化させる電圧変調器と、を備える。
【0015】
この態様によると、従来の特許文献3、4に記載される試験装置に比べて、ハードウェアオーバーヘッドが小さい試験装置を実現できる。通常、試験において試験装置は、被試験デバイスから出力される被試験信号の期待値、すなわち被試験信号がとるべき振幅レベルを知っている。そこで、期待値に応じて、動的に比較部に対して供給するしきい値電圧を時々刻々と変化させることにより、少ない比較部で、高速な、たとえば数Gbps以上の被試験信号を試験することができる。さらに、しきい値電圧を変化させることにより、電圧マージン試験をリアルタイムで行うことができる。
【0016】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、高速な被試験信号を試験できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1のしきい値電圧発生器の構成例を示す回路図である。
【図3】図1の試験装置の電圧マージン試験の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5(a)、(b)は、図4の試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【図6】第3の実施の形態に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【図8】第4の実施の形態に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第5の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、図9の試験装置の動作を示す図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、オフセット成分の具体例を示す図である。
【図12】図12(a)、(b)は、テストレートと同期したオフセット成分が重畳されたしきい値電圧の波形図である。
【図13】しきい値電圧発生器および電圧変調器の第1の構成例を示す回路図である。
【図14】しきい値電圧発生器および電圧変調器の第2の構成例を示す回路図である。
【図15】第5の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図16】しきい値電圧およびストローブタイミングが変調される様子を示す図である。
【図17】図17(a)〜(d)は、図15の試験装置によって設定しうるさまざまなアイマスクを示す図である。
【図18】第7の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図19】第8の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図20】図19の試験装置におけるしきい値電圧の変調の一例を示す波形図である。
【図21】第9の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図22】図22(a)、(b)は、図21の試験装置の動作の例を示す波形図である。
【図23】第10の実施の形態に係る試験装置の構成を示す回路図である。
【図24】図24(a)〜(c)は、第1〜第3の変形例に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図25】図4の試験装置の変形例を示すブロック図である。
【図26】図25の試験装置の動作を示すタイムチャートである。
【図27】図27(a)〜(c)は、変形例に係るしきい値電圧発生器の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
実施の形態に係る試験装置は、被試験デバイス(DUT)から出力される多値の被試験信号を受け、DUTの良否を判定する。DUTは、たとえばPAM(パルス振幅変調)、APSK(振幅位相偏移変調)、QAM(直交振幅変調)、QPSK(4値位相偏移変調)、BPSK(2値位相偏移変調)、FSK(周波数偏移変調)された被試験信号を出力する。DUTは、たとえばメモリやMPUをはじめとする多チャンネルのI/Oポートを有するデバイスが想定されるが、特に限定されるものではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る試験装置2の構成を示すブロック図である。図1の試験装置2は、DUT1のI/Oポートごとに設けられた複数のI/O端子PIOを備える。試験装置2のI/O端子PIOはそれぞれ、DUT1の対応するI/Oポートと伝送路を介して接続されており、DUT1からの多値の被試験信号S1が入力される。I/OポートPIOの個数は任意であり、メモリやMPUの場合、数十〜百個以上設けられるが、図では理解の容易化と説明の簡略化のため、単一のI/O端子PIOとそれに関連するブロックのみを示す。
【0022】
試験装置2は、パターン発生器PGと、タイミング発生器TGと、比較部12、しきい値電圧発生器10、デジタル比較器14を備える。比較部12、しきい値電圧発生器10、デジタル比較器14は、I/O端子PIOごとに設けられる。
【0023】
パターン発生器PGは、I/O端子PIOに順次入力される被試験信号S1の期待値を示す期待値データの列(期待値列もしくは期待値パターンと称する)EXPを発生する。期待値データEXPは、被試験信号S1に含まれる各被試験信号のシンボル値に応じたデータである。期待値データEXPは、被試験信号S1に期待される振幅(電圧レベル)を示すデータであってもよい。タイミング発生器TGは、試験シーケンスのタイミングを制御するユニットであり、テストレートと同期したタイミング信号を発生する。
【0024】
しきい値電圧発生器10は、期待値データEXPを受け、当該期待値データEXPに応じた電圧レベルを有するしきい値電圧Vthの列(しきい値電圧列)S2を、被試験信号S1と同期して生成する。つまりしきい値電圧Vthは、それと対応する被試験信号S1がとるべき期待電圧レベルに応じたレベルに設定される。
【0025】
しきい値電圧発生器10は、数Gbpsで変動する被試験信号S1に追従するために、カレントモードロジック(CML)形式の電圧ドライバで構成される。図2(a)、(b)は、図1のしきい値電圧発生器10の構成例を示す回路図である。
【0026】
図2(a)のしきい値電圧発生器10aは、終端電圧発生器20、抵抗R1、符号器22、複数の電流源24〜24、複数のD/Aコンバータ26〜26を備える。電流源24の個数は任意であり、しきい値電圧Vthの分解能に応じて設計される。終端電圧発生器20は、終端電圧Vを生成する。抵抗R1の一端には、終端電圧発生器20が発生する終端電圧Vが印加される。抵抗R1の他端には、複数の電流源24〜24が接続される。電流源24〜24は、D/Aコンバータ26〜26によって設定される定電流I〜Iを生成する。
【0027】
符号器22は、タイミング発生器TGからのタイミング制御信号と同期している。符号器22は、タイミング制御信号が示す設定タイミングtにおいて、パターン発生器PGからの期待値データEXPに応じて、電流源24〜24が生成する電流I〜Iのオン、オフを制御する。電流I〜Iのオン、オフは、各電流I〜Iの経路上に設けられたスイッチ28〜28によって制御されてもよい。電流源24〜24が電流ゼロの状態を実現できる場合、これらのスイッチは省略できる。
【0028】
電流源24〜24が生成する電流I〜Iは等しくてもよい。この場合、符号器22は、期待値データEXPを、サーモメータコードに変換する。電流I〜Iがバイナリで重み付けされている場合、符号器22は期待値データEXPをバイナリコードに変換する。
【0029】
図2(a)のしきい値電圧発生器10aは、抵抗R1の他端に生ずる電圧を、期待値データEXPに応じたしきい値電圧S2として出力する。
【0030】
図2(b)のしきい値電圧発生器10bは、図2(a)の複数の電流源24〜24に代えて、可変電流源24bを備える。D/Aコンバータ26は、期待値データEXPに応じて可変電流源24bを制御する。符号器22は、期待値データEXPに応じてスイッチ28を制御する。可変電流源24bが電流ゼロの状態を実現できる場合、このスイッチ28は省略できる。
【0031】
図1に戻る。比較部12は、被試験信号S1の電圧レベルVDUTを、それと対応するしきい値電圧Vthと比較する。比較部12は、レベルコンパレータCpおよびタイミングコンパレータTCを含む。レベルコンパレータCpは、被試験信号S1の電圧レベルVDUTを、それと対応するしきい値電圧Vthと比較し、大小関係を示す比較信号S3を出力する。タイミングコンパレータTCは、レベルコンパレータCpからの比較信号S3を、タイミング発生器TGが指示するタイミングでラッチし、比較信号S4を出力する。
【0032】
デジタル比較器14は、比較部12からの比較信号S4にもとづき、DUT1の良否を判定する。
【0033】
以上が試験装置2の構成である。続いてその動作を説明する。図3は、図1の試験装置2の電圧マージン試験の動作を示すタイムチャートである。DUT1からの被試験信号S1がハイ/ロー2値(1/0)のデジタル信号であり、電圧マージン試験では、被試験信号S1の電圧レベルVDUTが、ハイレベル(1)のとき上側しきい値電圧VOHより高く、ローレベル(0)のとき下側しきい値電圧VOLより低いことを検査する。
【0034】
時刻t、t、…は、被試験信号S1のレベルを判定すべきタイミング(ストローブタイミングという)であり、図3のタイムチャートでは、期待値データEXPがストローブタイミングt〜tそれぞれにおいて[1、1、0、1、0、0、1]である場合を示す。ストローブタイミングは上述のタイミング発生器TGによって制御される。
【0035】
しきい値電圧発生器10は、期待値データEXPの列=[1、1、0、1、0、0、1]を受け、それに応じたしきい値電圧Vthの列S2={Vth、Vth、Vth、Vth、Vth、Vth、Vth}を生成する。i番目のストローブタイミングにおけるしきい値電圧Vthは、期待値パターンEXPに含まれるi番目の期待値データEXP[i]に対応した電圧レベルをとる。具体的にはしきい値電圧発生器10は、EXP[i]=1のときハイレベルのしきい値電圧VOHを、EXP[i]=0のときローレベルのしきい値電圧VOLを生成する。
【0036】
レベルコンパレータCpから出力される比較信号S3は、ストローブタイミングt、t、…にてラッチされ、比較信号S4が生成される。デジタル比較器14は、比較信号S4と期待値データEXPを比較することにより、DUT1の良否(Pass/Fail)を判定する。
【0037】
以上が図1の試験装置2の動作である。この試験装置2によれば、期待値に応じて、タイミング発生器TGからの制御信号と同期して複数のしきい値電圧VOH、VOLを高速に切りかえることで、2値のデジタル信号を出力するDUT1の電圧マージン試験をリアルタイムで行うことができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る試験装置2aの構成を示すブロック図である。以下の実施の形態では、第1の実施の形態と共通する構成に関する説明は適宜省略し、相違点を中心に説明する。
【0039】
図4の試験装置2aでは、ひとつのI/OピンPIOに対して、しきい値電圧発生器10および比較部12が複数設けられている。図4では各I/OピンPIOごとに、2つのしきい値電圧発生器10、10、比較部12、12が設けられる。
【0040】
複数のしきい値電圧発生器10、10は、異なるしきい値電圧列S2、S2を発生する。具体的には、しきい値電圧列S2、S2は、被試験信号S1が各ストローブタイミングにおいてとるべき期待電圧レベルVEXPを挟むように生成される。i番目のストローブタイミングtにおける期待電圧レベルVEXPiに対して、しきい値電圧列S2のi番目のストローブタイミングにおける電圧レベルVthHは、
VthH=VEXPi+ΔV
である。またしきい値電圧列S2のi番目のストローブタイミングにおける電圧レベルVthLは、
VthL=VEXPi−ΔV
である。ΔV、ΔVは所定の電圧マージンである。しきい値電圧発生器10、10は、期待電圧レベルVEXPが取り得るレベル数以上のしきい値電圧のペアを生成できるよう構成される。
【0041】
比較部12および12それぞれのレベルコンパレータCpは、被試験信号S1をしきい値電圧列S2、S2と比較する。つまり比較部12および12は、ウィンドウコンパレータとして動作する。
【0042】
図5(a)、(b)は、図4の試験装置2aの動作を示すタイムチャートである。図5(a)では、DUT1からの被試験信号S1が4値の電圧レベルを取り得る場合を示している。
【0043】
しきい値電圧発生器10は期待値パターンEXPを受け、各ストローブタイミングt0、t1、…において、被試験信号S1の期待電圧レベルVEXP0、VEXP1、…より高いしきい値電圧列S2=VOH0、VOH1…を発生する。しきい値電圧発生器10は、期待値パターンEXPを受け、被試験信号S1の期待電圧レベルVEXP0、VEXP1より低いしきい値電圧列S2={VOL0、VOL1…}を発生する。
【0044】
比較部12のレベルコンパレータCpから出力される比較信号S3は、ストローブタイミングt、t、…にてラッチされ、比較信号S4が生成される。同様に比較部12のレベルコンパレータCpから出力される比較信号S3は、ストローブタイミングt、t、…にてラッチされ、比較信号S4が生成される。デジタル比較器14は、比較信号S4、S4を、期待値パターンEXPと比較することにより、多値インタフェースを有するDUT1を試験することができる。
【0045】
図5(b)は、被試験信号S1がアナログ信号の場合を示している。被試験信号S1の期待波形に応じて、各ストローブタイミングごとに、しきい値電圧VOH、VOLを発生することにより、アナログ信号のパス、フェイルの判定も可能である。アナログ信号を試験する場合、しきい値電圧発生器10、10の分解能は、試験精度(電圧分解能)を満たすように設計される。
【0046】
なお、しきい値電圧発生器10、10は、独立にしきい値電圧VOH、VOLを生成してもよい。あるいは一方がしきい値電圧を独立に設定すると、他方はもう一方にオフセットを与えるなどして自動的に設定されるようにしてもよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態に係る試験装置2bの構成を示すブロック図である。図6の試験装置2bは、図4の試験装置2aと同様に、ひとつのI/OピンPIOに対して、しきい値電圧発生器10および比較部12が複数設けられている。
【0048】
共通の入力ピンPIOに割り当てられる複数の比較部12、12は、時分割的に動作するインタリーブコンパレータとして動作する。具体的には、比較部12は奇数番目のストローブタイミングt、t、…における被試験信号S1の電圧レベルVDUTをしきい値電圧発生器10からのしきい値電圧Vthと比較し、比較部12は偶数番目のストローブタイミングt、t、…における被試験信号S1の電圧レベルVDUTをしきい値電圧発生器10からのしきい値電圧Vthと比較する。なおここでの奇数、偶数は便宜的なものに過ぎず、両者を読み替えてもよい。
【0049】
タイミング発生器TGは、偶数番目のストローブタイミングt、t、…を示す制御信号φを発生し、比較部12のタイミングコンパレータTCおよびしきい値電圧発生器10へと出力する。またタイミング発生器TGは、奇数番目のストローブタイミングt、t、…を示す制御信号φを発生し、比較部12のタイミングコンパレータTCおよびしきい値電圧発生器10へと出力する。
【0050】
インタリーブ動作する場合、2つのしきい値電圧Vth、Vthの周期は、被試験信号S1の周期の2倍であるから、制御信号φ、φの周期も、被試験信号S1の周期の2倍である。しきい値電圧発生器10に対する制御信号φと比較部12に対する制御信号φは半周期(被試験信号S1の1周期)ずれている。このことは、比較処理に先だってしきい値電圧Vthが設定されることを表している。しきい値電圧発生器10、比較部12についても同様である。
【0051】
またパターン発生器PGは、期待値パターンEXPのうち、奇数番目のストローブタイミングt、t、…における期待値Pをしきい値電圧発生器10へと出力し、偶数番目のストローブタイミングt、t、…における期待値Pをしきい値電圧発生器10へと出力する。
【0052】
マルチプレクサ16は、比較部12および比較部12から交互に出力される比較信号S4、S4を多重化し、デジタル比較器14へと出力する。マルチプレクサ16から出力される比較信号S4は、図1の比較部12からの比較信号S4と等価である。
【0053】
以上が図6の試験装置2bの構成である。続いてその動作を説明する。図7は、図6の試験装置2bの動作を示すタイムチャートである。図7では、図2と同様に、2値のデジタル信号を試験する場合を示している。図中、白丸は、しきい値電圧発生器10によるストローブタイミングを、黒丸はしきい値電圧発生器10によるストローブタイミングを示す。
【0054】
しきい値電圧発生器10および比較部12の動作に着目する。ストローブタイミングtにおいて制御信号φがアサートされると、しきい値電圧発生器10が、次のストローブタイミングtにおける期待値Pに応じたしきい値電圧Vthを生成する。そして次のストローブタイミングtにおいて制御信号φがアサートされると、比較部12のタイミングコンパレータTCがレベルコンパレータCpからの比較信号S3をラッチする。
【0055】
しきい値電圧発生器10および比較部12は、しきい値電圧発生器10および比較部12の裏で同様の処理を行う。具体的には、ストローブタイミングtに制御信号φがアサートされると、しきい値電圧発生器10が、次のストローブタイミングtにおける期待値Pに応じたしきい値電圧Vthを生成する。そして次のストローブタイミングtにおいて制御信号φがアサートされると、比較部12のタイミングコンパレータTCがレベルコンパレータCpからの比較信号S3をラッチする。
【0056】
以上が試験装置2bの動作である。図6の試験装置2bによれば、複数の比較部12を交互に利用するため、より高速な信号を試験することができる。また各比較部12に着目した場合に、しきい値電圧の設定タイミングと、ストローブタイミングが、ストローブ信号の1相分、シフトしているため、しきい値電圧発生器10が発生するしきい値電圧が安定した後に、比較処理を行うことができ、試験精度を高めることができる。なお、非常に短時間で安定する場合には、しきい値電圧Vthの設定タイミングとストローブタイミングを実質的に同じタイミングとしてもよい。
【0057】
図6では、2相の比較部12、12および2つのしきい値電圧発生器10、10をインタリーブする例を示したが、本発明は限定されず、3相以上の比較部12、しきい値電圧発生器10をインタリーブしてもよい。
【0058】
図6のインタリーブ技術は、図4の試験装置2aにも適用可能である。この場合、図4の比較部12、12およびそれらに付随するしきい値電圧発生器10、10それぞれを、インタリーブの相数に応じた個数設ければよい。
【0059】
(第4の実施の形態)
図8は、第4の実施の形態に係る試験装置2cの構成を示すブロック図である。図8の試験装置2cは、図1の試験装置2に加えて、ドライバDrおよびフォーマットコントローラ(波形整形器)FCを備える。この試験装置2cは、DUT1との間で入力端子と出力端子が共有され(I/Oコモン)、単一の伝送線路を介して双方向伝送を行う。
【0060】
パターン発生器PGは、DUT1に供給すべきテスト信号のパターンを示すテストパターンを発生する。このテストパターンは、上述の期待値パターンEXPと対応付けられる。
【0061】
フォーマットコントローラFCは、テストパターンおよびタイミング制御信号を受け、DUT1に供給すべきテスト信号列を生成する。ドライバDrは、テスト信号列S5をI/O端子PIOを介してDUT1へと出力する。図8の構成によれば、双方向インタフェースを備えるDUT1を試験できる。
【0062】
(第5の実施の形態)
図9は、第5の実施の形態に係る試験装置2hの構成を示す回路図である。図9の試験装置2hは、図1の試験装置2に加えて、電圧変調器11をさらに備える。上述のように、しきい値電圧発生器10は、期待値データEXPaに応じた電圧レベルを有するしきい値電圧Vth(S2)を生成する。電圧変調器11は、期待値データEXPに応じたしきい値電圧Vthを、所定の電圧範囲ΔVで変化させる。本明細書において、これをしきい値電圧の「変調」とも称する。
【0063】
本実施の形態では、被試験信号S1が4値信号であり、4つの電圧レベルV、V、V、Vを取り得るものとする。それぞれに対する期待値EXPaは、"00"、"01"、"10"、"11"である。
これに対してしきい値電圧発生器10は、4つの電圧レベルV〜Vの間に配置される3つのしきい値電圧Vth=VOH、VOM、VOLのうち、期待値データEXPaに応じたひとつを生成する。
【0064】
1. EXPa="00"のとき
しきい値電圧発生器10は、しきい値電圧VOLを生成する。VDUT<VOLのときパス判定、VDUT>VOLのときフェイル判定がなされるように、デジタル比較器14に対する期待値EXPbの値が設定される。
【0065】
2. EXPa="01"のとき
しきい値電圧発生器10は、しきい値電圧VOMを生成する。VDUT<VOMのときパス判定、VDUT>VOMのときフェイル判定がなされるように、期待値EXPbが設定される。
もしくは、しきい値電圧発生器10はしきい値電圧VOLを生成する。VDUT>VOLのときパス判定、VDUT<VOLのときフェイル判定がなされるように、期待値EXPbの値が設定される。
【0066】
3. EXPa="10"のとき
しきい値電圧発生器10は、しきい値電圧VOMを生成する。VDUT>VOMのときパス判定、VDUT<VOMのときフェイル判定がなされるように、期待値EXPbの値が設定される。
もしくはしきい値電圧発生器10は、しきい値電圧VOHを生成する。この場合、VDUT<VOHのときパス判定、VDUT>VOHのときフェイル判定がなされるように期待値EXPbの値が設定される。
【0067】
4. EXPa="11"のとき
しきい値電圧発生器10は、しきい値電圧VOHを生成する。VDUT>VOHのときパス判定、VDUT<VOHのときフェイル判定がなされるように、期待値EXPbの値が設定される。
【0068】
図10(a)〜(c)は、図9の試験装置2hの動作を示す図である。図10(a)は、しきい値電圧Vthを変調しない場合の動作例を示す。これは図2の試験装置2の動作と等価である。
【0069】
図10(b)は、電圧変調器11によって変調されたしきい値電圧Vthの波形を示す。しきい値電圧VOHは、VOHmax〜VOHminの間で変化する。VOM、VOLも同様に、所定の範囲で変化する。しきい値電圧VOH、VOM、VOLの変調方法については後述する。
【0070】
図10(b)において、ストローブタイミングt、t、tに着目する。各ストローブタイミングにおいて、期待値データEXPは同じである。これに対して、タイミングtにおけるしきい値電圧Vthは、VOHmaxであり、t、tにおけるしきい値電圧Vthは、VOHminである。別のタイミングにおいては、VOHmaxとVOHminの中間的な値をも取り得る。
【0071】
しきい値電圧Vthを変調した状態で、ある程度長いテストパターンを利用して試験を行うと、統計的に、しきい値電圧Vthは、変調範囲内で変化することになる。そして、テストが終了した段階において、すべてのサイクルでパス判定が得られていれば、そのときのDUT1は、図10(c)に示すように、VOHmin〜VOHmax、VOMmin〜VOMmax、VOLmin〜VOLmaxの電圧マージンを有することが保証される。つまり、被試験信号S1は図10(c)に示すアイ開口を有することが保証される。
【0072】
電圧変調器11を用いずに同様の試験を行う場合、しきい値電圧の組をVOH、VOM、VOLを固定した状態で1回の試験を行い、しきい値電圧の組を切りかえながら、同様の試験を繰り返すことが求められる。この手法では、多値信号のレベルの増加にともない、試験時間も増大する。
【0073】
これに対して、図9の試験装置2hによれば、1回の試験で、リアルタイムに電圧マージン試験を行うことができる。
【0074】
続いて、電圧変調器11によるしきい値電圧Vthの変調方法について説明する。
電圧変調器11は、期待値データEXPに応じた基準しきい値レベルに、期待値データEXPの値とは無相関なオフセット成分VOFSを重畳してもよい。図10(b)のしきい値電圧Vthは、図10(a)に示されるしきい値電圧Vthに、テストレートよりも速い速度で振動するオフセット電圧VOFSが重畳されたものと把握できる。
【0075】
図11(a)〜(d)は、オフセット成分VOFSの具体例を示す図である。図11(a)は、テストレートより高速なオフセット電圧VOFSを示す。オフセット電圧VOFSは、期待値データEXPの値とは無関係に、正と負が交互に繰り返すように生成される。図11(b)のオフセット電圧VOFSは、正と負が、ランダムに発生する。図11(c)、(d)のオフセット電圧VOFSは、テストレートと同期してその値が変化する。つまり、被試験信号S1の一周期中、一定レベルをとる。図11(c)は、正と負が交互に、図11(d)は、正と負がランダムに発生する。
【0076】
なおオフセット成分VOFSは、これらには限定されず、その他の波形であってもよい。たとえばオフセット成分VOFSは、テストレートよりもさらに低い周波数を有していてもよい。つまり、ストローブタイミングにおいて、しきい値電圧Vthが所定の範囲で振動していればよい。
【0077】
図12(a)、(b)は、テストレートと同期したオフセット成分が重畳されたしきい値電圧の波形図である。図12(a)は、期待値データEXPの値とは無相関なオフセット成分が重畳される場合を示す。
【0078】
これに対して図12(b)は、期待値データEXPと相関を有するオフセット成分が重畳される場合を示す。電圧変調器11は、期待値データEXPが示す被試験信号S1が取るべき期待電圧レベル(V〜V)が、高い値から低い値へ遷移するとき、遷移後のしきい値電圧Vthを、低レベル側にオフセットする。反対に期待値データEXPが示す期待電圧レベル(V〜V)が、低い値から高い値へ遷移するとき、電圧変調器11は、遷移後のしきい値電圧Vthを、高レベル側にオフセットする。この場合、より厳しい条件で、DUT1を試験することができる。
【0079】
続いて、しきい値電圧発生器10および電圧変調器11の構成を説明する。図13は、しきい値電圧発生器および電圧変調器の第1の構成例を示す回路図である。しきい値電圧発生器10は、図2(a)に示したように、カレントモードロジック方式の電圧ドライバで構成してもよい。
電圧変調器11は、D/Aコンバータ26〜26の設定値を切りかえることにより、各電流源24〜24の電流値を、期待値データEXPと無相関に、もしくは相関をもって変化させる。その結果、抵抗R1に流れる電流値にオフセットを与え、しきい値電圧Vthを変化させることができる。
【0080】
図14は、しきい値電圧発生器および電圧変調器の第2の構成例を示す回路図である。しきい値電圧発生器10は、期待値データEXPに応じて制御されるスイッチ28に加えて、電圧変調器11によって制御されるスイッチ29を備える。電流源25は、オフセット成分に相当する電流IΔを生成する。D/Aコンバータ27は、電流IΔ、つまりしきい値電圧Vthの変動幅を設定する。
【0081】
電圧変調器11は、期待値データEXPと無相関に、もしくは相関をもって、スイッチ29のオン、オフを切りかえることにより、抵抗R1に流れる電流値をΔIだけオフセットさせ、しきい値電圧Vthを変化させることができる。
【0082】
(第6の実施の形態)
図15は、第5の実施の形態に係る試験装置2iの構成を示す回路図である。図15の試験装置2iは、図9の試験装置2hに加えて、タイミング変調器21をさらに備える。タイミング変調器21は、タイミング発生器TGが発生するストローブタイミングt、t、t…を時間軸方向に所定の範囲ΔTでシフト(変調)させる。
【0083】
図16は、しきい値電圧Vthおよびストローブタイミングが変調される様子を示す図である。ストローブタイミングの破線は、変調される前のタイミングを、実線が変調されたストローブタイミングを示す。ストローブタイミングは、期待値データEXPと無相関に変調されてもよいし、相関をもって変調されてもよい。
【0084】
しきい値電圧Vthとストローブタイミングを変調しながらあるDUT1を試験すると、アイマージン試験をリアルタイムで行うことができる。図17(a)〜(d)は、図15の試験装置2iによって設定しうるさまざまなアイマスクを示す図である。
しきい値電圧VthをΔVの範囲で、ストローブタイミングをΔTの範囲で変調することにより、図17(a)に示すアイマスクを実現できる。また、しきい値電圧Vthとストローブタイミングの組み合わせを、アイマスクの頂点となるように変化させることにより、図17(b)〜(d)に示すようなアイマスクを実現できる。
【0085】
(第7の実施の形態)
図18は、第7の実施の形態に係る試験装置2jの構成を示す回路図である。この試験装置2jは、図4の試験装置2aもしくは図6の試験装置2bと、図9の試験装置2hを組み合わせた構成を有する。この構成によれば、ウインドウコンパレータの上側しきい値電圧と下側しきい値電圧を変調することができる。あるいはインタリーブコンパレータのしきい値電圧を変調させることができる。
各電圧変調器11、11は、互いに同期して、対応するしきい値電圧を変調してもよいし、非同期で変調してもよい。また各電圧変調器11、11は、互いに無相関に、対応するしきい値電圧を変調してもよい。この試験装置2jに、さらに図16のタイミング変調器21を設けてもよい。
【0086】
(第8の実施の形態)
図19は、第8の実施の形態に係る試験装置2kの構成を示す回路図である。試験装置2kは、DUT1から出力される差動の被試験信号S1を試験する。この試験装置2kは、図18の試験装置2jと同様に2つの比較部12、12を備えており、一方のコンパレータには差動信号の正論理(ポジティブ)信号S1が、他方のコンパレータには差動信号の負論理(ネガティブ)信号S1が入力されている。
【0087】
このような構成においても、正論理信号S1と負論理信号S1それぞれに対するしきい値電圧S2、S2を変調することにより、上述のシングルエンド信号を試験する場合と同様の効果を得ることができる。なお、しきい値電圧S2、S2は独立に変調されてもよいし、同期して変調されてもよい。
【0088】
図20は、図19の試験装置2kにおけるしきい値電圧の変調の一例を示す波形図である。この例では、2つのしきい値電圧S2、S2を同期して逆相で変調されている。この変調を行うことにより、差動信号つまり正論理信号S1と負論理信号S1の差分Diff(=S1−S1)の電圧マージン試験を行うことができる。
【0089】
(第9の実施の形態)
図21は、第9の実施の形態に係る試験装置2lの構成を示す回路図である。試験装置2lは、第8の実施の形態と同様に、DUT1から差動の被試験信号S1を受ける。比較部12lは、差動しきい値コンパレータDIFF_COMPを備える。図21において差動しきい値コンパレータDIFF_COMPは、レベルコンパレータCpとレベルシフト回路LSを含む。なお差動しきい値コンパレータの構成は図21のそれに限定されない。
【0090】
レベルシフト回路LSは、しきい値電圧発生器10からの制御信号S2に応じて、差動被試験信号S1の正論理信号S1、負論理信号S1の一方、もしくは両方をレベルシフトする。制御信号S2は、被試験信号S1の期待値に応じて変調されている。またコンパレータCpは、正論理信号S1と負論理信号S1の差分Diffを所定の基準電圧Vrefと比較し、比較結果を示す比較信号S3を生成する。基準電圧Vrefはゼロであってもよい。
【0091】
この構成において、レベルシフト回路LSの制御レベルを変調することにより、正論理信号S1と負論理信号S1の差分信号DIFFを変調することができ、相対的に差動しきい値レベルを変調することができる。
【0092】
図22(a)、(b)は、図21の試験装置2lの動作の例を示す波形図である。図22(a)は、負論理信号S1を正方向にレベルシフトした場合を、図22(b)は、正論理信号S1を正方向にレベルシフトした場合を示す。レベルシフトの結果、差動成分Diffと基準電圧Vrefの電位差がシフトされ、結果としてしきい値電圧Vthをシフトするのと同様の効果を得ることができる。なお、図22(a)、(b)では、各サイクルで同じシフト量が与えられる場合を示すが、上述したように、ランダムなシフトを与えてもよいし、期待値データEXPに応じたシフトを与えてもよい。
【0093】
(第10の実施の形態)
これまでの実施の形態では、しきい値電圧Vthを変調することにより、マージン試験を行う用途について説明した。これに対して第10の実施の形態では、しきい値電圧を変調の用途を、被試験信号S1のレベル変動の補正に利用する用途を説明する。たとえば被試験信号S1がレベル変動成分を有するとき、コンパレータCpのしきい値電圧Vthを固定すると、比較結果を誤る場合がある。たとえば差動の被試験信号S1のコモンモード電圧の変動は、差動信号の振幅Diffには影響しない。したがって差動信号を試験する場合、コモンモード電圧レベルの影響を除去して電圧比較する必要がある。
この場合、レベル変動成分が試験装置2において既知であれば、その変動成分に応じてしきい値電圧S2(Vth)を変調することにより、レベル変動の影響をキャンセルすることができる。
【0094】
レベル変動成分が未知の場合、それを測定する手段を設ければよい。図23は、第10の実施の形態に係る試験装置2mの構成を示す回路図である。図23の試験装置2mは、図9の構成に加えて電圧レベル変動成分測定器13をさらに備える。電圧レベル変動成分測定器13は、被試験信号S1のレベル変動成分(コモンモード電圧)を測定する。電圧変調器11は、測定されたレベル変動成分に応じてしきい値電圧S2(Vth)を変調する。これにより、レベル変動の影響をキャンセルできる。
【0095】
以上、本発明について、いくつかの実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0096】
図24(a)〜(c)は、第1〜第3の変形例に係る試験装置の構成を示すブロック図である。これらの変形例は、上述のいずれの実施の形態とも組み合わせることが可能であり、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0097】
図24(a)の試験装置2dは、図8の試験装置2cの変形であり、しきい値電圧発生器10dがドライバDrと共有されている。双方向通信において、送信と受信が時分割的に行われる場合がある。この場合、ドライバDrの出力を、DUT1に接続するか、レベルコンパレータCpに接続するかを切りかえ可能なスイッチ34を追加すればよい。CML形式のドライバDrをしきい値電圧発生器10dとして利用することにより、回路面積を削減でき、ハードウェアコストを低減できる。
【0098】
図24(b)の試験装置2eは、シュムーコントロール部30をさらに備える。試験装置は、RTTC(リアルタイムタイミングコントロール)によってオンザフライでタイミング(データレート)を変更することができる。このタイミング変更と、上述したリアルタイムのしきい値電圧の変更を組み合わせることにより、シュムー(Shmoo)プロットを生成できる。
【0099】
具体的には、しきい値電圧発生器10はパターン発生器PGからの期待値パターンEXPと、シュムーコントロール部30からの制御信号S6を受ける。そしてしきい値電圧発生器10は、リアルタイムでしきい値電圧列S2の電圧レベルを、制御信号S6に応じて順に変化させていく。
【0100】
従来のシュムープロット試験は、レベルコンパレータCpに対する比較電圧(しきい値電圧)をスイープさせ、各比較電圧ごとに、被試験信号S1を試験し、リセットしては同じ動作を繰り返す必要があった。これに対して図24(b)の試験装置2eでは、シュムープロット試験をリアルタイムに実現でき、シュムープロット試験の実行時間を大幅に短縮できる。
【0101】
図24(c)の試験装置2fは、適応制御部32を備える。適応制御部32は、I/O端子PIOに入力される被試験信号S1の電圧レベルVDUTをモニタし、その結果をしきい値電圧発生器10の終端電圧発生器20やD/Aコンバータ26へとフィードバックする。つまり適応制御部32は、被試験信号S1に応じて、しきい値電圧のレベルを適応制御する。これにより、出力信号の振幅変動やオフセット変動を許容するデバイスの試験も、適応的に行うことができる。
【0102】
図25は、図4の試験装置の変形例を示すブロック図である。図26は、図25の試験装置2gの動作を示すタイムチャートである。図25の試験装置2gにおいて、レベルコンパレータCpは、第1コンパレータCp、第2コンパレータCp、差分検出器40、比較電圧発生器42を含む。
【0103】
しきい値電圧発生器10gは、被試験信号S1が各ストローブタイミングにおいてとるべき期待電圧レベルVEXPに相当するしきい値電圧列S2を生成する。差分検出器40は、各ストローブタイミングにおいて、被試験信号S1の電圧レベルVDUTと期待電圧レベルVEXPの差分を示す差分信号S7を生成する。比較電圧発生器42は、差分信号S7に許容される上限を規定する第1しきい値電圧VOHと、下限を規定する第2しきい値電圧VOLを生成する。レベルコンパレータCp、Cpは、差分信号S7の電圧レベルを、第1しきい値電圧VOH、VOLと比較する。タイミングコンパレータTC、TCはそれぞれ、レベルコンパレータCp、Cpの出力信号S3、S3をストローブタイミングでラッチする。
【0104】
図25の試験装置2gによれば、VDUT−VEXPを示す差分信号S7が、2つのしきい値電圧VOHとVOLと比較され、VOL<VDUT−VEXP<VOHのとき、すなわちVOL+VEXP<VDUT<VOH+VEXPのときパス判定とされ、それ以外のときフェイル判定とされる。つまり2つのレベルコンパレータCp、CPがウィンドウコンパレータとして機能するため、図4の試験装置2aと同様に、DUT1の良否を判定できる。
【0105】
最後にしきい値電圧発生器10の変形例を説明する。図27(a)〜(c)は、変形例に係るしきい値電圧発生器の構成を示す回路図である。
【0106】
図27(a)のしきい値電圧発生器10cは、図2(a)のしきい値電圧発生器10aを差動形式としたものである。図2(a)のスイッチ28はそれぞれ、図27(a)において差動トランジスタペアM1、M2に置き換えられている。各スイッチ28に対応する電流源24は、差動トランジスタペアM1、M2のテイル電流源として接続される。また抵抗R1は2つ設けられ、差動トランジスタペアM1、M2に負荷として接続される。
【0107】
符号器22cは、複数のスイッチ28〜28それぞれの差動トランジスタペアM1、M2を制御する。
【0108】
図27(a)のしきい値電圧発生器10cによれば、差動構成としたことにより、高速な被試験信号S1に追従可能なしきい値電圧列S2を生成できる。
【0109】
図27(b)のしきい値電圧発生器10dは、図27(a)の変形である。スイッチ28を構成する差動トランジスタM1、M2はそれぞれ、基準電圧Vref1、Vref2でバイアスされており、バイアス状態に応じた電流が流れている。つまり基準電圧Vref1、Vref2によって、しきい値電圧列S2の基準レベルが定まる。
【0110】
その他のスイッチ28〜28では、2つのトランジスタM1、M2それぞれにテイル電流源24H、24Lが個別に接続されている。符号器22dは、スイッチ28〜28のトランジスタM1、M2のオン、オフを制御する。
【0111】
図27(c)のしきい値電圧発生器10eは、図27(b)のしきい値電圧発生器10cから、スイッチ28、電流源24を省略した構成である。
【0112】
図27(b)、(c)の構成によれば、トランジスタや電流源のミスマッチに強くなる。
【0113】
上述のさまざまの実施の形態および変形例は、その他の実施の形態および変形例と、その効果を損なわない範囲において、任意に組み合わせることができ、それらも当然に本発明の範囲に含まれる。
【0114】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0115】
1…DUT、R1…抵抗、PIO…I/O端子、Cp…レベルコンパレータ、TC…タイミングコンパレータ、PG…パターン発生器、TG…タイミング発生器、FC…フォーマットコントローラ、Dr…ドライバ、S1…被試験信号、2…試験装置、S2…しきい値電圧列、10…しきい値電圧発生器、11…電圧変調器、12…比較部、13… 電圧レベル変動成分測定器、14…デジタル比較器、16…マルチプレクサ、20…終端電圧発生器、22…符号器、24…電流源、26…D/Aコンバータ、28…スイッチ、30…シュムーコントロール部、32…適応制御部、34…スイッチ、40…差分検出器、42…比較電圧発生器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスから出力される被試験信号であって、その値に応じて電圧レベルが変化する被試験信号を試験する試験装置であって、
前記被試験信号が入力される入力ピンと、
前記入力ピンに入力される前記被試験信号の期待値を示す期待値データを発生するパターン発生器と、
前記期待値データを受け、当該期待値データに応じた電圧レベルを有するしきい値電圧を、前記被試験信号と同期して生成するしきい値電圧発生器と、
前記被試験信号の電圧レベルをそれと対応する前記しきい値電圧と比較する比較部と、
前記期待値データに応じた前記しきい値電圧を、所定の電圧範囲で変化させる電圧変調器と、
を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記電圧変調器は、前記期待値データに応じた基準しきい値レベルに、オフセット成分を重畳することを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記電圧変調器は、前記期待値データの値とは無相関なオフセット成分を重畳することを特徴とする請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記電圧変調器は、所定の周期で変動するオフセット成分を重畳することを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記電圧変調器は、前記被試験信号の一周期中、一定レベルをとるオフセット成分を重畳し、前記被試験信号の周期を単位として前記オフセット成分を切りかえることを特徴とする請求項2に記載の試験装置。
【請求項6】
前記電圧変調器は、前記期待値データの値に応じたオフセット成分を重畳することを特徴とする請求項2に記載の試験装置。
【請求項7】
前記電圧変調器は、前記期待値データが示す前記被試験信号が取るべき電圧レベルが、高い値から低い値へ遷移するとき、遷移後の前記しきい値電圧を、低レベル側にオフセットし、前記期待値データが示す前記被試験信号が取るべき電圧レベルが、低い値から高い値へ遷移するとき、遷移後の前記しきい値電圧を、高レベル側にオフセットすることを特徴とする請求項6に記載の試験装置。
【請求項8】
前記しきい値電圧発生器は、カレントモードロジック方式の電圧ドライバを含み、
前記電圧変調器は、前記電圧ドライバの電流値をオフセットさせることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の試験装置。
【請求項9】
前記比較部が、前記被試験信号の電圧レベルと前記しきい値電圧との比較結果をラッチするストローブタイミングを規定するタイミング信号を生成するタイミング発生器と、
前記ストローブタイミングを変調するタイミング変調器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の試験装置。
【請求項10】
前記タイミング変調器は、前記期待値データの値とは無相関に、前記ストローブタイミングを変調することを特徴とする請求項9に記載の試験装置。
【請求項11】
前記タイミング変調器は、前記期待値データのタイミングと同期して、前記ストローブタイミングを変調することを特徴とする請求項9に記載の試験装置。
【請求項12】
前記タイミング変調器は、前記電圧変調器とは無相関に、前記ストローブタイミングを変調することを特徴とする請求項9に記載の試験装置。
【請求項13】
前記タイミング変調器は、前記電圧変調器と同期して、前記ストローブタイミングを変調することを特徴とする請求項9に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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